特許第6502153号(P6502153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502153
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】三次元造形装置および三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/165 20170101AFI20190408BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20190408BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190408BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190408BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20190408BHJP
【FI】
   B29C64/165
   B29C64/386
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B33Y50/00
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-84197(P2015-84197)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-203406(P2016-203406A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 貴文
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−168692(JP,A)
【文献】 特開2015−150862(JP,A)
【文献】 特開2001−150556(JP,A)
【文献】 特開2011−073163(JP,A)
【文献】 特開2015−006781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B22F 3/16、3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される粉末材料により造形槽において所定の厚さで形成される粉末層に対して、前記粉末材料を硬化するバインダーおよび前記粉末材料を着色するインクをヘッドから吐出して断面形状を形成した後に、前記造形槽において該断面形状が形成された粉末層の上に新たな粉末層を形成して、該新たな粉末層に対して前記バインダーおよび前記インクを前記ヘッドから吐出して断面形状を形成するという動作を順次繰り返し行うことにより、断面形状を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから断面形状データを作成する作成手段と、
カートリッジ内に貯留された前記バインダーおよび前記インクの残量を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した前記バインダーおよび前記インクの残量に基づいて、前記バインダーおよび前記インクを予め設定された吐出量で吐出し、前記三次元データから作成した第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う判断手段と、
前記判断手段により三次元造形物を作製することが不可能であると判断されると、前記バインダーおよび前記インクを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画面を表示する画面表示手段と、
前記選択画面において、間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足する前記バインダーおよび前記インクについて、予め設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定する間引き手段と、
前記選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足する前記バインダーおよび前記インクのうち、不足量の最も大きい前記バインダーおよび前記インクの残量に基づいて三次元造形物の縮小率を決定し、決定した縮小率に基づいて前記三次元データを縮小する縮小手段と
を有し、
前記作成手段は、前記三次元データに基づいて前記第1の断面形状データを作成するとともに、前記縮小手段により縮小された前記三次元データに基づいて、第2の断面形状データを作成し、
前記制御手段は、前記間引き手段により間引き後の吐出量が決定されると、間引き後の吐出量が決定された前記バインダーおよび前記インクを当該間引き後の吐出量とし、前記第1の断面形状データに基づいて前記ヘッドを制御するとともに、前記縮小手段により前記三次元データが縮小されると、前記バインダーおよび前記インクを予め設定された吐出量とし、前記第2の断面形状データに基づいて前記ヘッドを制御する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置において、
前記インクは、水性顔料インクである
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
供給される粉末材料により造形槽において所定の厚さで形成される粉末層に対して、前記粉末材料を硬化する無色バインダーおよび前記粉末材料を着色する有色バインダーをヘッドから吐出して断面形状を形成した後に、前記造形槽において該断面形状が形成された粉末層の上に新たな粉末層を形成して、該新たな粉末層に対して前記無色バインダーおよび前記有色バインダーを前記ヘッドから吐出して断面形状を形成するという動作を順次繰り返し行うことにより、断面形状を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから断面形状データを作成する作成手段と、
カートリッジ内に貯留された前記無色バインダーおよび前記有色バインダーの残量を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した前記無色バインダーおよび前記有色バインダーの残量に基づいて、前記無色バインダーおよび前記有色バインダーを予め設定された吐出量で吐出し、前記三次元データから作成した第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う判断手段と、
前記判断手段により三次元造形物を作製することが不可能であると判断されると、前記無色バインダーおよび前記有色バインダーを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画面を表示する画面表示手段と、
前記選択画面において、間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足する前記無色バインダーおよび前記有色バインダーについて、予め設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定する間引き手段と、
前記選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足する前記無色バインダーおよび前記有色バインダーのうち、不足量の最も大きい前記無色バインダーおよび前記有色バインダーの残量に基づいて三次元造形物の縮小率を決定し、決定した縮小率に基づいて前記三次元データを縮小する縮小手段と
を有し、
前記作成手段は、前記三次元データに基づいて前記第1の断面形状データを作成するとともに、前記縮小手段により縮小された前記三次元データに基づいて、第2の断面形状データを作成し、
前記制御手段は、前記間引き手段により間引き後の吐出量が決定されると、間引き後の吐出量が決定された前記無色バインダーおよび前記有色バインダーを当該間引き後の吐出量とし、前記第1の断面形状データに基づいて前記ヘッドを制御するとともに、前記縮小手段により前記三次元データが縮小されると、前記無色バインダーおよび前記有色バインダーを予め設定された吐出量とし、前記第2の断面形状データに基づいて前記ヘッドを制御する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、さらに、
前記収容手段に配設され、前記バインダーおよび前記インクが貯留された各カートリッジの重量を計測する計測手段と
を有し、
前記取得手段は、前記計測手段で計測した重量から空のカートリッジの重量を減算して前記バインダーおよび前記インクの残量を取得する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1、2または4のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、さらに、
前記取得手段により取得した前記バインダーおよび前記インクの残量、前記三次元データから作成した第1の断面形状データ、ならびに、予め設定された前記バインダーおよび前記インクの吐出量に基づいて、前記第1の断面形状データに基く断面形状を何層形成することができるかを算出する算出手段と
を有し、
前記判断手段は、前記算出手段により算出された断面形状の層数に基づいて、前記バインダーおよび前記インクを予め設定された吐出量で吐出し、前記第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1、2、4および5のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
断面形状データに基づいて形成される断面形状は、内層、中間層および表層の3層構造で形成され、
前記間引き手段では、バインダーの間引き後の吐出量を決定する際には、内層における吐出量を、中間層および表層における吐出量よりも優先的に間引き、中間における吐出量を表層における吐出量よりも優先的に間引く
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
供給される粉末材料により造形槽において所定の厚さで形成される粉末層に対して、前記粉末材料を硬化するバインダーおよび前記粉末材料を着色するインクをヘッドから吐出して断面形状を形成した後に、前記造形槽において該断面形状が形成された粉末層の上に新たな粉末層を形成して、該新たな粉末層に対して前記バインダーおよび前記インクを前記ヘッドから吐出して断面形状を形成するという動作を順次繰り返し行うことにより、断面形状を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置によって三次元造形物を作製する三次元造形方法において、
作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから第1の断面形状データを作成する第1の作成工程と、
カートリッジ内に貯留された前記バインダーおよび前記インクの残量を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した前記バインダーおよび前記インクの残量に基づいて、前記バインダーおよび前記インクを予め設定された吐出量で吐出し、前記第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う判断工程と、
