(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
〔粘接着組成物〕
本実施形態の粘接着組成物は、下記成分(a)を10質量%以上50%質量%以下、成分(b)を5質量%以上40質量%以下、および、成分(c)を10質量%以上50質量%以下含む粘接着組成物であって、成分(a)中の該ビニル芳香族単量体単位の含有量が10質量%以上35質量%以下であり、かつ、成分(a)中の共役ジエン単量体単位に基づく二重結合の水素添加率が10mol%以上である。
成分(a):ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する水添ブロック共重合体(a)
成分(b):ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリブタジエンおよびポリイソプレンから選ばれる1種以上の数平均分子量が300〜60,000の重合体
成分(c):粘着付与樹脂
【0010】
〔成分(a):水添ブロック共重合体(a)〕
ここで、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」といい、重合体の材料として記載する場合は「単位」を省略し、単に「〜単量体」と記載する。
また、本明細書において、「主体とする」とは、共重合体又は重合体ブロック中、所定の単量体単位の含有量が、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、よりさらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%であることをいう。
【0011】
(水添ブロック共重合体(a)の構造)
本実施形態に用いる水添ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAを含むことが好ましい。
本実施形態で用いる水添ブロック共重合体(a)の水素添加前の構造としては、特に限定されないが、下記の式(i)〜(vi)で表される構造が好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
(A−B)
n+1 ・・・(i)
B−(A−B)
n+1 ・・・(ii)
A−(B−A)
n ・・・(iii)
A−(B−A)
n−X ・・・(iv)
[(A−B)
k]
m−X ・・・(v)
[(A−B)
k−A]
m−X ・・・(vi)
【0012】
上記式(i)〜(vi)中、Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAを表し、Bは、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックBを表し、Xは、カップリング剤の残基又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表し、mは2〜6の整数であり、n及びkはそれぞれ独立して1〜4の整数である。(i)〜(vi)のm、n及びkの値は同じであっても異なっていてもよい。
ブロック共重合体中に重合体ブロックA及びBが複数存在している場合には、各々の分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、各ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位との共重合体ブロックが存在してもよい。
【0013】
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA中や共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB中のビニル芳香族単量体単位の分布は、ビニル芳香族単量体単位の含有量が60質量%以上であれば特に限定されず、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。また、重合体ブロック中に、結晶部が存在していてもよい。ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA中には、ビニル芳香族単量体単位の含有量の異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
【0014】
上記式(iv)〜(vi)中、Xは、カップリング剤の残基又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表す。ブロックの分子量制御の点で、Xはカップリングの残基であることが好ましい。
カップリング剤は、特に限定されないが、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化合物、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等が挙げられる。水添ブロック共重合体(a)は、Xがカップリング剤の残基であるカップリング体と、Xを有しないブロック共重合体との混合物であってもよい。
粘接着組成物の製造時のブロック共重合体の耐熱老化性の点で、Xが、アルコキシシラン化合物やエポキシ化合物の残基であることが好ましく、エポキシ化合物の残基であることがより好ましい。
アルコキシシラン化合物やエポキシ化合物中のアルコキシシリル基やエポキシ基の数は、粘接着組成物の製造時の高い耐熱老化性、粘接着シート製造性、低い接着昂進の点で、1分子当たり2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、3〜4個がさらに好ましい。 各重合体ブロックの端部には異なる種類の短いブロックが存在してもよいが、その大きさは、隣接する重合体ブロックの分子量の40質量%以下であることが好ましい。
【0015】
本実施形態で用いる水添ブロック共重合体(a)は、粘接着組成物の湿度60%下での高い皮膚接着性及び剥離時の皮膚への少ない糊残り性、並びに、高い薬の包容性の点で、ビニル芳香族単量体単位を主体とする2つ以上の重合体ブロックAと、共役ジエン単量体単位を主体とする1つ以上の重合体ブロックBを含有する水添ブロック共重合体(a−1)を含有し、且つ、ビニル芳香族単量体単位を主体とする1つの重合体ブロックAと、共役ジエン単量体単位を主体とする1つの重合体ブロックBを含有する水添ブロック共重合体(a−2)を含有することが好ましい。
このとき、(a−1)と(a−2)の重量平均分子量は、(a−1)の重量平均分子量>(a−2)の重量平均分子量で、あることが好ましい。
【0016】
