(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第2の実施形態に係る耐油性通気性包装材料の一例を示す、概念的な断面図である。
【
図2】網状構造体を構成する部材の一例である、割繊維フィルム(縦ウェブ)の部分斜視図である。
【
図3】
図2に示す割繊維フィルムの製造に用いられる原反フィルムに割繊処理を施した部分斜視図である。
【
図4】網状構造体を構成する部材の一例である、網状フィルム(横ウェブ)の部分斜視図である。
【
図5】
図4に示す網状フィルムの製造に用いられる原反フィルムにスリット処理を施した部分斜視図である。
【
図6】
図1に示す耐油性通気性包装材料を構成する強化材層の例を示す概念図である。
【
図7】
図1に示す耐油性通気性包装材料を構成する他の強化材層の例を示す概念図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る包装体の概念的な断面図である。
【0016】
[第1実施形態:プラスチック製耐油性通気性包装材料]
本発明は、好ましい実施形態においては、プラスチック製の耐油性通気性包装材料に関する。特には、耐油性加工したプラスチック製フィルムからなる耐油性通気性包装材料である。すなわち、本発明による耐油性通気性包装材料は、紙を含まない。
【0017】
プラスチック製フィルムは、包装材料として使用されうる一般的なフィルムであってよく、特には、通気性を備えるフィルムであることが好ましい。通気性を備えるフィルムとしては、透湿性防水フィルム、不織布、合成紙から選択されるものが好ましいが、これらには限定されない。さらに具体的には、ポリオレフィン樹脂を使用するフラッシュ紡糸法による不織布等を好ましく用いることができる。あるいは、本来は所望の通気性を備えていない材質からなるフィルムにも、穿孔加工し、事後的に通気性を付与したフィルムであってもよい。このようなフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムが挙げられるが、これらには限定されない。
【0018】
プラスチック製フィルムは、用途に応じた強度、厚み、透湿性、耐熱性、目開きを備えるものであれば、単一材料で構成された一枚のフィルムであってもよい。あるいは、特性及び/または材料の異なる複数のプラスチック製フィルムを積層した構造であってもよい。
【0019】
プラスチック製フィルムは、耐油性加工する前に、表面処理をして、所望の特性を付与してもよい。例えば、耐油性加工を容易にしうる、コロナ処理や、薬剤によるコーティング処理をすることができるが、処理方法はこれらには限定されない。
【0020】
本実施形態において、耐油性通気性包装材料が単層からなる場合、プラスチック製フィルムの少なくとも一方の面が耐油性加工されている。耐油性加工は、耐油性紙の製造に通常適用される、一般的な耐油性剤を用いることができる。特には、フッ素系耐油性剤が好ましく、炭素鎖長が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物を含有するフッ素系耐油性剤がより好ましく、炭素鎖長が6以下のパーフロロ炭化水素のカルボン酸エステル又は塩、炭素鎖長が6以下のパーフロロ炭化水素のリン酸エステル等が挙げられるが、これらには限定されない。一例として、特許第5418229号に記載されたフッ素共重合体を用いることもできる。
【0021】
フッ素系耐油性剤は、水系、エタノール系などの溶媒に溶解させた塗工用溶液として、耐油性加工に用いることが好ましい。特に、包装材を食品包装に使用した際の安全性、及び消泡性の観点から、エタノールを溶媒として塗工用溶液を調製することが好ましい。塗工用溶液の濃度は、2〜10(体積/体積)%とすることが好ましい。また、このときのWet塗工量は、0.05〜0.25g/m
2とすることが好ましい。
【0022】
フッ素系耐油性剤の塗工用溶液は、フッ素系耐油性剤の特性を損なわず、かつ溶液に溶解する範囲で、任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤等が挙げられるが、これらには限定されない。フッ素系耐油性剤の特性を損なわない範囲の添加量は添加される成分に応じてさまざま異なる。
【0023】
溶媒中に溶解させたフッ素系耐油性剤の塗工用溶液は、種々の方法で、プラスチック製フィルムの表面に付与することができる。例えば、グラビア印刷機を使用して、プラスチック製フィルムに塗工用溶液を塗布してもよいし、プラスチック製フィルムを塗工用溶液に浸漬してもよい。その他に、フレキソ印刷、オフセット印刷、スプレー塗布といった方法が挙げられるが、これらには限定されない。
【0024】
プラスチック製フィルムに塗工用溶液を付与した後、100℃以上、好ましくは100〜150℃、さらに好ましくは、100〜130℃で、30秒以上、好ましくは、30〜60秒にわたって乾燥させることが好ましい。かかる操作により、プラスチック製フィルムに耐油性を付与することが可能となる。
【0025】
耐油性通気性包装材料が、同一もしくは異なるプラスチック製フィルムを積層した多層からなる場合、プラスチック製フィルムを積層してなる積層体を製造した後に、積層体の一方の表面あるいは両方の表面に、上記の態様に従って耐油性加工を施してもよい。あるいは、単層もしくは積層したプラスチック製フィルムに上記の態様に従って耐油性加工を施した後、耐油性加工面にさらに同一もしくは異なるプラスチック製フィルムを積層してもよく、耐油性加工がなされていない面にさらに同一もしくは異なるプラスチック製フィルムを積層してもよい。したがって、多層からなる耐油性通気性包装材料において、全てのプラスチック製フィルムに耐油性加工が施されている必要はなく、多層からなる耐油性通気性包装材料を構成する少なくとも一層のプラスチック製フィルムの少なくとも一方の面が耐油性加工されていれば、本発明に係る耐油性加工したプラスチック製フィルムからなる耐油性通気性包装材料であるといえる。
