(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のランキンサイクル装置では、上述のように、膨張機に流入する冷媒の圧力および温度を測定して冷媒の過熱度を求め、当該過熱度に基づいて熱交換器を通過する冷媒の流量を制御している。当該装置では、膨張機に流入する冷媒が湿り蒸気状態である場合、当該冷媒の圧力および温度は一定となるため、冷媒の過熱度を求めることはできない。したがって、熱交換器を通過する冷媒の流量を適切に制御することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、膨張機に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて熱交換器を通過させることにより、廃熱の回収効率を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、廃熱回収装置であって、装置からの廃熱を熱源として作動流体を加熱する熱交換器と、前記熱交換器にて加熱された作動流体を膨張させて機械的エネルギーを回収する
回転式の膨張機であるタービンと、前記
タービンにて膨張させた作動流体を凝縮して液化する凝縮器と、前記凝縮器にて液化された作動流体を前記熱交換器へと送出するポンプと、前記
タービンへと流入する作動流体の乾き度を取得する乾き度取得部と、前記乾き度取得部からの出力に基づいて前記乾き度が1以下の範囲において前記熱交換器を通過する作動流体の流量を制御する流量制御部とを備え、前記作動流体が有機媒体であり、前記作動流体のT−S線図における乾き飽和蒸気線は、比エントロピーの増加に従って高温側へと向かう。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃熱回収装置であって、前記乾き度取得部が、前記熱交換器と前記
タービンとの間における作動流体の圧力である上流圧力を測定する第1測定部と、前記
タービンと前記凝縮器との間における作動流体の圧力および温度を測定する第2測定部と、前記
タービンの性能特性を示す特性データを記憶する記憶部と、前記第1測定部および前記第2測定部からの出力と前記特性データとに基づいて前記乾き度を求める乾き度演算部とを備える。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の廃熱回収装置であって、前記熱交換器と前記
タービンとの間に配置され、前記上流圧力を所定の圧力に維持する圧力制御部をさらに備える。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の廃熱回収装置であって、前記ポンプ、前記熱交換器、前記
タービンおよび前記凝縮器を順に接続するとともに作動流体が流れる主配管と、前記熱交換器と前記
タービンとの間の分岐部にて前記主配管から分岐し、前記
タービンと前記凝縮器との間の合流部にて前記主配管に合流するとともに、前記熱交換器から送出された作動流体の一部が流れる分岐配管と、前記分岐配管上に設けられる減圧部とをさらに備え、前記乾き度取得部が、前記分岐部と前記減圧部との間における作動流体の圧力である分岐上流圧力を測定する第1測定部と、前記減圧部と前記合流部との間における作動流体の圧力および温度を測定する第2測定部と、前記減圧部において等エンタルピー膨張が行われると仮定した場合の前記減圧部の性能特性を示す特性データを記憶する記憶部と、前記第1測定部および前記第2測定部からの出力と前記特性データとに基づいて前記乾き度を求める乾き度演算部とを備える。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の廃熱回収装置であって、前記熱交換器と前記分岐部との間に配置され、前記分岐上流圧力を所定の圧力に維持する圧力制御部をさらに備える。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の廃熱回収装置であって、前記流量制御部が、前記ポンプと前記熱交換器との間に設けられる流量調節弁を備える。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の廃熱回収装置であって、前記流量制御部が、前記ポンプの出力をインバータ制御するポンプ制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、膨張機に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて熱交換器を通過させることにより、廃熱の回収効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る原動機システム1の構成を示す図である。原動機システム1は、例えば、船舶の主機システムとして利用される。原動機システム1は、過給機付き原動機2と、過給機付き原動機2の廃熱を回収する廃熱回収装置6とを備える。
