(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧比較判定手段は、前記検出電圧が前記閾値電圧よりも低い場合に前記付加機能の動作を禁止し、前記節電動作状態では前記通常動作状態よりも高い前記閾値電圧を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の第1の実施形態に係る電子時計1について、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子時計1の外観の一例を示す平面図であり、
図2は、電子時計1の内部構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示されるように、電子時計1は、時刻を表示する時針2a・分針2b・秒針2c(時刻表示手段)と、クロノグラフ秒を表示する指針3と、クロノグラフ秒や曜日等を表示する液晶表示4a、4bと、プッシュボタン5と、りゅうず6とを備えている。また
図2に示されるように、電子時計1は、発電機構10と、操作部60、時刻機能部40、付加機能部30(付加機能手段)、制御部20(制御手段)を有して構成される。上記発電機構10は、ソーラーセル11(発電手段)、電源制御部12、2次電池13(蓄電手段)、電圧検出部14、を備える。操作部60は、
図1に示したプッシュボタン5とりゅうず6に相当する。制御部20は、発電検出部21(発電検出手段)、節電判定部22、閾値電圧記憶部23、閾値電圧切換部24、電圧比較判定部25(電圧比較判定手段)、駆動制御部26を有している。時刻表示を行う時刻機能部40は、指針41、モータ42、文字表示を行うLCD44、を有していて、付加機能部30は、電波受信31、アラーム32、クロノグラフ33、針位置検出34、照明35、を備えている。
【0011】
次に、
図2における各ブロックの動作について詳しく述べる。
【0012】
ソーラーセル11は、太陽光などの外光を電気エネルギーに変換する発電素子であり、ここで発電した電力は充電制御を行う電源制御部12を介して2次電池13に蓄電され、制御部20、時刻機能部40、付加機能部30、操作部60、電源制御部12、電圧検出部14に供給され、それぞれの動作の為に消費される。
【0013】
電圧検出部14によって検出された2次電池13の電圧は、閾値電圧記憶部23に記憶された複数の閾値電圧から閾値電圧切換部24により選択された閾値電圧と、電圧比較判定部25で比較され、その比較結果が駆動制御部26に伝達される。駆動制御部26は、図示しない発振器と分周器などからなる時刻計時回路(時刻掲示手段)により時刻を計時しており、モータ42に駆動信号を出力して指針を回転させて、この内部計時時刻や電波受信により確定した時刻、または時計動作に関する情報を表示する。さらに、駆動制御部
26はLCD44に駆動信号を入力し、時計動作に関連する情報、例えば、時刻、カレンダ、クロノグラフ33の計測値、各種設定、等を表示できる。
【0014】
以下では、内部計時時刻を表示するために、時刻の進行に応じて各指針を動かすことを通常運針と呼ぶ。特に、秒針は1秒毎に指針を進める。そして、電子時計1が通常運針で動作している状態を通常状態と呼ぶことにする。
【0015】
また、駆動制御部26は、電波受信31、アラーム32、クロノグラフ33、指針位置検出34、照明35のそれぞれの付加機能に対し、動作あるいは停止を指示する付加機能制御信号を出力する。
【0016】
発電検出部21は、ソーラーセル11が光を受けて発電しているか否かを定期的に検知して節電判定部22に伝え、一定時間以上連続して発電していない場合は、節電判定部22で使用者が電子時計1を使用していないと判断し、通常状態から節電状態に移行するよう駆動制御部26に指示を伝達する。ここで節電状態とは、電子時計1が電力を節約するために例えば秒針を停止させた状態のことをいい、これにより、秒針を駆動する電力の消費を抑制できるため、電池電力使い切って計時機能が停止するまでの期間を長くすることができる。
【0017】
節電状態は、操作部60が操作されるか、または光発電が行われた時点で、通常運針に復帰する。節電状態中でも駆動制御部26の内部計時は継続しており、節電状態が解除され通常状態に復帰する場合、駆動制御部26は停止していた現在の指針位置から、内部計時時刻を表示する指針位置までの駆動信号をモータ42に出力する。