【0026】
本実施形態による耐油性通気性包装材料は、製造が比較的容易で、かつ、耐油性が付与されているため、食品包装などの用途に好ましく用いることができる。その他にも、紙を含まないため、包装体を製造する際に切断面から紙粉が発生せず、食品を汚染しないといった利点がある。
【0027】
[第2実施形態:4層構造の耐油性通気性包装材料]
本発明は、好ましい実施形態においては、多層の耐油性通気性包装材料に関する。
図1に本発明の第2実施形態に係る耐油性通気性包装材料1の概念的な断面図を示す。当該耐油性通気性包装材料は、有孔ポリエチレンテレフタレート層11と、有孔ポリエチレン層12と、微多孔性フィルム層13と、強化材層10が、この順に積層されてなり、微多孔性フィルム層13の有孔ポリエチレン層12接触面が耐油性加工されている。以下に、耐油性通気性包装材料1を構成する各層について詳細に説明する。
【0028】
(1)有孔ポリエチレンテレフタレート層
有孔ポリエチレンテレフタレート層11は、耐油性通気性包装材料1において、一方の最表面層を構成し、通常、食品等と接触する層として機能する。有孔ポリエチレンテレフタレート層11には、一般的なポリエチレンテレフタレートフィルム材が用いられる。有孔ポリエチレンテレフタレート層11の厚みは、耐油性通気性包装材料1の目的及び用途に合わせて当業者が適宜決定することができる。例えば、5〜50μm程度であり、典型的には、7〜30μmであるが、これらには限定されない。また、有孔ポリエチレンテレフタレート層11には、
図1に示すように、一定間隔で細孔50が形成されている。細孔50は、典型的には、有孔ポリエチレンテレフタレート層11及び後述する任意選択的な印刷層(図示せず)、及び有孔ポリエチレン層12の全てを貫通するように設ける。通気性を確保するためである。細孔50の大きさは、例えば、孔径が、0.05〜0.5mm程度であり、典型的には、0.1〜0.4mmであるが、これらには限定されない。また、細孔50の密度は、例えば、2〜10mm間隔であり、典型的には、2.5〜5mm間隔であるが、これらには限定されない。
【0029】
また、後述する印刷の有無にもよるが、有孔ポリエチレンテレフタレート層11は着色されていてもよい。有孔ポリエチレンテレフタレート層11は、市販のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることもできるが、一般的に知られている製造方法にて適宜製造することができる。さらに、必要に応じて、最表面となる面に、所望の機能を付与する表面処理を施したポリエチレンテレフタレート層を用いることもできる。
【0030】
有孔ポリエチレンテレフタレート層11は、本実施形態に係る耐油性通気性包装材料1を用いて包装体を形成する場合には、通常、内包物に接触せず、最表層を構成する。ポリエチレンテレフタレート層11は、食品包装用途で使用実績が多いため、樹脂が汎用化しており、かつ品質面での信頼性が高いといった利点がある。
【0031】
有孔ポリエチレンテレフタレート層11の裏面、すなわち有孔ポリエチレン層12と接する面には、印刷を施すことができる。有孔ポリエチレンテレフタレート層11には、鮮明な印刷が可能であり、また、表面側からでも印刷情報を鮮明に見ることができる。印刷は有孔ポリエチレンテレフタレート層11の裏面に行われるため、印刷部は包装体の表面に露出せず、包装体を食品とともに収納しても、印刷用のインキが食品と接触することはない。従って、印刷には、印刷インキ工業連合会の制定する「食品包装材料印刷インキに関する自主規制」NL規制に適合する、包装材料への印刷に一般に使用されているインキを使用することができる。
【0032】
(2)有孔ポリエチレン層
有孔ポリエチレン層12は、有孔ポリエチレンテレフタレート層11と、微多孔性フィルム層13の耐油性加工面との接着剤として機能し、層間の密着性を向上させる層である。有孔ポリエチレン層12としては、例えば、汎用の低密度ポリエチレンを用いることができる。有孔ポリエチレン層12の厚みは、耐油性通気性包装材料1の目的及び用途に合わせて当業者が適宜決定することができる。例えば、5〜50μm程度であり、典型的には、7〜30μmであるが、これらには限定されない。有孔ポリエチレン層12には、有孔ポリエチレンテレフタレート層11から、任意選択的に設けられる印刷層を通って貫通する細孔50が形成されている。
【0033】
(3)微多孔性フィルム層
微多孔性フィルム層13は、有孔ポリエチレンテレフタレート層11と、後述する強化材層10との間に位置し、少なくとも有孔ポリエチレンテレフタレート層11に接する面に、耐油性加工がなされている。微多孔性フィルム層13は、ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなるフィルムであって、充填剤を含有させたポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物を延伸することにより樹脂組成物に微多孔を形成して通気性を付与し、かつ、耐油性加工により耐油性を付与したものである。微多孔性フィルム層13の厚みは、耐油性通気性包装材料1の目的及び用途に合わせて当業者が適宜決定することができる。例えば、5〜70μm程度であり、典型的には、10〜50μmであるが、これらには限定されない。
