(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の送電部が、第1送電器と前記第1送電器に接続された一つの第1送電アンテナとを有するマスター送電部と、第2送電器と前記第2送電器と接続された複数の第2送電アンテナとを有するスレーブ送電部とで構成される無線給電システムを使用して、一つの受電機器に対して前記複数の送電部で電力伝送する無線給電方法であって、
前記マスター送電部が前記マスター送電部の送電範囲内の前記受電機器を検知する第1ステップと、
次いで、前記スレーブ送電部からの送電を停止した状態で、前記マスター送電部の前記第1送電アンテナの方向を変化させながら送電して、前記受電機器が受電する電力量が最大となる前記マスター送電部の前記第1送電アンテナの方向を検出する第2ステップと、
次いで、前記マスター送電部からの送電を停止させて、前記スレーブ送電部の複数の前記第2送電アンテナを一つずつ順次切り替えながら前記第2送電アンテナから送電して、前記受電機器が受電する電力量が最大となる前記第2送電アンテナを検出する第3ステップと、
次いで、前記マスター送電部の前記第1送電アンテナと前記スレーブ送電部の前記検出された第2送電アンテナとの両方から送電しながら、前記マスター送電部もしくは前記スレーブ送電部のどちらか片方の送電電波の位相を、前記受電機器が受電する電力量が最大となる位相に調整する第4ステップと、
次いで、前記調整された位相に基づき、前記受電機器に対して前記マスター送電部の前記第1送電アンテナと前記スレーブ送電部の前記検出された第2送電アンテナとの両方から送電する第5ステップとを備える、無線給電方法。
前記複数の送電部は、一つの前記マスター送電部と、前記スレーブ送電部である第1スレーブ送電部と、前記第1スレーブ送電部とは異なる第2スレーブ送電部とで構成され、
前記第2ステップの後に、前記第1スレーブ送電部において、前記受電機器が受電する電力量が最大となる前記第2送電アンテナの検出を前記第3ステップで行い、次いで、前記位相調整を前記第4ステップで行い、
その後、前記第5ステップの前に、前記第2スレーブ送電部において、前記受電機器が受電する電力量が最大となる前記第2送電アンテナの検出を、再び、前記第3ステップで行い、次いで、前記位相調整を前記第4ステップで行ったのち、
前記第5ステップにおいて、前記マスター送電部と前記第1スレーブ送電部と前記第2スレーブ送電部とで同時に送電を行う、請求項1に記載の無線給電方法。
前記第1ステップにおいて、前記マスター送電部が前記マスター送電部の送電範囲内の前記受電機器を検知することにより、前記マスター送電部の前記送電範囲内に前記受電機器が複数存在することを検知したとき、
前記複数の受電機器のそれぞれに対して、前記第2ステップから前記第4ステップまでを順に実行し、
その後、前記第5ステップで、前記複数の受電機器のそれぞれの位相調整結果に基づき、前記複数の受電機器のそれぞれに対して順次送電を行う、請求項1に記載の無線給電方法。
前記第1ステップにおいて、前記マスター送電部が前記マスター送電部の送電範囲内の前記受電機器を検知することにより、前記マスター送電部の前記送電範囲内に前記受電機器が複数存在することを検知したとき、
前記複数の受電機器のそれぞれに対して、前記第2ステップから前記第4ステップまでを実行し、
その後、前記第5ステップで、前記複数の受電機器のそれぞれの位相調整結果に基づき、前記複数の受電機器のそれぞれに対して順次送電を行う、請求項2に記載の無線給電方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(無線給電システムの構成)
図1Aは、本実施の形態における無線給電方法を実施する無線給電システムを示す図である。
図1B〜
図1Dは、それぞれ、無線給電システムの複数の送電部を構成するするマスター送電部203とスレーブ送電部206と、受電機器207との具体的な構成図である。
無線給電システムは、マスター送電部203と、スレーブ送電部206とを備えている。
【0010】
図1Bに示すように、マスター送電部203は、送電範囲208内にマイクロ波を放射する第1送電アンテナ201と、第1送電アンテナ201に接続され放射するマイクロ波を第1マイクロ波発生部202cで発生してその送電方向を制御する第1制御装置202aと第1記憶装置202bとなどを有する第1送電器202とで構成される。第1送電器202の構成の詳細については、後述する。一例として、第1送電アンテナ201は、
