特許第6501914号(P6501914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6501914-液体粒子除去フィルタ装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501914
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】液体粒子除去フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/04 20060101AFI20190408BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20190408BHJP
   B01D 49/00 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   B01D45/04
   B08B5/02 Z
   B01D49/00
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-558209(P2017-558209)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2016088204
(87)【国際公開番号】WO2017110921
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-251963(P2015-251963)
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】桜井 浩人
(72)【発明者】
【氏名】西辻 浩志
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−347338(JP,A)
【文献】 実開昭54−75050(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/054036(WO,A1)
【文献】 特開2014−28410(JP,A)
【文献】 特開平7−328373(JP,A)
【文献】 実開平7−512(JP,U)
【文献】 特開平9−299737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/04
B01D 49/00
B08B 5/02
B01D 53/26
B01D 39/14
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体粒子連行ガスを通して該液体粒子を除去するための粒子除去流路と、
該粒子除去流路に液体粒子連行ガスを導入するガス導入路と
を有し、
該粒子除去流路を画定する周壁の少なくとも一部は吸水材からなり、
該ガス導入路は液体粒子連行ガスを該吸水材のなす該粒子除去流路の壁面に当たるように導入するようにされ、
該吸水材は液体粒子連行ガスが当てられることにより該ガスに連行されている液体粒子を吸着するようになされている液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項2】
該吸水材が筒状とされてその内周面が該粒子除去流路の壁面を構成し、
該ガス導入路が、該粒子除去流路の半径方向内側を該粒子除去流路の該長手方向に延び、ガス導入口が該ガス導入路から側方に延びて該粒子除去流路の壁面に面するように設けられて、液体粒子連行ガスが該ガス導入口を通して該粒子除去流路の壁面に当たるようにされている請求項1に記載の液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項3】
該粒子除去流路における該ガス導入口よりも下流側で、該粒子除去流路に流体連通されて粒子除去流路からのガスを排出するガス排出路を有する請求項2に記載の液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項4】
該長手方向に延び該ガス導入路を構成するガス導入管と該長手方向に延び該ガス排出路を構成するガス排出管とが該粒子除去流路の壁面から半径方向内側に離れた位置で該長手方向で相互に整合されて配置されている請求項3に記載の液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項5】
該ガス導入管の下流側閉止端部と該ガス排出管の上流側閉止端部とが連結されて、該粒子除去流路内を直線状に延びるようにされ、該粒子除去流路の壁面が該直線状に延びる該ガス導入管及び該ガ排出管に対して同心状に配置され請求項4に記載の液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項6】