【0034】
具体的には、微多孔性フィルム層13に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のα−オレフィンホモポリマー、エチレンと炭素数3〜18の少なくとも一種のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンおよび/またはブテン−1との共重合体、エチレンと酢酸ビニルおよび/またはアクリル酸エステル・メタクリル酸エステル類などエチレン性不飽和結合を有する有機カルボン酸誘導体との共重合体などが挙げられる。それらの中でも特に、エチレンと炭素数3〜8の少なくとも一種のα−オレフィンとの共重合体が、充填剤配合時の強度の点から好ましく、さらに、低密度ポリエチレンとエチレンと炭素数3〜8の少なくとも一種のα−オレフィンとの共重合体のブレンド物が、押出しラミネーション性、および延伸性の点から好ましい。
【0035】
微多孔性フィルム層13に配合する充填剤の量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、30質量部以上、300質量部以下であることが好ましい。30質量部未満の場合は、延伸後に通気性を発現することが難しく、また、300質量部を超えると、延伸時に破断するおそれがある。
【0036】
充填剤は、微粉末状で熱可塑性樹脂に配合される。充填剤としては、無機充填剤および有機充填剤のいずれも用いることができる。無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの酸化物、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化ナトリウムなどの塩化物、アルミニウム粉、ゼオライト、シラス、白土、珪藻土、タルク、カーボンブラック、火山灰などが挙げられる。有機充填剤の例としては、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末、ナイロン粉末、ポリカーボネート粉末、ポリプロピレン粉末、ポリ−4−メチルペンテン−1粉末などの合成樹脂系粉末、澱粉などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。上述した充填剤の中でも、本発明においては、最終的な耐油性通気性包装材料1の通気性、柔軟性、外観などの点から、炭酸カルシウムが特に好ましく用いられる。充填剤の平均粒径は、微多孔性フィルム層13の均一性の観点から、0.1〜20μmが好ましく、さらに、加工性の観点からは、0.8〜5.0μmが好ましい。
【0037】
上記充填剤を含んだ熱可塑性樹脂を微多孔性フィルム層13とするための延伸倍率は、1.02以上であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍未満であると、微多孔が十分に形成されず、所望の通気度が得られにくくなってしまう。このような低延伸倍率で高い通気性を発現させるために、熱可塑性樹脂は、密度が0.920g/cm
3以上である樹脂を30質量%以上含むことが好ましい。
【0038】
耐油性加工は、微多孔性フィルム層13の少なくとも一方の面になされており、微多孔性フィルム層13の両方の面になされていてもよい。耐油性加工は、微多孔性フィルム層13に耐油性加工剤を塗布することにより実施することができる。耐油性加工剤としては、第1実施形態で説明したのと同様のものが挙げられ、特にフッ素系耐油性加工剤が好ましい。また、好ましい耐油性加工の方法についても、第1実施形態において述べたとおりである。
【0039】
(4)強化材層
強化材層10は、微多孔性フィルム層13の、有孔ポリエチレン層12と反対側の面に位置し、耐油性通気性包装材料1において、一方の最表面層を構成する。強化材層10は、耐油性通気性包装材料1を用いて脱酸素剤等の機能的物品を包装する場合に、例えば、尖った形状を有する物品が、耐油性通気性包装材料1を突き刺し、破損することを防止するとともに、必要とされる通気性を確保する。強化材層10は、互いに同一の方向に配列した複数の第1の繊維からなる第1の繊維層と、前記第1の繊維とは異なる方向にかつ互いに同一の方向に配列した複数の第2の繊維からなる第2の繊維層とを少なくとも含む網状構造体であって、前記第1の繊維層と第2の繊維層とが積層されもしくは織成されてなる網状構造体である。このような網状構造体としては、種々の態様が挙げられ、特に限定されるものではないが、一定の強度と、網状構造に由来する通気性とを備えるものが好ましい。
【0040】
網状構造体は、好ましくは、第2の繊維が縦方向に配列した第2の繊維層と第1の繊維が横方向に配列した第1の繊維層とが、積層されもしくは織成されてなる。第1の繊維層と第2の繊維層のいずれの繊維層が微多孔性フィルム層13に接するかについては、特に限定されない。本明細書において、「縦方向」とは、不織布、ウェブ、積層体などを製造する際の機械方向すなわち送り方向を意味し、長さ方向とも指称する。「横方向」とは、縦方向と直角な方向、すなわち不織布、ウェブ、積層体などの幅方向を意味する。以下に、強化材層10として機能する網状構造体の具体的な構造及び製造方法を挙げて、説明する。
【0041】
[第1の網状構造体:割繊維不織布]
第1の網状構造体は、縦方向一軸延伸多層ポリオレフィンフィルムを割繊後、拡幅して得られた割繊維フィルムを、延伸方向が略直交するように経緯積層してなる割繊維不織布である。すなわち、第1の網状構造体において、第1の繊維層及び第2の繊維層は、両方とも割繊維フィルムであり、その繊維の配列方向が概ね直交している。
