(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記転倒判定手段は、前記衝撃の発生前の所定期間における前記利用者の活動量が基準活動量より小さい安静状態の場合、前記衝撃評価値より前記落下評価値の重み付けを高くして前記総合評価値を求める、請求項1に記載の転倒検知端末。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転倒の態様は多種多様であり、従来の転倒検知の方法では検知が困難な場合も少なくない。例えば、人が意識を失って倒れる場合、脱力により自由落下特性は観察され易いが、頭や身体が先に地面に衝突するため衝撃は小さくなる傾向がある。他方、躓いて転んだときなど意識がある状態で倒れる場合には、身体を守るために腕などを動かすため、自由落下特性は観察され難い傾向がある。したがって、従来のように、単に加速度の絶対値(ピーク値)のみ、あるいは、単に落下特性のみを観察するだけでは、高精度な転倒判定は難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、高精度な転倒判定を行うことのできる転倒検知端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒検知端末は、利用者により携帯され、当該利用者の転倒を検知する転倒検知端末において、前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサと、前記動きデータから前記転倒検知端末に生じた衝撃を検出し、当該衝撃に基づく転倒可能性を示す衝撃評価値を算出する衝撃検出手段と、前記動きデータから前記転倒検知端末が自由落下するときに現れる落下特性を検出し、当該落下特性に基づく転倒可能性を示す落下評価値を算出する落下検出手段と、前記衝撃評価値および前記落下評価値を総合的に評価した総合評価値に基づいて、前記利用者が転倒したか否かを判定する転倒判定手段と、を備えている。
【0007】
この構成により、転倒した時に加えられた衝撃の大きさから、衝撃に基づく転倒可能性(衝撃評価値)を求めるとともに、転倒にいたる過程で発生した自由落下の落下特性から、落下特性に基づく転倒可能性(落下評価値)を求める。そして、衝撃に基づく転倒可能性(衝撃評価値)と落下特性に基づく転倒可能性(落下評価値)を総合的に評価した総合評価値に基づいて、利用者が転倒したか否かの判定(転倒判定)を行う。これにより、単に加速度のピーク値のみ、あるいは、単に落下特性のみから判定する場合に比べて、高精度な転倒判定を行うことができる。
【0008】
また、本発明の転倒検知端末では、前記転倒判定手段は、前記動きデータから前記利用者の活動量を算出し、前記衝撃の発生時を基準とした所定期間における前記利用者の活動量に応じて、前記衝撃評価値および前記落下評価値に重み付けを加えて前記総合評価値を求めてもよい。
【0009】
この構成により、動きデータから利用者の活動量が算出され、総合評価値を算出するときには、衝撃の発生時(転倒時)を基準とした所定期間の活動量に応じて、衝撃評価値と落下評価値に重み付けが加えられる。そのため、転倒時の利用者の活動量(活動状況)を考慮した総合評価値に基づいて、転倒判定を高精度に行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明の転倒検知端末では、前記転倒判定手段は、前記衝撃の発生前の所定期間における前記利用者の活動量が基準活動量より小さい安静状態の場合、前記衝撃評価値より前記落下評価値の重み付けを高くして前記総合評価値を求めてもよい。
【0011】
この構成により、衝撃の発生前の活動量が小さい場合、すなわち衝撃の発生前の利用者が安静状態にあった場合、衝撃評価値より落下評価値の重み付けを高くする。安静にしていた利用者が意識喪失等で転倒した場合、衝撃評価値より落下評価値に転倒可能性が反映されやすい。そのため、安静にしていた利用者の転倒(例えば意識喪失による転倒)を高精度に判定することが可能になる。
【0012】
また、本発明の転倒検知端末では、前記落下検出手段は、前記衝撃の発生前の第一の所定期間における前記動きデータから前記落下特性を検出し、前記転倒判定手段は、前記衝撃の発生前であって前記第一の所定期間より長い第二の所定期間の前記動きデータから前記利用者の活動量を算出してもよい。