前記判断工程で三次元造形物を作成することが不可能であると判断されると、前記バインダーおよび前記インクを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画像を表示する画像表示工程と、
前記選択画面において、間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足する前記バインダーおよび前記インクについて、予め設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定する間引き工程と、
前記選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足する前記バインダーおよび前記インクのうち、不足量の最も大きい前記バインダーおよび前記インクの残量に基づいて三次元造形物の縮小率を決定し、決定した縮小率に基づいて前記三次元データを縮小する縮小工程と、
前記間引き工程で間引き後の吐出量が決定されると、間引き後の吐出量が決定された前記バインダーおよび前記インクを当該間引き後の吐出量とし、前記第1の断面形状データに基づいて前記ヘッドを制御する第1の制御工程と、
前記縮小工程で前記三次元データが縮小されると、縮小された前記三次元データから第2の断面形状データを作成する第2の作成工程と、
前記第2の作成工程で前記第2の断面形状データが作成されると、前記バインダーおよび前記インクを予め設定された吐出量とし、前記第2の断面形状データに基づいて前記ヘッドを制御する第2の制御工程と
を前記三次元造形装置が実行する
ことを特徴とする三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置および三次元造形方法に関し、さらに詳細には、粉体を原料として三次元造形物を作製する三次元造形装置および三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体を原料として三次元造形物を作製する手法として、粉末固着積層方式が知られている。
【0003】
こうした粉末固着積層方式による三次元造形装置については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
即ち、特許文献1に開示された技術による三次元造形装置では、まず、三次元造形物を造形する造形槽に粉末材料を敷き詰めて所定の厚さの粉末層を形成する。
【0005】
次に、この粉末層に対して、三次元造形物の断面形状の画像データに基づいて、吐出ヘッドから粉末材料を硬化するバインダーを吐出して、粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成する。
【0006】
その後、断面形状が形成された粉末層上に所定の厚さの新たな粉末層を形成し、この粉末層に、形成した断面形状の次の断面形状を表す画像データに基づいて、吐出ヘッドからバインダーを吐出し、当該新たな粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成する。
【0007】
そして、こうした処理を繰り返し行い、全ての断面形状を表す画像データに基づく断面形状を順次形成することで、三次元造形物を作製することとなる。
【0008】
ところで、特許文献1に開示された技術による三次元造形装置などの従来より公知の三次元造形装置では、通常、断面形状を、三次元造形物の表面を形成する表層と、断面形状の内部を形成する内層と、表層と内層との間に形成される中間層とにより形成する(図13を参照する。)。
【0009】
内層は、無色のバインダーを低密度で吐出することにより形成され、また、中間層は、無色のバインダーを高密度で吐出することにより形成され、また、表層は、無色のバインダーと有色のバインダーとを混合したバインダーを高密度で吐出することにより形成されることとなる。
【0010】
この表層については、作製する三次元造形物の外観を再現するために、着色して硬化するように有色のバインダーにより所定の色彩となるように形成される。このとき、作製する三次元造形物に色彩が必要ない場合には、表層は、無色のバインダーのみにより形成されることとなる。
【0011】
また、こうした従来より公知の三次元造形装置においては、作製される三次元造形物の品質を一定に保つために、断面形状を連続して形成する必要がある。このため、三次元造形物を作製する際に、三次元造形装置内に残っているバインダーにより三次元造形物を作製することができるか否かの判断がなされる。
【0012】
具体的には、まず、三次元造形物を作製する際に必要となるバインダーの総量を算出し、次に、有色のバインダーの吐出量を算出し、その後、バインダーの総量と有色のバインダーの吐出量との差分を無色のバインダーの吐出量として算出するようにしていた。
【0013】
その後、算出された各バインダーの吐出量と、取得した各バインダーの残量とを比較して、三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行うようにしていた。
【0014】
この判断により、三次元造形物を作製できると判断されると、三次元造形物の作製を開始することが可能となり、また、三次元造形物を作製できないと判断されると、新たなカートリッジと交換するよう促されるものであった。
【0015】
このように、従来より公知の三次元造形装置においては、三次元造形物を作製することができない場合には、ユーザーは、新たなカートリッジと交換するあるいは三次元造形をやめるという選択肢しか与えられずに、ユーザーの意思を反映することができないことが問題点として指摘されていた。
【0016】
なお、ユーザーの意思とは、例えば、強度を無視したり、倍率を変更してでも三次元造形物を作製したいなど、バインダー残量やインク残量で作製可能な三次元造形物を作製することである。
【0017】
また、従来より公知の三次元造形装置においては、三次元造形物を作製することができないと判断されると、新たなカートリッジと交換しなければ三次元造形物を作製することができないため、ランニングコストの上昇を招来することが問題点として指摘されていた。
【0018】
そして、従来より公知の三次元造形装置においては、インクやバインダーの残量を計測するための手法として、カートリッジと吐出ヘッドとの間に設けられたサブタンクにおいてインクやバインダーの残量を計測することが知られている。
【0019】
具体的には、こうした三次元造形装置においては、バインダーなどが、カートリッジからサブタンクを介して吐出ヘッドに供給される構成となっており、このサブタンクに各バインダーの残量を測定するための構成が設けられ、これによりバインダーの残量を取得するようにしている。
【0020】
このため、従来より公知の三次元造形装置では、サブタンクのスペースを設ける必要があるため、装置を小型化することが難しいという問題点が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第6989115号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コスト高が抑制することが可能な三次元造形装置を提供しようとするものである。
【0023】
また、本発明の目的とするところは、ユーザーの意思を反映するとともに、装置の小型化が可能な三次元造形装置および三次元造形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明による三次元造形装置は、供給される粉末材料により造形槽において所定の厚さで形成される粉末層に対して、上記粉末材料を硬化するバインダーおよび上記粉末材料を着色するインクをヘッドから吐出して断面形状を形成した後に、上記造形槽において該断面形状が形成された粉末層の上に新たな粉末層を形成して、該新たな粉末層に対して上記バインダーおよび上記インクを上記ヘッドから吐出して断面形状を形成するという動作を順次繰り返し行うことにより、断面形状を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから断面形状データを作成する作成手段と、カートリッジ内に貯留された上記バインダーおよび上記インクの残量を取得する取得手段と、上記取得手段により取得した上記バインダーおよび上記インクの残量に基づいて、上記バインダーおよび上記インクを予め設定された吐出量で吐出し、上記三次元データから作成した第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う判断手段と、上記判断手段により三次元造形物を作製することが不可能であると判断されると、上記バインダーおよび上記インクを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画面を表示する画面表示手段と、上記選択画面において、間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足する上記バインダーおよび上記インクについて、予め設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定する間引き手段と、上記選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足する上記バインダーおよび上記インクのうち、不足量の最も大きい上記バインダーおよび上記インクの残量に基づいて三次元造形物の縮小率を決定し、決定した縮小率に基づいて上記三次元データを縮小する縮小手段とを有し、上記作成手段は、上記三次元データに基づいて上記第1の断面形状データを作成するとともに、上記縮小手段により縮小された上記三次元データに基づいて、第2の断面形状データを作成し、上記制御手段は、上記間引き手段により間引き後の吐出量が決定されると、間引き後の吐出量が決定された上記バインダーおよび上記インクを当該間引き後の吐出量とし、上記第1の断面形状データに基づいて上記ヘッドを制御するとともに、上記縮小手段により上記三次元データが縮小されると、上記バインダーおよび上記インクを予め設定された吐出量とし、上記第2の断面形状データに基づいて上記ヘッドを制御するようにしたものである。
【0025】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、上記インクは、水性顔料インクであるようにしたものである。
【0026】