【0018】
過給機付き原動機2は、内燃機関である原動機3と、ターボチャージャである過給機4とを備える装置である。原動機3は、例えば、2ストロークエンジンである舶用原動機である。過給機4は、タービン41と、タービン41に機械的に接続されるコンプレッサ42とを備える。原動機3と過給機4とは、掃気路31および排気路32により接続される。排気路32は、原動機3からの排気をタービン41へと導き、タービン41を通過した排気を原動機システム1の外部へと導く。
【0019】
タービン41は、原動機3から排気路32を介して供給された排気により回転する。コンプレッサ42は、タービン41にて発生する回転力を利用して(すなわち、タービン41の回転を動力として)、原動機システム1の外部から吸気路43を介して過給機4に導かれた吸気(空気)を加圧して圧縮する。コンプレッサ42により加圧された吸気である圧縮空気(以下、「掃気」という。)は、原動機3に供給される。このように、過給機4では、排気を利用して吸気を加圧し、掃気が生成される。掃気路31は、加圧された吸気を過給機4から原動機3へと導く流路、すなわち、加圧吸気路である。
【0020】
廃熱回収装置6は、配管61と、排気熱交換器62と、膨張機63と、凝縮器64と、ポンプ65と、流量制御部66と、乾き度取得部67と、圧力制御部68とを備える。廃熱回収装置6は、これらの構成を制御するシステム制御部(後述)も備える。排気熱交換器62、膨張機63、凝縮器64およびポンプ65は、作動流体が流れる配管61により、上記順序にて接続される。当該作動流体は、例えば有機媒体である。
図1に示す廃熱回収装置6では、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系のR245faが作動流体として利用され、いわゆる有機ランキンサイクル(ORC:Organic Rankine Cycle)が行われる。
【0021】
流量制御部66は、ポンプ65と排気熱交換器62との間にて配管61上に設けられる流量調節弁661を備える。好ましくは、ポンプ65はインバータポンプであり、ポンプ65の出力をインバータ制御するポンプ制御部662が流量制御部66に設けられる。
【0022】
乾き度取得部67は、第1測定部671と、第2測定部672とを備える。第1測定部671は、排気熱交換器62と膨張機63との間にて配管61上に設けられる。第1測定部671は、排気熱交換器62と膨張機63との間における作動流体の圧力である上流圧力を測定する上流圧力測定部である。第2測定部672は、下流圧力測定部673と、下流温度測定部674とを備える。下流圧力測定部673および下流温度測定部674は、膨張機63と凝縮器64との間にて配管61上に設けられる。第2測定部672の下流圧力測定部673および下流温度測定部674により、膨張機63と凝縮器64との間における作動流体の圧力および温度である下流圧力および下流温度がそれぞれ測定される。
【0023】
圧力制御部68は、排気熱交換器62と膨張機63との間にて配管61上に配置される圧力調節弁681を備える。
図1に示す例では、圧力調節弁681は、排気熱交換器62と第1測定部671との間にて配管61上に設けられる。圧力制御部68は、上述の上流圧力を所定の圧力に維持する。
【0024】
廃熱回収装置6では、ポンプ65により液状の作動流体が加圧されて排気熱交換器62へと送出される。排気熱交換器62は、排気路32上においてタービン41よりも下流側に設けられる。排気熱交換器62では、ポンプ65から送出された液状の作動流体が、排気路32を流れるタービン41からの排気(すなわち、タービン41を通過した後の原動機3からの排気)を熱源として加熱される。換言すれば、排気熱交換器62は、排気に含まれる過給機付き原動機2からの廃熱を熱源として作動流体を加熱する熱交換器である。
【0025】
排気熱交換器62は、予熱器621と、蒸発器622とを備える。予熱器621では、液状の作動流体が、排気路32を流れる排気により加熱される。予熱器621にて加熱された液状の作動流体は、蒸発器622へと導かれる。蒸発器622では、液状の作動流体が、排気路32を流れる排気により加熱されて気化(蒸発)する。排気熱交換器62を通過した作動流体は、膨張機63へと導かれる。
【0026】
膨張機63は、排気熱交換器62により加熱されて気化した作動流体を膨張させて機械的エネルギーを回収する。