【0018】
操作部60は、例えば
図1に示したプッシュボタン5またはりゅうず6等であって、電子時計1の使用者による操作を受け付けて、その操作による信号を駆動制御回路26に出力する。駆動制御部26は、操作部60が受け付けた操作入力に応じて各種の処理を実行する。
【0019】
節電状態は、操作部60が操作されるか、または光発電が行われた時点で、通常運針に復帰する。節電状態中でも駆動制御部26の内部計時の動作は継続しており、節電状態が解除され通常状態に復帰する場合、停止していた現在の指針位置から内部計時時刻を表示する位置まで指針を移動させるため、駆動制御部26はモータ駆動信号をモータ42に出力する。なお、時計の使用者は、プッシュボタン5またはりゅうず6を操作することにより、付加機能の選択と動作設定が可能である。
【0020】
次に、付加機能の動作について説明する。
【0021】
電波受信31は、アンテナを有していて長波標準電波を受信し、受信信号を増幅、検波、復調し、時刻データに変換する。長波標準電波に含まれる時刻データは、60秒で1セットであり、現在年の1月1日から現在日までの通算日数、現在の時分などのデータが含まれる。複数の時刻データは、月、日、時、分、等のデータ毎に比較され、一定数以上の一致を認めた場合、その時刻データが確実であると判断し、モータ42を駆動して表示時刻を修正する。
【0022】
電波受信31は、常に正しい時刻を表示するために毎日1回もしくは複数回決められた時刻に行うが、電波受信時に消費される電流は、毎秒数10〜100uAほどであり、通常運針時における消費電流の100倍もの電流が流れる。さらに電波受信31には、分単位の時間を必要とするため、1回の電波受信による電力消費は大きいものになる。
【0023】
ここでは、長波標準電波の受信を例に説明してきたが、GPS(登録商標)等の衛星信号受信や、Bluetooth(登録商標)等の近距離通信の受信等に本実施形態を適用してもよい。
【0024】
アラーム32は、あらかじめ使用者により設定されたアラーム時刻と、内部時刻が一致した場合、駆動制御部26から出力された駆動信号に応じて、圧電素子を振動させアラーム音を鳴動させる。アラーム駆動時は、圧電素子に数秒間にわたり間欠的にmAレベルの高電流を与えて鳴らすため、消費する電力が大きい。さらに、毎日決まった時刻に数秒間アラーム32が鳴るため電力は確実に消費され、特にアラーム32の鳴動に応じてLEDによるバックライトを点滅させる場合は、さらなる電力を消費することになる。
【0025】
クロノグラフ33は、使用者が操作部60を押下することにより時間を計測できる機能であり、駆動制御部26がクロノグラフ用モータ、あるいは、秒針用モータに駆動信号を出力して動作させる。
【0026】
指針位置検出34は、時計に加わる衝撃により時分秒の指針位置がずれてしまうことがあるため、光学的手段により現在の指針位置を検出し、正常な時刻を示す位置に指針を自動で再配置する機能のことである。駆動制御部26からの駆動信号により、指針位置が検出される。指針位置の検出方法の1例としては、時針が取り付けられる時針車と分針が取り付けられる分針車に透過穴が設けられ、透過穴同士が一致する位置をフォトダイオードあるいはLEDとフォトセンサーにより検出している。同様に秒針にも透過穴が設けられ、位置検出が行われる。これら歯車の透過穴位置に対する指針の相対的な位置は記憶されており、指針の位置の特定が可能となる。LEDの発光により検出する場合、数ms間に数100uAの電流を消費してしまう。
【0027】
指針位置検出34の結果、指針位置がずれていると判断した場合には、駆動制御部26がモータ42に駆動信号を出力し、指針を正しい位置に補正する。従って、連続的にモータ42を駆動することになり電力を消費するが、特に指針位置が進み方向にずれていた場合に指針の補正を行うと、ピーク電流として数mAの電流が流れるため、電力消費は大きい。
【0028】
照明35は、LCDのバックライト、あるいは文字板の照明するLEDのことであり、駆動制御部26の駆動信号により動作する。
【0029】
