(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層された前記金属板のうち前記錘部側の前記金属板が、前記駆動軸の軸線に対し、前記錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向にずらして積層されている請求項1に記載の圧縮機。
積層された前記金属板のうち前記錘部側の前記金属板において、前記駆動軸の軸線に対し、前記錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向に突出するように金属製コーティングが施されている請求項1に記載の圧縮機。
前記金属板の前記ロータの径方向に突出している部分の重量を考慮して、前記駆動軸の軸線に対し前記錘部側の重量が低減されている請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧縮機の運転時、駆動軸の曲げ固有値に起因した振動によって、騒音が発生する。この共振に基づく騒音は、駆動軸に生じる他の振動に起因する騒音よりも大きい。駆動軸が固有値で共振することは、圧縮機の構造上、回避することが困難である。しかし、たとえ共振が生じたとしても、駆動軸の曲げ量を低減することによって、振動を抑制し、騒音を低減することができる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、駆動軸の曲げ量を低減し、曲げ固有値に起因した振動によって発生する騒音を低減することが可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の圧縮機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る圧縮機は、圧縮部と、
平面形状が同一である複数の金属板が積層されたロータ及び前記ロータの外周部分に設けられるステータを有するモータ部と、前記モータ部と前記圧縮部を連結する駆動軸とを備え、前記ロータには、前記駆動軸の軸方向の一端側の面において、錘部が設けられ、積層された前記金属板のうち前記錘部側の前記金属板は、前記駆動軸の軸線に対し前記錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向に突出している。
【0009】
この構成によれば、ロータを構成する積層された金属板が、錘部とはロータの径方向の反対のステータ側方向に突出していることから、モータのロータが回転するとき、金属板が突出している部分では、ステータ側に発生する磁気吸引力は、金属板が突出していない部分よりも大きい。その結果、回転時、錘部によって遠心力が作用するところ、駆動軸の曲げを緩和する方向に磁気吸引力が発生するため、ロータにおいて金属板が突出している部分がない場合に比べ、駆動軸の曲げを緩和できる。なお、錘部が設けられる駆動軸の軸方向の一端側の面とは、例えば、圧縮部側の面とは反対側の面である。
【0010】
上記発明において、積層された前記金属板のうち前記錘部側の前記金属板が、前記駆動軸の軸線に対し、前記錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向にずらして積層されてもよい。
【0011】
この構成によれば、ロータを構成する積層された金属板が、錘部とは反対のステータ側方向に突出するようにずらして積層されていることから、モータのロータが回転するとき、金属板が突出して積層されている部分では、ステータ側に発生する磁気吸引力は、金属板が突出して積層されていない部分よりも大きい。
【0012】
上記発明において、積層された前記金属板のうち前記錘部側の前記金属板において、前記駆動軸の軸線に対し、前記錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向に突出するように金属製コーティングが施されてもよい。
【0013】
この構成によれば、ロータを構成する積層された金属板が、錘部とは反対のステータ側方向に突出するように金属製コーティングが施されていることから、モータのロータが回転するとき、金属製コーティングが施されている部分では、ステータ側に発生する磁気吸引力は、金属板が突出していない部分よりも大きい。
【0014】
上記発明において、前記金属板の前記ロータの径方向に突出している部分の重量を考慮して、前記駆動軸の軸線に対し前記錘部側の重量が低減されてもよい。
【0015】
この構成によれば、積層されている金属板が、駆動軸の軸線に対し錘部とは反対側に突出している場合でも、圧縮部に作用する遠心力と、ロータに作用する遠心力とのバランスをとることができる。
【0016】
