(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1Aに示すように、積層板10とキャリア付導体箔15を準備する。積層板10は、絶縁層11、内部導体層12、及び絶縁層13がこの順番に積み重ねられた積層構造を含む。絶縁層11、13には、例えばエポキシ等の絶縁性樹脂が用いられる。内部導体層12には、例えば銅箔が用いられる。内部導体層12は、配線パターン、グランドパターン、電源線パターン等で構成される。一例として、内部導体層12の厚さは5μm以上10μm以下であり、絶縁層13の厚さは15μm以上25μm以下である。
【0016】
キャリア付導体箔15は、表層導体層16、剥離層17、及びキャリア導体箔18がこの順番に積み重ねられた積層構造を有する。表層導体層16及びキャリア導体箔18には、例えば銅箔が用いられる。一例として、表層導体層16の厚さは2μm以上5μm以下であり、キャリア導体箔18の厚さは約18μmである。
【0017】
積層板10の絶縁層13と、キャリア付導体箔15の表層導体層16とを対向させて、積層板10とキャリア付導体箔15とを熱圧着する。
【0018】
図1Bに示すように、剥離層17及びキャリア導体箔18を、表層導体層16から剥離する。絶縁層13の表面に表層導体層16が残る。ここまでの工程で、内部導体層12、絶縁層13、及び表層導体層16がこの順番に積み重ねられた積層構造を含む基板20が得られる。
【0019】
図1Cに示すように、表層導体層16の上に表層膜25を形成する。表層膜25は、形成すべきビアホールが分布する領域に配置される。表層膜25には、赤外域の波長の光を吸収する樹脂、たとえばエポキシ樹脂が用いられる。表層膜25は、酸化銅等の熱伝導率の高い材料の紛体を含んでもよい。表層膜25の厚さは、例えば2μm以上10μm以下である。以下、表層膜25の形成方法について説明する。
【0020】
インクジェットヘッド50から基板20に向けて、表層膜25の液状材料26を液滴化して吐出する。液状材料26には、光硬化性、例えば紫外線硬化性の樹脂が用いられる。表層導体層16の表面に塗布された液状材料に、硬化用光源51から硬化用の光52、例えば紫外線を照射する。表層導体層16に塗布された液状材料26が硬化することにより、表層膜25が形成される。
【0021】
液状材料26の塗布機構として、インクジェットヘッド50以外のものを採用してもよい。例えば、塗布機構として、ディスペンサ、スピンコータ等を採用することができる。
【0022】
図1Dに示すように、ビアホールを形成すべき位置に、赤外域のレーザビーム55を入射させる。レーザビーム55の光源として、例えば炭酸ガスレーザ光源が用いられる。表層膜25にレーザビーム55が入射することにより、表層膜25が加熱される。この熱が表層導体層16に伝わることにより、表層導体層16が除去され、開口30が形成される。開口30の底に露出した絶縁層13も、レーザビーム55の入射によって除去されることにより、ビアホール31が形成される。ビアホール31は、表層導体層16及び絶縁層13を貫通し、内部導体層12に達する。レーザビーム55はパルスレーザビームである。各レーザパルスのパルスエネルギを最適化することにより、単パルスまたは複数パルスでビアホール31が形成される。
【0023】
図1Eに示すように、基板20に複数のビアホール31が形成される。ビアホール31が形成されていない領域には、表層膜25が残る。
【0024】
図1Fに示すように、ビアホール31を形成した後、デスミア処理を行うことにより、表層導体層16の上に残っていた表層膜25(
図1E)を除去する。デスミア処理には、例えば過マンガン酸塩を用いることができる。このデスミア処理により、ビアホール31の底面に残っている樹脂残渣も取り除かれる。
【0025】
図1Gに示すように、ビア導体34を、例えばセミアディティブ法を用いて形成する。ビア導体34は、絶縁層13上の導体パターン(例えばランド等)と内部導体層12とを接続する。ビア導体34が形成された基板20は、例えばインターポーザとして利用される。
【0026】
図2Aに、
図1Fに示した製造段階における基板20の平面図の一例を示す。基板20に複数のビアホール31が形成されている。ビアホール31以外の領域には、表層導体層16が残っている。
