特許第6502246号(P6502246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6502246親水性シリコーンモノマー、その調製プロセスおよびそれを含有する薄膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502246
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】親水性シリコーンモノマー、その調製プロセスおよびそれを含有する薄膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 30/08 20060101AFI20190408BHJP
   C08F 222/38 20060101ALI20190408BHJP
   C08J 3/075 20060101ALI20190408BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20190408BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20190408BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20190408BHJP
   C08G 77/46 20060101ALN20190408BHJP
【FI】
   C08F30/08
   C08F222/38
   C08J3/075CEY
   C07F7/08 X
   C07F7/10 W
   G02C7/04
   !C08G77/46
【請求項の数】14
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-501700(P2015-501700)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公表番号】特表2015-516998(P2015-516998A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】US2013029345
(87)【国際公開番号】WO2013142060
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/614,243
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ザクセナ,アヌブハヴ
(72)【発明者】
【氏名】ブハト,シュリードハル
(72)【発明者】
【氏名】ウマパシー,センシルクマル
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ケンリック,エム
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/038242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F6/00−301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのシリコーンモノマーを含むヒドロゲル組成物であって、該シリコーンモノマーが、以下の式(I):
Si−O−[Si(R)(Z)O]−[SiRO]−SiR (I)
もしくは式(II):
【化1】

で示され、
式中、aが1〜50であり、bが0〜100であり、それぞれのRが独立して、1から10個の炭素原子の、一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素基、1から10個の炭素原子のハロゲン化炭化水素基、ならびにトリアルキルシリルオキシ基からなる群より選択され、Zが、式(III)
−HC−CHR−(CH−O−(CO)−(CO)−(CO)−X (III)
を持つ、異性化しないヒドロシリル化に有効な末端オレフィン残基を持つポリエーテル部分であり、
式中、nが1から20であり、pおよびqが独立して0から100であり、rが0から50であり、(p+q+r)が0より大きく、Rが1から4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Xがビニル基、または
式(IVb):
【化2】

を持つポリエーテル末端基であり、
式中、RおよびRが、独立して水素、または1から20個の炭素原子の、置換のもしくは非置換の、飽和の、一価の炭化水素基、またはCOOHもしくは−CH−COOHであり、Lは、1から16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ二価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなる架橋基であるか、又は、1から16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ二価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなり、且つ式:
【化3】

を持つ架橋基であり、式中sが0から15より選択される整数である、
ヒドロゲル組成物。
【請求項2】
シリコーンモノマーが、触媒の存在下で実施された下記シリコーン含有化合物と下記ポリエーテル化合物との反応で作製されたポリエーテルシロキサンと、下記アクリル化合物との反応によって作製されたシリコーンモノマーである、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
<シリコーン含有化合物>
下記式(V)のシリコーン含有化合物
Si−O−[SiH(R)O]−[SiRO]−SiR (V)
式中、aが1〜50であり、bが0〜100であり、それぞれのRが独立して、1から10個の炭素の一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の、炭化水素基、1から10個の炭素のハロゲン化炭化水素基からなる群より選択される。
<ポリエーテル化合物>
少なくとも一端をヒドロキシルもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンによって末端化され、他端を分岐アルケンによって末端化された、下記式(VI)のポリエーテル化合物
CH=CR−(CH−(OC−(OC−(OC−Y (VI)
式中、nが1〜20であり、pおよびqが0から100であり、rが0から50であり、Rが1から4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Yが−OHもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンである。
アクリル化合物
下記式(VII)のアクリル化合物
【化4】

式中、Lが、1から16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ二価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなる任意選択の架橋基であるか、又は、1から16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ二価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなり、且つ式:
【化5】

を持つ任意選択の架橋基であり、式中sが0から15より選択される整数であり、Gがハロゲンもしくは−OHならびにそれらの無機塩もしくは有機塩であり、RおよびRが独立して、水素または1〜10の炭素の炭化水素基、または−COOHもしくは−CH−COOHである。
【請求項3】
前記シリコーンモノマーが、式:
【化6】

であり、式中Rがトリアルキルシリロキシ基もしくはメチル基であり、pが1〜50であり、bが0から100である、請求項1又は2に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項4】
前記シリコーンモノマーが、式:
【化7】

であり、式中Rがトリアルキルシリロキシ基もしくはメチル基であり、pが1〜50であり、bが0から100である、請求項1又は2に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項5】
前記シリコーンモノマーが、式:
【化8】

であり、式中Rがトリアルキルシリロキシ基もしくはメチル基であり、pが1〜50であり、bが0から100である、請求項1又は2に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項6】
前記シリコーンモノマーが、式:
【化9】

である、請求項1又は2に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項7】
前記式(I)又は(II)のシリコーンモノマー、有機系モノマーもしくはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択されるコモノマーを含むヒドロゲル組成物であって、ここでコモノマーは、ビニルモノマー、アリルモノマー、アクリルモノマー、またはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択され、ここでビニルモノマーが、N−ビニル−ピロリドン、N−ビニル−カプロラクタム、N−ビニル−アセトアミド、N−ビニル−ホルムアミド、N−ビニル−イソプロピルアミド、ビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、またはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択され、ここでビニルモノマー、アリルモノマー、もしくはアクリルモノマーが、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリラート、メチル−ジ(トリメチルシロキシ)−シリルプロピルグリセロールメタクリラート、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボナート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナート、またはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択され、ここでアクリルモノマーが、2−ヒドロキシ−エチル−メタクリラート(HEMA)、2−ヒドロキシ−エチル−アクリラート(HEA)、ヒドロキシルプロピルメタクリラート、トリメチルアンモニウム2−ヒドロキシプロピルメタクリラートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリラート、グリセロールメタクリラート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、もしくはメタクリル酸、またはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項8】
エチレングリコールジメタクリラート、トリメチロイルプロパントリメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、ビスフェノールAジメタクリラート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリラート、ジメタクリラート末端化ポリエチレングリコールおよび反応性直鎖ポリエーテル修飾シリコーンもしくは反応性ペンダントポリエーテル修飾シリコーンまたはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択される架橋剤、ならびに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(HMPP)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、またはそれらの二つもしくはそれ以上の組み合わせから選択される熱開始剤もしくは光開始剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項9】
ヒドロゲル組成物が、10秒もしくはそれ未満の時間で、365nmで105mW/cmの強度の光を用いて、自立フィルムへと硬化される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物または該ヒドロゲル組成物から作製されたフィルムを含む、コンタクトレンズ。
【請求項11】
ヒドロゲル組成物が、布地処理配合物、紙処理配合物、皮革処理配合物、パーソナルケア配合物、ヘルスケア配合物、ホームケア配合物、コーティング配合物、塗料配合物、種子処理配合物におけるフィルム形成添加剤である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項12】
前記式中のpが2〜15である、請求項3に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項13】
前記式中のpが2〜15である、請求項4に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項14】
前記式中のpが2〜15である、請求項5に記載のヒドロゲル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本願は、参照により本明細書にそのすべての内容を組み入れる、2012年3月22日に出願された、「親水性シリコーンモノマー、その調製プロセスおよびそれを含有する薄膜」と題する米国仮特許出願番号61/614,243号の権益を主張する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、分岐架橋基を含むポリエーテル部分を持つ(メタ)アクリルアミド官能化親水性シリコーンモノマーを含む急速硬化組成物に関する。一実施態様において、そのような組成物はコンタクトレンズ用途のための吸水性シリコーンヒドロゲルフィルムの調製に有用である。一実施態様において、ここに開示される(メタ)アクリルアミドモノマーはポリエーテル部分上に分岐架橋基を持ち、これにより未反応のポリエーテル、異性化したポリエーテル、および関連した高分子量副産物を含むがそれらに限定されないさまざまな副産物の分離をする必要がなく、親水性ポリエーテル修飾シリコーンコポリマーの製造を可能にする。
【背景技術】
【0003】
シリコーンヒドロゲルフィルムは、酸素透過性、柔軟性、快適さ、および減少した角膜合併症などのために、長時間装用ソフトコンタクトレンズの作製に使用される。従来のヒドロゲル材料(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、HEMA)は、それ自体、貧弱な酸素透過性を持ち、そして、それらは、吸収された水分子を通じて、酸素を眼に送る。水は低い酸素透過係数を持ち、ここで酸素透過係数はBarrerで表されるDk値とも言われ、ここで1 Barrer=10−11(cm)cm cm−2−1 mmHg−1であり、ここで、「cm」は標準温度および標準圧での水の量であり、「cm」は物質の厚さを表し、「cm−2」は物質の表面面積の逆数である。水のDkは80Barrerである。長時間大気へと曝されると、それらのレンズはゆっくりと脱水し、角膜へと運ばれる酸素の量が減少する。眼への刺激、眼の充血およびその他の角膜合併症が生じ得、それゆえに、レンズの使用が限られた装着期間に制限される。
【0004】
ソフトコンタクトレンズの快適さと、高い酸素透過性を備えるシリコーンヒドロゲルは、従来のヒドロゲルを超える装着期間に対する障害を乗り越えるものであり、眼鏡等の処方の分野において革命的である。以下の特許文献は、コンタクトレンズに使用されるシリコーンヒドロゲルを記載する。
【0005】
Bausch & Lomb Inc.への米国特許第4,260,725号は、吸水性で、ソフトで、親水性で、柔軟性で、加水分解安定性で、生物学的に不活性であり、そして、ヒトの角膜の要求が要求するのに十分な酸素を運ぶことの出来るコンタクトレンズであって、重合可能に活性化した不飽和基へと二価の炭化水素基を通じてα,ω末端結合し、親水性側鎖を持つポリシロキサンを含むコンタクトレンズを開示する。
【0006】
Bausch & Lomb Inc.への米国特許第5,352,714号は、シリコーン含有モノマー、親水性モノマー、および水和して高極性アミノ酸に転換され得る比較的非極性の環を含有するモノマーを含む、改善された湿潤性を備えるシリコーン含有ヒドロゲルを開示する。
【0007】
Johnson & Johnson Vision Productsへの米国特許第5,998,498号は、以下の構造:
【化1】

