(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ArFエキシマレーザー光を露光光(以下ArF露光光とも呼ぶ。)としたフォトリソグラフィで用いられるハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、ハーフトーン位相シフト膜(以下、単に「位相シフト膜」という。)には、ArF露光光を所定の透過率で透過する機能と、位相シフト膜を透過するArF露光光に対し、その位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した光との間で所定の位相差(位相シフト量)を生じさせる機能が同時に求められる。これまでは、ArF露光光に対する透過率が10%よりも低い特性を有する位相シフト膜が広く用いられており、位相シフト量については180度前後とすることが一般的であった。単層構造(表層の酸化が避けられない領域を含んでいる単層構造。以下、特に表層の酸化領域について言及している場合を除き、単層構造は、表層に酸化領域を含んでいるものとする。)の位相シフト膜であり、上記のようなArF露光光に対する透過率と位相シフト量の条件を同時に満たしつつ、より薄い膜厚で形成することが可能な材料は、比較的限られている。モリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる材料は、これらの条件を満たすものであり、これまで広く用いられてきている。
【0007】
近年、ハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、パターンエッジ近傍を透過する透過光に対してより高い位相シフト効果を得ることなどを狙って、透過率の高い位相シフト膜(透過率が10%以上の位相シフト膜)への要求が高まってきている。従来のMoSiNからなる単層構造の位相シフト膜の場合、所定の位相差を確保しつつ透過率が10%以上となるようにするには、位相シフト膜のモリブデンの含有量を少なくする、例えば、位相シフト膜中のモリブデンの含有量[原子%]をモリブデン(Mo)とケイ素(Si)の合計含有量[原子%]で除した比率[%](以下、この比率を「Mo/[Mo+Si]比率」という。)を4%以下とする必要がある。しかし、位相シフト膜のモリブデンの含有量を少なくすると、膜の導電性が低下するという問題が生じる。また、位相シフト膜のモリブデンの含有量が少なくなると、位相シフト膜の黒欠陥に対して前記のEB欠陥修正を行う時のエッチングレートが低下するという問題もある。
【0008】
位相シフト膜に用いられる材料として、モリブデンシリサイド酸窒化物(MoSiON)がある。このMoSiONからなる単層構造の位相シフト膜は、MoSiNからなる単層構造の位相シフト膜よりも膜厚が厚くはなるが、モリブデン含有量を比較的多くしても(例えば、Mo/[Mo+Si]比率が5%以上)、所定の位相差を確保しつつ透過率を10%以上とすることができる。しかし、MoSiONからなる単層構造の位相シフト膜を備えるマスクブランクの場合、以下の問題があることが明らかとなった。
マスクブランクから位相シフトマスクを作製する時のマスク検査で位相シフト膜に黒欠陥が見つかった場合、EB欠陥修正で修正することが多い。MoSiONからなる単層構造の位相シフト膜の黒欠陥に対し、EB欠陥修正で修正を行う場合、位相シフト膜と透光性基板との境界を検出するためのエッチング終点の検出が、MoSiNからなる単層構造の位相シフト膜に比べて難しくなるということが新たに判明した。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板上に高透過率の位相シフト膜を備えたマスクブランクにおいて、その位相シフト膜が所定の位相差を確保しつつ透過率を10%以上とする光学特性を有するものであっても、EB欠陥修正時における位相シフト膜と透光性基板との境界を検出するためのエッチング終点の検出が比較的容易であり、これにより精度の高いEB欠陥修正を行えるマスクブランクを提供することを目的としている。また、このマスクブランクを用いて製造される、黒欠陥の少ない高透過率型の位相シフトマスクを提供することを目的としている。さらに、このような位相シフトマスクを製造する方法を提供することを目的としている。そして、本発明は、このような位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上190度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料からなる組成傾斜膜であり、
前記位相シフト膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、5%以上であり、
前記位相シフト膜の基板側領域における酸素含有量は10原子%以下であり、
前記位相シフト膜の前記基板側領域以外の領域における酸素含有量は、前記基板側領域における酸素含有量よりも多いことを特徴とするマスクブランク。
【0011】
(構成2)
前記基板側領域は、前記位相シフト膜における前記透光性基板側の表面から反対側の表面に向かって10nmの厚さまでの範囲にわたる領域であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
【0012】
(構成3)
前記位相シフト膜は、全体の1/2の厚さの領域における酸素含有量が10原子%以上であることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
【0013】
(構成4)
前記位相シフト膜の基板側領域における窒素含有量は40原子%以上であることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【0014】
(構成5)
前記位相シフト膜の酸素含有量は、前記透光性基板側の表面から反対側の表面に向かって増加していることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【0015】
(構成6)
前記位相シフト膜のケイ素含有量は、前記透光性基板側の表面から反対側の表面に向かって減少していることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
【0016】
(構成7)
前記位相シフト膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、15%以下であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【0017】
(構成8)
前記位相シフト膜は、前記透光性基板の表面に接して形成されていることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
【0018】
(構成9)
前記位相シフト膜は、厚さが90nm以下であることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【0019】
(構成10)
