【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
ドナー元素XとしてMoを用いた。七モリブデン酸六アンモニウム四水和物をイオン交換水に溶解させ、分散剤を添加した水溶液に、BaCO
3(30m
2/g)及びTiO
2(50m
2/g)をBa/Tiモル比=1となるよう加えてスラリーとし、ビーズミルを使用して混合・分散した。
【0056】
なお、当該スラリーにおいて、チタン酸バリウム100molとしたとき、Mo添加量はMoO
3換算で0.05molとした。前記スラリーを乾燥し水を除去して、900℃で仮焼を行い、SEM写真から求めた平均粒子径が80nmのMo含有チタン酸バリウムを合成した。
【0057】
次に、Mo含有チタン酸バリウム100molに対し、Ho
2O
3=0.5mol、MnCO
3=0.1mol、V
2O
5=0.1mol、SiO
2=1.0molの比率で添加材を添加し、またBaCO
3またはTiO
2を添加してBa/Tiモル比(Mo固溶チタン酸バリウム及び添加されるBaCO
3やTiO
2の合計におけるBaとTiとのモル比)が1.000となるようにし、溶剤を加えてスラリーとした。そのスラリーにPVBバインダーを加え、PETフィルム上に1.0μmの厚みでグリーンシートを塗工した。
【0058】
続いて、内部電極としてNi導電ペーストを前記グリーンシート上に印刷し、これを用いて1005形状の400層の積層セラミックコンデンサを作製した。脱バインダ処理を行った後、焼成については、1200℃還元雰囲気で0.5時間焼成、N
2雰囲気下800℃で再酸化処理を行った。焼成後の誘電体層の層厚は0.8μm、内部電極層の厚みは0.9μm、積層セラミックコンデンサの容量は約10μFであった。
【0059】
また、積層セラミックコンデンサの誘電体層中に含まれるMo量をICPにて測定し、チタン酸バリウム100molとしたとき、MoO
3換算でMo量は0.05molである事を確認した。
【0060】
また、誘電体セラミック各部位におけるMoの濃度分布については、TEM-EDS(日本電子(株)製TEM JEM-2100F、EDS検出器 日本電子(株)製JED-2300T)により測定を実施した。観察用の試料は、再酸化処理後の積層セラミックコンデンサを機械研磨(内部電極層と直角な面で研磨した)およびイオンミリングによって薄片化して作製し、試料厚みは0.05μmとした。
【0061】
EDS測定の領域は、Ni内部電極層で挟まれた誘電体セラミック部分で、
図2に模式図を示すように、セラミック粒子の最大直径に沿って、該直径の中央部分、隣接セラミック粒子との粒界部分(隣り合う粒子との界面を含む)、及び中央部分と粒界部分との中間部分の3箇所について、それぞれ20nm×20nmの範囲で測定を行った。
【0062】
EDSにより、17.5keV付近のMoKαピークと、4.5keVのTiKα+BaLαのピークの面積から、強度比 MoKα/(TiKα+BaLα) を求めた。これを10個のセラミック粒子の各3か所について行った。得られた強度比(面積)の結果の一つを示すと、以下の通りである。
粒界=0.67×10
-4,
中間部分=0.67×10
-4,
中央部分=0.68×10
-4。
【0063】
前記の通り強度比の測定を10個のセラミック粒子の各3か所について行い、それぞれの粒子について、3つの強度比の平均値(Ave)を求めたときの、各箇所でのピーク強度比(Pi)の前記平均値(Ave)からのバラツキ(下式で定義される)が、全て±5%の範囲にあるかを調べた。結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、「Mo濃度ばらつき」の列では、求められたバラツキの最大値が示されている。また、平均値及びMo濃度ばらつきの値はそれぞれ四捨五入した値が示されているが、Mo濃度ばらつきの計算においては、四捨五入しない平均値の値を用いた。
【0064】
【数2】
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示した通り、ピーク強度比の平均値からのバラツキは10粒子でほぼ一致し、全て±5%以内であった。予めMo化合物、BaCO
3及びTiO
2を混合し反応させた事で、誘電体セラミックにおいて、粒子中央部、粒界部及びそれらの中間部でのMo濃度分布が±5%以内になったと推察される。
【0067】
また、TEM観察から求めた誘電体層におけるセラミック粒子の平均粒子径は150nmであった。
【0068】
次に、作製した積層セラミックコンデンサの高温加速寿命(125℃、10V/μm直流電界下にて絶縁抵抗率(ρ)が1×1010Ωcmになるまでの時間)を測定したところ、36000秒であった。また、25℃、1kHzでのDCバイアス特性(0バイアス時の容量に対する3V/μmの容量の容量減少率)は50%であった。
【0069】
以下に説明する実施例2〜10並びに比較例1及び2を含めて、測定結果の一覧(原料チタン酸バリウム(X含有チタン酸バリウムも含む)の平均粒子径、X成分の種類及び量、誘電体層におけるセラミック粒子の平均粒子径、誘電体層の厚み、X成分の濃度バラツキが±5%以内の粒子個数、高温加速寿命試験結果、DC-バイアス特性)を下記表2に示した。
【0070】
[実施例2]
Mo材料として比表面積5m
2/gのMoO
3を用い、Mo添加量をMoO
3換算で0.2molとした以外は実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを作製した。
【0071】
誘電体層におけるセラミック粒子10粒子について各3か所でピーク強度比を測定したところ、すべての粒子でMo濃度の平均値からのバラツキは±5%以内であった。また、高温加速寿命試験の結果は62100秒となり、DCバイアスの容量減少率は50%であった。
【0072】
[実施例3]
Mo添加量をMoO
3換算で0.3molとした以外は実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを作製した。