図1Aに示すように、送電範囲208の中央の上方に配置されている。第1記憶装置202bには、マスター送電部203の動作に必要な情報、例えば第1制御装置202aの制御動作に必要な情報及び制御した結果の情報などが記憶される。
【0011】
図1Cに示すように、スレーブ送電部206は、送電範囲208内の第1送電アンテナ201とは異なる位置でかつ互いに異なる位置にそれぞれ配置されてマイクロ波を放射する複数の第2送電アンテナ204と、第2送電アンテナ204と接続されて、それらの第2送電アンテナ204を切り替えて位相調整機能を制御する第2制御装置205aと第2記憶装置205bとなどを有する第2送電器205とで構成される。第2送電器205の構成の詳細については、後述する。一例として、第2送電アンテナ204は、第1送電アンテナ201の周囲に、例えば第1送電アンテナ201の周囲の四方に、配置されている(
図4A参照)。第2記憶装置205bには、スレーブ送電部206の動作に必要な情報、例えば第2制御装置205aの制御動作に必要な情報及び制御した結果の情報などが記憶される。
【0012】
第1送電器202と第2送電器205とは互いに接続されて、必要な情報を送受信可能とし、例えば、第1送電器202から送電開始情報などの情報が第2送電器205に送信可能としている。
【0013】
図1Dに示すように、給電対象となる受電機器207は、発信部207aと、マイクロ波受電部207bと、直流電力変換部207cと、電池207dとを備えている。受電機器207は、受電機器207が存在していることを意味する存在情報とマイクロ波受電部207bでの受電情報と電池207dの充電状態の情報とをそれぞれ発信する発信部207aと、マイクロ波受電部207bと、直流電力変換部207cと、電池207dとを備えている。なお、受電機器207は、構成要素の一部として電池207dを備えるのではなく、
図1Fに示すように、受電機器207の外部に、受電機器207とは別に電池207dを配置し、必要なときのみ受電機器207と電池207dとを接続可能にしてもよい。また、受電機器207としては電池207dを備えず、受電機器207では、充電することなく、受電した電力を使用するようにしてもよい。受電機器207は、送電範囲208内に位置するとき発信部207aで存在情報を発信するとともに、前記マスター送電部203の第1マイクロ波発生部202cとスレーブ送電部206の第2マイクロ波発生部205cとからそれぞれ放射されたマイクロ波をマイクロ波受電部207bで受電し、直流電力変換部207cで直流電力に変換した後、変換した直流電力を自らの電源あるいは電池207dへの充電電力として活用するものとする。
【0014】
マスター送電部203の第1送電器202は、第1制御装置202aと、第1記憶装置202bと、第1情報取得部202dと、アンテナ方向移動部202eと、情報出力部202fとを備えている。マスター送電部203は、第1制御装置202aでの制御の下に、送電範囲208内における受電機器207の有無の情報(すなわち、存在情報)を無線通信により受電機器207から第1情報取得部202dで取得することができ、第1送電器202で、第1送電アンテナ201を使用して第1送電アンテナ201の方向をアンテナ方向移動部202eで変更しつつ第1マイクロ波発生部202cで電力を送電範囲208内の任意の方向へ送電することで、受電機器207のマイクロ波受電部207bが受電した電力量(すなわち、受電電力量)などの受電情報を、第1情報取得部202dで無線通信により受電機器207の発信部207aから取得することができるものとする。取得した情報は、情報出力部202fから出力することができる。
アンテナ方向移動部202eで第1送電アンテナ201の方向を変更する構成としては、例えば、アンテナの方向をモータなどで機械的に回転させる装置で構成したり、又は、アンテナの送電方向を電気的に制御する回路により行うこともできる。
また、スレーブ送電部206の第2送電器205は、第2制御装置205aと、第2記憶装置205bと、第2マイクロ波発生部205cと、第2情報取得部205eとを備えている。スレーブ送電部206についても、第2制御装置205aでの制御の下に、第2送電器205で、第2送電アンテナ204を使用して第2マイクロ波発生部205cで送電範囲208内へ電力の送電を行うことで、受電機器207のマイクロ波受電部207bが受電した電力量を、第2情報取得部205eで無線通信により受電機器207の発信部207aから取得することが出来るものとする。
【0015】
(無線給電方法)
本実施の形態における無線給電方法は、
