特許第6502011号(P6502011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502011
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】グルタチオン産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20190408BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61K31/351
   A61P1/16
   A61P3/02
   A61P17/16
   A61P17/18
   A61P39/02
   A61P43/00 107
   A61Q19/00
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-210348(P2013-210348)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-74615(P2015-74615A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月26日
【審判番号】不服2017-18339(P2017-18339/J1)
【審判請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176110
【氏名又は名称】三省製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】横田 紗綾
【合議体】
【審判長】 阪野 誠司
【審判官】 冨永 みどり
【審判官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−322932(JP,A)
【文献】 特開2006−111545(JP,A)
【文献】 特開2009−067747(JP,A)
【文献】 特表2002−528480(JP,A)
【文献】 JOURNAL OF APPLIED TOXICOLOGY,2001年,Vol.21,p.435−440
【文献】 International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,米国,Personal Care Products Council,2012年,Fourteenth Edition, Volume 2,pp.1644−1645
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
JST7580/JMEDPlus/JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コウジ酸を含有することを特徴とするグルタチオン産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コウジ酸および/またはその誘導体を有効成分とすることを特徴とするグルタチオン産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンは、システインのアミノ基とグルタミン酸のカルボキシル基間のペプチド結合を有するトリペプチドであり、抗酸化物質の一つとして、フリーラジカルや過酸化物といった活性酸素種から細胞を保護する補助的役割を有する物質である。このグルタチオン自体が、日本薬局方に収載された医薬品であり、健康や美容の維持に有用なサプリメントとして販売されている。このグルタチオンの工業的な製法としては、グリシンやL−システインを原料として合成させる方法や、γ−グルタミルシステイン合成酵素やグルタチオン合成酵素を利用して酵素により合成する方法、酵母等から抽出する方法等が知られている(非特許文献1)。
【0003】
このグルタチオンは、生体内に広く分布しており、細胞内に一定濃度で存在し、種々の細胞、生体保護機能を果たしているため、単に、グルタチオンを外部から添加するのみならず、細胞内でのグルタチオン産生促進を行う製剤が求められている。
【0004】
一方、コウジ酸およびその誘導体は、出願人等によってそのメラニン合成抑制作用等を見出すことで皮膚外用剤等として使用されている物質である(特許文献1〜4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−1044号公報
【特許文献2】特公昭62−59084号公報
【特許文献3】特許第2911204号公報
【特許文献4】特許第2911208号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】BIO INDUSTRY Vol.27 No.8 2010, 73-75頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
皮膚外用等の目的でグルタチオンそのものを使用することは、生理活性について不明な点が多く、グルタチオン自体が不安定な物質であるなどの理由から、汎用するには問題が生じることがあり、生体におけるグルタチオン産生促進機能を有する物質が広く求められている。また、安全な条件のもと使用されるグルタチオンの工業的生産において、特に抽出法のような微生物等細胞増殖を利用した製造方法による場合、微生物のグルタチオン産生を促進することで、より高濃度でグルタチオンを含有させ収率を上げることができる。かかる現状に鑑み、本発明は、グルタチオンの産生促進剤およびグルタチオン産生促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1>コウジ酸を含有することを特徴とするグルタチオン産生促進剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグルタチオン産生促進剤によれば、細胞内でのグルタチオン産生を促進することができる。この細胞として、例えば皮膚細胞内でのグルタチオン産生促進することで、グルタチオンが寄与する生体保護機能を効率よく達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0012】
本発明は、コウジ酸および/またはその誘導体を含有することを特徴とするグルタチオン産生促進剤である。
【0013】
[コウジ酸]
本発明は、コウジ酸および/またはその誘導体を用いる。このコウジ酸は、以下の式(1)で表される化合物であり、C664の化学式であらわされ、5−hydroxy−2−hydroxymethyl−4−pyrone(5−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−ピロン)または、5−Hydroxy−2−(hydroxymethyl)−4H−pyran−4−one(5−ヒドロキシ2−(ヒドロキシメチル)−4H−ピラン−4−オン)、5−オキシ−2−オキシメチル−γ−ピロンとも呼ばれる。本発明においては、このコウジ酸の誘導体も用いることができ、例えば、コウジ酸のエステル化物、エーテル誘導体化物、2位のヒドロキシメチル基に糖類を結合させた配糖体類等があげられる。具体的な化合物名としては、コウジ酸グルコシド、コウジ酸マンノシド、コウジ酸グルコサミド、エチル化コウジ酸、コウジ酸フラクトシドなどが挙げられる。
【0014】
【化1】
【0015】
コウジ酸および/またはその誘導体は、麹菌から発見されたものであり、コウジ酸生産能を有する公知の菌株を培養して得られるコウジ酸を主成分とする発酵液、該発酵液の濃縮液、および該発酵液からコウジ酸を抽出して結晶化したものなどが使用されるほか、味噌や酒粕等の食品素材やこれらの応用素材、抽出物等の利用においてコウジ酸を含有するものを包含する概念である。
