特許第6501906号(P6501906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6501906-太陽電池モジュール 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501906
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20190408BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-552388(P2017-552388)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(86)【国際出願番号】JP2016084233
(87)【国際公開番号】WO2017090521
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2017年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-229758(P2015-229758)
(32)【優先日】2015年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】室伏 貴信
(72)【発明者】
【氏名】徳弘 淳
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−329240(JP,A)
【文献】 特開2010−232311(JP,A)
【文献】 特開2014−183286(JP,A)
【文献】 特開2010−100105(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0214738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面側保護部材と、裏面側保護部材と、太陽電池素子と、前記受光面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に前記太陽電池素子を封止する封止層と、を備える太陽電池モジュールであって、
前記受光面側保護部材は少なくとも前記太陽電池素子側表面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部を有し、
前記太陽電池素子には少なくとも受光面側表面にバスバー電極が設けられており、
前記封止層が前記受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間に設けられた受光面側封止層と、前記裏面側保護部材と前記太陽電池素子との間に設けられた裏面側封止層と、を有し、前記受光面側封止層と前記裏面側封止層との間に前記太陽電池素子が封止されており、
前記受光面側封止層はポリオレフィン系樹脂およびエチレン・極性モノマー共重合体から選択される少なくとも一種の樹脂を含み、
前記受光面側封止層を構成する太陽電池封止材の23℃における弾性率が5MPa以上30MPa以下であり、
前記受光面側封止層の平均厚さをX[mm]とし、受光面側の前記バスバー電極の平均厚さをY[mm]とし、前記凹部の深さをZ[mm]としたとき、
(X−Y−Z)で表される前記受光面側封止層の実効厚みが0.01mm以上0.20mm未満である太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記バスバー電極の平均厚さ(Y)が0.02mm以上0.6mm以下である太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記凹部の深さ(Z)が0.02mm以上0.5mm以下である太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記受光面側封止層に含まれる前記樹脂がエチレン・α−オレフィン共重合体を含む太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記太陽電池素子の平均厚さが0.01mm以上0.5mm以下である太陽電池モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記受光面側封止層の平均厚さ(X)が0.60mm以下である太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記受光面側封止層を構成する前記太陽電池封止材は潤滑油をさらに含む太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題、エネルギー問題等が深刻さを増す中、クリーンかつ枯渇のおそれが無いエネルギー生成手段として太陽電池が注目されている。太陽電池を建物の屋根部分等の屋外で使用する場合、太陽電池モジュールの形で使用することが一般的である。
【0003】
上記の太陽電池モジュールは、一般に、以下の手順によって製造される。まず、受光面側保護部材/太陽電池封止材/太陽電池素子/太陽電池封止材/裏面側保護部材の順に積層する。その後、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用することにより、太陽電池モジュールが製造される。このようにして製造される太陽電池モジュールは、耐候性を有し、建物の屋根部分等の屋外での使用にも適したものとなっている。
【0004】
太陽電池封止材として、例えば、特許文献1〜3に記載されたものが挙げられる。特許文献1には、太陽電池封止膜として、エチレン酢酸ビニル共重合体膜が記載されている。特許文献2には、α−オレフィン系共重合体からなる太陽電池封止材が記載されている。特許文献3には、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有する太陽電池封止材用樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53298号公報
【特許文献2】特開2006−210906号公報
【特許文献3】特開2010−258439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池モジュールにおいて、十分な光線透過率を確保することにより高い太陽光発電量を得る観点から、太陽電池封止材の薄膜化が試みられている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来の太陽電池モジュールでは、太陽電池封止材の厚さを薄くすると、太陽電池モジュールの作製時や、温度変化が大きい環境下で繰り返し使用した際に、応力によって太陽電池素子や配線に破損が起き、太陽電池モジュールの出力低下が起こりやすくなることが明らかになった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、太陽電池モジュールの出力低下が抑制され、かつ、封止層の厚みが薄い太陽電池モジュールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、太陽電池モジュールの出力低下が抑制され、かつ、封止層の厚みが薄い太陽電池モジュールを提供するために鋭意検討した。その結果、バスバー電極上の封止層の厚さと封止層を構成する太陽電池封止材の弾性率を特定の範囲に制御することで、太陽電池素子や配線の破損を抑制しつつ、封止層の薄膜化を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明によれば、以下に示す太陽電池モジュールが提供される。
【0010】
[1]
受光面側保護部材と、裏面側保護部材と、太陽電池素子と、上記受光面側保護部材と上記裏面側保護部材との間に上記太陽電池素子を封止する封止層と、を備える太陽電池モジュールであって、
上記受光面側保護部材は少なくとも上記太陽電池素子側表面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部を有し、
上記太陽電池素子には少なくとも受光面側表面にバスバー電極が設けられており、
上記封止層が上記受光面側保護部材と上記太陽電池素子との間に設けられた受光面側封止層と、上記裏面側保護部材と上記太陽電池素子との間に設けられた裏面側封止層と、を有し、上記受光面側封止層と上記裏面側封止層との間に上記太陽電池素子が封止されており、