該粒子除去流路を半径方向外側で包む筒状の外部カバーを有し、
該吸水材は液体粒子連行ガスの液体粒子を吸着することにより変色するようになされており、
該外部カバーは該吸水材の色を当該液体粒子除去フィルタ装置の外側から視認できるようにする透光部を有する請求項5に記載の液体粒子除去フィルタ装置。

【請求項7】
該ガス排出路が該ガス排出管の側面に開口して該粒子除去流路からのガスを受け入れるようにされており、該側面には、該開口の周囲に設けられ該粒子除去流路の壁面に向かう方向で突出する筒状の溢水防止壁を有する請求項4乃至6のいずれか一項に記載の液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項8】
該粒子除去流路は、直線状に延びる該ガス導入管及び該ガス排出管の周りを囲み該長手方向で延び、該粒子除去流路の後端は該ガス排出路の該粒子除去流路への開口位置よりも当該液体粒子除去フィルタ装置の下流側に位置するようにされている請求項7に記載の液体粒子除去フィルタ装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体粒子除去フィルタ装置と、
該液体粒子除去フィルタ装置に圧縮空気を供給するコンプレッサーと、
該液体粒子除去フィルタ装置に連結され、該液体粒子除去フィルタ装置によって液体粒子の除去がおこなわれた空気を受け入れて外部に噴出するノズル部材と
を有するエアダスター。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体粒子を連行するガス流から液体粒子を除去するための液体粒子除去フィルタ装置に関し、具体的な例としては、エアコンプレッサーからの圧縮空気を吐出口から噴出してゴミを吹き飛ばすエアダスターにおいて圧縮空気内に含まれる液体粒子(水分)を除去するための水分除去フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンプレッサーから供給される圧縮空気には、圧縮の際に生じる液体粒子(水粒子)が連行されることがある。このようなエアコンプレッサーからの圧縮空気により電子回路基板や絵画などの対象物の表面のゴミを除去しようとする場合、圧縮空気に連行された液体粒子が当該表面に付着して対象物を損傷する虞がある 。
【0003】
このため、そのような液体粒子(水分)を除去するためのフィルタ装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2522996号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この種のフィルタは、ガス(空気)をフィルタ材(濾過材)に通してそれに連行される液体粒子の除去を行うようになっているために、エアダスターなどに使用した場合、コンプレッサーから空気吐出口までの間の流体抵抗を高め、当該エアダスターの機能を低下させる。本発明は、流体抵抗を高めることなくガス内から液体粒子を除去することを可能とする液体粒子除去フィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
液体粒子連行ガスを通して該液体粒子を除去するための粒子除去流路と、
該粒子除去流路に液体粒子連行ガスを導入するガス導入路と
を有し、
該粒子除去流路を画定する周壁の少なくとも一部は吸水材からなり、
該ガス導入路は液体粒子連行ガスを該吸水材のなす該粒子除去流路の壁面に当たるように導入するようにされ、
該吸水材は液体粒子連行ガスが当てられることにより該ガスに連行されている液体粒子を吸着するようになされている液体粒子除去フィルタ装置を提供する。
この場合の好ましい吸水材としては例えばPVAスポンジ材がある。
【0007】
この液体粒子除去フィルタ装置においては、従来とは異なりフィルタ材にガスを通すことなくガスが連行する液体粒子を除去するようになっているため、ガスをフィルタ材に通して液体粒子除去を行っていた従来のものに比べて流路抵抗を高めることなく、従って、上述のエアダスターに使用しても当該エアダスターの機能をおとすことなく使用することが可能となる。
【0008】
具体的には、
該吸水材が筒状とされてその内周面が該粒子除去流路の壁面を構成し、
該ガス導入路が、該粒子除去流路の半径方向内側を該粒子除去流路の該長手方向に延び、ガス導入口が該ガス導入路から側方に延びて該粒子除去流路の壁面に面するように設けられて、液体粒子連行ガスが該ガス導入口を通して該粒子除去流路の壁面に当たるようにすることができる。