水添ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は5万以上、40万以下が好ましく、10万以上、35万以内がより好ましく、15万以上30万以内が最も好ましい。
水添ブロック共重合体(a−1)の重量平均分子量は10万以上45万以下が好ましく、15万以上35万以下がより好ましく、18万以上30万以下が最も好ましい。
水添ブロック共重合体(a−2)の重量平均分子量は5万以上23万以下が好ましく、7万以上18万以下がより好ましく、9万以上15万以下が最も好ましい。
重量平均分子量は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0017】
本実施形態に用いる水添ブロック共重合体(a−2)の水添ブロック共重合体(a)の総質量における割合は、粘接着組成物の湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、高い薬の包容性の点で、80質量%以下が好ましい。70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a−2)の水添ブロック共重合体(a)の総質量における割合は、粘接着組成物の製造時の高い耐熱老化性、湿度60%下での高い皮膚接着性の点で、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が最も好ましい。
【0018】
同様に本実施形態に用いる水添ブロック共重合体(a−1)の水添ブロック共重合体(a)の総質量における割合は、粘接着組成物の湿度85%下での高い皮膚接着性、湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、湿度85%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、20質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a−1)の水添ブロック共重合体(a)の総質量における割合は、粘接着組成物の製造時の高い耐熱老化性、組成物の湿度60%下での高い皮膚接着性の点で、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下が最も好ましい。
【0019】
本実施形態に用いる水添ブロック共重合体(a)の粘接着組成物における割合は、粘接着組成物の湿度85%下での高い皮膚接着性、湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、湿度85%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、10質量%以上が必須である。15質量%以上が好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
また、本実施形態に用いる水添ブロック共重合体(a)の粘接着組成物における割合は、組成物の湿度60%下での高い皮膚接着性、湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、湿度85%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、50質量%以下が必須である。40質量%が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、粘接着組成物の高い保持力、湿度60%下での剥離時の低い糊残り性の点で、10質量%以上が必須である。13質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、粘接着剤の湿度60%下での高い皮膚接着力や屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、35質量%以下が必須である。30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下がさらに好ましい。
なお、水添ブロック共重合体(a)が水添ブロック共重合体(a−1)及び水添ブロック共重合体(a−2)の成分等を含む、複数の成分からなるときは、全成分の平均値をもって水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位の含有量とする。
水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0021】
水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAの含有量は、粘接着組成物の高い保持力、湿度60%下での剥離時の低い糊残り性の点で、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAの含有量は、粘接着剤の湿度60%下での高い皮膚接着力や屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、18質量%以下が特に好ましい。
なお、水添ブロック共重合体(a)が水添ブロック共重合体(a−1)及び水添ブロック共重合体(a−2)の成分等を含む、複数の成分からなるときは、全成分の平均値をもって水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックAの含有量とする。
水添ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAの含有量は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0022】
本実施形態で用いる水添ブロック共重合体(a)中の共役ジエン単量体単位に含まれる二重結合の水素添加率は、粘接着組成物の製造時の高い耐熱老化性、屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、水素添加前の共役ジエン単量体単位に基づく全二重結合量に対して、10mol%以上が必須である。20mol%以上が好ましく、30mol%以上がより好ましく、35mol%以上がさらに好ましく、35mol%以上が最も好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a)中の共役ジエン単量体単位に含まれる二重結合の水素添加率は、粘接着組成物の湿度60%下での高い皮膚接着性、湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、高い薬の包容性、湿度85%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性の点で、80mol%以下が好ましい。70mol%以下がより好ましく、60mol%がさらに好ましく、50mol%以下が最も好ましい。