上記受光面側封止層はポリオレフィン系樹脂およびエチレン・極性モノマー共重合体から選択される少なくとも一種の樹脂を含み、
上記受光面側封止層を構成する太陽電池封止材の23℃における弾性率が5MPa以上30MPa以下であり、
上記受光面側封止層の平均厚さをX[mm]とし、受光面側の上記バスバー電極の平均厚さをY[mm]とし、上記凹部の深さをZ[mm]としたとき、
(X−Y−Z)で表される上記受光面側封止層の実効厚みが0.01mm以上0.25mm未満である太陽電池モジュール。
[2]
上記[1]に記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記バスバー電極の平均厚さ(Y)が0.02mm以上0.6mm以下である太陽電池モジュール。
[3]
上記[1]または[2]に記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記凹部の深さ(Z)が0.02mm以上0.5mm以下である太陽電池モジュール。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記受光面側封止層に含まれる上記樹脂がエチレン・α−オレフィン共重合体を含む太陽電池モジュール。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記太陽電池素子の平均厚さが0.01mm以上0.5mm以下である太陽電池モジュール。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記受光面側封止層の平均厚さ(X)が0.60mm以下である太陽電池モジュール。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記受光面側封止層を構成する上記太陽電池封止材は潤滑油をさらに含む太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池モジュールの出力低下が抑制され、かつ、封止層の厚みが薄い太陽電池モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0013】
図1】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】太陽電池素子の受光面と裏面の一構成例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0015】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1で示す太陽電池モジュール10は、受光面側保護部材14と、裏面側保護部材15と、太陽電池素子13と、受光面側保護部材14と裏面側保護部材15との間に太陽電池素子13を封止する封止層11と、を備える。
受光面側保護部材14は少なくとも太陽電池素子13側表面に複数の微細な凹部14Aおよび複数の微細な凸部14Bを有し、太陽電池素子13には少なくとも受光面側表面にバスバー電極17が設けられている。封止層11は受光面側保護部材14と太陽電池素子13との間に設けられた受光面側封止層11Aと、裏面側保護部材15と太陽電池素子13との間に設けられた裏面側封止層11Bと、を有し、受光面側封止層11Aと裏面側封止層11Bとの間に太陽電池素子13が封止されている。受光面側封止層11Aはポリオレフィン系樹脂およびエチレン・極性モノマー共重合体から選択される少なくとも一種の樹脂(以下、樹脂(P)とも呼ぶ。)を含む。
受光面側封止層11Aを構成する太陽電池封止材の23℃における弾性率が5MPa以上30MPa以下であり、好ましくは6MPa以上28MPa以下であり、さらに好ましくは6MPa以上25MPa以下、特に好ましくは8MPa以上15MPa以下である。
受光面側封止層11Aの平均厚さをX[mm]とし、受光面側のバスバー電極17の平均厚さをY[mm]とし、凹部14Aの深さをZ[mm]としたとき、(X−Y−Z)で表される受光面側封止層11Aの実効厚みの下限が0.01mm以上、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.07mm以上、特に好ましくは0.08mm以上である。また、(X−Y−Z)で表される受光面側封止層11Aの実効厚みの上限が0.25mm未満、好ましくは0.20mm以下、より好ましくは0.20mm未満、さらに好ましくは0.18mm以下、特に好ましくは0.15mm以下である。
【0016】
受光面側封止層11Aの実効厚みを上記下限値以上とすることにより、太陽電池モジュールの作製時や、温度変化が大きい環境下で繰り返し使用した際に、応力によって太陽電池素子や配線に破損が起きるのを抑制でき、その結果、太陽電池モジュールにおける出力の低下を抑制することができる。
また、受光面側封止層11Aの実効厚みを上記上限値未満または以下とすることにより、封止層の薄膜化を実現でき、その結果、温度サイクル後も出力を維持しつつ厚みがより薄い太陽電池モジュールを得ることができる。
【0017】
受光面側封止層11Aの平均厚さ(X)は、受光面側封止層11Aを10cm×10cmの大きさにカットしたものの重量W(g/100cm)と、受光面側封止層11Aの密度D(g/cm)とを用いて、X=W/(D×10)により算出することができる。
【0018】
受光面側封止層11Aの平均厚さ(X)は、モジュールの小型化の観点から、0.60mm以下であることが好ましい。取扱いの観点から、0.40〜0.60mmであることが好ましく、0.43〜0.55mmであることがより好ましい。
【0019】
受光面側封止層11を構成する太陽電池封止材の23℃における弾性率の下限は、5MPa以上であり、好ましくは6MPa以上であり、より好ましくは8MPa以上である。受光面側封止層11を構成する太陽電池封止材の23℃における弾性率の上限は30MPa以下であり、好ましくは28MPa以下であり、より好ましくは25MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下である。太陽電池封止材の23℃における弾性率が上記範囲にあると、受光面側封止層11Aの実効厚みが0.01mm以上0.25mm未満であっても、太陽電池モジュールの作製時や、温度変化が大きい環境下で繰り返し使用した際の太陽電池素子や配線の破損を抑制でき、太陽電池モジュールの出力低下を抑制できるため好ましい。
太陽電池封止材の23℃における弾性率を上記範囲とするには、例えば、樹脂(P)がエチレン・α−オレフィン共重合体の場合、α−オレフィンに由来する構成単位の含有割合やα−オレフィンの炭素数を調整することにより弾性率を上記範囲に調整することができる。樹脂(P)がエチレン・極性モノマー共重合体の場合、極性モノマーに由来する構成単位の含有割合や極性モノマーの種類を調整することにより弾性率を上記範囲に調整することができる。
【0020】
また、太陽電池封止材の23℃における弾性率を下げるために、太陽電池封止材は潤滑油をさらに含んでもよい。潤滑油の含有量は、樹脂(P)と潤滑油の合計100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
潤滑油は、従来公知の潤滑油を用いることができる。潤滑油としては、例えば、パラフィン系オイル、炭化水素系合成油等が挙げられる。
パラフィン系オイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル(例えば、ダイアナプロセスオイル(登録商標)(出光興産社製))、流動パラフィン(例えば、モレスコホワイト(登録商標)(MORESCO社製))等が挙げられる。
上記炭化水素系合成油としては、例えば、エチレン・α−オレフィンコオリゴマー(例えば、三井化学社製のルーカント(登録商標))、ポリ−α−オレフィン(例えば、エクソンモービル社製のSpectraSyn(登録商標))等が挙げられる。
これらの中でも、パラフィン系オイルが好ましく、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。
【0021】
バスバー電極17の平均厚さ(Y)は、バスバー電極17の断面を走査型電子顕微鏡等で撮影した写真から測定することができる。具体的にはバスバー電極17の断面を撮影し、得られた写真から、任意の部位を10個選択し、それらの部位の厚みをそれぞれ測定する。そして全ての厚みを積算して10で除したものをバスバー電極17の平均厚さ(Y)とすることができる。
【0022】