〔式中、R51は、HもしくはCH、qは1もしくは2、それぞれのR52、R53およびR54は独立して、エチル、メチル、ベンジル、フェニルもしくは1から100の繰り返しSi−O単位を含む一価のシロキサンであり、pは1〜10であり、rは(3−q)であり、Xは0もしくはNR55であり、R55は水素もしくは1〜4の炭素の一価のアルキル基であり、aは0もしくは1であり、Lは好ましくは2〜5の炭素を含む二価の架橋基であり、任意選択でエーテルもしくはヒドロキシ基、例えばポリエチレングリコール基を含んでいても良い〕を持つシリコーン含有モノマーを含む反応混合物を硬化して調製されるシリコーンヒドロゲルを開示する。
【0008】
CK Witco Corporationへの米国特許第6,013,711号は、貯蔵安定性の損失もしくは加硫温度での硬化遅延なしに、または、または、恒久的な親水性もしくは他の硬化したポリシロキサンの所望の特性を失うことなしに、低分子量不飽和シロキサンポリエーテルコポリマーのα,ω−ジビニルポリシロキサンとの混和性を向上する方法が開示される。組成物は、一つもしくはそれ以上のα,ωジビニルポリシロキサン、好ましくはトリシロキサンである、1分子当たり2〜5個のケイ素原子を持つ不飽和ポリシロキサンポリエーテルコポリマー、ならびに相溶化添加剤を含む。恒久的に親水性な、急速に湿潤性であるポリシロキサン組成物は、50°未満の静的水接触角と、約100未満の動的前進接触角を達成する。
【0009】
Crompton Corporationへの米国特許第6,207,782号は、アクリル化親水性ポリシロキサンモノマーとポリマー、ならびにそれらのアクリラート/メタクリラートコモノマーとのコポリマー、ならびに、パーソナルケア、布地およびコーティング用途のためのそれらのエマルションを開示する。アクリル化シロキサンは式(a):
[RSiO1/2[O1/2SiR1/2[SiO3/2R][SiO4/2 (a)
によって表され、
式中、RはRおよびPより選択され、Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれが一価の炭化水素基であり、それぞれのPがR[O(C2bO)COCR=CHであり、Rが多価の有機部分であり、ヒドロキシ置換アルキレンであってよく、gがRの価数より1を減じた値であり、Rは水素もしくはメチルであり、bが2〜4であり、好ましくは2〜3であり、zは1〜1000であり、好ましくは3〜30であり、そしてm+n+p+oは1〜100であり、好ましくは2〜20であり、少なくとも一つのRはPであり、nは1〜100であり、oがゼロでないとき、n/oは10:1未満であり、pがゼロでないとき、n/pは10:1未満であり、そしてmは0〜10である。この特許文献の好ましいアクリル化シロキサンの非限定的な例は、式(b):
QRSi[OSiR[O−SiRP]OSiRQ (b)
のものであり、
式中、xおよびyは0もしくは整数であってよく、好ましくはxおよびyは0〜100であり、もっとも好ましくは0〜25であり、QはRもしくはPであってよく、平均的なアクリラート官能性は1分子当たり1不飽和基より大きく、好ましい態様はy=0かつQ=Pである。
【0010】
Asahikasei Aime Co.への米国特許第6,867,245号は、ソフトコンタクトレンズを開示し、そして水中の表面および空気中における水に対する小さくて安定な接触角、少ないレンズの固着、高い酸素透過性、角膜へのレンズの無接着、および優れた長時間装着の性能を示す、コンタクトレンズを提供する。当該文献は、レンズ表面における接触角が水中気泡法で10〜50°の範囲にあり、空気中における液滴法で3°および90°であり、酸素透過係数が30Dk以上で含水率が5%以上であるヒドロゲルソフトコンタクトレンズ、ならびに特定の一般式で示される親水性シロキサニルモノマーを含むポリマーからなるヒドロゲルソフトコンタクトレンズを開示する。この特許文献は、コンタクトレンズのための有用な材料であると述べられる、アミド基含有モノマーと親水性シロキサンのコポリマーを開示する。ポリマーは、親水性アミド基含有シロキサニルメタクリラートを含み、シロキサニルメタクリラート(3−トリス[トリメチルシロキシ]シリルプロピルメタクリラート、TRISと略される)は親水性ポリエーテル修飾シロキサニルアルキルメタクリラートと架橋可能なモノマーとを含む。
【0011】
さまざまなシリコーンポリエーテルは、典型的には、シラン水素含有シロキサンと第一級オレフィン基を含むポリエーテルとのヒドロシリル化反応によって作製される。しかしながら、この反応において、オレフィン基はβ位に分岐を持たず、それを不安定にする二重結合の異性化の可能性がある。それゆえ、そのような場合、モル過剰のポリエーテルの使用が必要とされ、ポリエーテルは容易に分離できず、さらに、過剰量のポリエーテルは、生じるレンズのモジュラスを増加され、レンズの柔軟性をより低くする。
【0012】
米国のMomentive Performance Materialsらの公開されたPCT特許出願番号WO2010/038242号は、以下の式:
Si−O−[Si(R)(Z)RO]−[SiRO]−SiRおよび
【化2】

を持つ親水性単官能化シリコーンを開示し、式中、aは1〜50であり、bは0〜100であり、それぞれのRは、独立して、1〜約10個の炭素の、一価の、脂肪族の、脂環式の、もしくは芳香族の炭化水素基および、1から約10個の炭素のハロゲン化炭化水素基、ならびにZは以下の式:
−HC−CHR−(CH−O−(CO)−(CO)−(CO)−X
を持つ分岐のアルキル基を持つポリエーテル基であり、式中、nは1〜約20であり、pおよびqは独立して0〜約100であり、rは0から約50であり、(p+q+r)は0より大きく、Rは1から約4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Xは以下の式:
【化3】

