(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の遅延時間は、前記検出手段による前記溶接ワイヤの検出位置から前記溶接トーチの先端までの距離と前記所定の長さとの和、および、前記ワイヤ送給装置から送給される前記溶接ワイヤの送給速度に基づき算出される時間である、
請求項3または請求項4のいずれかに記載の溶接システム。
前記検出手段は、発光手段と受光手段とを含んで構成され、前記発光手段から照射された光が、前記溶接ワイヤに反射し、前記受光手段が前記溶接ワイヤに反射した光を検出したときに、前記溶接ワイヤを検出する、
請求項6に記載の溶接システム。
前記検出手段は、発光手段と受光手段とを含んで構成され、前記発光手段から照射された光が、前記溶接ワイヤによって遮られ、前記受光手段が前記光を検出できなくなったときに、前記溶接ワイヤを検出する、
請求項6に記載の溶接システム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、半自動アーク溶接を行う溶接システムを例にとって、図面を参照して説明する。
【0025】
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係る溶接システムAの全体構成を説明するための図である。
図1は、溶接システムAの全体構成の概要図を示しており、
図2は、溶接システムAの機能構成図を示している。図示するように、溶接システムAは、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電源接続線51,52,52’、ガスボンベ6、および、ガス配管7を備えている。
【0026】
溶接電源装置1は、商用電源Pから入力される商用電力を溶接電力に変換する。そして、溶接電源装置1は、変換した溶接電力を、ワイヤ送給装置2を介して、溶接トーチ3に供給する。溶接電源装置1の溶接電力用の一方の出力端子aは、パワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に接続されている。ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤを溶接トーチ3に送り出して、溶接ワイヤを溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41と溶接ワイヤとは電気的に接続される。溶接電源装置1の溶接電力用の他方の出力端子bは、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出する溶接ワイヤの先端と被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに溶接電力を供給する。溶接システムAは、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
【0027】
溶接システムAは、溶接時にシールドガスを用いる。シールドガスはガスボンベ6に貯蔵されており、ガスボンベ6のシールドガスは、ガス配管7を通って、溶接トーチ3に供給される。ガス配管7は、ガスボンベ6から溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2を通るように設けられており、トーチケーブル34(後述)のガスホースに接続されている。ガス配管7のうち、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間の部分の内部には、ワイヤ送給装置2を駆動するための電力(以下、「駆動電力」という。)を伝送するための電源接続線51が配置されている(図示しない)。溶接電源装置1が備える、ワイヤ送給装置2の駆動電力用の電源(後述する送給装置用電源部12)の一方の出力端子は、この電源接続線51を介して、ワイヤ送給装置2の電源(後述する電源部21)の一方の入力端子に接続されている。また、送給装置用電源部12の他方の出力端子は、溶接電源装置1の内部で、電源接続線52によりパワーケーブル41と接続されており、電源部21の他方の入力端子は、ワイヤ送給装置2の内部で、電源接続線52’によりパワーケーブル41と接続されている。これにより、送給装置用電源部12の他方の出力端子と、電源部21の他方の入力端子とが電気的に接続されている。以上のことから、送給装置用電源部12から出力される駆動電力は、電源接続線51およびパワーケーブル41を介して、電源部21に供給される。
【0028】
なお、本実施形態において、駆動電力を電源接続線51およびパワーケーブル41を介して、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に供給するために、上記のように接続した場合を例に説明するが、これに限定されない。例えば、電源接続線51がガス配管7の内側に配線されている必要はなく、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間でむき出しの構成であってもよい。また、電源接続線52や電源接続線52’が、溶接電源装置1やワイヤ送給装置2の内部で、パワーケーブル41に接続されている必要はなく、直接接続されるように構成されていてもよい。これらの接続方法により本発明が限定解釈されるものではない。
【0029】
さらに、溶接システムAにおいて、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、電源接続線51とパワーケーブル41との間に信号を重畳させて通信を行い、ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3とは、専用の通信線(後述する通信線81)により通信を行う。
【0030】
例えば、作業者がトーチスイッチ31(後述)を押下すると、トーチスイッチ31が押下されている間、溶接を指示するための信号(以下、「溶接実行指令」という。)が、溶接トーチ3からワイヤ送給装置2を介して溶接電源装置1に送信される。また、作業者がインチングスイッチ32(後述)を押下すると、このインチング操作に応じて、インチングを指示するための信号(以下、「インチング指令」という。)が溶接トーチ3からワイヤ送給装置2を介して溶接電源装置1に送信される。さらに、溶接トーチ3に備えられた非接触センサ331(後述)が溶接ワイヤを検出すると、溶接ワイヤを検出したことを示す信号(以下、「検出信号」という。)が、溶接トーチ3からワイヤ送給装置2を介して溶接電源装置1に送信される。
【0031】
また、溶接ワイヤの送給開始を指示するワイヤ送給開始指令や溶接ワイヤの送給停止を指示するワイヤ送給停止指令、シールドガスの供給を指示すガス供給指令が、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に、送信される。このワイヤ送給開始指令は、溶接ワイヤの送給速度を所定の速度にするように指示する指令であり、一方、ワイヤ送給停止指令は、溶接ワイヤの送給を停止するように指示する指令、換言すれば、溶接ワイヤの送給速度を0にするように指示する指令である。
【0032】