前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
【0020】
(構成11)
構成10記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に転写用パターンが形成され、前記遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とする位相シフトマスク。
【0021】
(構成12)
構成10記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
ドライエッチングにより前記遮光膜に転写用パターンを形成する工程と、
前記転写用パターンを有する遮光膜をマスクとするドライエッチングにより前記位相シフト膜に転写用パターンを形成する工程と、
遮光帯パターンを有するレジスト膜をマスクとするドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯パターンを形成する工程と
を備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【0022】
(構成13)
構成11記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【0023】
(構成14)
構成12記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のマスクブランクは、透光性基板上に位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、その位相シフト膜は、金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料からなる単層の組成傾斜膜であり、該膜における金属とケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率は5%以上、基板側領域における酸素含有量は10原子%以下、かつ基板側領域以外の領域での酸素含有量はそれより多い膜とする。このような構造のマスクブランクとすることにより、この位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した露光光に対して位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上190度以下の位相差を生じさせる機能とを同時に確保することができる。それに加え、この位相シフト膜は、EB欠陥修正を行った時に、位相シフト膜と透光性基板との境界を検出するためのエッチング終点の検出が容易になり、欠陥修正が不十分な状態となることや、透光性基板を意図せず掘り込んでしまうことを回避することができ、EB欠陥修正の精度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施の形態について説明する。
[マスクブランクとその製造]
本発明者らは、MoSiONに代表される金属シリサイド酸窒化物からなる単層構造の高透過率型の位相シフト膜において、EB欠陥修正で修正を行った時に実用上十分な加工速度を得ながら、位相シフト膜と透光性基板との境界を検出するためのエッチング終点の検出が容易で、その結果、高い精度でEB欠陥修正が行える位相シフト膜やその組成について、鋭意研究を行った。本発明の各実施の形態において対象とする位相シフト膜は、露光光(ArFエキシマレーザー光)に対して所定の位相差(150度以上190度以下)と10%以上の高い透過率を確保することが可能な膜である。この位相シフト膜が有する光学的性質により、高いパターンエッジ強調効果が得られ、それにより、この位相シフトマスクを用いて転写を行った時の解像度や焦点裕度が向上する。また、単層構造の位相シフト膜とすることで、2層以上の積層構造の位相シフト膜に比して、ドライエッチングで位相シフトパターンを形成した時の側壁形状がよくなる。さらに、単層構造の位相シフト膜とすることで、2層以上の積層構造の位相シフト膜に比して、製造工程の工数を削減できるとともに成膜時の工程数を少なくできることから、欠陥の発生を抑制できる。このため、欠陥修正対象箇所を少なくすることができる。
【0027】
まず、本発明に求められる位相シフト膜の光学的要求値について理由を含めて述べ、そして、その光学的要求値を満たしつつ高精度なEB欠陥修正(欠陥修正時の終点検出を高精度に行えるEB欠陥修正)を可能とする位相シフト膜の材料組成について述べる。
【0028】
位相シフト膜には、波長193nmのArFエキシマレーザー光源によるArF露光光に対する透過率が10%以上であることが求められる。これにより、従来のハーフトーン型位相シフトマスクに比べ、パターンエッジ部近傍がより強調された光強度分布が得られるため、この位相シフト膜を用いて製造された位相シフトマスクの解像度や焦点裕度等の転写性能が向上する。
【0029】
なお、転写用パターンからの回折光と転写用パターン以外の部分からなるフィールド部を透過してくる光との干渉によって生じるサブピークと呼ばれる意図しない光強度分布が発生するが、位相シフト膜の透過率が高くなりすぎると、この意図しない光強度分布が発生するサブピーク部の光強度が強くなり、これが欠陥となって転写される(これを「サブピーク転写」と呼ぶ)。この意図しないサブピーク転写を抑制する観点から、位相シフト膜のArF露光光に対する透過率は、20%以下であることが好ましい。また、サブピーク転写を防止するためのパターンレイアウトの制限を緩和するためには、位相シフト膜のArF露光光に対する透過率は、15%以下であることが好ましい。
【0030】
さらに、位相シフト膜は、適切な位相シフト効果を得るために、透過するArF露光光に対し、この位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した光との間で生じる位相差が150度以上190度以下の範囲になるように調整されていることが求められる。位相シフト膜における前記位相差の上限値は、180度以下であることがより好ましい。これは、位相シフト膜にパターンを形成する時のドライエッチング時に、透光性基板が微小にエッチングされることによる位相差の増加の影響を小さくするためである。また、近年の露光装置による位相シフトマスクへのArF露光光の照射方式が、位相シフト膜の膜面の垂直方向に対して所定角度で傾斜した方向からArF露光光を入射させるものが増えてきているためでもある。
【0031】
金属シリサイド酸窒化物からなる位相シフト膜のEB欠陥修正では、金属シリサイド酸窒化物のエッチングレートと、それと透光性基板とのエッチングレート差、およびエッチング終点検出精度の3要素が、高精度にEB欠陥修正を行う上で実用上重要である。そして、これらの特性が、前述の位相シフト膜に求められる透過率と位相差を生む要件を損なわずに満たされる必要がある。
【0032】
