特許第6501591号(P6501591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501591
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20190408BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   B32B5/32
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-73456(P2015-73456)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193500(P2016-193500A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】飯野 貴充
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−198404(JP,A)
【文献】 特開2008−173923(JP,A)
【文献】 特開2012−158065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に、筋状に積層された、ポリスチレン系樹脂と着色剤とを含む着色部による筋状模様を有する熱成形用発泡シートであって、
前記発泡シート全体の見掛け密度(D1)が0.05〜0.30g/cmであり、かつ、前記発泡シートの厚みは1〜3mmであり、
前記着色部には気泡調整剤が配合されており、
前記着色部は発泡しており、
前記発泡シート全体の見掛け密度(D1)に対する、前記着色部が積層された面側の表面から厚み方向に0.2mmまでの表層部分の見掛け密度の平均値(D2)の比(D2/D1)が、1.5〜2.4であることを特徴とする熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記表層部分の見掛け密度の平均値(D2)が0.20〜0.32g/cmであることを特徴とする請求項1に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記着色部の総積層量が、前記発泡シートの片面あたり3〜20g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、軽量性、断熱性および熱成形性に優れるため、例えば、トレイ容器、即席麺容器、弁当容器、納豆容器などを加工するための原反シートとして広く利用されている。
【0003】
そのなかでも、表面に模様が施された容器は、見栄え、高級感に優れているため、消費者のニーズが高まっている。
【0004】
このような熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートとして、本出願人は、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に、着色剤を含有するポリスチレン系着色部が共押出により積層された、筋状模様を有する、見掛け密度0.04〜0.35g/cm、厚み0.5〜10mmの熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートを提案している(特許文献1)。また、この熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートでは、ポリスチレン系着色部は押出方向に筋状に複数積層されており、発泡シートの着色部積層面側における最表面部のセル壁厚みが50μm以下であり、発泡シートの着色部積層面側における表面の輪郭曲線の最大高さが60μm以下とされている。そして、この熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、外観、軽量性、熱成形性に優れるとともに、製造コストも大幅に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−180814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートから即席焼きそば容器などの深型容器を熱成形し、この深型容器を大きく撓ませた際に、着色部の積層量によっては、通常のポリスチレン系樹脂発泡シートから得られた成形体よりも割れが生じやすくなる傾向が見られた。
【0007】
本発明は、優れた外観、軽量性、熱成形性などを維持しつつ、耐割れ性に優れる成形体を得ることができる熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に、筋状に積層された、ポリスチレン系樹脂と着色剤とを含む着色部による筋状模様を有する熱成形用発泡シートであって、
