特許第6502195号(P6502195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502195
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20190408BHJP
   H04N 17/04 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   G01J3/50
   H04N17/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-131644(P2015-131644)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-15526(P2017-15526A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 知行
【審査官】 平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/136882(WO,A1)
【文献】 特開2013−229791(JP,A)
【文献】 特開昭60−113124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00− 3/51
G01M 11/00
G01N 21/25− 21/27
G03B 21/00
G03B 21/14
G09F 9/00
G09G 3/00− 3/38
H01S 5/02
H01S 5/06− 5/0683
H04N 1/46− 1/62
H04N 9/04− 9/11
H04N 9/44− 9/78
H04N 17/00− 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定して測定値データを生成する測定部と、
前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを前記測定値データに基づいて特定する三刺激値特定処理を実行する処理部と備え、
前記処理部は、前記三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2赤色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2緑色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2青色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記青色光代表波長とする測定装置。
【請求項2】
赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定して測定値データを生成する測定部と、
前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを前記測定値データに基づいて特定する三刺激値特定処理を実行する処理部と備え、
前記処理部は、前記三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記青色光代表波長とする測定装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記代表波長特定処理に先立ち、前記測定部によって生成された前記測定値データの前記各波長毎の光の放射量を、前記第1波長間隔よりも狭い予め規定された第2波長間隔で補間し、補間した放射量を含む当該測定値データを用いて前記代表波長特定処理以降の各処理を実行する請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記三刺激値特定処理によって特定した前記合成光の三刺激値XYZに基づいて少なくとも当該合成光の色度を演算する第3演算処理を実行する請求項1からのいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定した測定値データに基づき、前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを特定する三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2赤色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2緑色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2青色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記青色光代表波長とする測定方法。
【請求項6】
赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定した測定値データに基づき、前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを特定する三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記青色光代表波長とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象波長範囲内の各波長毎の光の放射量を測定して測定対象の光の三刺激値XYZを特定する測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、液晶テレビの生産に際して、製品の生産拠点や開発部門において使用するホワイトバランス調整用の計測器が相違していたとしても、計測器の相違に起因するずれ分を校正して精度の高いホワイトバランス調整を可能とする方法(以下、「生産管理方法」ともいう)が開示されている。
【0003】
この生産管理方法では、まず、開発部門において標準サンプルから基準のデータを取得する。具体的には、標準サンプルに基準映像を表示させた状態において、分光放射輝度計を用いて画面上の輝度および色度を計測しつつ、予め規定された輝度および色度となるようにホワイトバランス調整を行う。また、調整が完了したときには、その時点における計測値(輝度および色度)を示す第1の計測データを基準のデータとして取得すると共に、調整が完了した標準サンプルを生産拠点に移送する。
【0004】