また、本発明による三次元造形装置は、供給される粉末材料により造形槽において所定の厚さで形成される粉末層に対して、上記粉末材料を硬化する無色バインダーおよび上記粉末材料を着色する有色バインダーをヘッドから吐出して断面形状を形成した後に、上記造形槽において該断面形状が形成された粉末層の上に新たな粉末層を形成して、該新たな粉末層に対して上記無色バインダーおよび上記有色バインダーを上記ヘッドから吐出して断面形状を形成するという動作を順次繰り返し行うことにより、断面形状を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから断面形状データを作成する作成手段と、カートリッジ内に貯留された上記無色バインダーおよび上記有色バインダーの残量を取得する取得手段と、上記取得手段により取得した上記無色バインダーおよび上記有色バインダーの残量に基づいて、上記無色バインダーおよび上記有色バインダーを予め設定された吐出量で吐出し、上記三次元データから作成した第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う判断手段と、上記判断手段により三次元造形物を作製することが不可能であると判断されると、上記無色バインダーおよび上記有色バインダーを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画面を表示する画面表示手段と、上記選択画面において、間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足する上記無色バインダーおよび上記有色バインダーについて、予め設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定する間引き手段と、上記選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足する上記無色バインダーおよび上記有色バインダーのうち、不足量の最も大きい上記無色バインダーおよび上記有色バインダーの残量に基づいて三次元造形物の縮小率を決定し、決定した縮小率に基づいて上記三次元データを縮小する縮小手段とを有し、上記作成手段は、上記三次元データに基づいて上記第1の断面形状データを作成するとともに、上記縮小手段により縮小された上記三次元データに基づいて、第2の断面形状データを作成し、上記制御手段は、上記間引き手段により間引き後の吐出量が決定されると、間引き後の吐出量が決定された上記無色バインダーおよび上記有色バインダーを当該間引き後の吐出量とし、上記第1の断面形状データに基づいて上記ヘッドを制御するとともに、上記縮小手段により上記三次元データが縮小されると、上記無色バインダーおよび上記有色バインダーを予め設定された吐出量とし、上記第2の断面形状データに基づいて上記ヘッドを制御するようにしたものである。
【0027】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、さらに、上記収容手段に配設され、上記バインダーおよび上記インクが貯留された各カートリッジの重量を計測する計測手段とを有し、上記取得手段は、上記計測手段で計測した重量から空のカートリッジの重量を減算して上記バインダーおよび上記インクの残量を取得するようにしたものである。
【0028】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、さらに、上記取得手段により取得した上記バインダーおよび上記インクの残量、上記三次元データから作成した第1の断面形状データ、ならびに、予め設定された上記バインダーおよび上記インクの吐出量に基づいて、上記第1の断面形状データに基すく断面形状を何層性形成することができるかを算出する算出手段とを有し、上記判断手段は、上記算出手段により算出された断面形状の層数に基づいて、上記バインダーおよび上記インクを予め設定された吐出量で吐出し、上記第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行うようにしたものである。
【0029】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、断面形状データに基づいて形成される断面形状は、内層、中間層および表層の3層構造で形成され、上記間引き手段では、バインダーの間引き後の吐出量を決定する際には、内層における吐出量を、中間層および表層における吐出量よりも優先的に間引き、中間道における吐出量を表層における吐出量よりも優先的に間引くようにしたものである。
【0030】
また、本発明による三次元造形方法は、供給される粉末材料により造形槽において所定の厚さで形成される粉末層に対して、上記粉末材料を硬化するバインダーおよび上記粉末材料を着色するインクをヘッドから吐出して断面形状を形成した後に、上記造形槽において該断面形状が形成された粉末層の上に新たな粉末層を形成して、該新たな粉末層に対して上記バインダーおよび上記インクを上記ヘッドから吐出して断面形状を形成するという動作を順次繰り返し行うことにより、断面形状を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置によって三次元造形物を作製する三次元造形方法において、作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから第1の断面形状データを作成する第1の作成工程と、カートリッジ内に貯留された上記バインダーおよび上記インクの残量を取得する取得工程と、上記取得工程で取得した上記バインダーおよび上記インクの残量に基づいて、上記バインダーおよび上記インクを予め設定された吐出量で吐出し、上記第1の断面形状データに基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う判断工程と、上記判断工程で三次元造形物を作成することが不可能であると判断されると、上記バインダーおよび上記インクを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画像を表示する画像表示工程と、上記選択画面において、間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足する上記バインダーおよび上記インクについて、予め設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定する間引き工程と、上記選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足する上記バインダーおよび上記インクのうち、不足量の最も大きい上記バインダーおよび上記インクの残量に基づいて三次元造形物の縮小率を決定し、決定した縮小率に基づいて上記三次元データを縮小する縮小工程と、上記間引き工程で間引き後の吐出量が決定されると、間引き後の吐出量が決定された上記バインダーおよび上記インクを当該間引き後の吐出量とし、上記第1の断面形状データに基づいて上記ヘッドを制御する第1の制御工程と、上記縮小工程で上記三次元データが縮小されると、縮小された上記三次元データから第2の断面形状データを作成する第2の作成工程と、上記第2の作成工程で上記第2の断面形状データが作成されると、上記バインダーおよび上記インクを予め設定された吐出量とし、上記第2の断面形状データに基づいて上記ヘッドを制御する第2の制御工程とを上記三次元造形装置が実行するようにしたものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以上説明したように構成されているので、コスト高を抑制することが可能であるという優れた効果を奏するものである。
【0032】
また、本発明は、以上説明したように構成されているので、ユーザーの意思を反映するとともに、装置の小型化が可能であるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明による三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図2図2は、図1のI−I線による切断面の端面を表す説明図である。
図3図3(a)は、バインダーおよびインクが収容された各カートリッジをカートリッジ収容部に収容した状態を簡易的に表した説明図であり、また、図3(b)(c)は、カートリッジ収容部においてカートリッジの重量を測定可能な構成を示す説明図である。
図4図4は、吐出ヘッドの構成を簡易的に表した説明図である。
図5図5は、マイクロコンピューターの機能的構成を示すブロック構成説明図である。
図6図6は、三次元造形処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
図7図7は、間引き後の吐出量を決定する処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
図8図8は、バインダーの間引き後の吐出量決定処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
図9図9は、インクの間引き後の吐出量決定処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
図10図10(a)(b)は、本発明による三次元造形装置による三次元造形時の各構成部材の動作を説明する説明図である。
図11図11(a)(b)は、本発明による三次元造形装置による三次元造形時の各構成部材の動作を説明する説明図である。
図12図12(a)(b)は、本発明による三次元造形装置による三次元造形時の各構成部材の動作を説明する説明図である。
図13図13は、作製される三次元造形物の断面形状に形成される層を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形装置および三次元造形方法の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0035】
図1には、本発明による三次元造形装置の概略構成説明図が示されており、また、図2には、図1のI−I線による断面図が示されている。
【0036】
この図1に示す三次元造形装置10は、ベース部材12において、粉末材料を貯留するための貯留槽14と、貯留槽14から供給される粉末材料が充填されて、三次元造形物が作製される造形槽16と、貯留槽14から造形槽16に供給された粉末材料のうち、造形槽に充填しきれなかった粉末材料を収容する収容槽18とが形成されている。
【0037】
また、三次元造形装置10は、ベース部材12の上面12aにおいて、Y軸方向に移動自在に配設された移動部材20と、移動部材20において固定的に配設され、バインダーおよびインクが貯留されたカートリッジを収容するカートリッジ収容部22と、移動部材20においてX軸方向に移動自在に配設され、カートリッジ収容部22に収容されたカートリッジからバインダーおよびインクが供給されるとともに、供給されたバインダーおよびインクを吐出する吐出ヘッド24と、移動部材20において吐出ヘッド24の前方側に配設されたローラ26とを備えている。
【0038】
なお、三次元造形装置10の全体的な動作については、マイクロコンピューター28により制御される。
【0039】
より詳細には、貯留槽14と造形槽16と収容槽18とは、XYZ直交座標系におけるY軸に沿って並設されており、後方側から前方側に向かって、貯留槽14、造形槽16、収容槽18の順で並んで配設されている。
【0040】
貯留槽14は、内部に昇降板21が配設されており、この昇降板21は、モーター(図示せず。)により貯留槽14内部を昇降可能な構成となっている。
【0041】
そして、貯留槽14では、内部に粉末材料が貯留された状態で、昇降板21が上昇することにより、貯留された粉末材料を上昇させ、これにより、開口部14aから所定量の粉末材料を上昇させることとなる。なお、こうして開口部14aから上昇した所定量の粉末材料は、移動部材20がY軸方向を後方側から前方側に移動することにより、ローラ26によって後方側から前方側に押し進め、貯留槽14の前方側に位置する造形槽16に供給されることとなる。
【0042】
従って、貯留槽14では、マイクロコンピューター28により、粉末材料を貯留する際には昇降板21が下降するように制御され、粉末材料を供給するときには昇降板21が上昇するように制御される。
【0043】