ここで、金属シリサイド酸窒化物における金属元素としては、遷移金属元素が好ましい。位相シフト膜に含有される遷移金属元素としてモリブデン(Mo)がこれまで広く用いられているが、これに限られない。位相シフト膜に含有される遷移金属元素としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)のうちいずれか1つ以上の金属元素が挙げられる。また、遷移金属元素以外の金属元素としては、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)およびガリウム(Ga)などが挙げられる。
【0033】
EB欠陥修正のエッチング終点検出は、黒欠陥に対して電子線を照射した時に、照射を受けた部分から放出されるオージェ電子、2次電子、特性X線、後方散乱電子の少なくともいずれか1つを検出することによって行われている。例えば、電子線の照射を受けた部分から放出されるオージェ電子を検出する場合には、オージェ電子分光法(AES)によって、主に材料組成の変化を見ている。また、2次電子を検出する場合には、SEM像から主に表面形状の変化を見ている。さらに、特性X線を検出する場合には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や波長分散X線分光法(WDX)によって、主に材料組成の変化を見ている。後方散乱電子を検出する場合には、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって、主に材料の組成や結晶状態の変化を見ている。
【0034】
金属シリサイド酸窒化物からなる位相シフト膜のEB欠陥修正では、位相シフト膜の黒欠陥部分に対して、非励起状態のフッ素系ガス(XeF
2、XeF
4、XeF
6、XeOF
2、XeOF
4、XeO
2F
2、XeO
3F
2、XeO
2F
4、ClF
3、ClF、BrF
5、BrF、IF
3、IF
5等が適用可能であり、特にXeF
2が好適。)を供給しつつ、その部分に電子線を照射することで黒欠陥部をエッチングして除去する。この時のエッチングレートは、金属(M)の含有量[原子%]を金属とケイ素(Si)の合計含有量[原子%]で除した比率[%](以下、この比率を「M/[M+Si]比率」という。)に依存するが、この比率に対するエッチングレートを詳細に調べたところ、金属シリサイド酸窒化物からなる位相シフト膜のM/[M+Si]比率を5%以上とすることで実用上十分なエッチングレートが確保されることがわかった。加えて、酸化ケイ素を主成分とする透光性基板との間のエッチング選択性も十分確保できることがわかった。
【0035】
位相シフト膜のM/[M+Si]比率を5%以上としながらも、ArF露光光に対する透過率が10%以上という光学特性を持たせるには、酸素を所定量以上含有させることが有効である。一方で、合成石英等の透光性基板もケイ素と酸素を主成分としており、位相シフト膜と透光性基板の両方の構成元素が比較的近い状態にある。このため、EB欠陥修正において前記のいずれのエッチング終点検出方法を用いても、エッチング終点の検出が難しいという問題を抱えている。
【0036】
この問題を解決するため、本実施の形態では、位相シフト膜中の酸素含有量を、透光性基板側では少なくし、透光性基板とは反対側の表面側で多くする、組成傾斜構造とする。この酸素含有量の組成傾斜としては、位相シフト膜内において、位相シフト膜の底部である透光性基板側から位相シフト膜の表面側に向けて酸素含有量が増加する分布、特に酸素含有量が単調に増加する分布(表層部付近で酸素含有量の増加が飽和する場合を含む)が、位相シフト膜全体としての酸素含有量を高めることができるので好ましい。位相シフト膜中の酸素含有量と、酸素含有量分布について詳細に検討したところ、位相シフト膜の基板側領域(位相シフト膜が透光性基板と接する底辺部および底辺部近傍領域であり、以下「基板側領域」と呼ぶ。)における酸素含有量を10原子%以下、よりEB欠陥修正のエッチング終点を高精度に検出するためには、好ましくは5原子%以下、さらに好ましくは検出下限値以下とし、位相シフト膜の基板側領域以外の領域においては、基板側領域における酸素含有量以上とすればよいことが判明した。ここで、エッチング終点を高精度に検出しつつ位相シフト膜の膜厚を薄くするという観点から、酸素含有量が10原子%以下の領域を定義する基準となる基板側領域の厚さは、10nmであると好ましく、15nmであるとより好ましく、20nmであると一層好ましい。位相シフト膜の膜厚を薄くすると、フォトマスク上での微細パターン形成や電磁界効果に係わるバイアス(EMFバイアス)の低減に効果があり、また、マスク上のパターン倒壊による不良が抑制され、位相シフトマスクの歩留まりが向上する。ここで、基板側領域における酸素含有量とは、基板側領域全域に渡る酸素含有量の最大値を指す。
【0037】
この構造とすることにより、EB欠陥修正におけるエッチング終点の判定時には、位相シフト膜中の基板側領域の酸素含有量は少ないため、酸素含有量が多い透光性基板と明確な差が出てエッチング終点を検出することができるようになる。一方、エッチング終点の判定に影響を与えない基板側領域以外の部分の位相シフト膜には酸素を多く含有させることで、ArF露光光に対して高い透過率で、所望の位相差を満たす位相シフト膜とすることが可能となる。
【0038】
位相シフト膜中のケイ素(Si)の含有量に関しては、透光性基板側では多く、透光性基板とは反対側の表面側に向かって減少、特に単調に減少(表面近傍で飽和する場合を含む)する組成傾斜を持った構造とすることが望ましい。位相シフト膜の基板側領域におけるSiとOの比率が、透光性基板におけるSiとOの比率と大幅に異なっていると、EB欠陥修正におけるエッチング終点の判定が容易になる。また、従来のように、位相シフト膜の全体に渡ってケイ素(Si)の含有量が多いと、ArF露光光の吸収が大きくなってしまい、透過率10%以上で所望の位相差を持つ位相シフト膜を構成することが困難になる。一方、本実施の形態では、透光性基板側から表面側に向かってケイ素(Si)の含有量を少なくしており、これにより全体としてはケイ素の含有量を抑えることができるので、ArF露光光に対して10%以上という高い透過率を得ることが可能になる。
【0039】
位相シフト膜は、全体の1/2の厚さの領域で酸素含有量が10原子%以上であることが好ましい。この構造にすることにより、位相シフト膜に露光光の透過率の低い基板側領域を設けても、位相シフト膜全体で露光光に対する透過率が10%以上であり、かつ露光光に対して150度以上190度以下の範囲の位相差を生じさせる機能を持たせやすくなる。位相シフト膜における酸素含有量が10原子%以上である領域は、位相シフト膜の全体の厚さの3/5であるとより好ましく、2/3であるとさらに好ましい。位相シフト膜における酸素含有量が10原子%以上の領域は、透光性基板とは反対側の表面側からの厚さで設定することが望ましい。なお、この領域における酸素含有量とは、この領域全域に渡る酸素含有量の最小値を指す。
【0040】