受光面側保護部材14の凹部14Aの深さ(Z)は以下の方法により算出することができる。
まず受光面側保護部材14を10cm×10cmの大きさにカットしたものの重量W(g/100cm)と、受光面側保護部材14の密度D(g/cm)とを用いて、受光面側保護部材14の目付け厚さZ=W/(D×10)を算出する。
次に、受光面側保護部材14の見掛け厚さZ[mm]を、ダイヤルゲージ等の膜厚計を用いて凸部14Bで測定する。ここで、受光面側保護部材14の見掛け厚さZは、受光面側保護部材14の凸部14Bでの厚みであり、例えば、10点測定し、その平均値とすることができる。
そして、凹部14Aの深さ(Z)は、Z=Z−Zにより算出することができる。
【0023】
また、裏面側封止層11Bの実効厚みの下限は好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上、さらにより好ましくは0.07mm以上、特に好ましくは0.08mm以上である。また、裏面側封止層11Bの実効厚みの上限は好ましくは0.25mm未満、より好ましくは0.20mm以下、さらに好ましくは0.20mm未満、さらにより好ましくは0.18mm以下、特に好ましくは0.15mm以下である。
ここで、裏面側封止層11Bの実効厚みは、受光面側封止層11Aの実効厚みと同様の手順で測定することができる。すなわち、裏面側封止層11Bの平均厚さをA[mm]とし、裏面側のバスバー電極17の平均厚さをB[mm]とし、裏面側保護部材15が太陽電池素子13側表面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部を有する場合はその凹部の深さをC[mm]としたとき、裏面側封止層11Bの実効厚みは(A−B−C)で表される。各平均厚さは、受光面側封止層11Aの実効厚みの測定と同様の方法で測定できる。
【0024】
図1に示されるように、太陽電池モジュール10は、インターコネクタ16により電気的に接続された複数の太陽電池素子13を備えている。図1では、太陽電池素子13が直列に接続された例を示すが、太陽電池素子13は並列に接続されていてもよい。受光面側保護部材14と裏面側保護部材15とが太陽電池素子13を挟持し、これらの保護部材と複数の太陽電池素子13との間に、封止層11が充填されている。封止層11は、受光面側封止層11Aと裏面側封止層11Bとから構成されており、受光面側封止層11Aは太陽電池素子13の受光面に形成された電極と接しており、裏面側封止層11Bが太陽電池素子13裏面に形成された電極と接している。電極とは、太陽電池素子13の受光面及び裏面にそれぞれ形成された集電部材であり、後述するフィンガー電極、バスバー電極、及び裏面電極層等を含む。
【0025】
裏面側封止層11Bは、受光面側封止層11Aの厚みと同一であってもよいし異なっていてもよいが、モジュールの小型化の観点から、0.60mm以下であることが好ましいが、取扱いの観点から、0.40〜0.60mmであることが好ましく、0.43〜0.55mmであることがより好ましい。
【0026】
封止層11は、樹脂組成物からなる太陽電池封止材Sから形成される。この太陽電池封止材Sはシート状であることが好ましく、必要に応じて架橋させてもよく、非架橋でもかまわない。以下、この封止層11の形成に用いられる太陽電池封止材Sについて説明する。
【0027】
太陽電池封止材Sは、受光面側封止層11Aを形成する第一太陽電池封止材S1と、裏面側封止層11Bを形成する第二太陽電池封止材S2との一対から構成されていてもよい。以下、太陽電池封止材Sは、第一太陽電池封止材S1と第二太陽電池封止材S2との総称として使用することもある。
【0028】
太陽電池封止材Sはポリオレフィン系樹脂およびエチレン・極性モノマー共重合体から選択される少なくとも一種の樹脂(P)を含む樹脂組成物により構成されることが好ましい。そして、受光面側封止層11Aを構成する第一太陽電池封止材S1は樹脂(P)としてポリオレフィン系樹脂を含むことがより好ましく、第一太陽電池封止材S1および第二太陽電池封止材S2の両方がポリオレフィン系樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態における受光面側封止層11A(第一太陽電池封止材S1)中の上記樹脂(P)の含有量は、受光面側封止層11A(第一太陽電池封止材S1)全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、透明性、接着性、耐熱性、柔軟性、架橋特性等の諸特性のバランスにより優れた受光面側封止層11Aを得ることができる。
また、本実施形態における裏面側封止層11B(第二太陽電池封止材S2)中の上記樹脂(P)の含有量は、裏面側封止層11B(第二太陽電池封止材S2)全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、接着性、耐熱性、柔軟性、架橋特性等の諸特性のバランスにより優れた裏面側封止層11Bを得ることができる。
【0030】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、プロピレン(共)重合体、1−ブテン(共)重合体、4−メチルペンテン−1(共)重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α−オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0031】
また、第一太陽電池封止材S1は、ポリオレフィン系樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体を含むことが好ましい。これにより、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む受光面側封止層11Aを形成させることができる。
【0032】
第二太陽電池封止材S2は、第一太陽電池封止材S1と同一の組成から形成されていてもよいし、異なる組成から形成されていてもよく、樹脂(P)としてエチレン・α−オレフィン共重合体を含んでいてもよい。第一太陽電池封止材S1及び第二太陽電池封止材S2がいずれもエチレン・α−オレフィン共重合体を含むものであってもよい。こうすることで、封止層11全体が、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を架橋させて形成されたものにすることができる。
【0033】
太陽電池封止材Sに含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン共重合体がより好ましい。α−オレフィンとしては、通常、炭素数3〜20のα−オレフィンを1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα−オレフィンであり、特に好ましいのは炭素数が3〜8のα−オレフィンである。このようなα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。中でも、入手の容易さからプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンが好ましい。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0034】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、下記a1)〜a4)の少なくとも一つを満たすエチレン・α−オレフィン共重合体が用いられる。
【0035】
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80〜90mol%であるとともに、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10〜20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.1〜50g/10分である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865〜0.884g/cmである。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60〜85である。
【0036】