【0013】
この構成により、落下特性は、衝撃の発生前の第一の所定期間の動きデータから適切に検出することができ、利用者の活動量は、衝撃の発生前の第二の所定期間(第一の所定期間より長い期間)の動きデータから適切に算出することができる。
【0014】
また、本発明の転倒検知端末では、前記第二の所定期間は、前記第一の所定期間を含まないように設定されてもよい。
【0015】
この構成により、利用者の活動量を、衝撃の発生前の第二の所定期間(第一の所定期間を含まない期間)の動きデータから適切に算出することができる。
【0016】
本発明の転倒検知端末は、利用者により携帯され、当該利用者の転倒を検知する転倒検知端末において、前記利用者の動きを検出し、前記利用者の動きを示す動きデータを出力する動きセンサと、前記動きデータから前記転倒検知端末に生じた衝撃を検出する衝撃検出手段と、前記動きデータから前記転倒検知端末が自由落下するときに現れる落下特性を検出する落下検出手段と、前記衝撃の検出結果および前記落下特性の検出結果に基づいて、前記利用者が転倒したか否かを判定する転倒判定手段と、を備え、前記転倒判定手段は、前記動きデータから前記利用者の活動量を算出し、前記衝撃の発生時を基準とした所定期間における前記利用者の活動量が基準活動量より小さい安静状態の場合、前記衝撃の検出結果より前記落下特性の検出結果の重み付けを高くして、前記利用者が転倒したか否かを判定する。
【0017】
この構成により、転倒した時に加えられた衝撃の検出結果と、転倒にいたる過程で発生した自由落下の落下特性の検出結果とに基づいて、利用者が転倒したか否かの判定(転倒判定)を行う。この場合、動きデータから利用者の活動量が算出され、衝撃の発生時(転倒時)を基準とした所定期間の活動量に応じて、衝撃の検出結果と落下特性の検出結果に重み付けが加えられる。衝撃の発生前の活動量が小さい場合、すなわち利用者が安静状態にあった場合、衝撃の検出結果より落下特性の検出結果の重み付けを高くする。安静にしていた利用者が意識喪失等で転倒した場合、衝撃評価値より落下評価値に転倒可能性が反映されやすい。そのため、安静にしていた利用者の転倒(例えば意識喪失による転倒)を高精度に判定することが可能になる。
【0018】
本発明のプログラムは、利用者の転倒を検知する転倒検知端末で実行されるプログラムであって、前記転倒検知端末には、前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサが備えられており、前記プログラムは、コンピュータに、前記動きデータから前記転倒検知端末に生じた衝撃を検出し、当該衝撃に基づく転倒可能性を示す衝撃評価値を算出する処理と、前記動きデータから前記転倒検知端末が自由落下するときに現れる落下特性を検出し、当該落下特性に基づく転倒可能性を示す落下評価値を算出する処理と、前記衝撃評価値および前記落下評価値を総合的に評価した総合評価値に基づいて、前記利用者が転倒したか否かを判定する処理と、を実行させる。
【0019】
このプログラムによっても、上記の端末と同様、転倒した時に加えられた衝撃の大きさから、衝撃に基づく転倒可能性(衝撃評価値)を求めるとともに、転倒にいたる過程で発生した自由落下の落下特性から、落下特性に基づく転倒可能性(落下評価値)を求める。そして、衝撃に基づく転倒可能性(衝撃評価値)と落下特性に基づく転倒可能性(落下評価値)を総合的に評価した総合評価値に基づいて、利用者が転倒したか否かの判定(転倒判定)を行う。これにより、単に加速度のピーク値のみ、あるいは、単に落下特性のみから判定する場合に比べて、高精度な転倒判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、衝撃の大きさと自由落下特性を総合評価して転倒判定することにより、高精度な転倒判定を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の転倒検知端末について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、高齢者の転倒を検知する監視システム等に用いられる転倒検知端末の場合を例示する。この転倒検知端末の機能(転倒検知機能)は、端末のメモリ等に格納されたプログラムによって実現することができる。