なお、水添ブロック共重合体(a)が水添ブロック共重合体(a−1)及び水添ブロック共重合体(a−2)の成分等を含む、複数の成分からなるときは、全成分の平均値をもって水添ブロック共重合体(a)中の共役ジエン単量体単位に含まれる二重結合の水素添加率とする。
また、本明細書においては、共役ジエン単量体単位は水素添加した後も、共役ジエン単量体単位と称する。
水素添加率は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0023】
水添ブロック共重合体(a)の水素添加前の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量は、湿度60%下での高い皮膚接着性の点で、10mol%以上が好ましい。20mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a)の水素添加前の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量は、粘接着組成物の耐熱老化性、屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、70mol%以下が好ましい。60mol%以下がより好ましく、50mol%以下がさらに好ましい。
ここで、「ビニル含有量」とは、水素添加前の共重合体に1,2−結合、3,4−結合、及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総mol量に対し、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の割合とする。なお、ビニル含有量は、NMRにより測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定できる。共役ジエン単量体単位を主体とするブロック中のビニル含有量の分布は限定されない。
なお、水添ブロック共重合体(a)が水添ブロック共重合体(a−1)及び水添ブロック共重合体(a−2)の成分等を含む、複数の成分からなるときは、全成分の平均値をもって水添ブロック共重合体(a)の水素添加前の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量とする。
【0024】
水添ブロック共重合体(a)のメルトフローレート(MFR、200℃、5kgf)は、粘接着組成物の製造性、湿度60%下での高い皮膚接着力の点で、0.1g/10分以上が好ましい。0.2g/10分以上がより好ましく、0.3g/10分以上がさらに好ましく、0.4g/10分以上が最も好ましい。
また、水添ブロック共重合体(a)のメルトフローレート(MFR、200℃、5kgf)は、粘接着組成物の湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、高い耐変色性の点で、30g/10分以下が好ましい。15g/10分以下がより好ましく、8g/10分以下がさらに好ましく、5g/10分以下が最も好ましい。
【0025】
水添ブロック共重合体(a)は、粘接着組成物の高いタック性、粘着力及び保持力の点で、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。この中でもN基を含有する官能基がより好ましい。さらに、水添ブロック共重合体(a)分子中にN基を2mol以上含有することが好ましく、O基とN基を共に含有することがさらに好ましい。
【0026】
〔水添ブロック共重合体(a)の製造方法〕
本実施形態で用いる水添ブロック共重合体(a)は、例えば、炭化水素溶媒中、リチウム化合物を重合開始剤として、少なくとも共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体を重合させて重合体を得る重合工程、得られた重合体の共役ジエン単量体単位中の二重結合に水素添加する水素添加工程、重合体を含む溶液の溶媒を脱溶剤する脱溶剤工程を順次行い、製造することができる。
【0027】
共役ジエン単量体は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。このなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。また、粘接着組成物の保持力改良の観点から、1,3−ブタジエンがより好ましい。共役ジエン単量体は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ビニル芳香族単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。このなかでも、経済性の点から、スチレンが好ましい。ビニル芳香族単量体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
水添ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでもよく、重合工程においては、ビニル芳香族単量体及び共役ジエン単量体の他、当該単量体と共重合可能な他の単量体を用いることができる。
【0030】
水添ブロック共重合体(a)の製造方法における、重合工程で実施する重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用できる。公知の方法としては、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0031】
(水素添加工程)
水素添加工程は、重合工程で得られたブロック共重合体の共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部に水素添加反応する工程である。水素添加反応に使用される触媒としては、特に限定されないが、例えば、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co、Fe、Cr等の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機Al等の還元剤とを用いるいわゆるチーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物等のいわゆる有機錯触媒、或いはチタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒が挙げられる。このなかでも、経済性、重合体の着色性あるいは接着力の観点で、チタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒系が好ましい。
