(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、上記のような固体レーザ装置は、レーザの発振効率を高めるために、チャンバに冷却水を供給し、チャンバ内でフラッシュランプおよびレーザロッドを冷却水に晒すようにしている。一般に、外部トリガ方式は、チャンバ内でトリガ電極も冷却水に晒されるので、トリガ電極からの漏電を防止するために、冷却水に絶縁性の高い純水を使用し、チャンバの材質に樹脂等の絶縁体を用いている。このため、チャンバに冷却水を供給する冷却装置は、水道水または工業用水から純水を得るために高価なイオン交換樹脂を備える必要がある。また、樹脂製のチャンバは、フラッシュランプおよびレーザロッドを安定に保持し、かつ冷却水の水漏れを防止するための加工が非常に難しく、製作コストが金属製のチャンバよりも高くついている。
【0006】
また、フラッシュランプの中にトリガ電極を設けて、このトリガ電極に高電圧パルスを印加する内部トリガ方式は、フラッシュランプ内部の電極構造が煩雑となり、高価なフラッシュランプを必要とする。フラッシュランプは定期的に交換される消耗部品であるから、高価なフラッシュランプを使用するレーザ装置のランニングコストはかなり高くつく。
【0007】
この点、フラッシュランプの点灯開始時にランプ内の両電極間にトリガ用のパルス電圧を印加する電極間トリガ方式は、トリガ電極が不要であるため、フラッシュランプの内部および周囲の構成はシンプルであり、安価なフラッシュランプを用いることができる。しかしながら、電極間トリガ方式においては、トリガ電極を使わないため、フラッシュランプ内のガスの絶縁破壊に用いるトリガパルスの尖頭値を十分高くする必要があり、それでもガスの絶縁破壊ないし放電に至らないことが多々ある。その場合つまり点灯エラー時には、フラッシュランプから瞬発的で異常に高い電圧つまりサージ電圧が発生する。一般のフラッシュランプは点灯を繰り返す度に徐々に劣化するため、点灯回数が増えるにしたがってトリガパルスの尖頭値を高くする必要がある。ところが、トリガパルスの尖頭値を高くするほど、点灯エラー時に発生するサージ電圧の尖頭値も高くなる。
【0008】
フラッシュランプには主点灯回路やシマー回路が電気的に接続されているので、フラッシュランプで発生したサージ電圧が主点灯回路やシマー回路に回り込むと、それらの内部でスイッチング素子や電源回路部品等が破損してしまう。したがって、点灯エラー時にフラッシュランプで発生するサージ電圧から主点灯回路やシマー回路を十全に保護するための保護回路が必要になる。
【0009】
電極間トリガ方式を用いる従来のレーザ装置は、上記のようなサージ電圧に対する保護回路として、主点灯回路およびシマー回路の出力段に直列接続で多数個(通常4〜6個)の高耐圧ダイオードを設けている。この場合、シマー回路は、扱う電流つまりシマー電流が小さいので、小型・小容量のダイオードで済み、コスト面および消費電力面の支障は比較的少ない。一方、主点灯回路は、フラッシュランプに対して主点灯または駆動用の大電流を供給するので、高価な大型・大容量の高耐圧ダイオードを多数用いる構成となり、コストが高くついている。さらに、大型・大容量の高耐圧ダイオードを直列接続で多段に設けるため、正常時に主点灯回路よりフラッシュランプに駆動電流が供給される際にダイオード列で大きな電圧降下(ひいては電力損失)が発生し、レーザ発振効率が低いことも問題となっている。