特許第6501689号(P6501689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6501689ジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501689
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/18 20060101AFI20190408BHJP
   C09B 11/04 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   C09B11/18
   C09B11/04
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-195563(P2015-195563)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-66317(P2017-66317A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515023464
【氏名又は名称】小畑産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭弥
(72)【発明者】
【氏名】▲圓▼井 邦昌
(72)【発明者】
【氏名】植嶌 陸男
(72)【発明者】
【氏名】野元 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 詣二
(72)【発明者】
【氏名】西ヶ花 完
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−290146(JP,A)
【文献】 特公平02−030344(JP,B2)
【文献】 特開昭56−057848(JP,A)
【文献】 特開平06−136277(JP,A)
【文献】 特開平06−065513(JP,A)
【文献】 特開平06−025544(JP,A)
【文献】 特開平10−298443(JP,A)
【文献】 特開2014−24906(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1793099(CN,A)
【文献】 Zabat, N.; Abbessi, M.,Elimination of the Methyl Blue from wastewater by advanced oxidation process in the presence of an heteropolyanion of Dawson type as a catalyst,Research on Chemical Intermediates,2015年,41,1691-1702
【文献】 奥原敏夫 他,ヘテロポリ酸の基本触媒機能と有機合成反応への応用,有機合成化学協会誌,1993年,第51巻第2号,56-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
〔式中、R,R,R,Rは相互に独立しており、水素原子、C〜Cのアルキル基、フェニル基又はC〜Cのアルキル基を有するフェニル基であり、R,Rは、水素原子又はC〜Cのアルキル基であり、Xは水素原子又はスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくはC〜Cのアルキル基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基である〕であらわされるロイコ化合物を用いて、
1価又は2価の銅化合物と、ヘテロポリ酸の存在下において、
過酸化水素、有機ヒドロペルオキシ化合物、ペルカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの酸化剤により酸化させることを特徴とする
【化2】
〔式中、R,R,R,Rは相互に独立しており、水素原子、C〜Cのアルキル基、フェニル基又はC〜Cのアルキル基を有するフェニル基であり、R,Rは、水素原子又はC〜Cのアルキル基であり、Xは水素原子又はスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくはC〜Cのアルキル基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基である〕であらわされるジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法。
【請求項2】
前記銅化合物が、酢酸銅、硫酸銅、炭酸銅、水酸化銅、塩化銅、硝酸銅、酸化銅から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法。
【請求項3】
前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリール及びトリアリールメタン染料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業上ロイコ化合物から酸化してジアリール及びトリアリールメタン系化合物の合成染料を製造するときにおいて、酸化触媒として酸化鉛や重クロム酸塩などの重金属が用いられてきた。
【0003】
そして、ジアリール及びトリアリールメタン染料を製造するときにおいて、種々の酸化触媒、さらにはその補助剤を添加して製造する方法が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロイコ酸化合物からトリアリールメタン染料を製造するために、空気又は酸素を供給して加圧下で、置換基を有するベンゾキノン、バナジウム触媒、モリブデン酸塩触媒を用いる製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ロイコ酸化合物からトリアリールメタン染料を製造するために、酸化剤として過酸化水素などを用い、酸素移動触媒として鉄などの重金属イオン及びテトラアザ[14]アヌレン、ポルフィリン、フタロシアニンなどの包接化合物との錯体を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−30344号公報
