特許第6502126号(P6502126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6502126導電パターン形成用熱転写リボン及び導電パターンの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502126
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】導電パターン形成用熱転写リボン及び導電パターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20190408BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20190408BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20190408BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20190408BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20190408BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   H05K3/12 630Z
   H05K1/09 A
   H01B5/14 Z
   H01B1/20 A
   H01B1/00 H
   H01B13/00 503D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-43234(P2015-43234)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-162994(P2016-162994A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】渡部 弘也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−530813(JP,A)
【文献】 特開2014−191894(JP,A)
【文献】 特開2004−303962(JP,A)
【文献】 特開2000−091715(JP,A)
【文献】 特開2014−225070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 3/12
H01B 1/00
H01B 1/20
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、
前記支持層の上に設けられた保護層と、
前記保護層の上に設けられ、導電性ナノ材料を含む導電層と、
前記導電層の前記保護層とは反対側に設けられて前記導電性ナノ材料を被い、接着性材料を含む接着層と、
を備える導電パターン形成用熱転写リボンであって
前記支持層と前記保護層との密着性は、加熱によって低下し、
前記接着層の厚さは、前記導電パターン形成用熱転写リボンの前記接着層側の面を対象物に対して加熱圧接したときに、前記接着層に被われていた前記導電性ナノ材料の一部が前記接着層を貫通して前記対象物に接触できる厚さであり、
前記導電性ナノ材料は、金ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ及びカーボンナノチューブよりなる群から選択された少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする導電パターン形成用熱転写リボン。
【請求項2】
前記保護層は、積層構造体であって、熱によって前記支持層との密着性が低下する材料を含有する第1剥離層を、前記支持層に対向する側に備える、請求項1記載の導電パターン形成用熱転写リボン。
【請求項3】
前記支持層は、積層構造体であって、熱によって前記保護層との密着性が低下する材料を含有する第2剥離層を、前記保護層に対向する側に備える、請求項1または請求項2に記載の導電パターン形成用熱転写リボン。
【請求項4】
前記導電性ナノ材料の一部は、前記導電層の前記保護層とは反対側の面から露出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電パターン形成用熱転写リボン。
【請求項5】
前記導電層は接着性材料を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電パターン形成用熱転写リボン。
【請求項6】
支持層と、前記支持層の上に設けられ、熱によって前記支持層との密着性が低下する保護層と、前記保護層の上に設けられ、導電性ナノ材料を含む導電層と、前記導電層の前記保護層とは反対側に設けられて前記導電性ナノ材料を被い、接着性材料を含む接着層と、を備えた導電パターン形成用熱転写リボンを用いて対象物の表面に導電パターンを形成する方法であって、
前記導電パターン形成用熱転写リボンの前記接着層を前記対象物の表面に接触させる接触工程と、
前記導電パターンの形状に対応した前記導電パターン形成用熱転写リボンの一部の領域に熱を加える加熱工程と、
前記支持層を前記対象物から引き離し、前記領域に対応した前記導電層の部分及び前記保護層の部分を、前記対象物の表面に導電パターンとして転写する転写工程と、