図1に示す例では、作動流体により回転するタービンが膨張機63として利用される。当該タービンの軸は発電機8に接続されている。排気熱交換器62から配管61を介して送り込まれる作動流体によりタービンが駆動されることにより、発電機8において発電が行われる。なお、
本発明に関連する技術では、タービン以外の構成が膨張機63として利用されてもよい。
【0027】
図2は、廃熱回収装置6のT−S線図である。
図2の横軸は比エントロピーを示し、縦軸は温度を示す。
図2中の実線901は、廃熱回収装置6におけるORCを示す。また、
図2中の破線902,903はそれぞれ、廃熱回収装置6の作動流体であるR245faの飽和液線および乾き飽和蒸気線である。
図2に示すように、作動流体の乾き飽和蒸気線903は、T−S線図上において正の勾配を有する。換言すれば、作動流体のT−S線図上における乾き飽和蒸気線は、比エントロピーの増加に従って高温側へと向かう。このため、膨張機63では、
図2中の点904に対応する湿り蒸気状態の作動流体が膨張することにより、
図2中の点905に対応する乾き蒸気状態の作動流体となる。したがって、膨張機63内における作動流体の液滴の生成が防止(または抑制)される。
【0028】
図1に示す膨張機63を通過した作動流体は、凝縮器64へと導かれる。凝縮器64は、膨張機63にて膨張させた作動流体を凝縮して液化する。凝縮器64にて液化された作動流体は、ポンプ65により加圧されて排気熱交換器62へと送出される。
【0029】
図3は、上述のシステム制御部7の機能を示すブロック図である。
図3では、廃熱回収装置6の他の構成も併せて描いている。システム制御部7は、CPU、ROMおよびRAM等を含む一般的なコンピュータシステムである。システム制御部7は、記憶部71と、乾き度演算部72と、流量指示部73とを備える。記憶部71および乾き度演算部72は、上述の乾き度取得部67の一部でもある。換言すれば、乾き度取得部67は、上述の第1測定部671および第2測定部672と、記憶部71および乾き度演算部72とを備える。
【0030】
記憶部71は、膨張機63の性能特性を示す特性データを記憶する。
図4は、記憶部71に予め記憶される膨張機63の性能特性の一例を示す図である。
図4の横軸は、膨張機63の下流側における作動流体の圧力である上述の下流圧力を示す。
図4の縦軸は、膨張機63の下流側における作動流体の温度である上述の下流温度を示す。
図4では、膨張機63の上流側における作動流体の圧力である上述の上流圧力が所定の圧力PH1である場合の下流圧力と下流温度との関係を示す。
図1に示す廃熱回収装置6では、圧力制御部68の圧力調節弁681がシステム制御部7(
図3参照)により制御されることにより、上流圧力が圧力PH1に維持される。
【0031】
図4中の実線911は、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度(すなわち、膨張機63の上流側における作動流体の乾き度)が1である場合の下流圧力と下流温度との関係を示す。実線912は、膨張機63の上流側における作動流体の乾き度が0.9である場合の下流圧力と下流温度との関係を示す。また、実線913は、膨張機63の上流側における作動流体の乾き度が0.8である場合の下流圧力と下流温度との関係を示す。
図4における図示は省略するが、記憶部71には、膨張機63の上流側における作動流体の乾き度が、実線911〜913に示すものとは異なる場合の下流圧力と下流温度との関係も記憶されている。また、記憶部71には、上流圧力が圧力PH1とは異なる場合の各乾き度における下流圧力と下流温度との関係も記憶されている。
【0032】
図1に示す廃熱回収装置6では、第1測定部671からの出力である作動流体の上流圧力の測定値、並びに、第2測定部672からの出力である作動流体の下流圧力の測定値および下流温度の測定値が、
図3に示す乾き度取得部67の乾き度演算部72へと送られる。乾き度演算部72では、第1測定部671および第2測定部672からの出力と、上述の膨張機63の特性データとに基づいて、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が求められる。
【0033】
具体的には、第1測定部671から出力された上流圧力に対応する特性データ(
図4参照)が記憶部71から抽出される。なお、第1測定部671により測定された上流圧力に対応する特性データが存在しない場合、測定された上流圧力との差が小さい2つの上流圧力に対応する2つの特性データが抽出され、当該2つの特性データに基づいて(例えば、直線補間することにより)、測定された上流圧力に対応する特性データが生成される。そして、測定された上流圧力に対応する特性データが示す膨張機63の性能特性において、第2測定部672から出力された下流圧力および下流温度の交点が示す乾き度が、作動流体の乾き度として求められる。