前記発泡シート全体の見掛け密度(D1)が0.05〜0.30g/cmであり、かつ、前記発泡シートの厚みは1〜3mmであり、
前記着色部には気泡調整剤が配合されており、
前記着色部は発泡しており、
前記発泡シート全体の見掛け密度(D1)に対する、前記着色部が積層された面側の表面から厚み方向に0.2mmまでの表層部分の見掛け密度の平均値(D2)の比(D2/D1)が、1.5〜2.4であることを特徴としている。
【0009】
この熱成形用発泡シートは、前記表層部分の見掛け密度の平均値(D2)が0.2〜0.32g/cmであることが好ましい。
【0010】
この熱成形用発泡シートは、前記着色部の総積層量が、前記発泡シートの片面あたり3〜20g/mであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、優れた外観、軽量性、熱成形性を維持しており、該発泡シートを熱成形することにより、耐割れ性に優れる成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの一実施形態を例示した斜視図である。
図2】本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの押出方向と直交する断面の概要を示した断面図である。
図3】本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの別の実施形態を例示した断面図である。
図4】本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの別の実施形態を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートともいう)の一実施形態を例示した斜視図である。図2は、本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの押出方向と直交する断面の概要を示した断面図である。
【0014】
発泡シート1は、ポリスチレン系樹脂発泡層2(以下、単に発泡層2ともいう)の少なくとも片面に、筋状に積層された、ポリスチレン系樹脂と着色剤とを含む着色部による筋状模様を有している。筋状の着色部3が複数積層されており、この筋状の着色部3と発泡層2との色相の違いにより、またはそれぞれの筋状の着色部3の積層量の違いにより、発泡シート1の表面に筋状模様が形成される。発泡シートの表面に筋状模様が形成されていれば、隣り合う着色部同士が接していてもよく、接していなくてもよい。
【0015】
ここで、筋状とは、例えば図1に例示するように、押出方向である長手方向に延びる線状または帯状であることを意味する。
【0016】
なお、図1図2では、発泡シート1として、発泡層2の片面に、着色部3が積層されたものを例に挙げて説明したが、図3に例示したように、発泡層2の表裏両面に着色部3が積層されていてもよい。また、図1図2では、着色部3は、表出する発泡層2の表面と面一に形成されているが、図4に例示したように、発泡層2の表面から凸状に突出して形成されていてもよい。また、図示しないが、着色部は発泡層の表面から凹んで形成されていてもよい。
【0017】
発泡層2の樹脂材料は、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物などが例示される。
【0018】
これらの樹脂に対し、所望の目的に応じて、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体やその水添物などの熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴムなどのゴムなどの重合体を40重量%以下の割合で含むものを使用することができる。
【0019】
着色部3は、着色剤が含有されており、かつ、発泡している。
【0020】
着色部3の樹脂材料も発泡層2を構成する樹脂材料と同様のものを使用することができる。
【0021】
