特許第6501774号(P6501774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6501774MABA化合物およびコルチコステロイドを含む組合せ剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501774
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】MABA化合物およびコルチコステロイドを含む組合せ剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20190408BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   A61K31/4709
   A61K31/573
   A61K31/58
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   A61P11/00
   A61P11/06
【請求項の数】19
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-528539(P2016-528539)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公表番号】特表2016-527245(P2016-527245A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014065966
(87)【国際公開番号】WO2015011245
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】13382305.4
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・アパリシ・ビルヒリ
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・カルベト・ムルトロ
(72)【発明者】
【氏名】モンセラート・ミラルペイクス・ゲル
(72)【発明者】
【氏名】アマデウ・ガバルダ・モネデロ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・プイグ・ドゥラン
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02592077(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02592078(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 45/00−45/08
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β2アドレナリンアゴニストおよびムスカリンアンタゴニストの両方により改善され得る呼吸器疾患の処置に同時、併用、別または連続的に用いるための、(a)ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドおよび(b) Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物であるムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を含む、組合せ剤。
【請求項2】
該呼吸器疾患が喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、請求項1に記載の使用のための組合せ剤。
【請求項3】
該ムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物が、Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート サッカリン酸塩である、請求項1または2記載の使用のための組合せ剤。
【請求項4】
該コルチコステロイドがブデソニドである、請求項1〜3のいずれか記載の使用のための組合せ剤。
【請求項5】
該コルチコステロイドがフロ酸モメタゾンである、請求項1〜3のいずれか記載の使用のための組合せ剤。
【請求項6】
該コルチコステロイドがプロピオン酸フルチカゾンである、請求項1〜3のいずれか記載の使用のための組合せ剤。
【請求項7】
該コルチコステロイドがフロ酸フルチカゾンである、請求項1〜3のいずれか記載の使用のための組合せ剤。
【請求項8】
有効成分 (a)および(b)が、単一の医薬組成物の一部を形成している、請求項1〜のいずれか記載の使用のための組合せ剤。
【請求項9】
(c) (i) PDE IV阻害剤、(ii) ロイコトリエンD4アンタゴニスト、(iii) egfrキナーゼ阻害剤、(iv) p38キナーゼ阻害剤、(v) JAK阻害剤および(vi) NK1受容体アゴニストから選択される他の有効化合物をさらに含む、請求項1〜のいずれか記載の使用のための組合せ剤。
【請求項10】
β2アドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方により改善され得る呼吸器疾患の処置に同時、併用、別または連続的に使用するための医薬の製造のための、(a)ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドおよび(b)請求項1または記載のムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物の使用。
【請求項11】
該呼吸器疾患が喘息または慢性閉塞性肺疾患 (COPD)である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
請求項10または11記載の呼吸器疾患に罹患しているまたはその可能性のある患者の処置において、同時、併用、別または連続的に用いるための組合せ剤として(a) ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドおよび(b)請求項1または記載のムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を含む、製剤。
【請求項13】
請求項記載の有効化合物(c)をさらに含む、請求項12記載の製剤。
【請求項14】
請求項10または11記載の呼吸器疾患に罹患しているまたはその可能性のあるヒトまたは動物患者を処置するための、(b) 請求項1または記載のムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を、(a) ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドと同時、併用、別または連続的に組み合わせて用いることについての指示書とともに含む、キット。
【請求項15】
(c)請求項記載の有効化合物をさらに含む、請求項14記載のキット。
【請求項16】
請求項10または11記載の呼吸器疾患の処置に、同時、併用、別または連続的に用いるための、(b)請求項1または記載のムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物および(a) ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドを含む、パッケージ。
【請求項17】
(c)請求項記載の化合物をさらに含む、請求項16記載のパッケージ。
【請求項18】
請求項10または11記載の呼吸器疾患の処置のために、(a) ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドと同時、併用、別または連続的に組み合わせて用いる医薬の製造のための、(b) 請求項1または記載のムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物の使用。
【請求項19】
請求項10または11記載の呼吸器疾患の処置のために、(b) 請求項1または記載のムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物と同時、併用、別または連続的に組み合わせて用いる医薬の製造のための、(a) ブデソニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択されるコルチコステロイドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器疾患の処置に用いるための、2つ以上の薬学的に有効な物質の組合せ剤に関する。特に、本発明は、コルチコステロイドとムスカリンアンタゴニストおよびβ2アドレナリンアゴニストの二重活性(MABA)を有する化合物との組合せ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートは、WO 2013/068552およびWO 2013/068554に記載されている。該化合物は次に示す構造を有する:
【化1】
【0003】