【0042】
図2は、第1の網状構造体の第2の繊維層の一例である、繊維が縦方向に配列した割繊維フィルム(縦ウェブ)を示す。割繊維フィルム102は、その平面構造が、
図2(a)に示すように、互いに平行に延びた複数の幹繊維102cと、幹繊維102cに対して交差して延び、隣接する幹繊維102c同士を繋ぐ枝繊維102dとで構成される。枝繊維102dは幹繊維102cと比べて細く、割繊維フィルム102の機械的強度は主として幹繊維102cによって与えられる。割繊維フィルム102はその延伸方向に高い引張強度を有している。そして、
図2(b)に示すように、割繊維フィルム102は、第2の熱可塑性樹脂層102bと、第1の熱可塑性樹脂層102aと、第2の熱可塑性樹脂層102bとを順に積層した三層構造を有する。
【0043】
割繊維フィルム102において、第2の熱可塑性樹脂層102bの厚みは、割繊維フィルム102層全体の厚みの50%以下、望ましくは40%以下である。第1の繊維層と第2の繊維層との熱溶着時の接着強度等の諸物性を満足させるためには、第2の熱可塑性樹脂層102bの厚みは5μm以上であればよいが、好ましくは10〜50μmの範囲から選択される。なお、ここでいう厚みは、延伸前の厚みである。
【0044】
第1の熱可塑性樹脂層102a及び第2の熱可塑性樹脂層102bは、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂層である。熱可塑性樹脂としては、例えば、割繊性の良好な、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンおよびこれらの共重合体が挙げられる。また、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との融点の差は、製造上の理由から、5℃以上であることが必要であり、好ましくは10〜50℃である。
【0045】
図示する割繊維フィルム102は、三層構造からなるが、単層もしくは二層であってもよい。あるいは、さらに多くの層を備えるものであってよく、例えば、四層、五層、あるいは六層以上の多層構造であってもよい。
【0046】
割繊維フィルム102の製造方法としては、例えば、以下に示すような方法が挙げられる。まず、各層を構成する樹脂を混練し、次いで、多層インフレーション法あるいは多層Tダイ法などの押出成形により、3層構造の原反フィルムを製造する。次いで、
図3に示すように、この原反フィルム200を縦方向(図中L方向)に延伸する。延伸倍率(配向倍率)は、1.1〜15倍が好ましく、より好ましくは3〜10倍である。延伸倍率が1.1倍未満では、機械的強度が十分でなくなるおそれがある。一方、延伸倍率が15倍を超えると、通常の方法で延伸することが難しく、高価な装置を必要とするなどの問題が生じる場合がある。延伸は、多段で行うことが延伸むらを防止するために好ましい。次いで、延伸したフィルムを、スプリッターを用いて縦方向(
図3に示すL方向)に千鳥掛けに割繊(スプリット処理)して多数の平行なスリット200aを形成する。さらにこれと直交する方向に拡幅する。これにより、
図2(a)に示すような割繊維フィルム102が得られる。このようにして製造された割繊維フィルム102は、その延伸方向に高い引張強度を有している。
【0047】
次に、得られた割繊維フィルム102を、幹繊維が互いに略直交するように2枚重ね合せ、これを加熱して溶着する。この際、2枚のうち第2の繊維層に該当する一方の割繊維フィルムは、連続して、インラインで、機械方向にそのまま供給することができる。第1の繊維層に該当する他方の割繊維フィルムは、前述のように製造され、巻き取られたロール状の割繊維フィルムを、インラインで供給される割繊維フィルムの幅と同じ長さに切断してタイル状として間欠的に供給して、重ね合わせる。熱溶着に際しては、重ね合わせた2枚の割繊維フィルムを、対向配置された一対の加熱シリンダ間に供給し、幅方向の収縮が生じないように固定しながら、しかも表面層の延伸効果が失われないように、内層を構成する熱可塑性樹脂の融点以下で、かつ表面層を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で熱溶着を行う。これにより、網状構造体を得ることができる。なお、網状構造体の製造方法における熱溶着に代えて、接着材等のほかの任意の接着手段を用いて一体化することもできる。
【0048】
このように構成された割繊維不織布からなる強化材層10は網目構造であり、一定の開口率を備えているため、通気性を有することになる。このような割繊維不織布の代表的な市販品の例としては、JX日鉱日石エネルギー製、ワリフ(登録商標)S24L、SS24L、SS28Lなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0049】
[第2の網状構造体:網状不織布]
第2の網状構造体は、縦方向一軸延伸多層ポリオレフィンフィルムを割繊後、拡幅して得られた割繊維フィルムと、多層ポリオレフィンフィルムに、幅方向にスリットを形成した後、横方向に一軸延伸して得られた網状フィルムとを、延伸方向が略直交するように積層してなる網状不織布である。すなわち、第2の網状構造体において、第1の繊維層は、割繊維フィルムであり、第2の繊維層は、網状フィルムである。なお、第1の繊維層、第2の繊維層は、網状構造体を構成する2つの層の区別のために用いる用語であって、他の層との積層順や相対的関係においては区別されるものではない。
【0050】
第1の繊維層を構成する割繊維フィルムの形状、構造、並びに製造方法は、前述のとおりである。