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、固体レーザ励起用のフラッシュランプの点灯開始に電極間トリガ方式を用いて、装置性能および信頼性の向上と低コスト化を実現するレーザ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレーザ装置は、固体レーザ媒体を有するレーザ発振部と、前記固体レーザ媒体に励起光を照射するための電極間トリガ方式のフラッシュランプを有する励起部と、前記固体レーザ媒体と前記フラッシュランプとを対置して収容するチャンバと、前記フラッシュランプの点灯を開始するために前記フラッシュランプの一対の電極間に高電圧パルスを印加するトリガ回路と、前記フラッシュランプに待機用の予備放電電流を供給するシマー回路と、待機中の前記フラッシュランプに主点灯用の駆動電流を供給する主点灯回路と、前記主点灯回路と前記フラッシュランプとの間に接続され、前記主点灯回路から前記フラッシュランプに供給されるべき前記駆動電流を通し、点灯エラー時に前記フラッシュランプで発生するサージ電圧を吸収する点灯エラー保護回路とを
具備し、
前記点灯エラー保護回路は、前記主点灯回路と前記フラッシュランプとの間で前記フラッシュランプと直列に接続され、点灯開始前は開状態を保ち、点灯開始後に開状態から閉状態に切り替わる開閉器と、前記主点灯回路と前記開閉器との間で前記主点灯回路側から見て前記フラッシュランプと並列に接続され、所定の導通開始電圧以上の電圧を印加されると導通するサージ吸収素子とを有し、前記導通開始電圧は、前記フラッシュランプからの前記サージ電圧が前記主点灯回路に回り込まないうちに前記サージ吸収素子が導通するように設定され、前記主点灯回路と点灯エラー保護回路との間にダイオードが順方向の向きで接続され、前記導通開始電圧は、前記主点灯回路の出力電圧から前記ダイオードの順方向降下電圧を減じた値よりも高い値に設定される。
【0012】
上記の装置構成においては、トリガ回路より出力された高電圧パルスがフラッシュランプの両電極に印加される。高電圧パルスの印加により両電極間でガスの絶縁が破壊されると、ガス分子が電離し、ガス分子の電離から発生した電子がさらにガス分子と衝突して次々と電離または励起を拡大させ、電子の雪崩現象が起きて放電が開始し、さらにシマー回路からの予備放電電流により、グロー放電を継続させ、フラッシュランプを微弱に点灯させる。この状態の下で、レーザ光を発振させる時は、主点灯回路より主電流または駆動電流が点灯エラー保護回路を通ってフラッシュランプに供給され、フラッシュランプより励起光が発生される。フラッシュランプより発せられた励起光は固体レーザ媒体を励起し、励起された固体レーザ媒体より所定の光軸方向に出た一定波長の光が光共振器の中で反射を繰り返して増幅されたのちレーザ光として出力される。
【0013】
しかし、トリガ回路からの高電圧パルスの印加にも係らずフラッシュランプの両電極間でガスの絶縁が破壊されない場合は、その反動
からフラッシュランプで瞬発的かつ尖頭値の非常に高いサージ電圧が発生する。本発明では、
フラッシュランプでサージ電圧が発生した時は、点灯エラー保護回路が働いて、サージ電圧が主点灯回路に回り込まないうちにサージ吸収素子が導通してサージ電圧を速やかに吸収するので、主点灯回路側の回路素子がサージ電圧によって破壊されることはない。
【0014】
また、主点灯回路と点灯エラー保護回路との間にダイオードが順方向の向きで接続され、サージ吸収素子の導通開始電圧が主点灯回路の出力電圧から該ダイオードの順方向降下電圧を減じた値よりも高い値に設定されることにより、正常時に主点灯回路よりフラッシュランプに励起電流が供給されている時に、サージ吸収素子が誤動作(誤って導通)することはない。しかも、サージ吸収素子がサージ電圧を吸収するので、該ダイオードもサージ電圧から保護される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレーザ装置によれば、上記のような構成および作用により、フラッシュランプの点灯開始に電極間トリガ方式を使用して、装置性能および信頼性の向上と低コスト化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[装置全体の構成]
【0019】