を備える導電パターンの形成方法であって
前記接着層の厚さは、前記接触工程の開始前まで前記接着層に被われていた前記導電性ナノ材料の一部が、前記加熱工程において前記接着層を貫通して前記対象物に接触できる厚さであり、
前記導電性ナノ材料は、金ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ及びカーボンナノチューブよりなる群から選択された少なくとも1種の材料を含み、
前記対象物の表面には配線パターンが設けられ、
前記転写工程において、転写された前記導電層の部分が前記配線パターンと導通することを特徴とする導電パターンの形成方法。
【請求項7】
前記導電パターン形成用熱転写リボンは長尺状であって第1ロールとして巻回されており、
前記対象物は長尺状であって第2ロールとして巻回されており、
前記第1ロール及び前記第2ロールからそれぞれ前記導電パターン形成用熱転写リボン及び前記対象物を引き出しながら前記接触工程、前記加熱工程及び前記転写工程を行う、請求項6に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項8】
サーマルヘッドによって前記導電パターン形成用熱転写リボンと前記対象物とを押しつけながら相対的に移動させることにより、前記接触工程、前記加熱工程及び前記転写工程を行う、請求項6または請求項7に記載の導電パターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電パターン形成用熱転写リボン及び導電パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ITO(Indium Tin Oxide)に代わる透明導電膜として、導電性ナノ材料を用いた透明導電膜が注目されている。この透明導電膜では、導電性ナノ材料として例えば銀ナノワイヤが用いられる。特許文献1には、金属ナノワイヤを主成分とする透明導電層を備えた透明導電フィルムが開示される。また、特許文献2には、銀ナノワイヤの製造方法及び銀ナノワイヤを含有するコーティング剤が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-191894号公報
【特許文献2】特開2014-189888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような金属ナノ材料を含む導電性材料を用いて導電パターンを形成する方法として、導電性材料を成膜した後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって所望のパターンを形成する方法と、印刷によって直接パターンを形成する方法とが考えられる。この印刷によってパターンを形成する方法では、工程の簡素化及び短時間で所望のパターンを形成できるメリットがある。しかし、印刷によって形成された導電パターンにおいては、パターン内の金属ナノ材料の密度にばらつきが発生しやすく、安定した導電性を得ることが困難である。特に細い導電パターンを形成する場合、金属ナノ材料の粗密による抵抗値のばらつきや電気的な断線などの不具合が顕著になりやすい。
【0005】
本発明は、導電性ナノ材料を用いてパターンを安定して形成することができる導電パターン形成用熱転写リボン及び導電パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の導電パターン形成用熱転写リボンは、支持層と、支持層の上に設けられた保護層と、保護層の上に設けられ、導電性ナノ材料を含む導電層と、を備え、支持層と保護層との密着性は、加熱によって低下することを特徴とする。このような構成によれば、形成する導電パターンに対応したリボンの位置を加熱することで、導電性ナノ材料を含む導電パターンを熱転写することができる。本発明では、固体の導電層を熱転写して導電パターンを形成できるため、導電性ナノ材料の密度のばらつきが少ない導電パターンを形成することができる。
【0007】
本発明の導電パターン形成用熱転写リボンにおいて、保護層は、積層構造体であって、熱によって支持層との密着性が低下する材料を含有する第1剥離層を、支持層に対向する側に備えていてもよい。このような構成により、加熱によって第1剥離層から容易に支持層を剥がすことができる。
【0008】
本発明の導電パターン形成用熱転写リボンにおいて、支持層は、積層構造体であって、熱によって保護層との密着性が低下する材料を含有する第2剥離層を、保護層に対向する側に備えていてもよい。このような構成により、加熱によって第2剥離層から容易に支持層を剥がすことができる。
【0009】
本発明の導電パターン形成用熱転写リボンにおいて、導電性ナノ材料の一部は、導電層の保護層とは反対側の面から露出してもよい。このような構成により、熱転写によって形成された導電パターンと、この導電パターンが形成された対象物との導通が得られる。
【0010】
本発明の導電パターン形成用熱転写リボンにおいて、導電層の保護層とは反対側には接着性材料を含む接着層が設けられ、接着層の厚さは、熱転写型導電性リボンの接着層側の面を対象物に対して加熱圧接したときに、導電性ナノ材料の一部が接着層を貫通して対象物に接触できる厚さであってもよい。このような構成により、接着層による導電層の確実な接着とともに、導電パターンと対象物との間の導通を得ることができる。