【0051】
図4は、第2の網状構造体の、第2の繊維層の一例である、繊維が横方向に配列した網状フィルム(横ウェブ)を示す。
図4(a)に示すように、網状フィルム103は、平面が、略菱形の網目状に形成されている。そして、
図4(b)に示すように、網状フィルム103は、第2の熱可塑性樹脂層103bと、第1の熱可塑性樹脂層103aと、第2の熱可塑性樹脂層103bとを順に積層した三層構造を有している。
【0052】
網状フィルム103全体の厚みと第2の熱可塑性樹脂からなる層103bの厚みとの関係は、上述した割繊維フィルム102についての説明と同じであり、また、網状フィルム103を構成する樹脂材料についても、上述した割繊維フィルム102と実質的に同じ材料を用いることができ、その詳細な説明は省略する。
【0053】
網状フィルム103の製造方法は、まず3層構造の原反フィルムを製造し、
図5に示すように、この原反フィルム300に対して横方向(
図5に示すT方向)に千鳥掛けにスリット処理を施して多数の平行なスリット300aを形成する。その後、原反フィルム300を横方向(
図5に示すT方向)に延伸する。このように原反フィルム300に、先にスリットを形成した後に、これを横方向に延伸することにより、菱形の網目が形成された網状フィルム103が得られる。横方向のスリット300aは、円筒の外周面上に軸方向に直線状の突起が形成された回転ローラとこれに対向する外周面が平坦な回転ローラ間に、原反フィルムを通過搬送することにより形成することができる。
【0054】
最後に、割繊維フィルム102と、網状フィルム103とを延伸方向が略直交するように重ね合わせ、これを加熱溶着することにより、網状不織布からなる網状構造体が得られる。この場合、熱溶着もしくは接着の態様は、第1の網状構造体と同様であってよい。
【0055】
なお、網状フィルムは、図示する菱形の網目状構造を有するものには限定されない。概ね横方向に延伸されており、割繊維フィルムと機械方向に重ね合わせた際に、延伸方向が概ね直交するものであればよく、例えば、
図2に示す割繊維フィルムと同様に、互いに平行に延びた複数の幹繊維と、幹繊維に対して交差して延び、隣接する幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とで構成され、平面視した場合に、割繊維フィルムに対し、±90°回転したパターン、あるいはこれに相似のパターンを有するものであってもよい。
【0056】
網状不織布からなる網状構造体を、強化材層10として、微多孔性フィルム層13と積層する際には、割繊維フィルム102側が微多孔性フィルム層13に接するように積層してもよいし、網状フィルム103側が微多孔性フィルム層13に接するように積層してもよい。
【0057】
このように構成された網状不織布からなる強化材層10自体は網目構造であり、一定の開口率を備え、通気性を有しつつ、内包物の刺突を防止することができる程度の強度を有する。このような網状不織布の代表的な市販品の例としては、JX日鉱日石エネルギー製、CLAF(登録商標)SS(T)EL、3S(T)、S(F)ELが挙げられるが、これらには限定されない。
【0058】
[第3の網状構造体:長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープからなる不織布・織布]
第3の網状構造体は、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープを経緯積層してなる不織布もしくは織成してなる織布である。すなわち、第3の網状構造体は、第1の繊維層、第2の繊維層とも、複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群から構成される。そして、不織布の場合には、複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群が、延伸方向が概ね直交するように経緯積層され、溶着もしくは接着されている。織布の場合には、複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群が経糸、複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群が緯糸になるように、任意の織り方で織成され、溶着もしくは接着されている。
【0059】
長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープは、第1の網状構造体において説明した割繊維フィルムと同様に、多層インフレーション法あるいは多層Tダイ法などの押出成形により3層構造の原反フィルムを製造し、縦方向に、1.1〜15倍、好ましくは3〜10倍に一軸延伸した後、延伸方向に沿って、例えば、2mm〜7mmの幅で裁断することにより製造することができる。あるいは、同様に、3層構造の原反フィルムを製造し、機械方向に沿って、同様の幅で裁断した後に、縦方向に、1.1〜15倍、好ましくは3〜10倍に一軸延伸することにより製造することができる。このような、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープにおいては、延伸方向が、テープの長手方向と一致しており、本明細書において、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープと指称する。
【0060】
このような長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープを積層してなる不織布から構成される網状構造体の一例を