を持つポリエーテル末端基であり、式中、RおよびRは独立して水素、または、1〜約20個の炭素の置換もしくは非置換の、飽和の一価の炭化水素基、−COOHもしくは−CH−COOHである。
【0013】
従来、シリコーンヒドロゲルは、アクリラートもしくはメタクリラート官能化のシリコンモノマーと、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)のようなヒドロゲル(親水性)モノマー、ならびに、メチルメタクリル酸(NMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)などのような他のモノマーとを架橋剤およびフリーラジカル開始剤もしくは光開始剤の存在下で重合化することによって調製された。架橋剤は一般的に、二つもしくはそれ以上の反応性官能基を分子上の異なる位置に持つ。典型的には、それらの位置は重合可能なエチレン性不飽和基を持つ。硬化中、それらは二つの異なるポリマー鎖と共有結合を形成し、安定な三次元ネットワークを形成し、ポリマーの強度を向上する。コンタクトレンズにおいて従来使用される架橋剤は、エチレングリコールジメタクリラートおよびトリメチロイルプロパントリメタクリラート(約0.1〜2重量%)を含む。他の有用な架橋剤は、ジエチレングリコールジメタクリラート、ビスフェノールAジメタクリラート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリラート、ジメタクリラート末端化ポリエチレングリコールおよび反応性線状ポリエーテル修飾シリコーンを含む。
【0014】
一般的にシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの材料は、(TRISのような)疎水性単官能化シリコーンモノマーもしくは多官能化親水性シリコーンモノマーのいずれかを用いて作製され、二次的な表面処理が後に続く。単官能化シリコーンモノマーは多官能化シリコーンモノマーよりもコンタクトレンズ産業によって好まれ、それは後者がそれらより作製されるレンズの剛性を高めるためである。
【0015】
上述の特許文献中に開示される、シリコーン系材料を含むソフトコンタクトレンズに対する、本技術分野における状況は、最適ではない表面湿潤性や脂質沈着といった重大な欠点を未だ持っている。これらの欠点を克服するための試みにおいて、本技術分野の状況は、「プラズマ酸化」と呼ばれる高価な二次的な表面処理、または酸素透過性のための内部湿潤化剤の使用のいずれかを実施している。このように、欠点がなく、従来技術のシリコーン含有材料に必要な高価な表面処理も使用しないような、有利な湿潤性と酸素透過性とを持つ、コンタクトレンズの作製に使用できる親水性シリコーンモノマーに対する必要性がまだ存在している。
【0016】
メチルアリルポリエーテルのようなアルキル分岐不飽和ポリエーテルとのシロキサン−ポリエーテルコポリマーのヒドロシリル化合成は当技術分野に公知である。例えば、米国特許第3,507,923号および米国特許第4,150,048号を参照できる。しかしながら、これらのシロキサンポリエーテルコポリマーのアクリラートおよびメタクリラート末端化誘導体から調製されるポリマーフィルムにおける改善された酸素透過性および水の湿潤性の実現は新規のものである。さらにアクリルアミドペンダント基を持つ構造は合成がより難しく、アクリラートペンダント基を持つさまざまなシリコーン−ヒドロゲル組成物の作製に使用される合成ルートによって製造できないという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、分岐架橋基を持つポリエーテル部分を含むモノアクリラートもしくはメタクリラート官能化シリコーンモノマー、高純度でかつ、製造容易であるそのようなモノマーの製造プロセス、ならびに、それらのモノマーより製造されるより優れた親水性機能を持つホモポリマーおよびコポリマーを開示する。これらの官能化シリコーンモノマーは、長時間装着のソフトコンタクトレンズに使用される吸水性であり、酸素透過性であるシリコーンヒドロゲルフィルムの作製に有用である。特に、本発明において開示される、モノマーは、シロキサン単位を反応性メタクリラート基で末端官能化されたポリアルキレンオキシドブロックへと結合する分岐の架橋基を持つ。コンタクトレンズの用途のために従来技術においてすでに開示されているような直鎖アルキル架橋基を持つモノマーによって調製されるシリコーンヒドロゲルフィルムと比較して、これらのモノマーによって作製されるシリコーンヒドロゲルフィルムは優れた表面湿潤性、酸素透過性、および機械的性能をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、一態様において、分岐架橋基を含むポリエーテル部分を持つ(メタ)アクリルアミド官能化親水性シリコーンモノマーを含む急速硬化組成物に関する。一実施態様において、そのような組成物は、コンタクトレンズの用途のための吸水性シリコーンヒドロゲルフィルムの調製に有用である。一実施態様において、本発明による(メタ)アクリルアミドモノマーはポリエーテル部分上に分岐架橋基を持ち、これにより未反応のポリエーテル、異性化したポリエーテル、および関連した高分子量副産物を含むがそれらに限定されないさまざまな副産物の分離をする必要がなく、親水性ポリエーテル修飾シリコーンコポリマーの製造を可能にする。
【0019】
一実施態様において、本発明は、ヒドロゲル組成物およびその作製方法に関する。一実施態様において、本発明は、TRISのようなフリーラジカル重合可能なシロキサンモノマー、フリーラジカル重合可能な有機モノマー、少なくとも一つの開始剤、ならびに任意選択で少なくとも一つの架橋剤化合物の反応産物より作製されるシリコーン含有(メタ)アクリルアミドポリエチレンオキシドコポリマーを含む。
【0020】
一実施態様において、本明細書に記載されるシリコーンモノマーは、以下の式(I):
Si−O−[Si(R)(Z)O]−[SiRO]−SiR (I)
もしくは式(II):
【化4】

に示される式を持ち、
式中、aは1〜50であり、bは0〜100であり、それぞれのRは独立して、1から約10個の炭素原子の、一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素基、1から約10個の炭素原子のハロゲン化炭化水素基、ならびに1から約50個のケイ素原子からなるラジカル、またはトリアルキルシリルオキシ基からなる群より選択され、Zは、式(III)
−HC−CHR−(CH−O−(CO)−(CO)−(CO)−X (III)
を持つ、異性化しないヒドロシリル化に有効な末端オレフィン残基を持つポリエーテル部分であり、
式中、nは1から約20であり、pおよびqは独立して0から約100であり、rは0から約50であり、(p+q+r)は0より大きく、Rは1から約4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Xは、式(IVa):
【化5】

および式(IVb):
【化6】

から独立して選択されるポリエーテル末端基であり、
式中、RおよびRは、独立して水素、または1から約20個の炭素原子の、置換のもしくは非置換の、飽和の、一価の炭化水素基、またはCOOHもしくは−CH−COOHである。Xはビニル基、もしくはN−ビニル誘導体、またはN−ビニル−ピロリドン誘導体であってよい。本発明はまた、上述のモノマーより誘導されるホモポリマーおよびコポリマー、ならびにそれを含むシリコーンヒドロゲルを提供する。
【0021】
本発明に記載される組成物は、式(V):
Si−O−[SiH(R)]−[OSiR−OSiR (V)
を持ち、
式中、aは1〜50であり、bは0〜100であり、それぞれのRは独立して、1から約10個の炭素の一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の、炭化水素基、1から約10個の炭素のハロゲン化炭化水素基からなる群より選択されるシリコーン含有化合物を、触媒の存在下において、
少なくとも一端をヒドロキシルもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンによって末端化され、他端を、異性化しない、ヒドロシリル化に有効な末端オレフィンポリエーテルによって末端化された式(VI):
式(VI):
CH=CHR−(CH−(OC−(OC−(OC−Y (VI)
を持つポリエーテルであって、
式中、nは1〜約20であり、pおよびqは0から約100であり、rは0から約50であり、Rは1から約4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Yは−OHもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンである、ポリエーテルと反応させてポリエーテルシロキサンを作製し、そして前記ポリエーテルシロキサンを式(VII):
【化7】

を持ち、式中Lは1から約16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなる架橋基である、アクリル化合物と反応させるプロセスによって作製されるモノマーを含む。
【0022】
他の実施態様において、Lは式:
【化8】