【0032】
水素添加方法としては、特に限定されないが、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報に記載された方法や、好ましくは特公昭63−4841号公報及び特公昭63−5401号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して水添ブロック共重合体溶液を得ることができる。
水添反応は、特に限定するものではないが、高い水添活性の観点で、上述する重合体の活性末端を失活する工程後に行うことが好ましい。
【0033】
水素添加工程において、ビニル芳香族単量体単位の共役結合が水素添加されてもよい。全ビニル芳香族単量体単位中の共役結合の水素添加率は、好ましくは30mol%以下であり、より好ましくは10mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。また、全ビニル芳香族単量体中の共役結合の水素添加率の下限は、特に限定されないが、0mol%以上が好ましく、1mol%以上が好ましい。全ビニル芳香族単量体中の共役結合の水素添加率が上記範囲内であることにより、保持力や湿度60%下での皮膚への接着性がより向上する傾向にある。
【0034】
水添ブロック共重合体(a)の耐熱老化性やゲル化の抑制の観点で、水添反応後に酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル補捉剤等のフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解剤等のリン系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤が挙げられる。また、両性能を併せ持つ酸化防止剤を使用してもよい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。このなかでも、水添ブロック共重合体(a)の耐熱老化性やゲル化の抑制の観点で、フェノール系酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0035】
〔成分(b):ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリブタジエンおよびポリイソプレンから選ばれ、数平均分子量が300〜60,000である重合体〕
本実施形態の粘接着組成物は、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリブタジエンおよびポリイソプレンから選ばれ、数平均分子量が300〜60,000である重合体を1種以上含む。
ここで、ポリイソブチレンとは、イソブテンを主体とする重合体である。ポリイソブチレンは、イソブテン以外のモノマーが共重合されていてもよい。
ポリブテンとは、ノルマルブテン単独、あるいはノルマルブテンとイソブテン等の他のモノマーとの共重合体である。ポリブテンは、ノルマルブテンとイソブテン以外のモノマーが共重合されていてもよい。
ポリブタジエンおよびポリイソプレンは、それぞれ、ブタジエンやイソプレンを主体とする重合体である。スチレン等の他のモノマーを共重合成分として含んでもよいが、40質量%未満の範囲であることが好ましい。
【0036】
粘接着組成物の常湿(湿度60%)及び高湿(湿度85%)下での高い皮膚接着性及び低い剥離時糊残り性の観点から、成分(b)の重合体の数平均分子量は500以上が好ましい。1,000以上がより好ましい。
また、粘接着組成物の相容性や高い粘接着力の観点から、成分(b)の重合体の数平均分子量は50,000以下が好ましい。40,000以下がより好ましい。
【0037】
成分(b)の粘接着組成物中の含有量は、湿度60%下での高い皮膚接着性、湿度85%下での高い皮膚接着性、高い薬の包容力の点で、粘接着組成物の5質量%以上であることが必須である。10質量%以上がより好ましく、13質量%以上がさらに好ましい。
また、(b)の粘接着組成物中の含有量は、湿度60%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性、湿度85%下での剥離時の皮膚への低い糊残り性の点で、40質量%以下が必須である。35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリブタジエンおよびポリイソプレンの中では、屋外で経時後の低い糊残り性の点で、ポリイソブチレンやポリブテンが好ましい。
【0038】
〔成分(C):粘着付与樹脂〕
本実施形態の粘接着組成物は、粘着付与樹脂を含む。
粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂[ヤスハラケミカル社製YSレジンPX、YSレジンPXN(登録商標);理化ファインテク製ピコライト(登録商標)等]、脂肪族炭化水素樹脂[日本ゼオン社製のクイントンA100、クイントンB170、クイントンK100、クイントンM100、クイントンR100、クイントンC200S(登録商標)等]、ロジン系樹脂[荒川化学工業製エステルガム(登録商標)、播磨化成製ハリエスター(登録商標)、播磨化成製ハリタック(登録商標)]、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
これらの中では、湿度60%下での高い皮膚接着性の点で、テルペン系樹脂や脂肪族系炭化水素樹脂が好ましい。
また、湿度60%下でのより高い皮膚接着性や高い薬の包容力の点で、少なくとも1種の粘着付与樹脂の軟化点は、65℃以上130℃以下の範囲内が好ましい。75℃以上120℃の範囲がより好ましく、85℃以上115℃以下の範囲がさらに好ましい。
【0039】
成分(c)の粘接着組成物中の含有量は、湿度60%下での高い皮膚接着性や高い薬の包容力の点で、10質量%以上である。15質量%以上が好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が最も好ましい。
成分(c)の粘接着組成物中の含有量は、剥離時の皮膚への低い糊残り性、湿度85%下での皮膚への低い糊残り性の点で、50質量%以下である。45質量%以下が好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