上記発明において、前記ロータには、前記駆動軸の軸方向の前記一端側とは反対の他端側の面において、第2の錘部が設けられてもよく、積層された前記金属板のうち前記第2の錘部側の前記金属板は、前記駆動軸の軸線に対し前記第2の錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向に突出している。
【0017】
この構成によれば、第2の錘部側の金属板が、第2の錘部とはロータの径方向の反対のステータ側方向に突出しており、上述した錘部側の金属板に加え、ステータ側に発生する磁気吸引力が、金属板が突出していない部分よりも大きくなる。その結果、ロータにおいて金属板が突出している部分がない場合に比べ、駆動軸の曲げを更に緩和できる。
【0018】
本発明
の参考例に係る圧縮機は、圧縮部と、複数の金属板が積層されたロータ及び前記ロータの外周部分に設けられるステータを有するモータ部と、前記モータ部と前記圧縮部を連結する駆動軸とを備え、前記ロータには、前記駆動軸の軸方向の前記圧縮部側とは反対側の面において、錘部が設けられ、前記ロータの内部には、複数の永久磁石が設置され、前記駆動軸の軸方向の前記圧縮部側とは反対側に設けられた永久磁石は、他部分に比べ、前記駆動軸の軸線に対し前記錘部とは前記ロータの径方向の反対の前記ステータ側方向の磁力が増加するように配置されている。
【0019】
この構成によれば、永久磁石が、錘部とはロータの径方向の反対のステータ側方向に磁力が増加していることから、モータのロータが回転するとき、永久磁石の磁力が増加している部分では、ステータ側に発生する磁気吸引力は、他の部分よりも大きい。その結果、回転時、錘部によって遠心力が作用するところ、駆動軸の曲げを緩和する方向に磁気吸引力が増加して発生するため、ロータにおいて永久磁石の磁力が増加している部分がない場合に比べ、駆動軸の曲げを緩和できる。
【0020】
上記参考例において、前記駆動軸の軸方向の前記圧縮部側とは反対側に設けられた前記永久磁石は、他の部分に比べ前記ロータの径方向の前記ステータ側に偏って配置されてもよいし、又は、他部分の永久磁石に比べ磁力が強くてもよい。
【0021】
この構成によれば、永久磁石が、他の部分に比べ錘部とはロータの径方向の反対のステータ側に偏って配置されることから、モータのロータが回転するとき、永久磁石が偏って配置されている部分では、ステータ側に発生する磁気吸引力は、永久磁石が偏って配置されていない部分よりも大きい。又は、永久磁石が、他の部分に比べ錘部とはロータの径方向の反対のステータ側方向の磁力が強いことから、モータのロータが回転するとき、永久磁石が磁力が強い部分では、ステータ側に発生する磁気吸引力は、他の部分よりも大きい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、駆動軸の曲げ量を低減し、曲げ固有値に起因した振動によって発生する騒音を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態に係る圧縮機1について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る多気筒ロータリ式の圧縮機1は、
図1に示すように、上部及び下部が上部カバー3及び下部カバー4により密閉された円筒状の密閉容器2を備え、その内部の上方部位にモータ5が設置され、該モータ5により駆動される圧縮機構(ロータリ圧縮機構)6がその下方部位に設置される。
【0025】
密閉容器2の下部外周には、据え付け脚7が設けられている。また、密閉容器2の上部には、上部カバー3を貫通する吐出配管8が設けられ、吐出配管8は、多気筒ロータリ圧縮機1で圧縮された高圧の冷媒ガスを冷凍サイクル側へと吐き出す。更に、密閉容器2の外周部には、アキュームレータ9が組み付けられており、アキュームレータ9は、冷凍サイクル側からリターンする低圧の冷媒ガス中に含まれる油、液冷媒等の液分を分離し、ガス分のみを吸入配管10,11を介して圧縮機構6へと吸い込ませる。
【0026】
モータ5は、ステータ12とロータ13とを備える。ステータ12は、密閉容器2の内周面に圧入等によって固定設置されている。ロータ13は、駆動軸14が結合されて一体化されていることによって、ロータ13の回転駆動力が駆動軸14を介して圧縮機構6に伝達可能とされている。また、駆動軸14の下方部位には、後述するロータリ式の圧縮機構6の第1ローラ24及び第2ローラ25に対応して第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16が設けられている。
【0027】