次に、生産拠点において、その拠点において生産する製品(標準サンプルと同型の液晶テレビ)のホワイトバランス調整を行う際に使用する計測器(例えば、カラーアナライザ)を用いて、開発部門から移送された標準サンプルについての計測を行う。具体的には、管理部門において上記のホワイトバランス調整を行ったときと同じ基準映像を表示させた状態において、カラーアナライザを用いて画面上の輝度および色度を計測して第2の計測データを取得する。
【0005】
続いて、上記の第1の計測データおよび第2の計測データに基づき、生産拠点のカラーアナライザを校正するための校正用データを演算する。具体的には、第1の計測データ(分光放射輝度計の測定結果)に基づいて三刺激値XYZを演算し、かつ第2の計測データ(カラーアナライザの測定結果)に基づいて三刺激値XYZを演算すると共に、両三刺激値XYZの差異に基づいて校正用データを生成する。この後、生産拠点において生産した製品については、上記の校正用データを使用して校正したカラーアナライザを使用してホワイトバランス調整を行うことにより、開発部門において標準サンプルに対して行ったホワイトバランス調整と同様に製品のホワイトバランスを調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−87037号公報(第5−11頁、第1−7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の特許文献に開示されている生産管理方法には、以下のような問題点が存在する。すなわち、上記の生産管理方法では、生産拠点においてホワイトバランス調整を行う際に使用する計測器を校正するための校正用データを生成する際に、分光放射輝度計を用いて標準サンプルから基準のデータ(第1の計測データ)を取得している。
【0008】
この場合、液晶テレビなどの表示器の開発現場では、正確な測定結果を得ることができるように、測定対象波長範囲内の光の放射量を5nm程度の十分に狭い波長間隔(波長分解能)で測定可能な分光放射輝度計(例えばポリクロメータ方式の分光放射輝度計)が使用される。また、放射量が小さい光についても正確に測定するには、各波長毎の受光センサの感度が十分に高い分光放射輝度計を使用する必要がある。このため、表示器の開発現場などで使用される分光放射輝度計では、各波長毎の受光センサの検出可能波長範囲(実質的な感度を有する波長の範囲)が、その分光放射輝度計の波長分解能(5nm程度)よりも広くなっている。
【0009】
具体的には、この種の分光放射輝度計では、図3に示すように、波長λnmの光の放射量を測定するための受光センサの相対分光感度が、実線50aで示すような特性となっており、波長(λ−d)nmの光(「d」は分光放射輝度計の波長分解能に対応する波長)の放射量を測定するための受光センサの相対分光感度が、一点鎖線50bで示すような特性となっており、波長(λ+d)nmの光の放射量を測定するための受光センサの相対分光感度が、二点鎖線50cで示すような特性となっている。この場合、同図の例では、各受光センサの感度をある程度高い感度A1としていることで、それぞれの検出可能波長範囲が±5nmよりも広くなっている。
【0010】
このため、同図に示すように、波長λnm用の受光センサは、波長λnmの光を感度A1で検出するだけでなく、波長(λ−d)nmの光、および波長(λ+d)nmの光についてもそれぞれ感度A2で検出することとなる。同様にして、波長(λ−d)nm用の受光センサは、波長(λ−d)nmの光を感度A1で検出するだけでなく、波長λnmの光、および波長(λ−2d)nmの光についてもそれぞれ感度A2で検出し、波長(λ+d)nm用の受光センサは、波長(λ+d)nmの光を感度A1で検出するだけでなく、波長λnmの光、および波長(λ+2d)nmの光についてもそれぞれ感度A2で検出することとなる。
【0011】
したがって、この種の分光放射輝度計は、実際に入射している光の波長よりも短い波長の光や、実際に入射している光の波長よりも長い波長の光についてもある程度の放射量を有していると検出する特性(以下、このような特性を「スペクトル幅の拡がり」ともいう)を有している。また、このスペクトル幅の拡がりは、各受光センサの感度を高くするほど一層拡がる傾向がある。
【0012】
この場合、図4に示すように、例えば白色LEDからの光を分光放射輝度計によって測定したときに、実際に出射された光の各波長毎の分光感度が実線60aで示すようなスペクトルのときには、分光放射輝度計における上記のスペクトル幅の拡がりの影響を含む測定結果が破線60bで示すスペクトルとなり、両者が僅かに相違することとなる。しかしながら、白色LEDからの光のような連続スペクトルの光(スペクトル幅が広い光)については、上記のスペクトル幅の拡がりの影響が広い波長範囲に亘って同様に及ぶため、実際のスペクトルと測定結果のスペクトルとがほぼ同様となる。
【0013】
したがって、スペクトル幅が広い光については、分光放射輝度計による各波長毎の測定結果(放射量)と、等色関数における各波長に対応するとに基づいてそれぞれ演算される各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量がほぼ正確な値となる結果、この正確な測光量に基づいて、各波長の光の合成光の三刺激値XYZ正確に演算することができる。なお、図示および詳細な説明を省略するが、赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを備えて構成された液晶テレビからの光(各波長の光の合成光)を測定対象としたときにも、各LEDからの光のスペクトル幅が広いため、実際のスペクトルと測定結果のスペクトルとがほぼ同様となる。このため、液晶テレビからの光を測定対象としたときにも、分光放射輝度計による測定結果に基づいて演算される三刺激値XYZがある程度正確な値となる。
【0014】
一方、今日では、赤色レーザ、緑色レーザおよび青色レーザを光源として備え、各レーザからの光(レーザ光)の合成光によって各種の映像をスクリーンに投影するレーザプロジェクタが開発されている。この場合、レーザから出射される光(レーザ光)は、そのスペクトル幅が非常に狭いことが知られている。具体的には、図4に示すように、赤色レーザからの光、緑色レーザからの光、および青色レーザから実際に出射される光のスペクトルは、それぞれ実線70ra,70ga,70baのようになっている。
【0015】
