(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のエンボス部に対面する前記第1の非エンボス部のパターンと前記第1のエンボス部に対面する前記第2の非エンボス部のパターンとが、90°×n回転対称(nは奇数)である、請求項1に記載の衛生薄葉紙。
前記第2のエンボス部に対面する前記第1の非エンボス部のパターンと前記第1のエンボス部に対面する前記第2の非エンボス部のパターンとが、線対称である、請求項1に記載の衛生薄葉紙。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様は、エンボス凸部と該エンボス凸部に対応するエンボス凹部とが表裏に複数形成された第1のシートと、エンボス凸部と該エンボス凸部に対応するエンボス凹部とが表裏に複数形成された第2のシートとを有し、前記第1のシートと前記第2のシートとが、エンボス凸部の形成面をネステッド形式で対面させて一体化した衛生薄葉紙であって、前記第1のシートは、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部とが形成された第1のエンボス部と、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部とが形成されない第1の非エンボス部とを有し、前記第2のシートは、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部とが形成された第2のエンボス部と、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部とが形成されない第2の非エンボス部とを有し、前記第1の非エンボス部は、前記第2のエンボス部と対面し、前記第2の非エンボス部は、前記第1のエンボス部と対面する、衛生薄葉紙である。
【0017】
本明細書において、衛生薄葉紙は、特に限定されず、キッチンペーパー、ティッシュペーパー、ドライタイプや水、薬液を含浸させたウェットタイプの衛生薄葉紙も含まれる。また、衛生薄葉紙の用途は、家庭用、業務用のいずれも対象となり得る。
【0018】
第1のシートは、衛生薄葉紙に用いられる公知のクレープ紙を用いることができる。エンボス凸部は、エンボス加工により第1のシートに形成される凸部である。エンボス凹部は、第1のシートにエンボス凸部と表裏一体に形成される凹部である。非エンボス凸部は、第1のシートにおいて、複数のエンボス凸部に囲まれた凸部が形成されない部分を示す。
【0019】
第2のシートは、衛生薄葉紙に用いられる公知のクレープ紙を用いることができ、第1のシートと同じ材質にしてもよい。エンボス凸部は、エンボス加工により第2のシートに形成される凸部である。エンボス凹部は、第2のシートにエンボス凸部と表裏一体に形成される凹部である。非エンボス凸部は、第2のシートにおいて、複数のエンボス凸部に囲まれた凸部が形成されない部分を示す。
【0020】
本明細書において、第1のシートと第2のシートとをエンボス凸部の形成面をネステッド形式で対面させるとは、第1のシートのエンボス凸部の頂部が第2のシートのエンボス凸部でない部分(第1のシートから視て、エンボス凸部に囲まれた凸となっていない部分または非エンボス凸部)に対面させ、且つ、第2のシートのエンボス凸部の頂部が第1のシートのエンボス凸部でない部分(第2のシートから視て、エンボス凸部に囲まれて凸となっていない部分または非エンボス凸部)に対面させることである。また、エンボス凸部の頂部は、対面する非エンボス凸部に接着させてもよい。
【0021】
第1のシートは、さらに、第1のエンボス部と第1の非エンボス部を有する。第1のエンボス部には、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部が形成されている。一方、第1の非エンボス部には、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部のいずれも形成されていない。
【0022】
また、第2のシートは、さらに、第2のエンボス部と第2の非エンボス部を有する。第2のエンボス部には、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部が形成されている。一方、第2の非エンボス部には、複数のエンボス凸部と複数の非エンボス凸部のいずれも形成されていない。
【0023】
第1の態様では、第1の非エンボス部が第2のエンボス部と対面し、第2の非エンボス部が第1のエンボス部と対面するように、第1のシートに第1のエンボス部と第1の非エンボス部が形成され、第2のシートに第2のエンボス部と第2の非エンボス部が形成されている。
【0024】
このような構成では、第1のシートと第2のシートとの間で、非エンボス部同士が対面することがないため、第1のシートと第2のシートとの間に非エンボス空間(非エンボス部同士が対面することにより形成され、厚み方向の荷重に対して潰れやすい空間)が形成されることはない。そのため、第1の態様では、荷重に対する厚み方向の強度を高くすることができ、荷重時の吸収性能を向上させる(例えば、油分等の裏抜けを低減する)ことができる。
【0025】
また、第1のシートに配置された非エンボス部と第2のシートに配置された非エンボス部とが対面しない構造では、非エンボス部が衛生薄葉紙内に分散して配置されることになるため、非エンボス部を介して油分等が拡散し易くなる。そのため、第1の態様によれば、非エンボス空間が存在しなくても、吸収した油分等の拡散性が維持され、吸収スピードの低下を抑制することができる。