図1に、本発明の一実施形態におけるYAGレーザ加工装置の全体の構成を示す。このYAGレーザ加工装置は、主な構成要素として、チャンバ10、レーザ発振部12、レーザ励起部14、シマー回路15、トリガ回路16、点灯エラー保護回路18および制御部20を有しており、レーザ加工用のパルスレーザ光LBを単発または所定の繰り返し周波数で発振出力するように構成されている。
【0020】
レーザ発振部12は、YAGロッド22と、このYAGロッド22を挟んでロッド軸方向で対向配置される一対のミラーつまり全反射ミラー24および部分反射(出力)ミラー26とを有している。ここで、全反射ミラー24と出力ミラー26は光共振器を構成している。レーザ励起部14は、YAGロッド22に励起光を照射するためのフラッシュランプ28と、このフラッシュランプ28にランプ点灯または発光用の駆動電流を供給するための主点灯回路またはレーザ電源回路30とを有している。
【0021】
チャンバ10は、導体からなる分解可能かつ密閉可能な容器として構成されており、レーザ発振部12のYAGロッド22とレーザ励起部14のフラッシュランプ28とを対置または並置して収容している。この実施形態では、チャンバ10の中に、YAGロッド22およびフラッシュランプ28を取り囲み、フラッシュランプ28から放射された光(励起光)を内壁面で反射する導体たとえば銅製の楕円反射鏡筒25が設けられている。この場合、YAGロッド22およびフラッシュランプ28は、楕円反射鏡筒25内の一対の楕円焦点軸上にそれぞれ配置される。チャンバ10には冷却装置32より配管34を介して一定温度の冷却水が循環供給され、チャンバ10の中でYAGロッド22およびフラッシュランプ28は冷却水に晒されるようになっている。
【0022】
主点灯回路30は、フラッシュランプ28を点灯駆動するための電力を蓄積するコンデンサ(またはコンデンサバンク)36と、たとえば単相交流電源38からの商用交流を直流に変換してコンデンサ36を所定の電圧に充電する充電回路40と、コンデンサ36とフラッシュランプ28との間に接続されたスイッチング素子たとえばトランジスタ42と、制御部20の制御の下でトランジスタ42をスイッチング駆動する駆動回路44とを有している。スイッチング素子42がオンすると、コンデンサ36がオン状態のスイッチング素子42を介して放電し、その放電電流がランプ駆動電流I
Rとしてフラッシュランプ28に供給されるようになっている。
【0023】
このYAGレーザ加工装置において、パルスレーザ光LBを用いて所望のレーザ加工を行うときは、主点灯回路30よりパルス波形のランプ駆動電流I
Rが点灯エラー保護回路18を通ってフラッシュランプ28に供給される。レーザ励起部14では、フラッシュランプ28がランプ駆動電流I
Rの供給を受けてパルス点灯し、フラッシュランプ28の発する光のエネルギーによってYAGロッド22が励起される。レーザ発振部12では、YAGロッド22の両端面より軸方向に出た一定波長の光が、光共振器ミラー24,26の間で反射を繰り返して増幅されたのちパルスレーザ光LBとして出力ミラー26を抜け出る。出力ミラー26より抜け出たパルスレーザ光LBは、適当なレーザ伝送系(図示せず)を介してレーザ加工部(図示せず)へ送られ、そこで被加工物(図示せず)に照射される。
【0024】
シマー回路15は、本装置に電源が入っていてパルスレーザ光LBが発振出力されていない間の待機中に、主制御部20の制御の下でフラッシュランプ28に微弱な予備放電電流またはシマー電流Isを供給する。フラッシュランプ28の点灯開始の際には、シマー回路15から制御部20に対して、フラッシュランプ28が首尾よくシマー点灯したか否かを示す点灯確認信号SCが与えられるようになっている。
【0025】