図1Eに示すように、以下の5個のステップS1〜S5で構成されている。
<第1ステップS1>
まず、第1ステップS1において、第1制御装置202aの制御の下に、マスター送電部203の第1マイクロ波発生部202cを用いて送電範囲208内にマイクロ波を放射して、第1送電器202で、受電機器207の有無の検知及び第2ステップS2における送電開始を判断する。
第1ステップS1において、無線通信により受電機器207の発信部207aから発信される存在情報の有無の情報を第1送電器202の第1情報取得部202dで取得した結果、送電範囲208内に受電機器207が無いと第1送電器202の第1制御装置202aで判断したときは、第1制御装置202aにより、第2ステップS2でのマスター送電部203からの送電を中止する。
一方、第1ステップS1において、無線通信により受電機器207の発信部207aから発信される存在情報の有無の情報を第1送電器202の第1情報取得部202dで取得した結果、送電範囲208内に受電機器207の存在情報が有ると第1送電器202の第1制御装置202aで判断したときは、第2ステップS2に進む。
<第2ステップS2>
第2ステップS2においては、第1送電器202の第1制御装置202aの制御の下で、第1マイクロ波発生部202cからの送電を開始する。すなわち、第2ステップS2で送電開始を第1制御装置202aで行うときは、第1制御装置202aの制御の下に、第1送電アンテナ201の方向をアンテナ方向移動部202eで変更しつつ第1マイクロ波発生部202cからの送電を行って送電方向を制御して、最も効率的に送電できる方向を第1制御装置202aで探索する。このとき、まず、第1送電器202のアンテナ方向移動部202eで、第1送電アンテナ201の方向を変化させて送電方向を制御しつつ第1マイクロ波発生部202cで送電し、受電機器207の発信部207aから発信されかつ受電機器207のマイクロ波受電部207bでの受電情報に含まれる受電した電力量を無線通信により第1情報取得部202dで取得する。これを、受電機器207が存在し得る範囲を含む所定角度、例えば、360度の範囲内で行い、最も効率的に送電できる方向を第1制御装置202aで探索する。
最も効率的に送電できる方向とは、受電機器207が受電する電力量が最大となる方向である。その結果、第1送電器202の情報出力部202fから第2送電器205の第2情報取得部205eに、マスター送電部203で探索した最も効率的に送電できる方向の情報を含む信号を、調整完了の信号として出力する。
【0016】
<第3ステップS3>
次に、第3ステップS3において、スレーブ送電部206を用いた送電を行う。スレーブ送電部206の第2送電器205の第2制御装置205aでは、第2送電アンテナ204を順次切り替えて送電を行い、複数の第2送電アンテナ204の中から最も高い電力を第2マイクロ波発生部205cから送電できる第2送電アンテナ204を1つ選ぶ。
なお、第3ステップS3における選択は、前記最も高い電力を送電できる第2送電アンテナ204を選ぶことに限定されるものではなく、例えば、第2制御装置205aに接続された第2記憶装置205bに第2送電アンテナ204の位置情報を予め記憶しておき、第1送電器202の情報出力部202fから取得した、最も効率的に送電できる方向に最も近い位置の第2送電アンテナ204を第2制御装置205aで選択することにより行うこともできる。第2制御装置205aで選択した情報についても、第2記憶装置205bに記憶することができる。
<第4ステップS4>
次いで、第4ステップS4において、第3ステップS3で選ばれた第2送電アンテナ204とマスター送電部203の第1送電アンテナ201とから同時に送電した状態で、第2送電器205の第2マイクロ波発生部205cからの送電電波、すなわち、マイクロ波の位相を、最も大きい電力を供給できる位相へ第2制御装置205aで第2マイクロ波発生部205cを調整する。
<第5ステップS5>
次いで、第5ステップS5においては、前記調整された位相に基づき、二つの送電部、すなわち、マスター送電部203の第1マイクロ波発生部202cとスレーブ送電部206の第2マイクロ波発生部205cとを用いて、受電機器207に対して、高い電力を効率的に送電する。
【0017】
前記無線給電方法のうちの第2ステップS2について以下に詳細に説明する。
(第2ステップS2でのマスター送電部203の送電方向に関する調整方法)
まず、マスター送電部203の調整方法について
図2A及び
図2Bを用いて詳細に説明する。
