(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、各図におけるx軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれは、マニホールドの高さ方向、短手方向(幅方向)、及び長手方向に対応する。また、各図におけるx軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれは、各燃料電池セル及び支持基板の長手方向、短手方向(幅方向)、及び厚さ方向に対応する。また、本明細書の「上」及び「下」は、マニホールド及びセルスタック装置を水平面に載置したときのマニホールドの高さ方向(x軸方向)を基準とする。
【0016】
図1〜
図7を参照して、本発明の一実施の形態であるセルスタック装置及び燃料電池セルについて説明する。実施の形態1のセルスタック装置及び燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に用いられる。
【0017】
[セルスタック装置]
図1〜
図3に示すように、セルスタック装置1は、複数の燃料電池セル100と、マニホールド200と、第1接合材300と、振動防止部材400と、筐体500とを備えている。
【0018】
[燃料電池セル]
図1〜
図3に示すように、燃料電池セル100は、マニホールド200から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル100は、マニホールド200の上壁230から上方に延びている。燃料電池セル100の下端部101は、マニホールド200の挿入孔231内に挿入されている。なお、燃料電池セル100の下端部101が挿入孔231内に挿入された状態において、燃料電池セル100の下端部101の外周面と挿入孔231の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に第1接合材300が充填されている。このため、燃料電池セル100の下端部101は、マニホールド200に固定されている。一方、燃料電池セル100の上端部102は、自由端である。燃料電池セル100は、マニホールド200によって、片持ち状態で支持され、自立している。
【0019】
各燃料電池セル100は、マニホールド200の長手方向に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。
図2に示すように、各燃料電池セル100は、第1集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。第1集電部材4は、各燃料電池セル100の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル100を接続している。なお、第1集電部材4は、第2接合材5によって各燃料電池セル100に接合されている。第1集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、第1集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体または金属などによって形成されている。
【0020】
図2〜
図6に示すように、燃料電池セル100は、支持基板110と、複数の発電素子部120とを備えている。各発電素子部120は、支持基板110の両面に支持されている。なお、各発電素子部120は、支持基板110の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部120は、燃料電池セル100の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施の形態に係る燃料電池セル100は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0021】
各発電素子部120は、電気的接続部160(
図5参照)によって互いに電気的に接続されている。また、燃料電池セル100の上端部102側において、支持基板110の一方面に形成された発電素子部120と他方面に形成された発電素子部120とが第2集電部材6(
図2参照)によって電気的に接続されている。なお、各発電素子部120は、直列に接続されている。
【0022】
<支持基板>
支持基板110は、燃料電池セル100の長手方向(上下方向)に延びるとともに、幅方向に沿って設けられた複数のガス流路111を内部に有している。ガス流路111は、マニホールド200の挿入孔231を介して、マニホールド200の内部空間と連通している。
【0023】
支持基板110の長手方向は、燃料電池セル100の長手方向と同じ方向である。各ガス流路111は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路111は、燃料電池セル100の長手方向の両端部において開口している。
【0024】
支持基板110は、絶縁性であり、例えば、セラミックスで形成される。具体的には、支持基板110は、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiOとY
2O
3(酸化イットリウム)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板110は、多孔質である。支持基板110の気孔率は、例えば、20〜60%である。
