特許第6502097号(P6502097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6502097光ファイバー温度計、地盤改良体の品質管理方法、及び品質管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502097
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】光ファイバー温度計、地盤改良体の品質管理方法、及び品質管理装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20060101AFI20190408BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   G01K11/32 A
   E02D3/12 101
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-2811(P2015-2811)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-128752(P2016-128752A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】手塚 広明
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】川西 敦士
(72)【発明者】
【氏名】太田 光貴
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−226250(JP,A)
【文献】 特開2001−221664(JP,A)
【文献】 実開平05−033039(JP,U)
【文献】 特開平04−184229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/32
G01D 5/26−5/38
G01D 21/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体に光ファイバーケーブルを巻き付けて構成される光ファイバー温度計であって、
高い剛性を具備するステンレス製管体に前記光ファイバーケーブルが巻き付けられていて、
そのステンレス製管体に巻き付けられた光ファイバーケーブルの外周の少なくとも一部に、低い熱伝導率を具備するFRP製被膜が形成されており、前記ステンレス製管体の下端部が略円錐形状部となっていることを特徴とする光ファイバー温度計。
【請求項2】
地盤に薬液を注入して造成する地盤改良体の品質管理方法であって、
地盤改良体を造成する地盤に、請求項1に記載の前記ステンレス製管体に巻き付けられた前記光ファイバーケーブルの外周の少なくとも一部に前記FRP製被膜が形成されてなる光ファイバー温度計を挿入しておき、
地盤改良体の造成中に、その地盤改良体が造成される地盤の温度を前記光ファイバー温度計により連続的に測定することによって、地盤改良体の径に代表される形状を測定して品質管理することを特徴とする地盤改良体の品質管理方法。
【請求項3】
地盤に薬液を注入して造成する地盤改良体の品質管理装置であって、
地盤改良体を造成する地盤に挿入され、請求項1に記載の前記ステンレス製管体に巻き付けられた前記光ファイバーケーブルの外周の少なくとも一部に前記FRP製被膜が形成されてなる光ファイバー温度計と、
前記薬液の注入による地盤改良体の造成中に、その地盤改良体が造成される地盤の温度を前記光ファイバー温度計により連続的に測定することによって、地盤改良体の径に代表される形状を測定して品質管理する管理装置と、を備えることを特徴とする地盤改良体の品質管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー温度計と、その光ファイバー温度計を用いて行う、薬液注入工法で造成する地盤改良体の品質管理方法、及び品質管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、地盤改良体の造成中にリアルタイムで地盤改良体の径に代表される形状を確認し、地盤改良体の品質を管理するための方法、及び測定ロッドが提案される。
その方法は、地盤に薬液を注入して造成する地盤改良体の径に代表される形状の測定において、地盤改良体を造成する地盤に、温度を測定する光ファイバー温度計を挿入し、地盤改良体の造成中に、その地盤改良体が造成される地盤の温度を光ファイバー温度計により連続的に測定することによって、地盤改良体の径に代表される形状を測定して品質管理するものである。