【0023】
転倒検知端末は、利用者(高齢者など)に携帯される端末装置である。例えば、転倒検知端末は、リストバンド型(腕時計型)のウェアラブル端末で構成され、利用者(高齢者など)が手首や腕に装着される。転倒検知端末は、首からぶら下げるペンダント型であってもよく、頭や耳に装着するタイプの頭部装着型でもよく、また、ベルトタイプなどの腰装着型であってもよい。
【0024】
まず、本実施の形態の転倒検知端末の構成を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の転倒検知端末の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、転倒検知端末1は、加速度センサ2、装着センサ3、高度センサ4、救急ボタン5を備えている。また、この転倒検知端末1は、操作表示部6、振動部7、電源部8、無線通信部9、監視制御部10を備えている。
【0025】
加速度センサ2は、利用者の動きを検出し、利用者の動きを示す動きデータ(加速度データ)を出力する機能を備えたセンサであり、例えば3軸加速度センサで構成される。加速度センサ2は、所定のサンプリング周期で検出した加速度データを出力する。装着センサ3は、人体(腕)への装着状態(装着されているか否か)を検出する機能を備えたセンサであり、例えば静電容量方式センサなど、人体の装着部位の接触や近接を電気的に検出可能なセンサで構成される。高度センサ4は、気圧変化等を利用して端末の高さの変化を検出する機能を備えたセンサであり、例えば気圧センサで構成される。救急ボタン5は、利用者が非常時に救急通報するための操作部(救急操作部)である。
【0026】
操作表示部6は、例えばタッチパネルディスプレイで構成され、異常報知などの各種の情報表示をする機能(情報表示機能)と、キャンセル操作などの各種の入力操作をする機能(入力操作機能)を備えている。振動部7は、バイブレーション装置などで構成され、振動による刺激で利用者へ異常や操作受付などを報知する機能を備えている。電源部8は、電池などのバッテリなどで構成される。無線通信部9は、例えば携帯通信網を介して遠隔の監視センタ11に設置されたセキュリティ端末12と無線通信を行う機能を備えている。また、無線通信部9は、ブルートゥース(登録商標)や特定小電力無線などで、宅内に設置されたセキュリティ端末(図示せず)と無線通信を行う機能を備えている。
【0027】
監視制御部10は、各センサ(加速度センサ2、装着センサ3、高度センサ4)や操作部(救急ボタン5、操作表示部6)からの入力に基づいて、救急監視を行う機能を有する救急監視部13と、生活監視を行う機能を有する生活監視部14と、転倒監視を行う機能を有する転倒監視部15を備えている。また、この監視制御部10は、転倒検知端末1の各部を制御する機能を備えている。
【0028】
救急監視部13は、利用者が救急対応を求めて救急ボタン5を操作した際に、監視センタ11に救急通報を行う機能を備えている。例えば、救急ボタン5が2秒間押され続けると、救急異常と判定し、救急異常を監視センタ11に通報するとともに、異常確定したことを振動・画面・音・光などで周囲に報知する。救急異常は、意識的な操作による異常であるため、キャンセル操作は受け付けない。なお、生活異常や転倒異常(後述する)の発生中でも、救急異常が発生した場合は、救急異常が優先される。
【0029】
生活監視部14は、加速度センサ2の出力に基づき、利用者(携帯者、装着者)が日常生活で生じる程度に動いているかを監視し、急病などにより動けない状態が継続していることを通報する機能を備えている。生活監視部14は、装着状態(装着された状態)のときに生活監視を実行する。例えば、加速度センサ2の出力から利用者の動き(体動)を検出し、日常生活レベルの体動が一定期間(例えば1時間)継続して生じていないと、生活異常と判定する。生活異常と判定すると、その旨を利用者に振動・画面・音・光などにより報知する。この生活監視部14は、生活異常と判定・報知した後、所定のキャンセル時間(例えば10秒)の間に体動が検出されるか、またはキャンセル操作が入力された場合、生活異常を取り消す(異常通報しない)処理を行う。体動の検出処理については、転倒監視における処理と同様(後述する)である。