着色剤としては、無機系、有機系の顔料または染料を用いることができる。例えば、有機顔料の例としては、モノアゾ系、クロモフタールレッドなどの縮合アゾ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系、複素環系、ペリノン系、キナクリドン系、ペリレン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、ニトロソ系、フタロシアニン顔料、有機蛍光顔料などが挙げられる。無機顔料の例としては酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤などが挙げられる。また、有機染料の例としてはアンスラキノン系、複素環系、ペリノン系、塩基性染料、酸性染料、媒染染料などが挙げられる。これらの中で、無機顔料を用いることで安価に製造できるため好ましい。また、着色剤は、二種以上を混合して使用することもできる。特に、食品容器に用いる場合には、上記の中からポリオレフィンなど衛生協議会登録品を選択して用いることが好ましい。
【0022】
なお、着色剤として酸化鉄、または酸化鉄を含有する茶系の着色剤、例えば酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタンの混合物からなる着色剤を用いた場合には、着色部3が茶系の色を呈し、木目調または柾目調の模様が形成されることから、より高級感溢れる容器などを成形できる発泡シート1を得ることができる。
【0023】
着色部3の総積層量は、発泡層2の表面に押出方向に着色部3の筋状模様が表出されるように適宜設定することができる。具体的には、着色部3を構成する着色ポリスチレン系樹脂の積層量は、発泡シート1の片面あたり3〜20g/mであることが好ましい。この着色部の積層量が上記範囲であれば、発泡シートの軽量性を維持しつつ、良好な外観となる。この観点から、着色ポリスチレン系樹脂の積層量は、より好ましくは5〜18g/m、さらに好ましくは7〜15g/mである。
【0024】
なお、着色部3の総積層量は、着色部の片面あたりの押出機吐出量をL(kg/hr)、 シート引取速度M(m/min)、シート全幅N(m)として、以下の式(1)により求めることができる。
【0025】
着色部3の総積層量(g/m)=L×10/(M×N×60)・・・(1)
隣り合う着色部3同士の間の平均中心間距離は、発泡シート1の押出方向に筋状模様が表出されるように、2〜30mmであることが好ましい。この範囲内であれば、外観に優れた発泡シート1となる。
【0026】
さらに、隣り合う着色部3の中心間距離の変動係数Cvは、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。なお、隣り合う着色部3の中心間距離の変動係数Cvとは、中心間距離の標準偏差(mm)を平均中心間距離成形体(mm)で割った値の百分率をいい、平均値からのばらつき度合を表す指標である。なお、中心間距離の標準偏差Vは次式(2)により求めるものとする。
V={Σ(Ti−Tav)/(n−1)}1/2(2)
上記(2)式においてTiは個々の中心間距離の測定値を、Tavは前記平均中心間距離を、nは測定数をそれぞれ表し、Σは個々の測定値について計算した(Ti−Tav)を全て足し算することを示す。
【0027】
変動係数Cvは下記(3)式によって求められる。
Cv(%)=(V/Tav)×100 (3)
また、厚みムラがなく、均質な発泡シート1とするため、隣り合う着色部3の中心間距離において、その最大値と最小値の関係は、最大値/最小値≦7であることが好ましく、最大値/最小値≦6であることがより好ましく、最大値/最小値≦5であることがさらに好ましい。
【0028】
発泡層2および着色部3を含む発泡シート1全体の見掛け密度は0.05〜0.30g/cmである。発泡シート1全体見掛け密度が低すぎる場合には、熱成形用発泡シートとしての、強度を維持することが困難となるおそれがある。この観点から、発泡シート1全体の見掛け密度の下限は、0.055g/cm以上であることが好ましく、0.06g/cm以上であることがより好ましい。
【0029】
一方、発泡シート1全体の見掛け密度が高すぎる場合には、成形体の軽量性を維持することが困難となるおそれがある。この観点から発泡シート1全体の見掛け密度の上限は、0.25g/cm以下であることが好ましく、0.20g/cm以下であることがより好ましい。なお、本発明では、発泡シートの総坪量を発泡シートの厚みで割算し、[g/cm]に単位換算した値を発泡シート1全体の見掛け密度とする。
【0030】
さらに、発泡シート1は、発泡シート1全体の見掛け密度(D1)に対する、着色部3が積層された面側の表面から厚み方向に0.2mmまでの表層部分Sの見掛け密度の平均値(D2)の比(D2/D1)は、1.5〜2.4である。この見掛け密度の比(D2/D1)が小さすぎる場合には、発泡シート1の外観が悪化するだけではなく、その製造自体が困難となるおそれがある。また、この見掛け密度の比(D2/D1)が大きすぎる場合には、成形体が撓んだ際に割れやすくなるおそれがある。この観点から、見掛け密度の比(D2/D1)は、1.60〜2.35の範囲であることがより好ましい。この発泡シート1は、上記見掛け密度の比(D2/D1)であるため、優れた外観、軽量性、熱成形性を維持しつつも、表層に応力が集中し難いため、成形体が大きく撓んだ際に割れにくいものとなると考えられる。このため、この発泡シート1は、例えば木目調の、高級感溢れる、トレイ容器、即席麺容器、弁当容器、納豆容器や丼容器などの熱成形用原反シートとして広くその需要が見込まれる。