また、測定ロッドは、管体に光ファイバーケーブルを巻き付けることで、周囲の地盤の温度を測定する光ファイバー温度計を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−226250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地盤改良体の品質管理の頻度として、従来は3箇所程度であり、全体の品質の把握までは実施できなかつた。
その理由として、事後の改良体コア採取や光ファイバー温度計の事前確認方法が一度きりの方法であるため、頻度を増やすとコストが高かった。
また、事前確認方法の場合、確認当日より数日前に光ファイバー温度計を埋設しておき、すなわち、事前に光ファイバー温度計を設置する必要があつたため、頻度を増やした場合、施工日数を要していた。
【0005】
そして、管体に巻き付けられた光ファイバーケーブルを保護するものとしては、管体と同程度の剛性を有した材料を使うことが考えられるが、それが鉄製の場合、熱伝導率が高く、微小な温度変化を把握することが困難である。
また、従来の光ファイバー温度計は、現場ごとに使用後に廃棄していた。
【0006】
本発明の課題は、光ファイバー温度計において、設置時間を短縮して品質管理の頻度を増やすことを可能とし、繰返し反復使用を可能としてコストを安価にするとともに、温度差の低い変化も把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
管体に光ファイバーケーブルを巻き付けて構成される光ファイバー温度計であって、
高い剛性を具備するステンレス製管体に前記光ファイバーケーブルが巻き付けられていて、
そのステンレス製管体に巻き付けられた光ファイバーケーブルの外周の少なくとも一部に、低い熱伝導率を具備するFRP製被膜が形成されており、前記ステンレス製管体の下端部が略円錐形状部となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、
地盤に薬液を注入して造成する地盤改良体の品質管理方法であって、
地盤改良体を造成する地盤に、請求項1に記載の前記ステンレス製管体に巻き付けられた前記光ファイバーケーブルの外周の少なくとも一部に前記FRP製被膜が形成されてなる光ファイバー温度計を挿入しておき、
地盤改良体の造成中に、その地盤改良体が造成される地盤の温度を前記光ファイバー温度計により連続的に測定することによって、地盤改良体の径に代表される形状を測定して品質管理することを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、
地盤に薬液を注入して造成する地盤改良体の品質管理装置であって、
地盤改良体を造成する地盤に挿入され、請求項1に記載の前記ステンレス製管体に巻き付けられた前記光ファイバーケーブルの外周の少なくとも一部に前記FRP製被膜が形成されてなる光ファイバー温度計と、
前記薬液の注入による地盤改良体の造成中に、その地盤改良体が造成される地盤の温度を前記光ファイバー温度計により連続的に測定することによって、地盤改良体の径に代表される形状を測定して品質管理する管理装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設置時間を短縮して品質管理の頻度を増やすことができ、繰返し反復使用できてコストを安価にすることができるとともに、温度差の低い変化も把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した光ファイバー温度計の一実施形態の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の光ファイバー温度計を用いて行う薬液注入工法で造成する地盤改良体の品質管理装置の一実施形態の構成を示す概略縦断面図である。
図3】実施形態2の光ファイバー温度計の斜視図(a)と、その矢印B部の被膜部分のみを示す拡大側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した光ファイバー温度計1の一実施形態の構成を示すもので、2は高い剛性を具備する材料による管体(ステンレス製管体)、3は光ファイバーケーブル、4は低い熱伝導率を具備する材料による被膜(FRP製被膜)、5はPT温度計、6はセンサケーブルである。
【0015】
図示のように、光ファイバー温度計1は、高い剛性を具備する材料であるステンレス製の管体(以下、ステンレス製管体と呼ぶ)2に部分的に、光ファイバーケーブル3を隙間なく密に巻き付けて、そのステンレス製管体2に巻き付けた光ファイバーケーブル3の外周を部分的に、低い熱伝導率を具備する材料であるFRP製の被膜(以下、FRP製被膜と呼ぶ)4で被覆して構成されている。
【0016】
図示例では、露出した光ファイバーケーブル3の外周の一部に、PT(白金抵抗体)温度計5が接着されており、このPT温度計5にはセンサケーブル6が接続されている。
なお、光ファイバー温度計1(光ファイバーケーブル3)及びセンサケーブル6は、図2に示す薬液注入施工管理装置10に接続される。