シマー回路15の出力段には、点灯エラー時にフラッシュランプ28で発生するサージ電圧からシマー電源部を保護するための保護回路として、高耐圧ダイオード(図示せず)を設けることができる。シマー電流が小さいので、この高耐圧ダイオードは小型・小容量のダイオードでよい。このため、比較的コストが低くて消費電力も少ない。さらに、この実施形態では、後述するように、点灯エラー時にフラッシュランプ28でサージ電圧が発生した場合は点灯エラー保護回路18が速やかにサージ電圧を吸収するので、シマー回路15側の保護回路の負担は少なくて済む。このことにより、保護回路に用いる高耐圧ダイオードの数を可及的に少なくすることができる。
【0026】
トリガ回路16の出力端子は、フラッシュランプ28に対して電極間トリガ方式の点灯開始を行うように結線されている。より詳細には、トリガ回路16の正極側出力端子および負極側出力端子は、フラッシュランプ28のアノード電極66およびカソード電極68にそれぞれ電気的に接続されている。トリガ回路16より高電圧のトリガパルスTPが印加されると、フラッシュランプ28内でガスの絶縁破壊が起きて、電子の雪崩現象により微弱な点灯(グロー放電)が生じるようになっている。トリガ回路16は、パルストランス等の昇圧回路を有し、たとえば5kV〜10kVの尖頭値を有する高電圧のトリガパルスTPを出力するように構成されている。
【0027】
なお、フラッシュランプ28は交換可能な消耗部品であり、点灯を繰り返す度に徐々に劣化し、ランプ電極間の絶縁破壊電圧が次第に高くなる。この点に関しては、制御プログラムないし制御部20の制御の下で、トリガ回路16より出力されるトリガパルスTPの電圧値(尖頭値)を経時的にあるいは必要に応じて段階的に上げる調整を行うことができる。
【0028】
点灯エラー保護回路18は、開閉器100、サージ吸収素子102および1個(または複数個)のダイオード104を有して構成され、主点灯回路30からフラッシュランプ28に供給されるべきランプ駆動電流I
Rを通し、点灯開始で点灯エラーが生じた際にフラッシュランプ28で発生するサージ電圧を速やかに吸収するように構成されている。
【0029】
より詳細には、開閉器100は、主点灯回路30とフラッシュランプ28との間でフラッシュランプ28と直列に接続され、制御部20の制御の下で点灯開始前は開状態を保ち、点灯開始後に開状態から閉状態に切り替わるように構成されている。より具体的には、開閉器100は、好ましくは電磁接触器からなり、通常はリレーと組み合わせて用いられる。この種の開閉器は、多数回の頻繁な開閉に耐えられる反面、瞬時的な大電流、特にサージ電流をオフ状態(開状態)でも主接点間の放電によって通しやすい一面もある。
【0030】
サージ吸収素子102は、主点灯回路30と開閉器100との間で主点灯回路30側から見てフラッシュランプ28と並列に接続される。ダイオード104は、好ましくは大型・大容量の高耐圧ダイオードであり、主点灯回路30とサージ吸収素子102との間でフラッシュランプ28と直列に順方向の向き(ランプ駆動電流I
Rを通す向き)で接続される。
【0031】
サージ吸収素子102は、所定の導通開始電圧SV以上の電圧を印加されると導通(または放電)するようになっている。より具体的には、サージ吸収素子102は、バリスタ、アレスタ、アレスタと抵抗の複合体、またはアリスタとバリスタの複合体からなり、上記導通開始電圧(または放電開始電圧)SV以上の電圧を印加されると、その内部が導通(または放電)状態となって、印加電圧を吸収するように構成されている。
【0032】
この実施形態において、サージ吸収素子102の導通開始電圧SVは、点灯エラーが生じた場合はフラッシュランプ28からのサージ電圧に対してダイオード104が逆方向で導通しない(サージ電圧が主点灯回路30に回り込まない)うちにサージ吸収素子102が導通(または放電)し、点灯エラーが生じない場合や主点灯時にはトリガパルスTPの印加電圧または主点灯回路30の出力電圧に対してサージ吸収素子102が誤って導通しないように設定される。
【0033】