第2ステップS2前の前記ステップS1では、マスター送電部203の第1制御装置202aは、送電範囲208の範囲内で受電機器207の存在情報を検知する。この検知状態では、マスター送電部203は、受電機器207が送電範囲208内に存在することは分かっているが、その場所までは分からないものとする。
【0018】
次に、前記ステップS2において、まず、ステップS2aとして、受電機器207への送電を行う状態かどうかの判断をマスター送電部203の第1送電器202の第1制御装置202aで行う。つまり、受電機器207の発信部207aから発信された、電池207dの充電状態の情報を第1情報取得部202dで取得して、受電機器207が電力を受電できる状態かどうかの判断をマスター送電部203の第1制御装置202aで行う。例えば、受電機器207の充電状態の情報に基づき、受電機器207の充電電力が最大状態であって受電を行う必要がないと第1制御装置202aで判断した場合、又は、受電機器207が移動しており、安定して受電できる状態ではないと第1制御装置202aで判断した場合は、マスター送電部203は送電を行わない。ここで、受電機器207が移動しているか否かの判断は、以下のようにして第1制御装置202aで行うことができる。すなわち、一例として、マスター送電部203が送電を行った状態で、受電機器207の受電電力が変動し、安定していない状態であると第1制御装置202aで判断したとき、受電機器207は移動していると第1制御装置202aで判断することができる。また、
その受電機器207への送電を行う状態かどうかの第1制御装置202aによる判断方法は、以下の方法がある。例えば、受電機器207の発信部207aから発信された送電開始の信号(言い換えれば、送電開始情報)を、マスター送電部203の第1制御装置202aが受電したと判断するまで、マスター送電部203から送電を開始しない方法でも良い。又は、受電機器207の発信部207aから発信された受電電力量を、マスター送電部203の第1情報取得部202dで連続的に取得し、その電力量が安定している、つまり変化が小さいことをマスター送電部203の第1制御装置202aで判断したとき、マスター送電部203から送電を開始すると第1制御装置202aで判断するようにしても良い。
【0019】
ステップS2aに続くステップS2bとして、マスター送電部203から送電を行える状態であるとマスター送電部203の第1制御装置202aで判断できたら、マスター送電部203の第1マイクロ波発生部202cから送電を行う。このとき、その送電方向を
図2Aの矢印Aで示すように連続的に変化させるように第1送電器202の第1制御装置202aで制御して、受電機器207の受電電力が最も大きくなる方向を第1送電器202の第1制御装置202aで探索し、その方向に送電方向を第1送電器202で固定する。これにより、マスター送電部203の送電方向に関する調整を完了したものとする。
【0020】
前記無線給電方法のうちの第3ステップS3について以下に詳細に説明する。
(第3ステップS3及びS4における、スレーブ送電部206の調整方法)
スレーブ送電部206の調整方法について
図3A及び
図3Bを用いて説明する。
第2ステップS2が終了したのち、マスター送電部203の送電は停止した状態とし、マスター送電部203の第1送電器202から調整完了の信号を受けたスレーブ送電部206の第2送電器205の第2制御装置205aは、まず、ステップS3のうちのステップS3aとして、順次送電する第2送電アンテナ204を切り替えて、第2マイクロ波発生部205cから送電を行い、受電機器207の受電した電力量を無線通信により受電機器207から第2情報取得部205eで取得する。次いで、ステップS3のうちのステップS3bとして、第2送電アンテナ204の中で受電機器207の受電電力量が最も大きい第2送電アンテナ204を第2送電器205の第2制御装置205aで選び、その第2送電アンテナ204を第2制御装置205aで用いてスレーブ送電部206の第2マイクロ波発生部205cで送電を行うものとする。これで、ステップS3を終了する。
【0021】
次に、ステップS4として、選択された第2送電アンテナ204(
図3Aの符号204Aを参照)で送電した状態で、スレーブ送電部206の第2送電器205からアンテナ選択完了の信号を受けたマスター送電部203の第1送電器202による前記調整された送電方向への送電をスレーブ送電部206とマスター送電部203とで同時に行い、受電機器207の受電電力量を無線通信により受電機器207からスレーブ送電部206で取得する。スレーブ送電部206は、この受電機器207からの受電電力量を取得しながら、スレーブ送電部206の第2送電器205のマイクロ波の位相を調整し、受電機器207からの受電電力量が最も大きくなる位相へ調整する。これにより、スレーブ送電部206のアンテナ切り替え、及び、位相調整を完了したものとする。