該式 (I)の化合物は、呼吸器疾患、特に喘息および慢性閉塞性肺疾患 (COPD)を処置するために吸入により投与することを意図した強力な二重作用性ムスカリンアンタゴニスト-β2アゴニスト(MABA)であり、現在臨床試験が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2013/068552
【特許文献2】WO 2013/068554
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明の二重ムスカリンアゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト化合物を1つ以上のコルチコステロイドとともに用いた場合、呼吸器疾患の炎症性または閉塞性疾患の処置において、予期しない有用な治療効果が観察できる。
【0006】
特に、本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物とコルチコステロイドの組合せにより、コルチコステロイドを単独で用いた場合と比較して、呼吸器の炎症性および閉塞性疾患と関連があるインターロイキン8(IL-8)の分泌が顕著に阻害される。
【0007】
したがって、本発明は、(a)コルチコステロイドおよび(b) Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物であるムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を含む、組合せ剤を提供する。
【0008】
本発明はまた、本発明の組合せ剤および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、哺乳動物におけるムスカリン受容体およびβ2アドレナリン受容体二重活性に関連する疾患または症状(例えば肺疾患、例えば喘息または慢性閉塞性肺疾患、早産、緑内障、神経障害、心臓障害、炎症、泌尿器障害、例えば尿失禁および胃腸障害、例えば過敏性腸症候群または痙性大腸炎)を処置する方法であって、該哺乳動物に、有効量の式(I)の化合物をコルチコステロイドとともに投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
また、(a)コルチコステロイドおよび(b)式(I)のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を、上述の疾患に罹患している、またはその可能性のある患者の処置に同時に、併用で、別にまたは連続的に使用するための組合せ剤として含む製剤、キットまたはパッケージが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「治療上有効量」という語は、処置を必要とする患者に投与したときに処置をもたらすのに十分な量を指す。
【0012】
本明細書中において、「処置」という語は、次のものを含む、ヒト患者における疾患または医学的症状の処置を指す:
(a) 疾患または医学的症状の発症の予防、すなわち患者の予防的処置;
(b) 疾患または医学的症状の改善、すなわち、患者における疾患または医学的症状の退行を引き起こすこと;
(c) 疾患または医学的症状の抑制、すなわち患者における疾患または医学的症状の進行の遅延;または
(d) 患者における疾患または医学的症状の症候の軽減。
【0013】
「ムスカリン受容体活性およびβ2アドレナリン受容体活性に関連する疾患または症状」という表現は、ムスカリン受容体活性およびβ2アドレナリン受容体活性の両方に関連することが現在確認されている、または将来確認される全ての病態および/または症状を含む。該病態としては、肺疾患、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎および肺気腫を含む)ならびに神経障害および心臓障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。β2アドレナリン受容体活性はまた、早産 (例えば、WO 98/09632参照)、緑内障およびある種の炎症 (WO 99/30703およびEP 1 078 629参照)にも関連していることが知られている。
【0014】
一方、M3受容体活性は、胃腸管障害、例えば過敏性腸症候群 (IBS) (例えばUS5397800参照)、胃腸管(GI)潰瘍、痙性大腸炎 (例えばUS 4556653参照); 泌尿器系障害、例えば尿失禁(例えばJ.Med.Chem., 2005, 48, 6597-6606参照)、頻尿症; 乗り物酔および迷走神経誘導性洞性徐脈に関連する。
【0015】
本発明の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態の両方で存在し得る。溶媒和物という語は、本明細書中において、本発明の化合物および一定量の1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子を含む分子複合体を指すのに用いられる。水和物という語は、該溶媒が水である場合に用いる。溶媒和物形態の例としては、水、アセトン、ジクロロメタン、2-プロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミンまたはその混合物と結合した本発明の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明において、例えば水和物のように、1つの溶媒分子が本発明の化合物1分子と結合していてよいことは、具体的に考慮されている。
【0016】
さらに、本発明において、二水和物のように、2つ以上の溶媒分子が、本発明の化合物1分子と結合していてよいことも具体的に考慮されている。さらに、半水和物のように、本発明において、1分子よりも少ない溶媒分子が本発明の化合物1分子と結合し得ることも具体的に考慮されている。さらに、本発明の溶媒和物は、該化合物の非溶媒和物形態の生物学的な効果を維持する本発明の溶媒和物と考えられる。
【0017】
本発明の製剤および方法で処置される呼吸器疾患または症状は、典型的には喘息、急性または慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、気管支過敏症または鼻炎、特に喘息または慢性閉塞性肺疾患 (COPD)である。
【0018】
「薬学的に許容される塩」という語は、患者、例えば哺乳動物に投与することが許容される塩基または酸から製造される塩を指す。該塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基および薬学的に許容される無機または有機酸から得られる。
【0019】
薬学的に許容される酸から得られる塩としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、乳酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、キシナホ酸(1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、ナパジシル酸(1,5-ナフタレンジスルホン酸)およびトリフェニル酢酸等の塩が挙げられる。
【0020】
薬学的に許容される無機塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛等の塩が挙げられる。
【0021】
薬学的に許容される有機塩基由来の塩としては、スルフィミド誘導体、例えば、ベンゾスルフィミド (サッカリンとしても知られる)、チエノ[2,3-d]イソチアゾール-3(2H)-オン1,1-ジオキシドおよびイソチアゾール-3(2H)-オン1,1-ジオキシド、第一級、第二級および第三級アミンの塩、例えば置換アミン、環状アミンおよび天然起源のアミン等、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトロメタミン等が挙げられる。
【0022】
典型的には、本発明の組合せ製剤中の式 (I)の化合物は、薬学的に許容されるスルフィミド誘導体、例えばベンゾスルフィミド(サッカリンとしても知られる)、チエノ [2,3-d]イソチアゾール-3(2H)-オン1,1-ジオキシドおよびイソチアゾール-3(2H)-オン1,1-ジオキシドまたは薬学的に許容される酸、例えばクエン酸、乳酸、ムチン酸、L-酒石酸、パントテン酸、グルクロン酸、ラクトビオン酸、グルコン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、(1S)-カンファー-10-スルホン酸由来の塩の形態で投与される。特に好ましいのは、ベンゾスルフィミド(サッカリン)由来の塩である。
【0023】
サッカリン(ベンゾスルフィミド)由来の塩は、典型的には、サッカリン酸塩またはジサッカリン酸塩およびその薬学的に許容される溶媒和物である。MABA 化合物であるTrans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートは、好ましくは、次の化学構造:
【化2】