主制御部20は、好ましくはCPU(マイクロコンピュータ)を含んで構成され、プログラムメモリに格納している各種プログラム(ソフトウェア)にしたがって装置各部の動作、特にシマー回路15、トリガ回路16、主放電回路30(充電回路40、駆動回路44)、冷却装置32、点灯エラー保護回路18(開閉器100)等の動作および装置全体のシーケンスを制御し、タッチパネルやディスプレイ等を含む操作盤(図示せず)を介してユーザ(作業員、保守員等)と情報(設定値、モニタ情報等)をやりとりする。
[チャンバ回りの構成]
【0034】
ここで、
図2および
図3を参照して、このYAGレーザ加工装置におけるチャンバ10回りの構成を説明する。
【0035】
チャンバ10は、台座(ベース)50の上に複数のボルト52で固定される上面の開口した下部チャンバ部材10Lと、この下部チャンバ部材10Lの上に被さるようにして着脱可能に取り付けられる下面の開口した上部チャンバ部材10Uとで構成される。本実施形態において、下部チャンバ部材10Lおよび上部チャンバ部材10Uは、導体であるステンレスからなり、
図3に示すように、それぞれの開口部およびフランジ部54L,54Uを上下に突き合わせ、Oリング56を介して液密かつ分解可能に結合される。
【0036】
下部チャンバ部材10Lおよび上部チャンバ部材10Uは、ステンレス以外の導体、たとえばアルミニウム、銅、真鍮等の金属を用いて形成することができる。また、樹脂の表面に金属メッキを施すことで形成することもできる。
【0037】
図3において、下部チャンバ部材10Lの内側には、コ字状の下部保持部材58Lを介して下部半楕円反射鏡筒部材25Lが固定され、この下部半楕円反射鏡筒部材25Lの内側にYAGロッド22が取り付けられる。一方、上部チャンバ部材10Uの内側には、コ字状の上部保持部材58Uを介して上部半楕円反射鏡筒部材25Uが固定され、この上部半楕円反射鏡筒部材25Uの内側の所定位置にフラッシュランプ28が取り付けられる。下部半楕円反射鏡筒部材25Lおよび上部半楕円反射鏡筒部材25Uは、上下一体に合わさって断面楕円形の楕円反射鏡筒25を形成する。この楕円反射鏡筒25内の長手方向に延びる一対の楕円焦点軸上に、YAGロッド22およびフラッシュランプ28がそれぞれ配置される。
【0038】
下部保持部材58Lおよび上部保持部材58Uは、たとえばステンレスまたはアルミニウム等の導体で構成されている。下部楕円反射鏡筒部材25Lおよび上部楕円反射鏡筒部材25Uは、内壁面が金メッキされた導体板たとえば銅板で構成されている。図示の構成例における下部楕円反射鏡筒部材25Lおよび上部楕円反射鏡筒部材25Uは、下部保持部材58Lおよび上部保持部材58Uを介して下部チャンバ部材10Lおよび上部チャンバ部材10Uにそれぞれ接続されている。
【0039】
チャンバ10の中で、下部チャンバ部材10Lの開口部と上部チャンバ部材10Uの開口部とはガラス板60で仕切られている。このガラス板60により、下部チャンバ部材10Lの内側でYAGロッド22の周囲に冷却水を流す冷却水通路と、上部チャンバ部材10Uの内側でフラッシュランプ28の周囲に冷却水を流す冷却水通路とが分離される。また、フラッシュランプ28の交換やメンテナンス等の際に万が一フラッシュランプ28のガラス管が壊れても、ガラスの破片がガラス板60の上に留まり、YAGロッド22側には及ばないようになっている。
【0040】
図2において、フラッシュランプ28は、たとえばキセノンフラッシュランプであり、たとえば内径10mmの石英ガラス製直管(ガラス管)の両端部に円柱形状のカソード電極66およびアノード電極68(
図1に図示、
図2では図示省略)を配置し、キセノンガスを封入している。カソード電極66およびアノード電極68は、フラッシュランプ28の両端から軸方向外側に延びる絶縁被覆電線70,72にそれぞれ電気的に接続されている。絶縁被覆電線70,72の端には、着脱可能な接続端子を構成する舌部74,76がそれぞれ取り付けられている。