ロータリ式の圧縮機構6は、本実施形態では2気筒タイプとされ、その第1及び第2圧縮機構6A,6Bは、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18が形成される。圧縮機構6は、更に、第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20と、仕切板(セパレータプレート)21と、上部軸受22と、下部軸受23などを備えている。
【0028】
第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20は、駆動軸14の第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16に対応して、密閉容器2内に固定設置されている。仕切板21は、第1シリンダ本体19と第2シリンダ本体20との間に介装され、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18を区画する。上部軸受22は、第1シリンダ本体19の上面に設けられ、第1シリンダ室17を区画するとともに、駆動軸14を支持する。下部軸受23は、第2シリンダ本体20の下面に設けられ、第2シリンダ室18を区画するとともに、駆動軸14を支持する。
【0029】
第1及び第2圧縮機構6A,6Bは、それぞれ、第1ローラ24及び第2ローラ25と、ブレード28及び29を備える。
【0030】
第1ローラ24及び第2ローラ25は、それぞれ、第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16に回動自在に嵌合され、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内を回動する。第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16は、駆動軸14と結合され、駆動軸14と共に一体的に回転する。第2偏心ピン16に嵌合した第2ローラ25の重心は、駆動軸14の軸線に対し第1偏心ピン15に嵌合した第1ローラ24の重心と反対側に位置する。
【0031】
ブレード28及び29は、
図2に示すように、第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20に設けられているブレード溝26,27に摺動自在に嵌合され、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内を吸入室側と吐出室側とに仕切る。
【0032】
第1及び第2圧縮機構6A,6Bの第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内には、吸入配管10,11から吸入ポート30,31を介して低圧の冷媒ガスが吸入される。
【0033】
第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内に吸入された冷媒ガスは、第1ローラ24及び第2ローラ25の回動により圧縮された後、吐出ポート及び吐出弁(図示省略)を介して、吐出チャンバー32,33内に吐出される。吐出チャンバー32,33内に吐出された冷媒ガスは、密閉容器2内に吐き出された後、吐出配管8を経て冷凍サイクルへと送り出される。
【0034】
圧縮機構6を構成する第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20と、仕切板21と、上部軸受22及び下部軸受23は、ボルトを介して一体に締め付け固定されている。また、密閉容器2内の底部には、PAG油、POE油等の冷凍機油34が充填されており、駆動軸14中に設けられている給油孔等を介して、圧縮機構6内の潤滑部位に給油可能とされている。冷凍機油34には、各々の油に適応する極圧剤が適量添加されている。なお、圧縮機構6への給油機構は、通常用いられる構成であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
第1バランスウエイト35は、ロータ13の上面、すなわち、駆動軸14の軸線方向の一側であって、圧縮機構6が位置する側と反対側の面に設けられる。また、第1バランスウエイト35の重心は、駆動軸14の軸線に対して、第1ローラ24の重心とは反対側に位置する。第2バランスウエイト36は、ロータ13の下面、すなわち、駆動軸14の軸線方向の他側であって、圧縮機構6が位置する側の面に設けられる。また、第2バランスウエイト36の重心は、駆動軸14の軸線に対して、第2ローラ25の重心とは反対側に位置する。
【0036】