【0027】
図2Bに、
図1Cに示した表層膜25を形成した後の基板20の平面図を示す。基板20の表層導体層16の一部の領域に表層膜25が形成されている。この段階ではビアホール31(
図2A)は形成されていないが、ビアホール31と表層膜25との相対位置関係を示すために、ビアホール31を破線で示している。表層膜25を形成する領域(以下、塗布領域という。)は、形成すべきビアホール31の分布に基づいて決定される。
図2Aに示した例では、ビアホール31が、正方形または長方形の内部に、ほぼ均等に規則的に分布している。塗布領域は、ビアホール31が規則的に分布している領域を内包するように決められる。
【0028】
図3Aに、
図1Fに示した製造段階における基板20の平面図の他の例を示す。ビアホール31の分布領域が、正方形または長方形の非分布領域32を取り囲む。非分布領域32にはビアホール31が配置されていない。
【0029】
図3Bに、
図3Aのビアホール31の分布に対応する表層膜25が形成された基板20の平面図を示す。表層膜25は、非分布領域32(
図3A)に対応した開口27が内部に設けられた正方形または長方形の平面形状を有する。ビアホール31の正方形または長方形の分布領域の外周線よりもやや外側に、表層膜25の外周線が配置される。非分布領域32(
図3A)の外周線よりもやや内側に、表層膜25の内周線が配置される。
【0030】
図2A、
図2Bの例、及び
図3A、
図3Bの例のいずれにおいても、ビアホール31が形成される箇所、すなわちレーザビーム55(
図1D)が入射する箇所には、表層膜25が形成される。
図3Bに示したように、ビアホール31の非分布領域32に対応して、表層膜25に開口27を設けることにより、表層膜25の液状材料の使用量を少なくすることができる。
【0031】
次に、
図4、
図5A、
図5Bを参照して、上記実施例の作用及び効果について説明する。
【0032】
図4に、銅及びエポキシの光吸収率のスペクトルを示す。電解研磨された銅、粗化処理された銅、及び黒化処理された銅の光吸収率を、それぞれ太い破線、細い実線、細い破線で示す。エポキシの光吸収率を太い実線で示す。炭酸ガスレーザの波長は、9.2μmから10.8μmの範囲内である。炭酸ガスレーザの波長域において、銅の光吸収率が極めて低いことがわかる。このため、炭酸ガスレーザを用いた銅の加工は困難である。エポキシの光吸収率は、炭酸ガスレーザの波長域において十分高い。
【0033】
実施例においては、
図1Dに示した工程において、レーザビーム55が表層膜25で吸収される。表層膜25には、炭酸ガスレーザの波長域における光吸収率が十分高い材料、たとえばエポキシ等の樹脂を用いることが好ましい。表層膜25がレーザビーム55によって加熱される。この熱が表層導体層16に伝達されることにより、表層導体層16がアブレーションされて、開口30(
図1D)が形成される。開口30が形成されると、絶縁層13がレーザビーム55により加熱され、ビアホール31が形成される。
【0034】
表層膜25で生成された熱を表層導体層16に伝達しやすくするために、表層膜25に、高い熱伝導率を有する材料の紛体を混入させてもよい。表層膜25に混入させ紛体として、例えば酸化銅を用いることができる。
【0035】
図5Aに、表層膜25とレーザビーム55(
図1D)のビームスポット56との位置関係の一例を表した平面図を示す。
図5Bに、
図5Aの一点鎖線5B−5Bにおける断面図を示す。平面視において、ビームスポット56は表層膜25の内部に位置する。ビアホール31の位置及び平断面の形状は、ビームスポット56の位置及び形状によって決まり、表層膜25の位置及び平面形状に依存しない。このため、表層膜25の位置及び平面形状には高い精度が要求されない。
【0036】
ビームスポット56の形状は、インクジェット法で形成される表層膜25の形状に比べて、より真円に近づけることができる。このため、表層膜25の平面形状によってビアホール31の平断面の形状が決まる場合に比べて、ビアホール31の平断面を、より真円に近づけることができる。
【0037】
図6A〜
図6Fを参照して、上記実施例による方法でビアホールを形成する評価実験を行った結果について説明する。