閾値電圧記憶部23は、付加機能の動作を許可するか禁止するかを決定する閾値電圧を記憶している。具体的には、通常常態あるいは節電状態か、クロノグラフ33の使用時か否かなど、時計の動作モードに応じて付加機能の動作を判定するための複数の閾値電圧を記憶している。
【0030】
閾値電圧切替部24は、閾値電圧記憶部23が記憶した閾値電圧データから、時計の動作モードに応じて閾値電圧を選択し、電圧比較判定部25は、電圧検出部14により検出された2次電池13の電池電圧が選択した閾値電圧を超えているか否かを判定し、超えていない場合は付加機能の動作を禁止する。
【0031】
次に、通常状態と節電状態における閾値電圧の違いについて、
図2の電波受信31を例にとって説明する。
【0032】
図3は、通常状態と節電状態における電波受信禁止を判断するための閾値電圧を示している。縦軸の矢印は電池の蓄電電圧が高い方向を示しており、鎖線で示したVA〜VDは閾値電圧記憶部23が記憶した閾値電圧データであり、電圧の大きさはVA>VB>VC
>VDの関係にある。通常状態では、電池電圧が閾値電圧VDより低い場合は電波受信31を禁止し、閾値電圧VD以上であれば電波受信31を許可する。節電状態では、電池電圧が閾値電圧VCより低い場合は電波受信31を禁止し、閾値電圧VC以上であれば電波受信31を許可する。
【0033】
詳しく述べると閾値電圧記憶部23が、例えば0.2V刻みにVA=2.85V、VB=2.65V、VC=2.45V、VD=2.25Vを閾値電圧として記憶していて、通常状態では電波受信禁止する閾値電圧にVDを選択し、節電状態への移行条件が成立した場合に閾値電圧切替部24により、閾値電圧をVDからVCに変更する。つまり、通常状態では電源電圧が2.25Vに低下するまで電波受信31を許可するが、節電状態では電源電圧が2.45Vに低下した時点で電波受信31を禁止し、電波受信31の受信条件を厳しくしている。
【0034】
先にも説明したように、一定期間発電が行われない場合に通常状態から節電状態に移行する。すなわち節電状態は、時計に光があたらない状況が一定期間続いた場合に、通常状態から遷移するモードであり、机の引き出しなどの暗所に時計が保管され、使用されていない時に節電状態に移行しやすい。このとき暗所で保管されている時計の蓄電電力は減る一方であり、特に定時刻に標準電波受信を行うようにプログラミングされていると、大幅に電力が消費されて、短期間のうちに時計機能を停止せざるを得ない電池電圧まで低下してしまう。更に暗所での時計保管が続く場合は、そのまま不使用期間が継続される傾向にあるため、標準電波受信を続けて正確な時刻を得ることができたとしても、使用者は時計を見ることがなく、時計機能を停止させるまでの期間を早めているだけになる。また、時計が保管されている暗所は、概して標準電波の届きにくい場所であることが多く、大量の電力を消費するにもかかわらず電波受信31に成功しない可能性も高い。従って本実施形態では、節電状態に移行したときには電波受信31を禁止する閾値電圧を、通常状態の閾値電圧よりも高くすることにより、電波受信31を動作できる電池電圧の条件をより厳しくして、消費電力の浪費を抑制している。
【0035】
上記実施形態は、電池電圧が閾値電圧VCより充分高ければ、節電状態であっても電波受信31は動作可能である。これは次の利点を生む。例えば複数の時計を交代に使用する場合などは、節電状態が数日で解除されることもあるし、長期間にわたって暗所にしまわれて節電状態が延々と続くこともある。時計が節電状態に移行した途端に電波受信31を禁止すると、数日の暗所保管であっても標準電波による正確な時刻情報が得られなくなり、使用者が時計を装着したときには、正しい時刻からずれていることが考えられる。従って本実施形態では、節電状態に移行しても電池電圧の残量が十分な場合は、電波受信31を許可して正しい時刻を保持する一方で、電波受信31を禁止する閾値電圧を通常状態より高く設定して、節電状態が続いて電池残量が減ってくると早い時期に電波受信31を禁止し、節電状態が今後も継続することに備えて電池容量を確保し、時計が動作する期間をより長く維持できるようにしている。
【0036】
なお、通常状態と節電状態における電波受信禁止のための閾値電圧は、VD、VCに限らず、節電状態における電波受信禁止のための閾値電圧が、通常状態における閾値電圧より高くなるように選べば、上記の効果を得ることができる。