【0025】
支持基板110は、上下方向に延びる外表面112と、この外表面112の下端に連なる下端面116と、外表面112の上端に連なる上端面117と、を有している。
【0026】
本実施の形態の支持基板110は、長手方向に延びる扁平な円筒平板型である。このため、
図4に示すように、支持基板110は、第1主面113と、この第1主面113の反対側の第2主面114と、第1主面113と第2主面114とを接続する一対の側端面115とを有している。第1主面113、第2主面114及び一対の側端面115は、支持基板110の外表面を構成する。第1主面113と第2主面114とは、ガス流路111を挟んで対向し、互いに平行に延びる。第1主面113と第2主面114との間隔、すなわち支持基板110の厚さは、例えば1〜10mmである。一対の側端面115は、幅方向の両端である。第1主面113及び第2主面114は平面であり、一対の側端面115は、曲面である。
【0027】
下端面116は、第1主面113、第2主面114及び一対の側端面115の下端と連なっている。下端面116は、下方を向く面である。詳細には、下端面116は、支持基板110の下端に位置し、上下方向と交差する方向に延びる面である。上端面117は、第1主面113、第2主面114及び一対の側端面115の上端と連なっている。上端面117は、上方を向く面である。下端に位置する下端面116と、上端に位置する上端面117とは、対向している。
【0028】
図5に示すように、支持基板110の外表面112は、複数の第1凹部112aを有している。各第1凹部112aは、支持基板110の両面(第1主面113及び第2主面114)に形成されている。各第1凹部112aは、支持基板110の長手方向において互いに間隔をあけて形成されている。
【0029】
<発電素子部>
図5に示すように、各発電素子部120は、燃料極130、電解質140、及び空気極150を有している。また、各発電素子部120は、反応防止膜121をさらに有している。
【0030】
燃料極130は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極130は、燃料極集電部131と、燃料極活性部132とを有する。燃料極集電部131は、第1凹部112a内に配置されている。各燃料極集電部131は、第2凹部131a及び第3凹部131bを有している。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置されている。
【0031】
燃料極集電部131は、例えば、NiOとYSZとから構成されてもよいし、NiOとY
2O
3とから構成されてもよいし、NiOとCSZとから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ、すなわち第1凹部112aの深さは、例えば、50〜500μmである。
【0032】
燃料極活性部132は、例えば、NiOとYSZとから構成されてもよいし、NiOとGDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、例えば、5〜30μmである。
【0033】
電解質140は、燃料極130上を覆うように配置されている。詳細には、電解質140は、あるインターコネクタ161から他のインターコネクタ161まで燃料電池セル100の長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル100の長手方向において、電解質140とインターコネクタ161とが交互に配置されている。
【0034】
電解質140は、イオン伝導性を有し、かつ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質140は、例えば、YSZから構成されてもよいし、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質140の厚さは、例えば、3〜50μmである。
【0035】
反応防止膜121は、緻密な材料から構成される焼成体であり、平面視において、燃料極活性部132と略同一の形状であり、燃料極活性部132と略同じ位置に配置されている。反応防止膜121は、電解質140内のYSZと空気極150内のSr(ストロンチウム)とが反応して電解質140と空気極150との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜121は、例えば、GDCから構成される。反応防止膜121の厚さは、例えば、3〜50μmである。
【0036】
空気極150は、反応防止膜121上に配置されている。空気極150は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極150は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極150は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極150の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0037】