【0026】
また、第1のシートと第2のシートとの間に非エンボス空間が存在せず、非エンボス空間が交差する交差部(油分等が滞留し易い部分)も当然に存在しない。そのため、第1の態様では、油分等の拡散性を向上させ、油分等の裏抜けを低減することができる。
【0027】
また、衛生薄葉紙では、非エンボス空間がデザイン性を発揮する部分となるため、非エンボス空間が存在しないとデザイン性が低下する傾向がある。しかし、第1の態様では、非エンボス部が衛生薄葉紙内に分散して配置されるため、非エンボス空間が存在しなくても、デザイン性を維持することができる。
【0028】
また、第1の態様では、第1のシートと第2のシートとがネステッド形式で積層された積層構造を採用するため、衛生薄葉紙の使用対象との接触面積を小さくすることができ、使用時に荷重がかかっても衛生薄葉紙内の空間が潰れ難い。その上、第1のシートと第2のシート間に非エンボス空間を設けなくても、吸収速度を維持することができ、また荷重時の吸収性能を維持することができる。そのため、第1の態様によれば、坪量や紙厚を小さくすることができ、衛生薄葉紙の厚みを薄くすることができる。
【0029】
本発明の第2の態様は、さらに、前記第1のシート及び前記第2のシートは、それぞれ2つ以上のシート領域を有し、前記第1のシートの該シート領域には、前記第1の非エンボス部を有する領域と前記第1の非エンボス部を有さない領域とが形成され、前記第2のシートの該シート領域には、前記第2の非エンボス部を有する領域と前記第2の非エンボス部を有さない領域とが形成され、前記第1の非エンボス部を有する領域と前記第2の非エンボス部を有する領域とが重ならないように配置されている、衛生薄葉紙である。
【0030】
本明細書において、2つ以上のシート領域を有するとは、第1のシートと第2のシートが積層された状態で衛生薄葉紙を任意の寸法に区切ったときに、区切られた範囲が2つ以上あることを意味する。また、各シート領域は、2つ以上の領域に区別することができる。
【0031】
第2の態様では、このように区切られた各領域で第1の非エンボス部を有する領域と第2の非エンボス部を有する領域とが重ならないように配置されている。そのため、複数の領域に非エンボス部が存在する場合でも、第1のシートと第2のシート間で非エンボス部同士が対面することがない(非エンボス空間が形成されることはない)。これにより、第2の態様では、各シートに形成されるエンボス部の面積が増え、荷重に対する厚み方向の強度を維持することができるため、荷重時の吸収性能を向上させることができる。また、非エンボス空間が存在しなくても、油分等の分散性の低下を抑制することができ、しかもデザイン性を維持することができる。
【0032】
本発明の第3の態様は、さらに、前記第2のエンボス部に対面する前記第1の非エンボス部のパターンと前記第1のエンボス部に対面する前記第2の非エンボス部のパターンとが、90°×n回転対称(nは奇数)である、衛生薄葉紙である。
【0033】
本明細書において、非エンボス部のパターンは、対面するエンボス部が形成された一方のシートから視た他方のシートに形成された非エンボス部の輪郭形状である。また、90°×n回転対称とは、仮想の軸を中心にパターンを90°×n回転させたときに、回転後のパターンが回転前のパターンに重なり合うことを意味する。
【0034】
なお、パターンの形状は、特に限定されるものではなく、円形、三角形、四角形、多角形、十字形、ハート形等のあらゆる形状を採用することができる。また、パターンを構成する図形の個数も1個に限られず、複数の図形で構成してもよく、また複数の図形は異なる形状でもよい。
【0035】
このような回転対称の位置関係になるパターンを有する非エンボス部を第1のシート及び第2のシートにそれぞれ形成することにより、第1のシートと第2のシートとの間に非エンボス部を規則的に配置することができる(非エンボス部が衛生薄葉紙全体で幾何学模様を呈することができる)。そのため、第3の態様によれば、非エンボス空間が存在しなくても、油分等の分散性の低下をさらに抑制することができ、しかもデザイン性を維持することができる。
【0036】
本発明の第4の態様は、さらに、前記第2のエンボス部に対面する前記第1の非エンボス部のパターンと前記第1のエンボス部に対面する前記第2の非エンボス部のパターンとが、線対称である、衛生薄葉紙である。本明細書において、線対称とは、仮想の直線を軸としてパターンを反転させたときに、反転後のパターンが反転前のパターンに重なり合うことを意味する。
【0037】
このような線対称の位置関係になるパターンを有する非エンボス部を第1のシート及び第2のシートにそれぞれ形成することによっても、第1のシートと第2のシートとの間に非エンボス部を規則的に配置することができる。そのため、第4の態様によれば、油分等の分散性の低下をさらに抑制することができ、しかもデザイン性を維持することができる。
【0038】
本発明の第5の態様は、さらに、前記第1の非エンボス部および前記第2の非エンボス部の少なくともいずれかが、交差部を持たない、衛生薄葉紙である。本明細書において、交差部を持たないとは、各シートにおいて非エンボス部内に交差する部分がない、または非エンボス部同士が交差しないことを意味する。
【0039】
このような構成を採用することにより、第5の態様では、非エンボス部内の油分等が滞留する可能性のある部分が形成されない。そのため、第5の態様によれば、油分等の拡散性をさらに向上させ、油分等の裏抜けをより低減することができる。