【0037】
次に、電子時計1が通常状態から節電状態に移行する処理の流れを、
図4のフロー図を用いて説明する。この処理の開始時には、電子時計1は節電状態移行条件が成立しているものとしている。
【0038】
節電状態移行条件が成立すると、駆動制御部26は00秒位置まで指針位置を移動するための駆動信号を付加機能部30に出力する(S1)。これにより秒針2cの移動が始ま
り、秒針2cが00秒位置まで到達しなければ指針の移動を継続し(S2:N)、秒針2cが00秒位置まで到達したら(S2:「Y」)、駆動制御部26は駆動信号の出力を停止する(S3)。その後、閾値電圧記憶部23に記憶されている閾値電圧からVCを選択して、閾値電圧切替部24により電波受信31の動作を判定する閾値電圧を通常状態のVDからVCに変更し(S4)、節電状態への移行が完了する。ここでは、指針位置を00秒位置まで移動させ、使用者に対して時計が節電状態にあることを示すが、00秒位置に指針位置を移動する替わりに、文字板(図示せず)上に節電状態を示す専用表示を設け、その位置に指針し停止してもよい。また、LCD44による表示を有する場合には、LCD44における表示の更新を止めても良いし、LCDにおける表示を消してしまっても良い。
【0039】
次に、電子時計1が節電状態から通常状態に移行する処理の流れを、
図5のフロー図を用いて説明する。なお、この処理の開始時には、電子時計1は通常状態移行条件が成立しているものとする。
【0040】
通常状態移行条件が成立すると駆動制御部26は、電子時計1の内部計時時刻を指し示す位置まで指針を移動するため、指針位置カウンタに計時時刻をセットし(S5)駆動信号を付加機能部30に出力する。これにより秒針2cが移動し現在時刻表示への復帰が始まり、指針位置を示す時刻カウンタと指針位置カウンタの値が一致しなければ(S7:N)秒針2cの移動を継続し、上記2つのカウンタの値が一致すると(S7:「Y」)、駆動制御部26は通常運針を開始する(S8)。その後、閾値電圧記憶部23に記憶されている閾値電圧からVDを選択し、閾値電圧切替部24により電波受信31の動作を判定する閾値電圧VCをVDに変更(S9)するが、通常運針を開始する(S8)前に閾値電圧VCをVDに変更しても良い。
【0041】
次に、第1の実施形態に係る電子時計1が電波受信31の動作を判定する処理の流れを、
図6のフロー図を用いて説明する。
【0042】
節電状態において(S10:「Y」)、発電が検出された場合(S11:「Y」)、
図4に示した通常状態移行処理を行う(S12)。
【0043】
通常状態移行後、電子時計1が受信開始タイミングとなった場合(S13:「Y」)、電圧検出部26により検出された電池電圧V
SSが、電波受信禁止の閾値電圧VDを超えていれば(S14:「Y」)、電波受信31を実行する(S15)。
【0044】
S13で受信開始タイミングではない場合(S13:「N」)、もしくは、S14で電池電圧が電波受信禁止の閾値電圧VDを超えていない場合(S14:「N」)は、電波受信31を実行しない。
【0045】
一方、S11で発電が検出されなかった場合(S11:「N」)、節電状態が継続されており、電子時計1が受信開始タイミングとなった場合(S19:「Y」)、電池電圧V
SSが電波受信禁止の閾値電圧VCを超えていれば(S20:「Y」)、電波受信31を実行する(S21)。S19で受信開始タイミングではない場合(S19:「N」)、もしくは、S20で電池電圧が電波受信禁止の閾値電圧VCを超えていない場合(S20:「N」)は、電波受信31を実行しない。
【0046】
また、S10で節電状態ではなく、通常状態において(S10:「N」)、発電が検出されなかった場合(S16:「N」)、非発電の時間が規定時間(例えば30分)経過していれば(S17:「Y」)、前述の節電状態移行処理を行う(S18)。上記の非発電時間の経過判断は、非発電時間の経過に応じてカウント値が増加する非発電時間カウンタ
が、予め定めた規定時間に相当するカウント値に達したか否かにより判断する。節電状態移行後は、前述したS19の処理を行う。
【0047】