このような、光が出射されるレーザプロジェクタについて、従来の生産管理方法に従って構成用データを生成したときに、分光放射輝度計による測定結果では、上記のスペクトル幅の拡がりに起因して、赤色レーザからの光については、破線70rbで示すスペクトルとなり、緑色レーザからの光については、破線70gbで示すスペクトルとなり、青色レーザからの光については、破線70bbで示すスペクトルとなる。
【0016】
このように、レーザからの光のようにスペクトル幅が非常に狭い光については、上記のスペクトル幅の拡がりに起因して、実際には存在しない波長や、実際の放射量が非常に小さい波長の光がある程度の放射量を有すると検出されるため、分光放射輝度計による各波長毎の測定結果(放射量)と、等色関数における各波長に対応するとに基づいて演算される各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量が不正確となる。このため、分光放射輝度計を用いて基準のデータを取得する従来の生産管理方法では、スペクトル幅が非常に狭い光について、各波長の光の合成光の三刺激値XYZ正確に演算するのが困難となり、これに起因して、正確な校正用データを生成することができないという問題点が存在する。なお、詳細な説明を省略するが、スペクトル幅の拡がりに起因する上記のような問題点は、モノクロメータ方式の分光放射輝度計を使用したときにも同様にして生じる。
【0017】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、スペクトル幅が狭い光についても各波長の光の合成光の三刺激値XYZ正確に測定し得る測定装置および測定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の測定装置は、赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定して測定値データを生成する測定部と、前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを前記測定値データに基づいて特定する三刺激値特定処理を実行する処理部と備え、前記処理部は、前記三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2赤色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2緑色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2青色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記青色光代表波長とする
【0020】
また、請求項記載の測定装置は、赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定して測定値データを生成する測定部と、前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを前記測定値データに基づいて特定する三刺激値特定処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記青色光代表波長とする。
【0022】
さらに、請求項記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記処理部は、前記代表波長特定処理に先立ち、前記測定部によって生成された前記測定値データの前記各波長毎の光の放射量を、前記第1波長間隔よりも狭い予め規定された第2波長間隔で補間し、補間した放射量を含む当該測定値データを用いて前記代表波長特定処理以降の各処理を実行する。
【0023】
さらに、請求項記載の測定装置は、請求項1からのいずれかに記載の測定装置において、前記処理部は、前記三刺激値特定処理によって特定した前記合成光の三刺激値XYZに基づいて少なくとも当該合成光の色度を演算する第3演算処理を実行する。
【0024】
また、請求項記載の測定方法は、赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定した測定値データに基づき、前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを特定する三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2赤色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2緑色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて当該第2青色光波長範囲内の光の重心波長を特定して前記青色光代表波長とする
また、請求項6記載の測定方法は、赤色レーザから出力される光の第1赤色光波長範囲、緑色レーザから出力される光の第1緑色光波長範囲、および青色レーザから出力される光の第1青色光波長範囲の各波長範囲を含む測定対象波長範囲内の光の放射量を予め規定された第1波長間隔でそれぞれ測定した測定値データに基づき、前記赤色レーザからの光、前記緑色レーザからの光、および前記青色レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを特定する三刺激値特定処理において、前記測定値データに基づき、前記第1緑色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1赤色光波長範囲を含んで予め規定された第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長を特定し、前記第1赤色光波長範囲および前記第1青色光波長範囲を含まず、かつ前記第1緑色光波長範囲を含んで予め規定された第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長を特定すると共に、前記第1赤色光波長範囲および前記第1緑色光波長範囲を含まず、かつ前記第1青色光波長範囲を含んで予め規定された第2青色光波長範囲内の青色光代表波長を特定する代表波長特定処理と、当該代表波長特定処理の特定結果および前記測定値データに基づき、等色関数における前記赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における前記緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における前記青色光代表波長に対応する値を係数として使用して前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