【0041】
フラッシュランプ28内の両電極66,68間の距離またはアーク長は、点灯性能の面では短いほど好ましい。しかし、アーク長が短すぎると、レーザ発振効率の低下やレーザ出力の低下等の支障をきたすばかりでなく、熱レンズ効果の影響でレーザ光のビーム品質も低下する。逆に、アーク長が長いと、フラッシュランプ28の点灯性能に支障をきたすばかりでなく、主電流つまりランプ駆動電流I
Rが増加するので、主点灯回路30の電流定格を大きく必要があり、回路設計の難しさやコストアップにつながる。このことから、フラッシュランプ28の電極間距離(アーク長)は、通常は60〜90mmの長さに選ぶことが実用的に最も望ましい。
【0042】
フラッシュランプ28は、上部チャンバ部材10Uの両端にボルト78により着脱可能に取り付けられるランプ押え80にその両端部をOリング82を介して保持される。YAGロッド22はたとえば直径8mmの丸棒の形体を有し、その両端部が筒状のレーザロッドホルダ84に保持される。レーザロッドホルダ84は、下部チャンバ部材10Lの両端にボルト86により着脱可能に取り付けられるロッド押え88にOリング90を介して保持される。
【0043】
下部楕円反射鏡筒部材25Lおよび上部楕円反射鏡筒部材25Uは、両端部にて下部保持部材58Lおよび上部保持部材58Uにそれぞれ保持され、ボルト92,94により下部チャンバ部材10Lおよび上部チャンバ部材10Uに固定される。
【0044】
下部チャンバ部材10Lおよび上部チャンバ部材10Uには、下部楕円反射鏡筒部材25Lおよび上部楕円反射鏡筒部材25U内の冷却水通路をチャンバ10の外の配管(図示せず)に接続するための流路96が機械加工により形成されている。この流路96の出口付近にはメッシュフィルタ98が設けられる。上部チャンバ部材10Uの上面には、流路96から気泡を抜くためのキャップ100が取り付けられる。
【0045】
この実施形態では、下部チャンバ部材10Lおよび上部チャンバ部材10Uの材質がステンレスまたはアルミニウム等の金属であるため、チャンバ10内に液密な流路96を形成する機械加工や、下部保持部材58L、上部保持部材58U、レーザロッドホルダ84等の部品加工、取付け、組立て等を簡単かつ高精度に行うことができる。
[トリガ機構及び点灯エラー保護回路の作用]
【0046】
以下に、この実施形態のYAGレーザ加工装置におけるトリガ機構および点灯エラー保護回路18の作用を詳細に説明する。
【0047】
制御部20は、電源スイッチが投入されると、充電回路40内のスイッチング素子(図示せず)をオンにして、コンデンサ36を所定の電圧に充電させる。しかし、主点灯回路30のスイッチング素子42をオフ状態に保持しておくとともに、点灯エラー保護回路18の開閉器100もオフ状態(開状態)に保持しておく。そして、レーザ発振部12よりパルスレーザ光LBを発振出力するときは、後述するように、それに先立ってトリガ回路16に所定の尖頭値を有する高電圧のトリガパルスTPを発生させ(それによってフラッシュランプ28が点灯し)、シマー回路15を通じてフラッシュランプ28内に微弱なシマー電流I
Sを流し続けて待機状態とする。
【0048】
トリガ回路16より出力された高電圧のトリガパルスTPは、フラッシュランプ28の両電極66,68間に直接印加される。これにより、正常な場合つまり点灯エラーが生じない場合は、フラッシュランプ28内のカソード電極68付近でキセノンガスの絶縁が破壊され、ガス分子が電離する。そうすると、ガス分子の電離から発生した電子がアノード電極66に向かいながらガス分子と衝突して次々と電離または励起を拡大させ、電子の雪崩現象が起きて放電が開始する。
【0049】