造形槽16は、内部に昇降板30が配設されており、この昇降板30は、モーター(図示せず。)により造形槽16内部を昇降可能な構成となっている。
【0044】
そして、造形槽16は、開口部16aと同じ高さ位置たる初期位置に位置する昇降板30を下降することにより、造形槽16内に所定量の粉末材料を充填可能な空間を形成する。
【0045】
こうして形成された空間には、ローラ26により後方側から前方側に押し進められた所定量の粉末材料が充填されることとなり、これにより、造形槽16に貯留槽14から粉末材料が供給されることとなる。
【0046】
収容槽18は、開口部18aが開口部14aおよび開口部16aと同じ高さ位置あるいはやや下方側の高さ位置に位置するように設計されている。
【0047】
そして、ローラ26により後方側から前方側に押し進められた所定量の粉末材料のうち、造形槽16に充填できなかった粉末材料が、開口部18aから収容槽18に収容されることとなる。
【0048】
移動部材20は、X軸方向に延設される延設部材20−1と、延設部材20−1の右側面および左側面に配設された側方部材20−2、20−3とを有して構成されている。
【0049】
そして、側方部材20−2、20−3は、ベース部材12の上面12aにおいてY軸方向に沿って延設された一対のガイドレール32に摺動自在に配設されている。
【0050】
これにより、移動部材20は、この一対のガイドレール32に沿ってY軸方向に移動自在な構成となっている。
【0051】
カートリッジ収容部22は、移動部材20における延設部材20−1の後面20−1aに固定的に配設され、貯留槽14に貯留される粉末材料を硬化するための無色(つまり、透明である。)のバインダーを貯留するカートリッジ40と、C(シアン)のインクを貯留するカートリッジ42と、M(マゼンタ)のインクを貯留するカートリッジ44と、Y(イエロー)のインクを貯留するカートリッジ46と、K(ブラック)のインクを貯留するカートリッジ48とを収容することが可能構成となっている(図3(a)を参照する。)。
【0052】
ここで、カートリッジ42に貯留されるC(シアン)のインク、カートリッジ44に貯留されるM(マゼンタ)のインク、カートリッジ46に貯留されるY(イエロー)のインクおよびカートリッジ48に貯留されるK(ブラック)のインクは、水系の溶媒に顔料が分散した水性顔料インクであり、これらインクのみでは粉末材料を硬化することが不可能となっている。
【0053】
なお、こうした水性顔料インクとしては、例えば、インクジェットプリンタなどに用いられる汎用性の高い比較的安価なインクが用いることができる。
【0054】
また、カートリッジ収容部22には、カートリッジ40、42、44、46、48についてはそれぞれ、貯留するバインダーおよびインクの残量を計測するための計測機構が設けられている。
【0055】
具体的には、計測機構は、カートリッジ収容部22の底面22aにヒンジなどにより回動自在に配設された回動部50と、回動部50から所定の間隔を空けて底面22aに配設された重量センサ52と、重量センサ52上に立設され、カートリッジを支持する支持部材54とを有して構成されるようする(図3(b)を参照する。)。なお、回動部50は、カートリッジを固定することが可能な形状となっている。
【0056】
そして、こうした構成の場合には、カートリッジの前方側(つまり、カートリッジ内に貯留されたバインダーあるいはインクを流出する流出孔が設けられた側である。)の下方側端部を回動部50に取り付けるとともに、カートリッジの後方側の底面を支持部材54上に載置することとなる。
【0057】
また、計測機構は、カートリッジ収容部22の底面22aに、カートリッジを収容可能な収容ステージ56が設けられた重量センサ58を設けるようにしてもよい(図3(c)を参照する。)。
【0058】
そして、こうした構成の場合には、単に、カートリッジを収容ステージ56に収容することとなる。
【0059】
吐出ヘッド24は、移動部材20における延設部材20−1の前面においてX軸方向に延設されたガイドレールに摺動自在に配設され、延設部材20−1においてX軸方向に移動自在な構成となっている。
【0060】
このため、吐出ヘッド24は、ベース部材12の上面12aの上方側をX軸方向に移動するとともに、移動部材20を介してY軸方向で移動することが可能となる。
【0061】
なお、吐出ヘッド24は、上面12aの上方側をX軸方向およびY軸方向に移動する際に、下面24aが、貯留槽14の開口部14a、造形槽16の開口部16aおよび収容槽18の開口部18aと接することがないよう、各開口部よりも当該下面24aが高い高さ位置となるように延設部材20−1に配設され、各開口部と当該下面24aとは、高さ方向(Z軸方向)で所定の間隔が空くように配設されている。
【0062】
また、吐出ヘッド24は、カートリッジ40から無色のバインダーが供給されるヘッド60と、カートリッジ42からC(シアン)のインクが供給されるヘッド62と、カートリッジ44からM(マゼンタ)のインクが供給されるヘッド64と、カートリッジ46からY(イエロー)のインクが供給されるヘッド66と、カートリッジ48からK(ブラック)のインクが供給されるヘッド68とが配設されている(図4を参照する。)。
【0063】
なお、カートリッジとヘッドとの間にサブタンクは配設されず、各カートリッジから各ヘッドへは、チューブを介してバインダーおよびインクが供給されることとなる。このとき、チューブを介してバインダーおよびインクを供給する手法としては、従来より公知の技術を用いることが可能なため、その詳細な説明は省略することとする。
【0064】
そして、吐出ヘッド24の下面24aには、ヘッド60に供給された無色のバインダーを吐出するノズル60aと、ヘッド62に供給されるC(シアン)のインクを吐出するノズル62aと、ヘッド64に供給されるM(マゼンタ)のインクを吐出するノズル64aと、ヘッド66に供給されるY(イエロー)のインクを吐出するノズル66aと、ヘッド68に供給されるK(ブラック)のインクを吐出するノズル68aとが配設されている(図4を参照する。)。
【0065】
こうした構成により、吐出ヘッド24は、ベース部材12の上面12aの上方側を、貯留槽14、造形槽16および収容槽18に接触することなく、X軸方向に移動するとともに、移動部材20を介してY軸方向に移動することが可能となる。
【0066】
なお、吐出ヘッド24は、インクジェット方式によりバインダーおよびインクを吐出する。
【0067】
ローラ26は、移動部材20における吐出ヘッド24の前方側において、X軸方向に沿って延長して配設される。
【0068】
また、ローラ26は、高さ方向(Z軸方向)において、開口部14aおよび開口部16aよりもわずか(つまり、開口部14a、16aと吐出ヘッド24の下面24aとにより形成される所定の間隔よりも小さい値である。)に上方側に位置するよう配設されている。
【0069】
従って、ローラ26は、移動部材20を介してY軸方向に移動可能となっている。
【0070】
これにより、移動部材20を介してローラ26が後方から前方側に移動すると、ローラ26は矢印A方向に回転し、これにより、貯留槽14における昇降板21の上昇により開口部14aの上方側に盛り上がった粉末材料は、ローラ26によって後方側から前方側に押し出されて、押し出された粉末材料は、造形槽16に充填されることとなる。なお、このとき、造形槽16に充填できなかった粉末材料については、ローラ26の後方側から前方側への移動に伴って収容槽18に収容されることとなる。
【0071】
さらに、ローラ26は、X軸に平行なローラ26の中心軸周りに回転可能な構成となっている。なお、こうしたローラ26の回転は、移動部材20がY軸方向に移動する際になされるものである。
【0072】
マイクロコンピューター28は、三次元造形のための各構成部材の基本的な制御に加えて、カートリッジ内のバインダーおよびインクから形成可能な層(断面形状)の数を算出したり、ユーザーの選択に基づいて、カートリッジ内のバインダーおよびインクで作製可能な三次元造形物を作製するような制御を行う。
【0073】
ここで、図5を参照しながら、マイクロコンピューター28の機能的構成について説明する。
【0074】
マイクロコンピューター28は、バインダーおよびインクの吐出量や三次元造形物の三次元形状を表す三次元データなどの各種の情報が記憶される記憶部70と、三次元データから断面形状データを作成する作成部71と、記憶部70に記憶された設定情報や作成部71で作成した断面形状データに基づいて三次元造形物のための各構成部材の制御を行う制御部72と、カートリッジ内のバインダーおよびインクの算用に応じて三次元造形物を作製するための設定情報の変更を行う設定変更部74とを有して構成される。
【0075】
なお、設定情報とは、作製する三次元造形物の内層、中間層および表層におけるインクヘッド40からのバインダーの吐出量、表層におけるインクヘッド42、44、46、48からの各インクの吐出量を含む各構成部材の動作を制御するための情報である。
【0076】
作成部71は、作製する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データを、水平方向に所定の間隔、例えば、30μm毎に切断した断面を表す断面形状データを作成する。
【0077】
具体的には、作成部71は、記憶部70に記憶された三次元データから基本断面形状データを作成するとともに、縮小部86(後述する。)で縮小された三次元データから縮小断面形状データを作成することとなる。
【0078】
なお、こうして作成された各断面形状データは、順に番号が付されて、制御部72の制御は、この番号順に、断面形状データに基づく断面形状を形成することで、三次元造形物が形成されることとなる。
【0079】
また、この設定変更部74は、重量センサ52(58)により計測された各カートリッジにおける重量からバインダーおよびインクの重量を取得する取得部76と、取得した重量と、作成部71で作成された基本断面形状データとから形成可能な層数を算出する層数算出部78と、層数算出部78で算出した層数が、作成部71で作成された基本断面形状データの数より少ないか否かの判断を行う判断部80と、判断部80で、層数算出部78で算出した層数が、基本断面形状データの数より少ないと判断された場合に、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製するか、三次元造形物を縮小して作製するかの選択画面を表示装置(図示せず。)に表示する画面表示部82と、選択画面において、ユーザーにより間引いて作製することが選択された場合、三次元造形時に不足するバインダーおよびインクの全ての吐出量を間引く間引き部84と、選択画面において、ユーザーにより縮小して三次元造形物を作製することが選択された場合、不足するバインダーおよびインクのうち、最も不足する量が大きいバインダーまたはインクに合わせて三次元データを縮小する縮小部86とを備えている。
【0080】
より詳細には、取得部76は、重量センサ52(58)により計測された各カートリッジにおける重量(貯留されたインクを含む)から風袋たる空のカートリッジの重量(予め記憶されている。)を減算し、算出された値をバインダーおよびインクの重量として取得することとなる。
【0081】
即ち、取得部76では、重量センサ52(58)により計測されたカートリッジ40の重量から空のカートリッジの重量を減算し、カートリッジ40内に貯留されたバインダーの残量を取得する。
【0082】