電気的接続部160は、隣り合う発電素子部120を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部160は、インターコネクタ161及び空気極集電膜162を有する。インターコネクタ161は、第3凹部131b内に配置されている。インターコネクタ161は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ161は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成されてもよいし、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ161の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0038】
空気極集電膜162は、隣り合う発電素子部120のインターコネクタ161と空気極150との間を延びるように配置される。空気極集電膜162は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電膜162は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3から構成されてもよいし、LSC=(La,Sr)CoO
3から構成されてもよいし、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜162の厚さは、例えば、50〜500μmである。
【0039】
図6に示すように、燃料電池セル100の下端部101は、緻密膜122によって覆われている。詳細には、緻密膜122は、支持基板110を覆っている。緻密膜122は、下端部側に形成された発電素子部120と電気的に接続されている。詳細には、緻密膜122は、電気的接続部160と電気的に接続されている。緻密膜122は、空気極集電膜162と支持基板110との間から近位側に向かって延びている。
【0040】
緻密膜122は、緻密膜122の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜122の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜122の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜122は、絶縁性セラミックスで構成されている。
【0041】
具体的には、緻密膜122は、上述した電解質140と反応防止膜121とによって構成することができる。緻密膜122を構成する電解質140は、支持基板110を覆っており、インターコネクタ161から支持基板110の下端近傍まで延びている。また、緻密膜122を構成する反応防止膜121は、電解質140と空気極集電膜162との間に配置されている。なお、緻密膜122は、電解質140のみで構成されていてもよいし、電解質140及び反応防止膜121以外の材料によって構成されていてもよい。
【0042】
[マニホールド]
図1〜
図3に示すように、マニホールド200は、燃料電池セル100に反応ガスを供給する。マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。
図1に示すように、マニホールド200の内部空間には、導入配管Pを介して燃料ガスが供給される。
図2に示すように、マニホールド200は、この内部空間と外部とを連通する複数の挿入孔231を有している。
【0043】
マニホールド200は、実質的に直方体状である。
図3に示すように、マニホールド200は、底壁210と、側壁220と、上壁230と、フランジ部240とを備えている。
【0044】
底壁210、側壁220、及びフランジ部240は、一体成形されている。一体成形された底壁210、側壁220及びフランジ部240と、上壁230とは、互いに別部材であり、接合されている。底壁210、側壁220、上壁230、及びフランジ部240は、例えば、耐熱性を有するような金属で構成されている。具体的には、マニホールド200は、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、Ni基合金などによって構成されている。
【0045】
底壁210は、平面視(x軸方向視)が矩形状である。側壁220は、底壁210の外周部から上方に延びている。フランジ部240は、側壁220の上端部から外方に延びている。フランジ部240は、環状である。
【0046】
上壁230は、側壁220の上端部を塞ぐように構成されている。具体的には、上壁230の外周部は、フランジ部240上に配置されている。マニホールド200の内部空間を密閉するため、上壁230が全周に渡って、フランジ部240に接合されている。上壁230は、例えば、接合材、溶接などによって、フランジ部240に接合されている。
【0047】
図2に示すように、上壁230は、燃料電池セル100が挿入される挿入孔231を複数有している。各挿入孔231は、マニホールド200の幅方向(y軸方向)に延びている。また、挿入孔231は、マニホールド200の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0048】
[第1接合材]
第1接合材300は、各燃料電池セル100と、マニホールド200とを接合する。詳細には、第1接合材300は、燃料電池セル100の下端部101とマニホールド200の上壁230とを接合している。また、第1接合材300は、緻密膜122と接触している。なお、燃料電池セル100がマニホールド200に固定された状態において、挿入孔231とガス流路111とが連通している。
【0049】