【0034】
乾き度取得部67により取得された当該乾き度は、流量指示部73へと送られる。流量指示部73には、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度の目標値である目標乾き度が予め記憶されている。流量指示部73では、目標乾き度と、乾き度取得部67により取得された乾き度(以下、「測定乾き度」という。)とが比較される。
【0035】
測定乾き度が目標乾き度よりも小さい場合は、流量指示部73からの指示により、
図1に示す流量制御部66において流量調節弁661の開度が減少する。また、必要に応じて、ポンプ制御部662によりポンプ65がインバータ制御され、ポンプ65の出力が低下する。これにより、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量が減少し、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が増大する。
【0036】
一方、測定乾き度が目標乾き度よりも大きい場合は、流量指示部73からの指示により、流量制御部66において流量調節弁661の開度が増加する。また、必要に応じて、ポンプ制御部662によりポンプ65がインバータ制御され、ポンプ65の出力が増大する。これにより、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量が増大し、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が減少する。このように、廃熱回収装置6では、流量制御部66が、乾き度取得部67からの出力である測定乾き度に基づいて、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量を制御することにより、測定乾き度が目標乾き度におよそ等しくなる。
【0037】
図5は、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度と発電機8の出力との関係を示す図である。
図5の横軸は、上記乾き度を示す。横軸の値は、排気熱交換器62に流入する作動流体のエンタルピーと排気熱交換器62から送出される作動流体のエンタルピーとの差を、作動流体の蒸発潜熱で除算して求めている。横軸の1よりも大きい範囲は、膨張機63へと流入する作動流体が過熱状態である場合に対応し、当該範囲における横軸の値は過熱度に対応する。
図5の縦軸は、発電機8の出力を、作動流体の乾き度が1の場合の発電機8の出力で除算して無次元化した値(すなわち、出力比)を示す。
【0038】
図5中の実線921は、作動流体として上述のようにR245faが利用される廃熱回収装置6における発電機8の出力を示す。実線921にて示すように、廃熱回収装置6では、発電機8の出力は、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度がおよそ0.5である場合に最大となり、当該乾き度が0.5から離れるに従って漸次減少する。したがって、廃熱回収装置6における廃熱回収の効率向上という観点からは、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度は、0.5近傍とされることが好ましい。一方、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が過剰に低い場合、膨張機63における膨張後の作動流体が湿り蒸気状態となり、膨張機63内において作動流体の液滴が発生する可能性がある。当該液滴は、通常、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1よりも大きい場合は発生しない。
【0039】
廃熱回収装置6では、目標乾き度を1以下とすることにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1よりも大きい場合(すなわち、過熱蒸気が膨張機63に流入する場合)に比べて、廃熱の回収効率が向上される。さらに、目標乾き度は、1以下の範囲において、膨張機63内における作動流体の液滴発生を防止することが可能な範囲に設定される。上述のように、廃熱回収装置6では、作動流体のT−S線図における乾き飽和蒸気線が、比エントロピーの増加に従って高温側へと向かうため、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が比較的低い場合であっても、膨張機63内における作動流体の液滴発生を抑制することができる。目標乾き度は、例えば、0.6以上0.8以下の範囲に設定される。