【0017】
このように、光ファイバーケーブル3を巻き付ける管体をステンレス製管体2とすることで、高剛性となる。
しかも、その管体2に光ファイバーケーブル3を巻き付けることで、測定ピッチが細かくなる。
さらに、その管体2に巻き付けた光ファイバーケーブル3をFRP製被膜4で被覆することで、低温度差でも感知が可能となる。
【0018】
図2は本発明の光ファイバー温度計1を用いて行う薬液注入工法で造成する地盤改良体の品質管理装置の一実施形態の構成を示すもので、10は薬液注入施工管理装置、11は薬液注入ロッドである。
【0019】
すなわち、地盤に挿入した薬液注入ロッド11からは、矢印で示したように薬液が注入されて、地盤改良体が造成される。
そして、図示例では、4本の光ファイバー温度計1A・1B・1C・1Dが互いに離間して配置される。
【0020】
以上において、薬液注入により造成される地盤改良体は、破線で示される設計改良位置L0に対し実線で示される実測改良位置L1が、注入する薬液の比重が水の比重より若干高いので、固化時間が遅い場合、図示のように、設計改良位置L0より重力で下がることがある。
【0021】
そして、薬液注入施工管理装置10において、4本の光ファイバー温度計1A・1B・1C・1Dにより、各々の温度変化を感知する長さをそれぞれ把握する。
これにより、地盤改良体の3次元的な形状を把握できる。
【0022】
このように、4本の光ファイバー温度計1A・1B・1C・1Dにより、各々の温度変化を感知する長さをそれぞれ把握することで、地盤改良体の3次元的な形状を描くことが可能となる。
加えて、温度変化を平面的にも複数箇所測定することで、さらに精度の高い改良体形状を描くことが可能となる。
【0023】
以上、実施形態の光ファイバー温度計1によれば、光ファイバーケーブル3が巻き付けられる管体を高い剛性を具備するステンレス製管体2に変えることで、地盤を予め掘削して設置するのではなく、地盤を乱さずに光ファイバー温度計1をステンレス製管体2の具備する高い剛性により貫入して設置することができる。
従って、光ファイバー温度計の設置時間を短縮して、品質管理の頻度を増やすことができる。
また、光ファイバーケーブル3がステンレス製管体2に巻き付けられているので、光ファイバー温度計1を繰返し使用できることから、測定材料に係るコストを安価にすることができる。
【0024】
そして、ステンレス製管体2に巻き付けた光ファイバーケーブル3の外周に、低い熱伝導率を具備するFRP製被膜4を使用することで、温度差の変化が約2度と少ない薬液注入工法において、その温度差の低い微小な温度変化を把握することができる。
さらに、FRP製被膜4が比較的高い剛性を有していることからも、地盤に対して繰返して貫入することができる。
【0025】
(実施形態2)
図3(a)は実施形態2の光ファイバー温度計1を示すもので、図示のように、ステンレス製管体2の下端部が略円錐形状部2aに形成されている。
【0026】
このように、ステンレス製管体2の下端部を略円錐形状部2aとすることで、地盤への貫入が行いやすくなる。
【0027】
そして、ステンレス製管体2の全長にわたり光ファイバーケーブル3を隙間なく密に巻き付けて、その光ファイバーケーブル3の外周を部分的にFRP製被膜4で被覆している。そのFRP製被膜4部分を図3(b)に拡大して示す。
【0028】
また、その露出した光ファイバーケーブル3の外周の一部に、PT温度計5を貼り付けテープ7で貼り付けている。
さらに、FRP製被膜4の一部にも、PT温度計5を貼り付けテープ7で貼り付けている。
【0029】
このように、露出した光ファイバーケーブル3の外周の一部にPT温度計5を設けるとともに、光ファイバーケーブル3の外周を部分的に被覆したFRP製被膜4の一部にPT温度計5を設けてもよい。
【0030】
(変形例)
以上の実施形態においては、ステンレス製管体としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の高剛性材料であってもよい。
また、実施形態では、FRP製被膜としたが、FRPに限らず、他の低い熱伝導率を具備する樹脂材料であってもよい。
さらに、高い剛性を具備する材料による管体に巻き付けた光ファイバーケーブルを部分的に低い熱伝導率を具備する材料による被膜で被覆したが、全体を被膜で被覆してもよい。
また、地盤改良体の品質管理に用いる光ファイバー温度計の数は任意であり、その他、具体的な細部構造や手法等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 光ファイバー温度計
2 高い剛性を具備する材料による管体(ステンレス製管体)
3 光ファイバーケーブル
4 低い熱伝導率を具備する材料による被膜(FRP製被膜)
5 PT温度計
6 センサケーブル
7 貼り付けテープ
10 管理装置
11 薬液注入ロッド
図1
図2
図3