続いて、溶接システムAを構成する各機能要素について説明する。
【0033】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための溶接電力(直流電力)を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、
図2に示すように、溶接用電源部11、送給装置用電源部12、通信部13、および、制御部14を備えている。
【0034】
溶接用電源部11は、電力系統Pから入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力(溶接電力)に変換して出力するものである。溶接用電源部11に入力される三相交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、インバータ回路によって交流電力に変換される。そして、トランスによって降圧(または昇圧)された後、整流回路によって直流電力に変換され、出力される。なお、溶接用電源部11の構成は、上記したものに限定されない。
【0035】
溶接装置用電源部12は、電力系統Pから入力される単相交流電力を、ワイヤ送給装置2を駆動するための直流電力(駆動電力)に変換して出力するものである。送給装置用電源部12に入力される単相交流電力は、整流回路によって直流電力に変換された後、DC/DCコンバータ回路によって降圧(または昇圧)され、ワイヤ送給装置2に供給される。送給装置用電源部12は、例えば、電圧が48Vに制御された直流電力を、電源接続線51およびパワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に供給する。なお、送給装置用電源部12の構成は、上記したものに限定されない。例えば、溶接用電源部11と同様の構成であってもよく、電力系統Pから入力される単相交流電力をトランスで降圧(または昇圧)してから、整流回路で直流電力に変換して出力するようにしてもよい。
【0036】
通信部13は、電源接続線51およびパワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部13は、結合回路を備えており、当該結合回路は、通信部13の入出力端に接続されたコイルと、電源接続線51,52に並列接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えている。通信部13は、この高周波トランスにより、通信部13が出力する通信信号を電源接続線51,52に重畳させ、また、電源接続線51,52に重畳された通信信号を検出する。すなわち、通信部13は、電力線搬送通信(Power Line Communication通信;PLC通信)を行う。電源接続線52は、溶接電源装置1の内部で、パワーケーブル41に接続しているので、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間の通信信号は、電源接続線51とパワーケーブル41との間に重畳される。
【0037】
通信部13は、電源接続線51,52に重畳された通信信号を検出することで、ワイヤ送給装置2から通信信号を受信し、受信した通信信号を復調して、制御部14に出力する。また、通信部13は、制御部14から入力される信号を通信信号に変調して、電源接続線51,52に重畳させることで、通信信号をワイヤ送給装置2に送信する。
【0038】
通信部13は、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信を行う。直接スペクトル拡散通信方式により、通信信号にノイズが重畳された場合でも、逆拡散によってノイズのスペクトルが拡散されるので、フィルタリングによって元の通信信号を抽出することができる。また、溶接システムA毎に異なる拡散符号を用いていれば、別の溶接システムから送信された通信信号が混信したとしても、当該通信信号は異なる拡散符号で逆拡散されるため、ノイズとして除去される。したがって、高い通信品質で通信を行うことができる。
【0039】
制御部14は、溶接電源装置1の各種制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現される。制御部14は、溶接電源装置1に備えられた図示しない操作部の操作信号や通信部13から入力される各種信号に基づき、溶接電源装置1の各部を制御する。また、制御部14は、通信部13に各種信号を出力することで、ワイヤ送給装置2に各種信号を送信する。
【0040】
例えば、制御部14は、通信部13から入力される溶接実行指令に応じて、溶接用電源部11の起動および停止を制御することで、溶接電力の供給の開始および停止を制御する。このとき、制御部14は、溶接電力の供給を開始すると同時に、ワイヤ送給開始指令やガス供給指令(ガス供給開始指令)をワイヤ送給装置2に送信する。また、制御部14は、溶接電力の供給を停止すると同時に、ワイヤ送給停止指令やガス供給指令(ガス供給停止指令)をワイヤ送給装置2に送信する。
【0041】
また、制御部14は、通信部13からインチング指令が入力されると、溶接ワイヤを溶接トーチ3に送給するためにワイヤ送給開始指令を生成し、通信部13に出力する。よって、制御部14が、特許請求の範囲に記載の「送給開始指令手段」に相当する。このとき、制御部14は、溶接電源装置1に備えられた図示しない記憶部に記憶されるインチング時のワイヤ送給速度を用いて、ワイヤ送給開始指令を生成する。なお、このインチング時のワイヤ送給速度は、図示しない操作部により設定することが可能である。
【0042】
さらに、制御部14は、通信部13から検出信号が入力されると、溶接ワイヤの送給を停止するためにワイヤ送給停止指令を生成し、通信部13に出力する。よって、制御部14が、特許請求の範囲に記載の「送給停止指令手段」にも相当する。
【0043】
ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤやシールドガスを溶接トーチ3に送り出すものである。ワイヤ送給装置2は、
図2に示すように、電源部21、第1通信部22、第2通信部23、制御部24、送給モータ25、送給ロール26、ワイヤリール27、および、コネクタ28を備えている。その他、ガス供給指令に従い、弁を開閉することで、シールドガスの供給を行うガス電磁弁を備えているが、図への記載は省略する。
【0044】
電源部21は、ワイヤ送給装置2の各部に電力を供給するものである。電源部21は、電源接続線51,52’を介して、溶接電源装置1(送給装置用電源部12)から駆動電力が供給され、ワイヤ送給装置2の各部のそれぞれに適した電圧に変換して出力する。電源部21は、溶接電源装置1から供給される電力を蓄積するコンデンサ、コンデンサから電源接続線51,52’に電流が逆流するのを防ぐためのダイオード、ワイヤ送給装置2の各部に出力する電圧を調整するためのDC/DCコンバータを備えている。なお、電源部21の構成は、上記したものに限定されない。
【0045】