〔成分(d):ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレンの重合体から選ばれ、数平均分子量が60,000を超える重合体〕
本実施形態の粘接着組成物の湿度85%下での高い皮膚接着性、剥離時の皮膚への低い糊残り性、湿度85%下での皮膚への低い糊残り性、高い薬の包容力の点で、さらに、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリブタジエンおよびポリイソプレンの重合体から選ばれ、数平均分子量が60,000を超える重合体を1種以上含有することが好ましい。
各重合体の組成の範囲は、成分(b)と同じである。
この中でも屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性の点で、ポリイソブチレンやポリブテンを含有することが好ましい。
粘接着組成物の高い湿度60%下での皮膚接触性と屋外での経時後の剥離時の低い糊残り性との点で、成分(d)としては、ポリイソブチレンおよびポリブテンから選ばれる重合体1種以上と、ポリイソプレンを含有することがより好ましい。
粘接着組成物の湿度85%下での高い皮膚接着性の点で、成分(d)の重合体の数平均分子量は10万以上が好ましい。20万以上がさらに好ましい。
また、粘接着組成物の高い製造性、湿度85%下での高い皮膚接着性の点で、成分(d)の重合体の数平均分子量は100万以下が好ましい。80万以下がより好ましく、60万以下がさらに好ましい。
【0041】
成分(d)の粘接着組成物中の含有量は、湿度60%下での高い皮膚接触性の点で、5質量%以上が好ましい。10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
また、成分(d)の粘接着組成物中の含有量は、湿度60%下での高い皮膚接触性の点で、40質量%以下が好ましい。30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が最も好ましい。
【0042】
〔成分(e):オイル〕
本実施形態の粘接着組成物は、湿度60%下での高い皮膚接着性、高い薬の包容力の点で、オイルを含有しても良い。オイルの含有量は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。また、湿度60%下での高い皮膚接着性の点で、40質量%以下が好ましい。30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が最も好ましい。
オイルとしては、特に限定されないが、例えば、パラフィン系炭化水素を主成分としたパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素を主成分としたナフテン系オイル、芳香族系炭化水素を主成分とした芳香族系オイルが挙げられる。このなかでも、無色であり、かつ、実質的に無臭であるオイルが好ましい。組成物の相容性の点で、パラフィン系オイルが最も好ましい。
【0043】
必要に応じて、本実施形態の粘接着組成物には、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、SBS、SIS、エチレンプロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマー;クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体を含有しても良い。
これらの含有量は、粘接着組成物に対して15質量%以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の粘接着組成物に薬物を含有させて経皮吸収製剤とする場合、経皮吸収性と保存安定性の向上、粘接着組成物中への薬物溶解性を高める目的で、可塑剤を使用することができる。
このような可塑剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル等の炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステル;炭素数8〜10の脂肪酸;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、スクアレン、ラノリン等の油脂類;酢酸エチル、エチルアルコール、ジメチルデシルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、オレイルアルコール、ラウリン酸等の有機溶剤;液状の界面活性剤;エトキシ化ステアリルアルコール、グリセリンエステル、ミリスチン酸イソトリデシル、N−メチルピロリドン、オレイン酸エチル、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸オクチル、1,3−プロパンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらの中から常温で液状の化合物が好ましく使用できる。
上記の可塑剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の可塑剤の中でも、グリセリンエステルが好ましく、好ましくは8〜10の脂肪酸とグリセリンとのエステルである中鎖脂肪酸トリグリセリドがより好ましい。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが挙げられる。
【0045】
本実施形態の粘接着組成物は、薬物を含有させて、経皮吸収製剤(皮膚外用貼付剤)として好適に使用できる。
薬物としては、例えば、皮膚刺激剤、鎮痛消炎剤、抗真菌剤、中枢神経作用剤、利尿剤、血圧降下剤、冠血管拡張剤、鎮咳去痰剤、抗ヒスタミン剤、不整脈用剤、強心剤、避妊薬、副腎皮質ホルモン剤または局所麻酔剤、ビタミン剤が挙げられる。
【0046】
前記皮膚刺激剤及び鎮痛消炎剤としては、例えばサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アセチルサリチル酸、l−メントール、カンフル(d体、l体、dl体)、ハッカ油、チモール、ニコチン酸ベンジルエステル、トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、フェルビナク、フルフェナム酸ブチル、ピロキシカム、インドメタシン、ケトプロフェン、プラノプロフェン、フェプラゾン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、アンフェナクナトリウム、オキサプロジン、エモルファゾン、チアプロフェン、フェンブフェン、プラノプロフェン、フェンチアザック、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサール、イブプロフェンピコノール、ベンダザック、スプロフェン、塩酸ブプレノルフィン、ペンタゾシンまたは酒石酸ブトルファノールが挙げられる。