位相シフト膜をできるだけ薄膜化して、露光光に対する透過率と位相差を所望の値に制御するためには、位相シフト膜の露光光に対する消衰係数kと屈折率nが、酸素(O)のみを含有させた時よりも大きくなるように、窒素(N)を含有させることが有効である。特に、位相シフト膜の基板側領域では、窒素(N)の含有量を40原子%以上、より好ましくは45原子%以上と高めて、酸素(O)含有量を下げる成分調整をすることが好ましい。さらに、このように基板側領域で窒素(N)の含有量が多いと、EB欠陥修正時のエッチング終点の検出が容易になる。また、基板側領域以外の領域では、基板側領域よりも窒素(N)の含有量を少なくすることが好ましい。
【0041】
また、位相シフト膜を形成する材料におけるM/[M+Si]比率は、少なくとも15%以下であることが求められる。位相シフト膜のM/[M+Si]比率を15%よりも大きくすると、位相シフト膜の消衰係数が高くなりすぎて、ArF露光光に対する位相シフト膜の透過率を10%以上にすることが難しくなる。また、位相シフト膜のArF耐性(ArF露光光に対する積算照射量耐性)も低下する。
【0042】
なお、位相シフト膜は、材料中に金属、ケイ素、窒素および酸素に加え、これらの主構成元素以外の元素を含有させた場合であっても、位相シフト膜における主構成元素以外の元素の合計含有量が10原子%以下の範囲であれば、許容できる。この範囲であれば、位相シフト膜の光学的な諸特性やEB欠陥修正に関連する諸特性に対する影響は小さいためである。
【0043】
次に、マスクブランクの全体構成を、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。
図1に示す本発明のマスクブランク100は、透光性基板1上に、位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4がこの順に積層された構造を有する。
【0044】
透光性基板1は、合成石英ガラスの他、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO
2−TiO
2ガラス等)などで形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光に対する透過率が高く、変形を起こしにくい十分な剛性も有するため、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
【0045】
位相シフト膜2は、透光性基板1の表面に接して形成されていることが好ましい。EB欠陥修正時において、透光性基板1と位相シフト膜2の間にEB欠陥修正がしにくい材料からなる膜(例えば、クロム系材料の膜)がない方が好ましいためである。
【0046】
位相シフト膜2の材料は、前記組成比を有する金属シリサイド酸窒化物である。
また、位相シフト膜2の膜厚は、少なくとも90nm以下にすることが好ましい。薄膜化を行うと、EMFバイアスを小さくすることができるためである。このため、位相シフト膜2の厚さは、85nm以下であることがさらに好ましく、80nm以下であるとより好ましい。また、位相シフト膜の膜厚をこのような薄膜にすることにより、マスク上のパターン倒壊による不良が抑制され、位相シフトマスクの歩留まりが向上する。
【0047】
位相シフト膜2の屈折率や消衰係数は、組成傾斜の材料であるため、一般的に、膜厚方向に対して分布を持つが、位相シフト膜2が前記の光学特性と膜の厚さに係る諸条件を満たすようにするためには、屈折率と消衰係数を膜厚方向に対する平均値で表して、その値を所定の範囲に収めることが望ましい。ここでは、その膜厚方向に対して単純平均を取った屈折率や消衰係数を、平均屈折率n
aveおよび平均消衰係数k
aveと呼ぶことにすると、位相シフト膜2の露光光(ArF露光光)に対する平均屈折率n
aveは、下限値として1.9以上であると好ましく、2.0以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜2の平均屈折率n
aveの上限値としては、3.1以下であると好ましく、2.7以下であるとより好ましい。位相シフト膜2のArF露光光に対する平均消衰係数k
aveの下限値は、0.26以上であると好ましく、0.29以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜2の平均消衰係数k
aveの上限値は、0.62以下であると好ましく、0.54以下であるとより好ましい。
【0048】
位相シフト膜2を含む薄膜の屈折率と消衰係数は、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率や消衰係数を左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する時の諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率および消衰係数となるように成膜する。位相シフト膜2を、上記の屈折率n
aveと消衰係数k
aveの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、希ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することが有効であるが、それだけに限られることではない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板1との間の距離等の位置関係など多岐に渡る。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される位相シフト膜2が所望の屈折率n
aveおよび消衰係数k
aveになるように適宜調整されるものである。
【0049】
位相シフト膜2は、スパッタリング法によって形成されるが、反応性ガスなどの添加ガスの流量を適宜時間的に変化させてスパッタリングを行って、形成される位相シフト膜2に前述の組成傾斜を持たせる。ここで、スパッタリング法としては、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリング法も適用可能である。傾斜組成の制御性の観点からは、DCスパッタリングを適用することが望ましく、導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましい。成膜レートを考慮した場合には、RFスパッタリングを適用することが好ましい。
【0050】
位相シフト膜2は、表層にその表層を除いた部分の位相シフト膜よりも酸素含有量が多い層(以下、単に「表面酸化層」という。)を有することが望ましい。表層に酸素含有量が多い層を有する位相シフト膜2は、マスク作製プロセス時の洗浄工程や位相シフトマスクの繰り返し使用時に行われるマスク洗浄で使用される洗浄液に対する耐性が高い。位相シフト膜2の表面酸化層を形成する方法としては、種々の酸化処理が適用可能である。この酸化処理としては、例えば、大気中などの酸素を含有する気体中における加熱処理、酸素を含有する気体中におけるフラッシュランプ等による光照射処理、オゾンや酸素プラズマを最上層に接触させる処理などが挙げられる。特に、位相シフト膜2の膜応力を低減する作用も同時に得られる加熱処理やフラッシュランプ等による光照射処理を用いて、位相シフト膜2に表面酸化層を形成することが好ましい。位相シフト膜2の表面酸化層は、厚さが1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜2の表面酸化層は、厚さが5nm以下であることが好ましく、3nm以下であるとより好ましい。