第1通信部22は、電源接続線51およびパワーケーブル41を介して、溶接電源装置1との間で通信を行うためのものである。第1通信部22は、結合回路を備えており、当該結合回路は、第1通信部22の入出力端に接続されたコイルと、電源接続線51,52’に並列接続されたコイルとを磁気結合させた高周波トランスを備えている。この高周波トランスにより、第1通信部22が出力する通信信号を電源接続線51,52’に重畳させ、また、電源接続線51,52’に重畳された通信信号を検出する。すなわち、第1通信部22もPLC通信を行う。電源接続線52’は、ワイヤ送給装置2の内部で、パワーケーブル41に接続されているので、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2との間の通信信号は、電源接続線51とパワーケーブル41との間に重畳される。
【0046】
第1通信部22は、電源接続線51,52’に重畳された通信信号を検出することで、溶接電源装置1から通信信号を受信し、受信した通信信号を復調して、制御部24に出力する。また、第1通信部22は、制御部23から入力される信号を通信信号に変調して、電源接続線51,52’に重畳させることで、通信信号を溶接電源装置1に送信する。また、第1通信部22も、通信部13と同様に、直接スペクトル拡散通信方式を用いて通信する。
【0047】
第2通信部23は、通信線81を介して、溶接トーチ3との間で通信を行うためのものである。第2通信部23は、溶接トーチ3から受信した通信信号を制御部24に出力したり、溶接トーチ3に通信信号を送信したりする。
【0048】
制御部24は、ワイヤ送給装置2の各種制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現される。制御部24は、ワイヤ送給装置2に備えられた図示しない操作部の操作信号や第1通信部22および第2通信部23から入力される各種信号に基づき、ワイヤ送給装置2の各部を制御する。また、制御部24は、第1通信部22に各種信号を出力することで、各種信号を溶接電源装置1に送信し、第2通信部23に各種信号を出力することで、各種信号を溶接トーチ3に送信する。
【0049】
例えば、制御部24は、第1通信部22から入力されるワイヤ送給開始指令に従い、送給モータ25の駆動を開始させ、溶接トーチ3に溶接ワイヤを送り出す。そして、第1通信部22から入力されるワイヤ送給停止指令に従い、送給モータ25を停止させ、溶接ワイヤの送給を停止させる。よって、制御部24が、特許請求の範囲に記載の「送給制御手段」に相当する。なお、制御部24は、ワイヤ送給開始指令に従い、溶接ワイヤの送給を開始した後、ワイヤ送給停止指令が入力されるまで、継続して送給モータ25を駆動させ、溶接ワイヤを溶接トーチ3に送給し続ける。また、制御部24は、第1通信部22からガス供給指令が入力されている間、ガス電磁弁を開放して、ガスボンベ6のシールドガスを溶接トーチ3の先端から放出させる。さらに、制御部24は、第2通信部23から入力される溶接実行指令、インチング指令、および、検出信号を第1通信部22に出力し、溶接電源装置1に送信する。
【0050】
制御部24は、インチング時において、溶接ワイヤの送給を停止させるとき、所定の遅延時間を設け、ワイヤ送給停止指令を受信してから所定の遅延時間経過後に、送給モータ25を停止させる。この遅延時間は、予めワイヤ送給装置2に設定されていてもよく、さらに、作業者が自由に設定できるものであってもよい。また、所定の計算により、遅延時間を算出するようにしてもよい。この遅延時間の算出方法についての詳細は後述する。
【0051】
制御部24は、入力されるワイヤ送給停止指令が、溶接時の指令であるかインチング時の指令であるかを判断する必要がある。例えば、溶接トーチ3がインチングにより送給された溶接ワイヤを検出すると、検出信号が溶接トーチ3からワイヤ送給装置2を介して溶接電源装置1に送信される。制御部24は、ワイヤ送給停止指令が入力される前に、この検出信号を受信したか否かにより、インチング時のワイヤ送給停止指令であるか、溶接時のワイヤ送給停止指令であるかを判断する。具体的には、制御部24は、この検出信号を受信したときに、インチング中であることを示すフラグを立てておき、このフラグが立っているときに、ワイヤ送給停止指令が入力されると、インチング時のワイヤ送給停止指令であると判断することができる。あるいは、検出信号の代わりに、インチング指令を受信したときに、フラグを立てておいても、同様に、判断することができる。その他、制御部24は、溶接電源装置1から溶接トーチ3に溶接電力が供給されているときにワイヤ送給停止指令が入力されると、溶接時の指令であると判断し、溶接電力が供給されていないときにワイヤ送給停止指令が入力されると、インチング時の指令であると判断することもできる。また、溶接電源装置1がワイヤ送給停止指令を生成するときに、インチング時のワイヤ送給停止指令であることを示すための情報を、当該ワイヤ送給停止指令に付加しておき、制御部24は、受信したワイヤ送給停止指令を確認し、上記情報が付加されているときに、インチング時のワイヤ送給停止指令であると判断することもできる。
【0052】
送給モータ25および送給ロール26は、溶接トーチ3に溶接ワイヤを送給するものである。送給モータ25は、制御部24によって駆動され、送給ロール26は、送給モータ25の回転軸に取り付けられており、送給モータ25の駆動により回転する。溶接ワイヤはこの送給ロール26に接触しており、送給ロール26が回転することにより、溶接ワイヤに送給力が伝わる。これにより、制御部24は、ワイヤ送給開始指令に従い、送給モータ25を駆動させることで、溶接ワイヤを送給する。なお、溶接ワイヤを確実に送給するための加圧ハンドルや加圧ロール、さらに、送給ロール26からコネクタ28にかけ、トーチケーブル34(後述)内のライナ334に溶接ワイヤが円滑に送給させるためのアウトレットガイドが設けられているが、図への記載および説明は省略する。なお、送給ロール26を送給モータ25の回転軸に取り付けることで、送給ロール26を回転させるのではなく、1個以上のギヤにより、送給モータ25の回転力を送給ロール26に伝達させ、送給ロール26を回転させる構成であってもよい。
【0053】
ワイヤリール27は、溶接ワイヤが巻回されており、溶接ワイヤが円滑に引き出せるための器具である。送給モータ25により送給ロール26が回転し、溶接ワイヤが溶接トーチ3の方向へ引き出されると、ワイヤリール27に巻回された溶接ワイヤが引き出されていく。そして、ワイヤリール27に巻回された溶接ワイヤが無くなる(あるいは残り少なくなる)と、溶接ワイヤが巻回された、新しいワイヤリール27を取り付ける。したがって、ワイヤリール27は、着脱可能なようにワイヤ送給装置2に取り付けられている。なお、新たなワイヤリール27を取り付けたときには、手作業により溶接ワイヤの先端を送給ロール26まで引き出す必要がある。
【0054】
