(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[ポリフェニレンエーテル樹脂組成物]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、クロロホルム溶媒を用い、30℃、0.5g/dlで測定した還元粘度が0.33dl/g以上0.46dl/g以下であるポリフェニレンエーテル樹脂(A)50質量%以上99質量%以下と、ポリスチレン樹脂(B)0%以上49質量%以下と、アクリロニトリル(AN)含有量16質量%以上45質量%以下のスチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂(C)1質量%以上15質量%以下と、を含有する。このように、所望の成分を所望の量で含有するように構成されているため、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、十分に高い耐熱性ないし良好な機械物性を確保しつつ、良好な成形流動性を有する。
【0014】
((A)成分)
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の還元粘度は、0.33〜0.46dl/gとする。なお、特に明記しない限り、本明細書中におけるポリフェニレンエーテル樹脂(A)の「還元粘度」は、(A)成分、(B)成分、(C)成分等を溶融混練した後の樹脂組成物から分離したポリフェニレンエーテル樹脂((A)成分)の還元粘度を示す。すなわち、上記「還元粘度」は、「原料としてのポリフェニレンエーテル(A)が本来物性として有している還元粘度」とは区別される。ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物を、溶融混練により製造する場合、溶融混練の前後で還元粘度が増加する。ここで、当該増加の程度は製造条件によって違いがある。本発明者は、樹脂組成物が所望の特性を示すようにするためには、樹脂組成物にした状態におけるポリフェニレンエーテル樹脂(A)の還元粘度を制御すべきことを見出した。なお、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の「還元粘度」は、クロロホルム溶媒を用い、30℃、0.5g/dlで測定することとする。ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の還元粘度はより好ましくは0.34dl/g以上0.44dl/g以下であり、さらにより好ましくは0.35dl/g以上0.42dl/g以下の範囲である。樹脂組成物から溶剤分離した後のポリフェニレンエーテルの還元粘度は、十分な機械物性発現の観点から0.33dl/g以上が好ましく、十分な成形流動性発現と本願(B)との混和性の観点から0.46dl/g以下が好ましい。一方、上記還元粘度が0.33dl/g未満であると、十分な機械物性が発現されない。また、上記還元粘度が0.46dl/gを超えると、十分な成形流動性が発現されない。
【0015】
本実施形態において、原料としてのポリフェニレンエーテル樹脂は、特に制限されるものではないが、ポリマーの性能および生産性の観点からは、下記一般式(a)又は(b)を繰り返し単位とし、構成単位が一般式(a)又は(b)からなる単独重合体(ホモポリマー)、あるいは共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
【0017】
上記一般式(a)及び(b)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ポリマーの性能および生産性の観点から、それぞれ独立して、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、並びにハロゲン及び水素などの一価の残基であることが好ましい。ただし、かかる場合において、R5及びR6が同時に水素である場合を除く。また、ポリマーの性能および生産性の観点から、上記アルキル基のより好ましい炭素数は1以上3以下であり、前記アリール基のより好ましい炭素数は6〜8であり、前記一価の残基の中でもより好ましくは水素である。なお、上記(a)及び(b)における繰り返し単位数については、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量分布により様々であるため、特に制限されることはない。
【0018】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の単独重合体としては、以下に制限されないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル及びポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。上記の中でも、原料入手の容易性や加工性の観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
【0019】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の共重合体としては、以下に制限されないが、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、及び2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。上記の中でも、原料入手の容易性と加工性の観点から、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、物性改良の観点から、2,6−ジメチルフェノール70質量%以上90質量%以下と2,3,6−トリメチルフェノール10質量%以上30質量%以下とから得られる共重合体がより好ましい。
【0020】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、一種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)は、本実施形態の所望の効果を逸脱しない限度で、他の種々のフェニレンエーテル単位を部分構造として含んでいてもよい。かかるフェニレンエーテル単位としては、以下に制限されないが、例えば、特開平01−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位が挙げられる。
【0021】
また、本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合していてもよい。さらに、ポリフェニレンエーテルの一部又は全部を、アシル官能基とカルボン酸、酸無水物、酸アミド、イミド、アミン、オルトエステル、ヒドロキシ及びカルボン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種以上とを含む官能化剤と反応(変性)させることにより官能化ポリフェニレンエーテル樹脂としてもよい。