ロータ13の上面や下面に第1バランスウエイト35及び第2バランスウエイト36が設けられることによって、第1バランスウエイト35及び第2バランスウエイト36にかかる遠心力は、第1ローラ24及び第2ローラ25の回転によって生じる第1ローラ24及び第2ローラ25にかかる遠心力とバランスをとることができる。
【0037】
ロータ13は、複数の鋼板が互いに絶縁して駆動軸14の軸方向に積層されている。鋼板は、磁性金属板の一例であり、他の磁性金属板でもよい。鋼板が積層されることにより、渦電流の発生が抑制される。従来、各鋼板は、ロータ13の外面が同一面上となるように配置される。したがって、従来、ステータ12とロータ13との間に形成される隙間(エアギャップとも呼ばれる。)の間隔は、周方向で一定である。エアギャップは、モータ5の大きさ等にもよるが、例えば100数十μmから数百μmである。
【0038】
一方、本実施形態に係るエアギャップは、ロータ13の回転が停止しているとき、ロータ13の上側、すなわち、駆動軸14の軸線方向の一側である、圧縮機構6が位置する側と反対側において、第1バランスウエイト35の設置側と、駆動軸14に対して第1バランスウエイト35の設置側とは反対側は、エアギャップの間隔が異なる。駆動軸14に対して第1バランスウエイト35の設置側とは反対側のエアギャップは、第1バランスウエイト35の設置側に比べて狭い。
【0039】
例えば、
図3及び
図4に示すように、ロータ13の上側に積層されている鋼板13Aは、それ以外の鋼板13Bに比べ、第1バランスウエイト35の設置側とは反対に位置するステータ12の方向に突出するように、ずらして配置される。ここで、鋼板13Aの平面形状と、鋼板13Bの平面形状は、同一である。鋼板13Aのずらし量は、例えばエアギャップの間隔の1/10程度である。なお、
図3は、ロータ13が圧縮機構6側を固定端として振れ回りが生じている様子を模式的に表したものである(以下に示す
図5、
図7、
図9も同様。)。
【0040】
ずらして配置される鋼板13Aの枚数は、例えば増加させる磁気吸引力に依存し、ロータ13の上側において数%から10数%の範囲にある鋼板である。なお、最小枚数は、1枚が想定され、最大枚数は、例えば全ての鋼板のうち1/2から2/3の範囲が想定される。なお、
図3では、鋼板13Aのずらし量は、ずらして配置される鋼板13Aの全てにおいて同じ値である場合について示している。鋼板13Aのずらし量は、この例に限定されず、上側に行くにつれて、ずらし量を段階的に又は滑らかに増やすなど、図示した例に限定されない。
【0041】
ロータ13の上側に積層されている鋼板13Aがずらして配置されることによって、ロータ13の回転が停止しているとき、駆動軸14に対して第1バランスウエイト35の設置側とは反対側のエアギャップは、第1バランスウエイト35の設置側に比べて狭い。その結果、ロータ13の鋼板13Aが第1バランスウエイト35と反対側に突出していることから、モータ5のロータ13が回転するとき、突出部分以外の部分よりも大きい磁気吸引力がステータ12側に発生する。すなわち、第1バランスウエイト35によって遠心力が作用するところ、上述したとおり鋼板13Aがずれて配置されていることによって、駆動軸14の曲げを緩和する方向、すなわち駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35とは反対の方向に磁気吸引力が発生し、駆動軸14の曲げを緩和できる。
【0042】
その結果、駆動軸14が固有値で共振する場合であっても、鋼板がずらして配置されない場合に比べ、駆動軸14の曲げ量を低減でき、曲げ固有値に起因した振動によって発生する騒音を低減することができる。
【0043】
ロータ13の鋼板13は、鋼板13Aの突出部分を考慮して、駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35側の重量が低減されてもよい。
図5及び
図6には、鋼板13Aそれぞれに貫通孔40が形成されることによって、重量が低減される例が示されている。
【0044】
鋼板13Aをずらして配置している場合、磁気吸引力を高めることが可能となるが、鋼板13Aがずらされていない場合に比べ、第1ローラ24及び第2ローラ25にかかる遠心力とのバランスが悪化する可能性がある。なお、突出部分の重量は、第1バランスウエイト35の重量に比べて少ないため、バランスが悪化する割合は、それほど大きくないと見積もられる。
【0045】
図5及び
図6に示すように、貫通孔40が形成されることで、ロータ13の上方にかかる遠心力と、第1ローラ24及び第2ローラ25の回転によって生じる第1ローラ24及び第2ローラ25にかかる遠心力とのバランスをとることができる。
【0046】
なお、
図5及び