【0040】
本発明の第6の態様は、さらに、前記第1の非エンボス部および前記第2の非エンボス部の面積率が、3〜16%である、衛生薄葉紙である。本明細書において、非エンボス部の面積率とは、非エンボス部が形成されるシート表面に占める非エンボス部の面積の割合である。非エンボス部の面積率が3%未満では、十分な油分等の分散性が得られない可能性がある。また、非エンボス部の面積率が13%を超える場合は、エンボス凸部の数が少ないため、荷重時の厚み方向に対する十分な強度が得られない可能性がある。なお、各シートに形成された非エンボス部の面積率は、好ましくは5〜13%であり、より好ましくは6〜11%である。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、理解を容易にするため、各図における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また、各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0042】
図1は、本発明の実施形態(第1実施形態)に係るキッチンペーパーを示す図である。
図2(A)は、
図1のキッチンペーパーを構成する第1のシートを示す図であり、
図2(B)は、
図2(A)の第1のシートに積層される第2のシートを示す図である。
【0043】
図1及び
図2に示すように、キッチンペーパー100は、クレープ紙10とクレープ紙20とを有する。キッチンペーパー100の態様は、特に限定されるものではなく、例えば、分断用のミシン目線を適宜の間隔で配置したされた帯状のキッチンペーパーを紙管に巻き付けたロールタイプ、または、ピックアップ式、ポップアップ式等と称される、枚葉のキッチンペーパーが折畳み積層された積層タイプを用いることができる。なお、キッチンペーパー100は、本発明の衛生薄葉紙の一例であり、クレープ紙10、20は、本発明の衛生薄葉紙を構成する第1及び第2のシートの一例である。
【0044】
クレープ紙10には、原紙の原料がパルプを主材とする紙が用いられる。パルプ組成は、キッチンペーパーにおける公知の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%とすることができる。また、クレープ紙20にも、クレープ紙10と同様の紙を用いることができる。
【0045】
パルプ組成は、例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを適宜の比率で使用することができる。特に、針葉樹パルプが広葉樹パルプと比較してより多い組成のパルプ組成であることが好ましい。なお、針葉樹パルプと広葉樹パルプの比は、50:50〜80:20であるのが好ましい。
【0046】
また、クレープ紙10、20には、JIS P 8124(1998)を基準とする坪量が、15〜30g/m
2の紙が用いられている。クレープ紙10、20の坪量をこの範囲に調整すると、紙面に水や油などの液体が触れた際に、十分な液拡散性が得られ、特に高い吸水性能が得られる。またこの範囲内の坪量では、キッチンペーパーとして使用時の柔軟性、追従性が得られる。
【0047】
ここで、本実施形態(第1実施形態)に係るキッチンペーパーについて、さらに詳しく説明する。
図3(A)は、
図2(A)の3A線で囲まれた部分の拡大図であり、
図3(B)は、
図2(B)の3B線で囲まれた部分の拡大図であり、
図3(C)は、
図1の3C線で囲まれた部分の拡大図である。また、
図4(A)は、
図3(A)の4A−4A線断面図であり、
図4(B)は、
図3(B)の4B−4B線断面図であり、
図4(C)は、
図3(C)の4C−4C線断面図である。また、
図5(A)は
図2(A)の5A線で囲まれた部分の拡大図であり、
図5(B)は
図2(B)の5B線で囲まれた部分の拡大図であり、
図5(C)は
図1の5C線で囲まれた部分の拡大図である。さらに、
図6(A)は
図5(A)の6A−6A線断面図であり、
図6(B)は
図5(B)の6B−6B線断面図であり、
図6(C)は、
図5(C)の6C−6C線断面図である。
【0048】
クレープ紙10には、エンボス凸部EC1とエンボス凸部EC1に対応するエンボス凹部ED1とがクレープ紙10の表裏に複数形成されている(
図3、
図5参照)。各エンボス凸部EC1の頂部(またはエンボス凹部ED1の開口部)は、平面視で四角形状を有する(
図3、
図5参照)。また、エンボス凸部EC1(またはエンボス凹部ED1)の側面は、エンボス凹部ED1の底部から開口部に向かって図示しないテーパで形成されている。
【0049】
エンボス凸部EC1は、公知のスチールラバー式のエンボス付与方法により、図示しない凸エンボスロールをクレープ紙10に押し付けることにより、クレープ紙10の一方の面上に形成される。一方、エンボス凹部ED1は、エンボス凸部EC1に対応するエンボス凹部としてクレープ紙10の他方の面上に形成される(
図3〜
図6参照)。
【0050】
クレープ紙10は、エンボス部30と非エンボス部50とを有する。エンボス部30には、複数のエンボス凸部EC1と複数の非エンボス凸部NE1が形成されている。一方、非エンボス部50には、複数のエンボス凸部EC1と複数の非エンボス凸部NE1は、いずれも形成されていない(
図2〜
図6参照)。
【0051】
ここで、非エンボス凸部NE1は、複数のエンボス凸部EC1に囲まれた凸部が形成されない部分を示す(
図3〜