【0051】
マスクブランク100は、位相シフト膜2上に遮光膜3を備える。一般に、バイナリ型の転写用マスクでは、転写用パターンが形成される領域(転写用パターン形成領域)の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。この点については、位相シフトマスクの場合も同じである。通常、位相シフトマスクを含む転写用マスクの外周領域では、ODが3.0以上あると望ましいとされており、少なくとも2.8以上は必要とされている。位相シフト膜2は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜2だけでは外周領域で要求される所定値の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランク100を製造する段階で、位相シフト膜2の上に不足する光学濃度を確保するための遮光膜3を積層しておくことが必要である。このようなマスクブランク100の構成とすることで、位相シフトマスク200(
図2参照)を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写用パターン形成領域)の遮光膜3を除去すれば、外周領域に所定値の光学濃度が確保された位相シフトマスク200を製造することができる。
なお、光学濃度ODは、対象とする膜に入射する光の強度をI
0、その膜を透過してきた光の強度をIとした時に、
OD=−log
10(I/I
0)
で定義される。
【0052】
遮光膜3は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
【0053】
図1に記載のマスクブランク100は、位相シフト膜2の上に、他の膜を介さずに遮光膜3を積層した構成となっている。この構成の場合の遮光膜3では、位相シフト膜2にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。
【0054】
この場合の遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。遮光膜3を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属の他、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)およびフッ素(F)から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が挙げられる。一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が好ましい。また、遮光膜を形成するクロムを含有する材料にモリブデン(Mo)、インジウム(In)およびスズ(Sn)のうち1つ以上の元素を含有させてもよい。モリブデン、インジウムおよびスズのうち1つ以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスに対するエッチングレートをより速くすることができる。
【0055】
なお、本発明のマスクブランクは、
図1に示したものに限定されるものではなく、位相シフト膜2と遮光膜3の間に別の膜(エッチングストッパ膜)を介するように構成してもよい。この場合においては、前記のクロムを含有する材料でエッチングストッパ膜を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜3を形成する構成とすることが好ましい。
【0056】
遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。遮光膜3に形成されるパターンは、基本的に外周領域の遮光帯パターンであり、転写用パターン領域に比べてArF露光光の積算照射量が少ないことや、この外周領域に微細パターンが配置されていることは稀であり、ArF耐光性が低くても実質的な問題が生じにくいためである。また、遮光膜3に遷移金属を含有させると、含有させない場合に比べて遮光性能が大きく向上し、遮光膜3の厚さを薄くすることが可能となるためである。遮光膜3に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
【0057】
本実施の形態では、遮光膜3の上に積層したハードマスク膜4を、遮光膜3をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成している。これにより、以下に述べるように、レジスト膜を遮光膜3のマスクとして直接用いる場合よりもレジストの膜の厚さを大幅に薄くすることができる。
【0058】
遮光膜3は、所定の光学濃度を確保して十分な遮光機能を有する必要があるため、その厚さの低減には限界がある。一方、ハードマスク膜4は、その直下の遮光膜3にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜厚があれば十分であり、基本的に光学面での制限を受けない。このため、ハードマスク膜4の厚さは遮光膜3の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜厚があれば十分であるので、レジスト膜を遮光膜3のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の厚さを大幅に薄くすることができる。このようにレジスト膜を薄膜化できるため、レジスト解像度を向上できるとともに、形成されるパターンの倒壊を防止することができる。このように、遮光膜3上に積層したハードマスク膜4を上述の材料で形成することが好ましいが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、マスクブランク100において、遮光膜3上にレジストパターンを直接形成し、そのパターンをマスクにして遮光膜3のエッチングを直接行うようにしてもよい。
【0059】
このハードマスク膜4は、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。ここで、この場合のハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、SiO
2、SiN、SiON等で形成されるとより好ましい。
【0060】
また、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜4の材料として、前記の他、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属の他、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選らばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