【0040】
図1に示す廃熱回収装置6では、上述のように、乾き度取得部67からの出力に基づいて排気熱交換器62を通過する作動流体の流量を制御することにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1以下の範囲において制御され、目標乾き度におよそ等しい値とされる。換言すれば、廃熱回収装置6では、膨張機63に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて排気熱交換器62を通過させる。これにより、廃熱回収装置6における廃熱の回収効率を向上することができる。
【0041】
上述のように、乾き度取得部67は、上流圧力を測定する第1測定部671と、下流圧力および下流温度を測定する第2測定部672と、膨張機63の特性データを記憶する記憶部71と、第1測定部671および第2測定部672からの出力と当該特性データとに基づいて作動流体の測定乾き度を求める乾き度演算部72とを備える。これにより、測定乾き度(すなわち、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度)を求めるための構造を簡素化することができる。また、測定乾き度を容易に求めることもできる。
【0042】
廃熱回収装置6では、上述の上流圧力を所定の圧力に維持する圧力制御部68が、排気熱交換器62と膨張機63との間に設けられる。これにより、乾き度演算部72において、当該所定の圧力における膨張機63の性能特性を示す1種類の特性データに基づいて乾き度を求めることができる。その結果、測定乾き度に基づく上述の作動流体の流量制御(すなわち、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量の制御)を簡素化することができる。記憶部71では、上述の1種類の特性データが記憶されていれば、他の特性データは記憶されていなくてもよい。
【0043】
なお、圧力制御部68により上流圧力が精度良く制御可能であれば、乾き度取得部67から第1測定部671は省略されてもよい。この場合、乾き度演算部72による乾き度の算出では、第1測定部671からの出力である上流圧力の測定値に代えて圧力制御部68により維持される上流圧力の値(すなわち、圧力制御部68による上流圧力の制御における目標値)が利用される。換言すれば、乾き度演算部72では、圧力制御部68により維持される上流圧力の値と、第2測定部672からの出力と、上述の1種類の特性データに基づいて乾き度が求められる。この場合であっても、上記と同様に、測定乾き度に基づく上述の作動流体の流量制御を簡素化することができる。
【0044】
上述のように、流量制御部66は、ポンプ65と排気熱交換器62との間に設けられる流量調節弁661を備える。これにより、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量制御を、簡素な構成にて実現することができる。また、流量制御部66は、ポンプ65の出力をインバータ制御するポンプ制御部662をさらに備える。これにより、ポンプ65の消費電力を低減することができる。
【0045】
図5中の破線922は、廃熱回収装置6において、アンモニアが作動流体として利用されたと仮定した場合の発電機8の出力を示す。破線922にて示すように、発電機8の出力は、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1よりも小さくなるに従って漸次増大し、当該乾き度がおよそ0.4である場合に最大となる。作動流体としてアンモニアを利用する場合も、上記と同様に、乾き度取得部67からの出力に基づいて排気熱交換器62を通過する作動流体の流量を制御することにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1以下の範囲において制御される。このように、膨張機63に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて排気熱交換器62を通過させることにより、廃熱回収装置6における廃熱の回収効率を向上することができる。
【0046】
図6は、第2の実施の形態に係る原動機システム1aの構成を示す図である。原動機システム1aでは、
図1に示す原動機システム1の各構成に加えて、廃熱回収装置6aが分岐配管61aおよび減圧部69をさらに備える。原動機システム1aの他の構成は、
図1に示す原動機システム1とおよそ同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
【0047】