から当該第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、当該第1演算処理の演算結果に基づき、前記合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行し、前記代表波長特定処理において、前記第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記赤色光代表波長とし、前記第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記緑色光代表波長とし、かつ前記第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に当該基準放射量を超える光の波長を平均して前記青色光代表波長とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1,2記載の測定装置、および請求項5,6記載の測定方法では、各レーザからの光の合成光の三刺激値XYZを特定する三刺激値特定処理において、第2赤色光波長範囲内の赤色光代表波長、第2緑色光波長範囲内の緑色光代表波長、および第2青色光波長範囲内の青色光代表波長をそれぞれ特定する代表波長特定処理と、等色関数における赤色光代表波長に対応する値を係数として使用して第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における緑色光代表波長に対応する値を係数として使用して第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における青色光代表波長に対応する値を係数として使用して第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量から第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する第1演算処理と、第1演算処理の演算結果に基づき、合成光の三刺激値XYZを演算する第2演算処理とを実行する。
【0026】
したがって、請求項1,2記載の測定装置、および請求項5,6記載の測定方法によれば、第2赤色光波長範囲、第2緑色光波長範囲および第2青色光波長範囲内の各波長毎の放射量から各波長にそれぞれ対応する(等色関数)を係数として使用して測光量を演算する構成・方法と比較して、第2赤色光波長範囲内の全波長について赤色光代表波長に対応する(等色関数)を係数として使用し、第2緑色光波長範囲内の全波長について緑色光代表波長に対応する(等色関数)を係数として使用し、かつ第2青色光波長範囲内の全波長について青色光代表波長に対応する(等色関数)を係数として使用して演算する分だけ、各代表波長から離れた波長、すなわち、実際の放射量よりも大きな値の放射量であると検出される波長についても正確な測光量に近い値を算出することができる。このため、スペクトル幅が非常に狭い光を合成した合成光について正確な三刺激値XYZを演算することができる。
【0027】
また、請求項記載の測定装置、および請求項5記載の測定方法によれば、代表波長特定処理において、第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて第2赤色光波長範囲内の光の重心波長を特定して赤色光代表波長とし、第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて第2緑色光波長範囲内の光の重心波長を特定して緑色光代表波長とし、かつ第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量に基づいて第2青色光波長範囲内の光の重心波長を特定して青色光代表波長とすることにより、代表波長としての重心波長に対応する(等色関数)を係数として使用して演算される測光量のスペクトルが、実際の光のスペクトルとほぼ同様となるため、正確な測光量に基づいて正確な三刺激値XYZを測定することができる。
【0028】
また、請求項記載の測定装置、および請求項6記載の測定方法によれば、代表波長特定処理において、第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に基準放射量を超える光の波長を平均して赤色光代表波長とし、第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に基準放射量を超える光の波長を平均して緑色光代表波長とし、かつ第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量に対して予め規定された割合の基準放射量を特定すると共に基準放射量を超える光の波長を平均して青色光代表波長とすることにより、代表波長としての中心波長に対応する(等色関数)を係数として使用して演算される測光量のスペクトルが、実際の光のスペクトルとほぼ同様となるため、正確な測光量に基づいて正確な三刺激値XYZを測定することができる。
【0030】
さらに、請求項記載の測定装置、およびその測定方法によれば、代表波長特定処理に先立ち、測定部によって生成された測定値データの各波長毎の光の放射量を、第1波長間隔よりも狭い予め規定された第2波長間隔で補間し、補間した放射量を含む測定値データを用いて代表波長特定処理以降の各処理を実行することにより、代表波長の特定に使用する各波長毎の放射量のスペクトルを実際のスペクトルに近付けることで、代表波長を的確に特定することができるため、第2赤色光波長範囲、第2緑色光波長範囲および第2青色光波長範囲内の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を一層正確に演算することができる結果、合成光の三刺激値XYZを一層正確に演算することができる。
【0031】
さらに、請求項記載の測定装置、およびその測定方法によれば、三刺激値特定処理によって特定した合成光の三刺激値XYZに基づいて少なくとも合成光の色度を演算する第3演算処理を実行することにより、正確な三刺激値XYZに基づいて正確な色度や輝度を演算することができるため、例えば、合成光の色度が所望する色度となっているか否かを正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】測定装置1の構成図である。
図2】測定処理10のフローチャートである。
図3】各受光センサの感度と検出可能波長範囲との関係について説明するための説明図である。