図6では、第1バランスウエイト35と反対側に位置するステータ12の方向に突出している鋼板13Aの全てに貫通孔40が設けられる場合について示しているが、本発明はこの例に限定されない。すなわち、鋼板13Aの一部に貫通孔40を設置してもよい。また、鋼板13Aに貫通孔40を設けるのではなく、鋼板13Aの突出部分を考慮して、第1バランスウエイト35の重量そのものを低減してもよい。
【0047】
以上、本発明の第1実施形態に係る圧縮機について説明したが、本発明は上述した実施形態の構成に限定されない。
例えば、上述した実施形態では、第1バランスウエイト35の遠心力によって生じる曲げを軽減するため、ロータ13の上側において、エアギャップの間隔を狭くする例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0048】
例えば、
図7及び
図8に示すように、ロータ13の下側に積層されている鋼板13Cが、それ以外の中間部分の鋼板13Bに比べ、第2バランスウエイト36の設置側とは反対のステータ12側に突出するように、ずらして配置されてもよい。これにより、ロータ13の回転が停止しているとき、ロータ13の下側、すなわち、駆動軸14の軸線方向の他側である、圧縮機構6が位置する側において、駆動軸14に対して第2バランスウエイト36の設置側とは反対側のエアギャップは、第2バランスウエイト36の設置側に比べて狭い。
【0049】
その結果、ロータ13の鋼板13Cが第2バランスウエイト36と反対側に突出していることから、モータ5のロータ13が回転するとき、突出部分以外の部分よりも大きい磁気吸引力がステータ12側に発生する。すなわち、第2バランスウエイト36によって遠心力が働き、駆動軸14に曲げが生じるところ、上述したとおり鋼板13Cがずれて配置されていることによって、駆動軸14の曲げを緩和する方向、すなわち駆動軸14の軸線に対し第2バランスウエイト36とは反対の半径方向に磁気吸引力が発生し、駆動軸14の曲げを緩和できる。
【0050】
以上より、ロータ13の鋼板13Cがずらして配置されることによって、駆動軸14が固有値で共振する場合、駆動軸14の曲げ量を低減でき、ロータ13の鋼板13Aと合わせてずらせば、曲げ固有値に起因した振動によって発生する騒音を更に低減することができる。なお、駆動軸14の曲げ量が、ロータ13の下側のほうが大きければ、ロータ13の鋼板13Cのみをずらして配置してもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、ロータ13の上側に積層されている鋼板13Aは、それ以外の鋼板に比べ、第1バランスウエイト35の設置側とは反対側に突出するように、ずらして配置されるが、本発明は、この例に限定されない。すなわち、ロータ13の回転が停止しているとき、駆動軸14に対して第1バランスウエイト35の設置側とは反対側のエアギャップを、第1バランスウエイト35の設置側に比べて、狭くすればよく、例えば、
図9及び
図10に示すように、鋼板13Aの外周部分に別途コーティングを施すことで、突出部分41を設けてもよい。この場合、突出部分41は、銀ペースト等によって形成される。または、突出部分41は、鋼板13Aの平面形状そのものを他の部分の鋼板13Bの形状と異なるようにして形成してもよい。
【0052】
突出部分41は、積層された鋼板13Aのうち、駆動軸14に対して第1バランスウエイト35の設置側とは反対側に形成される。これにより、ロータ13の回転が停止しているとき、駆動軸14に対して第1バランスウエイト35の設置側とは反対側のエアギャップは、第1バランスウエイト35の設置側に比べて狭い。その結果、ロータ13の鋼板13Aの突出部分41が第1バランスウエイト35と反対側に突出していることから、モータ5のロータ13が回転するとき、突出部分41以外の部分よりも大きい磁気吸引力がステータ12側に発生する。すなわち、第1バランスウエイト35によって遠心力が働き、駆動軸14に曲げが生じるところ、上述したとおり突出部分41が形成されていることによって、駆動軸14の曲げを緩和する方向、すなわち駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35とは反対に位置するステータ12側の方向に磁気吸引力が発生し、駆動軸14の曲げを緩和できる。
【0053】
その結果、駆動軸14が固有値で共振する場合であっても、駆動軸14の曲げ量を低減でき、曲げ固有値に起因した振動によって発生する騒音を低減することができる。
【0054】
[
参考実施形態]
次に、本発明の