図6A、
図6C、及び
図6Eは、ビアホールを形成した後の基板の表面の写真をスケッチした図であり、
図6B、
図6D、及び
図6Fは、それぞれ
図6Aの一点鎖線6B−6B、
図6Cの一点鎖線6D−6D、及び
図6Eの一点鎖線6F−6Fにおける断面図を示す。
【0038】
評価実験に用いた基板は、
図6B、
図6D、及び
図6Fに示すように、絶縁層11、内部導体層12、絶縁層13、及び表層導体層16を含む。内部導体層12及び表層導体層16には銅箔が用いられている。内部導体層12の厚さは20μmであり、表層導体層16の厚さは3μmである。絶縁層11、13にはエポキシ樹脂が用いられている。絶縁層13の厚さは20μmである。加工用のレーザとして、炭酸ガスレーザを用いた。基板に入射するレーザビームは、ガウシアンビームである。
【0039】
レーザビームの入射条件は下記の通りである。
・パルスエネルギ 4mJ
・パルス幅 4.3μs
・ビームスポット直径(半値全幅) 60μm
・入射ショット数 1ショット
【0040】
図6A及び
図6Bは、表層膜25(
図1D)を形成することなく、表層導体層16にレーザビームを直接入射させた試料を示す。
図6C及び
図6Dに示した試料においては、表層膜25の厚さが2μmから7μmの範囲でばらついていた。
図6E及び
図6Fに示した試料においては、表層膜25の厚さが8μmから10μmの範囲でばらついていた。
【0041】
図6A及び
図6Bに示すように、表層膜25を形成していない試料に形成されたビアホール31の開口部の直径は約35μmであった。これに対し、
図6C及び
図6Dに示すように、厚さ2μm〜7μmの範囲の表層膜25を形成した試料に形成されたビアホール31の開口部直径は約60μmであった。
図6E及び
図6Fに示すように、厚さ8μm〜10μmの範囲の表層膜25を形成した試料に形成されたビアホール31の開口部は、
図6C及び
図6Dに示した試料に形成されたビアホール31の開口部より小さかったが、
図6A〜
図6Bに示した試料に形成されたビアホール31の開口部より大きかった。
【0042】
図6C及び
図6Dに示した試料、及び
図6E及び
図6Fに示した試料においては、ビアホール31の開口部の周囲の表層膜25が除去されて、ビアホール31の周囲の表層導体層16の上面が露出した。表層導体層16の上面のうち露出した領域は、レーザビームのビームプロファイルの裾野の部分に相当する。この裾野の部分のエネルギ密度は、表層膜25を除去するのに十分な大きさであるが、表層導体層16を除去し得るほどの高温に到達させることができない程度の大きさである。その結果、表層導体層16の上面が露出したと考えられる。
【0043】
上記評価実験から、表層膜25(
図6D、
図6F)を形成すると、表層膜25の形成しない場合に比べて、レーザ照射条件が同一であっても、大きなビアホール31が形成されることがわかる。言い換えると、表層膜25を形成することにより、ビアホール31を形成するためのパルスエネルギ密度を低くすることができる。これは、表層膜25がレーザビームを吸収することにより、レーザエネルギの利用効率が高くなるためである。
【0044】
実施例においては、表層膜25(
図1D)を形成することにより、ビアホール31を形成するために必要なパルスエネルギ密度を低くすることができる。このため、ビアホール31の底に露出した内部導体層12(
図1D)の損傷を軽減することができる。また、ビアホール31の内壁形状が樽状になることを防止することができる。これにより、ビア導体34を形成する工程の信頼性を高めることができる。
【0045】
次に、
図7を参照して実施例によるレーザ加工装置について説明する。
【0046】
図7に、実施例によるレーザ加工装置の概略図を示す。繰り出しロール81から積層板10(
図1A)が繰り出され、巻き取りロール84に巻き取られる。繰り出しロール81から繰り出されて、巻き取りロール84に巻き取られるまでの間に、積層板10が表層導体層圧着部90、表層膜形成部91、及びレーザ加工部92を通過する。
【0047】
表層導体層圧着部90は、繰り出しロール82、熱圧着装置85、及び巻き取りロール83を含む。繰り出しロール82は、キャリア付導体箔15(