第1接合材300は、マニホールド200の内部空間(燃料ガスに曝される空間)と、セルスタック装置1の外部(酸素を含有するガスに曝される空間)とを区画することによって、燃料ガスと酸素を含有するガスとの混合を防止する機能を有している。
【0050】
第1接合材300は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、またはSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。第1接合材300の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材300は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0051】
[振動防止部材]
振動防止部材400は、複数の燃料電池セル100の共振を抑える部材である。
図1及び
図7に示すように、振動防止部材400は、複数の燃料電池セル100のそれぞれの側端部と筐体500との間に配置されている。振動防止部材400は、複数の燃料電池セル100の一方の側端部と筐体500との間に配置されていてもよいが、本実施の形態では複数の燃料電池セル100の両方の側端部と筐体500との間に配置されている。振動防止部材400は、
図7に示すように、筐体500に支持されている。なお、燃料電池セル100の側端部とは、側端面115を含む端部であり、本実施の形態では、発電素子部120が形成されていない端部である。
【0052】
図7及び
図8に示すように、振動防止部材400は、櫛歯状である。詳細には、振動防止部材400は、基部410と、突出部420とを有している。基部410と突出部420とは、別部材が連結されてもよいが、本実施の形態では、一体成形されている。
【0053】
基部410は、複数の燃料電池セル100の配列方向に沿って延びている。基部410は、板状である。
【0054】
突出部420は、基部410と連結されている。突出部420は、隣り合う燃料電池セル100間において側端面115から内部に突出している。それぞれの突出部420は、燃料電池セル100の側端部と嵌合する。
図7では、側端面115から、ガス流路111の手前まで延びている。突出部420により、複数の燃料電池セル100は、連結される。
【0055】
隣り合う突出部420間は、凹部401をなす。凹部401には、燃料電池セル100の少なくとも一方の側端部が入り込んでいる。すなわち、凹部401と側端部とは、嵌合している。このため、筐体500に保持された振動防止部材400の凹部401により、側端部が保持されている。
【0056】
凹部401は側端部を受け入れ、凹部401と側端部とは密着している。凹部401と側端部とは、接していてもよく、他の部材を介して嵌合されてもよい。
【0057】
図7に示す隣り合う燃料電池セル100間の距離をX、振動防止部材400の凹部401の深さをLとしたときに、L/Xは、0.015以上であることが好ましく、0.020以上であることがより好ましく、0.1以上であることがより一層好ましい。0.015≦L/Xを満たす場合、燃料電池セル100とマニホールド200との接合部にクラックが生じることを効果的に抑制できる。L/Xの数値が大きいほど振動防止効果が高いので好ましいが、発電素子部120の設置スペースの減少を防止する観点から、L/Xの上限は、例えば10.0であり、好ましくは3.0であり、より好ましくは2.5である。
【0058】
なお、深さLは、燃料電池セル100における振動防止部材400に嵌合された領域において、側端面115からの距離である。隣り合う2つの燃料電池セル100間の距離Xと、この2つの燃料電池セル100の側端部に入り込む振動防止部材400の凹部401の深さLとが、上記範囲を満たしていれば、残部の燃料電池セル100及び振動防止部材400は上記範囲を満たしていてもよく、満たしていなくてもよい。
【0059】
燃料電池セル100の高さに対する振動防止部材400の高さT(x軸方向の距離)の比(振動防止部材400の高さ/燃料電池セル100の高さ)は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.5以上であることがより一層好ましい。燃料電池セル100の高さに対する振動防止部材400の高さT(x軸方向の距離)の比は、大きいほど振動防止効果が高いので好ましいが、設置が容易である観点、及びセルスタック装置全体をコンパクトにできる観点から、比の上限値は、例えば1.5であり、好ましくは1.2であり、より好ましくは1.1である。
【0060】
なお、燃料電池セル100の高さに対する振動防止部材400の高さの比が1.0以上の場合、振動防止部材400は、燃料電池セル100の上端から上方に突出する。また、燃料電池セル100の高さに対する振動防止部材400の高さの比が1.0未満であって、振動防止部材400は、燃料電池セル100の上端から上方に突出してもよい。この場合には、以下の利点を有する。後述するように、燃料電池セル100の上端部では、発電に未使用の燃料ガスが燃焼される。すなわち、燃料電池セル100の上端部は燃焼場となる。燃料電池セル100の上端部から上方に断熱性を有した振動防止部材400が延伸していると、燃焼場から筐体500への放熱を抑制できる。これにより、燃料電池セル100の上端部の温度を維持できる。このため、燃料電池セル100の上端部での燃焼性を良好に維持でき、失火を抑制できると共に、燃料電池セル100の上方に改質器を設置した場合には改質器への熱供給を良好に行うことができる。