【0031】
見掛け密度の比(D2/D1)の調整方法としては、例えば、着色部3を発泡させ、その際に着色部3に添加する気泡調整剤の量や発泡剤の量を調整することにより、所望の見掛け密度の比(D2/D1)とする方法が挙げられる。
【0032】
また、この表層部分の見掛け密度の平均値(D2)は、0.20〜0.32g/cmであることが好ましい。上記範囲であると発泡シートの外観に優れ、成形体を撓ませた際に特に割れにくい発泡シートとなる。この観点から、表層部分の見掛け密度の平均値(D2)は、より好ましくは0.21〜0.31g/cmであり、さらに好ましくは0.22〜0.30g/cmである。
【0033】
なお、表層見掛け密度(着色部3が積層された面側の表面から厚み方向に0.2mmまでの表層部分Sの見掛け密度)の測定は、次のように行なうことができる。発泡シートの表面から0.2mmまでの部分をスライスし、幅5mm×長さ20mmの試験片に切りそろえるとともに、この試験片の重量と厚みをゲージで測定する。試験片の重量を試験片の体積で割算し、単位換算して試験片の見掛け密度を求める。上記測定を、発泡シート1の幅方向における10箇所以上について行い、それらの算術平均値の表層見掛け密度とする。
【0034】
発泡シート1の厚みは1〜3mmである。発泡シートの厚みが薄すぎる場合には、剛性の低いものとなり、容器などとして使用できないおそれがある。一方、発泡シート1の厚みが厚すぎる場合には、金型再現性が低下するなどの熱成形が難しくなるおそれがある。上記観点から、発泡シートの厚みは1.2〜2.8mmが好ましく、1.5〜2.5mmがより好ましい。
【0035】
発泡シート1の厚みの測定方法は次のとおりである。発泡シートの全幅にわたって等間隔に10箇所以上の地点において発泡シートの厚みを測定し、それらの厚みの算術平均値を発泡シートの厚みとする。
【0036】
発泡シート1の総坪量は特に限定されないが、例えば、70〜600g/mの範囲を例示することができる。この範囲内であれば、熱成形に適し、かつ軽量性に優れる発泡シート1となる。総坪量は、100〜500g/mがより好ましく、120〜400g/mが更に好ましい。
【0037】
発泡シート1の総坪量の測定方法は次のとおりである。まず、発泡シート全幅に亘って所定の幅(例えば250mm)の矩形状の試験片を切り出す。試験片の重量(g)を試験片の面積(シート幅(mm)×250mm)で割り算し、1m当たりの重量(g)に換算し、これを積層発泡シートの坪量(g/m)とする。
【0038】
次に、本発明の発泡シートを環状ダイを用いて製造する方法の一実施形態について説明する。発泡シートの製造方法は、ポリスチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物に、ポリスチレン系樹脂(B)、着色剤、気泡調整剤と物理発泡剤とを混練してなる着色部形成用樹脂溶融物を、筋状に複数積層して共押出して発泡シートを得る工程を含むことが好ましい。
【0039】
この場合、各着色部の押出方向1m当たりの積層樹脂重量を着色部1本当たり0.01〜0.6g/mとして、発泡層形成用樹脂溶融物の少なくとも片面に着色部形成用樹脂溶融物による着色部を筋状に複数積層することが好ましい。
【0040】
発泡層形成用樹脂溶融物は、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂(A)、その他必要に応じて添加される気泡調整剤などの添加剤を第1押出機に供給して、加熱、混練し、物理発泡剤を圧入して、さらに混練して得ることができる。
【0041】
ポリスチレン系樹脂(A)は、上述した樹脂材料を使用することができる。ポリスチレン系樹脂(A)の溶融粘度η2は、800〜2000Pa・sが好ましく、1000〜1700Pa・sがより好ましく、1200〜1500Pa・sがさらに好ましい。この範囲内であれば、良好な発泡層を形成することができる。なお、該溶融粘度η2は200℃、剪断速度100sec−1における値である。
【0042】
物理発泡剤としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタンなどの炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル、などの有機物理発泡剤、窒素、二酸化炭素などの無機系物理発泡剤が挙げられる。