この場合、トリガ回路16からのトリガパルスTPは、フラッシュランプ28の両電極66,68間のキセノンガスに印加されるだけでなく、点灯エラー保護回路18およびシマー回路15にも印加される。点灯エラー保護回路18においては、開状態の開閉器100にトリガパルスTPが印加される。シマー回路15においては、出力段のダイオード(保護回路)にトリガパルスTPが逆バイアスで印加される。
【0050】
ここで、フラッシュランプ28内で首尾よくキセノンガスの絶縁が破壊される場合は、開状態の開閉器100内で主接点間のギャップが導通(放電)するには至らないため、サージ吸収素子102にかかる電圧はそれほど高くはなく(導通開始電圧SVより十分に低く)、サージ吸収素子102は非導通状態を維持する。シマー回路15内でも出力段のダイオードがトリガパルスTPを遮断する。
【0051】
フラッシュランプ28内ではカソード電極68付近でキセノンガスの絶縁が破壊されると、ガス分子が電離する。そして、ガス分子の電離から発生した電子がアノード電極66に向かいながらガス分子と衝突して次々と電離または励起を拡大させ、電子の雪崩現象が起きて放電が開始する。さらにシマー回路15からのシマー電流I
Sにより、グロー放電を継続させる(シマー点灯させる)。
【0052】
制御部20は、フラッシュランプ28が正常にシマー点灯したこと(予備放電準備完了または待機状態)をシマー回路15からの点灯確認信号SCで確認すると、点灯エラー保護回路18の開閉器100をそれまでの開状態(オフ状態)から閉状態(オン状態)に切り替える。これにより、主点灯回路30よりフラッシュランプ28に対して主電流つまりランプ励起電流I
Rの供給(本点灯)が可能な状態となる。しかる後、制御部20は、パルスレーザ光LBを発振出力するための指令を入力すると、たとえばエミッションボタン(図示せず)が押されると、主点灯回路30の駆動回路44を制御してスイッチング素子42をオンさせる。これにより、主点灯回路30より点灯エラー保護回路18(ダイオード104およびオン状態の開閉器100)を介してパルス波形の主電流つまりランプ励起電流I
Rがフラッシュランプ28に供給され、フラッシュランプ28より同じパルス波形の励起光が発生される。
【0053】
なお、点灯エラー保護回路18において、サージ吸収素子102の導通開始電圧SVは、主点灯回路30の出力電圧(スイッチング素子42の出力電圧)からダイオード104の順方向降下電圧を減じた値よりも十分高い値に設定されている。したがって、主点灯回路30よりフラッシュランプ28にランプ励起電流I
Rが供給されている時に、サージ吸収素子102が誤動作(誤って導通)することはない。
【0054】
フラッシュランプ28より発せられた励起光は、楕円反射鏡筒25の内壁で反射し、あるいはガラス板60を透過して、YAGロッド22の側面に入射し、YAGロッド22を励起する。そして、上記のように、励起されたYAGロッド22の両端面より軸方向に出た一定波長の光が、光共振器ミラー24,26(
図1)の間で反射を繰り返して増幅されたのちパルスレーザ光LBとして出力ミラー26を抜け出る。
【0055】
しかし、点灯開始の際にトリガパルスTPの印加にも係らずフラッシュランプ28内でキセノンガスの絶縁が破壊されない場合は、その反動で瞬発的かつ尖頭値の非常に高いサージ電圧が発生する。そうすると、点灯エラー保護回路18においては、開状態の開閉器100が主接点間の放電によってフラッシュランプ28からのサージ電圧をサージ吸収素子102側に通し、サージ吸収素子102が直ちに導通(または放電)する。このように点灯エラー保護回路18の開閉器100およびサージ吸収素子102が協働してフラッシュランプ28からのサージ電圧を速やかに吸収するので、サージ電圧が主点灯回路30に回り込んでスイッチング素子(トランジスタ)42等を破壊するような事態を確実かつ効率的に防止することができる。
【0056】