【0061】
振動防止部材400は、絶縁性材料で形成されている。また、振動防止部材400は、燃料電池セル100を構成する材料よりも変形性の高い材料であることが好ましく、例えば弾性を有することが好ましい。このような材料として、例えばアルミナファイバー、アルミナシリカ系ファイバー、アルカリ土類金属含有セラミックファイバーまたは非晶質セラミックファイバーが挙げられる。断熱機能を有する材料を用いると、振動防止部材400は、断熱材の機能を兼ねることができる。また気密性を有する材料を用いると、振動防止部材400は、空気極150に供給する酸素を含有するガスが逃げることを防止できる。
【0062】
振動防止部材400は、発電素子部120と接してもよいが、発電素子部120と接していないことが好ましい。振動防止部材400が発電素子部120と離隔されていると、発電効率が向上する。なお、振動防止部材400が多孔質材料で形成されることで、発電素子120の一部が振動防止部材400と接触していても、性能上の問題はない。
【0063】
図8は、燃料電池セル100の一方の側端部に入り込んで凹部401が形成された振動防止部材400を示す。燃料電池セル100の側端部と筐体500との間に配置されていない振動防止部材は、凹部401を有していない板状であってもよい。
【0064】
[筐体]
筐体500は、複数の燃料電池セル100、マニホールド200、第1接合材300、振動防止部材400などを収容している。筐体500は、例えば、金属材料から構成されている。より具体的には、筐体500は、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、Ni基合金などによって構成されている。
【0065】
[製造方法]
続いて、本実施の形態のセルスタック装置1の製造方法について
図1〜
図10を参照して説明する。
【0066】
まず、
図9に示すように、支持基板110上に発電素子部120を形成したセル体103を複数準備する。また、マニホールド200を準備する。そして、第1集電部材4、及び第2接合材5となる材料によって、各セル体103を互いに接続し、セル集合体104を作製する。なお、この段階では第2接合材5は焼成されておらず、各セル体103は互いに仮止めの状態である。
【0067】
次に、
図10に示すように、セル集合体104の各セル体の下端部101をマニホールド200の各挿入孔231に挿入する。なお、各セル体103が厚さ方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
【0068】
次に、
図2に示すように、挿入孔231に挿入されたセル体103とマニホールド200の上壁230とを接合するように第1接合材300となる材料を塗布する。
【0069】
次に、第1接合材300及び第2接合材5となる材料に対して熱処理が加えられる。この熱処理によって、第1接合材300及び第2接合材5が固化される。詳細には、第2接合材5は、熱処理を施されることによって焼成される。この結果、各燃料電池セル100と第1集電部材4とが固定される。また、第1接合材300となる材料は、熱処理を施されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第1接合材300が機能を発揮し、各燃料電池セル100の下端部101がマニホールド200の上壁230に固定される。
【0070】
また、振動防止部材400となる材料として、例えば、絶縁性材料の板状部材を準備する。次いで、板状部材を燃料電池セル100の側端部に食い込ませる。これにより、複数の燃料電池セルの少なくとも一方の側端部が振動防止部材400の凹部401に入り込む。
【0071】
なお、例えば、板状部材に凹部401を形成して振動防止部材400を準備した後に、振動防止部材400を燃料電池セル100の側端部に嵌合してもよい。
【0072】
最後に、複数の燃料電池セル100のそれぞれの側端部を連結した振動防止部材400が筐体500に支持されるように、燃料電池セル100、マニホールド200、第1接合材300、振動防止部材400などを筐体500の内部に収容する。
【0073】
上記工程を実施することによって、
図1〜
図8に示す燃料電池セル100及びセルスタック装置1を製造できる。
【0074】
なお、上記製造方法では、振動防止部材400が1つの絶縁性材料で構成された部材で形成されている場合を例に挙げて説明したが、2つ以上の部材を連結してもよい。
【0075】
[動作]
本実施の形態のセルスタック装置1の動作について、
図1〜
図8を参照して説明する。セルスタック装置1は、例えば以下のように動作する。
【0076】
マニホールド200を介して各燃料電池セル100のガス流路111内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板110の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質140の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。このセルスタック装置1を外部の負荷に接続すると、空気極150において下記の式1に示す電気化学反応が起こり、燃料極130において下記の式2に示す電気化学反応が起こる。
(1/2)O
2+2e
−→O