を持つ部分であり、式中sは0から約15の整数である。Lが使用されないとき、Gは式(VII)のカルボニル基へと直接結合する。Gはハロゲンもしくは−OHならびにその有機塩もしくは無機塩であり、RおよびRは、独立して、水素、または前記シリコーンモノマーを作製するための1から約10個の炭素の炭化水素基、または−COOHもしくは−CH−COOHである。
【発明の効果】
【0023】
任意の群の利点に束縛されることを望まない一方で、本発明は、従来技術のシリコーンヒドロゲルに伴う二つの主要な問題を同時に解決する。本発明は、ポリマー分子中により多くの親水性単位を組み入れ、これにより酸素透過性、ヤング率および吸水性を維持するか、または酸素透過性、ヤング率および吸水性を向上させた、より快適なコンタクトレンズ組成物をもたらす。さらに、加工後のステップは、レンズを洗浄したり存在する未反応のモノマーを除去したりするための有機溶媒の多く必要としないか、またはまったく必要としない。
【0024】
他の実施態様において、本発明の化合物は、本発明のシリコーン(メタ)アクリルアミドが、光学的に透明なヒドロゲルレンズを得るためにさらなる配合物の相溶化剤および/もしくは溶媒を必要としないという利点を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によると、分岐の架橋基を含むポリエーテル部分を持つ新規のモノ−(メタ)アクリラート官能化親水性シリコーンモノマー組成物であって、コンタクトレンズの用途のための吸水性シリコーンヒドロゲルフィルムの調製に有用なものが開示される。これらのモノマーより得られるシリコーンヒドロゲルフィルムは、直鎖アルキル架橋基を持つ対応するシリコーンポリエーテルモノマーより作製される公知のフィルムと比較して優れた湿潤性、酸素透過性、および望ましいモジュラスを示す。開示される新規のモノマーは、ポリエーテル部分に分岐の架橋基を持ち、それにより未反応の、異性化したポリエーテルおよび関連した高分子量副産物を分離する必要性がない親水性ポリエーテル修飾シリコーンコポリマーの製造を可能にする。
【0026】
本発明は、分岐架橋基を含むポリエーテル部分を持つ(メタ)アクリルアミド官能化親水性シリコーンモノマーを含む組成物に関する。一実施態様において、そのような組成物はコンタクトレンズ用途のための吸水性シリコーンヒドロゲルフィルムの調製に有用である。一実施態様において、ここに開示される(メタ)アクリルアミドモノマーはポリエーテル部分上に分岐架橋基を持ち、これにより未反応のポリエーテル、異性化したポリエーテル、および関連した高分子量副産物を含むがそれらに限定されないさまざまな副産物の分離をする必要がなく、親水性ポリエーテル修飾シリコーンコポリマーの製造を可能にする。
【0027】
一実施態様において、本発明は、ヒドロゲル組成物およびその作製方法に関する。一実施態様において、本発明は、TRISのようなフリーラジカル重合可能なシロキサンモノマー、フリーラジカル重合可能な有機モノマー、少なくとも一つの開始剤、ならびに任意選択で少なくとも一つの架橋剤化合物の反応産物より作製されるシリコーン含有(メタ)アクリルアミドポリエチレンオキシドコポリマーを含む。本発明は、シリコーン含有(メタ)アクリルアミドポリエチレンオキシドホモポリマーからのヒドロゲルフィルムをもまた含む。
【0028】
一実施態様において、本明細書に記載されるシリコーンモノマーは、以下の式(I):
Si−O−[Si(R)(Z)O]−[SiRO]−SiR (I)
もしくは式(II):
【化9】

に示される式を持ち、
式中、aは1〜50であり、bは0〜100であり、それぞれのRは独立して、1から約10個の炭素原子の、一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素基、1から約10個の炭素原子のハロゲン化炭化水素基、ならびに1から約50個のケイ素原子からなるラジカル、またはトリアルキルシリルオキシ基からなる群より選択され、Zは、式(III)
−HC−CHR−(CH−O−(CO)−(CO)−(CO)−X (III)
を持つ、異性化しないヒドロシリル化に有効な末端オレフィン残基を持つポリエーテル部分であり、
式中、nは1から約20であり、pおよびqは独立して0から約100であり、rは0から約50であり、(p+q+r)は0より大きく、Rは1から約4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Xは、式(IVa):
【化10】

および式(IVb):
【化11】

から独立して選択されるポリエーテル末端基であり、
式中、RおよびRは、独立して水素、または1から約20個の炭素原子の、置換のもしくは非置換の、飽和の、一価の炭化水素基、またはCOOHもしくは−CH−COOHである。Xはビニル基、もしくはN−ビニル誘導体、またはN−ビニル−ピロリドン誘導体であってよい。本発明はまた、上述のモノマーより誘導されるホモポリマーおよびコポリマー、ならびにそれを含むシリコーンヒドロゲルを提供する。
【0029】
本発明に記載される組成物は、式(V):
Si−O−[SiH(R)]−[OSiR−OSiR (V)
を持ち、
式中、aは1〜50であり、bは0〜100であり、それぞれのRは独立して、1から約10個の炭素の一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の、炭化水素基、1から約10個の炭素のハロゲン化炭化水素基からなる群より選択されるシリコーン含有化合物を、触媒の存在下において、
少なくとも一端をヒドロキシルもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンによって末端化され、他端を分岐アルケンによって末端化された、式(VI):
式(VI):
CH=CHR−(CH−(OC−(OC−(OC−Y (VI)
を持つポリエーテルであって、
式中、nは1〜約20であり、pおよびqは0から約100であり、rは0から約50であり、Rは1から約4個の炭素原子を持つアルキル基であり、Yは−OHもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンである、ポリエーテルと反応させてポリエーテルシロキサンを作製し、そして前記ポリエーテルシロキサンを式(VII):
【化12】

を持ち、式中Lは1から約16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなる架橋基である、アクリル化合物と反応させるプロセスによって作製されるモノマーを含む。他の実施態様において、Lは式:
【化13】