また、ハードマスク膜4は、遮光膜3がケイ素を含有する材料で形成されている場合、前記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
【0061】
マスクブランク100において、ハードマスク膜4の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜4に形成すべき転写用パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)が設けられることがある。このような場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比は1:2.5と低くなるので、レジスト膜の現像時、リンス時等でレジストパターンが倒壊することや剥がれることが抑制される。なお、レジスト膜の膜厚は、80nm以下であると、レジストパターンの倒壊や剥がれがさらに抑制されるため、より好ましい。
【0062】
[位相シフトマスクとその製造]
この実施形態の位相シフトマスク200は、マスクブランク100の位相シフト膜2に転写用パターン(位相シフトパターン)が形成され、遮光膜3に遮光帯パターンが形成されていることを特徴としている。マスクブランク100にハードマスク膜4が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク200の作製途上でハードマスク膜4は除去される。
【0063】
本発明に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランク100を用いるものであり、ドライエッチングにより遮光膜3に転写用パターンを形成する工程と、転写用パターンを有する遮光膜3をマスクとするドライエッチングにより位相シフト膜2に転写用パターンを形成する工程と、遮光帯パターンを有するレジスト膜6bをマスクとするドライエッチングにより遮光膜3に遮光帯パターンを形成する工程とを備えることを特徴としている。以下、
図2に示す製造工程にしたがって、本発明の位相シフトマスク200の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜3の上にハードマスク膜4が積層したマスクブランク100を用いた位相シフトマスク200の製造方法について説明する。また、遮光膜3にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜4にはケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
【0064】
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜に形成すべき転写用パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(
図2(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成する(
図2(b)参照)。
【0065】
次に、レジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(
図2(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aも除去する(
図2(d)参照)。
【0066】
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。その後、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべきパターン(遮光帯パターンあるいは遮光帯を含む遮光パターン)である第2のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する(
図2(e)参照)。ここで、第2のパターンは比較的大きなパターンなので、電子線を用いた露光描画に換えて、スループットの高いレーザー描画装置によるレーザー光を用いた露光描画とすることも可能である。
【0067】
続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成する(
図2(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得る(
図2(g)参照)。
【0068】
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、塩素(Cl)が含まれていれば特に制限はない。例えば、Cl
2、SiCl
2、CHCl
3、CH
2Cl
2、BCl
3等が挙げられる。また、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、フッ素(F)が含まれていれば特に制限はない。例えば、CHF
3、CF
4、C
2F
6、C
4F
8、SF
6等が挙げられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス基板に対するエッチングレートが比較的低いため、ガラス基板へのダメージをより小さくすることができる。
【0069】
本発明の位相シフトマスク200は、前記のマスクブランク100を用いて作製されたものである。このため、転写用パターンが形成された位相シフト膜(位相シフトパターン)はArF露光光に対する透過率が10%以上であり、かつ位相シフトパターンを透過した露光光と位相シフトパターンの厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間における位相差が150度以上190度の範囲内となっており、高い位相シフト効果を生じさせることができる。それに加え、位相シフトマスク200の製造工程の途上で行われるマスク検査で発見された黒欠陥に対するEB欠陥修正時において、エッチング終点を比較的容易に検出することができる。
【0070】
[半導体デバイスの製造]
本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の位相シフトマスク200または前記のマスクブランク100を用いて製造された位相シフトマスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。本発明の位相シフトマスク200は高い位相シフト効果を生じさせるため、本発明の位相シフトマスク200を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。また、その製造途上で黒欠陥部分をEB欠陥修正で修正した位相シフトマスクを用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合においても、その位相シフトマスクの黒欠陥が存在していたパターン部分に対応する半導体デバイス上のレジスト膜に転写不良が発生することを防止できる。このため、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さ以下(一辺が1μmの四角形の内側領域で算出される自乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)になるように研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