【0030】
転倒監視部15は、加速度センサ2の出力に基づいて、利用者(携帯者、装着者)の転倒を自動検出し、転倒事故の発生を通報する機能を備えている。転倒監視部15は、装着状態(装着された状態)のときに転倒監視を実行する。この場合、加速度センサ2の出力から「衝撃」と「自由落下特性」を検出し、この検出結果を評価して転倒を検出する。そして、転倒を検出した後、所定時間(例えば15秒)のあいだ、立ち上がって歩くなどの体動を検出できない場合に、転倒異常と判定する。この所定時間には、転倒検出直後の数秒(例えば5秒)は含まれない。そして、転倒異常と判定すると、その旨を利用者に振動・画面・音・光などにより報知する。この転倒監視部15は、転倒異常と判定・報知した後、所定のキャンセル時間(例えば20秒)の間にキャンセル操作が入力された場合、転倒異常を取り消す(異常通報しない)処理を行う。
【0031】
ここで、
図2を参照しながら、転倒検知の基本的なロジックについて説明する。転倒監視部15は、転倒時に端末に加わる衝撃と、転倒にいたる過程で発生する落下特性を評価し、転倒を検出する。特に本発明では、衝撃に基づく転倒らしさ、落下特性に基づく転倒らしさを総合的に評価して、最終的な転倒判定を行う。そのための構成として、転倒監視部15は、衝撃検出部16と落下検出部17と転倒判定部18を備えている。
【0032】
衝撃検出部16は、加速度データから転倒検知端末1に生じた衝撃を検出し、その衝撃に基づく転倒可能性を示す衝撃評価値を算出する機能を備えている。転倒は、地面等への身体の衝突を伴うため、転倒検知端末1に加わる衝撃によって加速度が大きく変化する。そこで、この衝撃検出部16は、加速度のピーク値に基づいて、転倒時に端末に加わる衝撃を検出するように構成されている。
【0033】
図2および
図3は、加速度データの例を示す図である。この場合、前処理として、3軸の各軸(X軸、Y軸、Z軸)ごとに出力された加速度データがスカラー化され、移動平均処理(ローパスフィルタ)が施されている。衝撃検出部16は、所定の閾値(例えば30m/sec
2)以上の加速度のピーク(時間T1)を検出し、そのピーク値Pを得る。そして、衝撃検出部16は、例えば、以下の式1を用いることにより、ピーク値Pに基づいて衝撃評価値Esを求める。ここで、cは、総合評価のための調整係数である。
Es=P×c (式1)
【0034】
落下検出部17は、加速度データから転倒検知端末1が自由落下するときに現れる落下特性を検出し、その落下特性に基づく転倒可能性を示す落下評価値を算出する機能を備えている。転倒は、地面方向に向かって落下を生じる現象であるため、落下中の加速度は重力加速度(9.8m/sec
2)よりも小さくなる。そこで、落下検出部17は、加速度のピーク(時間T1)から時間を遡り、重力加速度との交点(時間T2)を求め、その時点から一定期間前(時間T3)までの加速度平均値Aを算出する。時間T3から時間T2までの期間(例えば500msec)は、落下判定期間と呼ぶことができる。そして、落下検出部17は、例えば、以下の式2を用いることにより、加速度平均値Aに基づいて落下評価値Efを求める。ここで、aは、落下基準の定数であり、bは、総合評価のための調整係数である。
Ef=(a−A)×b (式2)
【0035】
定数aは、落下特性の有無を区別する基準点となる加速度であり、例えば、8m/sec
2や、重力加速度9.8m/sec
2が用いられる。この定数aより加速度平均値Aが小さいと、落下評価値Efは正値をとる。
【0036】
転倒判定部18は、衝撃評価値および落下評価値を総合的に評価した総合評価値に基づいて、利用者が転倒したか否かを判定する機能を備えている。転倒の態様は様々であり、衝撃が大きく落下特性も顕著な場合もあるが、衝撃が小さく落下特性が顕著な場合もあり、逆に落下特性は顕著でないが衝撃は大きい場合もある。そこで、転倒判定部18は、以下の式3を用いることにより、衝撃評価値と落下評価値を合算して総合評価値Etを求め、総合評価値が転倒判定の基準値Th以上のとき、利用者の転倒を検出する。
Et=Es+Ef (式3)
【0037】