【0022】
本実施形態において、原料としてのポリフェニレンエーテル樹脂が本来物性として有する還元粘度は、0.25dl/g以上0.37dl/g以下(クロロホルム溶媒、30℃、0.5g/dlで測定)の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.27dl/g以上0.36dl/g以下であり、さらに好ましくは0.28dl/g以上0.35dl/g以下の範囲内である。所望の樹脂組成物を得るべく溶融混練すると、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は原料の分子量と比較して増大する傾向にあり、それに伴って還元粘度も増加する傾向にある。溶融混練の条件にもよるが、後述する条件で製造する場合、原料のポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度を0.25dl/g以上0.37dl/g以下にすることは、樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテルの還元粘度を0.33dl/g以上0.46dl/g以下にし易い傾向があるため好ましい。なお、上記還元粘度の具体的な測定については、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物から溶剤分離して得られたポリフェニレンエーテル樹脂をクロロホルム溶媒に溶解して0.5g/dlの溶液を作成し、ウベローデ型粘度計を用いて温度30℃の条件下で行うことができる。
【0023】
本実施形態において、原料としてのポリフェニレンエーテル樹脂の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、好ましくは2.0以上5.5以下であり、より好ましくは2.5以上4.5以下であり、さらにより好ましくは3.0以上4.5以下である。当該Mw/Mn値は、樹脂組成物の成形加工性を向上させる観点から、2.0以上が好ましく、樹脂組成物の機械物性の観点から5.5以下が好ましい。なお、上記重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算分子量として得られる。
【0024】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の含有量は、ポリスチレン樹脂(B)、AS樹脂(C)成分との合計量100質量%中において、50質量%以上99質量%以下の範囲内である。好ましくは60質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは65質量%以上80質量%以下の範囲内である。本実施形態においては、ポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、十分な耐熱性付与の観点から、50質量%以上が好ましく、十分な成形流動性保持の観点から、95質量%以下が好ましい。一方で、(A)成分の含有量が50質量%に満たない場合、十分な耐熱性が付与されない。
【0025】
((B)成分)
本実施形態において、ポリスチレン樹脂(B)は、スチレン系化合物を、ゴム質重合体存在下又は非存在下に重合して得られる重合体である。上記スチレン系化合物とは、一般式(c)で表される化合物を意味する。
【0026】
【化2】
(式中、Rは水素、低級アルキル又はハロゲンを示し、Zはビニル、水素、ハロゲン及び低級アルキルよりなる群から選択され、pは0〜5の整数である。)
【0027】
上記スチレン系化合物の具体例としては、特に制限されないが、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。本実施形態において、好適なポリスチレン樹脂としては、ポリフェニレンエーテルとの混和性の観点から、ポリスチレンと、ゴム質重合体成分で強化されたハイイインパクトポリスチレンとを挙げることができる。ハイインパクトポリスチレンとしては、熱安定性の観点から、特にゴム質重合体成分が部分水添された部分水添ハイインパクトポリスチレンが好ましい。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物には、ポリスチレン樹脂(B)が、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)、AS樹脂(C)成分との合計量100質量%に対して、0質量%以上49質量%以下を含む。このように、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、(B)成分は任意成分ということができる。すなわち、(B)成分の添加がなくとも他の必須成分により、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は所望の効果を発揮できるものである。ただし、本実施形態においては、成形加工性の観点から、ポリスチレン樹脂(B)を配合する(0質量%超の(B)成分を含有する)ことが好ましく、十分な耐熱性保持の観点から、49質量%以下の配合が好ましい。同様の観点から、好ましくは5質量%以上45質量%以下の範囲内であり、より好ましくは8質量%以上35質量%以下の範囲内である。
【0029】
((C)成分)
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、成形流動性を十分に改良させる観点から、AN含有量16質量%以上45質量%以下のAS樹脂(C)を、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)、ポリスチレン樹脂(B)成分との合計量100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下の範囲で配合する。好ましくは2質量%以上13質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上12質量%以下の範囲内である。本実施形態におけるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の成形流動性を改善する観点から、1質量%以上の配合が好ましく、成形体の層状剥離防止や機械物性低下防止の観点から、15質量%以下の配合が好ましい。なお、本実施形態におけるAS樹脂(C)のAN含有量は、16質量%以上45質量%以下の範囲から選ばれる。好ましくは18質量%以上40質量%以下の範囲であり、より好ましくは20質量%以上35質量%以下の範囲である。AS樹脂(C)のAN含有量は、樹脂組成物の成形流動性改良の観点から16質量%以上であり、熱安定性の観点から45質量%以下である。一方、(C)成分の含有量が1質量%に満たない場合、成形流動性が損なわれる。また、(C)成分の含有量が15質量%を超える場合、成形体の層状剥離や機械物性低下といった不都合が生ずる。さらに、AS樹脂のAN含有量が16質量%に満たない場合、成形流動性を損ねることとなる。また、AS樹脂のAN含有量が45質量%を超える場合、熱安定性を損ねることとなる。