図4】測定対象の光の波長と相対分光感度との関係に関する実値および測定値の相違について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、測定装置および測定方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0034】
図1に示す測定装置1は、「測定方法」に従って測定対象光の三刺激値XYZや色度を測定する「測定装置」の一例であって、測定部2、操作部3、表示部4、処理部5および記憶部6を備えて構成されている。
【0035】
なお、本例の測定装置1では、測定モードを切り替えることにより、従来の生産管理方法において使用されている分光放射輝度計と同様にして液晶テレビ等からの光(スペクトル幅が広い光)を対象とする測定処理を実行することができるように構成されているが、本例では、レーザプロジェクタ20における赤色レーザ21r、緑色レーザ21gおよび青色レーザ21bからの光(レーザ光)の合成光Lrgb(レーザプロジェクタ20から出射されてスクリーンにおいて反射された合成光Lrgb:スペクトル幅が狭い光の一例)を測定対象光として測定処理を実行する例について説明する。また、以下の説明においては、「レーザプロジェクタ20から出射されてスクリーンにおいて反射された光」について、単に「レーザプロジェクタ20から出射された光」、または、「レーザプロジェクタ20からの光」ともいう。さらに、図1では、スクリーンの図示を省略している。
【0036】
測定部2は、「測定部」に相当し、一例として、従来の生産管理方法において使用されている分光放射輝度計(一例として、ポリクロメータ方式の分光放射輝度計)と同様に構成されて処理部5の制御に従って測定処理を実行可能に構成されている。具体的には、本例の測定装置1における測定部2は、図4に示すように、赤色レーザ21rから出射される光の波長範囲Hr1(「第1赤色光波長範囲」の一例)、緑色レーザ21gから出射される光の波長範囲Hg1(「第1緑色光波長範囲」の一例)、および青色レーザ21bから出射される光の波長範囲Hb1(「第1青色光波長範囲」の一例)を含む波長範囲Hm(「測定対象波長範囲」の一例:本例では、400nm〜700nmの範囲)内の光の放射量を5nmの波長間隔(「予め規定された第1波長間隔」の一例)でそれぞれ測定して測定値データD1を生成することができるように構成されている。なお、測定部2(分光放射輝度計)の詳細な構造については公知のため、図示および説明を省略する。
【0037】
操作部3は、後述する各種処理の条件の設定操作や、処理の開始/停止を指示する各種の操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部5に出力する。表示部4は、処理部5の制御に従い、測定結果表示画面(図示せず)などの各種の表示画面を表示する。
【0038】
処理部5は、測定装置1を総括的に制御する。この処理部5は、「処理部」の一例であって、図2に示す測定処理10を実行して合成光Lrgbの三刺激値XYZ、色度および輝度を測定する。具体的には、処理部5は、測定部2を制御して波長範囲Hm内の各波長毎の放射量を測定させる。また、処理部5は、測定部2によって生成された測定値データD1を対象とする補間処理を行って測定値データD2を生成する。さらに、処理部5は、生成した測定値データD2に基づき、測光量(第2赤色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する値、第2緑色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する値、および第2青色光波長範囲内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する値)を演算して測定値データD3を生成すると共に、生成した測定値データD3に基づいて合成光Lrgbの三刺激値XYZを特定する。また、処理部5は、特定した三刺激値XYZに基づいて合成光Lrgbの色度および輝度を特定し、それらの特定結果を示す測定結果データD4を生成する処理を実行する。記憶部6は、処理部5の動作プログラムや、上記の測定値データD1〜D3および測定結果データD4などを記憶する。
【0039】
この測定装置1による三刺激値XYZや色度等の測定に際しては、まず、一例として、レーザプロジェクタ20によってスクリーンに投影される映像を観察可能な位置に測定装置1を設置する。この際には、赤色レーザ21r、緑色レーザ21gおよび青色レーザ21b(以下、これらを区別しないときには「レーザ21」ともいう)からの光の合成光Lrgb(スクリーンにおいて反射された合成光Lrgb)が測定部2の受光部に対して入射するように受光面をスクリーンに向けて設置する。
【0040】
次いで、レーザプロジェクタ20の電源を投入し、ホワイトバランス調整用の映像(一例として、投影領域の全域に亘って均一な白色の映像:以下、この映像を「調整用映像」ともいう)の投影を開始させる。この際には、赤色レーザ21rから図4に実線70raで示すスペクトルの光が出射され、緑色レーザ21gから実線70gaで示すスペクトルの光が出射されると共に、青色レーザ21bから実線70baで示すスペクトルの光が出射される。
【0041】
この状態において、操作部3の操作によって処理の開始が指示されたときに、処理部5は、図2に示す測定処理10を開始する。この測定処理10では、処理部5は、まず、測定部2を制御して波長範囲Hm内の各波長毎の放射量をそれぞれ測定させる(ステップ11)。この際には、各波長毎の放射量が、図4に破線70rb,70gb,70bbで示すスペクトルのような値として測定され、その測定値を示す測定値データD1が測定部2から出力される。また、処理部5は、測定部2から出力された測定値データD1を記憶部6に記憶させる。
【0042】
次いで、処理部5は、後述するステップ13の「代表波長特定処理」に先立ち、測定値データD1の各測定値を補間する補間処理を実行する(ステップ12)。具体的には、処理部5は、測定部2によって生成された測定値データD1の各波長毎の光の放射量を、「第1波長間隔」としての5nm間隔よりも狭い波長間隔(0.05nm〜0.5nmの範囲内の波長間隔:一例として、0.1nm間隔:「予め規定された第2波長間隔」の一例)で公知の補間方法に従って線形補間し、補間した放射量を含む測定値データD2を生成して記憶部6に記憶させる。
【0043】