【特許文献2】特開平6−25544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来工業上用いられてきた酸化鉛や重クロム酸塩の酸化触媒は有害性が高く、土壌や地下水に混ざると生態系に影響しひいては人体に悪影響を及ぼすことから、それら酸化触媒が含まれる廃液の処理を厳重に管理していた。しかし高コストであった。一方、電子・電気機器における特定有害物質の使用制限を定めるRoHS指令において、鉛、六価クロムが挙げられている。製造されたジアリール及びトリアリールメタン染料には鉛とかクロムが残留しており、RoHSの規制をクリアした製品にするのは、技術的にも経済的にも非常に難しいのが現状である。
【0008】
また、特許文献1に記載の製造方法では、酸化剤として空気中に含まれる酸素を用いており、反応の効率を向上させるために、大気圧より加圧した状態で反応をさせており、製造設備に耐圧性の反応釜、安全装置等を導入しなければならず安全性だけでなく費用も嵩むことから好ましくはなかった。また、大気圧下でも反応させられる旨も開示されているが、反応の効率が落ちる為により長くの反応時間が掛かり好ましくなく、現に実施例においてはいずれも加圧状態での反応しか挙げられていない。
【0009】
さらに、特許文献2に記載の製造方法では、酸素移動触媒として金属錯体を用いているが、それら金属錯体は芳香族を含むなど複数のπ電子が非局在化している化合物であるため、製造されたジアリール及びトリアリールメタン染料との親和性が高く精密に精製するなどして金属錯体を除去しなければならないという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、鉛や六価クロムを使用せずにRoHS指令にも対応することでき、大気圧下でも反応が進行し、さらに、精密な精製工程を経なくても製造することができる新規なジアリール及びトリアリールメタン染料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕すなわち、本発明は、
【化1】
〔式中、R,R,R,Rは相互に独立しており、水素原子、C〜Cのアルキル基、フェニル基又はC〜Cのアルキル基を有するフェニル基であり、R,Rは、水素原子又はC〜Cのアルキル基であり、Xは水素原子又はスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくはC〜Cのアルキル基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基である〕であらわされるロイコ化合物を用いて、
1価又は2価の銅化合物と、ヘテロポリ酸の存在下において、
過酸化水素、有機ヒドロペルオキシ化合物、ペルカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの酸化剤により酸化させることを特徴とする
【化2】
〔式中、R,R,R,Rは相互に独立しており、水素原子、C〜Cのアルキル基、フェニル基又はC〜Cのアルキル基を有するフェニル基であり、R,Rは、水素原子又はC〜Cのアルキル基であり、Xは水素原子又はスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくはC〜Cのアルキル基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基である〕であらわされるジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法である。
【0012】
〔2〕そして、前記銅化合物が、酢酸銅、硫酸銅、炭酸銅、水酸化銅、塩化銅、硝酸銅、酸化銅から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする前記〔1〕に記載のジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法である。
【0013】
〔3〕そして、前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉛や六価クロムを使用せずにRoHS指令にも対応することでき、大気圧下でも反応が進行し、さらに、精密な精製工程を経なくても製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法に関する実施の形態について、詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。また、数値範囲を表す表記は上限と下限を含むものである。
【0016】
本発明で用いられる
【化1】
〔式中、R,R,R,Rは相互に独立しており、水素原子、C〜Cのアルキル基、フェニル基又はC〜Cのアルキル基を有するフェニル基であり、R,Rは、水素原子又はC〜Cのアルキル基であり、Xは水素原子又はスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくはC〜Cのアルキル基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基である〕であらわされるロイコ化合物は、対応する酸化物の還元体であり、2個又は3個のアリール基を有するメタン化合物である。各置換基R,R,R,Rは相互に独立しており、それぞれ水素原子、直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基や、直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜8のアルキル基により置換されたフェニル基である。各置換基R,Rは、水素原子や、直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜8のアルキル基である。そして、Xが水素原子であるとロイコ化合物はジアリールメタン染料であり、Xがスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくは直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜8のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、若しくはスルホン酸基、カルボン酸基、水酸基若しくは直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜8のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基であるとロイコ化合物はトアリールメタン染料である。ロイコ化合物としては、アシッドブルー1、アシッドブルー9、アシッドブルー3、キシレンシアノールFFなどの還元体が好ましい。