【0030】
AS樹脂(C)は、220℃、10kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1g/10分以上50g/10分以下の範囲内であることが好ましく、より好ましい範囲は4g/10分以上40g/10分以下であり、さらにより好ましい範囲は8g/10分以上30g/10分以下である。成形流動性の観点から、1g/10分以上が好ましく、樹脂組成物中における適度な混和性を確保する観点から50g/10分以下であることが好ましいといえる。
【0031】
なお、本実施形態におけるAS樹脂(C)は、ポリフェニレンエーテル(A)と非相溶であり、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物中において、分散相を形成することに寄与する。
【0032】
AS樹脂(C)の、成形体コア層部における分散粒子の平均粒子径は、0.05μm以上1.8μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.1μm以上1.5μm以下の範囲内であり、さらにより好ましくは0.2μm以上1.0μm以下の範囲内である。十分な成形流動性を確保する観点から、0.05μm以上が好ましく、成形体の剥離防止や樹脂組成物の生産性向上の観点から、1.8μm以下が好ましいといえる。なお、上記「コア層」とは、本実施形態の樹脂組成物から得られる成形体の比較的中心部に近い内部の部分に位置するものであり、上記(C)成分の分散相を含む樹脂組成物から形成される層である。また、上記分散粒子の平均粒子径は、上記コア(成形体内部)層の電子顕微鏡写真の画像解析により測定することができる。
【0033】
((D)成分)
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を、(A)、(B)、(C)成分の合計量100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下の割合でさらに含有することが好ましい。より好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上15質量部以下の範囲内である。本実施形態においては、より優れた耐衝撃性付与の観点から、1質量部以上の配合が好ましく、十分な耐熱性、剛性を確保する観点から、25質量部以下の配合が好ましいといえる。
【0034】
スチレン系熱可塑性エラストマー(D)とは、スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを有するブロック共重合体(以下、「スチレンブロック−共役ジエン化合物ブロック共重合体」とも記す。)の水素添加物である。上記共役ジエン化合物ブロックは、熱安定性の観点から、少なくとも水素添加率50%以上で水素添加されたものが好ましい。より好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上である。上記スチレン系熱可塑性エラストマー(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0035】
上記共役ジエン化合物ブロックとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン−ブチレン)、ポリ(エチレン−プロピレン)、ビニル−ポリイソプレンが挙げられる。上記共役ジエン化合物ブロックは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ブロック共重合体を構成する繰り返し単位の配列の様式は、リニアタイプでもラジアルタイプでもよい。また、ポリスチレンブロック及びゴム中間ブロックにより構成されるブロック構造は二型、三型及び四型のいずれであってもよい。中でも、本実施形態に所望の効果を十分に発揮し得る観点から、好ましくは、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体である。なお、共役ジエン化合物ブロック中に30質量%を超えない範囲で水素添加されていないブタジエン単位が含まれてもよい。
【0037】
スチレン系熱可塑性エラストマーに、カルボニル基やアミノ基などの官能基を導入してなる、官能化されたスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
【0038】
上記カルボニル基については、不飽和カルボン酸又はその官能的誘導体で変性することにより導入することができる。不飽和カルボン酸又はその官能的誘導体の例としては、以下に制限されないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、及びエンド−シス−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、並びにこれらジカルボン酸の無水物、エステル化合物、アミド化合物及びイミド化合物が挙げられる。さらには、アクリル酸及びメタクリル酸、並びにこれらモノカルボン酸類のエステル化合物及びアミド化合物が挙げられる。中でも、成形体の表面外観を保持すると共に耐衝撃性を付与する観点から、好ましくは無水マレイン酸である。
【0039】
上記アミノ基については、イミダゾリジノン化合物やピロリドン化合物などをスチレン系熱可塑性エラストマーと反応させることにより導入することができる。
【0040】
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、成形体の外観保持、より優れた耐衝撃性付与及び成形体の層剥離防止の観点から、結合スチレン量が45質量%以上80質量%以下のスチレン−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物を含有することが好ましい。
【0041】
(ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に含まれうる他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の熱安定性を向上させる観点から、さらに熱安定剤を、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下の割合で含有することが好ましい。より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下であり、さらに好ましくは0.2質量部以上0.5質量部以下の範囲内である。本実施形態においては、十分な成形品外観を確保する観点から、0.01質量部以上の配合が好ましく、上記同様の観点から1質量部以下の配合が好ましいといえる。
【0042】