図6に示す。
図6において、網状構造体40は、経糸に該当する複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープを第1の繊維層402として一定の間隔をあけて平行に並べ、それに対し長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープの長手方向が略直交するように、緯糸に該当する別の複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープを第2の繊維層403として積層したものである。そして、経糸と緯糸との接触面を加熱溶着することにより、第3の網状構造体が得られる。この場合、熱溶着もしくは接着の態様は、第1の網状構造体と同様である。織布は、図示はしないが、複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープを、積層することに替えて、織成したこと以外は、同様にして製造することができる。
【0061】
このような不織布の市販品の例としては、積水フィルム(株)製のソフ(商品名)HN55、HN66が利用できる。織布の市販品の例としては、萩原工業(株)製のメルタック(商品名)なども利用できる。
【0062】
[第4の網状構造体:割繊維フィルムと、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープとの網状構造体]
第4の網状構造体は、互いに平行に延びる幹繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備えた一軸延伸網状フィルムと、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層とを積層してなる不織布である。網状フィルムは、上記幹繊維と枝繊維の構造的特徴を備える一軸延伸フィルムであれば、特には限定されないが、例えば、網状フィルムの好ましい例として、縦方向一軸延伸多層ポリオレフィンフィルムを割繊後、拡幅して得られた割繊維フィルムを挙げることができる。第4の網状構造体の説明においては、主に、網状フィルムとして割繊維フィルムを用いる態様について述べるが、第4の網状構造体の網状フィルムは割繊維フィルムには限定されない。すなわち、本発明の第4の網状構造体は、典型的には、第1の繊維層が割繊維フィルムであって、第2の繊維層が、複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープから構成され、さらに、前記第2の繊維層に斜交する複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープから構成される第3の繊維層を含んでなる。
【0063】
このような網状構造体の一例を
図7に示す。
図7に示す網状構造体60は、互いに平行に延びる幹繊維102cと、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維102dとを備えた割繊維フィルム102と、前記一軸延伸網状フィルムの延伸方向に斜交し、且つ互いに平行に延びる長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ402群からなる第1の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層と、前記第1の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層と反対方向から前記一軸延伸網状フィルムの延伸方向に斜交し、且つ互いに平行に延びる第2の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ403群からなる第2の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層とを積層してなる不織布である。
図7に示す網状構造体60においては、割繊維フィルム102に対し、その縦方向Lに対しα’の角度を以て長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ402が積層されている。そして、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ402に斜交し、かつ、縦方向Lに対しαの角度を以て長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ403が積層されている。かかる網状構造体は、割繊維フィルムの延伸方向に強度を、割繊維フィルムの延伸方向とは略直交する方向に伸展性を備える。この場合、αとα’は同一でも異なっても良く、例えば、45〜60度であってよい。
【0064】
網状構造体60を構成する割繊維フィルム102、長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ402、403の製造方法については、第1、第3の網状構造体について説明したとおりであり、同様にして製造することができる。これらを積層し、接触部を溶着もしくは接着することにより、網状構造体60を得ることができる。
【0065】