また、重量センサ52(58)により計測されたカートリッジ42の重量から空のカートリッジの重量を減算し、カートリッジ42内に貯留されたC(シアン)のインクの残量を取得する。
【0083】
また、重量センサ52(58)により計測されたカートリッジ44の重量から空のカートリッジの重量を減算し、カートリッジ44内に貯留されたM(マゼンタ)のインクの残量を取得する。
【0084】
また、重量センサ52(58)により計測されたカートリッジ46の重量から空のカートリッジの重量を減算し、カートリッジ46内に貯留されたY(イエロー)のインクの残量を取得する。
【0085】
また、重量センサ52(58)により計測されたカートリッジ48の重量から空のカートリッジの重量を減算し、カートリッジ48内に貯留されたK(ブラック)のインクの残量を取得する。
【0086】
層数算出部78は、取得部76で取得した重量と、作成部71で作成された基本断面形状データおよび初期設定として設定されたバインダーおよびインクの吐出量とから、三次元造形時に形成可能な層数を算出する。
【0087】
即ち、この層数算出部78では、まず、バインダーについて、取得部76で取得した残量により、最初の基本断面形状データに基づく断面形状を表す第1層から最後の基本断面形状データに基づく断面形状を表す最終層までのうち、初期設定に設定された吐出量で形成することが可能な層数を算出する。なお、基本断面形状データに基づいて形成される各断面形状におけるバインダーおよびインクの使用量は、各基本断面形状データにおける内層、中間層および表層の体積ならびに内層、中間層および表層におけるバインダーの吐出量などから算出する。さらに、初期設定として設定されたバインダーおよびインクの吐出量とは、三次元造形を行う際の条件として予め設定されている内層、中間層および表層におけるバインダーの吐出量や表層におけるインクの吐出量である。
【0088】
また、C(シアン)のインク、M(マゼンタ)のインク、Y(イエロー)のインクおよびK(ブラック)のインクについてそれぞれ、取得部76で取得した残量により、第1層目から最終層までのうち、初期設定に設定された吐出量で断面形状を形成することが可能な層数を算出する。
【0089】
なお、層数算出部78では、層数を算出する際に、第1層から最終層までの所定の層数が算出された時点で算出処理を終了する。つまり、最終層が第50層であるとすると、算出された層数が50となった時点で算出処理を終了する。
【0090】
判断部80は、層数算出部78で算出した層数が、三次元造形物の基本断面形状データの数より少ないか否かの判断を行うとともに、この判断結果から、作成部71で作成された基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う。
【0091】
即ち、この判断部80は、層数算出部78で算出した層数が、最初の基本断面形状データに基づく第1層から最後の基本断面形状データに基づく最終層までの所定の層数に達したか否かの判断を行う。
【0092】
つまり、層数算出部78で算出した層数が所定の層数に達していないと、当該層数が基本断面形状データの数より少ないと判断され、基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形物を作製することが不可能であると判断される。
【0093】
また、層数算出部78で算出した層数が所定の層数に達していると、当該層数が基本断面形状データより少なくないと判断され、基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形物を作製することが可能であると判断される。
【0094】
そして、判断部80において判断された判断結果は、選択画面表示部82に出力される。
【0095】
また、バインダーおよび各インクが形成可能な層数のうち、所定の層数に達していないと判断された層数のうち、最も値の小さい層数を、三次元造形時に形成可能な層数と判断する。
【0096】
画面表示部82は、判断部80から、作成部71で作成された基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形を行うことが可能であるとの判断結果が出力されると、この判断結果を表示装置(図示せず。)に表示する。
【0097】
また、画面表示部82は、判断部80から、作成部71で作成された基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形を行うことが不可能であるとの判断結果が出力されると、この判断結果を表示装置(図示せず。)に表示するとともに、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、不足するバインダーおよびインクに応じて三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画面を表示装置(図示せず。)に表示する。
【0098】
間引き部84は、層数算出部78における算出結果に基づいて三次元造形の際に不足するバインダーおよびインクを特定し、不足するバインダーおよびインクの全てに対して、三次元造形物を作製する際に必要となるバインダーおよびインクの総量を算出し、算出された総量と、取得部76で取得した残量とを用いて、間引き後の吐出量を決定し、不足するバインダーおよびインクの三次元造形時の吐出量として、間引き後の吐出量を設定する。
【0099】
即ち、間引き部84は、層数算出部78で所定の層数に達さなかった原因となるバインダーおよびインクを、不足するバインダーおよびインクとして特定する。
【0100】
また、間引き部84は、三次元造形を作製する際に不足すると特定されたバインダーおよびインクのそれぞれに対して、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの各断面形状を形成するために必要となるバインダーあるいはインクの総量を算出することとなる。
【0101】
つまり、例えば、バインダーとM(マゼンタ)のインクが不足すると特定されると、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの断面形状を形成するために必要となるバインダーの総量およびM(マゼンタ)のインクの総量を算出することとなる。なお、こうしたバインダーおよびインクの総量については、層数算出部78で算出された各断面形状におけるバインダーおよびインクの使用量を合算することにより算出される。
【0102】
ここで、断面形状を形成する際に、バインダーは、断面形状の内層、中間層および表層の形成に用いられ、インクは、断面形状の表層の形成のみに用いられる。
【0103】
このため、算出されるバインダーの総量とは、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの各断面形状における内層を形成するために必要となるバインダーの総量(以下、「バインダーの内層の総量」と称する。)、第1層から最終層までの各断面形状における中間層を形成するために必要となるバインダーの総量(以下、「バインダーの中間層の総量」と称する。)および第1層から最終層までの各断面形状における表層を形成するために必要となるバインダーの総量(以下、「バインダーの表層の総量」と称する。)が算出されることとなる。また、算出されるインクの総量とは、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの断面形状における表層を形成するために必要となるインクの総量(以下、「インクの表層の総量」と称する。)が算出されることとなる。
【0104】
そして、こうして算出されたバインダーの総量およびインクの総量と、取得部76で取得したバインダーの残量およびインクの残量とを用いて、不足すると特定されたバインダーおよびインクの間引き後の吐出量を決定する。
【0105】
なお、間引き後の吐出量としては、全ての画素にバインダーおよびインクが吐出されるときを100%の吐出量とし、初期設定における吐出量が50%であるとすると、この吐出量以下となるように間引き後の吐出量を決定することとなる。
【0106】
また、バインダーの吐出量を間引く際には、内層、中間層、表層に優先順位が設けられており、まず、内層におけるバインダーの吐出量を間引くようにする。また、内層におけるバインダーの吐出量を限界値まで間引いても三次元造形物を作製することができない場合には、次に、中間層におけるバインダーの吐出量を間引くようにする。さらに、中間層におけるバインダーの吐出量を間引いても三次元造形物を作製することができない場合には、次に、表層におけるバインダーの吐出量を間引くようにする。
【0107】
こうした内層の間引き後の吐出量の限界値、中間層の間引き後の吐出量の限界値および表層の間引き後の吐出量の限界値は、予め記憶部70に設定されている。
【0108】
なお、決定した間引き後の吐出量は、記憶部70に出力され、三次元造形時には制御部72によって、この間引き後の吐出量に基づいた三次元造形がなされることとなる。
【0109】
縮小部86は、層数算出部78における算出結果に基づいて三次元造形の際に不足するバインダーおよびインクを特定し、不足するバインダーおよびインクのうち、不足量が最も大きいバインダーあるいはインクに基づいて、三次元造形物を縮小する倍率を決定し、決定した倍率に基づいて、三次元造形物の三次元データを縮小する。
【0110】
即ち、縮小部86は、層数算出部78で所定の層数に達さなかった原因となるバインダーおよびインクを、不足するバインダーおよびインクとして特定する。
【0111】
また、縮小部86は、不足するバインダーおよびインクの全てに対して、三次元造形物を作製する際に必要となるバインダーおよびインクの総量を算出し、算出された総量と取得部76で取得した残量とから、その不足量を算出する。
【0112】
つまり、不足すると特定されたバインダーおよびインクのそれぞれに対して、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの各断面形状を形成するために必要となるバインダーあるいはインクの総量を算出する。
【0113】
こうして算出されたバインダーの総量およびインクの総量と、取得部76で取得したバインダーの残量およびインクの残量とから、不足量が最も大きいバインダーあるいはインクを決定する。
【0114】
その後、決定したバインダーまたはインクの残量で、三次元造形物の作製が可能となる最も大きい縮小率を決定する。
【0115】
そして、決定した縮小率に基づいて、記憶部70に記憶された三次元造形物の三次元データを縮小する。
【0116】
この縮小した三次元データは、作成部71に出力され、作成部71において縮小した三次元データに基づく断面形状データ(つまり、縮小断面形状データである。)が作成されることとなる。
【0117】
以上の構成において、本発明による三次元造形装置10において、三次元造形物を作製する場合について説明する。
【0118】
まず、ユーザーは、貯留槽14に、三次元造形物を作製するために十分な粉末材料を充填するとともに、造形16における昇降板30を開口部16aに位置した状態とする(図10(a)を参照する。)。なお、このとき、移動部材20は、ローラ26が貯留槽14よりも後方側に位置する所定の位置に位置させる。
【0119】
