特許第6502108号(P6502108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502108
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】イグナイタ内蔵型光源用電源装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 23/00 20150101AFI20190408BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20190408BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20190408BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20190408BHJP
【FI】
   F21V23/00 102
   H01F37/00 H
   H01F27/32 140
   F21Y101:00 300
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-17493(P2015-17493)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-143530(P2016-143530A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 建華
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕貴
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−503215(JP,A)
【文献】 実開昭59−084723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00 − 99/00
H05B 41/00 − 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグナイタが内蔵された光源用電源装置において、
前記イグナイタは、
パルスコイルを巻回した高電圧発生部と、
前記高電圧発生部の高圧端部を装置筐体に設けられたシャーシに対して支持する高圧側絶縁支柱部と、
前記高電圧発生部の低圧端部を前記シャーシに対して支持する低圧側絶縁支柱部と、
一部が前記高圧側絶縁支柱部と前記高電圧発生部の高圧端部間に介挿され、前記シャーシ面に達するように下方に延伸された絶縁シートとを備え、
前記絶縁シートは、前記高電圧発生部の高圧端部の下部付近から該高電圧発生部の内側に向けて緩やかなカーブ形状に配置されたことを特徴とする、イグナイタ内蔵型光源用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イグナイタを装置内に内蔵した光源用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キセノンランプ等の放電灯を点灯するための高電圧発生装置として使用されるイグナイタは、通常、数10KV以上の高電圧を発生する仕様とされる。このため、安全面・品質面でリーク防止対策、アーク発生防止対策をすることが要求され、様々な対策が検討されている。
【0003】
たとえば、リーク発生した場合であってもそれがアーク放電に移行しないよう、イグナイタ収容ケースとパルストランスの入力ラインの各電位が同一となるように回路上の工夫をしたものや(特許文献1)、イグナイタを構成するパルストランスの高圧側二次コイルと同コイルと接続されるバスバーとを適切な位置関係で樹脂内にインサート成型し、さらに樹脂層を十分な肉厚にすることでリーク防止を図る構造的な工夫を施したものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−241877号公報
【特許文献2】特開2009−37788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、リークの発生を防止するものではないため、経時的に部品の劣化が生じる問題があり、また、特許文献2では、バスバーの露出部からシャーシまでの沿面距離に対する対策がないため、リーク防止は十分でないと思われる。
【0006】
特に、イグナイタ内蔵型では、電源部を小型化するためにパルストランスの二次コイルとシャーシ間の距離をなるべく短くしたいという要請があり、このためには、小空間でリーク発生を抑制する工夫が必要である。
【0007】
そこで、この発明は、絶縁シートを使用し、且つ、その形状を工夫することで、小空間でリーク発生を抑制出来る構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のイグナイタ内蔵型光源用電源装置は、パルスコイルを巻回した高電圧発生部を有するイグナイタが、電源回路等と一緒に装置筐体内に設けられている。
【0009】