図6参照)。なお、エンボス部30、非エンボス部50は、本発明の衛生薄葉紙を構成する第1のシートに形成される第1のエンボス部、第1の非エンボス部の一例である。
【0052】
クレープ紙20には、エンボス凸部EC2とエンボス凸部EC2に対応するエンボス凹部ED2とがクレープ紙20の表裏に複数形成されている(
図3、
図5参照)。各エンボス凸部EC2の頂部(またはエンボス凹部ED2の開口部)は、平面視で四角形状を有する(
図3、
図5参照)。また、エンボス凸部EC2(またはエンボス凹部ED2)の側面は、エンボス凹部ED2の底部から開口部に向かって図示しないテーパで形成されている。
【0053】
エンボス凸部EC2は、クレープ紙10と同様に、図示しない凸エンボスロールをクレープ紙20に押し付けることにより、クレープ紙20の一方の面上に形成される。一方、エンボス凹部ED2は、エンボス凸部EC2に対応するエンボス凹部としてクレープ紙20の他方の面上に形成される(
図3〜
図6参照)。
【0054】
クレープ紙20は、エンボス部40と非エンボス部60とを有する。エンボス部40には、複数のエンボス凸部EC2と複数の非エンボス凸部NE2が形成されている。一方、非エンボス部60には、複数のエンボス凸部EC2と複数の非エンボス凸部NE2は形成されていない(
図2〜
図6参照)。
【0055】
ここで、非エンボス凸部NE2は、複数のエンボス凸部EC2に囲まれた凸部が形成されない部分を示す(
図3〜
図6参照)。なお、エンボス部40、非エンボス部60は、本発明の衛生薄葉紙を構成する第2のシートに形成される第2のエンボス部、第2の非エンボス部の一例である。
【0056】
第1実施形態のキッチンペーパー100では、クレープ紙10とクレープ紙20とが、エンボス凸部EC1、EC2の形成面をネステッド形式で対面させて一体化されている。具体的には、クレープ紙10のエンボス凸部EC1は、クレープ紙20の非エンボス凸部NE2(エンボス凸部EC2が設けられていない部分)に対向して配置されている。一方、クレープ紙20のエンボス凸部EC2は、クレープ紙10の非エンボス凸部NE1(エンボス凸部EC1が設けられていない部分)に対向して配置されている(
図1〜
図6参照)。
【0057】
また、クレープ紙10のエンボス凸部EC1の頂部は、クレープ紙20の非エンボス凸部NE2に対して、図示しない接着剤により接着されている(
図4、
図6参照)。クレープ紙10のエンボス凸部EC1の頂部とクレープ紙20の非エンボス凸部NE2とを接着させることにより、2枚のクレープ紙10、20の接着部分を一方のクレープ紙(クレープ紙10)側にバランスよく配置することができる。そのため、接着剤による吸収性能の低下を少なくすることができる。
【0058】
なお、接着剤には、積層構造を有するキッチンペーパーに採用される公知の接着剤を用いることができる。このような接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系接着剤等が挙げられる。
【0059】
なお、クレープ紙10のエンボス凸部EC1の頂部とクレープ紙20の非エンボス凸部NE2とを接着する代わりに、クレープ紙20のエンボス凸部EC2の頂部とクレープ紙10の非エンボス凸部NE1とを接着してもよい。また、クレープ紙10のエンボス凸部EC1の頂部をクレープ紙20の非エンボス凸部NE2に接着し、かつクレープ紙20のエンボス凸部EC2の頂部をクレープ紙10の非エンボス凸部NE1に接着してもよい。
【0060】
第1実施形態では、
図1〜
図6に示すように、クレープ紙10の非エンボス部50は、クレープ紙20のエンボス部40と対面し、クレープ紙20の非エンボス部60は、クレープ紙10のエンボス部30と対面するように、クレープ紙10にエンボス部30と非エンボス部50が形成され、クレープ紙20にエンボス部40と非エンボス部60が形成されている。
【0061】
第1実施形態では、このような構成を採用することにより、クレープ紙10とクレープ紙20との間で、クレープ紙10の非エンボス部50とクレープ紙20の非エンボス部60とが対面しないため、クレープ紙10とクレープ紙20との間に潰れ易い非エンボス空間が形成されることはない(
図4、
図6参照)。そのため、第1実施形態によれば、キッチンペーパー100の荷重に対する厚み方向の強度を高くすることができ、荷重時の吸収性能を向上させる(例えば、キッチンペーパー100の油分等の裏抜けを低減する)ことができる。
【0062】
また、クレープ紙10の非エンボス部50とクレープ紙20の非エンボス部60とが対面しない構造では、非エンボス部50、60がキッチンペーパー100内に分散して配置されるため、非エンボス部50、60を介して油分等が拡散し易くなる(
図1〜
図6参照)。そのため、第1実施形態によれば、非エンボス空間を形成しなくても、吸収した油分等の拡散性が維持され、吸収スピードの低下を抑制することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、クレープ紙10とクレープ紙20との間に非エンボス空間が形成されず、非エンボス空間が交差する交差部(油分等が滞留し易い部分)も当然に存在しない(
図1参照)。そのため、第1実施形態では、油分等の拡散性を向上させ、油分等の裏抜けを低減することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、非エンボス部50、60がキッチンペーパー100内に分散して配置されている(
図1、
図2参照)。そのため、第1実施形態によれば、非エンボス空間を形成しなくても、デザイン性を維持することができる。