太陽電池封止材Sに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記a1)〜a4)のいずれか2つを満たすことがより好ましく、上記a1)〜a4)のいずれか3つを満たすことがさらに好ましく、上記a1),a3)およびa4)の3つを満たすことがとりわけ好ましい。上記a1)〜a4)のすべてを満たすことが特に好ましい。以下、a1)〜a4)について説明する。
【0037】
a1)
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位(以下、「α−オレフィン単位」とも記す)の割合は、好ましくは10〜20mol%であり、より好ましくは12〜20mol%、さらに好ましくは12〜18mol%、特に好ましくは13〜18mol%である。α−オレフィン単位の含有割合を10mol%以上にすることで、高透明性の封止層11が得られる傾向にある。また、柔軟性が高いため、太陽電池素子13の割れや、薄膜電極のカケ等の発生をより一層抑制することができる。一方、α−オレフィン単位の含有割合が20mol%以下であると、シート化しやすく耐ブロッキング性が良好なシートを得ることができ、また、架橋させることで耐熱性を向上させることができる。
【0038】
a2)
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレ−ト(MFR)は、通常0.1〜50g/10分であり、好ましくは2〜50g/10分であり、より好ましくは10〜50g/10分であり、さらに好ましくは10〜40g/10分、特に好ましくは12〜27g/10分、最も好ましくは15〜25g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、後述する重合反応の際の重合温度、重合圧力、並びに重合系内のエチレンおよびα−オレフィンのモノマー濃度と水素濃度のモル比率等を調整することにより、調整することができる。
【0039】
(カレンダー成形)
MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満であると、カレンダー成形によってシートを製造することができる。MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満であると、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が低いため、シートを電池素子とラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
【0040】
(押出成形)
MFRが2g/10分以上、好ましくはMFRが10g/10分以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が向上し、シート押出成形時の生産性を向上させることができる。
MFRが50g/10分以下であると、分子量が大きくなるため、チルロール等のロール面への付着を抑制できるため、剥離を不要とし、均一な厚みのシートに成形することができる。さらに、「コシ」がある樹脂組成物となるため、0.1mm以上の厚いシートを容易に成形することができる。また、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋特性が向上するため、十分に架橋させて、耐熱性の低下を抑制することができる。
MFRが27g/10分以下であると、さらに、シート成形時のドローダウンを抑制でき幅の広いシートを成形でき、また架橋特性および耐熱性がさらに向上し、最も良好な太陽電池封止材シートを得ることができる。
なお後述する太陽電池モジュールのラミネート工程において樹脂組成物の架橋処理を行わない場合は、溶融押出工程において有機過酸化物の分解の影響が小さいため、MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満、好ましくは0.5g/10分以上8.5g/10分未満の樹脂組成物を用い、押出成形によってシートを得ることもできる。樹脂組成物の有機過酸化物含有量が0.15重量部以下である場合には、MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満の樹脂組成物を用い、シラン変性処理、または微架橋処理を行いつつ170〜250℃の成形温度で押出成形によってシートを製造することもできる。MFRがこの範囲にあるとシートを太陽電池素子とラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
【0041】
a3)
ASTM D1505に準拠して測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は0.865〜0.884g/cmであり、好ましくは0.866〜0.883g/cm、より好ましくは0.866〜0.880g/cm、さらに好ましくは0.867〜0.880g/cmである。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン単位の含有割合とα−オレフィン単位の含有割合とのバランスにより調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合を高くすると結晶性が高くなり、密度の高いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。一方、エチレン単位の含有割合を低くすると結晶性が低くなり、密度の低いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.884g/cm以下であると、透明性及び柔軟性を向上させることができる。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.865g/cm以上であると、シート化しやすくなり、耐ブロッキング性が良好なシートが得られ、また、耐熱性を向上させることができる。
【0042】
a4)
ASTM D2240に準拠して測定される、エチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は60〜85であり、好ましくは62〜83、より好ましくは62〜80、さらに好ましくは65〜80である。エチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は、エチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有割合や密度を後述の数値範囲に制御することにより、調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合が高く、密度が高いエチレン・α−オレフィン共重合体は、ショアA硬度が高くなる。一方、エチレン単位の含有割合が低く、密度が低いエチレン・α−オレフィン共重合体は、ショアA硬度が低くなる。ショアA硬度が60以上であると、シート化しやすく耐ブロッキング性が良好なシートが得られ、さらに耐熱性も向上させることができる。一方、ショアA硬度が85以下であると、透明性及び柔軟性を向上させるとともに、シート成形を容易にすることができる。
【0043】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、以下に示す種々のメタロセン化合物を触媒として用いて製造することができる。メタロセン化合物としては、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよいし、二種以上のメタロセン化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
エチレン・α−オレフィン共重合体の重合は、従来公知の気相重合法、およびスラリー重合法、溶液重合法等の液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは溶液重合法等の液相重合法により行われる。
【0045】
エチレン・極性モノマー共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・マレイン酸ジメチル共重合体、エチレン・マレイン酸ジエチル共重合体、エチレン・フマル酸ジメチル共重合体、エチレン・フマル酸ジエチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(アイオノマーを含む)、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの塩;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体:エチレン・スチレン共重合体等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0046】