【0043】
このような物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。物理発泡剤は、上記したなかでもポリスチレン系樹脂(A)との相溶性、発泡効率の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、なかでもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0044】
なお、物理発泡剤の添加量は、発泡シートの見掛け密度などに対応して、適宜調整されるものであるが、概ね、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂(A)に対して0.1〜1.4mol/kgであることが好ましく、0.2〜1.3mol/kgであることがより好ましく、0.3〜1.2mol/kgであることがさらに好ましい。
【0045】
気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系の気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂などのホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0046】
また有機系の気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウムなどを組み合わせた化学発泡剤なども気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
また、発泡層形成用樹脂溶融物における気泡調整剤の添加量は、発泡層を構成する樹脂材料100重量部あたり、0.05重量部以上10重量部以下、好ましくは0.2重量部以上5重量部以下である。
【0048】
発泡層形成用樹脂溶融物には各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、着色剤などが挙げられる。なお、着色剤を配合する場合には、着色部よりも淡色となるように、着色剤の種類、配合量を調整することが、発泡シートの質感を向上させる観点から好ましい。
【0049】
着色部を構成するポリスチレン系樹脂(B)、着色剤、気泡調整剤その他必要に応じて添加される添加剤などを第2押出機に供給し、加熱混練し、物理発泡剤を添加しさらに混練して、着色部形成用樹脂溶融物とする。
【0050】
着色部を構成するポリスチレン樹脂(B)は、上述の樹脂材料を使用することができる。着色部を構成するポリスチレン樹脂(B)は、発泡層の少なくとも片面に、幅が狭く均一に筋状の着色部が積層されるように、例えば、溶融粘度η1を600〜1400Pa・sとすることが好ましく、より好ましくは700〜1300Pa・s、更に好ましくは800〜1200Pa・sのものを用いることが望ましい。なお、該溶融粘度η1は200℃、剪断速度100sec−1における値である。
【0051】
着色部形成用樹脂溶融物には、上述の着色剤が配合される。なお、着色剤はマスターバッチとして添加することができる。また、着色部形成用樹脂溶融物に配合される気泡調整剤は、発泡層形成用樹脂溶融物に配合されるものと同様のものを使用することができる。
【0052】
さらに、着色部形成用樹脂溶融物と発泡層形成用樹脂溶融物とを共押出する際は、着色部形成用樹脂溶融物にも発泡剤を添加する。
【0053】
着色部形成用樹脂溶融物に配合される物理発泡剤としては、発泡層形成用樹脂溶融物に配合される物理発泡剤と同様のものが用いられる。
【0054】
物理発泡剤は、着色部形成用樹脂溶融物における樹脂材料と着色剤の合計量に対して、0.2mol/kg〜1.8mol/kg添加することが好ましく、0.3mol/kg〜1.6mol/kg添加することがより好ましく、0.5mol/kg〜1.4mol/kg添加することがさらに好ましい。この範囲内であれば、良好な着色部形成用樹脂溶融物となる。
【0055】
次に、発泡層形成用樹脂溶融物と着色部形成用樹脂溶融物とを、それぞれ適正温度に調整してから、共押出用の環状ダイに導入する。ダイ内で発泡層形成用樹脂溶融物の外周面上に、孔状の出口形状を有する多数の内部リップを通して着色部形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状となるように合流積層させてから、該積層物の共押出を行うとともに発泡層形成用樹脂および着色部形成用樹脂溶融物を発泡させることにより、発泡層の表面に、発泡した筋状の着色部による筋状模様が形成された発泡シートを製造する。