図6に示す廃熱回収装置6aの配管61は、
図1に示す配管61と同様に、ポンプ65、排気熱交換器62、膨張機63および凝縮器64を順に接続する。分岐配管61aは、排気熱交換器62と膨張機63との間の分岐部611にて配管61から分岐し、膨張機63と凝縮器64との間の合流部612にて配管61に合流する。以下の説明では、配管61と分岐配管61aとの区別をより明確にするために、配管61を「主配管61」という(
図7に示す例においても同様)。排気熱交換器62から送出された作動流体の一部は分岐配管61aを流れ、合流部612にて、主配管61を流れる残りの作動流体に合流する。換言すれば、作動流体の上記一部は、主配管61上に設けられた膨張機63を避けて分岐配管61aを流れる。
【0048】
分岐配管61a上には、減圧部69が設けられる。減圧部69としては、例えば、膨張弁が利用される。減圧部69は、およそ等エンタルピー膨張が行われるとみなすことが可能な構造を有するものであれば、膨張弁には限定されない。減圧部69は、例えば、オリフィスや多孔質部材であってもよい。
【0049】
廃熱回収装置6aの乾き度取得部67では、第1測定部671が、分岐部611と減圧部69との間にて分岐配管61a上に設けられる。また、第2測定部672の下流圧力測定部673および下流温度測定部674は、減圧部69と合流部612との間にて分岐配管61a上に設けられる。第1測定部671は、分岐部611と減圧部69との間における作動流体の圧力である分岐上流圧力を測定する。下流圧力測定部673および下流温度測定部674は、減圧部69と合流部612との間における作動流体の圧力および温度である分岐下流圧力および分岐下流温度をそれぞれ測定する。分岐上流圧力は、減圧部69に流入する作動流体の圧力である。分岐下流圧力および分岐下流温度は、減圧部69から送出された作動流体の圧力および温度である。
【0050】
記憶部71(
図3参照)には、減圧部69において等エンタルピー膨張が行われると仮定した場合の減圧部69の性能特性を示す特性データ(以下、「減圧部特性データ」という。)が記憶される。減圧部特性データは、例えば、
図4に示す膨張機63の性能特性と同様の態様にて、減圧部69の性能特性を示す。具体的には、上述の分岐上流圧力が所定の圧力PH1である場合の分岐下流圧力と分岐下流温度との関係が減圧部特性データとして記憶部71に記憶される。当該関係は、減圧部69に流入する作動流体の複数の乾き度についてそれぞれ記憶される。また、記憶部71には、分岐上流圧力が圧力PH1とは異なる場合の各乾き度における分岐下流圧力と分岐下流温度との関係も記憶されている。
【0051】
図6に示す廃熱回収装置6aでは、第1測定部671からの出力である作動流体の分岐上流圧力の測定値、並びに、第2測定部672からの出力である作動流体の分岐下流圧力の測定値および分岐下流温度の測定値が、乾き度演算部72(
図3参照)へと送られる。
図6に示す例では、分岐上流圧力は、圧力制御部68により圧力PH1に維持される。乾き度取得部67の乾き度演算部72では、第1測定部671および第2測定部672からの出力と、上述の減圧部特性データとに基づいて、減圧部69へと流入する作動流体の乾き度が求められる。乾き度取得部67により取得された乾き度である測定乾き度は、排気熱交換器62から送出された作動流体の乾き度におよそ等しく、また、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度にもおよそ等しい。
【0052】
乾き度取得部67による測定乾き度の具体的な取得方法は、
図1に示す廃熱回収装置6による上述の測定乾き度の取得方法とおよそ同様である。まず、第1測定部671から出力された分岐上流圧力に対応する減圧部特性データが記憶部71から抽出される。なお、第1測定部671により測定された分岐上流圧力に対応する減圧部特性データが存在しない場合、測定された分岐上流圧力との差が小さい2つの分岐上流圧力に対応する2つの減圧部特性データが抽出され、当該2つの減圧部特性データに基づいて(例えば、直線補間することにより)、測定された分岐上流圧力に対応する減圧部特性データが生成される。そして、測定された分岐上流圧力に対応する減圧部特性データが示す減圧部69の性能特性において、第2測定部672から出力された分岐下流圧力および分岐下流温度に対応する乾き度が、作動流体の測定乾き度として求められる。
【0053】
乾き度取得部67により取得された測定乾き度は、流量指示部73(