図1A)を繰り出す。繰り出しロール82から繰り出されたキャリア付導体箔15の表層導体層16(
図1A)が積層板10の絶縁層13(
図1A)に密着する。キャリア付導体箔15が積層板10に密着した状態で熱圧着装置85を通過することにより、キャリア付導体箔15の表層導体層16が積層板10の絶縁層13に圧着される。
【0048】
キャリア付導体箔15のキャリア導体箔18及び剥離層17(
図1B)が、表層導体層16から剥離されて巻き取りロール83に巻き取られる。表層導体層16は積層板10に圧着されたままである。ここまでの処理で、積層板10と表層導体層16とを含む基板20(
図1B)が得られる。
【0049】
表層膜形成部91は、インクジェットヘッド50(
図1C)及び硬化用光源51(
図1C)を含む。インクジェットヘッド50から、液状材料が吐出されることにより、液状材料が基板20に塗布される。基板20に塗布された液状材料に、硬化用光源51からの光が照射されることにより、液状材料が硬化して表層膜25が形成される。
【0050】
レーザ加工部92は、レーザ光源60及び導光光学系61を含む。導光光学系61は、ビームエキスパンダ、光学マスク、フィールドレンズ、ビーム走査器62、及びレンズ63等を含む。レーザ光源60として、例えば炭酸ガスレーザ光源が用いられる。レーザ光源60から出力されたパルスレーザビームが、ビーム走査器62及びレンズ63を経由して基板20に入射する。ビーム走査器62は、レーザビームを二次元方向に走査する。レンズ63として、例えばfθレンズが用いられる。レンズ63は、レーザビームを基板20の表面に集光する。レーザビームが基板20に入射することにより、ビアホール31(
図1D)が形成される。
【0051】
制御装置70が、塗布領域算出部71、インク吐出制御部72、硬化用光源制御部73、ビーム走査器制御部74、レーザ出力制御部75を含む。制御装置70の記憶装置78に、ビアホール位置データ76及び塗布領域定義データ77を格納する領域が確保されている。
【0052】
塗布領域算出部71は、ビアホール位置データ76に基づいて、表層膜25(
図2B、
図3B)を形成すべき塗布領域を決定する。決定された塗布領域を定義する情報が塗布領域定義データ77として記憶装置に格納される。
【0053】
インク吐出制御部72は、塗布領域定義データ77に基づいてインクジェットヘッド50を制御する。これにより、塗布領域に液状材料が塗布される。硬化用光源制御部73が硬化用光源51のオンオフを制御する。ビーム走査器制御部74及びレーザ出力制御部75は、それぞれビアホール位置データ76に基づいて、ビーム走査器62及びレーザ光源60を制御する。
図7に示したレーザ加工装置により、
図1Bのキャリア付導体箔15を積層板10に圧着する工程から、
図1Dのビアホール31を形成する工程までを実行することができる。
【0054】
次に、
図8A〜
図8Cを参照して、他の実施例による基板製造方法について説明する。以下、
図1A〜
図1Gに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0055】
図8Aに示すように、絶縁層11、内部導体層12、絶縁層13、及び表層導体層16を含む基板20の表面に、表層膜25を形成する。
図1Cに示した実施例では、表層導体層16が基板20の表面のほぼ全域に配置されていたが、本実施例においては、表層導体層16が既にパターニングされている。
【0056】
図8Bに示すように、表層膜25にレーザビーム55を入射させることにより、ビアホール31を形成する。レーザビーム55は、ガウシアンビームである。ガウシアン形状のビームプロファイルの裾野の部分に対応する領域の表層膜25が除去され、表層導体層16の上面が露出する。ビーム断面の中心近傍の領域においては、表層導体層16及び絶縁層13が除去されてビアホール31が形成される。
【0057】
図8Cに示すように、ビアホール31内にビア導体34を形成する。ビア導体34は、ビアホール31が形成された位置の内部導体層12と表層導体層16とを接続する。表層膜25は、そのまま残留して保護膜として利用される。
【0058】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。