2− ・・・(式1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− ・・・(式2)
【0077】
さらに、支持基板110のガス流路111を流れる燃料ガスのうち発電に使用されなかった余剰燃料ガスは、ガス流路111の他端側に位置する排出口から外部に排出される。そして、排出口から排出される余剰燃料ガスと、酸素を含むガスとを混合して、燃焼する。
【0078】
(変形例)
[振動防止部材]
上述した実施の形態の振動防止部材は、複数の燃料電池セルの側端部の上下方向(x軸方向)における中央部分に入り込む構造を例に挙げて説明した。本発明の振動防止部材は、側端部の上下方向全体に入り込む構造であってもよく、側端部の上部及び下部の少なくとも一方に入り込む構造であってもよい。
【0079】
なお、振動防止部材は、側端面115と上端面117との境界部分に配置されてもよい。また、振動防止部材は、上端面117から上方に延伸するように配置されてもよい。この場合、ガス流路111の排出口から排出される余剰の反応ガスを上端部で燃焼させることを考慮して、振動防止部材は、上端面117におけるガス流路の排出口とは重ならない。
【0080】
また、両側端部に振動防止部材が配置される場合に、一方の側端部に取り付けられる振動防止部材と、他方の側端部に取り付けられる振動防止部材は、同じ構造を有してもよく、異なる構造を有してもよい。
【0081】
さらに、
図1では、1つの振動防止部材が複数の燃料電池セルの全ての側端部に入り込む構造であるが、配列方向(z軸方向)に複数に分割されていてもよい。例えば、一部の燃料電池セルの側端部に入り込む振動防止部材を複数設けることによって、全ての燃料電池セルの少なくとも一方の側端部を連結してもよい。
【0082】
[燃料電池セル]
上述した実施の形態のセルスタック装置は、支持基板110の1つの主面上に複数の発電素子部120が配置された横縞型を例に挙げて説明したが、本発明のセルスタック装置は、支持基板の1つの主面上に1つの発電素子が配置される縦縞型であってもよい。
【0083】
また、実施の形態のセルスタック装置は、円筒平板型の支持基板110を備えているが、本発明のセルスタック装置は、円筒型の支持基板を備えていてもよい。
【0084】
[マニホールド]
実施の形態では、マニホールド200に形成された1つの挿入孔231に1つの燃料電池セルの下端部が挿入されているが、本発明では、1つの挿入孔に複数の燃料電池セルが挿入されていてもよい。
【0085】
また、実施の形態のマニホールド200は、側壁220の上端面が開口し、その上端面を上壁230が塞いでいる構造であるが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、側壁及び上壁が一体であって、側壁の下端面が開口し、その下端面を底壁が塞いでいる構造であってもよい。
【0086】
また、実施の形態のマニホールド200は、側壁220が底壁210から略垂直に上方に延びているが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、側壁220は、上方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよく、下方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。
【実施例】
【0087】
本実施例では、複数の燃料電池セルの少なくとも一方の側端部が入り込む凹部を有する振動防止部材を備えることによる効果について調べた。
【0088】
(実施例1〜9)
実施例1〜9のセルスタック装置は、上述した実施の形態の製造方法にしたがって、製造した。具体的には、振動防止部材400となる材料として、アルミナシリカ系ファイバーで形成された板状部材を準備した。この板状部材を、燃料電池セルの両側端部に押し込んで、燃料電池セルの両側端部が入り込む凹部を有する振動防止部材とした。実施例1〜9において、隣り合う燃料電池セル間の距離をX、凹部の深さをLとしたときのL/Xは、下記の表1の通りであった。実施例1〜9において、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比は、0.2であった。なお、燃料電池セルは20枚であった。
【0089】
(比較例1)
比較例1のセルスタック装置は、振動防止部材を備えていない点において異なっていた。具体的には、実施例1〜9と同じ板状部材を準備し、燃料電池セルの両側端部に食い込ませずに、燃料電池セルの側端面と筐体との間に配置した。このため、比較例1では、振動防止部材の凹部は形成されなかった。
【0090】
(評価方法)
実施例1〜9及び比較例1のセルスタック装置について、x軸方向、y軸方向及びz軸方向に個別に振動を加えて、破壊の有無を調べた。具体的には、振動数を3〜200Hzとして、JIS Z0232に準拠してランダム振動試験を実施した。実施時間は30分とした。
【0091】
ランダム振動試験後の実施例1〜9及び比較例1のセルスタック装置について、ガスリーク量とクラック発生の有無とを調べた。ガスリーク量については、燃料電池セルのガス流路の出口端部を封止した上でマニホールドの導入配管よりアルゴンガスを供給し、マニホールド内部を印加圧20kPaまで高めて保持し、その時のガスリーク量を測定した。クラック有無の確認については、第1接合材の表面に浸透探傷剤を塗布し、マイクロスコープで観察することにより行った。その結果を、下記の表1の振動防止効果に示す。