を持つ部分であり、式中sは0から約15の整数である。Lが使用されないとき、Gは式(VII)のカルボニル基へと直接結合する。Gはハロゲンもしくは−OHならびにその有機塩もしくは無機塩であり、RおよびRは、独立して、水素、または前記シリコーンモノマーを作製するための1から約10個の炭素の炭化水素基、または−COOHもしくは−CH−COOHである。
【0030】
任意の群の利点に束縛されることを望まない一方で、本発明は、従来技術のシリコーンヒドロゲルに伴う二つの主要な問題を同時に解決する。本発明は、ポリマー分子中により多くの親水性単位を組み入れ、これにより酸素透過性、ヤング率および吸水性を維持するか、または酸素透過性、ヤング率および吸水性を向上させた、より快適なコンタクトレンズ組成物をもたらす。さらに、加工後のステップは、レンズを洗浄したり存在する未反応のモノマーを除去したりするための有機溶媒の多く必要としないか、またはまったく必要としない。
【0031】
他の実施態様において、本発明の化合物は、本発明のシリコーン(メタ)アクリルアミドが、光学的に透明なヒドロゲルレンズを得るためにさらなる配合物の相溶化剤および/もしくは溶媒を必要としないという利点を持つ。
【0032】
上述のPCT特許出願番号WO2010/038242号は、参照によりその全ての内容を、あたかも完全に本明細書に記載されているように、本明細書に組み入れる。
【0033】
上述に照らして、一実施態様において、本発明は分岐の架橋基を含むポリエーテル部分を持つ新規のモノ−(メタ)アクリラート官能化親水性シリコーンモノマー組成物に関する。一例では、本発明の組成物は、コンタクトレンズの用途のための吸水性シリコーンヒドロゲルフィルムの調製に有用である。任意の群の利点に束縛されることなく、本発明により得られるシリコーンヒドロゲルフィルムは、公知のポリエーテルメタクリラートヒドロゲルフィルムと比較して向上した湿潤性、酸素透過性、および望ましいモジュラスを示す。他の実施態様において、本明細書に開示される(メタ)アクリルアミドモノマーは、ポリエーテル部分に分岐の架橋基を持ち、それにより未反応の、異性化したポリエーテルおよび関連した高分子量副産物を分離する必要性がない親水性ポリエーテル修飾シリコーンコポリマーの製造を可能にする。
【0034】
一実施態様において、シリコーン単位を親水性ポリエーテル鎖へと結合するアルキル基は、ヒドロシリル化ステップにおいて、不飽和のポリエーテルの異性化を防ぐ。任意の群の利点に束縛されることを望まない一方で、分岐の架橋基の存在は反応器より直接回収されるシリコーンポリエーテルコポリマーの純度を高めると考えられている。さらに、本発明の、分岐架橋基を持つシリコーンポリエーテルアミドコポリマーを用いて製造されるシリコーンヒドロゲルフィルムは、向上した含水量およびモジュラスを示し、それらはレンズの取り外しおよび装着を促進し、レンズを装着するときの快適さに主に寄与する。
【0035】
本発明のモノマーは、親水性有機コモノマーならびに疎水性シリコーンモノマー(例えばTRIS)と、任意の均質化剤、もしくは溶媒の助けなしに相溶性であり、これにより、モノマー−コモノマー組成物の全範囲にわたって分散するシリコーンコンパートメントを可能にし、均一なシリコーンヒドロゲルフィルムを作製する。
【0036】
上述のシリコーンモノマーと他の有機モノマーの最適な相溶性(最適な溶解度の指標)の好適さは、ポリエーテル(親水性物質)の鎖長と、ポリエーテル鎖中のアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド)の比率とのいずれか一方もしくはその両方による結果である。もし、ポリエーテル鎖が短すぎたり長すぎたりし、不良の平均極性であるとき、または存在しないとき、共通の不飽和有機モノマーの混和性は貧弱であり、不透明な物質を生じる。不飽和シリコーン反応物、溶媒およびポリマーを持つ、コンタクトレンズポリマーの製造に有用なポリマーによるシリコーンポリエーテルコポリマーの混和性は、同様に影響を受ける。シリコーン基のサイズおよび構造を独立して変化させて混和性に影響を与えることができるが、極性官能性基に対してシリコーンの量があまりに大きいと、オルガノシリコーンモノマーは極性有機モノマーと非混和性になるであろう。
【0037】
具体例において、上述の式(I)もしくは(II)において、bがゼロであるとき、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)との混和性は、−CH−CH−CH−O−CH−CH−OCH−CH−ORの型のZ基によって達成でき、ここで少なくとも二つのエチレンオキシド単位が存在する。このため、これらの式(I)もしくは(II)によって表されるシリコーンモノマーと2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)のような極性コモノマーとの混和性は、シリコーンモノマー中のシリコーン部分対極性ポリエーテル基の比率によって制御される。もし、シリコーンモノマー中にポリエーテルが存在しないか、または少ししか存在しないとき、シリコーンモノマーは、HEMAと混和性ではなく、それらを均質化するために溶媒が必要である。
【0038】
逆に、シリコーンポリエーテルコポリマー中にあまりに少ないシリコーンが存在すると、コンタクトレンズにおける向上した酸素透過性という所望の特性が減ぜられるであろう。本発明の物質は、それ自体成分の分布であるシリコーンとポリエーテル前駆体の製造における化学に基づいて生じる組成物の分布である。特定の一組のモノマーおよびコンタクトレンズポリマーを作製するのに使用される配合物中の他の成分とより混和性でない分布中の成分の量もしくは成分の範囲を取り除いたり減らしたりできるような化学的および/もしくは物理学的プロセスによって分布物の性質を制御することが望ましいであろう。
【0039】
最終的なコポリマーの分布を制御するために、蒸留、高真空蒸発、分取クロマトグラフィーまたは超臨界流体抽出によるシリコーンおよび/もしくは、ポリエーテル反応物の精製が使用できる。小さなポリエーテル反応物(ポリエーテル中のエーテル単位の平均数が約2から約6)がシリコーンポリエーテルコポリマーの調製に使用されるとき、分布物からのアルコール開始剤およびシングルアルキレンオキシド付加物(開始剤のアルコールが一つのアルキレンオキシド単位とのみ反応したもの)の除去は興味の対象である。未反応のアルコール開始剤と単一のアルキレンオキシド付加物が蒸留もしくは高真空蒸発によって除去された精製ポリエーテル前駆体は、非限定的な例として、それがコンタクトレンズポリマーの製造に有用な配合物と干渉するような濃縮物に存在する0もしくは一つのエーテル付加物を持たない、短鎖(約2から約6)ポリエーテルを作製する開始剤として使用できるので有用である。米国特許第5,986,122号に記載されるポリエーテルのアスコルビン酸およびアスコルベートによるポリエーテルの処理は、そのヒドロシリル化を向上させる。従って、米国特許第5,986,122号は、ポリエーテルのアスコルビン酸および/もしくはアスコルベートによる処理に関連する教示のために、その全ての内容を本明細書に組み入れる。
【0040】
本明細書において、「ホモポリマー」は、同一の繰り返しモノマーより作製されるポリマーであり、「コポリマー」は、少なくとも二つの構造的に異なるモノマーを含むポリマーである。直鎖アルキル結合(メタ)アクリラートシリコーンポリエーテル鎖を持つモノマーおよびポリマーは、そのような化合物中のシロキサンと側鎖のポリアルキレンオキシド部分を結合する架橋基中に任意の分岐を持たない化合物である。(メタ)アクリルアミドのような表記は、アクリルアミドもしくはアクリルアミドのいずれかの官能性を持つモノマーを示す。本発明のモノマーは、所望の物理的強度と、吸水後の引き裂きに対する抵抗を持つ硬化したエラストマーを得るのに使用できる。本発明のモノ−メタ(アクリルアミド)官能化シリコーンモノマー/ポリマーならびにその調製と、コンタクトレンズにおける使用は、以下のセクションにおいてさらに説明される。
【0041】
本発明はまた、(メタ)アクリルアミド官能化親水性シリコーンモノマーと、HEMAもしくは他のソフトで、柔軟性の、吸水性ヒドロゲルフィルムを製造するためのコンタクトレンズモノマーのような従来のモノマーとを含むシリコーンヒドロゲル組成物を提供する。本発明のホモポリマーおよびコポリマーは、透明(モノマーの貧弱な混和性により生ずる濁りがないか、1〜2パーセント未満の濁り)なポリマーであり、約10重量%から約60重量%の水を吸収し、優れた表面湿潤性と効果的な酸素透過性を示し、これらの全ては、レンズを装着したときのよりよい快適さのために必要であり、かつヒトの角膜の良好な健康のために必要である。本発明はまた、請求される発明のシリコーンヒドロゲルフィルムより作製されるコンタクトレンズをも提供する。これらの実施態様は以下にさらに説明される。
【0042】
本発明において、TRISもしくはポリエーテル鎖において使用される直鎖アルキル架橋基と比較して同様の酸素透過性およびかなり向上した表面湿潤性を持つシリコーンヒドロゲルフィルムを提供できる親水性シリコーンホモ/コポリマーを作製するために高分子量ポリエーテル鎖を持つモノマーを製造できる。本発明のシリコーンヒドロゲルフィルムより製造されるコンタクトレンズは、プラズマ酸化もしくはプラズマコーティングまたは湿潤性を向上させるための内部湿潤剤のような高価な二次処理を必要としない。すなわち、本発明のシリコンヒドロゲルフィルムより製造されるコンタクトレンズは、二次処理なしで、ソフトで、柔軟性の、本質的に湿潤性であり、酸素透過性を示す。
【0043】
本発明のモノマーは、ペンダント(櫛状)もしくは環状であってよく、ペンダント構造のためには式(I):
Si−O−[Si(R)(Z)O]−[SiRO]−SiR (I)
を持ち、構造的には:
【化14】