これらの中でも、上記エチレン・極性モノマー共重合体としては、その入手容易性と性能とのバランスからエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの塩、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(アイオノマーを含む)から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0047】
上記エチレン・極性モノマー共重合体中の極性モノマー単位の含有量は、好ましくは8質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは13質量%以上35質量%以下である。極性モノマーの含有量がこの範囲にあると、架橋性、柔軟性、耐候性、透明性のバランスにより一層優れる。
これらの中でもエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有割合が、好ましくは26質量%以上40質量%以下、より好ましくは29質量%以上35質量%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を最も好適に用いることができる。
【0048】
太陽電池封止材Sは、前述の樹脂(P)に加え、シランカップリング剤;光架橋開始剤、有機過酸化物等の架橋剤等から選択される一種または二種以上を含有することが好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、例えば、樹脂(P)100重量部に対して0.1〜5重量部とすることが好ましく、0.1〜4重量部とすることがより好ましい。
架橋剤の含有量は、例えば、樹脂(P)100重量部に対して0.05〜5重量部とすることが好ましく、0.1〜3重量部にすることがより好ましい。
【0049】
シランカップリング剤は、従来公知のものが使用でき、特に制限はない。具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が使用できる。好ましくは、接着性が良好なγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0050】
有機過酸化物は、シランカップリング剤と、樹脂(P)とのグラフト変性の際のラジカル開始剤として、さらに、樹脂(P)の太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋反応の際のラジカル開始剤として用いられる。樹脂(P)に、シランカップリング剤をグラフト変性することにより、受光面側保護部材14、裏面側保護部材15、太陽電池素子13、電極との接着性が良好な太陽電池モジュール10が得られる。さらに、樹脂(P)を架橋することにより、耐熱性、接着性に優れた太陽電池モジュール10を得ることができる。
【0051】
有機過酸化物としては公知のものが使用できる。具体例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、等が挙げられる。好ましくは、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。また、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0052】
また、光架橋開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、チオキサントン誘導体、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノール類、アシルホスフィノキサイド類、アルキルフェニルグルオキシレート類、ジエトキシアセトフェノン、オキシムエステル類、チタノセン化合物、アントラキノン誘導体等からなる群より選択される一種または二種以上を用いることができる。中でも、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、オキシムエステル類、アントラキノン誘導体が、架橋性がより良好な点で好ましく、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アントラキノン誘導体がさらに好ましく、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体が、透明性も良好なため最も好ましい。
ベンゾフェノン誘導体の中でも2―ヒドロキシベンゾフェノンは、後述するように紫外線吸収剤として用いられ、光を熱エネルギーに変換する作用を有する。本実施形態の光架橋開始剤は、2位に水酸基を有しないベンゾフェノン誘導体が望ましい。
ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体の好ましい例として、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェノキシベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等を挙げることができる。
アントラキノン誘導体の好ましい例として、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等を挙げることができる。
これらの光架橋開始剤は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
太陽電池封止材Sには、紫外線吸収剤、光安定化剤、及び耐熱安定剤からなる群より選択される少なくとも一種の添加剤が含有されることが好ましい。これらの添加剤の配合量は、樹脂(P)100重量部に対して、0.005〜5重量部であることが好ましい。さらに、上記三種から選ばれる少なくとも二種の添加剤を含有することが好ましく、特に上記三種の全てが含有されていることが好ましい。上記添加剤の配合量が上記範囲にあると、高温高湿への耐性、ヒートサイクルの耐性、耐候安定性、及び耐熱安定性を向上する効果を十分に確保し、かつ、太陽電池封止材Sの透明性や、受光面側保護部材14、裏面側保護部材15、太陽電池素子13、電極、アルミニウムとの接着性の低下を防ぐことができるので好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤としては、具体的には、2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアリゾール系紫外線吸収剤;フェニルサルチレート、p−オクチルフェニルサルチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤のものが用いられる。これらの紫外線吸収剤は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
光安定化剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系、ヒンダードピペリジン系化合物等のものが好ましく使用される。これらの光安定化剤は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
耐熱安定剤としては、具体的には、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスフォナイト、及びビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系耐熱安定剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物等のラクトン系耐熱安定剤;3,3',3",5,5',5"−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a"−(メチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系耐熱安定剤;硫黄系耐熱安定剤;アミン系耐熱安定剤等を挙げることができる。また、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、ホスファイト系耐熱安定剤、及びヒンダードフェノール系耐熱安定剤が好ましい。