また、三次元造形を開始する前に、ユーザーは、作成する三次元造形物の三次元形状を表す三次元データから断面形状データを作成する指示を行って、断面形状データを作成する。なお、こうして作成された断面形状データは、記憶部70に出力され、記憶部70において基本断面形状データとして記憶される。
【0120】
その後、ユーザーにより操作子(図示せず。)が操作され、三次元造形の開始が指示されると、三次元造形処理が開始され、この三次元造形処理では、まず、カートリッジ収容部22に収容された各カートリッジ内に貯留されたバインダーおよびインクの残量を取得する(ステップS602)。
【0121】
即ち、このステップS602の処理では、取得部76により、重量センサ52(58)で計測されたカートリッジの重量を取得し、取得したカートリッジの重量から、空のカートリッジの重量を減算して、バインダーおよび各インクの残量を算出することとなる。
【0122】
次に、算出したバインダーおよびインクの残量、基本断面形状データおよび初期設定として設定されたバインダーおよびインクの吐出量に基づいて、形成可能な層数を算出する(ステップS604)。
【0123】
即ち、このステップS604の処理では、層数算出部78により、算出されたバインダーの残量およびインクの残量により、初期設定に設定された吐出量で形成可能な層数を算出することとなる。
【0124】
その後、初期設定で設定された吐出量により三次元造形物を作製することが可能か否かの判断を行う(ステップS606)。
【0125】
即ち、このステップS606の判断処理においては、判断部80により、ステップS604の処理で算出された層数が、最初の基本断面形状データに基づく第1層から、最後の基本断面形状データに基づく最終層までの所定の層数に達したか否かの判断を行うこととなる。
【0126】
つまり、判断部80において、ステップS604の処理で算出された層数が、所定の層数に達していないと判断されると、基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形物を作製することが不可能であると判断され、ステップS604の処理で算出された層数が、所定の層数に達したと判断されると、基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量に基づいて三次元造形物を作製することが可能であると判断される。
【0127】
ステップS606の判断処理により、初期設定で設定された吐出量により三次元造形物を作製することが可能であると判断されると、初期設定で設定された吐出量により三次元造形を行い(ステップS608)、最終層の断面形状を形成した後に、この三次元造形処理を終了する。
【0128】
即ち、このステップS608の処理では、三次元造形装置10により、バインダーおよび各インクの吐出量は初期設定のままで、基本断面形状データに基づいて、三次元造形物を作製することとなる。
【0129】
具体的には、まず、図10(a)に示す状態から、貯留槽14における昇降板21を一定量だけ上昇し、貯留槽14の開口部14aの上方側に粉末材料が盛り上がった状態とするとともに、昇降板30を所定量だけ下降する(図10(b)を参照する。)。このとき、昇降板30が下降する所定量としては、造形16に充填される粉末材料により形成される粉末層が所定の厚さとなるような量とし、この所定の厚さは、三次元造形物の三次元データをZ軸方向に分割する際の間隔と一致する。
【0130】
そして、ローラ26を矢印B方向(図1においては、矢印A方向として示されている。)に回転しながら、移動部材20を前方側に移動することで、開口部14aの上方側に盛り上がった粉末材料は、ローラ26により前方側に押し出され、その多くが造形16に充填されて粉末層を形成し、造形16に充填されなかった粉末材料は、収容槽18に収容される(図11(a)を参照する。)。
【0131】
その後、マイクロコンピューター28における制御部72の制御により、造形16に形成された粉末層に対して、所定の基本断面形状データに基づく位置に、初期設定で設定された吐出量で、吐出ヘッド24からバインダーおよび各インクを吐出して、当該粉末層に当該所定の基本断面形状データに基づく断面形状を形成する(図11(b)を参照する。)。
【0132】
こうして断面形状が形成されると、移動部材20は所定の位置に戻し、貯留槽14における昇降板21を上昇して開口部14aの上方側に粉末材料が盛り上がった状態とするとともに、造形16における昇降板30を所定量だけ下降する(図12(a)を参照する。)。
【0133】
その後、ローラ26を矢印B方向に回転しながら、移動部材20を前方側に移動する(図12(b)を参照する。)。これにより、造形16において、断面形状が形成された粉末層の上にさらなる粉末層が形成され、新たに形成された粉末層に、所定の基本断面形状データの次の基本断面形状データに基づく位置に、初期設定で設定された吐出量で、吐出ヘッド24からバインダーおよび各インクを吐出して、新たに形成された粉末層に当該基本断面形状データに基づく断面形状を形成する。
【0134】
このようにして、断面形状を形成した粉末層の上に新たな粉末層を形成し、形成した新たな粉末層に、基本断面形状データに基づく位置に、初期設定で設定された吐出量で、吐出ヘッド24からバインダーおよびインクを吐出して断面形状を形成する処理を繰り返し行って、基本断面形状データに基づく三次元造形物を作製することとなる。
【0135】
一方、ステップS606の判断処理により、初期設定で設定された吐出量により三次元造形物を作製することが不可能であると判断されると、表示装置(図示せず。)に、間引いて三次元造形物を作製するか、あるいは、三次元造形物を縮小して作製するかの選択画面を表示する(ステップS610)。
【0136】
即ち、このステップS610の処理では、画面表示部82により、図示しない表示装置に、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製すること、あるいは、不足するバインダーおよびインクに応じて三次元造形物を縮小して作製することを選択可能な選択画面の表示を行うこととなる。
【0137】
表示装置(図示せず。)に選択画面が表示されると、次に、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製することが選択されたか否かの判断を行う(ステップS612)。
【0138】
ステップS612の判断処理において、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製することが選択されたと判断されると、層数算出部78において特定された不足するバインダーおよびインクについて、三次元造形物を作製する際に必要となるバインダーおよびインクの総量を算出する(ステップS614)。
【0139】
即ち、このステップS614の処理では、間引き部84により、三次元造形物を作製する際に不足するとされたバインダーおよびインクのそれぞれに対して、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの各断面形状を形成するために必要となるバインダーあるいはインクの総量を算出することとなる。
【0140】
その後、ステップS614の処理で算出した不足するバインダーおよびインクの総量と、ステップS602の処理で取得した当該バインダーおよびインクの残量とから、当該バインダーおよびインクに対する間引き後の吐出量を決定する(ステップS616)。
【0141】
そして、不足するバインダーおよびインクのみをステップS616の処理で決定した間引き後の吐出量とし、他のバインダーおよびインク(つまり、不足するバインダーおよびインクであると特定されなかったバインダーおよびインクである。)については初期設定の吐出量として、三次元造形を行い(ステップS618)、最終層の断面形状を形成した後に、この三次元造形処理を終了する。
【0142】
即ち、このステップS618の処理では、三次元造形装置10により、不足するバインダーおよびインクのみをステップS616の処理で決定した間引き後の吐出量とするとともに、他のバインダーおよびインクについては初期設定で設定された吐出量とし、基本断面形状データに基づいて、三次元造形物を作製することとなる。
【0143】
なお、具体的な処理としては、不足するバインダーおよびインクを間引き後の吐出量とし、その他のバインダーおよびインクについては、初期設定に設定された吐出量で吐出ヘッド24からバインダーおよびインクを吐出する点のみ、上記したステップS608の処理と異なる。
【0144】
つまり、ステップS618の処理では、造形16に形成した粉末層に、基本断面形状データに基づく位置に、吐出ヘッド24からバインダーおよびインクを吐出して断面形状を形成する処理を繰り返し行って、基本断面形状データに基づく三次元造形物を作製することとなる。なお、このとき、吐出ヘッド24から吐出されるバインダーおよび各インクについては、不足するバインダーおよびインクを間引き後の吐出量で、その他のバインダーおよびインクを初期設定で設定された吐出量で吐出することとなる。
【0145】
具体的には、例えば、ステップS616の処理でバインダーおよびM(マゼンタ)のインクについて間引き後の吐出量が決定されたとすると、図11(a)に示す状態とした後に、マイクロコンピューター28における制御部72の制御により、造形16に形成された粉末層に対して、所定の基本断面形状データに基づく位置に、吐出ヘッド24からバインダーおよび各インクを吐出して、当該粉末層に当該所定の基本断面形状データに基づく断面形状を形成することとなる。このとき、吐出ヘッド24から吐出されるバインダーおよびM(マゼンタ)のインクについては間引き後の吐出量で、C(シアン)のインク、Y(イエロー)のインクおよびK(ブラック)のインクについては初期設定で設定された吐出量で、吐出される。
【0146】
さらに、図12(b)に示す状態とした後に、新たに形成された粉末層に、所定の基本断面形状データの次の基本断面形状データに基づく位置に、吐出ヘッド24からバインダーおよび各インクを吐出して、新たに形成された粉末層に当該基本断面形状データに基づく断面形状を形成することとなる。このとき、吐出ヘッド24から吐出されるバインダーおよびM(マゼンタ)のインクについては間引き後の吐出量で、C(シアン)のインク、Y(イエロー)のインクおよびK(ブラック)のインクについては初期設定で設定された吐出量で、吐出される。
【0147】
ここで、ステップS614の処理およびステップS616の処理、つまり、間引き後の吐出量を決定する処理ついて、具体例を挙げて説明する。なお、以下に記載する具体例は、間引き後の吐出量を決定する処理の一例であって、間引き後の吐出量を決定する処理としては、下記記載の具体例に限定されるものではない。
【0148】
図7のフローチャートには、この間引き後の吐出量を決定する処理の詳細な処理内容が示されており、この間引き後の吐出量の決定処理においては、まず、バインダーが不足するか否かの判断を行う(ステップS702)。
【0149】
そして、このステップS702の判断処理において、バインダーが不足しないと判断されると、後述するステップS706の処理に進む。
【0150】
一方、ステップS702の判断処理において、バインダーが不足すると判断されると、バインダーの間引き後の吐出量決定処理が開始される(ステップS704)。
【0151】
ここで、図8には、このステップS704の処理によるバインダーの間引き後の吐出量決定処理の詳細な処理内容が示されており、このバインダーの間引き後の吐出量決定処理では、まず、三次元造形物を作製する際に必要となるバインダーの総量を算出する(ステップS802)。