【0016】
本発明は、グルタチオンの産生を促進することを特徴とする。グルタチオンは、前述のように生体内に広く分布するトリペプチドであり、健康や美容の目的で使用されている物質である。別名は、γ−L−グルタミル−L−システイニル−グリシンである。このグルタチオンは、動植物、微生物に存在し、細胞内に一定濃度で存在することが知られている。本発明のグルタチオン産生促進剤を用いることで、細胞内でのグルタチオン産生を促進することができる。
【0017】
グルタチオンは、細胞内で細胞内チオール環境の維持や細胞の解毒など、様々な生理作用を通してフリーラジカルや過酸化物といった活性酸素種から細胞を保護する補助的役割を有し、生体の様々な機能を維持するために重要な役割を果たしていると注目されている物質である。
【0018】
本発明はコウジ酸および/またはその誘導体が優れたグルタチオン産生促進作用を有していることを見出したことに基づいており、例えばこれを皮膚外用剤へ配合することで、皮膚の抗酸化機能を強化し、酸化ストレスに関連する加齢による細胞の老化を遅らせることが期待できる。さらには、グルタチオン産生促進により、適宜その使用形態を調整することでヒトにおいて、美白効果、美肌効果、疲労回復、解毒作用、二日酔い改善、肝機能改善といった機能も発揮する。
【0019】
本発明のグルタチオン産生促進剤は、前述のように皮膚外用剤の態様で提供されることができる。本発明を皮膚外用剤とする場合は、本発明の有効成分である前記式(1)で表される化合物および/またはその誘導体を含有する製剤の形態で提供することができる。ここで、製剤の形態は外用として提供し得るものであり、皮膚外用剤一般に許容し得る基剤を選択し患部に直接塗布して使用される。この場合には、ローションやエッセンス等に代表される均一系製剤のほか、クリームや乳液に代表されるO/W、W/O型などの一般乳化系、W/O/W、O/W/O型の特殊な多層エマルジョン、その他にもペースト剤、軟膏及びチンキ剤等の塗布剤型、エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤型、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤型など公知の形態の基礎基剤としても他の成分と組合せて幅広く使用に供されるものであり特段の制約はない。
【0020】
外用の場合においてコウジ酸および/またはその誘導体の配合量は、製剤設計の形態によって変わるが、概ね製剤全体に対して、0.001乃至20重量%、好ましくは0.01乃至10重量%、さらに好ましくは0.1乃至5重量%の範囲で配合すれば十分な効果が発揮できる。また、本発明の製剤設計の際には、他の機能性素材と組み合わせて使用することができる。
【0021】
外用での適用の場合、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、美白剤として公知のアスコルビン酸、ハイドロキノン及びこれの誘導体、レゾルシン類、縮合型タンニン類、カフェー酸、イソコウジ酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、消炎剤としては副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の各種化合物、その他にも胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の効果を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
【0022】
さらに、本発明の外用剤にはこれら公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分のほか、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0023】
本発明は、コウジ酸および/またはその誘導体を混合することによるグルタチオン産生促進方法としても達成することができる。例えば、前述のようにグルタチオンは、細胞からの抽出法によっても製造されているため、本発明のグルタチオン産生促進剤によってグルタチオンの産生を促進することで、細胞内、またタンパク質あたりのグルタチオン濃度を向上させることができる。これによって、細胞から抽出する方法によるグルタチオンの抽出効率を向上させることができる。よって、グルタチオンの製造方法において、その細胞培養工程における、細胞内のグルタチオン濃度を向上させる本発明のグルタチオン産生促進方法は最終的なグルタチオンの収率向上等に効果を発揮する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
[細胞培養によるグルタチオン濃度の変化]
以下の細胞培養用の培地を用いて、各試料を添加し、所定時間培養した後のグルタチオン濃度の変化を評価した。
【0026】
[細胞培養用の培地調整]
ヒト正常皮膚線維芽細胞Cell System−Fb Cells(DSファーマバイオメディカル製)を10%FBS(ウシ胎児血清)および1%NEAA(非必須アミノ酸)含有のMEM(Eagle‘s Minimum Essential Medium)にて培養した。
【0027】
[実施例、比較例および参考例における試料の添加]
「実施例1、2」
24ウェルプレートに0.8×105cells/wellの細胞を播種し、一晩培養後、1%FBSおよび1%NEAA含有のMEMにて培地交換すると同時にコウジ酸(三省製薬社内製)の水溶液を添加した。培地中のコウジ酸濃度が2.5mMとなるように添加したものを実施例1とし、コウジ酸濃度が5.0mMとなるように添加したものを実施例2とした。
【0028】
「参考例1」
コントロールとして、コウジ酸の添加に代え試料無添加のものを参考例1として後述の培養後のグルタチオンの定量をおこなった。
【0029】
「比較例1」
比較対照として、グルタチオンの構成アミノ酸、システインの誘導体であるN−アセチル−L−システイン(NAC、ナカライテスク製)を添加したものを比較例1とした。NACの添加量は、培地中のNAC濃度が10mMとなるように添加した。
【0030】
[グルタチオンの定量]
前述の各試料添加48時間後、M−PER(Thermo)にて細胞のタンパク質を抽出し、これを測定試料としてBCA法によるタンパク質定量、およびTotal Glutathione Quantification Kit(DOJINDO製)を用いたグルタチオン定量を行った。
【0031】
「試験結果」
細胞タンパク質量あたりのグルタチオン濃度を表1に示す。実施例1、2に示すコウジ酸には濃度依存的なグルタチオン産生促進作用が認められ、その作用は2.5mMを添加した実施例1で、N−アセチル−L−システイン(NAC)10mM(比較例1)と同等であり、NACよりも低濃度で優れたグルタチオン産生促進作用を示すことを確認することができた。
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、コウジ酸および/またはその誘導体を用いたグルタチオン産生促進剤に関するものであり、これによって、皮膚外用剤等のヒト細胞におけるグルタチオン産生を促進することで美白や老化防止等の機能を発揮させたり、抽出法等によりグルタチオンを製造するときに酵母等の微生物の細胞内でのグルタチオン濃度を向上させることができ有用である。