と描くことができ、そして、環状構造のためには式(II):
【化15】

を持ち、両方の構造における式中、
aは1〜50であり、bは0〜100であり、それぞれのRは独立して、1から約10個の炭素原子の、一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素基、1から約10個の炭素原子のハロゲン化炭化水素基、またはフルオロ炭化水素、ならびに1から約50個のケイ素原子からなるラジカル、またはトリアルキルシリルオキシ基からなる群より選択される。
【0044】
上述のモノマーの一般式において、Zは、式(III):
−HC−CHR−(CH−O−(CO)−(CO)−(CO)−X (III)
を持つ、異性化しないヒドロシリル化に有効な末端オレフィン残基を持つポリエーテルであり、構造的には
【化16】

と描くことができ、式中、nは1から約20であり、pおよびqは独立して0から約100であり、rは0から約50であり、(p+q+r)は0より大きく、Rは1から約4個の炭素原子を持つアルキル基またはメチル基(−CH)であり、Xは、式(IVa):
【化17】

および式(IVb):
【化18】

から独立して選択されるポリエーテル末端基であり、
式中、RおよびRは、独立して水素、または1から約20個の炭素原子の、置換のもしくは非置換の、飽和の、一価の炭化水素基、またはCOOHもしくは−CH−COOHである。具体例において、上述のモノマー中でbがゼロであり、ポリエーテル基Z中の炭素原子の総数は約6もしくはそれ以上である。
【0045】
上述のように、本発明による発明に係るモノマーは環状であってよい。本発明の環状モノマーにおいて、末端ケイ素原子は酸素によって一緒に結合され、(a+b)値の総数は3から約20の間である。Xはビニル基、もしくはN−ビニル誘導体、またはN−ビニル−ピロリドン誘導体であってよい。
【0046】
本発明は、本発明のモノマーの反応産物によって作製されるポリマーを対象とする。これらのポリマーは、本発明のモノマーの一つによるホモポリマーであってよく、または、二つの構造的に異なる本発明のシリコーンモノマーによるコポリマーであってよく、ならびに/または一つもしくはそれ以上の本発明のモノマーと、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシ−エチル−メタクリラート(HEMA)、N−ビニルピロリドンおよびメタクリル酸の非限定的例のようなシリコーンヒドロゲルにおける使用に好適な少なくとも一つの他の親水性不飽和有機モノマーとのコポリマーであってよい。そのようなコポリマーにおいて、本発明のシリコーンモノマー対他の親水性不飽和有機モノマーのコポリマー比は1:100〜約100:1である。
【0047】
本発明のモノマー組成物を用いるポリマーを作製するために、所望のモノマーが混合され、生じる混合物は、架橋剤の存在下においてペルオキシドもしくは光開始剤を用いる公知の熱硬化もしくはUV硬化の技術によって重合化され、硬化され透明な薄膜が形成される。ポリマーを形成するための重合化の前に混合物を作製するためにモノマーの混合物へと添加されるモノマーは、モノマーでもプレポリマーでもよい。「プレポリマー」は、重合可能な基を持つ中程度の分子量の反応中間体ポリマーである。このように、用語「シリコーン含有モノマー」および「親水性モノマー」はプレポリマーを含むことが理解できる。本発明はまた、上述のホモポリマーもしくはコポリマーを含むシリコーンヒドロゲルフィルムを対象とする。
【0048】
本発明のシリコーンモノマーの一つは、以下の式:
【化19】

を持ち、式中Rは、トリアルキルシリロキシ基もしくはメチル基であり、pは1から約50であるか、または2から約15であるか、または約8である、bは0から約100であるか、または0から2であり、または0である。モノマーの一般構造中のRならびにR基のそれぞれは、このモノマーにおいてメチル基である。
【0049】
本発明の他のモノマーは以下の式:
【化20】

もしくは
【化21】

もしくは
【化22】

を持ち、式中Rは、トリアルキルシリロキシ基もしくはメチル基であり、pは1から約50であるか、または2から約15であるか、または約8である、bは0から約100であるか、または0から2であり、または0である。モノマーの一般構造中のRならびにR基のそれぞれは、このモノマーにおいてメチル基である。
【0050】
他の実施態様において、本発明に記載される組成物は、式(V):
Si−O−[SiH(R)]−[OSiR−OSiR (V)
を持ち、
式中、a、bおよびRは上述のように定義されるシリコーン含有化合物を、触媒の存在下において、
式(VI):
CH=CHR−(CH−(OC−(OC−(OC−Y (VI)
を持ち、構造的に:
【化23】

と表される少なくとも一つのヒドロキシル、ハロゲンもしくはエポキシ末端化のアルキル分岐の、不飽和のポリエーテルであって、
式中、nは1〜約20であるかまたは2から約16であり、または、2から約6であり、pおよびqは0から約100であり、rは0から約50であり、Rは末端アルケン基のベータ炭素へと結合したアルキル基であり、Yは−OHもしくはハロゲンもしくはエポキシもしくはアミンである、ポリエーテルと反応させてポリエーテルシロキサンを作製し、そして前記ポリエーテルシロキサンを式(VII):
【化24】

を持ち、式中Lは1から約16個の炭素と任意選択でヘテロ原子もしくはハロゲンを持つ一価の、脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素ラジカルからなる架橋基である、アクリル化合物と反応させるプロセスによって作製されるモノマーを含む。
【0051】
一実施態様において、Lは以下の式:
【化25】