【0057】
太陽電池封止材Sには、以上詳述した諸成分以外の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜含有させることができる。例えば、樹脂(P)以外の各種樹脂、及び/又は各種ゴム、可塑剤、潤滑油、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、架橋助剤、及び分散剤等から選ばれる一種以上の添加剤を適宜含有することができる。
【0058】
太陽電池封止材Sに架橋助剤を含有させる場合において、架橋助剤の配合量は、樹脂(P)100重量部に対して、0.05〜5重量部であると、適度な架橋構造を有することができ、耐熱性、機械物性、接着性を向上できるため好ましい。
【0059】
架橋助剤としては、樹脂(P)に対して一般に使用される従来公知のものが使用できる。このような架橋助剤は、分子内に二重結合を二個以上有する化合物である。具体的には、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート等のモノアクリレート;t−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のモノメタクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート;1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート;ジビニルベンゼン、ジ−i−プロペニルベンゼン等のジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート;ジアリルフタレート等のジアリル化合物;トリアリル化合物;p−キノンジオキシム、p−p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム;フェニルマレイミド等のマレイミドが挙げられる。これらの架橋助剤の中でより好ましいのは、ジアクリレート、ジメタクリレート、ジビニル芳香族化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート、ジアリルフタレート等のジアリル化合物;トリアリル化合物:p−キノンジオキシム、p−p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム;フェニルマレイミド等のマレイミドである。さらにこれらの中で特に好ましいのは、トリアリルイソシアヌレートであり、封止層11の気泡発生や架橋特性のバランスが最も優れる。これらの架橋助剤は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
太陽電池封止材Sの成形方法には特に制限は無いが、公知の各種の成形方法(キャスト成形、押出シート成形、インフレーション成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形等)を採用することが可能である。
【0061】
また、太陽電池封止材Sをシート化する場合、シート表面には、エンボス加工が施されてもよい。太陽電池封止材Sのシート表面をエンボス加工によって装飾することで、シート同士、又はシート状の太陽電池封止材Sと他の部材とのブロッキングを防止することができる。さらに、エンボスが太陽電池封止材Sの貯蔵弾性率を低下させるため、太陽電池封止材Sと太陽電池素子13とをラミネートする時に太陽電池素子13等に対するクッションとなって、太陽電池素子13の破損をより一層防止することができる。
【0062】
受光面側保護部材14は、特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能を有することが好ましい。また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスの小さい、透明性の高いシートであることが好ましい。受光面側保護部材14の例には、ガラス板や樹脂フィルム等が含まれる。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合等が挙げられる。
【0063】
受光面側保護部材14は、少なくとも太陽電池素子13側表面に複数の微細な凹部14Aおよび複数の微細な凸部14Bを有する。これにより、受光面側保護部材14と受光面側封止層11Aとの密着性を向上させることができる。また、光を散乱させて反射率を低下させ、太陽電池モジュールに防眩効果を付与することができる。
【0064】
複数の微細な凹部14Aおよび複数の微細な凸部14Bは従来公知の方法を用いて形成することができる。例えば、受光面側保護部材14の表面に物理的方法または化学的方法を用いて凹凸を直接付与する方法、受光面側保護部材14の表面上に凹凸面を備えた乱反射層を形成する方法等を用いて形成することができる。
受光面側保護部材14の表面に物理的方法または化学的方法を用いて凹凸を直接付与する方法としては、エンボス加工、プレス加工、レーザパターニング加工等が挙げられる。
受光面側保護部材14の表面上に凹凸面を備えた乱反射層を形成する方法としては、例えば、有機バインダと無機粒子とを含む組成物を受光面側保護部材14の表面上に塗布する方法、または、有機バインダと無機粒子とを含む組成物を他の基材の表面上に塗布したものを受光面側保護部材14の表面上に転写する方法等が挙げられる。
これらの中でも受光面側保護部材14の表面に所望の形状を有する複数の微細な凹部14Aおよび複数の微細な凸部14Bを容易に形成することが可能なことから、受光面側保護部材14の表面をエンボス加工することにより複数の微細な凹部14Aおよび複数の微細な凸部14Bを形成する方法が好ましい。
【0065】
受光面側保護部材14の目付け厚さZは、好ましくは1mm以上5mm以下、より好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0066】
受光面側保護部材14の凹部14Aの深さ(Z)は好ましくは0.02mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.04mm以上0.1mm以下である。
【0067】
裏面側保護部材15は透明である必要はなく、特に制限はないが、太陽電池モジュール10の最表層に位置するため、上述の受光面側保護部材14と同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を求められる。したがって、受光面側保護部材14と同様の材質で裏面側保護部材15を構成してもよい。すなわち、受光面側保護部材14として用いられる上述の各種材料を、裏面側保護部材15としても用いることができる。特に、ポリエステル樹脂、及びガラスを好ましく用いることができる。また、裏面側保護部材15は、太陽光の通過を前提としないため、受光面側保護部材14で求められる透明性は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュール10の機械的強度を増すために、あるいは温度変化による歪、反りを防止するために、補強板を張り付けてもよい。補強板は、例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等を好ましく使用することができる。
【0068】
太陽電池モジュール10に用いられる太陽電池素子13は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば、特に制限はない。図1には、太陽電池素子13として、結晶型太陽電池素子を用いた例を示すが、化合物半導体(III−III族、II−VI族、その他)太陽電池素子、湿式太陽電池素子、有機半導体太陽電池素子等を用いることもできる。結晶型太陽電池素子は、単結晶形、多結晶形、非結晶(アモルファス)形シリコン等により形成されるものであり、これらの中では、発電性能とコストとのバランス等の観点から、多結晶形シリコンにより形成されたものがより好ましい。
【0069】
太陽電池素子13の平均厚さ(集電電極の厚さは除く)は、通常0.3mm以上0.5mm以下である。しかしながら、低コスト化や薄膜化の観点から、太陽電池素子13の厚さは0.01mm以上0.5mm以下が好ましく、0.01mm以上0.3mm以下がより好ましい。本実施形態の太陽電池モジュール10では、このように太陽電池素子13の厚さが薄くても、太陽電池素子13の破損を防止することができる。