第4の網状構造体における網状フィルムとしては、詳述した割繊維フィルム102以外にも、例えば割繊維フィルム102と同様の構成を備える原反フィルムに、幅方向に多数のスリットを形成した後、幅方向に、割繊維フィルム102と同様の延伸倍率で延伸して得られるもの、すなわち、平面視した場合に、割繊維フィルムに対し、±90°回転したパターン、あるいはこれに相似のパターンを有するものを用いることができる。この場合も、網状フィルムと、第1の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層、第2の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層とが、延伸方向に対して斜交する上記と同様の態様で積層することができる。そして、積層して得られる網状構造体は、横方向に強度、及び縦方向の伸展性に優れるという特性を備えるものとなる。あるいは、網状フィルムと、第1の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープ群層との二層を、網状フィルムの延伸方向とポリオレフィンテープ群の長手方向とが交差するように、積層した網状構造体であってもよい。
【0066】
[第5の網状構造体:各種積層体、ネット状物]
第5の網状構造体は、第1から第4の網状構造体の製造において用いた各種フィルム及び長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープの任意の組み合わせからなる積層体である。特には、網状構造体は、以下の層
(i) 割繊維フィルム
(ii) 網状フィルム
(iii) 複数の長手方向一軸延伸多層ポリオレフィンテープからなる層
の一以上の組み合わせである。層(iii)を含む場合には、2層以上の層(iii)であって、互いに配向方向が異なる層(iii)を設けることが好ましい。
【0067】
強化材層のさらにまた別の例としては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンからなるネット状物を用いることもできる。ネット状物としては、クラボウ社製のクレネット(商品名)、コンウェッド社製のコンウェッドネット、Thermanet(商品名)などが挙げられる。さらには、熱可塑性樹脂から紡糸され延伸されたフィラメントを延伸方向が略直交するように組み合わせた織布や不織布を用いることもできる。
【0068】
[耐油性通気性包装材料の製造方法]
次に、本実施形態に係る耐油性通気性包装材料を、製造方法の観点から説明する。耐油性通気性包装材料の製造方法の一例は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに、必要に応じ裏面に印刷を施した後、押出しコーティング法などによりポリエチレン層をその裏面に形成する。この裏面にポリエチレン層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムに、開孔処理を施すことにより、有孔ポリエチレンテレフタレート層11と、有孔ポリエチレン層12との積層体を得る。一方、微多孔性フィルム層13の少なくとも一方の表面を、耐油性加工する。耐油性加工は、適切な溶剤、好ましくは水またはエタノールで、2〜10体積%に希釈した耐油性加工剤を、wet塗工量が約0.05〜0.25g/m
2となるように、微多孔性フィルム層13に塗布し、約100〜130℃で、約30〜60秒にわたって乾燥させることにより実施することができる。
【0069】
次いで、有孔ポリエチレンテレフタレート層11と、有孔ポリエチレン層12との積層体と、耐油性加工した微多孔性フィルム層13と、強化材層10とを、熱圧着法によって接合する。これらの層の接合は、積層した後、熱圧着法によって一気に行うことができる。このとき、微多孔性フィルム層13の耐油性加工面と有孔ポリエチレン層12とが接触するように、積層する。油分が微多孔性フィルム層13に浸透し、通気性を損なうことを防ぐためである。かかる工程により、本発明に係る耐油性通気性包装材料1を得ることができる。この場合、熱圧着の条件は、例えば、120〜140℃、好ましくは、125〜140℃の温度条件で、例えば、線圧150〜260N/cmの圧力条件とすることができる。具体的な熱圧着の方法は、スチーム加熱ロールや誘電加熱ロールにより実施することができるが、これらには限定されない。耐油性通気性包装材料の製造方法の別の例としては、有孔ポリエチレンテレフタレート層11と、有孔ポリエチレン層12との積層体を得た後、この積層体と耐油性加工した微多孔性フィルム層13とを接合した3層積層体を得て、次いで、3層積層体に強化材層10を熱圧着法により、あるいは他の接着法により積層して、本実施形態に係る耐油性通気性包装材料を得ることもできる。
【0070】
そして、かかる耐油性通気性包装材料1は、その厚みが限定されるものではないが、通常、150〜250μm程度、好ましくは、100〜200μm程度の膜厚を有する可撓性を有するフィルムの形態である。本実施形態に係る耐油性通気性包装材料1は、上記の層構成を備えることで、TAPPI UM 557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」による耐油性の指標であるKit値が、7以上であり、好ましくは、7〜12である。Kit値が、7より小さいと、食品包装における耐油性を充足しない場合がある。また、Kit値が12より大きいと、本構成に基づく包装材料における通気性を損なう場合がある。
【0071】
また、本実施形態に係る耐油性通気性包装材料1は、食品衛生法に基づく、食品、添加物等の規格基準(S34厚生省告示第370号)における、4%酢酸溶出残渣試験に適合している。具体的には、本実施形態による耐油性通気性包装材料1は、上記規格基準が定める、蒸発残留物「30μg/ml以下」を満たしている。本実施形態による耐油性通気性包装材料1の蒸発残留物量は、より好ましくは20μg/ml以下であり、さらに好ましくは、15μg/ml以下である。