点灯エラー保護回路18に設けられるダイオード104も、主放電回路30へのサージ電圧の回り込みを防止し、スイッチング素子(トランジスタ)42等の電源回路部品をサージ電圧から保護するために機能する。この実施形態では、上記のようにフラッシュランプ28に近い開閉器100およびサージ吸収素子102がサージ電圧を速やかに吸収するので、ダイオード104が受けるサージ電圧の逆バイアスはかなり緩和される(ダイオード104の定格逆電圧より低くなる)。このため、点灯エラー保護回路18に設けられるダイオード104は、大型・大容量の高耐圧ダイオードであれば通常は1個で済み、複数個設ける場合でも2個で十分である。見方を変えれば、主点灯回路30のスイッチング素子42に高逆耐圧トランジスタあるいは保護用ダイオード付きのトランジスタ等を用いる場合は、ダイオード104を省くことも可能である。
【0057】
シマー回路15においても、点灯エラー時にはフラッシュランプ28の向こう側で点灯エラー保護回路18がサージ電圧を速やかに吸収するので、シマー回路15の出力段に設ける保護回路の負担が小さくて済む。このため、該保護回路に用いる高耐圧ダイオードの数を可及的に少なくすることができる。
【0058】
上記のように、この実施形態においては、点灯開始で点灯エラーが生じた際にフラッシュランプ28で発生するサージ電圧を点灯エラー保護回路18が速やかに吸収するので、主点灯回路30およびシマー回路15をサージ電圧から同時に保護することができる。さらに、主点灯回路30においては、フラッシュランプ28との間に設ける保護回路用のダイオードの数を可及的に少なくし、あるいは省くことが可能となるので、主点灯回路30よりフラッシュランプ28にランプ電流I
Rを供給する際の電圧降下ないし電力損失を大幅に低減し、レーザ発振効率を向上させることができる。また、シマー回路15においては、出力段に設ける保護回路の負担が軽減されるので、たとえば保護回路に用いるダイオードの数を可及的に少なくすることができる。これにより、装置性能、信頼性を向上させると同時に低コスト化を実現することができる。
【0059】
また、この実施形態においては、点灯エラー保護回路18の開閉器100を電磁接触器で構成し、これをバリスタやアレスタ等のサージ吸収素子102と組み合わせることにより、フラッシュランプ28からのサージ電圧に対する吸収作用の高速応答性と多数回のサージに対する高い耐久性とを上手に両立させることが可能であり、装置性能、信頼性および低コスト化の一層の向上を達成することができる。
【0060】
また、この実施形態のYAGレーザ加工装置においては、YAGロッド22およびフラッシュランプ28を冷却水に晒して収容するチャンバ10の中にトリガ電極を設けずに、フラッシュランプ28を電極間トリガ方式により点灯させることができるので、チャンバ10内部におけるトリガ電極からの漏電を解消することができる。また、チャンバ10の材質にステンレスやアルミニウム等の金属(導体)を使えるので、チャンバ10の機械加工や付属部品の加工、取付け、組立て等を簡単かつ高精度に行える。このことにより、フラッシュランプ28に対するトリガ機構や冷却機構においても、装置性能、信頼性、安全性を保ちつつ簡易化と低コスト化を実現することができる。
[他の実施形態又は変形例]
【0061】
上記の実施形態において、点灯エラー保護回路18の各部、特に開閉器100およびサージ吸収素子102の数は1つに限定されず、複数個設けることも可能である。たとえば、導通開始電圧SVの比較的低い複数個のサージ吸収素子102を用意し、スイッチ回路網を介して、いずれか1個のサージ吸収素子102を開閉器100に接続し、あるいは直列接続の複数の吸収素子102を開閉器100に接続する構成も可能である。かかる構成においては、たとえば、トリガパルスTPの電圧値(尖頭値)の変更調整に合わせて、使用するサージ吸収素子102の個数または接続形態を選択することができる。
【0062】
本発明は、上記実施形態におけるようなYAGレーザ加工装置に限定されず、任意の固体レーザ装置に適用可能である。