【0073】
誘電体層におけるセラミック粒子10粒子について各3か所でピーク強度比を測定したところ、Mo濃度の平均値からのバラツキが±5%以内の粒子は10個であった。また、高温加速寿命試験の結果は65000秒となり、DCバイアスの容量減少率は50%であった。
【0074】
[実施例4]
Mo添加量をMoO
3換算で0.2molとし、950℃で平均粒子径150nmのMo含有チタン酸バリウム粒子を合成し、セラミックコンデンサ焼成温度を1300℃として誘電体セラミック粒子の平均粒子径を800nmとした以外は実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを作製した。
【0075】
誘電体層におけるセラミック粒子10粒子について各3か所でピーク強度比を測定したところ、Mo濃度の平均値からのバラツキが±5%以内の粒子は10個であった。また、高温加速寿命試験の結果は61600秒となり、DCバイアスの容量減少率は65%であった。DCバイアスが65%となったのは、セラミック粒子の平均粒子径が800nmと大きいためと考えられる。
【0076】
[実施例5]
Mo添加量をMoO
3換算で0.2molとし、焼成後誘電体層厚を0.5μm、層数を250層とした以外は実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを作製した。
【0077】
誘電体層におけるセラミック粒子10粒子について各3か所でピーク強度比を測定したところ、Mo濃度の平均値からのバラツキが±5%以内の粒子は10個であった。また、高温加速寿命試験の結果は42000秒となり、DCバイアスの容量減少率は50%であった。
【0078】
[実施例6]
分散剤を添加した水溶液に、BaCO
3(比表面積50m
2/g)及びTiO
2(300m
2/g)をBa/Tiモル比=1となるよう加えてスラリーとし、ビーズミルを使用して混合・分散した。前記スラリーを乾燥し水を除去して、890℃で仮焼を行い、SEM写真から求めた平均粒子径が50nmのチタン酸バリウムを合成した。
【0079】
当該チタン酸バリウムを用いて、チタン酸バリウム100molに対し、MoO
3=0.2molの比率でMoO
3を加え、895℃で熱処理し、平均粒子径80nmまで粒成長させた。このチタン酸バリウム100molに対し、添加材をそれぞれ、Ho
2O
3=0.5mol、MnCO
3=0.1mol、V
2O
5=0.1mol、SiO
2=1.0molの比率で添加し、またBaCO
3またはTiO
2を添加してBa/Tiモル比(Mo固溶チタン酸バリウム及び添加されるBaCO
3やTiO
2の合計におけるBaとTiのモル比)が1.000となるようにし、溶剤を加えてスラリーとし、以降は実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを作製した。
【0080】
なお、焼成温度を1230℃としたため、誘電体セラミック粒子の平均粒子径は160nmであった。Mo濃度の平均値からのバラツキが±5%以内になった粒子は8個であった。誘電体セラミック粒子より十分小さいチタン酸バリウム粒子(誘電体セラミック粒子の体積平均値/原料チタン酸バリウム粒子体積の平均値=8倍以上)を用いたことで、誘電体セラミック粒子中の各部位のMo量が均一になった。
【0081】
また、高温加速寿命試験の結果は62100秒となり、DCバイアスの容量減少率は55%であった。
【0082】
[実施例7、8、9、10]
X成分として、Ta、Nb、W、Mo+Taを用いて、X量をチタン酸バリウム100molとしたとき0.2molとした以外は実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した。なお、X成分の原材料には、比表面積が5m
2/g以上の酸化物を用いた。
【0083】
誘電体層におけるセラミック粒子10粒子について各3か所でピーク強度比を測定したところ、成分Xの濃度の平均値からのバラツキは、実施例7、8、9ではすべて±5%以内となり、実施例10では、成分Xの濃度の平均値からのバラツキが5%以内となったのは9個であった。高温加速寿命試験の結果とバイアス特性は表2の通り良好であった。
【0084】
[比較例1]
Moを添加しない以外は実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを作製した。
高温加速寿命試験の結果は1500秒となり、DCバイアスの容量減少率は50%であった。Moを添加しなかったので、バイアス特性は比較的良好であったが、寿命値が低い値となった。
【0085】
[比較例2]
平均粒子径80nmのチタン酸バリウムを用いて、チタン酸バリウム100molに対し、MoO
3=0.2mol、Ho
2O
3=0.5mol、MnCO
3=0.1mol、V
2O
5=0.1mol、SiO
2=1.0molを添加し、またBaCO
3またはTiO
2を添加してBa/Tiモル比(Mo固溶チタン酸バリウム及び添加されるBaCO
3やTiO
2の合計におけるBaとTiのモル比)が1.000となるようにし、溶剤を加えてスラリーとした。以降は実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した。
【0086】
誘電体層におけるセラミック粒子の平均粒子径は150nmであり、Mo濃度の平均値からのバラツキが±5%以内の粒子はなかった。誘電体セラミック粒子の体積の平均値が、原料に用いたチタン酸バリウム粒子の体積に比べ約7倍であったため、誘電体セラミック粒子中の各部位のMo量が均一にならなかった。
【0087】
また、高温加速寿命試験の結果は12000秒となり、Moを添加しない場合に比べれば長寿命となったが、Mo存在量が各部位で均一ではないため、実施例に比べ寿命が短く、DCバイアスの容量減少率も72%となり悪化した。
【0088】
以上の結果を下記表2にまとめた。
【0089】
【表2】