【0017】
また、Xがスルホン酸基、カルボン酸基で置換されているフェニル基、若しくはスルホン酸基、カルボン酸基で置換されているナフチル基であるロイコ化合物は、そのままで製造に使用することもできるが、反応性を向上させるために、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの塩基性化合物と攪拌混合して処理し、pHが6〜8の中性付近となるようにあらかじめ調整しておくことが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる1価又は2価の銅化合物は、酸化反応を促進するために触媒である。銅化合物として、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、塩化銅(I)、硝酸銅(II)、酸化銅(II)、酸化銅(I)などから1種又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。なお、IやIIの数は銅の価数である。
【0019】
銅化合物の配合量は、ロイコ化合物1モルに対して0.005〜0.4モルとなる量が好ましく、0.01〜0.3モルとなる量がより好ましい。銅化合物の配合量がこの範囲にあると、ロイコ化合物から酸化体であるジ−及びトリアリールメタン染料への反応が充分に進行する。
【0020】
本発明で用いられるヘテロポリ酸は、タングステン、モリブデン、バナジウムなどのような金属からなるイソポリ酸骨格に対して、ケイ素、リン、ヒ素などのPブロック元素などからなるヘテロ原子が挿入されたポリ酸であり、酸化反応を促進するための触媒である。ヘテロポリ酸として、ケイタングステン酸(H[SiW1240]・nHO;nはおおよそ30)、リンタングステン酸(H[PW1240]・nHO;nはおおよそ30)、リンモリブデン酸(H[PMo1240]・nHO;nはおおよそ30)、リンタングストモリブデン酸(H[PW12−XMo40]・nHO;xは0より大きく12未満、nはおおよそ30)、リンバナドモリブデン酸(H15−X[PV12−XMo40]・nHO;xは6より大きく12未満、nはおおよそ30)などから1種又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0021】
ヘテロポリ酸の配合量は、ロイコ化合物1モルに対して0.005〜0.3モルとなる量が好ましく、0.01〜0.25モルとなる量がより好ましい。ヘテロポリ酸の配合量がこの範囲にあると、ロイコ化合物から酸化体であるジ−及びトリアリールメタン染料への反応が充分に進行する。
【0022】
また、前記銅化合物及びヘテロポリ酸は、それぞれ単独で使用しただけでは反応性が充分ではないため、併用しなければならない。このとき、前記銅化合物及びヘテロポリ酸の配合割合としては、前記銅化合物/ヘテロポリ酸=100/1〜1/10であることが好ましく、5/1〜1/1であることがより好ましい。前記銅化合物及びヘテロポリ酸の配合割合がこの範囲にあると、ロイコ化合物から酸化体であるジ−及びトリアリールメタン染料への反応が充分に進行する。
【0023】
本発明で用いられる酸化剤は、分子内に不安定で放出し易い酸素原子を有する化合物であり、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシ化合物、ペルカルボン酸から選ばれる少なくとも1つの化合物である。有機ヒドロペルオキシ化合物として、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジメチルジオキシラン、過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン、クメンヒドロペルオキシドなどからから1種又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。また、ペルカルボン酸として、過酢酸、メタクロロ過安息香酸などから1種又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0024】
酸化剤の配合量は、原料であるロイコ化合物のモル数以上のモル当量数であることが好ましく、ロイコ化合物1モルに対して2〜20当量であることがより好ましく、ロイコ化合物1モルに対して5〜10当量であることが最も好ましい。酸化剤の配合量がこの範囲にあると、ロイコ化合物を充分に酸化できる酸素原子を供給することができる。
【0025】
反応溶媒としては、原材料の極性に応じて種々の溶媒を使用することができ、原材料となるロイコ化合物の極性が大きいときは、水や、メタノール、エタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコールを用いることができ、原材料となるロイコ化合物の極性が小さいときは水やアルコールよりも極性の小さいメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどを使用することができる。また、反応溶媒の極性が小さいときには、4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を使用することもできる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明に係るジ−及びトリアリールメタン染料の製造方法に関する実施例についてより具体的に説明する。