続いて、処理部5は、ステップ12において生成した測定値データD2に基づき、測定部2によって測定された赤色光の代表波長、緑色光の代表波長、および青色光の代表波長をそれぞれ特定すると共に(「代表波長特定処理」の一例)、等色関数における各代表波長に対応するをそれぞれ特定する(ステップ13)。この場合、本例の測定装置1では、図4に示すように、レーザプロジェクタ20の赤色レーザ21rから出射される光の波長範囲Hr1、緑色レーザ21gから出射される光の波長範囲Hg1、および青色レーザ21bから出射される光の波長範囲Hb1に応じて、代表波長を特定する際に放射量を参照する波長範囲Hr2,Hg2,Hb2が予め規定されている。
【0044】
具体的には、波長範囲Hr2は、「第2赤色光波長範囲」の一例であって、「第1緑色光波長範囲」としての波長範囲Hg1、および「第1青色光波長範囲」としての波長範囲Hb1を含まず、かつ「第1赤色光波長範囲」としての波長範囲Hr1を含むように規定されている。また、波長範囲Hg2は、「第2緑色光波長範囲」の一例であって、波長範囲Hr1,Hb1を含まず、かつ波長範囲Hg1を含むように規定されている。さらに、波長範囲Hb2は、「第2青色光波長範囲」の一例であって、波長範囲Hr1,Hg1を含まず、かつ波長範囲Hb1を含むように規定されている。
【0045】
また、処理部5は、波長範囲Hr2内の光の各波長毎の放射量に基づいて波長範囲Hr2内の光の「重心波長」を特定し、特定した波長を赤色光の代表波長(「赤色光代表波長」の一例)とする。さらに、処理部5は、波長範囲Hg2内の光の各波長毎の放射量に基づいて波長範囲Hg2内の光の「重心波長」を特定し、特定した波長を緑色光の代表波長(「緑色光代表波長」の一例)とする。また、処理部5は、波長範囲Hb2内の光の各波長毎の放射量に基づいて波長範囲Hb2内の光の「重心波長」を特定し、特定した波長を青色光の代表波長(「青色光代表波長」の一例)とする。
【0046】
この場合、重心を特定する対象の波長範囲(本例では、波長範囲Hr2,Hg2,Hb2)をそれぞれ「λ〜λ」の範囲とし、測定値データD2における「λ〜λ」の範囲内の波長間隔(本例では、0.1nm)を「dλ」とし、かつ各波長「λ」毎の放射量を「τ(λ)」としたときに、処理部5は、一例として、下記[数1]に示す数式に従って重心波長(重心波長)「λg」をそれぞれ演算する。
【0047】
【数1】
【0048】
以上により、「代表波長特定処理」が完了し、「赤色光代表波長:λrg」、「緑色光代表波長:λgg」および「青色光代表波長:λbg」がそれぞれ特定される。また、処理部5は、等色関数における「赤色光代表波長:λrg」に対応する、等色関数における「緑色光代表波長」λgg」に対応する、および等色関数における「青色光代表波長」λbg」に対応するをそれぞれ特定する。
【0049】
次いで、処理部5は、測定値データD2、およびステップ13において特定した等色関数における各「代表波長:λrg,λgg,λbg」毎の(等色関数)を係数として使用して、測定値データD2における波長範囲Hr2,Hg2,Hb2内の各波長毎の放射量から、波長範囲Hr2,Hg2,Hb2内の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し(「第1演算処理」の一例:ステップ14)、演算結果を測定値データD3として記憶部6に記憶させる。この場合、本例の測定装置1では、例えば、波長範囲Hr2内の最も短い波長から、波長範囲Hr2内の最も長い波長までの各波長毎に、等色関数における「赤色光代表波長:λrg」に対応する値を係数として使用して放射量から測光量を演算する構成が採用されている。
【0050】
したがって、本例の測定装置1では、「赤色光代表波長:λrg」から離れている波長(すなわち、前述した「スペクトル幅の拡がり」の影響で実際の放射量よりも大きな値が検出されている波長)について、その波長に対応する(等色関数)を係数として使用して放射量から測光量をそれぞれ演算する構成と比較して、波長範囲Hr2内のすべての波長について、比較的大きな値の放射量が測定されている「赤色光代表波長:λrg(波長範囲Hr2を代表する波長)」に対応する(等色関数)を係数として使用して放射量から測光量をそれぞれ演算する分だけ、演算される各測光量が、実際に赤色レーザ21rから出射された光のスペクトルに近い値となる。
【0051】
また、波長範囲Hg2内の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量についても、波長範囲Hr2内の各測光量と同様にして、実際に緑色レーザ21gから出射された光のスペクトルに近い値となり、波長範囲Hb2内の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量についても、波長範囲Hr2,Hg2内の各測光量と同様にして、実際に青色レーザ21bから出射された光のスペクトルに近い値となる。
【0052】
続いて、処理部5は、各波長毎の測光量に基づき、レーザプロジェクタ20(各レーザ21r,21g,21b)から出射された光の合成光Lrgbの三刺激値XYZを演算する(「第2演算処理」の実行:ステップ15)。なお、各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量から合成光Lrgbの三刺激値XYZを演算する方法については公知のため、詳細な説明を省略する。この場合、本例の測定装置1では、ステップ14において演算された各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量が、レーザプロジェクタ20から実際に出射された光のスペクトルに近いスペクトルとなっている(正確な測光量が演算されている)ため、このステップ15において演算される三刺激値XYZも正確な値となっている。以上により、「三刺激値特定処理」が完了する。
【0053】
次いで、処理部5は、演算した三刺激値XYZに基づき、合成光Lrgbの色度および輝度をそれぞれ演算し(「第3演算処理」の一例:ステップ16)、その演算結果(色度および輝度)を、ステップ15において演算した三刺激値XYZと共に測定結果データD4として記憶部6に記憶させた後に、この測定処理10を終了する。なお、三刺激値XYZから色度や輝度を演算する方法については公知のため、詳細な説明を省略する。この場合、本例の測定装置1では、ステップ15において演算された三刺激値XYZが正確な値となっているため、このステップ16において演算される色度や輝度も正確な値となっている。
【0054】