十分な熱安定性の観点から、本実施形態における上記熱安定剤の融点は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上310℃以下であることがより好ましく、220℃以上270℃以下であることがさらに好ましい。
【0043】
上記熱安定剤としては、効果の観点から、ヒンダードフェノール系、リン系の熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、具体的には、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。リン系熱安定剤としては、具体的には、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0044】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物により優れた難燃性を付与する観点から、上記リン系難燃剤を、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、2質量部以上25質量部以下の割合で含有することができる。好ましくは3質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上15質量部以下の範囲内である。十分な難燃性付与の観点から、2質量部以上の配合が好ましく、耐熱性保持の観点から、25質量部以下の配合が好ましいといえる。リン系難燃剤の具体例としては、以下に制限されないが、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスフィン酸塩、ホスファゼン、有機リン酸エステル、有機亜リン酸エステル等を挙げることができる。中でも、本実施形態においては、十分な難燃性付与の観点から、芳香族リン酸エステル系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、ホスフィン酸塩類が好適に用いられる。
【0045】
芳香族リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、以下に制限されないが、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフェートとビスフェノールAビスホスフェートが十分な難燃性付与の観点から好適に用いられる。
【0046】
ホスファゼン系難燃剤の具体例としては、以下に制限されないが、プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、アミノホスファゼン、フルオロアルキルホスファゼン等が挙げられる。中でも、十分な難燃性付与の観点から環状フェノキシホスファゼン化合物がより好適に用いられる。
【0047】
ホスフィン酸塩類の具体例としては、以下に制限されないが、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。中でも、入手の容易性及び十分な難燃性付与の観点からジエチルホスフィン酸アルミニウムがより好適に用いられる。
【0048】
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、さらなる機械物性強化の観点から、強化剤としての無機フィラーを、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、5質量部以上45質量部以下の割合で配合してもよい。好ましくは7質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上30質量部以下の範囲内である。十分な剛性等の機械物性付与の観点から、5質量部以上の配合が好ましく、成形加工性保持の観点から、45質量部以下の配合が好ましい。強化剤としての無機フィラーとしては、一般的に、熱可塑性樹脂の補強に用いられるものを使用することができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、マイカ等が挙げられる。しかしながら、これらに制限されるものではない。
【0049】
(各成分の定性・定量)
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、その他含有成分の定性及び定量は、溶剤を利用した分離抽出操作や、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた解析により可能である。
【0050】
具体的には、例えば、以下の方法により各成分の定性及び定量を行なうことができる。まず、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を常温から50℃でクロロホルムに溶解させて1〜5質量%溶液にした後、無機物等の不溶分を濾過や遠心分離機により分離させる。次に、クロロホルム溶液にメタノールを3倍量程度添加してポリマー成分を再沈させて、(A)成分、(C)成分、及び任意の(B)成分、(D)成分を含むポリマー成分を添加剤等の可溶成分と分離する。ポリマー成分を乾燥させた後、これを50℃に加熱したジクロロメタンに溶解させて1〜5質量%溶液を得る。その後、当該溶液を24時間、−30℃の冷凍庫内に放置して(A)成分を析出分離させて、乾燥後これを定量する。還元粘度の測定は、この操作により得られた(A)成分を試料として行う。次に、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含むジクロロメタン溶液に、メタノールを3倍量程度添加して(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含むポリマー成分を析出させる。析出したポリマー成分から(D)成分を除いたものを乾燥後、アセトンに(B)及び(C)成分を含むアセトン溶液を乾燥させてアセトンを揮発させ、乾燥した(B)及び(C)成分を含むポリマー成分を定量する。
【0051】
乾燥した(B)及び(C)成分を含むポリマー成分を、テトラヒドロフランに溶解し、高速液相クロマトグラフィー(例えば、島津製作所製HPLC、カラム:シリカ系シアノプロピル処理品、展開溶媒:テトラヒドロフラン/n−ヘプタン)によって、(B)成分と(C)成分との組成比を求めて、(B)成分と(C)成分の定量をそれぞれ行なう。なお、予め窒素分析によりAN含有量(質量%)が既知の標準試料を用いて、AN含有量とリテンションタイムとの関係の検量線を作成しておく。測定試料をHPLC(検出器:254nm紫外線)により分離して、ピークのリテンションタイムとピークの面積比とから、組成比を求めることができる。