参考実施形態に係る圧縮機について説明する。本実施形態に係る圧縮機は、上述した第1実施形態に係る圧縮機と比較して、ロータ13が異なるため、以下では、本実施形態に係るロータ13について説明する。ロータ13以外の構成要素は、第1実施形態と重複するため詳細な説明を省略する。
【0055】
ロータ13は、複数の鋼板が互いに絶縁して駆動軸14の軸方向に積層されている。鋼板が積層されることにより、渦電流の発生が抑制される。本実施形態に係る各鋼板は、ロータ13の外面が同一面上となるように配置される。したがって、ステータ12とロータ13との間に形成される隙間(エアギャップ)の間隔は、周方向で一定である。
【0056】
ロータ13の内部には、永久磁石42,50が埋め込まれている。なお、
図11には、永久磁石42,50の配置例を示すが、ロータ13の内部に配置される永久磁石の大きさや位置、向きなどは、
図11に示す配置例に限定されない。
【0057】
永久磁石42,50は、鋼板に形成された開口部内に配置される。ロータ13の上側に積層されている鋼板13Dでは、永久磁石42は、それ以外の鋼板13Eに設置される永久磁石50に比べ、第1バランスウエイト35の設置側とは反対に位置するステータ12の方向にずらして配置される。ここで、鋼板13Dの平面形状と、鋼板13Eの平面形状は、同一である。
【0058】
すなわち、ロータ13の上側以外に設けられる複数の永久磁石50は、従来のロータにおける永久磁石の配置と同様に、駆動軸14の軸線を中心にして点対称に設けられる。これに対し、ロータ13の上側に設けられる複数の永久磁石42は、上述したとおり、第1バランスウエイト35の設置側とは反対側にずらして配置されており、永久磁石42の点対称の中心も、駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35の設置側とは反対側にずれている。
【0059】
これにより、モータ5のロータ13が回転するとき、ロータ13の上側では、ロータ13の上側以外よりも大きい磁気吸引力がステータ12側に発生する。すなわち、第1バランスウエイト35によって遠心力が働き、駆動軸14に曲げが生じるところ、上述したとおり永久磁石42がずれて配置されていることによって、駆動軸14の曲げを緩和する方向、すなわち駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35とは反対の半径方向に磁気吸引力が発生し、駆動軸14の曲げを緩和できる。
【0060】
その結果、駆動軸14が固有値で共振する場合であっても、駆動軸14の曲げ量を低減でき、曲げ固有値に起因した振動によって発生する騒音を低減することができる。
【0061】
以上、本発明の
参考実施形態に係る圧縮機について、第1バランスウエイト35の遠心力によって生じる曲げを軽減するため、ロータ13の上側において、永久磁石42の設置位置をずらす例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0062】
すなわち、ロータ13の上側において、駆動軸14の曲げを緩和する方向、すなわち、駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35とは反対の半径方向に磁気吸引力が増加すればよい。例えば、駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35とは反対に配置される永久磁石の磁力が、駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35側に配置される永久磁石よりも強い。
【0063】
この場合も、駆動軸14の曲げを緩和する方向、すなわち駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35とは反対の半径方向に磁気吸引力が発生し、駆動軸14の曲げを緩和できる。
【0064】
また、上述した実施形態では、ロータ13の上側に配置される永久磁石42が、駆動軸14の軸線に対し第1バランスウエイト35の反対の半径方向に磁気吸引力が増加するように配置される例について説明したが、ロータ13の下側に配置される永久磁石についても同様に配置してもよい。この場合、ロータ13の下側に配置される永久磁石は、駆動軸14の軸線に対し第2バランスウエイト36の反対の半径方向に磁気吸引力が増加するように配置される。
【0065】
さらに、上述した第1及び
参考実施形態にかかる圧縮機では、多気筒ロータリ圧縮機の場合について説明したが、本発明は、この形式の圧縮機に限定されない。たとえば、ロータリ式の圧縮機構が一つのみ設けられるロータリ圧縮機にも適用でき、一又は複数のスクロール式の圧縮機構が設けられるスクロール圧縮機等にも適用できる。