コネクタ28は、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続するための接続用端子である。例えば、コネクタ28は、凹型の接続用端子であり、溶接トーチ3のトーチケーブルの一端に備えられた凸型のトーチプラグ(図示しない)をコネクタ28に差し込むことで、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続することができる。このコネクタ28を介して、ワイヤ送給装置2の内部のパワーケーブル41、通信線81、ガス配管7が、それぞれ溶接トーチ3のトーチケーブル34の内部のパワーケーブル41、通信線81、ガスホースに接続される。
【0055】
溶接トーチ3は、溶接電源装置1からワイヤ送給装置2を介して供給される溶接電力により、被加工物Wの溶接を行う。
図3は、溶接トーチ3の構成例を示す図であり、図示するように、溶接トーチ3は、トーチスイッチ31、インチングスイッチ32、トーチボディ33、および、トーチケーブル34を備えている。なお、
図3において、溶接トーチ3の内部の構造が分かるように、一部透過させて記載している。
【0056】
トーチスイッチ31は、溶接の開始/停止操作を受け付けるためのスイッチであり、トーチボディ33に取り付けられている。このトーチスイッチ31のオン操作(押下)により溶接が開始され、オフ操作により溶接が停止される。すなわち、トーチスイッチ31を押下している間だけ溶接が行われる。
【0057】
インチングスイッチ32は、インチング操作を受け付けるためのスイッチであり、トーチボディ33に取り付けられている。このインチングスイッチ32のオン操作(押下)により、インチングが開始される。なお、このインチングスイッチ32を一度押下することで、インチングが継続して行われる構成であっても、インチングスイッチ32を押下している間だけインチングが行われる構成であってもよい。前者の場合、一度押下することでインチングが行われるため、常にインチングスイッチ32を押し続ける必要がなく、煩わしさがない。一方、後者の場合、インチングスイッチ32の押下をやめることで、インチングを停止させることができるため、緊急時など急に溶接ワイヤの送給を停止したい時に便利である。本実施形態では、インチングスイッチ32を一度押下することで、インチングが行われる場合を例に説明する。
【0058】
トーチボディ33は、溶接トーチ3のグリップ部分としての役割を持ち、作業者は、このトーチボディ33を持って、溶接作業を行う。トーチボディ33の先端には、ノズルおよびコンタクトチップが設けられている。溶接ワイヤは電極と熔加材を兼ねており、コンタクトチップにより溶接電力が溶接ワイヤに供給される。これにより、アークに溶接電力が供給される。トーチボディ33は、その内部に非接触センサ331、制御部332、通信部333、および、ライナ334を有している。
【0059】
非接触センサ331は、溶接トーチ3のトーチボディ33の内部に備えられ、インチングにより溶接トーチ3まで送給されてきた溶接ワイヤを検出するものである。よって、非接触センサ331が、特許請求の範囲に記載の「検出手段」に相当する。非接触センサ331は、例えば、光学式非接触センサ(光電センサ)であり、発光部331aと受光部331bとを含んで構成される。発光部331aから発光された光が、検出物体(溶接ワイヤ)に遮られたり反射したりすることで、受光部331bが受光する光の強度が変化する。非接触センサ331は、この光の強度の変化に基づき、検出物体(溶接ワイヤ)の有無を検出する。発光部331aから照射される光は、可視光の他、赤外線などが用いられる。
【0060】
図4は、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出する原理を説明するための図である。
図4(a)は、発光部331aから発光された光が溶接ワイヤにより遮られ、受光部331bが発光部331aからの光を受光できなくなったことで、溶接ワイヤを検出する。
図4(b)は、発光部331aから発光された光が溶接ワイヤにより反射し、受光部331bが当該反射した光を受光することで、溶接ワイヤを検出する。
図4(c)は、発光部331aから発光された光が反射板に反射し、受光部331bが反射板に反射した光を受光する。その後溶接ワイヤにより、発光された光あるいは反射光が遮られ、受光部331bが光を受光できなくなったことで、溶接ワイヤを検出する。なお、非接触センサ331は、
図4(a)〜(c)に示した原理に限定されない。
【0061】
本実施形態においては、
図3に示すように、
図4(a)に示す原理の非接触センサ331を用いており、発光部331aから発光された光が溶接ワイヤにより遮られ、受光部331bが受光できなくなったことで、溶接ワイヤを検出する。したがって、非接触センサ331は、発光部331aと受光部331bとの間に溶接ワイヤが到達したときに、溶接ワイヤを検出するように構成されている。非接触センサ331によって溶接ワイヤが検出される位置(以下、「検出位置」と表現する。)は、発光部331aと受光部331bとを配置する位置により決定される。
【0062】
また、本実施形態においては、
図3に示すように、トーチボディ33の内部に非接触センサ331を配置する場合を例に説明するが、非接触センサ331をアーク溶接時の熱や電力に耐えられるように構成しておけば、溶接トーチ3の先端に配置するように構成しておいてもよい。このように構成した場合、制御部24で遅延時間を算出する必要が無くなる。
【0063】
制御部332は、トーチスイッチ31の操作に応じて溶接実行指令を生成し、また、インチングスイッチ32の操作に応じてインチング指令を生成する。さらに、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、検出信号を生成する。制御部332は、生成した信号や指令を通信部333に出力し、ワイヤ送給装置2に送信する。
【0064】
通信部333は、通信線81を介して、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部333は、制御部332から入力される各種信号や指令をワイヤ送給装置2に送信する。ワイヤ送給装置2に送信する信号や指令には、溶接実行指令やインチング指令、および、検出信号などがある。通信部333は、ワイヤ送給装置2に検出信号を送信したり、ワイヤ送給装置2を介して溶接電源装置1に検出信号を送信したりすることで、ワイヤ送給装置2や溶接電源装置1に、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出したことを通知する。よって、通信部333が、特許請求の範囲に記載の「通知手段」に相当する。
【0065】
ライナ334は、溶接ワイヤを通すために金属線材をコイル状に形成したものであり、溶接ワイヤはその内部を挿通される。よって、ライナ334が、特許請求の範囲に記載の「ワイヤ挿通部」に相当する。ライナ334は、溶接トーチ3のトーチケーブル34の内部からトーチボディ33の内部を通り、トーチボディ33の先端(コンタクトチップ)まで通っている。ライナ334は、トーチボディ33内部の一部、具体的には、非接触センサ331による溶接ワイヤの検出位置付近の一部に、非接触センサ331が溶接ワイヤの有無を検出できるように、開口部334aが設けられている。なお、