【0092】
下記の表1において、「×」は、燃料電池セルが大きく破損したことを示す。「○」は、微小なクラックがあったが、ガスリークがなかったことを示す。「◎」は、クラックがなく、ガスリークがなかったことを示す。
【0093】
【表1】
(評価結果)
表1に示すように、比較例1のセルスタック装置は、燃料電池セルの側端面と筐体との間に板状部材を配置したにも関わらず、振動が加えられると、半分以上の燃料電池セルの根元部分にクラックが生じ、大きく破損した。このため、ガスリークも生じた。また、燃料電池セルの配列方向(z軸方向)による振動に特に弱いことがわかった。
【0094】
なお、上記特許文献1のセルスタック装置は、断熱材が設けられているが、その目的は断熱効果であって、振動に対する不具合を想定していない。つまり、上記特許文献1の断熱材は、例えば、比較例1のように燃料電池セルの側端部に板状部材を配置したものにすぎない。
【0095】
一方、実施例1〜9は、複数の燃料電池セルの少なくとも一方の側端部が入り込む凹部を有する振動防止部材を備えていたので、振動がどの方向に加えられても、燃料電池セルが大きく破損せず、ガスリークがなかった。これは、燃料電池セルの側端部と筐体との間に配置された振動防止部材が振動を吸収し、複数の燃料電池セルの共振を抑制できたことによると考えられる。
【0096】
また、L/Xが0.015以上の実施例2〜9のセルスタック装置は、振動が加えられても、燃料電池セルが破損しなかった。
【0097】
L/Xが大きいほど、振動による不具合を低減できるが、L/Xが3.0を超えた実施例9の場合、発電素子部の設置領域が小さかった。L/Xが3.0以下の実施例1〜8の場合、振動防止部材が内側に入り込む領域が大きくなりすぎないので、発電素子部を配置するスペースが大きかった。このため、0.015≦L/X≦3.0を満たす実施例2〜8は、振動による不具合を低減できるとともに、発電効率を向上できることがわかった。
【0098】
以上より、複数の燃料電池セルの少なくとも一方の側端部が入り込む凹部を有する振動防止部材を備えることにより、振動による不具合を低減できることが確認できた。また、0.015≦L/X≦3.0を満たすセルスタック装置は、振動による不具合をより低減できることが確認できた。さらに、0.015≦L/X≦3.0を満たすセルスタック装置は、高い性能を維持しつつ、大きな振動による不具合を低減できることが確認できた。
【0099】
(実施例10〜14)
実施例10〜14のセルスタック装置は、基本的には実施例1と同様であったが、L/X及び燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比が異なっていた。具体的には、実施例10〜14において、L/Xは0.5であった。また、実施例10〜14において、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比は、下記の表2の通りであった。なお、下記の表2において、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比を「振動防止部材/セル」と記載する。
【0100】
(評価方法)
実施例10〜14のセルスタック装置について、実施例1〜9及び比較例1の評価方法において、ランダム振動試験の実施時間を24時間にした点のみ変更した。つまり、実施例10〜14のセルスタック装置は、実施例1〜9及び比較例1よりも過酷な試験を課した。その結果を下記の表2に示す。
【0101】
【表2】
(評価結果)
0.015≦L/Xを満たす実施例10〜14のセルスタック装置は、過酷な振動試験に対して、ガスリークがなく、振動による不具合を大きく低減できた。
【0102】
さらに、0.015≦L/Xで、かつ、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比が0.01以上の実施例11〜14は、過酷な振動試験後であっても、軽微なクラックさえ発生せず、振動による不具合を特に大きく低減できた。
【0103】
なお、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比が大きいほど、振動による不具合を低減できる。しかし、実施例14のように、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比が1.5以上であると、セルスタック装置全体としてのサイズが大きかった。
【0104】
以上より、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比が0.01以上であると、振動による不具合を大きく低減できることが確認できた。また、燃料電池セルの高さに対する振動防止部材の高さの比が0.01以上1.2以下であると、振動による不具合を大きく低減できるとともに、小型化を実現できることが確認できた。
【0105】
以上のように本発明の実施の形態、変形例及び実施例について説明を行なったが、実施の形態、変形例及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態、変形例及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態、変形例及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。