前記イグナイタは、基本的に、一次コイルと二次コイルが巻回された高電圧発生用のパルスコイルと、このパルスコイルの高圧側と低圧側を支持する支持部とを備えている。この支持部は、前記高電圧発生部の高圧端部を装置筐体に設けられたシャーシに支持する高圧側絶縁支柱部と、前記高電圧発生部の低圧端部を前記シャーシに支持する低圧側絶縁支柱部とで構成される。
【0010】
また、前記イグナイタは、一部が前記高圧側絶縁支柱部と前記高電圧発生部の高圧端部間に介挿され、前記シャーシ(シャーシ面)に達するように下方に延伸された絶縁シートを備え、
前記絶縁シートは、前記高電圧発生部の高圧端部の下部付近から該コイルの内側に向けて緩やかなカーブ形状に配置されている。
【0011】
この発明の電源装置は、高圧側絶縁支柱部と、高電圧発生部の高圧端部との間に絶縁シートが介挿され、絶縁シートは、高電圧発生部の高圧端部の下部付近から該コイルの内側に向けて緩やかなカーブ形状を呈してシャーシ面に到達する形状に配置されている。絶縁シートが高圧端部からシャーシ面に達するまでに折り曲げられないため、絶縁シート自身の絶縁性能が途中で劣化しない。また、高圧端部からシャーシ面に達するまでのシート面上の沿面距離は、比較的長くすることが可能であるため、沿面距離を稼ぐことも可能である。カーブ形状を適切なものにすることで十分な沿面距離とすることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、絶縁シートが高電圧発生部の高圧端部の下部付近から該コイルの内側に向けて緩やかなカーブ形状を呈してシャーシ面に到達する形状に配置されているため、絶縁シート面上の沿面距離を稼ぐことが出来、且つ、途中で折り曲がることがないため、シートの絶縁性能が低下することを防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施形態であるイグナイタ内蔵光源用電源装置の一部を省略した構造を示す図
図2】イグナイタ部の斜視図
図3】イグナイタ部の放電リークについて説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、この発明の実施形態であるイグナイタ内蔵光源用電源装置の一部を省略した構造を示す図、図2は、イグナイタ部の斜視図である。
【0015】
イグナイタ内蔵光源用電源装置は、装置筐体1と、この装置筐体1内に収納された電源回路部を含む回路基板2と、この回路基板2に接続されるイグナイタ3とを備えている。イグナイタ3の出力パルス電圧は図示しないキセノンランプ等の放電灯に印加される。イグナイタ3は、この実施形態では40kV以上のパルス電圧を発生して、放電灯に印加する。
【0016】
筐体1内には導電性のシャーシ4が設けられ、電気的に接地電位に設定されている。
【0017】
イグナイタ3は、パルスコイルを巻回した高電圧発生部5と、この高電圧発生部5の両端を支持する支柱部を備えている。支柱部は、高電圧発生部5の高圧端部を装置筐体1に設けられたシャーシ4に対して支持する高圧側絶縁支柱部6と、高電圧発生部5の低圧端部を前記シャーシ4に対して支持する低圧側絶縁支柱部7とで構成される。これらの高圧側絶縁支柱部6と低圧側絶縁支柱部7は、絶縁性を有するセラミックや樹脂等で成形され、シャーシ4にその下部からネジ20、21でそれぞれ固定されている。
【0018】
パルスコイルは、後述のように、所定の径を有するボビンに数十ターン巻回した二次側コイル8と、この上に絶縁シート9を介して数ターン巻回した一次側コイル10とで構成され、一次側コイル10にパルス状電圧が印加されることで、二次側コイル8に高電圧パルスが発生する。
【0019】
図2の左側に位置する高圧側絶縁支柱部6には、高電圧発生部5の高圧端部にある、二次側コイル8の高圧出力端子(図示しない)が接続される金属製のバスバー11が設けられている。バスバー11の上端は、高圧リード線接続部とされ、ここに、放電灯の正極端子から延びているリード線の端部がネジ止めされる。放電灯の負極端子は接地されている。
【0020】
前記一次側コイル10は、その端部に入力端子13、14が設けられ、この入力端子に回路基板2からのリード線が接続され、放電灯起動時にイグナイタを駆動するためのパルス状入力電圧が入力される。
【0021】
イグナイタ3は、さらに絶縁シート15〜18を備えている。絶縁シート15〜18は、少なくとも、単位面積当たりの電気抵抗の高い絶縁性能が良いシート材で、且つ、強靭で柔軟な繊維状に編んだシート材で構成される。さらに、好ましくは、成型加工性が良く、耐蝕性や耐熱性にも優れたものから選ばれる。例えば、デュポン製のノーメックス繊維(登録商標)が好適である。
【0022】
絶縁シート15は、高圧側絶縁支柱部6の底部に配置されている。その形状は全体として矩形状であり、両側が折曲されている。また、中央部にはネジ20が貫通するネジ穴貫通孔が形成されている。
【0023】
絶縁シート18は、低圧側絶縁支柱部7の底部に配置されている。その形状は全体として矩形状であり、両側が折曲されている。また、中央部にはネジ21が貫通するネジ穴貫通孔が形成されている。
【0024】
以上の絶縁シート15、18により、高電圧発生部5の高圧端部とシャーシ4間の絶縁性に影響する沿面距離を稼ぐことが出来る。各絶縁シートの側部が折曲されているのは、沿面距離をさらに稼ぐためである。また、二次側コイル8の高圧出力端子から、高圧側絶縁支柱部6の底部周囲のシャーシ部に放電リークが生じるのを防ぐことが出来る。