図3においては、開口部334aは、ライナ334の全周分を開口しているが、発光部331aから受光部331bに透光される構造であれば、部分的に開口部334aを設けるようにしてもよい。また、開口部334aの代わりに透明部材などで構成するようにしてもよい。
【0066】
トーチケーブル34は、トーチボディ33の一端(先端とは反対側の端)に接続されたケーブルであり、ケーブル内部にパワーケーブル41、ライナ334、ガスホース、および、通信線81が配置されている。ガスホースは、ワイヤ送給装置2から溶接トーチ3にシールドガスを供給するものであり、ガス配管7とコネクタ28により接続される。通信線81は、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2との間の通信信号を伝搬するためのものである。なお、
図3において、トーチケーブル34の一端(ワイヤ送給装置2に接続する部分)の図示は省略する。
【0067】
次に、制御部24がインチング時の溶接ワイヤの送給を停止させるときの遅延時間の算出方法について説明する。
【0068】
制御部24は、上記するように、インチング時のワイヤ送給停止指令を受信してから、所定の遅延時間経過後に、送給モータ25の駆動を停止させ、送給ワイヤの送給を停止させる。非接触センサ331はトーチボディ33の内部に備えられているため、溶接ワイヤの検出位置は溶接トーチ3の先端より手前になる。したがって、溶接ワイヤを検出してすぐに、溶接ワイヤの送給を停止すると、溶接ワイヤが溶接トーチ3の先端から突出しない状態で停止させてしまうことになる。これを考慮し、制御部24は、溶接ワイヤの検出位置から溶接トーチ3の先端までの距離(以下、「残距離」と表現する。)に基づき、遅延時間を設定する。さらに、インチング後には、溶接ワイヤが溶接トーチ3の先端から所定の長さ(例えば、10mm程度)突出させておく必要があるため、制御部24は、この突出させる長さ(以下、「突出距離」と表現する。)に基づき、上記遅延時間を長く設定する。なお、この残距離および突出距離は、予め制御部24に設定されていても、制御部24が、溶接トーチ3が接続されたときに、その情報を溶接トーチ3から取得してもよい。
【0069】
具体的には、制御部24は、上記残距離と上記突出距離との和、および、インチング時のワイヤ送給速度に基づき、溶接ワイヤの検出位置から溶接トーチ3の先端から突出距離だけ突き出た位置に到達するまでの所要時間を算出し、当該所要時間を遅延時間として、ワイヤ送給停止指令を受信してから遅延時間経過後に、溶接ワイヤの送給を停止する。
【0070】
なお、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出してからワイヤ送給停止指令が制御部24に入力されるまでには、検出信号が溶接トーチ3からワイヤ送給装置2を介して溶接電源装置1に送信され、そして、ワイヤ送給停止指令が溶接電源装置1からワイヤ送給装置2に送信される必要がある。したがって、検出信号やワイヤ送給停止指令の通信に必要な時間も考慮して、遅延時間を算出すると、より適切な位置で溶接ワイヤの送給を停止させることができる。この通信に必要な時間は、検出信号やワイヤ送給停止指令のデータ量および各装置間の通信速度に応じて、適宜設定すればよい。
【0071】
次に、このように構成された第1実施形態に係る溶接システムAのインチング制御について、
図5を用いて説明する。
図5は、第1実施形態に係るインチング制御を説明するためのフローチャートである。なお、ワイヤ送給装置2にワイヤリール27が新たに取り付けられ、溶接ワイヤの先端が送給ロール26までセットされた状態であるものとする。
【0072】
このような状態で、作業者がインチングのためにインチングスイッチ32を押下すると、すなわち、インチングスイッチ32がオン操作を受け付けると(ステップS101)、制御部332は、インチング指令を生成し、通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する(ステップS103)。ワイヤ送給装置2の第2通信部23は、受信したインチング指令を、制御部24に出力し、制御部24は、当該インチング指令を、第1通信部22から溶接電源装置1の通信部13に送信する(ステップS105)。
【0073】
溶接電源装置1の通信部13は、インチング指令を受信すると、制御部14に出力し、制御部14は、当該インチング指令に従い、ワイヤ送給開始指令を生成する(ステップS107)。このとき、制御部14は、予め設定されているインチング時のワイヤ送給速度に基づき、ワイヤ送給開始指令を生成する。そして、制御部14は、生成したワイヤ送給開始指令を、通信部13からワイヤ送給装置2の第1通信部22に送信する(ステップS109)。ワイヤ送給装置2の第1通信部22がワイヤ送給開始指令を受信すると、制御部24は、ワイヤ送給開始指令に従い、送給モータ25の駆動を開始させ、溶接ワイヤの送給を開始する(ステップS111)。
【0074】
ステップS101〜ステップS111の処理により、インチングが開始され、溶接トーチ3の非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると(ステップS113)、制御部332は、検出信号を生成し、当該検出信号を通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する(ステップS115)。ワイヤ送給装置2の第2通信部23は、受信した検出信号を制御部24に出力し、制御部24は、当該検出信号を第1通信部22から溶接電源装置1の通信部13に送信する(ステップS117)。
【0075】
溶接電源装置1の通信部13は、検出信号を受信すると、制御部14に出力し、制御部14は、当該検出信号に従い、ワイヤ送給停止指令を生成する(ステップS119)。そして、制御部14は、生成したワイヤ送給停止指令を、通信部13からワイヤ送給装置2の第1通信部22に送信する(ステップS121)。ワイヤ送給装置2の第1通信部22は、ワイヤ送給停止指令を受信すると、制御部24は、当該ワイヤ送給停止指令に従い、送給モータの駆動を停止させ、溶接ワイヤの送給を停止する(ステップS123)。このとき、制御部24は、残距離と突出距離との和、および、インチング時のワイヤ送給速度に基づき、遅延時間を算出し、算出した遅延時間経過後に、溶接ワイヤの送給を停止させる。なお、制御部24は、インチング時のワイヤ送給停止指令が入力される度に、遅延時間を算出する。
【0076】
以上のように、インチング制御が行われることで、インチングにより溶接ワイヤがワイヤ送給装置2から溶接トーチ3に送給され、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、溶接ワイヤの送給を自動的に停止させることができる。
【0077】
本発明の第1実施形態に係る溶接システムAによれば、溶接ワイヤを溶接トーチ3に送給するインチング時において、溶接トーチ3に備えた非接触センサ331により、溶接ワイヤが溶接トーチ3の所定の位置まで送給されたことを非接触で検出させ、当該非接触センサ331が溶接ワイヤを検出した場合に、溶接ワイヤの送給を停止させるようにした。したがって、従来技術のように、溶接ワイヤとコンタクトチップとの間に電圧を印加させることなく、溶接ワイヤが適切な位置まで送給されたことを検出することができる。これにより、インチング時の溶接ワイヤの送給の自動停止において、溶接ワイヤとコンタクトチップとの間でアークが発生することが防止できる。