具体的には、例えば、従来の生産管理方法において使用されている分光放射輝度計を用いて、白色LEDからの光の色度を測定する際に、分光放射輝度計による各波長毎の測定結果(放射量)から、等色関数における各波長にそれぞれ対応する値を係数として使用して各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を演算し、その測光量に基づいて白色LEDからの光(白色LEDから出射される各波長の光の合成光)の三刺激値XYZを演算して色度を演算したときには、色度の絶対値の誤差が最大で0.0005程度となる。
【0055】
また、従来の生産管理方法において使用されている分光放射輝度計を用いて赤色レーザ21r、緑色レーザ21gおよび青色レーザ21bからの光の合成光Lrgbの色度を測定する際に、分光放射輝度計による各波長毎の測定結果(放射量)から、等色関数における各波長にそれぞれ対応する値を係数として使用して各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を演算し、その測光量に基づいて合成光Lrgbの三刺激値XYZを演算して色度を演算したときには、色度の絶対値の誤差が最大で0.0020程度となることが確認されている。
【0056】
さらに、例えば、波長範囲Hr2の中心の波長、波長範囲Hg2の中心の波長、および波長範囲Hb2の中心の波長をそれぞれ「赤色光代表波長」、「緑色光代表波長」および「青色光代表波長」とする構成・方法では、波長範囲Hr2内の各波長毎の放射量におけるスペクトルの頂点が波長範囲Hr2の中心の波長(赤色光代表波長)からずれた状態のとき、波長範囲Hg2内の各波長毎の放射量におけるスペクトルの頂点が波長範囲Hg2の中心の波長(緑色光代表波長)からずれた状態のとき、および波長範囲Hb2内の各波長毎の放射量におけるスペクトルの頂点が波長範囲Hb2の中心の波長(青色光代表波長)からずれた状態のときに、各「代表波長」に対応する(等色関数)を係数として使用して演算される各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量のスペクトルが、実際の光のスペクトルとは相違する状態となるため、合成光Lrgbの三刺激値XYZ正確に測定するのが困難となり、色度の絶対値の誤差がやや大きな値となる。
【0057】
これに対して、本例の測定装置1では、赤色レーザ21r、緑色レーザ21gおよび青色レーザ21bからの光の合成光Lrgbの色度を測定する際に、従来の生産管理方法において使用されている分光放射輝度計と同様に構成された測定部2の測定結果を使用しているにも拘わらず、測定部2による各波長毎の測定結果(放射量)から、等色関数における「代表波長(重心波長):λrg,λgg,λbg」に対応する値を係数として使用して各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を演算することで、各波長毎の放射量のスペクトルにおける頂点が波長範囲Hr2,Hg2,Hb2内のいずれの位置に存在する状態であったとしても正確な測光量を演算することができる。この結果、その測光量に基づいて合成光Lrgbの三刺激値XYZを演算して色度を演算したときに、色度の絶対値の誤差が最大で0.0005程度と非常に小さくなることが確認されている。
【0058】
このように、この測定装置1、およびその測定方法では、各レーザ21からの光の合成光Lrgbの三刺激値XYZを特定する「三刺激値特定処理」において、波長範囲Hr2内の赤色光代表波長:λrg、波長範囲Hg2内の緑色光代表波長:λgg、および波長範囲Hb2内の青色光代表波長:λbgをそれぞれ特定する「代表波長特定処理」と、等色関数における赤色光代表波長:λrgに対応する値を係数として使用して波長範囲Hr2内の光の各波長毎の放射量から波長範囲Hr2内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算し、等色関数における緑色光代表波長:λggに対応する値を係数として使用して波長範囲Hg2内の光の各波長毎の放射量から波長範囲Hg2内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算すると共に、等色関数における青色光代表波長:λbgに対応する値を係数として使用して波長範囲Hb2内の光の各波長毎の放射量から波長範囲Hb2内の光の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量をそれぞれ演算する「第1演算処理」と、「第1演算処理」の演算結果に基づき、合成光Lrgbの三刺激値XYZを演算する「第2演算処理」とを実行する。
【0059】
したがって、この測定装置1、およびその測定方法によれば、波長範囲Hr2,Hg2.Hb2内の各波長毎の放射量から各波長にそれぞれ対応する(等色関数)を係数として使用して測光量を演算する構成・方法と比較して、波長範囲Hr2,Hg2.Hb2内の全波長について代表波長:λrg,λgg,λbgに対応する(等色関数)を係数として使用して演算する分だけ、代表波長:λrg,λgg,λbgから離れた波長、すなわち、実際の放射量よりも大きな値の放射量であると検出される波長についても正確な測光量に近い値を算出することができる。このため、スペクトル幅が非常に狭い光を合成した合成光Lrgbについて正確な三刺激値XYZを演算することができる。
【0060】
また、この測定装置1、およびその測定方法によれば、「代表波長特定処理」において、波長範囲Hr2内の光の各波長毎の放射量に基づいて波長範囲Hr2内の光の「重心波長」を特定して赤色光代表波長:λrgとし、波長範囲Hg2内の光の各波長毎の放射量に基づいて波長範囲Hg2内の光の「重心波長」を特定して緑色光代表波長:λggとし、かつ波長範囲Hb2内の光の各波長毎の放射量に基づいて波長範囲Hb2内の光の「重心波長」を特定して青色光代表波長:λbgとすることにより、「代表波長」としての「重心波長」に対応する(等色関数)を係数として使用して演算される測光量のスペクトルが、実際の光のスペクトルとほぼ同様となるため、正確な測光量に基づいて正確な三刺激値XYZを測定することができる。
【0061】