【0152】
即ち、このステップS802の処理では、間引き部84により、初期設定に設定された吐出量から、第1層から最終層までの各断面形状を形成するために必要となるバインダーの総量、つまり、バインダーの内層の総量、バインダーの中間層の総量およびバインダーの表層の総量が算出されることとなる。
【0153】
なお、このとき、初期設定として設定されているバインダーの吐出量は、例えば、内層30%、中間層60%、表層100%とし、内層の間引き後の吐出量の限界値を、例えば、吐出量10%、中間層の間引き後の吐出量の限界値を、例えば、吐出量20%、表層の間引き後の吐出量の限界値を、例えば、吐出量30%とする。
【0154】
以下の説明においては、各層におけるバインダーの吐出量および吐出量の限界値の一例を用いて、バインダーの間引き後の吐出量決定処理について説明する。
【0155】
次に、ステップS602の処理で取得したバインダーの残量から、バインダーの表層の総量およびバインダーの中間層の総量を減算し(ステップS804)、バインダーの内層の総量に対する算出値の割合が10%を超えるか否かの判断を行う(ステップS806)。
【0156】
このステップS806の判断処理において、ステップS804の処理で算出された算出値の、バインダーの内層の総量に対する割合が、10%を超えると判断されると、内層の吐出量を10%とし(ステップS808)、ステップS706の処理へ進む。
【0157】
即ち、ステップS808の処理では、内層の吐出量を10%、中間層および表層の吐出量は初期設定のまま(つまり、中間層60%、表層100%である。)とするものである。
【0158】
一方、ステップS806の判断処理において、ステップS804の処理で算出された算出値の、バインダーの内層の総量に対する割合が、10%を超えない(つまり、10%以下である。)と判断されると、ステップS602の処理で取得したバインダーの残量から、バインダーの表層の総量およびバインダーの内層の吐出量を10%としたときのバインダーの使用量を減算し(ステップS810)、バインダーの中間層の総量に対する算出値の割合が30%を超えるか否かの判断を行う(ステップS812)。
【0159】
このステップS812の判断処理において、ステップS810の処理で算出された算出値の、バインダーの中間層の総量に対する割合が、30%を超えると判断されると、内層の吐出量を10%、中間層の吐出量を30%とし(ステップ814)、ステップS706の処理に進む。
【0160】
即ち、ステップS814の処理では、内層の吐出量を10%、中間層の吐出量を30%および表層の吐出量を初期設定のまま(つまり、100%である。)とするものである。
【0161】
一方、ステップS812の判断処理において、ステップS810の処理で算出された算出値の、バインダーの中間層の総量に対する割合が、30%を超えない(つまり、30%以下である。)と判断されると、ステップS810の処理で算出された算出値の、バインダーの中間層の総量に対する割合が、20%を超えるか否かの判断を行う(ステップS816)。
【0162】
このステップS816の判断処理において、ステップS810の処理で算出された算出値の、バインダーの中間層の総量に対する割合が、20%を超えると判断されると、内層の吐出量を10%、中間層の吐出量を20%とし(ステップS818)、ステップS706の処理に進む。
【0163】
即ち、ステップS818の処理では、内層の吐出量を10%、中間層の吐出量を20%および表層の吐出量を初期設定のまま(つまり、100%である。)とするものである。
【0164】
一方、ステップS816の判断処理において、ステップS810の処理で算出された算出値の、バインダーの中間層の総量に対する割合が、20%を超えない(つまり20%以下である。)と判断されると、ステップS602の処理で取得したバインダーの残量から、バインダーの内層の吐出量を10%としたときのバインダーの使用量およびバインダーの中間層の吐出量を20%としたときのバインダーの使用量を減算し(ステップS820)、バインダーの表層に対する算出値の割合が40%を超えるか否かの判断を行う(ステップS822)。
【0165】
このステップS822の判断処理において、ステップS820の処理で算出された算出値の、バインダーの表層の総量に対する割合が、40%を超えると判断されると、内層の吐出量を10%、中間層の吐出量を20%、表層の吐出量を40%とし(ステップS824)、ステップS706の処理に進む。
【0166】
一方、ステップS822の判断処理において、ステップS820の処理で算出された算出値の、バインダーの表層の総量に対する割合が、40%を超えない(つまり、40%以下である。)と判断されると、ステップS820の処理で算出された算出値の、バインダーの表層に対する割合が、30%を超えるか否かの判断を行う(ステップS826)。
【0167】
このステップS826の判断処理において、ステップS820の処理で算出された算出値の、バインダーの表層の総量に対する割合が、30%を超えると判断されると、内層の吐出量を10%、中間層の吐出量を20%、表層の吐出量を30%とし(ステップS828)、ステップS706の処理に進む。
【0168】
一方、ステップS826の判断処理において、ステップS820の処理で算出された算出値の、バインダー表層の総量に対する割合が、30%を超えない(つまり、30%以下である。)と判断されると、バインダーが不足するため三次元造形が不可能である旨を表示装置(図示せず。)に表示し(ステップS830)、このバインダーの間引き後の吐出量決定処理を終了することで、三次元造形処理を終了する。
【0169】
次に、インクが不足するか否かの判断を行う(ステップS706)。
【0170】
即ち、このステップS706の処理では、C(シアン)のインク、M(マゼンタ)のインク、Y(イエロー)のインクおよびK(ブラック)のインクのうち、層数算出部78で不足するインクとして特定されたインクがあるか否かの判断を行う。
【0171】
そして、このステップS706の判断処理において、インクが不足しないと判断されると、ステップS702の処理に戻り、再度、ステップS702以降の処理を行う。
【0172】
なお、ステップS702の処理に戻る際の回数をカウントするようにし、ステップS702の処理に戻る回数が所定の回数に達すると、ステップS604の処理に戻り、再度、形成可能な層数の算出を行うようにしてもよい。
【0173】
また、ステップS706の判断処理において、インクが不足すると判断されると、C(シアン)のインク、M(マゼンタ)のインク、Y(イエロー)のインクおよびK(ブラック)のインクのうちの不足すると判断されたインクそれぞれに対して、インクの間引き後の吐出量決定処理が開始される(ステップS708)。
【0174】
ここで、図9には、このステップS708の処理によるインクの間引き後の吐出量決定処理の詳細な処理内容が示されており、このインクの間引き後の吐出量決定処理では、まず、不足すると判断された所定のインクに対して、三次元造形物を作製する際に必要となる総量を算出する(ステップS902)。
【0175】
即ち、このステップS902の処理では、間引き部84により、初期設定に設定された所定のインクの吐出量から、第1層から最終層までの各断面形状を形成するために必要となる所定のインクの総量が算出されることとなる。
【0176】
なお、このとき、初期設定として設定されている所定のインクの吐出量は20%とし、間引き後のインクの吐出量の限界値を吐出量5%とする。
【0177】
次に、ステップS602の処理で取得した所定のインクの残量と、ステップS902の処理で算出した所定のインクの総量とを比較し、ステップS902の処理で算出した所定のインクの総量に対するステップS602の処理で取得した所定のインクの残量の割合が15%を超えるか否かの判断を行う(ステップS904)。
【0178】
このステップS904の判断処理において、所定のインクの総量に対する所定のインクの残量の割合が15%を超えると判断されると、所定のインクの吐出量を15%とし(ステップS906)、ステップS616の処理に進む。
【0179】
また、ステップS904の判断処理において、所定のインクの総量に対する所定のインクの残量の割合が15%を超えない(つまり15%以下である。)と判断されると、ステップS902の処理で算出した所定のインクの総量に対するステップS602の処理で取得した所定のインクの残量の割合が10%を超えるか否かの判断を行う(ステップS908)。
【0180】
このステップS908の判断処理において、所定のインクの総量に対する所定のインクの残量の割合が10%を超えると判断されると、所定のインクの吐出量を10%とし(ステップS910)、ステップS616の処理に進む。
【0181】
また、ステップS908の判断処理において、所定のインクの総量に対する所定のインクの残量の割合が10%を超えない(つまり、10%以下である。)と判断されると、ステップS902の処理で算出した所定のインクの総量に対するステップS602の処理で取得した所定のインクの残量の割合が5%を超えるか否かの判断を行う(ステップS912)。
【0182】
このステップS912の判断処理において、所定のインクの総量に対する所定のインクの残量の割合が5%を超えると判断されると、所定のインクの吐出量を5%とし(ステップS914)、ステップS618の処理に進む。
【0183】
また、ステップS912の判断処理において、所定のインクの総量に対する所定のインクの残量の割合が5%を超えない(つまり、5%以下である。)と判断されると、所定のインクが不足するため三次元造形が不可能である旨を表示装置(図示せず。)に表示し(ステップS916)、このインクの間引き後の吐出量決定処理を終了することで、三次元造形処理を終了する。
【0184】
ステップS612の判断処理において、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製することが選択されなかった(つまり、表示装置(図示せず。)に表示された選択画面において、三次元造形物を縮小して作製することが選択された場合である。)と判断されると、層数算出部78において特定された不足するバインダーおよびインクについて、三次元造形物を作製する際に必要となるバインダーおよびインクの総量を算出する(ステップS620)。
【0185】
即ち、このステップS620の処理では、縮小部86により、三次元造形物を作製する際に不足するとされたバインダーおよびインクのそれぞれに対して、初期設定に設定された吐出量で、第1層から最終層までの各断面形状を形成するために必要となるバインダーあるいはインクの総量を算出することとなる。
【0186】
その後、ステップS620の処理で算出したバインダーおよびインクの総量と、ステップS602の処理で取得したバインダーおよびインクの残量とから、不足するとされたバインダーおよびインクの不足量を算出し(ステップS622)、不足量が最も大きいバインダーあるいはインクを決定する(ステップS624)。
【0187】
そして、決定したバインダーまたはインクの残量により、最も大きいサイズで三次元造形物を作製することができる縮小率を決定する(ステップS626)。
【0188】
こうして決定された縮小率で、記憶部70に記憶された三次元造形物の三次元データを縮小し(ステップS628)、縮小した三次元データの断面形状データを作成する(ステップS630)。