【0052】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、例えば、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分等の原材料を溶融混練することにより製造することができる。当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を製造するための、上記(A)成分と(B)成分と(C)成分との溶融混練においては、樹脂組成物を大量かつ安定的に得るという観点から、二軸押出機を用いることが好適である。二軸押出機のシリンダー設定温度は260℃以上340℃以下の範囲から選ばれる。好ましくは270℃以上330℃以下であり、より好ましくは270℃以上320℃以下である。十分な溶融混練の観点から260℃以上が好ましく、樹脂の熱劣化抑制の観点から340℃以下が好ましい。二軸押出機のスクリュー回転数は150rpm以上600rpm以下の範囲から選ばれる。好ましくは200rpm以上500rpm以下であり、より好ましくは250rpm以上400rpm以下である。十分な溶融混練の観点から150rpm以上が好ましく、樹脂の熱劣化抑制の観点から600rpm以下が好ましい。押出樹脂温度は300℃以上360℃以下の範囲から選ばれる。好ましくは320℃以上350℃以下であり、より好ましくは320℃以上340℃以下である。十分な溶融混練の観点から300℃以上が望ましく、樹脂の熱劣化抑制の観点から360℃以下が望ましい。また、押出時、真空ベントラインによる脱気を行なうことが、成形体外観(シルバー発生抑制)の観点から好ましい。
【0053】
一例として、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、スクリュー長さL(mm)/スクリュー直径D(mm)=53、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いた場合に、シリンダー温度270℃以上330℃以下、スクリュー回転数250rpm以上500rpm以下、ベント真空度11.0kPa以上1.0kPa以下の条件で溶融混練する方法が挙げられる。
【0054】
なお、上記の製造方法において、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物中におけるポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(ポリフェニレンエーテル樹脂組成物から溶剤分離して得られたポリフェニレンエーテル樹脂をクロロホルム溶媒に溶解して0.5g/dlの溶液を作成し、ウベローデ型粘度計を用いて温度30℃で測定)が0.33dl/g以上0.46dl/g以下の範囲内となるように調整するものとする。
【0055】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、溶融混練時に還元粘度が増大するため、原料であるポリフェニレンエーテル樹脂(粉体)は、本実施形態所望の還元粘度よりも低い還元粘度のものを使用することが好ましい。
【0056】
上記溶融混練時におけるポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度の上昇は、樹脂組成物の組成や、溶融混練条件等によって影響を受けるが、上述の好ましい押出条件を採用すると、およそ0.02〜0.09の範囲内で上昇が見られる。その後の成形等の加工による樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度の上昇は殆ど見られない。そのため、原料として使用するポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度はおよそ0.25dl/g以上0.37dl/g以下の範囲内であることが、溶融混練後の樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度調整の観点から好ましい。
【0057】
本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を、大型(スクリュー径40〜90mm)の二軸押出機を用いて製造する際には、押出樹脂ペレット中に押出時に生じた(A)成分から生じるゲルや炭化物が混入することで、成形体の表面外観や輝度感を低下させる原因となる場合もある。そこで、上記のような(A)成分由来のゲルないし炭化物の混入を防止する観点から、(A)成分を最上流(トップフィード)の原料投入口から投入して、最上流投入口におけるシューター内部の酸素濃度を15容量%以下に設定しておくことが好ましい。同様の観点から、より好ましくは8容量%以下であり、さらに好ましくは1容量%以下である。
【0058】
上記酸素濃度の調節は、原料貯蔵ホッパー内を十分に窒素置換して、原料貯蔵ホッパーから押出機原料投入口までのフィードライン中で空気の出入りがないように密閉した上で、窒素フィード量の調節、ガス抜き口の開度の調節等を行うことで可能である。
【実施例】
【0059】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。実施例及び比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
【0060】
[物性の測定方法]
1.荷重たわみ温度(DTUL)
後に詳述する要領で得られた樹脂組成物のペレットを、120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物を、ISO物性試験片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度120℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、射出時間/冷却時間=20sec/20secの条件下で、ISO3167に準拠した多目的試験片A型のダンベル成形片を成形した。次いで、得られた成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの試験片とした。この試験片を用いて、ISO75に準拠し、フラットワイズ法により、1.82MPaで荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。DTULの測定装置としては、全自動ヒートデストーションテスター(株式会社 東洋精機製作所製)を使用した。なお、評価基準としては、DTULが高い値であるほど、本実施形態所望の用途の材料設計面で有利であると判定した。
【0061】
2.成形流動性(SSP)
得られた樹脂組成物のペレットを、120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物を、UL1.6mm厚タンザク試験片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度120℃、射出速度(パネル設定値)32%、スクリュー回転数(パネル設定値)38%、計量24mm、射出/冷却時間=20/20secの条件下で、1.6mmタンザク成形片のSSP(ショート・ショット・プレッシャー)、すなわち、成形(全充填)可能となる射出圧力の最小値を求めた。なお、SSPの値として、射出成形機の成形時の射出圧力を示す圧力計のゲージ圧の値を採用した。評価基準としては、SSPの数値が小さいほど、成形流動性が良好であると判定した。