【0011】
本発明の導電パターン形成用熱転写リボンにおいて、導電層は接着性材料を含んでいてもよい。このような構成により、導電層に含まれる接着性材料を介して導電層を対象物に確実に接着できるようになる。
【0012】
本発明の導電パターン形成用熱転写リボンにおいて、導電性ナノ材料は、金ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ及びカーボンナノチューブよりなる群から選択された少なくとも1種の材料を含んでいてもよい。このような構成により、透光性と導電性とを備えた導電パターンを形成することができる。
【0013】
本発明の導電パターン形成方法は、支持層と、支持層の上に設けられ、熱によって支持層との密着性が低下する保護層と、保護層の上に設けられ、導電性ナノ材料を含む導電層と、を備えた導電パターン形成用熱転写リボンを用いて対象物の表面に導電パターンを形成する方法であって、導電パターン形成用熱転写リボンの導電層を対象物の表面に接触させる接触工程と、導電パターンの形状に対応した熱転写型導電性リボンの一部の領域に熱を加える加熱工程と、支持層を対象物から引き離し、この領域に対応した導電層の部分及び保護層の部分を、対象物の表面に導電パターンとして転写する転写工程と、を備えたことを特徴とする。このような構成によれば、形成する導電パターンに対応したリボンの位置を加熱することで、導電性ナノ材料を含む導電層のパターンを熱転写することができる。
【0014】
本発明の導電パターンの形成方法において、対象物の表面には配線パターンが設けられ、転写工程において、転写された導電層の部分が配線パターンと導通させるようにしてもよい。このような構成により、熱転写された導電パターンと対象物の配線パターンとの間の導通を得ることができる。
【0015】
本発明の導電パターンの形成方法において、導電性ナノ材料は、金ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ及びカーボンナノチューブよりなる群から選択された少なくとも1種の材料を含んでいてもよい。このような構成により、透光性と導電性とを備えた導電パターンを形成することができる。
【0016】
本発明の導電パターンの形成方法において、導電パターン形成用熱転写リボンは長尺状であって第1ロールとして巻回されており、対象物は長尺状であって第2ロールとして巻回されており、第1ロール及び第2ロールからそれぞれ導電パターン形成用熱転写リボン及び対象物を引き出しながら接触工程、加熱工程及び転写工程を行うようにしてもよい。このような構成により、ロールトゥロールで導電性ナノ材料を含む導電パターンを連続的に形成することができる。
【0017】
本発明の導電パターンの形成方法において、サーマルヘッドによって導電パターン形成用熱転写リボンと対象物とを押しつけながら相対的に移動させることにより、接触工程、加熱工程及び転写工程を行うようにしてもよい。このような構成により、例えばサーマルヘッドの走査によって導電性ナノ材料を含む導電パターンを連続的に熱転写することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、導電性ナノ材料を用いてパターンを安定して形成することができる導電パターン形成用熱転写リボン及び導電パターンの形成方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る導電パターン形成用熱転写リボンを例示する断面図である。
図2】本実施形態に係る導電パターンの形成方法を例示するフローチャートである。
図3】(a)〜(c)は導電パターンの形成方法を例示する断面図である。
図4】ロールによる熱転写の例を示す模式図である。
図5】(a)及び(b)は、サーマルヘッドの走査による熱転写の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0021】
(導電パターン形成用熱転写リボン)
図1は、実施形態に係る導電パターン形成用熱転写リボンを例示する断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る導電パターン形成用熱転写リボン1(以下、単に「リボン1」と言う。)は、支持層10と、保護層20と、導電層30と、を備える。保護層20は、支持層10と導電層30との間に設けられる。
【0022】
支持層10は、積層される保護層20及び導電層30を支持する層である。支持層10には、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)による樹脂フィルムが用いられる。
【0023】
保護層20は、支持層10の一方側(本実施形態では「上」とする。)に設けられる。保護層20は導電層30を保護するための層である。すなわち、後述する導電層30を熱転写して導電パターンを形成した際、保護層20は導電パターンの表面を覆う保護部材の役目を果たす。保護層20には、例えばアクリル樹脂が用いられる。
【0024】
導電層30は保護層20の上に設けられる。導電層30は導電性ナノ材料31を含む。導電性ナノ材料31はバインダ32内に所定の割合で分散している。導電性ナノ材料31の一部は、導電層30の保護層20とは反対側の面から露出していてもよい。これにより、熱転写によって形成された導電パターンと、この導電パターンが形成された対象物との導通を確実に得ることができる。