この転倒判定部18では、体動検出による自動キャンセル判定が行われる。転倒が検出された場合であっても、その後に体動が検出されれば利用者は危険な状態ではないと考えられるため、転倒判定部18は、転倒検出を自動キャンセルする。この体動検出(自動キャンセル判定)では、転倒判定したときのピークの時点(T1)から所定の遅延時間(例えば5秒)の体動は無視し、それ以降の体動判定時間(例えば15秒)の間の体動の有無を判定する。体動の有無の判定は、加速度のピーク値または変化量の観測により行う。例えば、所定の閾値以上のピーク値が所定回数検出されたとき、またはこのピーク値の合計が一定値を超えたときに、体動を検出する。あるいは、所的期間(例えば数秒間)または体動判定時間における加速度の変化量の合計が一定値を超えたとき、または単位時間当たりの加速度の変化量が一定値を超えたときに、体動を検出する。自動キャンセル判定後、すなわち体動判定時間の経過時までに体動が検出されなければ、転倒判定部18は転倒異常を確定する。
【0038】
また、この転倒判定部18では、利用者の活動状況(活動量)を考慮した転倒判定が行われる。意識があるか否か、激しく動いているか否か、といった転倒の態様によって得られる衝撃と落下特性は異なる。そこで、転倒判定部18は、加速度データから利用者の活動量を算出し、衝撃の発生時を基準とした所定期間における利用者の活動量に応じて、衝撃評価値および落下評価値に重み付けを加えて総合評価値を求める。
【0039】
すなわち、転倒判定部18は、単に「Et=Es+Ef」として総合評価値を求めるのではなく、転倒時の利用者の活動状況(活動量)に応じて、各評価値(Es、Ef)を重み付けした上で加算し、総合評価値Etを求める。この場合、利用者の活動状況(活動量)は、転倒(衝撃)が検出される前の一定期間(活動判定期間)における動きを分析し、その活動判定期間(例えば3秒)における加速度データ(ピークや変化量)に基づいて判定する。なお、上述の落下判定期間(例えば、時間T3から時間T2までの期間)には転倒している最中の動きが含まれるため、この活動判定期間(例えば、時間T4から時間T3までの期間)には落下判定期間以降の期間(例えば、時間T3から時間T1までの期間)を含めず、落下判定期間より前の期間を設定するものとする(
図3参照)。
【0040】
具体的には、転倒判定部18は、活動判定期間における加速度の総変化量である運動量Wを求め、この運動量Wと活動基準値との比較により、活動状況(動きの激しさ)を判定する。運動量Wは、例えば、以下の式4を用いることにより、活動判定期間における加速度データ(スカラー化された加速度データa1、a2、・・・、an−1、an)の差分を積算して求めることができる。この運動量Wは、3軸の各軸(X軸、Y軸、Z軸)ごとに算出してもよく、また、3軸の合計や平均として算出してもよい。
W=|a1−a2|+|a2−a3|+・・・+|an−1−an| (式4)
【0041】
また、運動量Wは、ピーク値の大きさや検出回数に基づいて求めることもできる。例えば、運動量Wは、一定以上のピーク値が検出された回数でもよく、上記ピーク値の合計でもよく、上記ピーク値の最大または平均によって重み付けされた回数でもよい。
【0042】
本実施の形態では、転倒判定部18は、衝撃の発生前の所定期間における利用者の活動量が基準活動量より小さい安静状態の場合、衝撃評価値より落下評価値の重み付けを高くして総合評価値を求める。すなわち、運動量Wが非常に小さく、転倒直前が安静状態(直立不動など)である場合、衝撃評価値Esより落下評価Efを重視するように重み付けして総合評価値Etを求める。例えば、運動量Wが基準活動量Th1より小さい(総変化量が極めて小さい)場合には、以下の式5のような重み付け処理が行われる。なお、重み付け係数は、運動量Wが小さいほど(Th1から離れるほど)Esが小さく(Efが大きく)補正されるように、運動量Wに応じて変化させてもよい。
Et=Es×1/2+Ef×3/2 (式5)
【0043】
つぎに、本実施の形態の転倒検知端末1の動作を、
図4のフロー図を参照して説明する。本実施の形態の転倒検知端末1では、まず、加速度データからピークを検出して衝撃評価値Esを算出するとともに(S1)、加速度データから自由落下特性を検出して落下評価値Efを算出する(S2)。そして、利用者の活動量を求めたうえで衝撃評価値Esと落下評価値Efに重み付けをして総合評価値Etを算出し(S3)、総合評価値Etに基づいて利用者が転倒したか否かを判定する(S4)。