【0189】
即ち、ステップS630の処理では、作成部71により、ステップS628の処理で縮小した三次元データを、水平方向に所定の間隔で切断した断面を表す断面形状データを作成し、作成した断面形状データを縮小断面形状データとして記憶部70に出力する。なお、こうして作成された縮小断面形状データは、基本断面形状データと比較して、断面形状データの数(つまり、断面形状の数)が少なくなるとともに、形成される断面形状の体積が小さくなる。
【0190】
その後、ステップS630の処理で作成した縮小断面形状データに基づいて、三次元造形を行い(ステップS632)、最終層の断面形状を形成した後に、この三次元造形処理を終了する。なお、三次元造形する際のバインダーおよびインクの吐出量としては、初期設定で設定された吐出量となる。
【0191】
即ち、このステップS632の処理では、三次元造形物10により、バインダーおよびインクを初期設定で設定された吐出量とし、ステップS630の処理で作成した縮小断面形状データに基づいて、三次元造形物を作製することとなる。
【0192】
なお、具体的な処理としては、ステップS630の処理で作成した縮小断面形状データに基づいて、断面形状を形成する点についてのみ、上記したステップS608の処理と異なる。
【0193】
つまり、ステップS632の処理では、造形16に形成した粉末層に、ステップS630の処理で作成した縮小断面形状データに基づく位置に、初期設定で設定された吐出量で、吐出ヘッド24からバインダーおよびインクを吐出して断面形状を形成する処理を繰り返し行って、縮小断面形状データに基づく三次元造形物を作製することとなる。
【0194】
具体的には、図11(a)に示す状態とした後に、マイクロコンピューター28における制御部72の制御により、造形16に形成された粉末層に対して、ステップS630の処理で作成された所定の縮小断面形状データに基づく位置に、初期設定で設定された吐出量で、吐出ヘッド24からバインダーおよび各インクを吐出して、当該粉末層に当該所定の縮小断面形状データに基づく断面形状を形成することとなる。
【0195】
さらに、図12(b)に示す状態とした後に、新たに形成された粉末層に、上記所定の縮小断面形状データの次の縮小断面形状データに基づく位置に、初期設定で設定された吐出量で、吐出ヘッド24からバインダーおよび各インクを吐出して、新たに形成された粉末層に当該縮小断面形状データに基づく断面形状を形成することとなる。
【0196】
以上において説明したように、本発明による三次元造形装置10は、粉末材料を硬化するための無色のバインダーと、無色のバインダーに色彩を付すためのインクとが吐出ヘッド24から吐出するようにした。そして、こうしたインクとして、例えば、インクジェットプリンタなどに使用される汎用の水性顔料インクを用いるようにした。
【0197】
また、本発明による三次元造形装置10は、ユーザーにより三次元造形の開始が指示されると、バインダーおよびインクの貯留されたカートリッジの重量を計測し、カートリッジ内に貯留されたバインダーおよびインクの残量を算出するとともに、この算出結果、基本断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量から、基本断面形状データに基づく断面形状を何層形成することが可能であるのかを算出し、算出した断面形状の層数から三次元造形物の作製が可能か不可能かの判断を行うようにした。
【0198】
三次元造形が不可能との判断がなされると、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製するか、あるいは、不足するバインダーおよびインクに応じて三次元造形物を縮小して作製するかの選択画面を表示するようにした。
【0199】
この選択画面において、不足するバインダーおよびインクを間引いて三次元造形物を作製することが選択されると、不足するバインダーおよびインクを特定し、不足するバインダーおよびインクについて初期設定で設定された吐出量を間引いて、間引き後の吐出量を決定するようにした。
【0200】
そして、三次元造形の際には、不足するバインダーおよびインクについては、決定した間引き後の吐出量で吐出ヘッド24から吐出され、他のバインダーおよびインク(つまり、不足するバインダーおよびインクであると特定されなかったバインダーおよびインクである。)については、初期設定で設定された吐出量で吐出ヘッド24から吐出するようにした。なお、このときには、基本断面形状データに基づいて三次元造形が行われる。
【0201】
また、選択画面において、不足するバインダーおよびインクに応じて三次元造形物を縮小して作製することが選択されると、不足するバインダーおよびインクを特定し、不足量の最も大きいバインダーあるいはインクの残量に基づいて、三次元造形物の縮小率を決定し、この決定した縮小率に基づいて三次元造形物の三次元データを縮小し、縮小した三次元データから縮小断面形状データを作成するようにした。
【0202】
そして、三次元造形の際には、この縮小断面形状データに基づいて、三次元造形を行うようにした。なお、このときには、バインダーおよびインクは、初期設定で設定された吐出量となる。
【0203】
このため、本発明による三次元造形装置10においては、カートリッジ内に貯留されたバインダーやインクの残量が不足した場合であっても、例えば、強度を無視してでも三次元造形を行いたいなどの、ユーザーの意思を反映した三次元造形を行うことができる。
【0204】
また、本発明による三次元造形装置10は、カートリッジ収容部22において、重量センサ52(58)を設け、カートリッジ収容部22で各カートリッジ内に貯留されたバインダーおよびインクの残量を計測するとともに、カートリッジ収容部22からチューブを介して吐出ヘッド24に各カートリッジからのバインダーおよびインクを供給するようにした。
【0205】
これにより、本発明による三次元造形装置10は、サブタンクを介してバインダーをヘッドに供給するような従来の技術による三次元造形装置より、装置を小型化することができる。
【0206】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(9)に示すように変形するようにしてもよい。
【0207】
(1)上記した実施の形態においては、画面表示部82は、「間引きして三次元造形物を作製する」という選択肢と、「三次元造形物を縮小して作製する」という選択肢とを選択可能な選択画面を表示するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0208】
即ち、画面表示部82は、上記した選択肢のほかに、例えば、「三次元造形を中止する」などの選択肢を選択画面に表示するようにしてもよい。
【0209】
(2)上記した実施の形態においては、インクの間引き後の吐出量決定処理で、インクの吐出量の限界値に達すると、三次元造形ができない旨を表示するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0210】
即ち、インクの吐出量の限界値に達すると、不足する所定のインクを使用しないで表現可能な別の色彩で表現して三次元造形を行う、全てのインクを使用することなく三次元造形を行う、あるいは、不足する所定のインク以外のインクを用いて単色で三次元造形を行うなどの種々の表現方法による三次元造形を選択可能な選択画面を表示するようにして、この選択画面で選択された方法によって、三次元造形を行うようにしてもよい。
【0211】
(3)上記した実施の形態においては、ローラ26と吐出ヘッド24とが共に移動部材20に配設されるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、ローラ26と吐出ヘッド24とを異なる移動部材に配設するようにし、ローラ26と吐出ヘッド24とが互いに別々にY軸方向に移動するようにしてもよい。
【0212】
(4)上記した実施の形態においては、図3(b)に示すように、回動部50と支持部材54を用い、重量センサ52によりバインダーやインクの貯留されたカートリッジの重量を計測するようにしたり、図3(c)に示すように、収容ステージ56を用いて重量センサ58によりバインダーやインクの貯留されたカートリッジの重量を計測するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0213】
即ち、カートリッジ収容部22において、重量センサによりバインダーやカートリッジの貯留されたカートリッジの重量を計測することができる構成であれば、どのように当該カートリッジを計測するようにしてもよい。
【0214】
(5)上記した実施の形態においては、層数算出部78で、断面形状データおよび初期設定で設定された吐出量で三次元造形物を作成することが可能な層数を算出するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、取得部76で取得したバインダーおよびインクの残量と、三次元データの体積あるいは基本断面形状データの合計体積とを比較して、判断部80により、基本断面形状データに基づいて、初期設定で設定された吐出量で三次元造形物を作成することが可能な否かの判断を行うようにしてもよい。
【0215】
(6)上記した実施の形態においては、バインダーの吐出量を間引く際には、内層、中間層、表層に優先順位を設けるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、内層、中間層および表層において、一律に所定量の吐出量を間引くようにしてもよい。
【0216】
(7)上記した実施の形態においては、無色のバインダーと4色の水性顔料インクを吐出ヘッド24から吐出するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、4色の水性顔料インクに換えて、4色に色づけされたバインダー(有色バインダー)を吐出ヘッドから吐出するようにしてもよい。
【0217】
(8)上記した実施の形態においては、貯留槽14に貯留された粉末材料が昇降板21により押し上げられ、押し上げられた粉末材料をローラ26により押し出して造形槽16に供給するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、貯留槽14やローラ26を設けることなく、造形槽16に直接粉末材料を供給するような構成を設けるようにしてよい。
【0218】
なお、この場合には、造形槽16に供給された粉末材料の表面を平坦にするローラなどの機構も設ける必要がある。
【0219】
(9)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(8)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明は、粉末固着積層方式の三次元造形装置として用いて好適である。
【符号の説明】
【0221】
10 三次元造形装置、14 貯留槽、16 造形、18 収容槽、20 移動部材、21、30 昇降板、22 カートリッジ収容部、24 吐出ヘッド、26 ローラ、28 マイクロコンピューター、52、58 重量センサ、70 記憶部、72 制御部、74 設定変更部、76 取得部、78 層数算出部、80 判断部、82 画面表示部、84 間引き部、86縮小部
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