【0025】
導電性ナノ材料31は、金ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ及びカーボンナノチューブよりなる群から選択された少なくとも1種の材料を含む。導電性ナノ材料31を用いることで、熱転写によって形成される導電パターンの高い透光性とともに低電気抵抗化を図ることができる。
【0026】
このような本実施形態に係るリボン1においては、加熱によって支持層10と保護層20との密着性が低下する機能を有する。これにより、リボン1を加熱した部分だけ支持層10を保護層20から剥離できるようになる。
【0027】
本実施形態に係るリボン1において、保護層20は積層構造体であってもよい。例えば、保護層20における支持層10に対向する側に第1剥離層21が設けられていてもよい。第1剥離層21は、熱によって支持層10との密着性が低下する機能を有する。第1剥離層21を設けることで、加熱によって第1剥離層21から容易に支持層10を剥がすことができるようになる。
【0028】
ここで、保護層20自体に支持層10に対する十分な剥離性がある場合には、第1剥離層21を設ける必要はない。また、保護層20自体に支持層10に対する剥離性があっても、さらに剥離性を高めたい場合には第1剥離層21を設けてもよい。
【0029】
本実施形態に係るリボン1において、支持層10は積層構造体であってもよい。例えば、支持層10における保護層20に対向する側に第2剥離層11が設けられていてもよい。第2剥離層11は、熱によって保護層20との密着性が低下する機能を有する。第2剥離層11を設けることで、加熱によって第2剥離層11と保護層20との密着性を低下させて、容易に支持層10を剥がすことができるようになる。
【0030】
また、本実施形態に係るリボン1において、導電層30の保護層20とは反対側に接着性材料を含む接着層40が設けられていてもよい。接着層40が設けられていることで、リボン1を対象物に接触させて加熱及び圧接した際、転写される導電パターンを確実に対象物に接着させることができる。
【0031】
接着層40を設ける場合、接着層40の厚さを、リボン1の接着層40側の面を対象物に対して加熱及び圧接したときに、導電性ナノ材料31の一部が接着層40を貫通して対象物に接触できる厚さにすることが望ましい。これにより、接着層40による導電パターンの確実な接着とともに、接着層40を貫通した導電性ナノ材料31の接触によって導電パターンと対象物との間の確実な導通を得ることができる。
【0032】
(導電パターンの形成方法)
次に、本実施形態に係る導電パターンの形成方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る導電パターンの形成方法を例示するフローチャートである。
図2に表したように、本実施形態に係る導電パターンの形成方法は、先ず、リボン1の接触を行う(ステップS101)。すなわち、本実施形態に係るリボン1と対象物との位置決めを行った後、リボン1を対象物に接触させる接触工程を行う。
【0033】
次に、リボン1の加熱を行う(ステップS102)。この加熱には圧接が含まれていてもよい。すなわち、リボン1を対象物に接触させた状態で、形成するパターン形状に対応した領域を加熱する処理を行う(加熱工程)。
【0034】
次に、導電層30の転写を行う(ステップS103)。先の加熱工程において加熱されたリボン1の領域においては、支持層10と保護層20との密着性が低下している。この状態で支持層10を剥がすことで、密着性の低下した保護層20及び導電層30は対象物に残され、その他の部分は支持層10とともに剥がされることになる。この残った保護層20及び導電層30が導電パターンとなる(転写工程)。
【0035】
図3(a)〜(c)は導電パターンの形成方法を例示する断面図である。
図3(a)には図2のステップS101に示す接触工程に対応した状態が表される。対象物100は、絶縁性の基材101と、基材101の表面に設けられた配線パターン102とを備える。また、図3(a)〜(c)に表したリボン1には接着層40が設けられている。接触工程では、対象物100の配線パターン102とリボン1の接着層40側とを向かい合わせて両者を接触させる。
【0036】
図3(b)には図2のステップS102の加熱工程に対応した状態が表される。加熱工程では、サーマルヘッドTHが用いられる。すなわち、サーマルヘッドTHをリボン1の支持層10側に接触させて必要な領域に熱を加える。サーマルヘッドTHは、例えば1200dpi程度の解像度で熱を加える領域を設定することができる。サーマルヘッドTHによる加熱とともにサーマルヘッドTHからリボン1を対象物100側に押圧する。
【0037】
図3(c)には図2のステップS103の転写工程に対応した状態が表される。先の加熱工程で熱が加えられた領域では、支持層10と保護層20との密着性が低下している。また、熱が加えられた接着層40の領域は、対象物100と密着した状態になっている。この状態で支持層10を引き上げると、熱が加えられた領域の保護層20及び導電層30が対象物100に残され、それ以外の部分は支持層10とともに剥離されることになる。
【0038】