【0044】
転倒と判定された場合には、転倒フラグをONにする(S5)。その後、体動検出(自動キャンセル判定)が行われる。そして、体動が検出された場合には(S6)、転倒フラグをOFFにする(S7)。一方、体動が検出されなかった場合には(S6)、所定のキャンセル時間が経過した後(S8)、転倒異常が確定される(S9)。
【0045】
このような本実施の形態の転倒検知端末1によれば、転倒した時に加えられた衝撃の大きさから、衝撃に基づく転倒可能性(衝撃評価値Es)を求めるとともに、転倒にいたる過程で発生した自由落下の落下特性から、落下特性に基づく転倒可能性(落下評価値Ef)を求める。そして、衝撃に基づく転倒可能性(衝撃評価値Es)と落下特性に基づく転倒可能性(落下評価値Ef)を総合的に評価した総合評価値Etに基づいて、利用者が転倒したか否かの判定(転倒判定)を行う。これにより、単に加速度のピーク値のみ、あるいは、単に落下特性のみから判定する場合に比べて、高精度な転倒判定を行うことができる。
【0046】
要するに、本実施の形態では、転倒した時に加えられた衝撃の検出結果と、転倒にいたる過程で発生した自由落下の落下特性の検出結果とに基づいて、利用者が転倒したか否かの判定(転倒判定)を行う。この場合、加速度データから利用者の活動量Wが算出され、衝撃の発生時(転倒時)を基準とした所定期間の活動量Wに応じて、衝撃の検出結果と落下特性の検出結果に重み付けが加えられる。衝撃の発生前の活動量Wが小さい場合、すなわち利用者が安静状態にあった場合、衝撃の検出結果より落下特性の検出結果の重み付けを高くする。安静にしていた利用者が意識喪失等で転倒した場合、衝撃評価値より落下評価値に転倒可能性が反映されやすいため、安静にしていた利用者の転倒(例えば意識喪失による転倒)を高精度に判定することが可能になる。
【0047】
また、本実施の形態では、総合評価値Etを算出するときには、衝撃の発生時(転倒時)を基準とした所定期間の活動量に応じて、衝撃評価値Esと落下評価値Efに重み付けが加えられる。そのため、転倒時の利用者の活動量W(活動状況)を考慮した総合評価値Etに基づいて、転倒判定を高精度に行うことが可能になる。
【0048】
具体的には、衝撃の発生前の活動量Wが小さい場合、すなわち衝撃の発生前の利用者が安静状態にあった場合、衝撃評価値Esより落下評価値Efの重み付けを高くする。上述のように、安静にしていた利用者が意識喪失等で転倒した場合、衝撃評価値より落下評価値に転倒可能性が反映されやすいため、安静にしていた利用者の転倒(例えば意識喪失による転倒)を高精度に判定することが可能になる。
【0049】
また、本実施の形態では、落下特性を、落下判定期間(衝撃の発生前の第一の所定期間)の加速度データから適切に検出することができる。また、利用者の活動量を、活動判定期間(衝撃の発生前の第二の所定期間)の加速度データから適切に算出することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、衝撃検出部16は、加速度のピーク値Pに基づいて衝撃評価値Esを求めるように構成されているが、ピーク値Pに替えて、加速度の総変化量を用いて衝撃を検出する構成としてもよい。この場合、ピーク値の検出時点を基準とする所定期間(例えば前後50msec)について、直前の加速度データとの差分を求め、この差分の絶対値を所定期間にわたって積算し、加速度変化量hを算出する。そして、加速度変化量hに調整係数を掛けて衝撃評価値Esを求める。さらに、加速度変化量hと加速度ピーク値Pとを併用し、両者の合算値や比に基づき衝撃評価値Esを求めることもできる。
【0051】
また、本実施の形態では、落下検出部18は、落下判定期間における加速度平均値Aに基づき落下評価値Efを求めるように構成されているが、加速度平均値Aに替えて、落下判定期間における最小加速度、または基準加速度(上記の定数a)を下回る加速度が検出された連続時間や積算時間に基づいて落下を検出する構成としてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。