【0025】
絶縁シート16は、高圧側絶縁支柱部6と高電圧発生部5の高圧端部間に介挿されている。具体的には、絶縁シート16の略中央部に高電圧発生部5の高圧側のボビン端部が貫通する貫通孔が形成され、高圧側のボビン端部はこの貫通口を貫通した状態で高圧側絶縁支柱部6に取り付けられる。また、絶縁シート16は、高圧側絶縁支柱部6の内側側面よりも十分に広い面積を有する。また、絶縁シート16は、上部中央部が切り欠かれていて、この切り欠き部をバスバー11が貫通して上方に伸びている。また、絶縁シート16は、その両端部(図2では手前と背面)と上端部が内側、すなわち高電圧発生部5側に向けて折曲されている。
【0026】
絶縁シート17は、絶縁シート16の上に重ねて、高圧側絶縁支柱部6と高電圧発生部5の高圧端部間に介挿されている。具体的には、絶縁シート16の略中央部に高電圧発生部5の高圧側のボビン端部が貫通する貫通孔が形成され、高圧側のボビン端部はこの貫通口と上記絶縁シート16の貫通孔を貫通した状態で高圧側絶縁支柱部6に取り付けられる。したがって、絶縁シート16と絶縁シート17はその上部が重なった状態で、高圧側絶縁支柱部6と高電圧発生部5の高圧端部間に介挿される。そして、絶縁シート17は、高電圧発生部5の高圧端部の下部付近から高電圧発生部5の内側に向けて緩やかなカーブ形状に配置され、下端部がシャーシ4上に置かれている。なお絶縁シート17を、緩やかなカーブ形状に予め成型しておいてもよい。
【0027】
次に、絶縁シート17の機能について、図3を参照して説明する。
【0028】
図3は、イグナイタ部の放電リークについて説明するための図であり、構成については概略を示している。
【0029】
図3(A)は、高電圧発生部5の高圧端部の付近に絶縁シートを全く設けない場合を示し、図3(B)は、高電圧発生部5の高圧端部の付近に直角に折曲した絶縁シート40を設ける場合を示し、図3(C)は、高電圧発生部5の高圧端部の付近に、高圧端部の下部付近から内側に向けて緩やかなカーブ形状に配置された絶縁シート17を設ける場合を示している。
【0030】
図3(A)では、高電圧発生部5の高圧端部付近から、シャーシ4に向けてリーク30が発生している。これは、高電圧発生部5の下部からシャーシ4までの高圧側絶縁支柱部6の沿面距離Aが十分でないからである。高電圧発生部5の位置を高くすれば沿面距離が長くなってリーク30が発生するのを防止できるが、その場合、装置筐体の高さが高くなるため適当ではない。
【0031】
図3(B)では、高電圧発生部5の高圧端部付近から、シャーシ4に向けてリーク30が発生していないが、リーク30が発生していないのは、絶縁シート40の水平部の沿面距離Bが存在するからである。電圧発生部5の高圧端部付近からシャーシ4までの全体の沿面距離はA+Bの長さとなり、リーク30を防止するには十分な長さである。しかし、絶縁シート40の折曲部の角部から小さな部分リーク31が発生している。これは、絶縁シート40の上記角部が繊維構造の均質性を劣化させ、その部分にリーク発生に対して脆弱な微少ホール等が形成されている可能性があるからである。
【0032】
図3(C)では、高電圧発生部5の高圧端部付近から、シャーシ4に向けて放電リーク30が発生していない。電圧発生部5の高圧端部付近からシャーシ4までの全体の沿面距離は円弧Cの長さとなり、カーブ形状を適切に選ぶことで、沿面距離Cはリーク防止に十分な長さとなる。また、図3(B)のような角部もないため、繊維構造の非均質な部分からのリークも生じない。ここで、緩やかなカーブ形状とは、角部が出来ないことと、必要なリーク防止性能を発揮するのに十分な沿面距離であること、の二つの条件を満たす形状である。カーブ形状が急峻であると、沿面距離が不十分となる可能性があり、カーブ形状が緩やか過ぎると、高圧端部の下部付近から曲り始める部分に角部が出来る可能性がある。また、カーブ形状が緩やか過ぎると絶縁シートを無駄に使うことになるので、実験などにより適切な長さに設定することが望ましい。
【0033】
このように、図3(C)の構造であると、高電圧発生部5の位置を高くしなくても、十分な沿面距離を出すことが出来、また、図3(B)のような部分リークを発生させる危険性もない。
【0034】
図1、2に示す本実施形態では、図3(C)のように、絶縁シート17を、高電圧発生部5の高圧端部の下部付近から該高電圧発生部の内側に向けて緩やかなカーブ形状に成型されたものを使ったり、絶縁シート17の柔軟性により、自然に緩やかなカーブ形状に変形して配置されている。このため、高電圧発生部5の位置を高くしなくても、十分な沿面距離を出すことが出来、また、図3(B)のような部分リークを発生させる危険性もない。また、本実施形態では、図2のように、絶縁シート17に加えて、図3(B)に示す直角に折曲した絶縁シート40と同じ構造の絶縁シート16を用いている。この絶縁シート16は必ずしも必要でないが、リーク発生の防止をさらに確実化出来る利点がある。
【符号の説明】
【0035】
1−装置本体
2−回路基板
3−イグナイタ
4−シャーシ
5−高電圧発生部
6−高圧側絶縁支柱部
7−低圧側絶縁支柱部
17−絶縁シート
図1
図2
図3