【0065】
また、
図7は、本発明の実施形態(第2実施形態)に係るキッチンペーパーを示す図である。
図8(A)は、
図7のキッチンペーパーを構成する第1のシートを示す図であり、
図8(B)は、
図8(A)の第1のシートに積層される第2のシートを示す図である。
【0066】
図7、
図8に示すように、第2実施形態でも、第1実施形態と同様、クレープ紙10の非エンボス部50は、クレープ紙20のエンボス部40と対面し、クレープ紙20の非エンボス部60は、クレープ紙10のエンボス部30と対面するように、クレープ紙10にエンボス部30と非エンボス部50が形成され、クレープ紙20にエンボス部40と非エンボス部60が形成されている。
【0067】
第2実施形態でも、このような構成を採用することにより、クレープ紙10とクレープ紙20との間で、クレープ紙10の非エンボス部50とクレープ紙20の非エンボス部60とが対面しないため、クレープ紙10とクレープ紙20との間に潰れ易い非エンボス空間が形成されることはない(
図7、
図8参照)。そのため、第2実施形態によれば、キッチンペーパー100の荷重に対する厚み方向の強度を高くすることができ、荷重時の吸収性能を向上させる(例えば、キッチンペーパー100の油分等の裏抜けを低減する)ことができる。
【0068】
また、第2実施形態でも、クレープ紙10の非エンボス部50とクレープ紙20の非エンボス部60とが対面しない構造では、非エンボス部50、60がキッチンペーパー100内に分散して配置されるため、非エンボス部50、60を介して油分等が拡散し易くなる(
図7、
図8参照)。そのため、第2実施形態によれば、非エンボス空間を形成しなくても、吸収した油分等の拡散性が維持され、吸収スピードの低下を抑制することができる。
【0069】
また、第2実施形態でも、クレープ紙10とクレープ紙20との間に非エンボス空間が形成されず、非エンボス空間が交差する交差部(油分等が滞留し易い部分)も当然に存在しない(
図7、
図8参照)。そのため、第2実施形態では、油分等の拡散性を向上させ、油分等の裏抜けを低減することができる。
【0070】
また、第2実施形態でも、非エンボス部50、60がキッチンペーパー100内に分散して配置されている(
図7、
図8参照)。そのため、第2実施形態によれば、非エンボス空間を形成しなくても、デザイン性を維持することができる。
【0071】
また、第2実施形態でも、ネステッド形式の積層構造が採用されているため(
図7、
図8参照)、キッチンペーパー100の使用対象(例えば、食器、揚げ物等)との接触面積を小さくすることができ、使用時に荷重がかかってもキッチンペーパー100内の空間が潰れ難い。その上、クレープ紙10とクレープ紙20間に非エンボス空間を設けなくても、吸収速度を維持することができ、また荷重時の吸収性能を維持することができる。そのため、第2実施形態によれば、クレープ紙10、20の坪量や紙厚を小さくすることができ、キッチンペーパー100の厚みを薄くすることができる。
【0072】
また、第2実施形態では、
図7に示すように、キッチンペーパー100が2つ以上のシート領域を有する。
図2(A)、
図8(A)に示すように、クレープ紙10のシート領域(第1のシート領域11、第2のシート領域12、第3のシート領域13、及び第4のシート領域14)には、非エンボス部50を有する領域と非エンボス部50を有さない領域とが形成されている。
【0073】
一方、
図2(B)、
図8(B)に示すように、クレープ紙20のシート領域(第5のシート領域21、第6のシート領域22、第7のシート領域23、及び第8のシート領域24)には、非エンボス部60を有する領域と非エンボス部60を有さない領域とが形成されている。そして、非エンボス部50を有する領域と非エンボス部60を有する領域とが重ならないように配置されている。
【0074】
具体的には、
図1、
図7に示すように、キッチンペーパー100は4つの領域70を有している。4つの領域70は、第1の領域71〜第4の領域74に区分けすることができる。4つの領域70のうち、第1の領域71、第3の領域73には、クレープ紙20の非エンボス部60が配置され、第2の領域72、第4の領域74には、クレープ紙10の非エンボス部50が配置されている。
【0075】
本実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)では、
図2(A)、
図8(A)に示すように、クレープ紙10のエンボス部30を第1のエンボス領域31〜第4のエンボス領域34に区分けし、クレープ紙10の非エンボス部50を第2の非エンボス領域52と第4の非エンボス領域54に区分けする。また、
図2(B)、
図8(B)に示すように、クレープ紙20のエンボス部40を第1のエンボス領域41〜第4のエンボス領域44に区分けし、クレープ紙20の非エンボス部60を第1の非エンボス領域61と第3の非エンボス領域63に区分けする。
【0076】
そうすると、キッチンペーパー100の4つの領域のうち、第1の領域71では、クレープ紙10の第1のエンボス領域31とクレープ紙20の第1の非エンボス領域61が対面する。また、第2の領域72では、クレープ紙10の第2の非エンボス領域52とクレープ紙20の第2のエンボス領域42とが対面する。さらに、第3の領域73では、クレープ紙10の第3のエンボス領域33とクレープ紙20の第3の非エンボス領域63が対面する。そして、第4の領域74では、クレープ紙10の第4の非エンボス領域54とクレープ紙20の第4のエンボス領域44とが対面する(