【0078】
上記第1実施形態では、溶接電源装置1がインチング時におけるワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令を生成する場合を例に説明したが、これに限定されない。溶接システムでは、溶接時において、溶接電力の供給の制御とともに、溶接ワイヤの送給も制御している。そのため、上記第1実施形態の溶接システムAでは、溶接時のワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令の生成と、インチング時のワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令の生成との両方を、溶接電源装置1が行うものとした。しかし、インチング時においては、溶接トーチ3に溶接電力を供給する必要がないため、ワイヤ送給装置2や溶接トーチ3がワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令の生成を行うようにしてもよい。これらの場合をそれぞれ、第2実施形態、第3実施形態として、以下に説明する。なお、第1実施形態と同一あるいは類似する構成には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
本発明の第2実施形態に係る溶接システムBは、上記第1実施形態に係る溶接システムAと基本構成(
図1,2参照)は同じであるが、上記第1実施形態に係る溶接システムAと比べ、溶接電源装置1の制御部14が行っていたインチング時のワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令の生成を、ワイヤ送給装置2の制御部24が行う点で相違する。すなわち、ワイヤ送給装置2の制御部24が、インチング指令に従いワイヤ送給開始指令を生成し、検出信号に従いワイヤ送給停止指令を生成する。よって、第2実施形態においては、制御部24が、特許請求の範囲に記載の「送給開始指令手段」および「送給停止指令手段」に相当する。さらに、制御部24は、特許請求の範囲に記載の「送給制御手段」も兼ねている。
【0080】
また、上記第1実施形態では、溶接電源装置1がインチング時のワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令を生成するために、ワイヤ送給装置2は、溶接トーチ3から受信したインチング指令や検出信号を溶接電源装置1に送信する必要があったが、第2実施形態では、ワイヤ送給装置2がインチング時のワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令を生成するため、溶接電源装置1に送信しなくてよい。
【0081】
このような第2実施形態に係る溶接システムBのインチング制御について、
図6を用いて説明する。
図6は、第2実施形態に係るインチング制御を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態においても、ワイヤ送給装置2にワイヤリール27が新たに取り付けられ、溶接ワイヤの先端が送給ロール26までセットされた状態であるものとする。
【0082】
このような状態で、作業者がインチングのためにインチングスイッチ32を押下すると、すなわち、インチングスイッチ32がオン操作を受け付けると(ステップS201)、制御部332は、インチング指令を生成し、通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する(ステップS203)。ワイヤ送給装置2の第2通信部23は、受信したインチング指令を、制御部24に出力し、制御部24は、当該インチング指令に従い、ワイヤ送給開始指令を生成する(ステップS205)。このとき、制御部24は、予め設定されたインチング時のワイヤ送給速度に基づき、ワイヤ送給開始指令を生成する。そして、制御部24は、生成したワイヤ送給開始指令に従い、送給モータ25の駆動を開始させ、溶接ワイヤの送給を開始する(ステップ207)。
【0083】
ステップS201〜ステップS207の処理により、インチングが開始され、溶接トーチ3の非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると(ステップS209)、制御部332は、検出信号を生成し、当該検出信号を通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する(ステップS211)。ワイヤ送給装置2の第2通信部23は、受信した検出信号を制御部24に出力し、制御部24は、当該検出信号に従い、ワイヤ送給停止指令を生成する(ステップS213)。そして、制御部24は、生成したワイヤ送給停止指令に従い、送給モータ25の駆動を停止させ、溶接ワイヤの送給を停止する(ステップS215)。このとき、制御部24は、残距離と突出距離との和、および、インチング時のワイヤ送給速度に基づき、遅延時間を算出し、算出した遅延時間経過後に、送給モータ25を停止させる。なお、制御部24は、インチング時のワイヤ送給停止指令が入力される度に、遅延時間を算出する。
【0084】
以上のように、インチング制御が行われることで、インチングにより溶接ワイヤがワイヤ送給装置2から溶接トーチ3に送給されたとき、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、溶接ワイヤの送給を自動的に停止させることができる。したがって、本発明の第2実施形態に係る溶接システムBにおいても、上記第1実施形態に係る溶接システムAと同様に、インチング時の溶接ワイヤの送給の自動停止において、溶接ワイヤとコンタクトチップとの間でアークが発生することを防止できる。
【0085】
続いて、本発明の第3実施形態に係る溶接システムCについて、説明する。本発明の第3実施形態に係る溶接システムCは、上記第1実施形態に係る溶接システムAと基本構成(
図1,2参照)は同じであるが、上記第1実施形態および上記第2実施形態と比べ、インチング時のワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令の生成を溶接トーチ3が行う点で相違する。すなわち、制御部332は、インチングスイッチ32が押下されると、予め設定されたインチング時のワイヤ送給速度に基づきワイヤ送給開始指令を生成し、通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する。さらに、制御部332は、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、ワイヤ送給停止指令を生成し、通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する。よって、第3実施形態において、制御部332が、特許請求の範囲に記載の「送給開始指令手段」および「送給停止指令手段」に相当する。