を有する、サッカリン酸塩(すなわち、Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート, サッカリン酸塩)の形態で投与される。
【0024】
典型的には、本組合せ剤は、単一の医薬組成物の一部を形成する、有効成分(a)および(b)を含む。
【0025】
また、(a) コルチコステロイドおよび (b) 本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を、同時に、別にまたは連続してヒトまたは動物患者の処置に用いるための組合せ製剤として含む製剤を提供する。
【0026】
典型的に、該製剤は、ヒトまたは動物患者において、喘息、急性もしくは慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、気管支過敏症または鼻炎である呼吸器疾患の処置に、同時、別または連続的に用いるためのものである。
【0027】
本発明はさらに、ヒトまたは動物患者における該呼吸器疾患の処置に同時、併用、別または連続的に用いるための医薬を製造するための、(a) コルチコステロイドおよび(b) 本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物の使用を提供する。
【0028】
また、(a)コルチコステロイドと同時、併用、別または連続的に組み合わせて用いる、ヒトまたは動物患者の該呼吸器疾患の処置用の医薬の製造に用いるための、(b) 本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物の使用を提供する。
【0029】
また、(b)本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物と同時、併用、別または連続的に共投与することによるヒトまたは動物の患者における該呼吸器疾患の処置に用いる医薬の製造のための(a)コルチコステロイドの使用を提供する。
【0030】
本発明はさらに、該呼吸器疾患の処置のために、コルチコステロイドと同時に、併用で、別にまたは連続的に組み合わせて用いるための、ムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を提供する。
【0031】
本発明はさらに、該呼吸器疾患の処置のために、(b) 本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物と、同時に、併用で、別に、または連続的に組み合わせて用いるための、(a)コルチコステロイドを提供する。
【0032】
本発明はさらに、同時、併用、別または連続して該呼吸器疾患の処置に用いるための、本発明の組合せ剤を提供する。
【0033】
典型的には、該呼吸器疾患は、喘息、急性または慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、気管支過敏症および鼻炎から選択され、より適切には、喘息および慢性閉塞性肺疾患 (COPD)から選択される。
【0034】
患者はヒトであるのが適切である。
【0035】
(a)コルチコステロイドおよび(b) 本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を、(c) 薬学的に許容される担体または希釈剤と混合して含む医薬組成物もまた提供される。
【0036】
本発明はまた、(b)本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を、(a) コルチコステロイドと同時、併用、別または連続的に組み合わせて使用する指示書とともに含む、該呼吸器疾患に罹患しているか、またはその可能性があるヒトまたは動物患者の処置用のキットを提供する。
【0037】
さらに、該呼吸器疾患の処置において同時、併用、別または連続的に用いる、(b)本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物および、(a) コルチコステロイドを含む、パッケージを提供する。
【0038】
さらに、(c)同時、別または連続的に使用する、(i) PDE IV阻害剤、(ii) ロイコトリエンD4アンタゴニスト、(iii) egfr-キナーゼ阻害剤、(iv) p38キナーゼ阻害剤、(iv) JAK阻害剤および (v) NK1受容体アゴニストから選択される他の有効化合物をさらに含む、上記の組合せ剤、製剤、キットまたはパッケージを提供する。
【0039】
(b)本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物および (a) コルチコステロイドのみを有効成分として含む、組合せ剤、製剤、キットまたはパッケージは、本発明の一態様である。
【0040】
(b)本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物および(a) コルチコステロイドの使用であって、他の有効化合物を用いずに、同時に、併用で、別に、または連続して上述の呼吸器疾患の処置に用いるための医薬の製造のための使用もまた、本発明の一態様である。
【0041】
本発明の組合せ剤に用いる適当なコルチコステロイドの例としては、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、シペシル酸デキサメタゾン、ナフロコート、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、(6α,11β,16β,17α)-6,9-ジフルオロ-11-ヒドロキシ-16-メチル-3-オキソ-17-(1-オキソプロポキシ)アンドロスタ-1,4-ジエン-17-チオカルボン酸 S-メチルエステル (RS-85095)、9α-クロロ-6α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロパノイルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸 メチルエステル (CGP-13774)、16α,17α-[(R)-ブチリデンジオキシ]-6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−3−オキソ−4-アンドロステン−17β−チオカルボン酸 S−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)エステル (GW-250495)、デルタコルチゾン、NO-プレドニゾロン、NO-ブデソニド、ジクロ酢酸エチプレドノール、QAE-397、(3β,5α,7β)-3,7-ジヒドロキシアンドロスタン-17-オン (7β-OH-EPIA)、16α,17α-[(R)-ブチリデンジオキシ]-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-17β-(メチルスルファニル)アンドロスタ-4-エン-3-オン(RPR-106541)、プロピオン酸デプロドン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21-クロロ-11β−ヒドロキシ-17α−[2-(メチルスルファニル)アセトキシ]-4-プレグネン-3,20-ジオン、des-イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびヒドロコルチゾン プロブテート(probutate)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウムおよびプロピオン酸クロベタゾールが挙げられる。
【0042】
本発明の組合せ剤に用いる好ましいコルチコステロイドとしては、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ナフロコート、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン(dexamethasone palmitoate)、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸デプロドン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよび酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンが挙げられる。
【0043】
本発明において特に好ましいコルチコステロイドは: ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンであり、これらは、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物ならびにその薬理学的に適した酸付加塩の形態であってよい。より好ましいのは、ブデソニド、フロ酸モメタゾン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンであり、最も好ましいコルチコステロイドはモメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンである。