図1〜
図8参照)。
【0077】
本実施形態では、クレープ紙10の非エンボス部50が、第2、第4の領域72、74に配置され、クレープ紙20の非エンボス部60が、第1、第3の領域71、73に配置されている。このような構成では、4つの領域に配置された非エンボス部50、60の非エンボス領域52、54、61、63は、クレープ紙10とクレープ紙20間で非エンボス部同士が対面しない。そのため、非エンボス部同士が対面して形成される非エンボス空間(潰れやすい空間)が形成されることはない(
図1〜
図8参照)。
【0078】
これにより、本実施形態では、各クレープ紙に形成される非エンボス部50、60の各非エンボス領域52、54、61、63の面積を増やすことができる。その結果、本実施形態では、荷重に対する厚み方向の強度を維持することができ、荷重時の吸収性能を向上させることができる。また、本実施形態では、非エンボス空間が存在しなくても、油分等の分散性の低下を抑制することができ、しかもデザイン性を維持することができる(
図1〜
図8参照)。
【0079】
本実施形態では、クレープ紙20のエンボス部40に対面するクレープ紙10の非エンボス部50のパターンとクレープ紙10のエンボス部30に対面するクレープ紙20の非エンボス部60のパターンとが、90°×n回転対称となっている。ここで、nは奇数である。具体的には、
図1に示すように、クレープ紙10の非エンボス部50のパターンとクレープ紙20の非エンボス部60のパターンとが90°または270°回転対称になっている(
図1、
図2、
図7、
図8参照)。
【0080】
なお、非エンボス部のパターンの形状は、任意である。本実施形態のうち、
図1に示す第1実施形態では、
図1及び
図2に示すように、パターンの形状は十字形である。また、
図7に示す第2実施形態では、
図7及び
図8に示すように、各非エンボス領域52、54、61、63に形成された4個のパターンがそれぞれ長方形で構成されている。
【0081】
このような回転対称の位置関係になるパターンを有する非エンボス部50、60をクレープ紙10、20にそれぞれ形成することにより、クレープ紙10とクレープ紙20との間に非エンボス部を規則的に配置することができる。すなわち、
図1、
図2、
図7、
図8に示すように、非エンボス部50、60のパターンは、キッチンペーパー100の全体で視たときに、幾何学模様を呈することができる。そのため、本実施形態によれば、非エンボス空間を設けなくても、油分等の分散性の低下をさらに抑制することができ、しかもデザイン性を維持することができる。
【0082】
また、見方を変えると、本実施形態では、
図1〜
図8に示すように、クレープ紙20のエンボス部40に対面するクレープ紙10の非エンボス部50のパターンと、クレープ紙10のエンボス部30に対面するクレープ紙20の非エンボス部60のパターンとが、線対称になっている。
【0083】
このような線対称の位置関係になるパターンを有する非エンボス部50、60をクレープ紙10、20にそれぞれ形成することによっても、クレープ紙10とクレープ紙20の間に非エンボス部50、60を規則的に配置することができる(
図1、
図2、
図7、
図8参照)。そのため、本実施形態によれば、油分等の分散性の低下をさらに抑制することができ、しかもデザイン性を維持することができる。
【0084】
本実施形態では、
図1、
図2、
図7、及び
図8に示すように、クレープ紙10の非エンボス部50及びクレープ紙20の非エンボス部60は、交差部を持たない構成になっている。すなわち、クレープ紙10、20の非エンボス部50、60内に非エンボス部同士が交差する部分がない。具体的には、クレープ紙10の非エンボス部50の交差部となり得る部分には、エンボス凸部NC1が形成され、クレープ紙20の非エンボス部60の交差部となり得る部分には、エンボス凸部NC2が形成されている(
図1〜
図8参照)。
【0085】
このような交差部を持たない構造にすることで、本実施形態では、非エンボス部50、60内に油分等が滞留する可能性のある交差部が存在しない。そのため、本実施形態によれば、油分等の拡散性をさらに向上させ、油分等の裏抜けをより低減することができる(
図1、
図7参照)。
【0086】
また、本実施形態では、クレープ紙10の非エンボス部50及びクレープ紙20の非エンボス部60の面積率(非エンボス部が形成されるシート表面に占める非エンボス部の面積の割合)は、3〜16%であり、好ましくは5〜13%であり、より好ましくは6〜11%である。非エンボス部50、60の面積率が3%未満では、十分な油分等の分散性が得られない可能性がある。また、非エンボス部50、60の面積率が13%を超える場合、エンボス凸部の数が少ないため、荷重時の厚み方向に対する十分な強度が得られない可能性がある。
【実施例】
【0087】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。実施例、比較例の測定、評価は、以下のように行った。
【0088】
[原紙]
[坪量]
試験で使用するキッチンペーパーのクレープ紙(原紙)の坪量(米坪、g/m
2)は、JIS P 8124(1998)により算出する。
【0089】
[嵩]