【0022】
(効果)
以上の方法により、マスター送電部203及びスレーブ送電部206の送電方向調整と位相調整が完了し、広い空間の中に配置された受電機器207に対して、二つの送電部203,206及び第1及び第2送電器202,205を用いて、電波干渉なく、効率的に高い電力を送電することが可能となる。
【0023】
(変形例)
なお、本実施の形態では、スレーブ送電部206のマイクロ波の位相を調整することで、マスター送電部203とスレーブ送電部206との間の位相合成の調整を行ったが、マスター送電部203側に位相調整機能を持たせ、マスター送電部203で位相調整を行っても良い。
【0024】
なお、本実施の形態では、マスター送電部203の送電方向調整と、スレーブ送電部206のアンテナ切り替えと、位相調整と、という順番で調整を行ったが、スレーブ送電部206のアンテナ切り替えの後、マスター送電部203の送電方向調整を行い、位相調整を行う順番でも良い。
【0025】
次に、マスター送電部203とスレーブ送電部206とのアンテナ配置について説明する。アンテナ配置の考え方としては、マスター送電部203の第1送電アンテナ201はその送電方向を制御することで送電範囲208の全体に電力を送電できる配置であれば良く、その配置は、送電範囲208の周囲状況に応じて決定するものとする。
【0026】
スレーブ送電部206の第2送電アンテナ204は、マスター送電部203により十分な電力を送電できない場所に、その電力を補完する形で配置するものとする。
図1Aに示した実施の形態におけるマスター送電部203の第1送電アンテナ201と、スレーブ送電部206の第2送電アンテナ204との配置を、上方から見た関係を
図4Aに示す。
【0027】
この配置では、四角形の送電範囲208の中央にマスター側の第1送電アンテナ201が配置され、第1送電アンテナ201の周囲の四方にスレーブ側の第2送電アンテナ204が8個配置されているが、スレーブ側の第2送電アンテナ204の数、及びマスター側の第1送電アンテナ201のとの配置関係は、これ限定されることはない。
【0028】
また、本実施の形態においては、一つのマスター送電部203に対して、一つのスレーブ送電部206で構成しているが、別の変形例として、スレーブ送電部206は、複数個で構成しても良い。スレーブ送電部206が複数個で構成された場合のアンテナ配置について、例えばスレーブ送電部206を2つで構成した場合の配置例を
図5に示す。一例として、中央に配置されたマスター送電部203の第1送電アンテナ201の周りに、第1のスレーブ送電部206−1の第2送電アンテナ204と、第2のスレーブ送電部206−2の第3送電アンテナ301とが交互に配置されている。一例として、マスター送電部203の第1制御装置202aにより、第1のスレーブ送電部206−1と第2のスレーブ送電部206−2との以下のような動作制御を行うように構成している。この場合は、ステップS5において、マスター送電部203と複数のスレーブ送電部206−1,206−2とで同時に送電を行うことで、さらに高い電力を受電機器207に対して供給することが可能となる。その調整方法は、ステップS2でのマスター送電部203の送電方向調整が完了した後、
図4Bに示す、以下のステップS13a〜ステップS13dのように、ステップS3とステップS4とを複数のスレーブ送電部206−1,206−2のそれぞれについて実施したのち、ステップS5を行うように構成している。
すなわち、まず、ステップS13aとして、複数のスレーブ送電部206−1,206−2のうちの一つ目のスレーブ送電部206−1の第2送電アンテナ204の切り替え及び最大受電電力量の第2送電アンテナ検出のステップS3及び位相調整のステップS4を行う。
その後、ステップS13bとして、マスター送電部203、及び調整が完了したスレーブ送電部206−1の送電を停止する。
その後、ステップS13cとして、この送電を停止した状態で、複数のスレーブ送電部206−1,206−2のうち、未調整のスレーブ送電部206−2の有無をマスター送電部203の第1制御装置202aで判断し、未調整のスレーブ送電部206−2がなければ、次のステップS5に進む。未調整のスレーブ送電部206−2があれば、ステップS13dとして、次のスレーブ送電部206−2の第2送電アンテナ301の切り替え及び最大受電電力量の第2送電アンテナ検出のステップS3及び位相調整のステップS4を行う。すなわち、調整が完了しているマスター送電部203、スレーブ送電部206−1の全てで同時に送電を行った状態において、調整対象となるスレーブ送電部206−2に対して、受電機器207の受電電力が最も大きくなる位相へと位相調整を行う。