一方、S16で発電が検出された場合(S16:「Y」)、非発電時間カウンタを初期化し、前述したS13の処理を行う(S22)。また、S17で非発電の時間が規定時間経過していない場合(S17:「N」)、節電状態へは移行せず、前述したS13の処理を行う。
【0048】
ここでは通常状態への移行条件、そして節電状態の移行条件を、発電機構による発電の検出の有無としたが、使用者が電子時計1を使用しているか否かを判断できれば、操作部60の入力の有無や、時計の姿勢位置に伴う加速度センサの変化により、節電状態への移行と解除を判断してもよい。
【0049】
節電状態においては、一瞬でも発電を検出すると通常状態に移行するが、その発電時間が短い場合は、再度節電状態に移行しやすくなるように移行条件を緩めても良い。例えば、夜中にトイレに行くために電気をつけた場合に、時計は節電状態から通常状態に移行するが、その後は時計が使用されることが無いにもかかわらず、30分間非発電であることが節電状態への移行条件であるので、30分間は通常状態の運針が続き、電力を多く消費する。従って発電を検出した時間が数分で、その後に発電が検出されない状態が、通常の移行条件(例えば30分)よりも短い時間(例えば5分)継続したら、節電状態に移行するように制御すると良い。これにより、使用者が時計の使用を意図しない場合は、通常より早い段階で節電状態に移行でき、電力消費を抑えることが可能である。
【0050】
また、電池電圧が閾値電圧に満たない場合は、表示形態を変更しても良い。例えば、節電状態において電池電圧が閾値電圧以上の場合、秒針2cは00秒位置で停止しているが、電池電圧が閾値電圧に満たない場合は、秒針2cは30秒位置で停止しても良いし、
文字板(図示せず)上に付加機能が制限されていることを示す専用表示を設け、その位置を指し停止しても良い。これにより、電池電圧の不足で付加機能が行えないことを使用者に示すことができる。電池電圧の残容量表示がある場合は、残容量表示を指針しても良い。さらには、秒針の表示に加えて、秒針とは別の指針で残容量表示を指しても良い。これは、電波受信31が電池電圧の残容量不足で動作できなかった場合に有効であり、次に詳しく述べる。
【0051】
電波受信31の結果を表示可能な場合には、受信成功あるいは失敗の表示を秒針等で指し結果を表示するが、電池電圧が電波受信禁止の閾値電圧より低く電波受信31を実行しなかった場合も、受信失敗の表示を秒針等で指し示すため、電波受信31を動作して失敗した場合と同じ表示になってしまい、使用者は電波受信31に成功しなかった理由を知ることができない。よって、
図7を用いてその解決方法を示す。
【0052】
図7において、71は電波受信失敗の表示、72は電波受信成功の表示、73は電池電圧FULLの表示、74は電池電圧EMPTYの表示、75は電池残量レベル表示、70は小秒針である。
【0053】
電池電圧が閾値電圧に満たず、電波受信31を実行できなかった場合には、
図7に示すように秒針2Cで電波受信失敗71を指し示すと共に、6時位置の小指針70で電池残量レベル表示75を指し示し、電池残量が少ないことを表示させる。これによって、使用者は電波受信31に成功しなかった理由を知ることができ、電池電圧が閾値電圧に満たないためと分かれば、積極的に充電を行うであろう。早い段階で使用者に充電を促すことができれば、電池電圧が低下し電子時計1の計時や運針が短期に止まってしまうことを回避でき、電池の持続時間も延びる。電池残量の少ないことを表示させる手段としては、
図8の
ように6時位置の小指針70で、付加機能が禁止されていることを示す専用の表示(DOWN)76を指し示しても良い。
【0054】
電池電圧が閾値電圧より低いため電波受信31が禁止された場合に、上記のように表示状態を変更したり、電池残量の少ないことを表示しても、時計に光があたり発電が検出され通常運針に戻ってしまうと、指針が通常運針に移行してしまうため、節電状態における付加機能の動作結果や、電池電圧の不足で付加機能が動作できなかったことを使用者に示すことができない。従って、光発電を検出して節電状態から通常状態に移行しても、節電状態における表示を維持し、使用者が操作部60を操作することで通常状態の運針に復帰するようにしても良い。これにより、電池電圧が閾値電圧よりも低いために付加機能が動作されなかったことを、使用者に知らせることができ充電を促すことができる。以下、
図9を用いて詳しく述べる。