【0027】
ロイコ化合物として、
【化3】
に示されるロイコ化合物1を用いた。ロイコ化合物1は、試薬など市販品として入手することができる化合物である。
【0028】
<実施例1>
10mlの二口フラスコに、ロイコ化合物1の重量200mg(0.30mmol)に水、酸化銅(II)4.77mg(0.060mmol)、ケイタングステン酸〔H[SiW1240]・26HO〕99.31mg(0.030mmol)、及び水10.0mLを混合し、攪拌しながら30%過酸化水素水(10モル当量)を添加して、反応溶液を100℃まで加熱し1時間攪拌した。反応後、塩化ナトリウムを添加して、
【化4】
【化5】
に示されるトリアリールメタン2若しくはトリアリールメタン3、又はトリアリールメタン2及びトリアリールメタン3の混合物であるトリアリールメタン染料を得た。酸化銅(II)は水に溶解しにくいので、塩析により容易にトリアリールメタン染料から分離することができる。
【0029】
反応収率は、原材料であるロイコ酸1と目的物であるトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料を紫外−可視スペクトルを測定して得られた検量線を用いて求めた。すなわち、反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料を所定濃度に希釈した溶液を用いて、紫外−可視分光計(ジャスコエンジニアリング製、型番:V−560)を用いて639nmにおける吸光度を測定し、濃度を逆算することにより、反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の生成量を算出して、反応率を求めた。この結果、反応収率は75%であった。
【0030】
<実施例2>
銅化合物として、酸化銅(I)8.59mg(0.060mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は74%であった。
【0031】
<実施例3>
銅化合物として、酢酸銅(II)10.9mg(0.060mmol)を用い、反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は61%であった。
【0032】
<実施例4>
銅化合物として、酢酸銅(II)10.9mg(0.060mmol)を用い、反応時間を12時間とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は70%であった。
【0033】
<実施例5>
銅化合物として、酢酸銅(II)10.9mg(0.060mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は60%であった。
【0034】
<実施例6>
ヘテロポリ酸として、リンタングステン酸〔H[PW1240]・30HO〕102.6mg(0.030mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は62%であった。
【0035】
<実施例7>
ロイコ化合物1の重量100mg(0.15mmol)、ケイタングステン酸〔H[SiW1240]・26HO〕99.31mg(0.030mmol)を用いて、銅化合物として、硫酸銅(II)15.0mg(0.060mmol)を用い、反応温度を60℃、反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は25%であった。
【0036】
<実施例8>
ヘテロポリ酸として、リンモリブデン酸〔H[PMo1240]・30HO〕71.0mg(0.030mmol)を用いて、銅化合物として、酢酸銅(II)15.0mg(0.060mmol)を用い、反応温度を60℃、反応時間を12時間とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は28%であった。
【0037】
<比較例1>
ヘテロポリ酸を使用しない以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は検出できなかった。
【0038】
<比較例2>
銅化合物を使用しない以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は15%であった。
【0039】
<比較例3>
銅化合物として、酸化亜鉛4.88mg(0.060mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は11%であった。
【0040】
<比較例4>
ロイコ化合物1の重量200mg(0.30mmol)を用い、銅化合物の代わりとして、二酸化マンガン(IV)5.21mg(0.060mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は57%であった。
【0041】
<比較例5>
銅化合物を使用せず、反応温度を60℃、反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応により得られたトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料の反応収率は3%であった。
【0042】
これらの結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果より、触媒としてヘテロポリ酸及び銅化合物を併用した場合は、反応温度100℃ではいずれも反応収率60%以上であり良好であったのに対して、ヘテロポリ酸のみ用いた場合、銅化合物のみ用いた場合、ヘテロポリ酸と銅化合物以外の金属触媒を用いた場合は、反応温度100℃ではいずれも反応収率60%未満であり不十分であった。また、反応温度が60℃であると、100℃のときよりも反応収率が下がる傾向にあるが、同温度で銅化合物を併用しない場合に比べると反応収率は大きいことが分かった。これらの結果より、ヘテロポリ酸及び銅化合物を併用することで実製造に応用し得る収率でトリアリールメタン2の塩からなるトリアリールメタン染料を得られることが分かった。