図3参照)へと送られる。流量指示部73には、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度の目標値である目標乾き度が予め記憶されている。流量指示部73では、目標乾き度と測定乾き度とが比較される。測定乾き度が目標乾き度よりも小さい場合は、流量指示部73からの指示に基づいて流量制御部66が駆動し、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量が減少する。これにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が増大する。一方、測定乾き度が目標乾き度よりも大きい場合は、流量指示部73からの指示に基づいて流量制御部66が駆動し、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量が増大する。これにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が減少する。
【0054】
このように、廃熱回収装置6aでは、
図1に示す廃熱回収装置6と同様に、乾き度取得部67からの出力に基づいて排気熱交換器62を通過する作動流体の流量を制御することにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1以下の範囲において制御され、目標乾き度におよそ等しい値とされる。換言すれば、廃熱回収装置6aでは、膨張機63に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて排気熱交換器62を通過させる。これにより、廃熱回収装置6aにおける廃熱の回収効率を向上することができる。
【0055】
上述のように、廃熱回収装置6aでは、分岐配管61aが、排気熱交換器62と膨張機63との間の分岐部611にて主配管61から分岐し、膨張機63と凝縮器64との間の合流部612にて主配管61に合流する。分岐配管61a上には、作動流体の等エンタルピー膨張が行われると仮定し得る減圧部69が設けられる。そして、減圧部69の上流側の分岐上流圧力、下流側の分岐下流圧力および分岐下流温度、並びに、減圧部特性データに基づいて、膨張機63に流入する作動流体の乾き度(すなわち、上述の測定乾き度)が求められる。このため、膨張機63の性能特性が不明である場合であっても、膨張機63に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量を適切に制御することができる。これにより、
図1に示す廃熱回収装置6と同様に、廃熱回収装置6aにおける廃熱の回収効率を向上することができる。
【0056】
なお、
図6に示す例では、膨張機63の性能特性を示す特性データ(
図4参照)は記憶部71に記憶されていてもよく、記憶されていなくてもよい。膨張機63の性能特性を示す特性データが記憶部71に記憶されている場合であっても、当該特性データは、測定乾き度の算出には利用されない。
【0057】
廃熱回収装置6aでは、上述の分岐上流圧力を所定の圧力に維持する圧力制御部68が、排気熱交換器62と分岐部611との間に設けられる。これにより、乾き度演算部72において、当該所定の圧力における減圧部69の性能特性を示す1種類の減圧部特性データに基づいて乾き度を求めることができる。その結果、測定乾き度に基づく上述の作動流体の流量制御(すなわち、排気熱交換器62を通過する作動流体の流量の制御)を簡素化することができる。記憶部71では、上述の1種類の減圧部特性データが記憶されていれば、他の特性データは記憶されていなくてもよい。
【0058】
なお、圧力制御部68により分岐上流圧力が精度良く制御可能であれば、乾き度取得部67から第1測定部671は省略されてもよい。この場合、乾き度演算部72による乾き度の算出では、第1測定部671からの出力である分岐上流圧力の測定値に代えて圧力制御部68により維持される分岐上流圧力の値(すなわち、圧力制御部68による分岐上流圧力の制御における目標値)が利用される。換言すれば、乾き度演算部72では、圧力制御部68により維持される分岐上流圧力の値と、第2測定部672からの出力と、上述の1種類の特性データに基づいて乾き度が求められる。この場合であっても、上記と同様に、測定乾き度に基づく上述の作動流体の流量制御を簡素化することができる。
【0059】
図7は、第3の実施の形態に係る原動機システム1bの構成を示す図である。原動機システム1bでは、
図1に示す流量制御部66に代えて、廃熱回収装置6bが流量制御部66aを備える。原動機システム1bの他の構成は、
図1に示す原動機システム1とおよそ同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
【0060】