キッチンペーパーの嵩(5枚重ね)(mm)を測定する。キッチンペーパーの嵩の測定方法は、12cm×12cmに裁断した試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、該ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせる。次いで、プランジャーを上げて試験片を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろし、そのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。また、プランジャーの端子は金属製で直径30mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにする。この嵩の測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、嵩の測定値は、測定を10回行って得られる平均値とする。
【0090】
[圧縮試験]
圧縮試験の測定方法は、12cm×12cmに裁断した試験片を用意し、KES−G5(カトーテック製)の圧縮試験機を用いて初期厚みTOと荷重時の厚みTMを測定する。測定条件は、加圧子面積:2cm
2、力計:1kg、CHECKスイッチ:MES、DEF出力感度ダイヤル:2mm/V、上限荷重:10gf/cm
2(SENS:2、STOROKE SETダイヤル:1)、SPEED:0.02cm/s(SPEED RANGEスイッチ:0.1、SPEED SETスイッチ:2)、REPEAT SINGLE切り替えスイッチ:SHINGLE、CONTROLスイッチ:INT、STOPスイッチ:OFFとする。ここで、初期厚みTOとは、荷重圧力が0.5g/cm
2に達したときの試験片の厚みであり、荷重時の厚みTMとは、荷重圧力が上限荷重(10gf/cm
2)に達したときの試験片の厚みである。測定は、初期厚みTO及び荷重時の厚みTMともにそれぞれの3回測定し、その平均値の小数点以下3桁目を四捨五入し小数点以下2桁目まで求めて算出する。算出した初期厚みTOと荷重時の厚みTMとから、荷重時の圧縮率(潰れ率)を算出する。荷重時の圧縮率は、下記式より算出する。値は、小数点以下2桁目を四捨五入し小数点以下1桁目まで求める。
・荷重時の圧縮率(%)=(初期厚みTO−荷重時の厚みTM)÷初期厚みTO×100
【0091】
[吸油試験]
吸油試験(油吸収性の試験)の測定方法は、嵩の測定と同様に、試験片200を12cm×12cmに裁断する。電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製のHR300等)を用いて、
図9に示すプラスチック製のシート202(寸法:約12cm×12cm、厚み:0.2mm、重さ:2.7g、材質:ポリプロピレン)、試験片200、錘204(直径:約82mm、厚み:10mm、重さ:59g、材質:アクリル)、下紙208(コピー用紙を約12cm×12cmに裁断したものを5枚)の各重量を測定する。測定後、プラスチック製のシート202の上に試験片200を載せ、試験片200の中央に錘204を載せる。なお、錘204には厚み方向に貫通する孔が設けられている。孔の直径は、約12mmである。
【0092】
その後、ピペット(Thermo scientific社製、FinnpipetteF2、0.5〜5ml)で2.3ml(約2.0g)の油206(常温のサラダ油)(日清オイリオグループ株式会社製の日清サラダ油)を錘204の孔から滴下する。このとき滴下位置(エンボス部)は、
図9に示すように試験片200の中心位置に固定しておく。滴下後、錘204の孔内の油が試験片200に吸収されるまでの時間(油を吸い切るまでのスピード)と錘204の径からはみ出るまでの時間(油染みが錘からはみ出るまでのスピード)も合わせて測定する。
【0093】
滴下2分後、錘204を取り除き、重量(図中(1)の戻り量)を測定する。その後、プラスチック製のシート202を取り除き重量(図中(2)の裏抜け量)を測定する。そして、試験片200の重量(図中(3)の吸収量)を測定し、下紙208に置きなおしてから、さらに5分後、試験片200の重量(最終保持した油量、図中(4)の最終保持量)、下紙208の油量(保持できなかった油量、図中(5)の最終裏抜け量)を測定する。この時、下紙208へ油が浸透したときの枚数も測定した(
図9参照)。
【0094】
各試験片200について、
図9に示すように、試験片吸油量(g)、裏抜け量(g)、戻り量(g)、滴下油量(g)、最終保持量(g)、裏抜け総量(g)、滴下油量に対する試験片吸油率(%)、裏抜け率(%)、戻り率(%)、最終保持率(%)、裏抜け総率(%)、油を吸い切った時の時間(s)、油染みが錘204からはみ出るまでの時間(s)、浸透枚数(枚)を測定した。
【0095】
試験片吸油量(g)等の各項目は、下記に列挙する式により算出した。
・試験片吸油量(g)=滴下2分後の試験片重量−試験片重量
・裏抜け量(g)=滴下2分後のプラスチック製のシート重量−プラスチック製のシート重量
・戻り量(g)=滴下2分後の錘重量−錘重量
・滴下油量(g)=試験片吸油量+裏抜け量+戻り量
・最終保持量(g)=5分後の試験片重量−試験片重量
・最終裏抜け量(g)=5分後の下紙の重量−下紙の重量
・裏抜け総量(g)=裏抜け量+最終裏抜け量
・試験片吸油率(%)=試験片吸油量÷滴下油量×100
・裏抜け率(%)=裏抜け量÷滴下油量×100
・戻り率(%)=戻り量÷滴下油量×100
・最終保持率(%)=最終保持量÷滴下油量×100
・最終裏抜け率(%)=最終裏抜け量÷滴下油量×100
・裏抜け総率(%)=裏抜け総量÷滴下油量×100