【0062】
3.引張強度、引張伸度
上記で得られた、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を用いて、オートグラフ(AG−5000、島津製作所(株)製)を使用して、チャック間115mm、試験速度50mm/minの条件で引張試験を行い、引張強度と引張伸度を求めた。なお、上記引張試験は、ISO 527に準拠することとし、引張伸度は50mm標線間における試験片の伸びた割合から求めた。引張強度、引張伸度の値が共に大きい程、機械物性が良好であると判定した。
【0063】
4.成形片ゲート部の剥離(目視)
上記で得られた、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を用いて、ニッパーを使用した成形片ゲート側掴み部の折り曲げ(引き剥がし)による剥離試験を行い、破断面の層状剥離の有無(○、×)を目視で判定した。○(層状剥離の無いもの)が、本実施形態所望の用途において好適に使用可能であると判定した。
【0064】
5.還元粘度
上述の段落[0053]に記載された方法に基づき、各サンプルにおいて溶剤分離したポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度を求めた。なお、原料としてのポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度も、上記と同様にして求めることとした。
【0065】
[原材料]
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(PPE1)
還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.28dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた(以下の説明ないし表中において、単に「PPE1」とも表記する)。
【0066】
(PPE2)
還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.34dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた(以下の説明ないし表中において、単に「PPE2」とも表記する)。
【0067】
(PPE3)
還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.42dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた(以下の説明ないし表中において、単に「PPE3」とも表記する)。
【0068】
(PPE4)
還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.51dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた(以下の説明ないし表中において、単に「PPE4」とも表記する)。
【0069】
<ポリスチレン樹脂(B)>
GPPS(ゼネラルパーパスポリスチレン、商品名:ポリスチレン 680(登録商標)、旭化成ケミカルズ社製)を用いた(以下の説明ないし表中において、単に「GPPS」と表記する)。
【0070】
<AS樹脂(C)>
(AS1)
AN含量29質量%のAS樹脂、商品名:スタイラックAS 783(登録商標)、旭化成ケミカルズ社製(MFR:9)を用いた(本実施例中ないし表中において、単に「AS1」と表記する)。
【0071】
(AS2)
AN含量20質量%のAS樹脂、商品名:スタイラックAS T8707(登録商標)、旭化成ケミカルズ社製(MFR:30)を用いた(本実施例中ないし表中において、単に「AS2」と表記する)。
【0072】
AS3(AN含量40質量%のAS樹脂、商品名:スタイラックAS 727(登録商標)、旭化成ケミカルズ社製(MFR:12)を用いた(本実施例中ないし表中において、単に「AS3」と表記する)。
【0073】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(D)>
エラストマー(商品名:タフテックH1272(登録商標)、旭化成ケミカルズ社製。スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物。結合スチレン量35質量%、水素添加率95%以上)を用いた(以下の説明ないし表中において、単に「エラストマー」と表記する)。
【0074】
[比較例1]
PPE1を70質量%と、GPPS10質量%と、AS1を12質量%と、エラストマー8質量%とを一括ブレンドした後、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数300rpm、押出レート15kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。なお、上記各成分を押出機中で溶融混練した後、押出機出口(ダイスヘッド)から押し出された樹脂ストランドをペレタイザーで裁断し、樹脂組成物のペレットを得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.31dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0075】
[実施例1]
PPE1を、PPE2に置き換えた以外は、比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.38dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0076】
[比較例2]
PPE1を、PPE3に置き換えた以外は比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.48dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0077】
[比較例3]
PPE1を、PPE4に置き換えた以外は、比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.63dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0078】
[比較例4]
PPE2を74質量%と、GPPS18質量%と、エラストマー8質量%とを一括ブレンドした後、比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.38dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0079】