なお、太陽電池素子13の平均厚さは、太陽電池素子13の断面を走査型電子顕微鏡等で撮影した写真から測定することができる。具体的には太陽電池素子13の断面を撮影し、得られた写真から、任意の部位を10個選択し、それらの部位の厚みをそれぞれ測定する。そして全ての厚みを積算して10で除したものを太陽電池素子13の平均厚さとすることができる。
【0070】
太陽電池素子には、通常、発生した電気を取り出すための集電電極が配置される。集電電極の例には、バスバー電極、フィンガー電極等が含まれる。一般に、集電電極は、太陽電池素子の表面と裏面の両面に配置した構造をとるが、受光面に集電電極を配置させる場合、できるだけ発電効率を低下させないように配置することが求められる。
【0071】
図2は、太陽電池素子13の受光面と裏面の一構成例を模式的に示す平面図である。図2においては、太陽電池素子13の受光面22Aと裏面22Bの構成の一例が示されている。図2(A)に示されるように、太陽電池素子13の受光面22Aには、ライン状に多数形成されたフィンガー電極32と、フィンガー電極32から電荷を収集するとともに、インターコネクタ16(図1)に接続されるバスバー電極34Aと、が形成されている。また、図2(B)に示されるように、太陽電池素子22の裏面22Bには、全面に導電層(裏面電極)36が形成され、その上に導電層36から電荷を収集するとともに、インターコネクタ16(図1)に接続されるバスバー電極34Bが形成されている。
フィンガー電極32の線幅は、例えば0.2mm程度であり;バスバー電極34Aの線幅は、例えば2〜3mm程度であり;バスバー電極34Bの線幅は、例えば5〜7mm程度である。
【0072】
バスバー電極の平均厚さ(Y)は特に限定されないが、好ましくは0.02mm以上0.6mm以下、より好ましくは0.04mm以上0.5mm以下である。バスバー電極の平均厚さ(Y)が上記下限値以上であると、発生した電気をより効率的に集電することができる。バスバー電極の平均厚さ(Y)が上記上限値以下であると、厚みがより薄い太陽電池モジュールを得ることができる。
【0073】
フィンガー電極の平均厚さは特に限定されないが、好ましくは0.01mm以上0.1mm以下、より好ましくは0.02mm以上0.07mm以下である。フィンガー電極の平均厚さが上記下限値以上であると、発生した電気をより効率的に集電することができる。フィンガー電極の平均厚さが上記上限値以下であると、厚みがより薄い太陽電池モジュールを得ることができる。
【0074】
本実施形態において、太陽電池素子13の受光面22Aと裏面22Bとで、バスバー電極の平均厚さ(Y)が異なる場合、受光面22A側のバスバー電極の平均厚さ(Y)を用いて受光面側封止層11Aの実効厚みを決定する。これにより、太陽電池素子13の破損をより確実に抑制することができる。
【0075】
インターコネクタ16は、例えば、銅箔等により構成されたものが用いられる。インターコネクタ16の平均厚さは特に限定されないが、例えば、0.15mm以上1.0mm以下である。また、インターコネクタ16の幅は、バスバー電極と同程度にすればよい。
【0076】
フィンガー電極32、バスバー電極34A、及びバスバー電極34Bは、導電性が高い金属を含むことが好ましい。このような導電性の高い金属としては、例えば、金、銀、銅等が挙げられる。導電性や耐腐食性が高い点等から、銀や銀化合物、銀を含有する合金等が好ましい。導電層36は、導電性の高い金属だけでなく、受光面で受けた光を反射させて太陽電池素子の光電変換効率を向上させるという観点等から、光反射性の高い成分、例えばアルミニウムを含むことが好ましい。フィンガー電極32、バスバー電極34A、バスバー電極34B、及び導電層36は、太陽電池素子22の受光面22A又は裏面22Bに、上記導電性の高い金属を含む導電材塗料を、例えばスクリーン印刷により塗布した後、乾燥し、必要に応じて焼き付けすることにより形成される。
【0077】
つづいて、太陽電池モジュール10の製造方法について説明する。太陽電池モジュール10の製造方法は、(i)受光面側保護部材14と、第一太陽電池封止材S1と、太陽電池素子13と、第二太陽電池封止材S2と、裏面側保護部材15とをこの順に積層して積層体を形成する工程と、(ii)得られた積層体を加圧及び加熱または光照射をおこない一体化する工程と、を含む。
【0078】
工程(i)において、太陽電池封止材Sがエンボス加工されている場合は、凹凸形状(エンボス形状)が形成された面を太陽電池素子13側になるように配置することが好ましい。
工程(ii)において、工程(i)で得られた積層体を常法に従って真空ラミネーター、又は熱プレスを用いて加熱及び加圧して一体化(封止)する。あるいは工程(ii)において、工程(i)で得られた積層体に対し、紫外線等の光を照射することにより光架橋して一体化(封止)する。
封止において、太陽電池封止材Sは、クッション性が高いため、太陽電池素子の損傷を防止することができる。また、脱気性が良好であるため空気の巻き込みもなく、高品質の製品を歩留り良く製造することができる。
【0079】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
(太陽電池封止材シートの弾性率の測定方法)
実施例および比較例において、受光面側封止層を構成する太陽電池封止材の弾性率は以下のように測定した。実施例および比較例の太陽電池封止シートと同様の組成の厚み1mmの太陽電池封止シートを準備した。そして、当該シートの弾性率をJIS K7161に準拠し、オートグラフ(島津製作所製:AGS−J)を用いて、チャック間:40mm、引張速度:1mm/minの条件で測定した。また、測定環境の温度は23℃、50%Rhとした。
【0082】
(実施例1)
1.太陽電池封止シートの作製
国際公開第2012/060086号の合成例1と同様の方法で、エチレン・α−オレフィン共重合体1(α−オレフィン:1−ブテン、α−オレフィン単位の含有割合:14mol%、エチレン単位の含有割合:86mol%、ショアA硬度:70、MFR:4.0g/10分、密度:0.870g/cm)を合成した。次いで、上記エチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対し、シランカップリング剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.4質量部、架橋剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを0.8質量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを1.2質量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4質量部、光安定化剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを0.2質量部、および耐熱安定剤1としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部、耐熱安定剤2としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1質量部を配合し、押出成形機を用い、ダイス温度105℃の条件下で樹脂組成物をシート状に溶融押出し、冷却ロールにて冷却固化後、巻き取り、太陽電池封止シートとした。得られた太陽電池封止シートの23℃における弾性率は10MPaであった。また、当該太陽電池封止シートの平均厚みは0.60mmであった。
【0083】
2.太陽電池モジュールの作製
太陽電池モジュールに用いた各部材は、以下の通りである。
受光面側保護部材としては、旭硝子ファブリテック社製の白板フロートガラス(3.2mm厚みのエンボス付き熱処理ガラス)を用いた。受光面側保護部材の凹部の深さ(Z)は0.05mmであった。
太陽電池素子としては、受光面側の中央に0.35mm厚みのバスバー銀電極を有するセル(Shinsung Solar社製の単結晶セル、5cm×3cm)を18セル直列接続したものを用いた。ここで、各セルは、銅リボン電極を用いて直列接続した。銅リボン電極は銅箔に共晶ハンダを表面コートしたものである。
裏面側保護部材としては、シリカ蒸着PET系バックシートを用いた。
太陽電池裏面封止材としては、受光面と同じ太陽電池封止シートを用いた。