【0055】
図9は、節電状態から通常状態に移行する際の表示制御の流れを示したフロー図である。
【0056】
通常状態から節電状態に移行すると、電波受信を禁止するための閾値電圧をVDからVCに変更(S30)し、電波受信を行う定刻になると(S31)電池電圧を閾値電圧と比較して、電池電圧が閾値電圧以上の場合(S32:N)は電波受信を開始し(S38)、電波受信に成功(S39:Y)すれば受信成功の表示を行い(S41)、失敗すれば(S39:N)受信失敗の表示を行う(S40)。その後、時計に光が当たり発電が検出されなければ(S42:N)電波受信を行う定刻になったときのフロー(S31)に戻るが、発電が検出されると(S42:Y)、通常状態の運針、すなわち時刻の進行に応じて各指針を動かす運針(S43)を行い、通常状態に移行する。
【0057】
電波受信を行う定刻になり(S31)電池電圧を閾値電圧と比較して、電池電圧が閾値電圧に満たない場合(S32:Y)は、電波受信31は禁止され(S33)受信失敗の表示を行う(S34)と共に、電池残量、または、付加機能が禁止されていることを示す専用の表示(DOWN)などを指し示して、電池電圧が低い理由で機能が働かなかったことを示す表示を行う(S35)。その後、時計に光が当たり発電が検出されなければ(S36:N)電波受信31を行う定刻になったときのフロー(S31)に戻るが、発電が検出されると(S36:Y)プッシュボタンやりゅうずなどの操作部材が操作されるまでそのままの表示を維持し(S37:N)、操作部材が操作されると(S37:Y)、通常状態の運針、すなわち時刻の進行に応じて各指針を動かす運針(S43)を行い、通常状態に移行する。
【0058】
なおS42のフローでは、時計に光が当たり発電が検出されると(S42:Y)、通常状態の運針、すなわち時刻の進行に応じて各指針を動かす運針(S43)を行うとしたが、プッシュボタンやりゅうずなどの操作部材が操作されるまでそのままの表示を維持し、操作部材が操作されると通常状態の運針を行うようにしてもよい。
【0059】
次に、第1の実施形態における第1の変形例を、
図10のグラフを用いて説明する。
図10は、節電状態へ移行してからの時間経過に伴う閾値電圧の変更方法を示している。縦軸は、閾値電圧を示しており、電圧の大きさはV1<V2<V3<V4の関係にある。横軸は、節電状態に移行してからの経過時間を示しており、経過時間の長さはT1<T2<T3の関係にある。
【0060】
条件が成立し節電状態に移行すると、閾値電圧切替部24により電波受信31の禁止を判断する閾値電圧をV1に設定する。節電状態へ移行してからT1(例えば3日)の期間が経過すると、閾値電圧をV1から、V1より高い電圧V2に変更する。使用者によって
は、休日となる土、日曜日には時計をはずして保管し、月曜日には再び時計を装着することがあり、時計の暗所保管の期間、すなわち節電状態の継続期間が長くても3日を越えることはない。従って、節電状態が3日続く時には、この後も使用者がしばらく時計を装着しない可能性が高く、節電状態に移行してT1経過した時点で、閾値電圧をV1からV2に引き上げ、V2未満の電池電圧では電波受信31を禁止して、電池の消耗を抑制し時計の稼働時間を長くできるようにしている。
【0061】
節電状態の経過期間が、T2(例えば5日)と更に長く続いた場合は、閾値電圧をV2から、V2より高い電圧V3に変更する。つまり更に長い期間、節電状態が継続されているということは、使用者は暫く電子時計1を使う意思がないと想定される。そこで、節電状態の継続期間が長期に渡るほど、電波受信31やアラーム32などの付加機能を禁止する閾値電圧を上げる、すなわち起動させる条件をより厳しくすることで、電力消費を抑え電池の持続時間の向上に繋げることができる。上記では、節電状態の経過期間をT1、T2、T3の3段階で説明したが、上記の経過期間と段階数には限定されず、電池容量と電子時計1の消費電力に応じて定めればよい。
【0062】
これまで電波受信31の禁止を判断する閾値電圧について説明してきたが、アラーム32、文字板を照らす照明35、液晶表示部材のバックライト、指針位置検出34の動作など、電力を大幅に消費する機能に対しても、同様に適用することができ効果が得られる。
【0063】
次に、第1の実施形態における第2の変形例を、