【0009】
より具体的には、
該粒子除去流路における該ガス導入口よりも下流側で、該粒子除去流路に流体連通されて粒子除去流路からのガスを排出するガス排出路を有するようにすることができる。
【0010】
更に具体的には、
該粒子除去流路の長手方向に延び該ガス導入路を構成するガス導入管と、該長手方向に延び該ガス排出路を構成するガス排出管とが該粒子除去流路の壁面から半径方向内側に離れた位置で該長手方向で相互に整合されて配置されるようにすることができる。
【0011】
この場合、該ガス導入管の下流側閉止端部と該ガス排出管の上流側閉止端部とが連結されて、該粒子除去流路内を直線状に延びるようにされ、該粒子除去流路を画定する壁が該直線状に延びる該ガス導入管及び該ガス排出管に対して同心状に配置されるようにすることができる。
【0012】
更にこの場合、
該粒子除去流路を半径方向外側で包む筒状の外部カバーを有し、
該吸水材は液体粒子連行ガスの液体粒子を吸着することにより変色するようになされており、
該外部カバーは該吸水材の色を当該液体粒子除去フィルタ装置の外側から視認できるようにする透光部を有するようにすることができる。
【0013】
以上のガス導入管及びガス排出管を備える液体粒子除去フィルタ装置においては、該ガス排出路が該ガス排出管の側面に開口し、該側面には該開口の周囲に設けられ該粒子除去流路の壁面に向かう方向で突出する筒状の溢水防止壁を有するようにすることができる。これは粒子除去流路において除去された液体が該粒子除去流路内にたまる可能性があり、その液体がガス排出路内に流れ出るのを防ぐためのものである。
【0014】
この場合、該粒子除去流路は、直線状に延びる該ガス導入管及び該ガス排出管の周りを囲み該長手方向で延び、該粒子除去流路の後端は該ガス排出路の該粒子除去流路への開口位置よりも当該液体粒子除去フィルタ装置の下流側に位置することが好ましい。すなわち、ガス排出路の粒子除去流路への開口が、当該粒子除去流路の(下流側)端部に位置するようにすると、当該液体粒子除去フィルタ装置が、下流側が上流側よりも下になるように傾けられた場合、該粒子除去流路内にたまった液体が該端部に集まり、溢水防止壁から溢水しやすくなるため、これを防ぐためである。
【0015】
以下、本発明に係る液体粒子除去フィルタ装置の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明にかかる液体粒子除去フィルタ装置が装着されたエアダスターの概要を示す図である。
図2図2は、図1のエアダスターに装着された本発明にかかる液体粒子除去フィルタ装置の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図示のエアダスター10は、バッテリ12を備えるバッテリ駆動コンプレッサー14と、該コンプレッサー14からの圧縮空気を、ゴミ除去すべき場所に向けて噴出させるためのノズル部材16に供給するスパイラルホース18と有する。ホース18の下流端とノズル部材16の上流端との間には本発明の一実施形態に係る液体粒子除去フィルタ装置20が接続されており、コンプレッサー14から供給される圧縮空気が連行する液体粒子(主に水粒子)を液体粒子除去フィルタ装置20によって除去し、ノズル部材16に供給するようになっている。
【0018】
液体粒子除去フィルタ装置20は、図2に示すように、液体粒子連行ガスから液体粒子を除去するための粒子除去流路22と、ホース18を通して供給されるコンプレッサー14からの圧縮空気を受け入れて粒子除去流路22に導入するガス導入路24と、粒子除去流路22から液体粒子が除去されたガスを受け入れノズル部材16に供給するガス排出路26とを有する。
【0019】
図示の例では、ガス導入路24を構成するガス導入管28と、ガス排出路26を構成するガス排出管30とがそれらの端部で連結され、連結されたガス導入管28とガス排出管30の相互に隣接する小径部28a、30aの周りにPVAスポンジシートなどを筒状にして形成した筒状の吸水材32が取り付けられ、該吸水材32と小径部28a、30aとの間に環状断面の粒子除去流路22が形成され、該吸水材32の外周を覆うようにしてPC材などの樹脂からなる透明な筒状の外部カバー34が設定され、その上流側端34a及び下流側端34bがガス導入管28及びガス排出管30の大径部28b、30bにOリング36、38を介して取り付けられている。
【0020】