【0072】
これら両方の基準に適合することにより、従来技術では不可能だった、例えば、油分を多く含む食品包装に内包される脱酸素剤、乾燥剤、鮮度保持剤等の包材に用いることができる。特に、脱酸素剤、鮮度保持剤等(アルコール蒸散剤)の包装において好適に用いることができる。なお、包装材に求められる通気度は内包物により異なり、有孔ポリエチレンテレフタレートフィルム11と、有孔ポリエチレンフィルム12の孔数、および微多孔性フィルム層13の通気度を調整することで、所望の通気度とすることが可能である。
【0073】
また、上記のような強化材層10を備えることで、内包物による包装材料の刺突を防止し、従来技術と同様の引張強度などの機械強度を付与し、かつ、所望の通気度を与える。さらに、上記実施形態にて説明した種々の網状構造体を用いることで、縦方向と横方向での強度バランスにも優れ、しかも引張強度及び通気度をより向上させることができる。
【0074】
[第3実施形態:包装体]
本発明は、第3実施形態によれば、包装体であって、第1実施形態及び/または第2実施形態による耐油性通気性包装材料1を少なくとも一部に用い、脱酸素剤、乾燥剤、鮮度保持剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、防虫剤、除湿剤または芳香剤などの機能性物品を収納してなる。
【0075】
特に好ましい態様においては、包装体は、第2実施形態による耐油性通気性包装材料1を少なくとも一部に用い、前記有孔ポリエチレンテレフタレート層を外側にして脱酸素剤、乾燥剤、鮮度保持剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、防虫剤、除湿剤または芳香剤などの機能性物品を収納してなる。
【0076】
図8に、第2実施形態による耐油性通気性包装材料1を用いた包装体の概念的な断面図を示す。第3実施形態による包装体6は、第2実施形態による耐油性通気性包装材料1を、強化材層10が内側になるように袋状に成形し、内部に機能性物品5を収納してなる。なお、
図8においては、有孔ポリエチレンテレフタレート層11及び有孔ポリエチレン層12を貫通する細孔の表示を省略している。耐油性通気性包装材料1から包装体6を作る際には、強化材層10がヒートシール層として利用される。具体的には、強化材層10の両端が対向接触するように強化材層10を内側にして耐油性通気性包装材料1を袋状に折り曲げ、機能性物品5を包み、周縁部、好ましくは三方の周縁部を熱プレス法によりヒートシールする。これにより、機能性物品5が包装体の外部に放出されることがないように密封する。具体的な機能性物品5としては、シリカ−エタノール、シリカ系、クレイ系または塩化カルシウム、鉄粉、酸化マグネシウム、ゼオライトが挙げられるがこれらには限定されない。
【0077】
耐油性通気性包装材料1の機械的強度が優れていることにより、耐油性通気性包装材料1を用いて包装体6を形成したとき、内部に収納された機能性物品5による損傷も生じにくく、脱酸素剤や乾燥剤以外に、活性炭や木炭など重量の大きな機能性物品5を収納する大型の包装材料としても有効に利用できる。また、包装体6の表層は有孔ポリエチレンテレフタレート層11となるので、紙粉は発生せず衛生的である。さらに、包装体6を形成する際のヒートシール層となる強化材層10は熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いているので、表層である有孔ポリエチレンテレフタレート層11との融点差が大きくなる。従って、ヒートシール温度を高く設定しヒートシール時間を短縮することができ、これに伴って機能性物品5の充填速度を上げることができるので、包装体6の生産性を向上させることができる。
【0078】
本発明の耐油性通気性包装材料は、脱酸素剤、乾燥剤、鮮度保持剤の包装に好適に利用できるが、保湿剤、芳香剤、吸湿剤、消臭剤、防虫剤、除湿剤などの機能性物品5の包装にも好適に利用できる。これらの機能性物品5を収納する包装体は、機能性物品5が機能すればどのような形態でもよい。包装体が袋の形態である場合には、耐油性通気性包装材料は、その袋の一部分、片面、または全体に使用されてもよい。包装体を形成するための、耐油性通気性包装材料のヒートシール方法には、加熱シールバーによる熱プレス法が一般に用いられる。従って、包装体が袋の形態である場合には、シート材から袋を形成する一般的な製袋包装機を用いることができる。また、本発明の耐油性通気性包装材料は、前述したように、引張強度に優れているので、大型の包装体やシート状の包装体としても利用することができる。
【0079】
別の態様においては、包装体は、第1実施形態による耐油性通気性包装材料1を少なくとも一部に用い、機能性物品を収納してなる。かかる態様においては、プラスチック製フィルムの材質によっては、ヒートシール製袋が困難な場合もあるが、一般的な接着剤を用いた接着や、他の材質と組み合わせて用いることや、例えば超音波ウェルダーによる接着といった方法で、耐油性通気性包装材料1を材料の一部として袋を製造し、機能性物品を内包させ、同様に包装体を製造することができる。本態様においては、特に、袋の一部分や片面に第1実施形態による耐油性通気性包装材料1を用い、その他の部分には通気性を持たないフィルム等を用いた包装体であってもよい。内包する機能性物品は、上記に例示したものと同様であってよい。本態様によれば、第1実施形態による耐油性通気性包装材料1の特性を生かした種々の包装体が得られる点で有用である。