その後、ステップS13cに戻り、残りの未調整のスレーブ送電部206−2に対してステップS13dを順に実施する。この結果、このような最大受電電力量の第2送電アンテナ検出のステップS3及び位相調整のステップS4をスレーブ送電部206の数に応じて順次行っていくことで、全体として調整が完了する。
その後、先に述べたように、ステップS5において、マスター送電部203と複数のスレーブ送電部206−1,206−2とで同時に送電を行う。
【0029】
さらに別の変形例として、
図6に示すように、受電機器207に対して、送電範囲208の上方へのアンテナ配置だけではなく、送電範囲208の側面へ第4送電アンテナ401を配置する構成でも良い。第4送電アンテナ401は、スレーブ送電部206の一部として構成してもよいし、第2のスレーブ送電部206−2の一部として構成してもよいし、第3のスレーブ送電部の一部として構成してもよい。
【0030】
また、別の変形例として、本実施の形態では、受電機器207は一つであったが、同時に送電を行う受電機器207は一つであればよく、複数の受電機器207を配置し、順次送電を行うことも可能である。
【0031】
複数の受電機器207に順次送電を行う方法について、まず、マスター送電部203の調整方法について、
図7A及び
図7Bを用いて説明する。
図7A及び
図7Bでは、一例として、複数の受電機器207として3台の受電機器207がマスター送電部203の送電範囲208内に配置されている場合の説明図及び動作のフローチャートを示している。
まず、ステップS1において、
図1Eと同様に、マスター送電部203は、送電範囲208内の複数の受電機器207を検知する。
次いで、第2ステップS2のうちのステップS2aにおいて、前記と同様のステップS2の方法にて、ステップS1で検知した複数の受電機器207のそれぞれが送電を行う状態かどうかの判断を第1制御装置202aで行う。
次いで、第2ステップS2のうちのステップS2bにおいて、マスター送電部203は第1マイクロ波発生部202cから送電を行い、その送電方向をアンテナ方向移動部202eで連続的に変化させるように第1送電器202の第1制御装置202aで制御して、受電機器207のそれぞれについて、受電電力が最も大きくなる方向を第1送電器202の第1制御装置202aで探索し、その方向に送電方向を第1送電器202の第1記憶装置202bで記憶する。これにより、第2ステップS2を終了する。
次に、ステップS3及びS4における、スレーブ送電部206の調整方法について、
図8を用いて説明する。
第2ステップS2が終了したのち、マスター送電部203の送電は停止した状態とし、マスター送電部203の第1送電器202から調整完了の信号を受けたスレーブ送電部206の第2送電器205の第2制御装置205aは、まず、ステップS3のうちのステップS3aとして、順次送電する第2送電アンテナ204を切り替えて、第2マイクロ波発生部205cから送電を行う。
次いで、ステップS3のうちのステップS3bとして、調整を行う一つ目の受電機器207の受電した電力量を無線通信により前記一つ目の受電機器207から第2情報取得部205eで取得し、第2送電アンテナ204の中で受電機器207の受電電力量が最も大きい第2送電アンテナ204を、第2送電器205の第2制御装置205aで選択して第2記憶装置205bに記憶する。
これらのステップS3a及びS3bの方法を、検出した複数の受電機器207それぞれについて順次行い、それぞれの受電機器207に対応する第2送電アンテナ204を第2送電器205で選択して第2記憶装置205bに記憶する。
次に、ステップS4において、複数の受電機器207のそれぞれについて、マスター送電部203は、第1記憶装置202bに記憶された送電方向で送電する。同時に、スレーブ送電部206は、第2記憶装置205bに記憶された第2送電アンテナ204で送電する。この状態で、受電機器207の受電電力量を無線通信によりスレーブ送電部206の第2情報取得部205eで取得する。第2情報取得部205eで取得した受電機器207からの受電電力量に基づき、スレーブ送電部206の第2送電器205の第2マイクロ波発生部205cから発生するマイクロ波の位相を第2制御装置205aで調整し、受電機器207からの受電電力量が最も大きくなる位相へ第2制御装置205aで調整する。