【0056】
なお、共押出法では、発泡層形成用樹脂溶融物と着色部形成用樹脂溶融物との温度をできるだけ近づけた方がより独立気泡率の高い発泡シートが得られることから好ましい。
【0057】
発泡層形成用樹脂溶融物に、着色部形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に積層し、共押出する際には、着色部の総積層量が留意される。
【0058】
すなわち、発泡層形成用樹脂溶融物に、着色部形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に複数積層し共押出する際に、着色部の総積層樹脂量を3〜30g/mとすることが好ましく、5〜25g/mとすることがより好ましく、7〜20g/mとすることがさらに好ましい。着色部の総樹脂量が上記範囲である場合には、成形体を撓ませた際の割れがより効果的に抑制される。
【0059】
なお、環状ダイとしては、ダイ内流路の円周上に配された孔状の出口形状を有する多数の内部リップを介して、着色部形成用樹脂溶融物が発泡層形成用樹脂溶融物の外周面に筋状に積層できる構造のものを用いることが好ましい。
【0060】
また、発泡層形成用樹脂溶融物に、着色部形成用樹脂溶融物を押出方向に筋状に多数積層し共押出した後、環状ダイから押出された筒状発泡体は、その内面を円柱状冷却装置上に通過させて冷却し、筒状発泡体を切り開いてシート状とすることにより、熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることができる。
【0061】
本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは、以上の実施形態に限定されることはない。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートを実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートは実施例に限定されるものではない。
【0063】
<1>製造装置
製造装置として、第1押出機として、バレル内径90mmの押出機と、この押出機の下流側に接続されたバレル内径120mmの押出機とからなるタンデム型の発泡層形成用押出機を用い、押出機の出口に共押出用環状ダイ(リップ径67mm、リップ間隙0.6mm)を取付け、さらに該共押出用環状ダイに着色樹脂形成用第2押出機(内径50mm)を連結させた共押出装置を用いた。
【0064】
<2>発泡層形成用樹脂溶融物
ポリスチレン系樹脂、気泡調整剤としてタルクなどの原料を、表1、表2に示した配合(実施例1〜7、比較例1〜8)で第1押出機に供給して加熱、混練し、これに物理発泡剤を表中に示す量(ポリスチレン系樹脂1kgに対するモル数)圧入し、第1押出機中で発泡に適した樹脂温度に調整して、発泡層形成用樹脂溶融物とし、共押出用環状ダイ中に導入した。
【0065】
<3>着色部形成用樹脂溶融物
ポリスチレン系樹脂、酸化鉄を主成分とする茶色系無機顔料及び気泡調整剤としてタルクなどの原料を、表1、表2に示した配合(実施例1〜7、比較例1〜8)で第2押出機に供給して、加熱、混練した後、物理発泡剤を表に示す量(ポリスチレン系樹脂と着色剤との合計1kgに対するモル数)圧入し、第2押出機中で発泡に適した樹脂温度に調整して、着色樹脂形成用樹脂溶融物とし、共押出用環状ダイに導入した。
【0066】
<4>着色部積層方法
共押出用環状ダイ中で、発泡層形成用樹脂溶融物と、発泡層流路の円周外縁上に幅(円周方向)0.8mm、高さ(幅方向と直行する方向)1.9mmの断面矩形状リップが平均中心間距離2.0mmで163箇所配置された孔状の出口を有する内部リップから間隔を隔て押出された着色樹脂形成用樹脂溶融物とを合流させて、発泡層形成用樹脂溶融物に着色樹脂形成用樹脂溶融物を筋状となるように積層してから筒状に共押出した後、270mmψマンドレル(ブローアップ比4)を通して引取り、切開いて発泡シートを得た(実施例1〜7、比較例1〜8)。
【0067】
<5>発泡層及び着色部を構成する原料ポリスチレン系樹脂は、以下のものを使用した。
PS(1):ポリスチレン(PSジャパン社製680、溶融粘度930PA・S)
PS(2):ポリスチレン(PSジャパン社製GX154、溶融粘度1430PA・S)
なお、ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、JIS K7199:1999に準拠し、キャピログラフ1D((株)東洋精機製作所製)の流動特性測定機を用いて、温度200℃、せん断速度100秒−1の条件で測定した値である。