を持ち、式中sは0から約5の整数である。Lが使用されないとき、Gは式(VII)のカルボニル基へと直接結合する。Gはハロゲンもしくは−OHならびにその有機塩もしくは無機塩であり、RおよびRは、独立して、水素、または前記シリコーンモノマーを作製するための1から約10個の炭素の炭化水素基、または−COOHもしくは−CH−COOHである。一実施態様において、Rはメチルであり、一実施態様においてRは水素である。ポリエーテルシロキサンと式(VII)を持つアルキルアミドアクロイル化合物との反応は、第三級アミン塩基もしくは塩基性イオン交換樹脂(IER)ならびに低沸点溶媒の存在下で実施される。トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)のようなトリアルキルアミンは好適な塩基である。使用される溶媒は、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、または同様の極性(溶解度の指標)を持ち反応条件において同様に不活性である他の低沸点溶媒から選択できる。
【0052】
本発明の他の実施態様は、上述の式中、RおよびRがメチル基であり、bが0であり、qおよびrが0であり、pが0から約100であるか、または0から約50であり、または0から約10であり、YがOHであり、そしてGが塩素もしくはOHならびにその有機塩(例えばDBU塩)である、上述のプロセスを対象とする。
【0053】
式(V)の化合物と、式(VI)の化合物とのヒドロシリル化反応は、その対応する部分を参照により本明細書中に組み入れる米国特許第3,229,112号、米国特許第4,847,398号、米国特許第4,857,583号、米国特許第5,191,103号もしくは米国特許第5,159,096号に記載されるように、溶媒および添加剤と共に、またはそれらを含まずに実施される。アルキル分岐不飽和ポリエーテル(式(VI))の選択に伴う主要な利点は、SiHとアルケニル官能性の実質的に化学量論的な量を使用することである。従来の10〜20パーセントモル過剰のアルケニルポリエーテルの代わりに、本発明の反応におけるヒドロシリル化ステップは、実質的にモル過剰ではないアルキル分岐の不飽和ポリエーテルによって実施できる。0.99〜1.09の範囲におけるSiH/アルケニルの化学量論が効果的である。米国特許第5,986,122号の教示によるアスコルビン酸およびアスコルベートによるポリエーテルの処理は、ヒドロシリル化反応性を向上させ、Pt触媒の量を減ずることを可能にする。この特許文献の対応する教示は参照により本明細書に組み入れる。
【0054】
本発明のポリマーは、透明で透過性で均一で単相の溶液を形成し、親水性ヒドロゲルモノマーと混和性である本発明のシロキサンモノマーの分子量によって追加の均質化溶剤を用いることなく直接的に硬化できる。Fedors法(Robert F. Fedors、Polymer Engineering and Science、1974年2月、14巻2号)によって計算された本発明のモノマーの溶解度パラメータ値は、おおよそ15〜おおよそ20(J/mol)1/2の範囲であり、TRISのようなシリコーンモノマーと比べて、(HEMA、NVPおよびDMAのような)従来のヒドロゲルモノマーの溶解度パラメータ値により近い。本発明のモノマーと親水性コモノマーの間の溶解度パラメータが約7.7(J/mol)1/2未満であるとき、混和性が実現される。
【0055】
本発明の他の実施態様において、当技術分野に公知の方法によってポリマーをシリコーンヒドロゲルフィルムに作製できる。本発明のシリコーンヒドロゲルフィルムは、ソフトで、柔軟性でかつ高透過性である。本発明のモノマーより作製されるシリコーンヒドロゲルフィルムは、直鎖アルキルが結合したメタクリル化シリコーンポリマー鎖を持つモノマーを用いて作製されたものと比べて、よりよい表面湿潤性と酸素透過性を示す。本発明のシリコーンヒドロゲルフィルムは、100°〜約20°の範囲の水と動的前進接触角を持ち、約10〜70重量%の水を吸収し、これらはポリエーテルもしくはシロキサンの分子量によって変化する。接触角は、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)およびヒドロキシアルキルセルロースのような湿潤剤の添加によって特定の範囲に変化できる。作製されるシリコーンヒドロゲルは、コンタクトレンズ用途に必要とされる優れた機械的特性(低いモジュラスや高い引裂強度のような)を持つことが見出された。
【0056】
従来のシリコーンヒドロゲルフィルムは一般的に、疎水性シリコーンモノマーと親水性ヒドロゲルモノマーとの混合物を、それらがお互いに相溶性でないために約10〜40重量%の溶媒の存在下で硬化することによって製造される。しかしながら、本発明においては、本発明の親水性シリコーンメタクリルアミドモノマーは、(HEMA、NVPおよびDMAのような)従来の親水性ヒドロゲルモノマーと混和性であり、溶媒もしくは相溶化剤を用いることなく、シリコーンヒドロゲルフィルムを製造するのに好適な均一な溶液を作製することができる。本発明のモノマーの密度は、25℃において、一般的に0.89〜1.1g/cmの範囲であり、ナトリウムのD線について1.4〜1.46の範囲の屈折率である。
【0057】
本発明者は、相溶化剤の非存在下で1.431より大きい屈折率と0.96g/cmより大きい密度によって、HEMAのような親水性モノマーと共に、完全に混和性の組成物、または、均一で、濁りなく、かつ透明であるように見える偽の混和性の組成物を製造できることを見出した。上述のように、(例えば、TRISのような)従来のシリコーンモノマーは、シリコーンヒドロゲルを製造するための混和性組成物を得るために、HEMAのような親水性モノマーと、溶媒の存在下で混合しなければならない。本発明のシリコーンヒドロゲルコポリマーを作製するのに使用されるヒドロゲルコモノマーは、HEMA、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、メタクリル酸(MAA)などの親水性アクリルモノマー、ならびに任意選択で疎水性のTRISおよびポリシロキサン類似体であってよい。
【0058】
本発明において生じたポリマーは、当技術分野に公知の方法によってシリコーンヒドロゲルフィルムとされる。従って、本発明は、本発明のホモポリマーもしくはコポリマーから作製されるコンタクトレンズをも対象とする。本発明のモノマー/ポリマーは、米国特許第3,408,429号および米国特許第3,496,254号に開示されるようなスピンキャスティング法によって、米国特許第4,084,459号および米国特許第4,197,266号に開示されるようなキャスト成形によって、またはそれらの方法に組み合わせによって、あるいは、コンタクトレンズ作製のための他の任意の公知の方法によってコンタクトレンズに成形できる。上述の米国特許は、コンタクトレンズ製造方法に関するそれらの教示に対する参照によって本明細書に組み入れられることは着目すべき点である。重合化は、所望のコンタクトレンズの形に対応して、スピンモールドや固定モールドのいずれかによって実行され得る。必要に応じて、レンズはさらに機械的表面処理へと供され得る。所望の形のコンタクトレンズをもたらすために、ボタン、プレート、ロッドを作製するために適切なモールドもしくは容器において重合化が実行され、そして(例えば旋盤もしくはレーザーによる切断もしくは研磨によって)加工され得る。
【0059】
本発明において生じるポリマーから作り上げられるコンタクトレンズの相対的な柔らかさや硬さは、(メタ(アクリロキシ)もしくは(メタ)アクリルアミドのような)活性化不飽和基によって末端キャップ化されたポリシロキサンプレポリマーの分子量を減少したり増加したりすることによって、またはコポリマーの割合を変化させることによって変化させ得る。一般的にポリシロキサン単位対エンドキャップ単位の比を増加させると、材料の柔らかさは増大する。
【0060】
本発明のポリマーは、UV吸収剤、顔料および着色剤を、添加剤もしくはコモノマーの形態で含み得る。
【0061】
上述のように、本発明のシリコーンヒドロゲルは、十分な酸素透過度(30〜250Dk)を示し、直鎖アルキル架橋基を持つシリコーンポリエーテルコポリマーと比較して向上した表面湿潤性を持つ。ヒドロゲルゲルフィルムの酸素透過度は、本発明のシリコーンモノマーが従来技術に公知であるシロキサンおよびポリシロキサン類似体とともに使用されるとき、270Dk単位にまで拡張できる。本願において使用されるモノマーおよびプレポリマーは、容易に重合して、酸素を透過させ、よりよい機械的性能と光学的透明度を持ち、改善された湿潤性を持つ三次元ネットワークを形成する。
【0062】
例えば、40重量パーセントの本発明のモノマーと、10重量パーセントのTRIS、25重量パーセントのHEMA、20重量パーセントのDMAおよび5重量パーセントのNVPコモノマーによって製造されるシリコーンヒドロゲルは、0.8MPaのヤング率を示し、95%より大きい光学透過度および30°未満の気泡法による接触角を持ち、本発明におけるシリコーンモノマーを市販の疎水性および親水性のシロキサンもしくは有機コモノマーとともにコンタクトレンズ配合物を作製するのに好適なものとする。実施例1のシリコーンモノマー(40重量パーセント)が、10重量パーセントのTRIS、25重量パーセントのHEMA、20重量パーセントのDMAおよび5重量パーセントのNVPとともに、配合物の1重量パーセントのUV開始剤の存在下で、365nmで10秒以内に硬化を開始し、25〜30秒で自立フィルムを形成することは注目すべきである。25〜50秒で硬化は90パーセントより多く完了した。全配合物中のメチルヒドロキノン阻害剤の総量は100PPM付近である。本発明のメタクリルアミドより作製される配合物は、従来技術に公知の例6と比較して優れた硬化能を持つ。
【0063】
ヒドロゲルフィルムの具体的な使用は、眼内コンタクトレンズ、人工角膜、使い捨て長期装用ソフトコンタクトレンズ、生物医学的デバイスのコーティングを含む。
【0064】
一態様において、親水性シリコーンモノマーは、バルクもしくはラテックスの形態で材料を作製するための、他のフリーラジカル重合に有効なモノマーとのホモポリマーもしくはコポリマーの調製において使用できる。本発明のモノマーを含む、これらのホモポリマー、コポリマー、エマルジョンおよびラテックス粒子は、口紅、マスカラ、ファンデーション、ローション、クリーム、シャンプー、コンディショナー、マニキュアのようなスキンケア、ヘアケア、ネイルケアを含むパーソナルケア配合物中における成分として、それらの性能、触感的性質、および使いやすさなどを向上するために使用できる。それらはまた、布地および繊維の処理の用途において、天然繊維および合成繊維の両方に対し滑らかさ、ソフトな感触および湿潤性を与えるために使用できる。最後に、ホモポリマー、コポリマー、エマルジョンおよびラテックス粒子は、ワニス、ラテックス塗装およびルーフィング組成物のような、金属、プラスチック、木および紙のためのコーティング配合物に混合することができる。
【実施例】
【0065】
具体例1、2、3、4、5および7は本発明によるものであるが、例6(平均4個のエチレンオキシド単位を持つメタクリル化トリシロキサンポリオキシエチレンコポリマー)は比較例である。
【0066】
モノマー調製−例1
式:
【化26】