図11のグラフを用いて説明する。
図11は、節電状態へ移行してからの時間経過に伴う閾値電圧の変更方法を示している。縦軸と横軸で示している内容は、
図10と同じであるため説明を省略する。ここでは、
図2で示したアラーム32を例にとり説明する。
【0064】
アラーム32等の機能は、使用者が設定したものであることから優先度が高く、動作を禁止することは極力避けねばならない。例えば起床のためにアラーム32を設定している使用者がいた場合、節電状態でもできる限りアラーム出力を許可する必要がある。しかしながら、節電状態に移行してからの経過期間がT3と十分長い場合、使用者はアラーム32を設定していることを忘れて時計を暗所に保管している可能性がある。このような場合、
図10のように段階的に閾値電圧を上げていくのではなく、節電状態に移行して充分に長い経過期間を過ぎると、V1からV4のように大幅に閾値電圧を上げ、電池電圧がV4以上の高い電圧を有する場合のみ、アラーム出力を許可しても良い。ここでV1は、選択されうる閾値電圧の中で最も低い電圧を選択し、V4は、選択されうる閾値電圧の中で最も高い電圧、もしくは、電源における定格電圧の85%〜95%の電圧を閾値電圧として選択するとよい。
【0065】
図11では、節電状態に移行してからT3に至るまでの期間、閾値電圧としてV1を選択しているが、アラーム32の禁止を極力避けるために、節電状態に移行してからの経過期間がT3に至るまでは、閾値電圧を設けず無条件でアラーム32を許可し、経過期間がT3に至った時点で閾値電圧をV4に設定し、電池電圧がV4以上の高い電圧を有する場合のみ、アラーム出力を許可しても良い。
【0066】
図12は、節電状態に移行してからの経過時間と、付加機能を禁止する閾値電圧について、それぞれの付加機能ごとに示した表である。T1〜T3は経過時間を示しT1<T2<T3、VA〜VDは閾値電圧を示しVD<VC<VB<VAの関係にあるものとする。
【0067】
例えば、経過時間に応じて正確な時間を表示する重要性が低下してくるため、電波受信31では経過時間の長さに応じて段階的に閾値電圧を上げている。指針位置検出は、指針ずれを防止する基本的な機能であるため禁止になりにくいよう、T3になるまで閾値電圧
VCを維持し、その後は閾値電圧をVBに変更している。アラーム32は、できる限り動作させるために、T3になるまで最も低い閾値電圧VDを維持し、その後は最も高い閾値電圧VAを選択している。LED照明は、機能の動作を禁止しても大きな支障は無いため、経過時間が短いT2で最も高い閾値電圧VAを選択している。つまり、付加機能の重要性や消費電力に合わせて閾値電圧を変更することで、使用者にとって有益な付加機能を動作させつつ、電池の持続時間を向上できる。
【0068】
以上のように、使用者が意図して設定した付加機能に関しては、節電状態が十分長く継続した場合に、付加機能の動作を許可する条件を大幅に厳しくすることで、電力消費を抑え電池の持続時間の向上に繋げることができる。
【0069】
次に、第1の実施形態における第3の変形例を、
図13を用いて説明する。
図13は、節電状態において2つ以上の付加機能、例えば、
図2に示した電波受信31とアラーム32の動作タイミングが重なった際の電波受信31を禁止する閾値電圧を記載している点で、
図6と異なっており、その他の同じ内容については説明を省略する。
【0070】
図13では、時計が節電状態にあるときに、電波受信31とアラーム32との動作期間が重なる場合は、電波受信31の動作を禁止する閾値電圧を、電波受信単独での動作を禁止する閾値電圧より高く選択している。以下で詳しく述べる。
【0071】
節電状態では、電池電圧が閾値電圧VCより高ければ定刻に電波受信31を開始するが、電波受信31中にアラーム時刻をむかえた場合、アラーム32は使用者が設定したものであることから優先度が高いため、電波受信31を中止しアラーム出力を行う。そして、アラーム出力が終了したら、一旦中断した電波受信31を最初からやり直す。従って、中断される電波受信31(受信回路8の起動も含む)で消費される電力は、全くの無駄になってしまう。
【0072】