【0068】
<6>評価方法
実施例1〜7、比較例1〜8の発泡シートの各特性などは以下のようにして測定評価を行った。
【0069】
(熱成形性)
熱成形性は以下の通り評価した。
○…成形性良好(成形不具合などなし)
×…成形体に成形不良が見られる(表面の裂け、または伸びムラあり)
なお、熱成形性は、次のようにして行った。浅野研究所製 品番FKS−0631−10の成形機を用いてマッチモールド真空成形により、ヒータ温度280℃、加熱時間15秒±2秒の条件において、サイズ縦115mm×横115mm×深さ40mm、スタック部分の側壁厚み2.1mm、積み高さ平均中心間距離8.6mmの角型容器用の金型を用いて、着色部が容器の外側となるようにして発泡シートの熱成形を行い、角型容器を得た。金型の上型と下型がつくる最小間隙はスタック部分の1.0mmとした。
【0070】
(外観評価)
発泡シートの外観評価は、以下の基準により行った。
◎…想定通りの筋状模様が形成されている。
○…わずかに濃淡差は小さくなるが、十分に筋状模様が形成されている。
×…濃淡差が小さく、筋状模様が形成されていない。
【0071】
(発泡シートの厚み)
発泡シートの厚みは、発泡シートを幅方向に沿って、一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に10点の地点について測定される厚み(mm)の算術平均値として求めた。
【0072】
(発泡シートの坪量)
発泡シート全幅に亘って250mm幅の矩形状の試験片を切り出し、試験片の重量(g)を試験片の面積(シート幅(mm)×250mm)で割り算し、1m当たりの積層発泡シートの重量(g)に換算することにより、発泡シートの坪量(g/m)を求めた。
【0073】
(発泡シート全体の見掛け密度D1)
発泡シートの坪量を発泡シートの厚みで割算し、[g/cm]に単位換算することにより、発泡シート全体の見掛け密度D1を求めた。
【0074】
(発泡シート表層部分の見掛け密度の平均値D2)
発泡シートの全幅にわたり、着色ポリスチレン系樹脂が形成された面側の無作為に選択した10箇所の表面側から切り出した5mm(幅方向)×20mm(流れ方向)×0.2mm(厚み方向)の試験片の重量を、試験片の外形寸法から求められる体積で除して各サンプルの見掛け密度を求め、得られた値の算術平均値D2を得た。
【0075】
(発泡シート全体の見掛け密度D1に対する、表層部分の見掛け密度の平均値D2の比(D2/D1)
見掛け密度の比(D2/D1)は、表層部分の見掛け密度の平均値D2を発泡シート全体の見掛け密度D1の平均値で除して求めた。
【0076】
(成形体割れ変位)
上記熱成形性の評価で得た成形体について、テンシロンRTCを用いて、速度30mm/minにて成形体の側面から圧力を加えて成形体を撓ませ、成形体が割れるまでの変位(mm)を計測した(N=5)。
【0077】
また、成形体割れ変位の評価基準は、
◎:17.0mm以上、○:16.5mm以上17.0mm未満、△:15.5mm以上16.5mm未満、×:15.5mm未満とした。
【0078】
<7>結果
結果を表1、表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
実施例1−7は、発泡シート全体の見掛け密度(D1)が0.05〜0.30g/cmであり、かつ、着色部が発泡しており、熱成形用発泡シート全体の見掛け密度D1に対する、着色ポリスチレン系樹脂が積層された面側の表面から厚み方向に0.2mmまでの表層部分の見掛け密度の平均値D2の比(D2/D1)が1.5〜2.4である。このため、外観性、成形性に優れ、得られた成形体の割れが抑制されていることが確認された。
【0081】
さらに、表層部分の見掛け密度の平均値(D2)が0.2〜0.32g/cmである実施例1−5は、より成形体の割れが抑制されていることが確認された。また、着色剤を含むポリスチレン系樹脂の総積層樹脂量が、発泡シートの片面あたり3〜20g/mである実施例1−4、6は、特に外観が良好であることが確認された。
【0082】
一方、見掛け密度の比(D2/D1)が2.4を超える比較例1−7は、成形体割れ変位の値が15.5mm以下であり不十分であった。また、見掛け密度の比(D2/D1)が1.5未満である比較例8は、得られた発泡シート自体に割れが生じてしまっていた。
【0083】
以上の結果より、実施例1−7の発泡シートは、表面幅方向に筋状の着色樹脂が形成され、木目調の外観に優れ、熱成形性に優れ、成形体も割れにくい良好な発泡シートであることが確認された。
【符号の説明】
【0084】
1 熱成形用発泡シート
2 発泡層
3 着色部
図1
図2
図3
図4