なお、試験片吸油量(g)、裏抜け量(g)、戻り量(g)、滴下油量(g)、最終保持量(g)、最終裏抜け量(g)、裏抜け総量(g)の各測定値は、測定を3回行って得られる平均値とする。これらの試験片吸油量(g)等から、試験片吸油率(%)、裏抜け率(%)、戻り率(%)、最終保持率(%)、最終裏抜け率(%)、裏抜け総率(%)を算出した。
【0096】
[実施例1]
実施例1では、
図1〜
図6に示す第1実施形態のキッチンペーパー100を用いた。実施例1では、繊維原料がパルプ100質量%、米坪22.1g/m
2の原紙を用いた(1プライ)。エンボス条件については、ネステッド形式を採用し、非エンボス部50、60のパターンを十字形で該十字形に交差部を持たない形状とし、エンボス凸部の個数を2090個/144cm
2とし、クレープ紙10のエンボス凸部EC1とクレープ紙20の非エンボス凸部NE2との糊付け面積率を8.4%とし、全エンボス凸部の容積を10738mm
2とし、非エンボス部50、60の面積率を10.8%とした。実施例1の条件及び結果を表1に示す。
【0097】
[実施例2]
実施例2では、
図7及び
図8に示す第2実施形態のキッチンペーパー100を用いた。実施例2では、エンボス条件のうち、非エンボス部50の非エンボス領域52、54、及び非エンボス部60の非エンボス領域61、63の各パターンを4個の細長い長方形が所定の間隔で配置された形状とし、エンボス凸部の個数を2137個/144cm
2とし、クレープ紙10のエンボス凸部EC1とクレープ紙20の非エンボス凸部NE2との糊付け面積率を8.6%とし、全エンボス凸部の容積を10631mm
2とし、非エンボス部50、60の面積率を6.7%とした以外は、実施例1と同様にした。実施例2の条件及び結果を表1に示す。
【0098】
[比較例1]
比較例1では、
図10〜
図13に示すキッチンペーパー100を用いた。比較例1では、ティップ トゥ ティップ(TIP TO TIP)形式を採用し、非エンボス部50、60の各面積率を37.4%とし、非エンボス部50、60のパターンを格子形状とした以外は、実施例1と同様にした。なお、比較例1では、非エンボス部50と非エンボス部60とが対面して形成され、交差部CPを有する非エンボス空間LNが形成されている。比較例1の条件及び結果を表1に示す。
【0099】
[比較例2]
比較例2では、
図14〜
図17に示すキッチンペーパー100を用いた。比較例2では、非エンボス部50、60のパターンをハニカム形状とし、エンボス凸部の個数を2172個/144cm
2とし、クレープ紙10のエンボス凸部EC1とクレープ紙20の非エンボス凸部NE2との糊付け面積率を8.1%とし、全エンボス凸部の容積を13275mm
2とし、非エンボス部50、60の各面積率を19.1%とした以外は、実施例1と同様にした。なお、比較例2では、非エンボス部50と非エンボス部60とが対面して形成され、交差部CPを有する非エンボス空間LNが形成されている。比較例2の条件及び結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1より、荷重時の圧縮試験の結果を比較すると、実施例1及び実施例2(
図1〜
図8参照)では、初期厚みTOは、比較例1、比較例2(
図10〜
図17参照)と同等であるが、荷重時の圧縮率は、比較例1(
図10〜
図13参照)より小さくなった。また、荷重時の圧縮率は、比較例2(
図14〜
図17参照)と同等であった。すなわち、実施例1及び実施例2は、ネステッド形式の積層構造を有するため、荷重に対して潰れ難いことを示している。
【0102】
吸油試験の結果を比較すると、実施例1及び実施例2では、滴下油量に対する試験片吸油率、および最終保持率のいずれも、比較例1、比較例2に対して高くなっている。また、滴下油量に対する試験片の戻り率は、比較例1、比較例2に対して低くなっている。すなわち、実施例1及び実施例2の油保持性能が高いことを示している。特に、同じネステッド形式の積層構造を備える比較例2に対して、実施例1及び実施例2は高い油保持性能を示している。
【0103】
また、実施例1及び実施例2では、滴下油量に対する裏抜け率、裏抜け総率のいずれも、比較例1、比較例2に対して低くなっている。この結果は、実施例1及び実施例2では油の裏抜けを抑制している(染み出し難い)ことを示している。特に、同じネステッド形式の積層構造を備える比較例2に対しても、実施例1及び実施例2は油の裏抜けがし難いことを示している。
【0104】
さらに、実施例1及び実施例2では、油を吸い切るまでのスピード及び油染みが錘からはみ出るまでのスピードのいずれも、比較例1、比較例2に対して速くなっている。すなわち、実施例1及び実施例2では油の吸収速度が速く、吸収した油の分散性が向上していることを示している。
【0105】
また、デザイン性を比較しても、実施例1及び実施例2では、キッチンペーパー100全体に非エンボス部が配置されているため、比較例1及び比較例2のデザイン性に劣るものではない(
図1〜
図8参照)。
【0106】
これらの結果から、本実施形態のように、第1の非エンボス部が第2のエンボス部と対面し、かつ第2の非エンボス部が第1のエンボス部と対面する、衛生薄葉紙は、拡散性、デザイン性を維持しながら、荷重時の吸収性能に優れるものであることが判った。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0108】
本国際出願は、2017年3月2日に出願された日本国特許出願2017−39661号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容をここに援用する。