太陽電池モジュールは、以下の手順で作製した。
まず、得られた太陽電池封止シートを受光面側保護部材と太陽電池素子との間にセットし、太陽電池裏面封止材を太陽電池素子と裏面側保護部材との間にセットし、積層体を得た。次いで、裏面側保護部材の一部に約2cmの切り込みを入れ、太陽電池素子のプラス端子とマイナス端子を取り出した。次いで、真空ラミネーター(NPC社製:LM−110x160−S)を用いて、得られた積層体を熱板温度150℃、真空時間3分、加圧時間15分にて真空ラミネートした。ここで、太陽電池封止シートにより形成された層が受光面側封止層である。また、受光面側封止層の平均厚さは0.60mmであった。
次いで、受光面側保護部材からはみ出した受光面側封止層、裏面側保護部材をカットし、受光面側保護部材の端部には端面封止シートを付与して、アルミフレームを取り付けた。次いで、裏面側保護部材から取り出した端子部分の切れ込み部位はRTVシリコーンを付与して硬化させた。以上の方法により、太陽電池モジュールを得た。ここで、上記太陽電池封止シートにより形成された受光面側封止層の平均厚さは0.60mmであった。
【0084】
3.太陽電池モジュールの評価
得られた太陽電池モジュールを、温度サイクル試験機(エスペック社製、PSL−2J)に投入し、JIS C8917に準拠し、温度サイクル試験を200サイクル実施した。AM(エアマス)1.5クラスAの光強度分布を有するキセノン光源を用いて、200サイクル前後の太陽電池モジュールのIV特性をそれぞれ評価した。IV評価には日清紡メカトロニクス社製のPVS−116i−Sを用いた。評価結果は、以下の通りに分類した。結果を表1に示す。なお、出力維持率は、100×(温度サイクル試験を200サイクル実施した後の太陽電池モジュールの出力)/(温度サイクル試験前の太陽電池モジュールの出力)を意味する。
出力維持率が95%以上:○
出力維持率が90%以上95%未満:△
出力維持率が90%未満:×
【0085】
(実施例2〜3、比較例1および参考例1)
太陽電池封止シートの平均厚みを変化させ、受光面側封止層の平均厚さ(X)を表1に示す値にした以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュールをそれぞれ作製し、出力維持率をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例4)
エチレン・α−オレフィン共重合体1の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体1(α−オレフィン:1−ブテン、α−オレフィン単位の含有割合:14mol%、エチレン単位の含有割合:86mol%、ショアA硬度:70、MFR:4.0g/10分、密度:0.870g/cm)80質量部に、弾性率を調整するために潤滑油である三井化学社製ルーカントHC−40を20質量部加えたものを用いた以外は実施例2と同様にして太陽電池封止シートを作製した。得られた太陽電池封止シートの23℃における弾性率は6MPaであった。そして、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製し、出力維持率を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例5)
エチレン・α−オレフィン共重合体1の代わりに、国際公開第2012/046456号の合成例3と同様の方法で合成したエチレン・α−オレフィン共重合体2(α−オレフィン:1−オクテン、α−オレフィン単位の含有割合:11mol%、エチレン単位の含有割合:89mol%、ショアA硬度:84、MFR:48g/10分、密度:0.884g/cm)を用いた以外は実施例2と同様にして太陽電池封止シートを作製した。得られた太陽電池封止シートの23℃における弾性率は28MPaであった。そして、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製し、出力維持率を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例2)
エチレン・α−オレフィン共重合体1の代わりに、国際公開第2012/060086号の合成例2と同様の方法で合成したエチレン・α−オレフィン共重合体3(α−オレフィン:1−ブテン、α−オレフィン単位の含有割合:18mol%、エチレン単位の含有割合82mol%、ショアA硬度:60、MFR:9.5g/10分、密度:0.865g/cm)80質量部に、弾性率を調整するために潤滑油である三井化学社製ルーカントHC−40を20質量部加えたものを用いた以外は実施例2と同様にして太陽電池封止シートを作製した。得られた太陽電池封止シートの23℃における弾性率は4MPaであった。そして、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製し、出力維持率を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例3)
エチレン・α−オレフィン共重合体1の代わりに、国際公開第2012/060086号の合成例7と同様の方法で合成したエチレン・α−オレフィン共重合体4(α−オレフィン:1−ブテン、α−オレフィン単位の含有割合:11mol%、エチレン単位の含有割合:89mol%、ショアA硬度:86、MFR:4.0g/10分、密度:0.885g/cm)を用いた以外は実施例2と同様にして太陽電池封止シートを作製した。得られた太陽電池封止シートの23℃における弾性率は32MPaであった。そして、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製し、出力維持率を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
なお、上記実施例・比較例において、各部材の厚さ等の測定方法は下記方法に準じて行った。
1.受光面側封止層の平均厚さ(X)
受光面側封止層を10cm×10cmの大きさにカットしたものの重量W(g/100cm)と、受光面側封止層の密度D(g/cm)とを用いて、X=W/(D×10)により算出した。
ここで、受光面側封止層の密度DはASTM D1505に準拠して測定した。
【0091】
2.バスバー電極の平均厚さ(Y)および半導体素子の平均厚さ
バスバー電極の平均厚さ(Y)および半導体素子の平均厚さは走査型電子顕微鏡で撮影した写真から算出した。具体的にはバスバー電極および半導体素子の断面を撮影し、得られた写真から、任意の部位を10個選択し、それらの部位におけるバスバー電極および半導体素子の厚みをそれぞれ測定した。そして、全てのバスバー電極の厚みを積算して10で除したものをバスバー電極の平均厚さ(Y)とし、全ての半導体素子の厚みを積算して10で除したものを半導体素子の平均厚さとした。
【0092】
3.受光面側保護部材の凹部の深さ(Z)
まず受光面側保護部材を10cm×10cmの大きさにカットしたものの重量W(g/100cm)と、受光面側保護部材の密度D(g/cm)とを用いて、目付け厚さZ=W/(D×10)を算出した。
次に、受光面側保護部材の見掛け厚さZ[mm]を、ダイヤルゲージ(ピーコック社製MODEL H)を用いて凸部で測定した。ここで、受光面側保護部材の見掛け厚さZは、受光面側保護部材の凸部での厚みを10点測定し、その平均値とした。
そして、凹部の深さ(Z)は、Z=Z−Zにより算出した。
ここで、受光面側保護部材の密度DはASTM D1505に準拠して測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1〜5の太陽電池モジュールはそれぞれ出力維持率が95%以上であり、太陽電池モジュールの出力低下が抑制されていることが確認できた。これに対し、比較例1〜3の太陽電池モジュールはそれぞれ出力維持率が90%未満であり、太陽電池モジュールの大幅な出力低下が起きていることが確認できた。
また、実効厚みが0.30mmである参考例の太陽電池モジュールと比較しても、実施例1〜5の太陽電池モジュールは十分な出力低下防止機能を有することがわかる。すなわち、実施例1〜5では出力低下が抑制され、かつ、封止層の厚みが薄い太陽電池モジュールを実現できていることが確認できた。
【0095】
この出願は、2015年11月25日に出願された日本出願特願2015−229758号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2