[比較例5]
PPE2を、PPE3に置き換えた以外は、比較例4の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.48dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0080】
[比較例6]
PPE2を、PPE4に置き換えた以外は、比較例4の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.63dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0081】
[比較例7]
PPE2を70質量%と、GPPS4質量%と、AS1を18質量%と、エラストマー8質量%とを一括ブレンドした後、比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.38dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0082】
[実施例2]
PPE1を52.5質量%と、PPE4を17.5質量%と、GPPS10質量%と、AS1を12質量%と、エラストマー8質量%とを一括ブレンドした後、比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.38dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[
参考例3]
PPE2を80質量%と、AS1を14質量%と、エラストマー6質量%とを一括ブレンドした後、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給して、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数300rpm、押出レート10kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.43dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0083】
[
参考例4]
PPE2を80質量%と、GPPS5質量%と、AS1を7質量%と、エラストマー8質量%とを一括ブレンドした後、
参考例3の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.43dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0084】
[実施例5]
PPE1を80質量%と、GPPS5質量%と、AS1を7質量%と、エラストマー8質量%とを一括ブレンドした後、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給して、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数450rpm、押出レート10kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.34dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0085】
[
参考例6]
PPE1を62.5質量%と、PPE3を27.5質量%と、AS1を5質量%と、エラストマー5質量%とを一括ブレンドした後、比較例1の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.45dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0086】
[実施例7]
AS1を12質量%のAS2に置き換えた以外は、
参考例6の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.38dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0087】
[実施例8]
AS2をAS3に置き換えた以外は、実施例7の場合と同様に押出機で溶融混練してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物からポリフェニレンエーテル樹脂を溶剤分離して還元粘度を測定したところ、0.38dl/gであった。その他、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示すように、実施例1
,2,5,7,8
及び参考例3,4,6のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、(A)成分と(C)成分とが所望の範囲内で含有するため、成形片に層状剥離や機械物性の低下が見られず、良好な成形流動性と耐熱性とを有しており、諸物性のバランスに優れるものと評価される。一方、比較例1は組成物中のポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度が本願の規定する範囲を下回っているため、成形片は脆く、DTULや引張強度、引張伸度の低下が見られる。比較例2,3は、ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度が本願の規定する範囲を上回るものを使用しているため成形流動性が十分ではなく、また、いずれも成形片に層状剥離の傾向が見られる。比較例4〜6は、(C)成分を含まないため、いずれも成形流動性が十分ではない。また、比較例5,6は、組成物中のポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度が本実施形態所望の範囲を上回っている。比較例7は、(C)成分の含有量が、所望の範囲を超えるため、成形片に層状剥離が生じ、機械物性(引張強度)低下が見られる。
【0090】
また、PPE(ポリフェニレンエーテル樹脂)還元粘度(ηsp/c)と成形流動性(SSP)との関係を、実施例1及び比較例2〜6のデータからまとめた
図1のグラフについて説明する。すなわち、上記グラフはAS配合の有無がポリフェニレンエーテル樹脂組成物に及ぼす影響に関するものである。ASを配合しない場合に対応する比較例4〜6のプロット(
図1中のAS無)から、本実施形態所望のPPE還元粘度の範囲内においては、PPE還元粘度が低下するにつれて、SSPの値に示される成形流動性が改善されていく傾向にあることがわかる。これに対して、ASを配合する場合に対応する実施例1及び比較例2〜3のプロットから、本実施形態所望のPPE還元粘度の範囲内において、PPE還元粘度が低下するにつれて、SSPの値がASを配合しない場合よりも大きく減少していく傾向にあることがわかる。すなわち、ASを配合する場合は、ASを配合しない場合と比べて、本実施形態所望のPPE還元粘度の範囲内において、PPE還元粘度が低下すると、成形流動性が著しく改善されていく傾向にあることがわかる。