【0047】
前記抗真菌剤としては、例えばビホナゾール、クロトリマゾール、チオコナゾール、ミコナール、エコナゾール、イソコナゾール、スルコナゾール、オキシコナゾール、クロコナゾール、ケトコナゾール、ネチコナゾール、ライコナゾール、オモコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、テルビナフィン、ナフチフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、リラナフタート、ナフチオメートN、トルナフタート(ナフチオメートT)、トルシクラート、ウンデシレン酸、フェニル−11−ヨード−10−ウンデシノエート、サリチル酸、シッカニン、トリコマイシン、ピロールニトリン、ナイスタチン、ピマリシン、グリセオフルビン、バリオチン、アンフォテリシンB、エキサラミド、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、チアントール、フルシトシン、2,4,6−リブロムフェニルカプロン酸エステル、トリメチルセチルアンモニウムペンタクロロフェネート、イオウまたは木槿皮(モッキンピ)が挙げられる。
【0048】
前記中枢神経作用剤(催眠鎮静剤、抗てんかん剤、精神神経用剤)としては、例えばフルフェナジン、チオリダジン、ジアゼパム、クロルプロマジン、ニトラゼパム、エスタゾラム、トリアゾラム、ニメタゼパム、フルニトラゼパム、ハロキサゾラム、フルラゼパム、クロナゼパム、プロペリシアジン、プロクロルペラジン、アルプラゾラム、オキサゼパム、オキサゾラム、クロキサゾラム、プラゼパム、フルタゾラム、メキサゾラム、ロラゼパム、フルジアゼパム、プロマゼパムまたはメタゼパムが挙げられる。
【0049】
前記利尿剤としては、例えばハイドロサイアザイド、ペンドロフルナサイアザイド、エチアジド、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、ペンフルチド、メチクロチアジド、フロセミド、メトラゾン、ポリチアジドまたはベンドロフルメチアジドが挙げられる。
【0050】
前記血圧降下剤としては、例えばクロニジン、アルサーオキシロン、レシナミン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、レセルピン、プラゾシン、カプトプリル、ピンドロールまたはマレイン酸エナラプリルが挙げられる。
【0051】
前記冠血管拡張剤としては、例えばニトログリセリン、ニトログリコール、イソソルバイドナイトレート、塩酸パパベリン、ジピリダモール、エフロキサート、トリメタジン、ニコランジル、シンナリジン、ナイリドン、モルシドミンまたはニフェジピンが挙げられる。
【0052】
前記鎮咳去痰剤としては、例えばリン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エフェドリン、塩酸クロルプレナリン、臭化水素酸フェノテロール、硫酸サルブタモール、リン酸ジメモルファン、塩酸アゼラスチン、塩酸クレンブテロール、塩酸ツロブテロール、塩酸トリメトキシノール、塩酸プロカテロール、塩酸ブロムヘキシン、トラニラスト、ヒベンズ酸チペピジン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸フォルモテロール、リン酸ベンプロペリンまたはグリチルレチン酸が挙げられる。
【0053】
前記抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸トリプロリジン、塩酸イソチペンジル、塩酸プロメタジン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸シプロヘプタジン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミンまたはマレイン酸ジメチンデンが挙げられる。
【0054】
前記不整脈用剤としては、例えばアルプレノロール、オクスプレノロール、ブクモロール、ブプラノロール、ピンドロール、インデノロール、カルテオロール、ブフェトロール、プロプラノロールまたはチモロールが挙げられる。
前記強心剤としては、例えばジキタリス、ユピデカレノン、ジゴキシン、メチルジゴキシンまたはデスラノシドが挙げられる。
【0055】
前記避妊薬としては、例えばエストラジオールエナンテート、エストラジオールシピネート、レボノルゲストレルまたはエストラジオールが挙げられる。
前記副腎皮質ホルモン剤としては、例えば酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾンリン酸エステル、メチルプレドニゾロン、酢酸ダイクロリゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾン、フルオロメトロン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルドロキシコルチド、酪酸ヒドロコルチゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノニド、プロピロン酸クロベタゾール、吉草酸ジフルコルトロン、ハルシノニド、アムシノニド、吉草酸プレドニゾロン等が挙げられる。
【0056】
前記局所麻酔剤としては、例えばリドカイン、アミノ安息香酸エチル、塩酸プロカイン、ジブカインまたはプロカインが挙げられる。
前記薬物は、一種または二種以上を適宜配合されて用いられる。
【0057】
また、本実施形態の粘接着組成物やそれを用いた経皮吸収製剤(皮膚外用貼付剤)は、救急絆創膏、手術後の傷口保護を目的としたサージカルドレッシング、切開部の細菌汚染防止を目的としたサージカルドレープ、切開縫合部の補強固定用テープ、更にはスポーツ時に用いるテーピング等にも利用可能である。
本実施形態の粘接着組成物には、さらに、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、pH調整剤、など粘接着組成物の目的に応じたその他の成分を配合することができる。
【0058】