【0072】
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=8原子%:92原子%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、酸素(O
2)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、透光性基板1上に、モリブデン、ケイ素、窒素および酸素からなる位相シフト膜2(MoSiON膜)を74nmの厚さで形成した。ここで、位相シフト膜2が、所望の組成傾斜を持った膜になるように、酸素ガスの流量を時間的に変化させた。以上の手順により、透光性基板1の表面に接して組成傾斜を持つ単層の位相シフト膜2を74nmの厚さで形成した。
【0073】
次に、この位相シフト膜2が形成された透光性基板1に対して、位相シフト膜2の膜応力を低減するため、および表層に洗浄耐性の高い酸化層を形成するための加熱処理を行った。具体的には、加熱炉(電気炉)を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。別の透光性基板1の主表面に対して、同条件で位相シフト膜2を成膜し、加熱処理を行ったものを準備した。
位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、その位相シフト膜2の波長193nmの光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が12%、位相差が176.2度(deg)であった。また、この位相シフト膜2に対して、STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)とEDXで分析したところ、位相シフト膜2の表面から約2nm程度の厚さで酸化層が形成されていることが確認された。
【0074】
さらに、この位相シフト膜2に対し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いて光学特性を測定した。膜厚方向に対して屈折率nや消衰係数kは分布を持つが、膜厚方向に対して単純平均を取った平均値で表して、波長193nmに対して屈折率n
aveは2.31、消衰係数k
aveは0.41であった(以降に記載の各薄膜の屈折率および消衰係数は、同じ分光エリプソメーターで測定。)。
【0075】
上記と同様の手順で別の透光性基板1上に位相シフト膜2を形成したものを準備し、その位相シフト膜2の膜組成をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)で測定し、その測定結果をRBS(Rutherford Backscattering Spectrometry:ラザフォード後方散乱分光法)の測定結果に相当するように補正(較正)した。
【0076】
その結果、位相シフト膜2の元素構成は、以下の通りであった。位相シフト膜2の透光性基板1との界面近傍の領域(基板側領域)で、Moが2.8原子%、Siが47.3原子%、Oが1.8原子%、そしてNが48.1原子%であった。位相シフト膜2の透光性基板1側から反対側の表面に向かって9nmの位置にある領域(基板側領域)で、Moが2.8原子%、Siが46.3原子%、Oが5.0原子%、そしてNが45.9原子%であった。位相シフト膜2の透光性基板1側から反対側の表面に向かって40nmの位置にある領域(基板側領域以外の領域)で、Moが2.8原子%、Siが43.0原子%、Oが15.2原子%、そしてNが39.0原子%であった。位相シフト膜2の自然酸化による表層を除いた位置にある領域(透光性基板1側から反対側の表面に向かって70nmの位置にある領域、基板側領域以外の領域)では、Moが2.7原子%、Siが39.8原子%、Oが24.9原子%、そしてNが32.6原子%であった。
【0077】
なお、位相シフト膜2の基板側領域と上面部(表層部を除いた最表面部)の間では、組成は連続的に傾斜していた。位相シフト膜2の基板側領域は、全領域で酸素の含有量が10原子%以下であった。また、位相シフト膜2の透光性基板1側から反対側の表面から位相シフト膜2の全体厚さの1/2の深さまでの領域(すなわち、酸化層が形成されている側の表面から37nmの深さまでの領域)は、全領域で酸素の含有量が10原子%以上であった。位相シフト膜2のMo/(Mo+Si)は、自然酸化による表層を除いた位相シフト膜2のすべての領域で5%を超えていた。
【0078】
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行って、位相シフト膜2上にCrOCNからなる遮光膜3の最下層を16nmの厚さで形成した。この最下層は、波長193nmの光に対する屈折率nが2.29、消衰係数kが1.00であった。次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行って、遮光膜3の最下層上にCrOCNからなる遮光膜3の下層を41nmの厚さで形成した。この下層は、波長193nmの光に対する屈折率nが1.80、消衰係数kが1.22であった。
【0079】
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N
2)の混合ガスをスパッタリングガスとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行って、遮光膜3の下層上にCrNからなる遮光膜3の上層を6nmの厚さで形成した。この上層は、波長193nmの光に対する屈折率nが1.51、消衰係数kが1.60であった。以上の方法により、位相シフト膜2側からCrOCNからなる最下層、CrOCNからなる下層、CrNからなる上層の3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を合計膜厚63nmで形成した。なお、この位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における波長193nmの光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。
【0080】
さらに、枚葉式RFスパッタリング装置内に、位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO
2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとして、RFスパッタリングを行って、遮光膜3の上にケイ素および酸素からなるハードマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の方法により、透光性基板1上に、単層の位相シフト膜2、3層構造の遮光膜3およびハードマスク膜4が積層された構造のマスクブランク100を製造した。