従って節電状態において、定時電波受信が予定されている同時間帯(例えば最長の動作時間幅である午前2時から2時15分)のいずれか時刻にアラーム32が設定されている場合には、電波受信禁止の閾値電圧をVCより高いVBに設定する。なお、アラーム32の禁止を判断する閾値電圧は設定せず、無条件に動作を許可するものとしている。
【0073】
従って電池電圧が低下してくると、電波受信31とアラーム32が重複している期間は電波受信31が禁止され、アラーム鳴動する前に電波受信が始まることは無く、電波受信31が中断されて電力の無駄が生じることも無い。そして、電波受信31とアラーム32が重複している期間を過ぎると、電波受信禁止の閾値電圧をVBからVCに変更するため、電池電圧がVC以上であれば電波受信31を開始することができる。また、閾値電圧のVBからVCへの変更は、アラーム終了後すぐに行ってもよく、電池電圧がVC以上であればアラーム直後に電波受信31を開始することができる。
【0074】
定時の電波受信期間とアラーム時刻が重なって設定されると、相互の時間関係は変わらないため毎日無駄に電力が消費される。上記の実施形態は、節電状態に移行した早い時期で無駄な消費電力を抑制できるため、時計の稼働時間を長く保つ上で有効である。
【0075】
これまで、電波受信31の禁止を判断する各閾値電圧については、通常状態がVD、節電状態がVC、節電状態での機能重複のときがVBとして説明してきたが、電圧の高低の関係が満たされるなら、それぞれの閾値電圧はVB、VC、VDに限らず選択してよい。さらに本実施形態は、3つ以上の機能の動作期間が重複した場合にも、同様に適用が可能である。
【0076】
また、電波受信31とアラーム機能の動作時間が重複した例で説明したが、それ以外にも液晶表示部材のバックライト、指針位置の検出動作など、電力を消費する付加機能に対しても、同様に適用することができ、効果が得られる。指針位置の検出動作とアラーム32が重複したときの例を、次に説明する。
【0077】
節電状態における指針の運針制御の1例として、秒針は停止し時分針は稼動させ、分針の指針位置検出を1分に1回定期的に行う場合に、指針位置検出は分の正時(分表示が変わるタイミング)に動作され、アラーム32も時分の正時に動作される。従って、この指針位置検出とアラーム32の動作時間が重複する可能性がある。従って、指針位置検出機能が稼動する時間帯とアラーム32の動作時間帯が重なったときは、指針位置検出機能の禁止を判断する閾値電圧を、上記の電波受信禁止の閾値電圧と同様に選択すれば、無駄な消費電力を抑制でき、時計の稼働時間を長く保つことができる。
【0078】
つまり付加機能の動作期間が重複した場合は、重複した付加機能のうち、アラーム32のように使用者が動作時刻を設定した機能の方でなく、他方の付加機能の禁止を判定する閾値電圧を高くするのである。これにより、節電状態に移行した早い時期で、無駄な消費電力を抑制でき、時計の稼働時間を長く保つことができるのである。
【0079】
さらに、付加機能が重複したときに消費される電力の大きさに応じて、付加機能、例えば電波受信31の禁止を判断する閾値電圧の高さを選んでも良い。つまり重複した付加機能のうち、使用者が動作時刻を設定した方でない付加機能の消費電力が大きいなら、その節電状態の閾値電圧を、通常状態の閾値電圧VDに対してVAのように大幅に高くし、消費電力が小さいならVCのように低く設定する。すると、消費電力の大きい機能は電池電圧が十分に無いと実行しにくくなり、電力の消費を抑制し時計の稼働時間を長くできる。
【0080】
これまで、アラーム32の閾値電圧を設けず無条件で動作するものとして説明してきたが、時計の稼働時間を長くすることを優先するならば、アラーム32に閾値電圧を設けても良い。その場合、アラーム32は使用者の意思により設定される機能であることから、通常状態の閾値電圧に対する節電状態の閾値電圧をVCのように低く設定し、電池電圧が大幅に低下したときのみアラーム機能を禁止することが望ましい。
【0081】
これまで説明に用いたVA〜VD、V1〜V4、は、電圧の大小関係を示す一例であり、電池容量等の条件で電圧値を変更することが可能である。また、
図2に示した2次電池13の蓄電電圧と閾値電圧を、電圧比較判定部25で比較することで、付加機能を禁止するか否かを判定してものとして説明してきたが、ソーラーセル11等の発電器が発電する発電電圧と閾値電圧を比較して判定してもよい。