この方法を、複数の受電機器207のそれぞれについて順次行うことで、複数の受電機器207について、マスター送電部203の送電方向、スレーブ送電部206の送電アンテナの選択、及び位相が調整を完了したものとし、第1記憶装置202b及び第2記憶装置205bにそれぞれ記憶する。
次いで、この調整完了が第1記憶装置202b及び第2記憶装置205bに記憶された状態で、ステップS5において、それぞれの受電機器207に対して、記憶された情報に基づく第1制御装置202a及び第2制御装置205aの制御により、マスター送電部203とスレーブ送電部206とで同時に順次送電を行うものとする。
複数の受電機器207に対する順次送電の方法は、受電電力の少ない方など受電機器の状態をマスター送電部203の第1情報取得部202dが例えばステップS2で取得し、その優先順位の高い方から、又は、予め決められた方からなど、第1制御装置202aで任意に決めることができる。
【0032】
前記した種々の変形例にかかる方法によれば、広い空間の中に配置された受電機器207に対して、複数の送電部203,206を用いて、電波干渉なく、効率的に高い電力を給電することが可能となる。
【0033】
なお、本発明を前記実施形態及び変形例に基づいて説明してきたが、本発明は、前記の実施形態及び変形例に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
前記各制御装置202a,205aの一部又は全部は、具体的には、プロセッサ例えばマイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、その一部又は全部は、それぞれの機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。なお、前記実施形態又は変形例における制御装置を構成する要素の一部又は全部を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、複数の送電部が、第1送電器と前記第1送電器に接続された一つの第1送電アンテナとを有するマスター送電部と、第2送電器と前記第2送電器と接続された複数の第2送電アンテナとを有するスレーブ送電部とで構成される無線給電システムを使用して、一つの受電機器に対して前記複数の送電部で電力伝送する無線給電方法に使用され、
コンピュータに、
前記マスター送電部が前記マスター送電部の送電範囲内の前記受電機器を検知する第1ステップと、
次いで、前記スレーブ送電部からの送電を停止した状態で、前記マスター送電部の前記第1送電アンテナの方向を変化させながら送電して、前記受電機器が受電する電力量が最大となる前記マスター送電部の前記第1送電アンテナの方向を検出する第2ステップと、
次いで、前記マスター送電部からの送電を停止させて、前記スレーブ送電部の複数の前記第2送電アンテナを一つずつ順次切り替えながら前記第2送電アンテナから送電して、前記受電機器が受電する電力量が最大となる前記第2送電アンテナを検出する第3ステップと、
次いで、前記マスター送電部の前記第1送電アンテナと前記スレーブ送電部の前記検出された第2送電アンテナとの両方から送電しながら、前記マスター送電部もしくは前記スレーブ送電部のどちらか片方の送電電波の位相を、前記受電機器が受電する電力量が最大となる位相に調整する第4ステップと、
次いで、前記調整された位相に基づき、前記受電機器に対して前記マスター送電部の前記第1送電アンテナと前記スレーブ送電部の前記検出された第2送電アンテナとの両方から送電する第5ステップと、
として機能させるための無線給電方法に使用される制御プログラムである。
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスク、磁気ディスク、又は、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
なお、前記様々な実施の形態又は変形例のうちの任意の実施の形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。すなわち、実施の形態同士の組み合わせ又は変形例同士の組み合わせ又は実施の形態と変形例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施の形態又は変形例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。