【0081】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を作製した。最初に、ハードマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(
図2(a)参照)。なお、この時電子線描画した第1のパターンには、位相シフト膜に黒欠陥が形成されるように、本来形成されるべき位相シフトパターンの他にプログラム欠陥を加えておいた。
【0082】
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CF
4ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(
図2(b)参照)。
【0083】
次に、第1のレジストパターン5aをアッシングや剥離液などにより除去した。続いて、ハードマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成した(
図2(c)参照)。
次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SF
6+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aを除去した(
図2(d)参照)。
【0084】
次に、遮光パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜に形成すべきパターン(遮光帯パターンを含む遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した(
図2(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成した(
図2(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン5bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(
図2(g)参照)。
【0085】
作製した実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン2aに黒欠陥が確認された。その黒欠陥部分に対し、電子線とXeF
2ガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、透光性基板1の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
【0086】
EB欠陥修正を行った後の実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べて遜色のないものであった。
この結果から、EB欠陥修正を行った後の実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
【0087】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、位相シフト膜2の膜組成を実施例1から変更した例であって、位相シフト膜2以外については、実施例1と同様の方法で製造した。この比較例1の位相シフト膜2を構成する元素は実施例1と同じで、モリブデン、ケイ素、窒素および酸素からなり、また実施例1と同様に単層構造の膜(MoSiON膜)である。但し、成膜条件を変えて膜の成分比率(膜組成)を変更するとともに、膜厚方向に対して組成傾斜を持たない均一な分布の単層膜とした。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、酸素(O
2)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、ケイ素、窒素および酸素からなる位相シフト膜2を66nmの厚さで形成した。位相シフト膜2の材料組成は、ガス流量などを実施例1の時とは変えることによって調整した。
【0088】
また、実施例1と同様の処理条件で、この位相シフト膜2に対しても加熱処理を行った。別の透光性基板1の主表面に対して、同条件でこの比較例1の位相シフト膜2を成膜し、加熱処理を行ったものを準備した。位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、その位相シフト膜2の波長193nmの光における透過率と位相差を測定したところ、透過率が12.1%、位相差が177.1度(deg)であった。また、位相シフト膜2に対して、STEMとEDXで分析したところ、位相シフト膜2の表面から約1.7nm程度の厚さで酸化層が形成されていることが確認された。さらに、この位相シフト膜2に対し、分光エリプソメーターを用いて位相シフト膜2の各光学特性を測定したところ、波長193nmの光において屈折率nが2.48、消衰係数kが0.45であった。
【0089】
上記と同様の手順で別の透光性基板上に位相シフト膜を形成したものを準備し、その位相シフト膜の膜組成をXPSで測定し、その測定結果をRBS測定結果に相当するように補正(較正)した。その結果、表層の酸化層を除いた部分の位相シフト膜の組成は、Moが1.9原子%、Siが47.1原子%、Oが16.1原子%、そしてNが34.9原子%であった。したがって、位相シフト膜2のMo/(Mo+Si)は3.9%、Si/Oは2.9である。また、位相シフト膜の表層の酸化層を除いた部分では、膜厚方向での組成傾斜は特に認められなかった。
【0090】
以上の手順により、透光性基板1(合成石英ガラス)上に、膜厚方向に均一な組成の単層のMoSiON膜からなる位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層された構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。
【0091】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランク100を用い、実施例1と同様の方法で、比較例1の位相シフトマスク200を作製した。
【0092】
作製した比較例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン2aに黒欠陥が確認された。その黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を検出することが難しく、透光性基板1の表面からエッチングが進んでしまった。
【0093】
EB欠陥修正を行った後の比較例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、EB欠陥修正を行った部分以外では、概ね設計仕様を十分に満たしていた。しかし、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、透光性基板1へのエッチングの影響等に起因して転写不良が発生するレベルのものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。