ガス導入管28は、図示のように、ホース18にネジ連結される上流端部28cから長手方向で貫通する孔28dを有しており、該孔28dの下流側内壁面に設けられた雌ネジ28eにガス排出管30の上流端外壁面に設けられた雄ネジ30cが螺合されてガス導入管28とガス排出管30とが直線状に連結されている。ガス排出管30は、ノズル部材16にネジ連結される下流端開口30dから上流側閉止端30eまで延びた孔30fを有しており、該閉止端30eによってガス導入管28の孔28dとガス排出管30の孔30fとの間が遮蔽されており、それぞれガス導入路24及びガス排出路26とを形成している。24bはガス導入管28の側壁に周方向で等間隔をあけて設けられ、コンプレッサー14からの圧縮空気を吸水材32の内周面に向けて排出するための4つのガス導入口(図面では3つのみ示されている)、26bはガス排出管30の側壁に周方向で等間隔をあけて設けられ、粒子除去流路22からのガスを受け入れるための4つのガス排出口(図面では3つのみ示されている)である。
【0021】
上述の実施例に係る液体粒子除去フィルタ装置20が図1に示すようにエアダスター10に装着され、当該エアダスター10がゴミ除去のために使用される場合には、コンプレッサー14からの圧縮空気は、ホース18を通して当該液体粒子除去フィルタ装置20の上流端からガス導入路24に導入され、ガス導入口24bを介して粒子除去流路22の周壁内面に衝突するようにして粒子除去流路22内に導入され、該粒子除去流路22内を長手方向に流れ、ガス排出口26bを通してガス排出路26内に排出され、ノズル部材16に供給されて、該ノズル部材16の先端から噴出される。コンプレッサー14からの圧縮空気に連行される液体粒子は主にガス導入口24bから排出されて流体除去流路22の周壁を構成している吸水材32に衝突したときに該吸水材32によって吸着される。従って、当該液体粒子除去フィルタ装置を通される圧縮空気は、従来のフィルタ装置のようにフィルタ材を透過されることはなく、流路抵抗は従来のフィルタ装置に比べて大幅に低減できる。
【0022】
図示の例では、粒子除去流路22からのガス排出口26bは粒子除去流路22の下流側端部22aよりも上流側に離れた位置に設けられており、その周囲には粒子除去流路22の周壁を構成している吸水材32に向けて突出するようにされた筒状の溢水防止壁30gが設けられている。これは粒子除去流路22において除去された液体が粒子除去流路22内にたまる可能性があり、その液体がガス排出路26内に流れ出るのを防ぐためのものであり、また、液体粒子除去フィルタ装置10のノズル部材16側がホース18側よりも下になるように傾けられた場合、粒子除去流路22内にたまった液体が粒子除去流路22の下流側端部22aに集まり、ガス排出口26bから溢水しやすくなるのを防ぐためである。
【0023】
吸水材32は、吸水することにより変色するものにすることにより、当該吸水材32による吸水の程度が透明な外部カバーを通して視認できるようにすることが好ましい。吸水材32全体が十分に変色し、吸水材32による液体粒子除去がほぼ100%行われたことを視認でたときには、ガス導入管28の雌ネジ28eとガス排出管30の雄ネジ30cとの螺合を解除し、ガス導入管28とガス排出管30とを分離し、それまで使用していた吸水材を新たなものと取り替え、再度上記螺合を行って当該液体粒子除去フィルタ装置を組み立て再使用する。
【0024】
以上、本発明にかかる液体粒子除去フィルタ装置の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、粒子除去流路22の周壁を構成する筒状の吸水材32は、吸水能力を高いものとするために粒子除去流路の全長に渡り設ける例を示したが、必ずしもそのようにする必要は無い。また、外部カバー34もその全体を透明のものとしたが、吸水材32の吸収の程度を外部から視認できるものであれば良く全体を透明にする必要は必ずしも無い。本発明は液体粒子連行ガスを吸水材に当てるように流すことにより、該吸水材を透過させることなく液体粒子の吸着を行うことを特徴とするものであり、粒子除去流路の形状構造やガス排出路の形状構造などは必要に応じ任意に変形することができる。
【符号の説明】
【0025】
エアダスター10;バッテリ12;バッテリ駆動コンプレッサー14;ノズル部材16;ホース18;液体粒子除去フィルタ装置20;粒子除去流路22;ガス導入路24;ガス導入口24b;ガス排出路26;ガス排出口26b;ガス導入管28;小径部28a;大径部28b;上流端部28c;孔28d;雌ネジ28e;ガス排出管30;小径部30a;大径部30b;雄ネジ30c;下流端開口30d;閉止端30e;孔30f;吸水材32;外部カバー34;上流側端34a;下流側端34b;Oリング36、38
図1
図2