図7に示す廃熱回収装置6bでは、流量制御部66aが、分岐配管61bと、流量調節弁663とを備える。分岐配管61bは、ポンプ65と排気熱交換器62との間の分岐部613にて主配管61から分岐し、膨張機63と凝縮器64との間の合流部614にて主配管61に合流する。流量調節弁663は、分岐部613と合流部614との間にて分岐配管61b上に設けられる。ポンプ65の出力は、所定の出力に維持される。
【0061】
流量調節弁663が開かれることにより、ポンプ65から送出された作動流体の一部が分岐配管61bを流れ、合流部614にて、主配管61を流れる残りの作動流体に合流する。換言すれば、作動流体の上記一部は、主配管61上に設けられた排気熱交換器62および膨張機63を避けて分岐配管61bを流れる。また、流量調節弁663の開度が調節されることにより、分岐配管61bを流れる作動流体の流量が調節される。これにより、排気熱交換器62を通過して膨張機63に流入する作動流体の流量が調節される。
【0062】
廃熱回収装置6bでは、
図1に示す廃熱回収装置6と同様に、乾き度取得部67からの出力に基づいて排気熱交換器62を通過する作動流体の流量を制御することにより、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度が1以下の範囲において制御され、目標乾き度におよそ等しい値とされる。換言すれば、膨張機63に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて排気熱交換器62を通過させる。これにより、廃熱回収装置6bにおける廃熱の回収効率を向上することができる。
【0063】
上記廃熱回収装置6,6a,6bでは、様々な変更が可能である。
【0064】
例えば、
図1および
図7に示す廃熱回収装置6,6bでは、圧力制御部68は省略されてもよい。この場合、測定乾き度を目標乾き度に等しくする過程において、上流圧力が変化する可能性がある。したがって、記憶部71には、膨張機63の特性データとして、複数の上流圧力にそれぞれ対応する複数の特性データが記憶される。また、
図6に示す廃熱回収装置6aにおいても、圧力制御部68は省略されてもよい。この場合、記憶部71には、減圧部69の特性データとして、複数の分岐上流圧力にそれぞれ対応する複数の減圧部特性データが記憶される。
【0065】
廃熱回収装置6,6a,6bでは、圧縮空気熱交換器が、ポンプ65と排気熱交換器62との間において配管61上に設けられてもよい。当該圧縮空気熱交換器は、過給機付き原動機2のコンプレッサ42と原動機3との間において掃気路31上に設けられる。圧縮空気熱交換器では、掃気路31を流れるコンプレッサ42からの掃気(すなわち、圧縮空気)を熱源として、ポンプ65から送出された液状の作動流体が予備的に加熱される。換言すれば、圧縮空気熱交換器では、圧縮された空気を冷却するために生じる熱(すなわち、掃気に含まれる過給機付き原動機2の廃熱)を熱源として作動流体が加熱される。圧縮空気熱交換器が設けられることにより、過給機付き原動機2の廃熱の回収効率をより一層向上することができる。廃熱回収装置6,6a,6bでは、原動機3のジャケット冷却水を熱源として作動流体を加熱する他の熱交換器が設けられてもよい。
【0066】
図1および
図6に示す廃熱回収装置6,6aでは、ポンプ65の出力は、必ずしもインバータ制御される必要はなく、例えば、所定の出力に維持されていてもよい。
【0067】
廃熱回収装置6,6a,6bでは、膨張機63へと流入する作動流体の乾き度の取得は、上述の取得方法以外の方法により行われてもよい。また、廃熱回収装置6,6a,6bは、作動流体が過熱蒸気である場合であっても、上述と同様の流量調整を行うことができる。
本発明に関連する技術では、有機媒体以外の作動流体が利用されてもよい。さらには、作動流体のT−S線図における乾き飽和蒸気線は、比エントロピーの増加に従って必ずしも高温側へと向かう必要はない。
【0068】
原動機3は、例えば、4ストロークエンジンであってもよい。この場合、コンプレッサ42により加圧された吸気である圧縮空気は「給気」と呼ばれ、掃気路31は給気路と呼ばれる。また、原動機3は、舶用原動機以外の内燃機関であってもよく、内燃機関以外の原動機であってもよい。
【0069】
廃熱回収装置6,6a,6bは、原動機システム以外の様々な設備において利用可能であり、廃熱回収装置6,6a,6bには、様々な装置の廃熱を熱源として作動流体を加熱する熱交換器が設けられてよい。この場合であっても、上記と同様に、膨張機63に流入する作動流体が湿り蒸気状態となる範囲において、作動流体を適切な流量にて排気熱交換器62を通過させることにより、廃熱の回収効率を向上することができる。
【0070】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。