本実施形態の粘接着組成物およびそれを用いた経皮吸収製剤には、酸化劣化による粘着剤の粘着力の変化および凝集力の低下を防ぐため酸化防止剤、紫外線を吸収して光酸化劣化を防止するため紫外線吸収剤、あるいはステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の滑剤を添加しても良い。
【0059】
本実施形態の経皮吸収製剤を、支持体に積層し、さらにその上にライナーを被覆することにより、皮膚外用貼付剤とすることができる。
皮膚外用貼付剤の支持体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、綿、レイヨン(セルロース誘導体)、アルミニウム等のフィルム、シートまたは箔、あるいはこれらの多孔体、発泡体そして紙、織布、編布、不織布等の伸縮性または非伸縮性のものが選ばれ、これらの積層体を用いることもできる。
【0060】
皮膚外用貼付剤のライナーとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン、アルミニウム等のフィルム、シート、箔、または紙等が選ばれ、これらの積層体を用いることもできる。また、粘接着組成物からの剥離を容易にするために、前記ライナーの表面をシリコン、テフロン(登録商標)、界面活性剤等で表面処理することができる。
【0061】
本実施形態の粘接着組成物を用いた皮膚外用貼付剤の製造法は、従来実施されている方法でも良いが、例えば、溶解あるいは混練された粘接着組成物に目的に応じた薬物等を混合し、支持体に直接展延するか、もしくは一旦剥離処理の施された紙、フィルム等のライナーに展延し、その後支持体に圧着転写して製造することもできる。
【0062】
本実施形態において、皮膚外用貼付剤の経皮吸収製剤層の展延の厚みは、30μm〜400μmが好ましく、50μm〜200μmが更に好ましい。粘接着組成物層の厚みが厚いと粘接着組成物に含まれる薬剤の放出率が悪くなる傾向にあり、他方、30μm未満では皮膚への接着性が劣り、剥がれの原因となる傾向にあるからである。
【実施例】
【0063】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔水添ブロック共重合体の製造方法〕
(水添触媒)
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1Lを仕込み、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100mmolを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200mmolを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水添触媒を得た。
(ブロック共重合体1)
ジャケット付き槽型反応器を用いて、所定量のシクロヘキサンを反応器に仕込んで、反応器内を温度60℃に調整した。その後、n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.11質量部となるように反応器の底部から添加した。さらに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液を、n−ブチルリチウム1molに対して0.4molとなるように添加した。その後、1ステップ目の重合反応として、スチレン15質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を約10分間で供給し、反応器内温度を60℃に調整した。供給停止後、15分間反応器内温度を70℃に調整しながら反応させた。
次に、2ステップ目の重合反応として、ブタジエン85質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を50分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その間の反応器内温度を50℃になるように調整し、供給停止後、10分間反応器内温度を60℃に調整しながら反応させて、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体に、カップリング剤として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのエピクロロヒドリンによるジグリシジルエーテル化変性物と、フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物のエピクロロヒドリンによるジグリシジルエーテル化変性物と、の重量比1/1の混合物を添加し、重合体をカップリングした。
これにより、ポリスチレンブロック−ポリブタジエンブロック−ポリスチレンブロック(a−1構造)とポリスチレンブロック−ポリブタジエンブロック(a−2構造)を、質量比=50%/50%を含む重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体のスチレン含有量およびポリスチレンブロックの含有量は15質量%であり、ブタジエン単位中のビニル含有量は35mol%であった。また、a−2構造の共重合体の重量平均分子量は9.5万であり、カップリングしたa−1構造の共重合体の重量平均分子量19万であった。
その後、上記水添触媒を用いて、80℃で得られたカップリング重合体を水素添加し、水添ブロック共重合体を得た。反応終了後に、安定剤(オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を水添ブロック共重合体100質量部に対し、0.25質量部を添加し、水添ブロック共重合1を得た。水添ブロック共重合体1の水素添加率は45mol%であった。
【0064】
(水添ブロック共重合体2、3、ブロック共重合体4)
上記水添ブロック共重合体1の製造方法においてスチレン量、水素添加率を変更し、水添ブロック共重合体2、3及びブロック共重合体4を製造した。これらの構造を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
〔実施例1〜11〕、〔比較例1〜5〕
表2に示す組成で、(水添)ブロック共重合体、数平均分子量(Mn)が6万を超えるポリイソブチレン又はポリイソプレン、数平均分子量(Mn)が300以上6万以下のポリイソブチレン又はポリイソプレン、粘着付与樹脂、オイル及び酸化防止剤を含む粘接着組成物を、目付100g/m
2の織布の片面に、厚さ60μmになるように展延し、幅5cmの幅でロール状に巻回して実施例1〜11、比較例1〜5の粘着テープを作製した。