さらに、この測定装置1、およびその測定方法によれば、「代表波長特定処理」に先立ち、測定部によって生成された測定値データD1の各波長毎の光の放射量を、「第1波長間隔(本例では、5nm間隔)」よりも狭い予め規定された「第2波長間隔(本例では、0.1nm間隔)」で補間し、補間した放射量を含む測定値データD2を用いて「代表波長特定処理」以降の各処理を実行することにより、「代表波長」の特定に使用する各波長毎の放射量のスペクトルを実際のスペクトルに近付けることで、「代表波長」を的確に特定することができるため、波長範囲Hr2,Hg2,Hb2内の各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を一層正確に演算することができる結果、合成光Lrgbの三刺激値XYZを一層正確に演算することができる。
【0062】
さらに、この測定装置1、およびその測定方法によれば、「三刺激値特定処理」によって特定した合成光Lrgbの三刺激値XYZに基づいて合成光Lrgbの色度および輝度を演算する「第3演算処理」を実行することにより、正確な三刺激値XYZに基づいて正確な色度や輝度を演算することができるため、例えば、合成光Lrgbの色度が所望する色度となっているか否かを正確に判断することができる。
【0063】
なお、「測定装置」の構成、および「測定方法」の具体的な手順は、上記の測定装置1の構成、および測定装置1による測定方法の手順の例に限定されない。例えば、「代表波長特定処理」において、波長範囲Hr2内の「重心波長」を「赤色光代表波長:λrg」とし、波長範囲Hg2内の「重心波長」を「緑色光代表波長:λgg」とし、かつ波長範囲Hb2内の「重心波長」を「青色光代表波長:λbg」とする構成・方法を例に挙げて説明したが、各「代表波長」は「重心波長」に限定されない。
【0064】
例えば、上記の測定処理10におけるステップ12の処理に代えて、波長範囲Hr2内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量(ピーク放射量)に対して予め規定された割合の「基準放射量(一例として、ピーク放射量に対する50%の放射量)」を特定すると共に、特定した「基準放射量」を超える光の波長を平均した波長(以下、「中心波長」ともいう)を「赤色光代表波長:λrg」とする。また、波長範囲Hg2内の光の各波長毎の放射量のなかのピーク放射量に対する50%の放射量を「基準放射量」として特定すると共に、その「基準放射量」を超える光の波長を平均した「中心波長」を「緑色光代表波長:λgg」とし、かつ波長範囲Hb2内の光の各波長毎の放射量のなかのピーク放射量に対する50%の放射量を「基準放射量」として特定すると共に、その「基準放射量」を超える光の波長を平均した「中心波長」を「青色光代表波長:λbg」とする。この後、特定した各「代表波長:λrg,λgg,λbg」に対応する(等色関数)を係数として使用して測定値データD2に基づいて特定される放射量から各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を演算するステップ13以降の処理を実行する。なお、「基準放射量」は、ピーク放射量に対する50%の放射量に限定されず、ピーク放射量に対する任意の割合の放射量を「基準放射量」とすることができる。
【0065】
このような構成の「測定装置」、およびその「測定方法」によれば、前述した測定装置1、およびその測定方法と同様にして、「代表波長」としての「中心波長」に対応する(等色関数)を係数として使用して演算される測光量のスペクトルが、実際の光のスペクトルとほぼ同様となるため、正確な測光量に基づいて正確な三刺激値XYZを測定することができる。
【0066】
また、上記の測定処理10におけるステップ12の処理に代えて、波長範囲Hr2内の光の各波長毎の放射量のなかで最大の放射量(ピーク放射量)の波長(以下、「ピーク波長」ともいう)を「赤色光代表波長:λrg」とし、波長範囲Hg2内の光の各波長毎の放射量のなかのピーク放射量の波長(ピーク波長)を「緑色光代表波長:λgg」とし、かつ波長範囲Hb2内の光の各波長毎の放射量のなかのピーク放射量の波長(ピーク波長)を「青色光代表波長:λbg」とする。この後、特定した各「代表波長:λrg,λgg,λbg」に対応する(等色関数)を係数として使用して測定値データD2に基づいて特定される放射量から各波長毎の三刺激値XYZに相当する測光量を演算するステップ13以降の処理を実行する。
【0067】
このような構成の「測定装置」、およびその「測定方法」によれば、前述した測定装置1、およびその測定方法と同様にして、「代表波長」としての「ピーク波長」に対応する(等色関数)を係数として使用して演算される測光量のスペクトルが、実際の光のスペクトルとほぼ同様となるため、正確な測光量に基づいて正確な三刺激値XYZを測定することができる。
【0068】
また、ステップ12の「代表波長特定処理」に先立ち、測定部2によって生成された測定値データD1を補間して測定値データD2を生成し、生成した測定値データD2を使用して「代表波長特定処理」以降の各処理を実行する構成・方法を例に挙げて説明したが、例えば、「測定部」による測定処理時の波長間隔が十分に狭いときには、「測定部」によって生成された「測定値データ」を補間せずにそのまま使用して「代表波長特定処理」以降の各処理を実行する構成・方法を採用することもできる。
【0069】
さらに、「三刺激値特定処理」によって特定した(演算した)三刺激値XYZに基づいて合成光Lrgbの色度および輝度を特定する(演算する)構成・方法を例に挙げて説明したが、三刺激値XYZに基づいて合成光Lrgbの色度だけを特定する(演算する)構成・方法(輝度を特定しない構成・方法)、三刺激値XYZに基づいて合成光Lrgbの輝度だけを特定する(演算する)構成・方法(色度を特定しない構成・方法)、および三刺激値XYZに基づいて合成光Lrgbの色度や輝度を特定しない構成・方法を採用することもできる。
【0070】
また、ポリクロメータ方式の分光放射輝度計と同様に構成した測定部2を備えた例について説明したが、モノクロメータ方式の分光放射輝度計と同様に構成した「測定部」を備えて構成することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 測定装置
2 測定部
3 操作部
4 表示部
5 処理部
6 記憶部
10 測定処理
20 レーザプロジェクタ
21r 赤色レーザ
21g 緑色レーザ
21b 青色レーザ
50a,60a,70ra,70ga,70ba 実線
50b 一点鎖線
50c 二点鎖線
60b,70rb,70gb,70bb 破線
D1〜D3 測定値データ
D4 測定結果データ
Hr1,Hg1,Hb1,Hr2,Hg2,Hb2,Hm 波長範囲
Lrgb 合成光
図1
図2
図3
図4