【0044】
本発明の範囲内における、コルチコステロイドに関する言及はいずれも、該コルチコステロイドから形成し得る塩または誘導体に関する言及を含む。可能性のある塩または誘導体の例としては:ナトリウム塩、スルホ安息香酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、二水素リン酸塩、パルミチン酸塩、ピバル酸塩(pivaiates)、ファルネシル酸塩、アセポン酸塩、スレプタン酸、プレドニカルベート、フロ酸塩またはアセトニドが挙げられる。特定の場合において、該コルチコステロイドは、その水和物の形態であってよい。
【0045】
本発明の特に好ましい態様は、Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテート サッカリン酸塩と、コルチコステロイドの組合せ剤である。好ましいコルチコステロイドは、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択され、より好ましくは、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンから選択される。
【0046】
本発明の他の態様によれば、該コルチコステロイドはブデソニドである。
【0047】
本発明の他の態様によれば、該コルチコステロイドはフロ酸モメタゾンである。
【0048】
本発明の他の態様によれば、該コルチコステロイドはフルチカゾンである。
【0049】
本発明の他の態様によれば、該コルチコステロイドはプロピオン酸フルチカゾンである。
【0050】
本発明の他の態様によれば、該コルチコステロイドはフロ酸フルチカゾンである。
【0051】
他の実施において、本発明は、本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を、コルチコステロイドと組み合わせて同時に、併用で、別にまたは連続して用いるための指示書とともに含む、呼吸器疾患の処置用、特に喘息またはCOPDの処置用のキットからなる。
【0052】
本発明はまた、本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物とコルチコステロイドを含む、呼吸器疾患の処置、特に喘息またはCOPDの処置において、同時に、併用で、別にまたは連続して用いるためのパッケージの形態で実施してもよい。
【0053】
呼吸器疾患、特に喘息またはCOPDの処置に、同時、併用、別または連続的にコルチコステロイドと組み合わせて用いるための、本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物もまた、本発明の目的の一つである。
【0054】
呼吸器疾患、特に喘息またはCOPDの処置に、コルチコステロイドと組み合わせて、同時に、併用で、別に、または連続的に用いるための医薬の製造のための、本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物の使用もまた本発明の目的の一つである。
【0055】
本発明はまた、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性およびβ2アドレナリン受容体アゴニスト活性の両方に関連する病理学的症状または疾患の処置、特に呼吸器疾患、(例えば、喘息、急性または慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、気管支過敏症または鼻炎)、早産、緑内障、神経障害、心臓障害、炎症および胃腸障害、より適当には呼吸器疾患、例えば喘息またはCOPDの処置に用いるための、疾患または症状に罹患している患者の処置方法であって、該患者に本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物およびコルチコステロイドを有効量投与することを含む、方法に関する。
【0056】
本発明の範囲内におけるコルチコステロイドに対する任意の言及は、該コルチコステロイドから形成し得る塩または誘導体に対する言及を含む。可能性のある塩または溶媒和物の例としては: ナトリウム塩、スルホ安息香酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、リン酸二水素塩、パルミチン酸塩、ピバル酸塩(pivaiate)、ファルネシル酸塩、アセポン酸塩、スレプタン酸塩、プレドニカルベート、フロ酸塩またはアセトニドが挙げられる。いくつかの場合において、該コルチコステロイドはその水和物の形態であってよい。
【0057】
より好ましくは、該コルチコステロイドは、ブデソニド、ベクロメタゾン、モメタゾン、シクレソニドおよびフルチカゾンを含む群から選択されてよく、これらは、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物ならびにその薬理学的に適した酸付加塩の形態であってよく、より好ましくは、該コルチコステロイドは、モメタゾン、ブデソニドおよびフルチカゾンから選択され、最も好ましくは、モメタゾンおよびフルチカゾンである。
【0058】
好ましい態様は、Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物とプロピオン酸フルチカゾンとの組合せ剤、およびTrans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物とフロ酸フルチカゾンとの組合せ剤、ならびにTrans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物とブデソニドとの組合せ剤、およびまた、Trans-4-[{3-[5-({[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)エチル]アミノ}メチル)-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イル]プロピル}(メチル)アミノ]シクロヘキシル ヒドロキシ(ジ-2-チエニル)アセテートまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物とフロ酸モメタゾンとの組合せ剤である。
【0059】
本発明の組合せ剤は、呼吸器障害の処置に有用であることが知られている1つ以上の付加的な有効物質、例えばPDE4阻害剤、ロイコトリエンD4阻害剤、egfrキナーゼ阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、JAK阻害剤および/またはNK-1受容体アンタゴニストを含んでいてよい。
【0060】
したがって、本発明は、哺乳動物における、ムスカリン受容体活性とβ2アドレナリン受容体活性の二重活性に関連する疾患または症状(例えば呼吸器疾患、例えば喘息または慢性閉塞性肺疾患、早産、緑内障、神経障害、心臓障害、炎症、泌尿器障害、例えば尿失禁および胃腸障害、例えば過敏性腸症候群または痙性大腸炎)を処置する方法であって、該哺乳動物に、治療上有効量の、式(I)の化合物を1つ以上の他の治療剤とともに投与することを含む、方法を提供する。
【0061】
本発明の組合せ剤に用いてよい適当なPDE4阻害剤の例としては次のものが挙げられる:
ジマレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト、ティペルカスト、トフィミラスト、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム、塩酸ドロタベリン、リリミラスト、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト、テトミラスト、フィラミラスト、(R)-(+)-4-[2-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-フェニルエチル]ピリジン (CDP-840)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル]-2-オキソアセトアミド (GSK-842470)、9-(2-フルオロベンジル)-N6-メチル-2-(トリフルオロメチル)アデニン (NCS-613)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-8-メトキシキノリン-5-カルボキサミド (D-4418)、3-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシベンジル]-6-(エチルアミノ)-8-イソプロピル-3H-プリン ヒドロクロリド (V-11294A)、6-[3-(N,N-ジメチルカルバモイル)-フェニルスルホニル]-4-(3-メトキシフェニルアミノ)-8-メチルキノリン-3-カルボキサミド ヒドロクロリド (GSK-256066)、4-[6,7-ジエトキシ-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン-1-イル]-1-(2-メトキシ-エチル)ピリジン-2(1H)-オン (T-440)、(-)-trans-2-[3’-[3-(N-シクロプロピルカルバモイル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-1-イル]-3-フルオロビフェニル-4-イル]シクロプロパンカルボン酸 (MK-0873)、CDC-801、UK-500001、BLX-914、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン1-オン、cis [4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール、CDC-801および5(S)-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-3(S)-(3-メチルベンジル)ピペリジン-2-オン (IPL-455903)。