残された保護層20及び導電層30は導電パターンPとして対象物100に転写される。すなわち、リボン1においてサーマルヘッドTHから熱を加えられた領域が導電パターンPとして対象物100に転写されることになる。
【0039】
ここで、導電パターンPの導電層30に含まれる導電性ナノ材料31の一部は、加熱工程において接着層40を貫通して対象物100の配線パターン102と接触することになる。これにより、導電パターンPと配線パターン102との確実な導通を得ることができる。
【0040】
このようなリボン1の熱転写による導電パターンPの形成では、固体の導電層30を熱転写して導電パターンPを形成できる。したがって、形成される導電パターンPに含まれる導電性ナノ材料31の密度のばらつきを少なくすることができる。
【0041】
導電性ナノ材料31を含む導電性インクをスクリーン等によって印刷塗布して導電パターンを形成する場合には、液体の導電性インクが用いられる。このため、印刷塗布時や乾燥時にムラが生じやすいため均一な膜厚や線幅を作ることが容易ではなく、導電パターン内で導電性ナノ材料31の密度にばらつきが発生しやすい。
【0042】
本実施形態のようにリボン1を用いた熱転写では、導電層30が固体であるため導電層30内で導電性ナノ材料31が移動しない。また、熱が加えられるときにはサーマルヘッドTHによって押圧されているため、導電性ナノ材料31の密度分布を維持したまま転写できることになる。したがって、導電パターンP内での導電性ナノ材料31の密度にばらつきが発生しにくく、抵抗値のばらつきや断線を起こすことなくパターン形成できるようになる。
【0043】
例えば、導電性ナノ材料31を含む導電性インクをスクリーン等によって印刷塗布して導電パターンを形成する場合、断線せずに安定した抵抗値を得るためには線幅として100μm以下の導電パターンを形成することは困難である。本実施形態に係るリボン1を用いた熱転写では、線幅として100μm以下の導電パターンPであっても断線せず安定した抵抗値を得ることが可能である。
【0044】
(ロールによる熱転写)
次に、ロールによる熱転写の例を説明する。
図4は、ロールによる熱転写の例を示す模式図である。
図4に表したように、リボン1は長尺状に設けられ、第1ロールR1として巻回されている。一方、対象物100も長尺状に設けられ、第2ロールR2として巻回されている。第1ロールR1及び第2ロールR2を用いて熱転写を行うには、第1ロールR1からリボン1を引き出して巻き取りロールW1に巻き取っていく。また、第2ロールR2から対象物100を引き出して巻き取りロールW2に巻き取っていく。この際、リボン1と対象物100とを同じ方向及び同じ速度で巻き取っていき、途中で両者をサーマルヘッドTHと支持台BPとの間で挟んで加熱及び圧接を行う。
【0045】
このリボン1及び対象物100の走行のタイミングに合わせてサーマルヘッドTHからリボン1に熱を加える。これによってリボン1及び対象物100をロールトゥロールで走行させながら導電パターンPの熱転写を連続的に行うことができる。
【0046】
(走査による熱転写)
次に、サーマルヘッドTHの走査による熱転写の例を説明する。
図5(a)及び(b)は、サーマルヘッドの走査による熱転写の例を示す模式図である。
先ず、図5(a)に表したように、対象物100とリボン1とを対向させて、リボン1の所定位置にサーマルヘッドTHを接触させる。この接触によってリボン1が対象物100側に押しつけられ、リボン1と対象物100とが接触することになる。
【0047】
次に、サーマルヘッドTHからリボン1に熱を加えるとともに、サーマルヘッドTHを一方向D1に移動(走査)させる。サーマルヘッドTHは、図5(a)に示す位置から図5(b)に示す位置まで移動する。このサーマルヘッドTHの移動(走査)による対象物100との相対的な位置に合わせてサーマルヘッドTHからリボン1に熱を加える。これにより、対象物100の所定位置に導電パターンPが連続的に形成される。
【0048】
なお、図5(a)及び(b)に示す例ではサーマルヘッドTHを移動(走査)させているが、サーマルヘッドTHを固定して対象物100を移動させてもよい。また、サーマルヘッドTH及び対象物100の両方を移動させてもよい。すなわち、サーマルヘッドTHと対象物100とを相対的に移動させながらサーマルヘッドTHからリボン1を加熱及び圧接すればよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るリボン1及び導電パターンPの形成方法よれば、導電性ナノ材料31を用いた導電パターンPを熱転写によって安定して形成することができる。また、フォトリソグラフィ及びエッチングを行うことなく直接導電パターンPを形成できるので、ドライプロセスのみでパターン形成することができる。特に、線幅の細い導電パターンPであっても、短時間で確実なパターン形成を行うことが可能になる。
【0050】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0051】
1…導電パターン形成用熱転写リボン
10…支持層
11…第2剥離層
20…保護層
21…第1剥離層
30…導電層
31…導電性ナノ材料
32…バインダ
40…接着層
100…対象物
101…基材
102…配線パターン
TH…サーマルヘッド
P…導電パターン
R1…第1ロール
R2…第2ロール
W1,W2…巻き取りロール
図1
図2
図3
図4
図5