【0067】
なお、使用したブロック共重合体SIS、ポリイソブチレン(Mn=300〜6万)、ポリイソプレン(Mn=300〜6万)、ポリイソブチレン(Mn>6万)、ポリイソプレン(Mn>6万)、粘着付与樹脂、オイル、酸化防止剤は以下のとおりである。
・ブロック共重合体SIS:D1161(Kraton社製、商品名、St含有量=15質量%、ジブロック含有量=19質量%のスチレン−イソプレンブロック共重合体)
・ポリイソブチレン、ポリイソプレン(Mn>6万)
ポリイソブチレン(Mn>6万):MML−120(トーネックス社製、商品名、数平均分子量30万)
ポリイソプレン(Mn>6万):Nipol2200L(日本ゼオン社製、商品名、ムーニー粘度=70)
・ポリイソブチレン、ポリイソプレン(Mn=300〜6万)
液状ポリイソプレン(Mn=300〜6万):LIR−30(クラレ社製、商品名、分子量=2.9万)
液状ポリイソブチレン(Mn=300〜6万):ハイモール4H(新日本石油化学社製、商品名、分子量=4万)
・粘着付与樹脂
テルペン樹脂:YSレジンPX1150N(ヤスハラケミカル社製、標品名、軟化点115℃)
脂肪族炭化水素樹脂:クイントンB170(日本ゼオン社製、商品名、軟化点70℃)
脂環飽和炭化水素樹脂:アルコンP100(荒川化学工業社製、標品名、軟化点100℃)
・オイル
流動パラフィン:ハイコールM352(カネダ社製、商品名)
[酸化防止剤]
酸化防止剤:イルガノックス565(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名)
【0068】
〔評価方法〕
以下に、(水添)ブロック共重合体1〜4の構造の測定方法、及び、実施例1〜11及び比較例1〜5において得られた粘着シートの評価方法について以下に示す。
(ビニル含有量と水素添加率)
水添ブロック共重合体中のビニル含有量及び共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率を、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
水添反応後の反応液に、大量のメタノール中に沈澱させることで、水添ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、水添ブロック共重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H−NMR測定のサンプルとして用いた。1H−NMR測定の条件を以下に記す。
【0069】
(測定条件)
測定機器 :JNM−LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ブロック共重合体を水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0070】
(ビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量)
一定量の水添ブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて、溶解液中のビニル芳香族化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度を測定した。得られたピーク強度から、検量線を用いてビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
【0071】
(ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAの含有量)
I.M.Kolthoff,et al., J.Polym.Sci.,1946,Vol.1,p.429に記載の四酸化オスミウム酸法で、下記ポリマー分解用溶液を用いて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAの含有量を測定した。
(測定条件)
測定サンプル :ブロック共重合体を水素添加する前の抜き取り品
ポリマー分解用溶液:オスミウム酸0.1gを第3級ブタノ−ル125mLに溶解した溶液
【0072】
(水添ブロック共重合体の重量平均分子量)
水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(測定条件)
測定装置 :LC−10(島津製作所製)
カラム :TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)、2本
溶媒 :テトラヒドロフラン
検量線用サンプル:市販の標準ポリスチレン(東ソー社製)、10点測定
【0073】
(湿度60%下あるいは湿度85%下での皮膚接着性)
作製した粘着シートを、15mm幅で100mm長さの短冊状に裁断し、23℃、相対湿度60%あるいは85%の環境下で、ヒト皮膚前腕部に2kgのローラを用いて、約30mm/秒の速度で1往復させて圧着し、60分間放置したのち、剥離角度90度、剥離速度200mm/分で粘着シートを引き剥がした。
このときにかかる剥離力を皮膚接着力とした。皮膚接着力は高い方が良く、良い順から、◎、○、△、×とした。
2.5≦剥離力(N/15mm) :◎
2.0≦剥離力(N/15mm)<2.5 :〇
1.5≦剥離力(N/15mm)<2.0 :△
剥離力(N/15mm)<1.5 :×
【0074】
(湿度60%下あるいは湿度85%下での皮膚への糊残り性)
上記の剥離後の皮膚表面を観察し、皮膚表面への糊残りの状態を目視で評価した。
糊残りが低い方が良く、良い順から、○、△、×とした。
糊残りがほとんど無い :○
エッジ部に少し糊残り有り :△
全面に糊残り有り :×
【0075】
(屋外で経時後の皮膚への糊残り性)
作製した粘着シートを、15mm幅で100mm長さの短冊状に裁断し、晴れの日に、ヒト皮膚前腕部に貼り付け、2kgのローラを用いて、約30mm/秒の速度で1往復させて圧着し、1日放置したのち、剥離角度90度、剥離速度200mm/分で粘着シートを引き剥がした。
このときの剥離後の皮膚表面を観察し、皮膚表面への糊残りの状態を目視で評価した。
糊残りが低い方が良く、良い順から、○、△、×とした。
糊残りがほとんど無い :○
エッジ部の一部に糊残り有り :△
エッジ部の半分程度に糊残り有り :×
【0076】
表2に、実施例1〜11及び比較例1〜5の粘着性能の評価結果について、それぞれ示した。
下記表2より、本発明の粘接着組成物は、湿度60%及び85%下において、高い皮膚接着性及び、低い糊残り性を示し、屋外で経時後の剥離時の低い糊残り性を有することが分かる。
【0077】
【表2】