【0062】
本発明の組合せ剤に用いる、適当なLTD4アンタゴニストの例としては、トメルカスト、イブジラスト、ポビルカスト、プランルカスト水和物、ザフィルルカスト、リトルカスト、ベルルカスト、スルカスト(sulukast)、シナルカスト、イラルカストナトリウム、モンテルカストナトリウム、4-[4-[3-(4-アセチル-3-ヒドロキシ-2-プロピルフェノキシ)プロピルスルホニル]フェニル]-4-オキソ酪酸、[[5-[[3-(4-アセチル-3-ヒドロキシ-2-プロピルフェノキシ)プロピル]チオ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]チオ]酢酸、9-[(4-アセチル-3-ヒドロキシ-2-n-プロピルフェノキシ)メチル]-3-(1H-テトラゾル-5-イル)-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、5-[3-[2-(7-クロロキノリン-2-イル)ビニル]フェニル]-8-(N,N-ジメチルカルバモイル)-4,6-ジチアオクタン酸ナトリウム塩; 3-[1-[3-[2-(7-クロロキノリン-2-イル)ビニル]フェニル]-1-[3-(ジメチルアミノ)-3-オキソプロピルスルファニル]メチルスルファニル]プロピオン酸ナトリウム塩、6-(2-シクロヘキシルエチル)-[1,3,4]チアジアゾロ [3,2-a]-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-9(1H)-オン、4-[6-アセチル-3-[3-(4-アセチル-3-ヒドロキシ-2-プロピルフェニルチオ)プロポキシ]-2-プロピルフェノキシ] 酪酸、(R)-3-メトキシ-4-[1-メチル-5-[N-(2-メチル-4,4,4-トリフルオロブチル)カルバモイル]インドール-3-イルメチル]-N-(2-メチルフェニルスルホニル)ベンズアミド、(R)-3-[2-メトキシ-4-[N-(2-メチルフェニルスルホニル)カルバモイル]ベンジル]-1-メチル-N-(4,4,4-トリフルオロ-2-メチルブチル)インドール-5-カルボキサミドおよび(+)-4(S)-(4-カルボキシフェニルチオ)-7-[4-(4-フェノキシブトキシ)フェニル]-5(Z)-ヘプテン酸が挙げられる。
【0063】
本発明の組合せ剤で使用する適当なegfr-キナーゼ阻害剤の例としては、パリフェルミン、セツキシマブ、ゲフィチニブ、レピフェルミン、塩酸エルロチニブ、二塩酸カネルチニブ、ラパチニブおよびN-[4-(3-クロロ-4-フルオロフェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル]-4-(ジメチルアミノ)-2(E)-ブテナミドが挙げられる。
【0064】
本発明の組合せ剤に用いる適当なp38キナーゼ阻害剤の例としては、エジシル酸クロルメチアゾール(chlormethiazole edisylate)、ドラマピモド(doramapimod)、5-(2,6-ジクロロフェニル)-2-(2,4-ジフルオロフェニルスルファニル)-6H-ピリミド[3,4-b]ピリダジン-6-オン、4-アセトアミド-N-(tert-ブチル)ベンズアミド、SCIO-469 (Clin Pharmacol. Ther. 2004, 75(2): Abst PII-7に記載)およびVX-702 (Circulation 2003, 108(17, Suppl. 4): Abst 882に記載)が挙げられる。
【0065】
本発明の組合せ剤に用いる適当なJAK阻害剤は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、例えば3-[4(R)-メチル-3(R)-[N-メチル-N-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ]ピペリジン-1-イル]-3-オキソプロパンニトリル シトレート(トファシチニブ)、ASP-015K、JTE-052、3(R)-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル ホスフェート(ルキソリチニブ)、5-クロロ-N2-[1(S)-(5-フルオロピリミジン-2-イル)エチル]-N4-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-2,4-ジアミン(AZD-1480)、2-[1-(エチルスルホニル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル]アセトニトリル(バリシチニブ)およびN-(シアノメチル)-4-[2-[4-(4-モルホリニル)フェニルアミノ]-ピリミジン-4-イル]ベンズアミド ジヒドロクロリド(モメロチニブ)が挙げられる。
【0066】
本発明の組合せ剤に用いる適当なNK1-受容体アンタゴニストの例としては、次が挙げられる:ベシル酸ノルピタンチウム、ダピタント、ラネピタント、塩酸ボフォピタント(vofopitant)、アプレピタント、エズロピタント、N-[3-(2-ペンチルフェニル)プロピオニル]-スレオニル-N-メチル-2,3-デヒドロチロシル-ロイシル-D-フェニルアラニル-アロ-スレオニル-アスパラギニル-セリンC-1.7-O-3.1 ラクトン、1-メチルインドール-3-イルカルボニル-[4(R)-ヒドロキシ]-L-プロリル-[3-(2-ナフチル)]-L-アラニンN-ベンジル-N-メチルアミド、(+)-(2S,3S)-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)ベンジルアミノ]-2-フェニルピペリジン、(2R,4S)-N-[1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル]-2-(4-クロロベンジル)ピペリジン-4-イル]キノリン-4-カルボキサミド、3-[2(R)-[1(R)-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ]-3(S)-(4-フルオロフェニル)モルホリン-4-イルメチル]-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-ホスフィン酸 ビス(N-メチル-D-グルカミン)塩; [3-[2(R)-[1(R)-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ]-3(S)-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニルメチル]-2,5-ジヒドロ-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル] ホスホン酸1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-D-グルシトール(1:2)塩、1’-[2-[2(R)-(3,4-ジクロロフェニル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)モルホリン-2-イル]エチル]スピロ[ベンゾ[c]チオフェン-1(3H)-4’-ピペリジン] 2(S)-オキシド ヒドロクロリドおよびEur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst P2664に記載のCS-003化合物。
【0067】
本発明の組合せ剤は、ムスカリン受容体活性およびβ2アドレナリン受容体活性の両方に関連する任意の障害の処置に用いうる。したがって、本発明は、これらの障害の処置方法ならびにこれらの障害の処置用医薬の製造における本発明の組合せ剤の使用を含む。
【0068】
該障害の好ましい例は、気管支拡張薬の使用が有益であると期待される呼吸器疾患、例えば喘息、急性または慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支過敏症または鼻炎、適当には喘息または閉塞性肺疾患(COPD)である。
【0069】