【0086】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態とは異なり、制御部332がワイヤ送給開始指令やワイヤ送給停止指令を生成するため、インチング指令や検出信号を溶接トーチ3からワイヤ送給装置2に送信する必要はない。
【0087】
このような第3実施形態に係る溶接システムCのインチング制御について、
図7を用いて説明する。
図7は、第3実施形態に係るインチング制御を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態においても、ワイヤ送給装置2にワイヤリール27が新たに取り付けられ、溶接ワイヤの先端が送給ロール26までセットされた状態であるものとする。
【0088】
このような状態で、作業者がインチングのためにインチングスイッチ32を押下すると、すなわち、インチングスイッチ32がオン操作を受け付けると(ステップS301)、制御部332は、インチング指令を生成し、続いて、当該インチング指令に従い、ワイヤ送給開始指令を生成する(ステップS303)。このとき制御部332は、予め設定されたワイヤ送給速度に基づき、ワイヤ送給開始指令を生成する。そして、制御部332は、生成したワイヤ送給開始指令を、通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する(ステップS305)。ワイヤ送給装置2の第2通信部23は、受信したワイヤ送給開始指令を、制御部24に出力し、制御部24は、当該ワイヤ送給開始指令に従い、送給モータ25の駆動を開始させ、溶接ワイヤの送給を開始する(ステップS307)。
【0089】
ステップS301〜ステップS307の処理により、インチングが開始され、溶接トーチ3の非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると(ステップS309)、制御部332は、検出信号を生成し、続いて、当該検出信号に従い、ワイヤ送給停止指令を生成する(ステップS311)。制御部332は、生成したワイヤ送給停止指令を、通信部333からワイヤ送給装置2の第2通信部23に送信する(ステップS313)。ワイヤ送給装置2の第2通信部23は、受信したワイヤ送給停止指令を、制御部24に出力し、制御部24は、当該ワイヤ送給停止指令に従い、送給モータ25の駆動を停止させ、溶接ワイヤの送給を停止する(ステップS315)。このとき、制御部24は、残距離と突出距離との和、および、インチング時のワイヤ送給速度に基づき、遅延時間を算出し、算出した遅延時間経過後に、送給モータ25を停止させる。なお、制御部24は、インチング時のワイヤ送給停止指令が入力される度に、遅延時間を算出する。
【0090】
以上のように、インチング制御が行われることで、インチングにより溶接ワイヤがワイヤ送給装置2から溶接トーチ3に送給されたとき、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、溶接ワイヤの送給を自動的に停止させることができる。したがって、本発明の第3実施形態に係る溶接システムCにおいても、上記第1実施形態に係る溶接システムAと同様に、インチング時の溶接ワイヤの送給の自動停止において、溶接ワイヤとコンタクトチップとの間でアークが発生することを防止できる。
【0091】
上記第1実施形態ないし上記第3実施形態では、溶接電源装置1(制御部14)、ワイヤ送給装置2(制御部24)、溶接トーチ3(制御部332)のいずれか1つの装置が、ワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令の両方を生成する場合を例に説明してが、これに限定されない。例えば、溶接電源装置1の制御部14あるいはワイヤ送給装置2の制御部24がワイヤ送給開始指令を生成し、溶接トーチ3の制御部332がワイヤ送給停止指令を生成するように構成してもよい。具体的には、インチングスイッチ32のインチング操作に応じて、インチング指令が溶接トーチ3から溶接電源装置1またはワイヤ送給装置2に送信され、溶接電源装置1の制御部14またはワイヤ送給装置2の制御部24がワイヤ送給開始指令を生成する。そして、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、溶接トーチ3は、ワイヤ送給停止指令を生成する。このように、ワイヤ送給開始指令とワイヤ送給停止指令とを別々の装置が生成するようにしてもよい。
【0092】
上記1実施形態ないし上記第3実施形態では、インチングスイッチ32を溶接トーチ3に備えた場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、溶接電源装置1やワイヤ送給装置2、さらに、溶接条件などの設定を遠隔操作することができる遠隔操作装置(リモコン)に備えるようにしてもよい。例えば、インチングスイッチ32をリモコンに備えた場合を、第4実施形態として、以下に説明する。
【0093】
図8は、第4実施形態に係る溶接システムDの全体構成を説明するための図である。本第4実施形態に係る溶接システムDは、上記第1実施形態に係る溶接システムAと比べ、溶接条件などの設定やインチング操作を遠隔操作することができるリモコン9を備えている点が異なる。なお、
図1および
図2と同一または類似の構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0094】
リモコン9は、溶接条件を変更するための操作部(図示しない)や、インチングを指示するためのインチングスイッチ32’を備えている。リモコン9は、通信線91を介して溶接電源装置1に接続されており、溶接電源装置1と各種通信を行うことができる。リモコン9は、備えられる操作部の操作により、溶接電源装置1から出力される溶接電力の溶接条件を設定することが可能であり、溶接条件を設定するための情報信号を、通信線91を介して溶接電源装置1に送信する。また、リモコン9は、インチングスイッチ32’の操作に応じて、インチング指令を生成し、通信線91を介して溶接電源装置1に送信する。
【0095】
次に、このように構成された第4実施形態に係る溶接システムDのインチング制御について、
図9を用いて説明する。
図9は、第4実施形態に係るインチング制御を説明するためのフローチャートである。第4実施形態に係るインチング制御は、上記第1実施形態に係るインチング制御と比較し、インチングによる溶接ワイヤの送給開始の方法、具体的には、インチング指令の送受信の流れ(ステップS101〜S111)が異なり、インチングによる溶接ワイヤの送給停止の方法(ステップS113〜S123)は、同じである。なお、本実施形態においても、ワイヤ送給装置2にワイヤリール27が新たに取り付けられ、溶接ワイヤの先端が送給ロール26までセットされた状態であるものとする。
【0096】