本発明の組合せ剤中の有効成分は、処置する障害の性質に依存して、任意の適当な経路、例えば経口(シロップ剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、徐放製剤、速溶製剤、トローチ剤等として);局所(クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、経鼻スプレー剤またはエアロゾル等として);注射(皮下、皮内、筋肉内、静脈内等)または吸入(乾燥粉末、溶液、分散剤として)によって投与してよい。
【0070】
本発明の組合せ剤中の有効化合物、すなわち、ムスカリンアンタゴニスト−β2アゴニスト二重活性化合物、該コルチコステロイドおよび他の任意の有効化合物は、同一の医薬組成物中で同時に投与しても、または別、同時、併用または連続的な投与を意図した異なる組成物中で、同じまたは異なる経路で投与してもよい。
【0071】
本発明の実施の一は、本発明のムスカリンアンタゴニスト−β2アゴニスト二重活性化合物を、コルチコステロイドと同時、併用、別または連続的に組み合わせて用いることについての指示書とともに含む、上述の呼吸器疾患の処置用のキットからなる。
【0072】
本発明の他の実施は、上述の呼吸器疾患の処置において同時、併用、別または連続的に用いるための、本発明のムスカリンアンタゴニスト−β2アゴニスト二重活性化合物と、コルチコステロイドを含むパッケージからなる。
【0073】
本発明の好ましい態様において、該組合せ剤中の有効化合物は、一般的な送達デバイスを用いて吸入により投与され、この場合、該組合せ剤は、同じまたは異なる医薬組成物中に製剤されてよい。
【0074】
最も好ましい態様において、本発明のムスカリンアンタゴニスト−β2アゴニスト二重活性化合物およびコルチコステロイドは、ともに同じ医薬組成物中にあり、一般的な送達デバイスを用いて吸入により投与される。
【0075】
典型的には、本発明の組合せ剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物は、吸入により投与されるのが適当であり、さらに、本明細書に記載するような、有効量の他の1つ以上の治療剤を含んでいてよい。しかし、局所適用、非経腸適用または経口適用の他の任意の形態を用いることも可能である。吸入された剤形の適用は、本発明の適用形態において、特に肺の疾患または障害の治療における好ましい態様である。
【0076】
該医薬製剤は、単位剤形であっても、薬学分野でよく知られている方法により製剤されてもよい。全ての方法は、有効成分を担体と混合する工程を含む。一般的に、該製剤は、均一かつ緻密に、有効成分を液体担体または細かく分割された固体担体またはその両方と混合した後、必要であれば生成物を所望の剤形に成型することによって製造される。
【0077】
経口投与に適当な本発明の製剤は、分離した単位、例えば、それぞれ規定量の有効成分を含むカプセル剤、カシェ剤または錠剤; 散剤または顆粒剤; 水性の液体または非水性の液体中の液剤または懸濁剤; または水中油型の液体懸濁剤または油中水型の液体懸濁剤であってよい。有効成分はまた、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤の形態であってもよい。
【0078】
シロップ製剤は、一般的に、液体担体、例えばエタノール、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリンまたは水中の、該化合物または塩の懸濁液または溶液と、香味料または着色剤からなる。
【0079】
組成物が錠剤の形態である場合、固体製剤の製造に慣用される任意の薬学的な担体を用いてよい。該担体の例としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、アカシアゴム、ステアリン酸、デンプン、ラクトースおよびスクロースが挙げられる。
【0080】
錠剤は、圧縮または成形により製造してよく、1個以上の副成分を含んでいてもよい。圧縮錠剤は、流動性の形態、例えば粉末または顆粒の有効成分を、所望によって結合剤、滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤または分散剤と混合し、適当な機械により圧縮することによって製造し得る。成形錠剤は、適当な機械で、不活性液体希釈剤で湿った粉末化合物の混合物を成形することにより製造してよい。該錠剤は、被覆もしくは割線を付されていてもよく、含まれる有効成分の持続放出または徐放を提供するように製剤してもよい。
【0081】
該組成物がカプセル剤の形態である場合、例えば硬質ゼラチンカプセルに上述の担体を用いるような、慣用的なカプセル化方法はいずれも適当である。組成物が軟質ゼラチンカプセル剤の形態である場合、分散剤または懸濁剤の製造に通常用いられているいずれの薬学的担体を考慮にいれてもよく、これらの例としては、例えば、水性ゴム、セルロース、ケイ酸または油が挙げられ、これらは軟質ゼラチンカプセルに取り込まれる。
【0082】
吸入による肺への局所送達用乾燥粉末組成物は、例えば、吸入器またはガス注入器で用いるための、例えばゼラチンのカプセル剤およびカートリッジであっても、または、例えばラミネート化アルミホイルのブリスターの形態であってよい。製剤は、一般的に、本発明の化合物と適当な粉末ベース(担体物質)、例えばラクトースまたはデンプンの、吸入用粉末混合物を含む。ラクトースの使用が好ましい。あるいは、該有効成分は、賦形剤を用いずに提供されてもよい。
【0083】
乾燥粉末の形態の医薬組成物用の担体は典型的には、デンプンまたは薬学的に許容される糖、例えばラクトースまたはグルコースから選択される。ラクトースが好ましい。
【0084】
さらなる適当な担体は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., 2000に記載されている。
【0085】
吸入用の医薬組成物は、吸入器、例えば乾燥粉末吸入器、エアロゾルまたはネブライザーを用いて送達される。該吸入器は、典型的には、作動時に本明細書に記載する他の1つ以上の治療剤を治療用有効量送達するように設計されている。
【0086】
吸入器中の本発明の化合物の包装は、単位用量または多回用量送達に適当なものであってよい。多回用量送達の場合、本発明の化合物は、事前に計量しても、または使用時に計量してもよい。乾燥粉末吸入器は、3つの群に分類される: (a) 単回用量デバイス (b) 複数単位用量デバイスおよび(c) 多回用量デバイス。
【0087】
第一の種類の吸入器(a)について、単回用量は、製造者によって計量され、ほとんどが硬質ゼラチンカプセルである小さい容器に入れられている。カプセルは、別の箱または容器から取られ、吸入器の受容域に挿入されなければならない。次に、吸気の流れの一部がカプセルを通って、粉末を浮遊させるかまたは吸入時の遠心力を用いて穿孔を通って粉末がカプセルから放出されるように、該カプセルをピンまたは切刃で開けるかまたは穿孔処理しなければならない。吸入後、空のカプセルを再び吸入器から除かなければならない。殆どの場合、カプセルの挿入および除去のためには、吸入器を分解することが必要であり、これは患者によっては困難で厄介な操作となり得る。吸入粉末のための硬質ゼラチンカプセルの使用に関連する他の欠点は、(a) 外気からの湿気の取りこみに対する保護が弱いこと、(b) 該カプセルが先に、分解するか、またはひび割れを起こす、極度の相対湿度に暴露された後の、カプセルの開放または穿孔処理に問題があること、および(c) カプセルの断片を肺に吸入する可能性があること、である。さらに、多数のカプセル吸入器について、排出が不完全であることが報告されている。
【0088】
カプセル吸入器には、WO 92/03175に記載されているように、個々のカプセルがそこから受容チャンバーに移動しうるマガジンを有しており、そこで穿孔処理および空にする処理が行われるものがある。また、カプセル吸入器には、用量を排出するために、空気路に沿って運ばれ得るカプセルチャンバーを有する回転式マガジンを有するものもある(例えばWO 91/02558およびGB 2242134)。それらには、(b) ディスクまたはストリップ上で供給される、限られた数の単位用量のブリスター吸入器とともに、複数単位用量の型の吸入器が含まれる。
【0089】
ブリスター吸入器は、カプセル吸入器よりも、医薬の湿気防止において優れている。カバーならびにブリスターホイルに対して穿孔処理をするか、カバーホイルを剥がすことにより、粉末に接触できる。ディスクの代わりにブリスターストリップを用いる場合、用量数を増加させ得るが、空のストリップを置きかえるのは、患者にとって不便なことである。したがって、該デバイスは、ストリップを移動させ、ブリスターポケットを開けるのに用いる技術を含む、投与システムを備え、該システムとともに使い捨てであることがしばしばである。
【0090】
多回用量吸入器(c)は、予め計量した量の、医薬含有粉末を含まない。それらは、比較的大きい容器と、患者が操作しなければならない、用量を計量する仕組みからなる。該容器は、容積測定置換により、大量の粉末から個々に分離される複数の用量を有する。回転可能な膜(例えばEP 0069715) またはディスク(例えばGB 2041763; EP 0424790; DE 4239402およびEP 0674533)、回転可能なシリンダー (例えばEP 0166294; GB 2165159およびWO 92/09322) および回転可能な円錐台形構造 (例えばWO 92/00771)を含む、種々の用量計量用の仕組みが存在し、これらは全て、容器からの粉末で満たさなければならない空洞を有する。他の多回用量デバイスとしては、容器から特定の体積の粉末を、送達チャンバーまたは空気路に移すための、局所的なまたは周囲に凹部を持つ測定プランジャーを持つ (例えばEP 0505321、WO 92/04068およびWO 92/04928)か、または測定スライドを持つもの、例えば、Genuair(登録商標)としても知られる、Novolizer SD2FL(例えばソフォテック)があり、これらは、WO 97/000703、WO 03/000325およびWO 2006/008027ならびにGreguletz et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 2009, 179,:A4578; H. Chrystyn et al., Int. J. Clinical Practice, 66, 3, 309-317, 2012およびH. Magnussen et at. Respiratory Medicine (2009) 103, 1832-1837に記載されている。
【0091】
再現性のよい用量測定は、多回用量デバイスに関する主要な関心事のひとつである。
【0092】
計量カップまたは空洞の充填は、重力の影響下にあることがほとんどであるため、粉末製剤は、優れて安定した流動性を示さなければならない。再充填単回用量および複数単位用量吸入器に関しては、計量の正確さおよび再現性は、製造者が保証し得る。一方、複数用量吸入器は、それらよりもはるかに多数の用量を含むことができ、一般的に、用量を充填するための操作の数が少ない。
【0093】
複数用量デバイスにおける呼気の流れは、計量用の空洞に沿って直線的であることがしばしばであり、複数用量吸入器の大容量の厳密な用量測定系は、この呼気の気流によって撹拌され得ないため、該粉末塊は、単純に空洞から浮遊しており、放出の間に粉砕されることもほとんどない。
【0094】
その結果として、別途粉砕する方法が必要となる。しかし、実際には、それらは、必ずしも吸入器の設計の問題であるわけではない。多回用量デバイスは用量数が多いため、空気路の内壁への粉末の付着および粉砕手段は最小化されなければならず、および/またはこれらの部分を、デバイスの残存用量に影響を与えずに定期的に清掃することが可能でなければならない。多回用量吸入器には、一定数の用量の使用後は置きかえることのできる使い捨ての薬物容器を持つものもある(例えば、WO 97/000703)。このような、使い捨て薬物容器を持つ半永久的な複数用量吸入器については、薬物の堆積を防ぐための必要な条件はさらに厳しくなる。
【0095】
他の態様において、本発明の組合せ剤は、単回用量乾燥粉末吸入器、例えばWO 2005/113042またはEP1270034に記載のデバイスを用いて投与してもよい。これらのデバイスは、弱抵抗性単位剤形吸入器である。乾燥粉末製剤の単位剤形は、典型的にはゼラチン製または合成ポリマー、好ましくは、ヒプロメルロースとしても知られるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)製のカプセル剤である。該ヒプロメルロースカプセルは、ブリスターに包装されているのが好ましい。該ブリスターは、患者がその中のカプセル剤を損傷することなく取り出すことができ、製品安定性を最適化するピールホイルブリスターであるのが好ましい。
【0096】
吸入投与用の医薬は、粒子サイズが制御されていることが望ましい。気管支系への吸入に最適な粒子サイズは、通常1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。20μmを超えるサイズの粒子は、一般的に大きすぎて、吸入時に小気道に到達することができない。これらの粒子サイズを達成するために、製造する有効成分の粒子サイズを、慣用的な方法、例えば微粒子化または超臨界流体技術によって小さくしてもよい。所望の画分を、空気分級またはふるいわけによって分離してよい。粒子は結晶性であることが好ましい。
【0097】
微粒子化粉末は、流動性が低く、極度に凝集する傾向を示すため、再現性の高い投与を達成することは困難である。乾燥粉末組成物についての効率を改善するためには、粒子は、吸入器の中にある間は大きく、気管に放出されると小さくならなければならない。したがって、通常、単糖、二糖もしくは多糖または糖アルコール、例えばラクトースまたはグルコースのような賦形剤が用いられる。賦形剤の粒子サイズは、通常、本発明の、吸入用医薬よりもはるかに大きい。賦形剤がラクトースである場合、典型的にラクトース粒子、好ましくは、例えば20〜1000μm、好ましくは90〜150μmの平均粒子サイズを有する結晶性αラクトース一水和物として存在する。平均粒子サイズは、当業者に公知の標準的な技術を用いて測定し得る。
【0098】
中央値粒子サイズ(median particle size)は、ほぼ平均値に相当し、該粒子の50質量%が、それよりも大きい等価直径を持ち、残りの50質量%がそれより小さい等価直径を持つ、直径である。該平均粒子サイズは、当該分野では、一般的に等価d50と称される。粒子サイズの分布は、流動性、単位容積重量などに影響を与え得る。したがって、粒子サイズ直径を特徴づけるため、d50に加えて、他の等価直径、例えばd10およびd90を使用してもよい。d10は、粒子の10質量%が、それよりも小さい直径を持つ (したがって残り90%はそれより粗い)等価直径である。d90は、粒子の90質量%がそれよりも小さい直径を持つ、等価直径である。態様の一において、本発明の製剤に用いるラクトース粒子は、90〜160μmのd10、170〜270μmのd50および290〜400μmのd90を有する。該d10、d50およびd90の値は、当業者に公知の標準的な技術を用いて測定し得る。
【0099】
本発明で使用する適当なラクトース物質は市販されており、例えば、DMV International (Respitose GR-001、Respitose SV-001、Respitose SV-003またはその混合物)、Meggle (Capsulac 60、Inhalac 70、Inhalac 120、Inhalac 230、Capsulac 60 INH、Sorbolac 400またはその混合物)および Borculo Domo (Lactohale 100-200、Lactohale 200-300およびLactohale 100-300またはその混合物)がある。
【0100】
他の態様において、用いる担体は、粒子サイズの異なる、異なる種類の担体の混合物の形態であってよい。例えば、細かい担体および粗い担体の混合物が製剤中に存在していてもよく、ここで、細かい担体の平均粒子サイズは、粗い担体の平均粒子サイズよりも低い。好ましくは、細かい担体は、平均粒子サイズが1〜50μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは5〜15μmであってよい。粗い担体は、平均粒子サイズが20〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは90〜400μm、最も好ましくは150〜300μmであってよい。細かい担体の粗い担体に対する含有量は、粗い担体の総重量に対して1%〜10%で変動してよく、好ましくは3%〜6%、例えば5%である。
【0101】
態様の一において、本発明の製剤に用いるラクトース粒子は、90〜160μmのd10、170〜270μmのd50および290〜400μmのd90を持つ粗いラクトースと、2〜4μmのd10、7〜10μmのd50および15〜24μmのd90を持つ細かいラクトースの混合物である。
【0102】
ラクトース粒子と有効成分の重量比率は、用いる吸入器によるが、典型的には、例えば10:1〜50,000:1、例えば20:1〜10,000:1、例えば40〜5,000:1である。
【0103】
乾燥粉末吸入器を用いた適用とは異なり、本発明の組成物は、噴霧ガスを介して操作するネブライザー、定量吸入器およびエアロゾル、または、所謂アトマイザーを用いて投与でき、ここで、薬理学的に有効な物質は、該液剤を介して、高圧下で、吸入可能な粒子のミストが生じるように噴霧され得る。これらのアトマイザーの利点は、噴霧ガスの使用が完全に必要ないことである。該アトマイザーは、例えば、PCT特許出願であるW0 91/14468およびWO 97/12687に記載されており、参照によりその内容も包含される。
【0104】