このような状態で、作業者がインチングのためにインチングスイッチ32’を押下すると、すなわち、インチングスイッチ32’がオン操作を受け付けると(ステップS401)、リモコン9は、インチング指令を生成し、生成したインチング指令を、通信線91を介して溶接電源装置1に送信する(ステップS403)。そして、溶接電源装置1の制御部14は、受信したインチング指令に従い、ワイヤ送給開始指令を生成する(ステップS405)。このとき、制御部24は、予め設定されたインチング時のワイヤ送給速度に基づき、ワイヤ送給開始指令を生成する。そして、制御部14は、生成したワイヤ送給開始指令を、通信部13からワイヤ送給装置2の第1通信部22に送信する(ステップS407)。ワイヤ送給装置2の第1通信部22がワイヤ送給開始指令を受信すると、制御部24は、当該ワイヤ送給開始指令に基づき、送給モータ25の駆動を開始させ、溶接ワイヤの送給を開始する(ステップS409)。
【0097】
ステップS401〜ステップS409の処理により、インチングが開始された後は、第1実施形態に係るインチング制御のステップS113〜S123と同様に処理され、インチングにおける溶接ワイヤの送給が停止される(
図5参照)。
【0098】
以上のように、インチング制御が行われることで、インチングにより溶接ワイヤがワイヤ送給装置2から溶接トーチ3に送給されたとき、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出すると、溶接ワイヤの送給を自動的に停止させることができる。したがって、本発明の第4実施形態に係る溶接システムDにおいても、上記第1実施形態に係る溶接システムAと同様に、インチング時の溶接ワイヤの送給の自動停止において、溶接ワイヤとコンタクトチップとの間でアークが発生することを防止できる。
【0099】
上記第4実施形態では、ワイヤ送給開始指令およびワイヤ送給停止指令を溶接電源装置1が生成する場合を例に説明したが、上記第2実施形態や上記第3実施形態のように、ワイヤ送給装置2や溶接トーチ3が生成してもよい。この場合、溶接電源装置1がリモコン9から受信したインチング指令をワイヤ送給装置2や溶接トーチ3に送信することで、実現される。また、上記第4実施形態では、リモコン9が溶接電源装置1に接続されている場合を例に説明した、ワイヤ送給装置2に接続するようにしてもよい。
【0100】
上記第4実施形態では、リモコン9が溶接電源装置1と通信線91を介して、有線で通信する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、リモコン9と溶接電源装置1との間で無線通信により、各種信号を送受信する構成であってもよい。また、その他、ワイヤ送給装置2や溶接トーチ3と、無線通信が可能な構成であってもよい。
【0101】
上記第1実施形態ないし上記第4実施形態では、ワイヤ送給装置2の第1通信部22と溶接電源装置1の通信部13との間の通信をパワーケーブル41と電源接続線51とを用いたPLC通信で実現した場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、パワーケーブル42をワイヤ送給装置2の内部を通るようにして設けておけば、パワーケーブル41とパワーケーブル42と、あるいは、パワーケーブル42と電源接続線51とを用いてPLC通信を行うことも可能である。さらに、PLC通信ではなく、専用の通信線(シリアル通信など)を用いたり、無線通信を用いたりしてもよい。
【0102】
また、上記第1実施形態ないし上記第4実施形態では、溶接トーチ3の通信部333とワイヤ送給装置2の第2通信部23との間の通信を、通信線81を用いて有線で行う場合を例にとって説明したが、無線により通信するようにしてもよい。また、溶接トーチ3と溶接電源装置1とを無線通信可能なように構成しておき、溶接トーチ3から溶接電源装置1に直接インチング指令や検出信号を送信するようにしてもよい。
【0103】
上記第1実施形態ないし上記第4実施形態では、制御部24は、インチング時のワイヤ送給停止指令を受信する度に、遅延時間を算出する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、上記する遅延時間の算出手法により一度算出した遅延時間を図示しない記憶部に記憶しておき、次回からは、記憶した遅延時間を読み出すようにしてもよい。あるいは、作業者によりインチング時の送給速度が変更されたり、溶接トーチ3が接続されたりする度に、予め遅延時間を算出し、記憶部に記憶させる。そして、制御部24が、インチング時のワイヤ送給停止指令を受信したときに、記憶部に記憶された遅延時間を読み出すようにしてもよい。このように記憶部に記憶させた遅延時間を読み出すことで、毎回遅延時間を算出する必要がなく、制御部24の遅延時間の算出処理の負荷を低減させることができる。
【0104】
上記第1実施形態ないし上記第4実施形態では、制御部24がワイヤ送給停止指令を受信してから、所定の遅延時間経過後に、送給モータ25の駆動を停止させ、溶接ワイヤの送給を停止させる場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出した後、制御部332が、検出信号を、通信部333を介して送信するときに、所定の遅延時間経過後に送信してもよい。すなわち、通信部333が溶接ワイヤを検出したことを通知するときに、所定の遅延時間経過後に通知してもよい。また、制御部14(制御部24、制御部332)が検出信号を受信し、ワイヤ送給停止指令を生成するときに、所定の遅延時間経過後に生成してもよく、ワイヤ送給停止指令を生成し、生成したワイヤ送給停止指令を送信するときに、所定の遅延時間経過後に送信してもよい。このように、非接触センサ331が溶接ワイヤを検出してから、所定の遅延時間経過後に、溶接ワイヤの送給が停止される構成であれば、上記実施形態に限定されない。なお、遅延時間の算出は、上記する手法により、同様に算出される。また、上記するように、予め算出した遅延時間を図示しない記憶部に記憶しておき、記憶部に記憶される遅延時間を読み出すようにしてもよい。
【0105】
上記第1実施形態ないし上記第4実施形態において、非接触センサ331として、光学式非接触センサ(光電センサ)を用いた場合を例に説明したが、これに限定されない。非接触センサ331は、検出物体の有無を非接触で検出することができるものであれば何でもよい。例えば、インチング時には、溶接トーチ3に溶接電力が供給されていないため、溶接電力による磁場の発生がない。そのため、静電容量型近接センサを用いることができる。また、超音波センサなどを用いて、溶接ワイヤを検出するようにしてもよい。
【0106】
上記第1実施形態ないし上記第4実施形態において、本発明に係る溶接システムとして半自動溶接システムを例に説明したが、これに限定されない。例えば、ロボット溶接システムなどにおいても適用可能である。
【0107】
以上のように、上記第1実施形態ないし上記第4実施形態、および、これらの変形に係る各種溶接システムを説明したが、本発明に係る溶接システムおよび溶接トーチは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲を逸脱しなければ、各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。