吸入による肺への局所送達用のスプレー組成物は、例えば、加圧パック、例えば定量吸入器から、適当な液化噴射剤を用いて送達される水性液剤または懸濁剤またはエアロゾルとして製剤されてよい。吸入に適当なエアロゾル組成物は懸濁剤であっても液剤であってもよく、一般的に、有効成分および適当な噴射剤、例えばフルオロ炭素または水素含有クロロフルオロ炭素またはその混合物、特にヒドロフルオロアルカン、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラ-フルオロエタン、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンまたはその混合物を含む。噴射剤として、二酸化炭素または他の適当な気体を用いてよい。エアロゾル組成物は、賦形剤を含んでいなくても、または当該分野でよく知られている、付加的な製剤用の賦形剤、例えば界面活性剤、例えばオレイン酸またはレシチンおよび共溶媒、例えばエタノールを含んでいてよい。圧縮製剤は、一般的に、バルブ(例えば計量バルブ)で閉められたキャニスター(例えばアルミニウムキャニスター)中で維持され、マウスピースを備えたアクチュエーターに適用される。
【0105】
加圧エアロゾル組成物は、一般的に、バルブ、特に計量バルブを備えたキャニスターに充填される。キャニスターは、例えばW096/32150に記載するように、フルオロカーボンポリマーのようなプラスチック物質で被覆していてよい。キャニスターは、頬側送達に適用するアクチュエーターに備えられる。
【0106】
経鼻送達用の典型的な組成物は、上述の吸入用組成物を含み、さらに、経鼻ポンプによって投与し得る、緩衝剤、抗微生物薬、浸透圧調節剤および粘性調節剤のような慣用的な賦形剤と組み合わせてよい、水のような不活性媒体中の液剤または懸濁剤の形態の、非加圧組成物を含む。
【0107】
典型的な皮膚製剤および経皮製剤は、慣用的な水性または非水性媒体を含み、例えば、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤またはペースト剤であるか、または、医薬プラスター、パッチまたはメンブレンの形態である。
【0108】
該組成物は、患者に単回用量を投与するように、単位剤形、例えば錠剤、カプセル剤、または計量エアロゾルの形態であるのが好ましい。
【0109】
各投与単位は、本発明のムスカリンアンタゴニスト+ β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物またはその薬学的な塩を1μg〜1000μg、および本発明のコルチコステロイドを10μg〜1000μg含むのが適当である。
【0110】
治療効果を達成するのに必要な各有効物質の量は、当然のことであるが、具体的な有効物質、投与経路、処置する対象および処置する具体的な障害または疾患によって変動する。
【0111】
有効成分は、所望の活性を示すのに十分なように、1日あたり1〜6回投与してよい。該有効成分を1日あたり1回または2回投与するのが好ましい。
【0112】
本発明において使用し得る(a)コルチコステロイドおよび(b) ムスカリンアンタゴニスト−β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物の比率は変動し得る。有効物質(a)および(b)は、その薬学的に許容される塩または溶媒和物または水和物の形態である場合もある。化合物(a)および(b)の選択によって、本発明で使用し得る、重量比は、種々の塩形態の異なる分子量に基づいて変動する。
【0113】
本発明の薬学的組合せ剤は、(a) コルチコステロイドおよび(b) 本発明のムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を一般的に、(b):(a)の重量比が1:100〜1000: 1、好ましくは1:50〜500:1の範囲で含んでいてよい。
【0114】
全ての有効薬を、同時に、または非常に近いタイミングで投与することが期待される。あるいは、1種または2種の有効物質を午前中に、残りをその日の午後に投与してもよい。あるいは、他の状況では、1種または2種の有効物質を、1日に2回投与し、それ以外を1日に1回投与してもよく、この1回の投与は、1日に2回投与するうちの1回と同じタイミングであっても、別のタイミングであってもよい。少なくとも2種以上の、好ましくは全ての有効物質を同時にともに投与するのが好ましい。少なくとも2種以上、好ましくは全ての有効物質を混合物として投与するのが好ましい。
【0115】
本発明の有効物質組成物は、吸入器、特に乾燥粉末吸入器を用いて吸入送達される組成物の形態で投与するのが好ましいが、他の任意の形態または非経腸または経口適用も可能である。本明細書中において、吸入用組成物の適用は、特に、閉塞性肺疾患の治療または喘息の処置における好ましい適用態様である。
【実施例】
【0116】
以下の製剤形態は製造例として例示するものである:
【0117】
実施例1 吸入粉末
【表1】
【0118】
実施例2 吸入粉末
【表2】
【0119】
実施例3 吸入粉末
【表3】
【0120】
実施例4 吸入粉末
【表4】
【0121】
実施例5 エアロゾル
【表5】
【0122】
実施例8 エアロゾル
【表6】
【0123】
薬理活性
驚くべきことに、本発明のM3ムスカリンアンタゴニスト-β2アドレナリンアゴニスト二重活性化合物を1つ以上のコルチコステロイドとともに用いる場合、気管の炎症性または閉塞性疾患の処置において、予期できない有用な治療上の効果が観察される。
【0124】
具体的には、本発明のMABA化合物(化合物2)と、コルチコステロイド、例えばフルチカゾンまたはモメタゾンとの組合せは、相当するコルチコステロイド単独と比較して、末梢血の好中球においてLPSにより誘発されるIL-8分泌の阻害において、有意にすぐれた抗炎症効果をもたらす。
【0125】
結果として、本発明の組合せ剤は、治療上有益な性質を有し、該性質により、該組合せ剤は、全ての種類の患者における呼吸器疾患の処置に特に適当である。
【0126】
材料および方法
5人の健常対象を、白血球の実験の対象とした。肺機能試験 (強制肺活量測定) および動脈血ガス測定を、試験の間、採血前に行った。
【0127】
好中球を、健常ボランティア参加者の末梢血から、研究室で確立された標準的な手法にしたがって単離した (Milara J et al., Respiration 2012; 83, 147-158)。
【0128】
単離した好中球を、標準的な細胞培養条件(37℃および5% CO2)で、種々の薬剤 (MABA化合物、モメタゾンまたはフルチカゾン) またはビヒクルとともに30分間インキュベーションした後、LPS(リポ多糖、炎症性メディエータ−として代表的な刺激) (1 mcg/mL)とのインキュベーションを6時間行った。上清を回収してIL-8 (炎症マーカー)を測定した。
【0129】
IL-8 (インターロイキン-8) は、標準的な手法にしたがって、ELISAによって定量した。
【0130】
データは、平均±SEMとして表した(図1および2参照)。結果の統計解析は、変動解析(ANOVA)、続いてボンフェローニ検定、スチューデントT検定、またはノンパラメトリック検定を適宜用いることにより行った (GraphPad Software Inc, San Diego, CA, USA)。P<0.05の時に有意であるとした。
【0131】
結果
得られた結果は表1および2、ならびに図1および2に示す。
【表7】
【0132】
表1および図1から明らかなことであるが、モメタゾンと化合物2(本発明のMABA化合物)の組合せにより、末梢血好中球における、LPS誘発性のIL-8分泌の阻害において、相当する成分を単独で用いた場合と比較して、相乗効果が得られる。
【0133】
化合物2をモメタゾンと組み合わせたとき、阻害は、モメタゾン単独または化合物2単独で得られるものよりも大きい。さらに、阻害におけるかかる差異は統計学的に有意なものである(モメタゾン単独と比較すると24.11% 対 2.85%であり、化合物2単独と比較すると24.11% 対4.17%であった)。本発明のMABA化合物をモメタゾンと組み合わせることによって、引き起こされる阻害効果は、両方の化合物の相加効果の算出と比較して、統計学的に高いものである。
【表8】
【0134】
表2および図2から明らかなことであるが、フルチカゾンと本発明のNABA化合物との組合せは、相当する成分を単独で用いた場合に比べ、末梢血の好中球におけるLPS誘発性のIL-8分泌の阻害において相乗効果を示す。
【0135】
化合物2をフルチカゾンと組み合わせたとき、阻害は、フルチカゾン単独または化合物2単独によって得られるものよりも大きい。さらに、阻害における差異は統計学的に有意である(フルチカゾンと比較した場合、24.57% 対 10.18%、ならびに化合物1単独と比較した場合、24.57% 対4.17%)。本発明のMABA化合物とフルチカゾンの組合せにより得られるこの阻害効果は、両方の化合物の相加効果の計算値よりも有意に高い。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】化合物2およびそのモメタゾンとの組合せ剤の、健常対象由来の末梢血好中球におけるLPS誘発性のIL-8阻害における効果を示す。
図2】化合物2およびそのフルチカゾンとの組合せ剤の、健常対象由来の末梢血好中球におけるLPS誘発性のIL-8阻害における効果を示す。
図1
図2