によって表される化合物の合成。
【0067】
メタクリルアミド含有シリコーンポリエーテルモノマーは4ステップのプロセスを用いて調製された。第一のステップにおいて、ヒドロシリル化反応が、ヒドロキシル末端化メタリルポリエーテルとモノヒドリド官能性トリシロキサン部分との間で起こる。末端ヒドロキシル基は、第二のステップにおいてトシル化反応によって望ましい脱離基へと変換される。第三のステップは、グリシンのメタクリル化、最後のステップのための反応物の調製を含む。最後のステップにおいて、グリシンメタクリルアミド塩を用いるトシラートのSN反応によって所望の目的物を製造する。
【0068】
この場合、ヘプタメチルトリシロキサン(70グラム)および鎖中平均4個のエチレンオキシド(EO)単位を持つメタリル末端化ポリエチレングリコール(75グラム)が、還流コンデンサ、機械的スターラー、熱電対を持つ温度調節器および窒素注入口を備える500mlの3口丸底フラスコへと導入された。内容物は、Karstedtの触媒(1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体、充填された全反応物の重量に基づいて30ppmのPtに相当)および50ppmのプロピオン酸ナトリウム緩衝剤の存在下で80℃〜85℃に加熱された(米国特許第4,847,398号)。ヒドロシリル化の完了後、揮発性化合物(例えば、触媒とともに導入されたトルエン)は減圧下で蒸留(蒸発)された。最終産物である、ヒドロキシル末端化シリコーンポリエーテルは、無色透明な液体として定量的な収量で、望まれない副産物を含まずに得られた。生じる純粋な産物は、多核NMR(H、13C、29Si)分光法およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析された。本発明のシリコーンポリエーテルの合成は溶媒の存在下でも非存在下でも起こり得る。一つもしくはそれ以上の溶媒が使用されるとき、好適なものは、トルエン、イソプロピルアルコールもしくはメチルエチルケトンを含む。
【0069】
トシル化は、ヒドロキシル末端化シリコーンポリエーテル(100グラム、0.2モル)およびトリエチルアミン(82ml、0.59モル)を還流コンデンサおよび滴下漏斗を備える500mlの3口丸底フラスコに配置することで実施された。反応中、1秒当たり約20〜30の気泡の速度で窒素ガスが、アダプタとゴムのチューブを用いてフラスコの第三の口から連続的に投入された。攪拌中の反応物に対して無水テトラヒドロフラン(60ml)が添加され攪拌が継続された。反応温度は35℃に上昇し、反応中維持された。無水テトラヒドロフラン(25ml)中のp−トルエンスルホニルクロリド(48.2グラム、0.25モル)溶液が40〜45分間滴下された。トリエチルアンモニウム塩酸塩の白い沈殿物が45分間の反応中に生じた。反応時間は4〜5時間であった。反応の後、有機塩がろ過され、ろ過物はロータリーエバポレータ中で減圧下において濃縮された。溶媒の除去の後、27℃での12時間の貯蔵の後、さらなる有機塩が産物から析出した。ろ過により、定量的収量で、トシラート末端化シリコーンポリエーテルを生じた。産物はNMR法により確認された。
【0070】
25グラム(0.33モル)のグリシンが、100ml脱イオン水中の水性NaOH溶液(34グラム、0.83モル)を含む250mlの丸底フラスコへと一つまみずつ添加された。フラスコはアイス塩バスを用いて0〜5℃へと冷却された。バスの温度を5℃未満に保ちつつ、メタクリロイルクロリド(39ml、0.39モル)が30〜45分間滴下された。反応混合物が室温へと温められた。反応混合物がpH3へと酸性化され、酢酸エチルによって4回抽出された(40ml×4)。酢酸エチル相が分離漏斗によって分離され、無水硫酸ナトリウム(50グラム)を含む三角フラスコへと移された。酢酸エチルは丸底フラスコへとデカントされ、溶媒が減圧下で除去され、白い固形粒としてグリシンメタクリルアミド(70%を超える収量)が得られた。産物はNMR法によって確認された。
【0071】
SN反応のために、トシラート末端化シリコーンポリエーテル(25グラム、0.04モル)が、還流コンデンサ、ヒートバスおよび窒素注入器を備える250mlの2口丸底フラスコ中の溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)を用いて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(6.26グラム、0.041モル)およびグリシンメタクリルアミド(5.31グラム、0.041モル)と反応させられた。期待していない重合化を避けるために、100〜200ppmのヒドロキノンが反応中に使用された。反応中、ヒートバスの温度は65℃に保たれた。12時間後、N,N−ジメチルホルムアミドがロータリーエバポレータ(70℃、20mbar)を用いて減圧下で除去された。粗生成物が25mlのクロロホルムに溶解され、ブリン溶液で洗浄された(15ml×3)。クロロホルム層が分離し、無水NaSO上で乾燥され、活性炭で脱色され、溶媒がロータリーエバポレータ中で減圧下で除去された。最終産物は定量的な収量で得られた。
【0072】
最終産物は赤外分光法、多核NMR(H、13C、29Si)分光法によってよく分析された。
【0073】
最終産物のモノマーのプロトンおよびケイ素NMRの結果は以下のようである:H−NMR、300MHz、CDCl(ppm):0.03〜0.17(br.m、21H、CHSi−)、0.21〜0.35(m、1H、Si−CH)、0.52〜0.64(m、1H、Si−CH−)、0.95(d、J=9Hz、3H、−CH)、1.82〜1.95(m、1H、−CH(R))、1.99(br.S、3H、=C(CH)、3.07〜3.2(m、1H、R−CHCHO−)、3.22〜3.35(m、1H、R−CHCHO−)、3.40〜3.97(m、18H、−(CHCHO)−)、4.08〜4.18(m、2H、NH−CHCOO−)、4.27〜4.40(m、2H、OOC−CH)、5.38(br.S、1H、=CH)、5.77(br.S、1H、=CH)、6.45(br.S、1H、−NH−CO)。29Si−NMR、79.51 MHz、CDCl(ppm):−21.9(−OSi−(CH)(EO))、7.2(−OSi(CH)。
【0074】
例2
以下の式:
【化27】

によって表される化合物の合成。
【0075】
平均分子構造CHCH(CH)O(CHCHO)CHCHOCHを持つエポキシ末端化ポリエーテルは、平均構造CHCH(CH)O(CHCHO)H (MAPEG5)のヒドロキシル末端化ポリエーテルをエピクロロヒドリンと以下のように反応させることにより合成された:50グラムのMAPEG5、50mlのヘキサンおよび、0.4グラムのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)が、コンデンサおよび滴下漏斗を備える250ml丸底フラスコに配置された。これに対し、10.2グラムの固形のNaOHが充填され、生じる物質がマグネチックスターラーを用いて混合され、ゆっくりと40℃〜42℃に加熱された。この混合物に対し、31.6グラムのエピクロロヒドリンが2時間かけて滴下された。反応は、さらに4時間続けられた。このあと、塩と過剰の塩基がろ過により除去され、ろ過物が15mbarで、ゆっくりと温度を85℃にしながら真空蒸発された。H−NMRによって確認されると、産物は粘性の透明な95%エポキシ末端化されたエポキシ末端化ポリエーテルであり、これは次のステップで使用された。
【0076】
ヒドロシリル化反応において、ヘプタメチル−トリシロキサン(50グラム、0.23モル)、ならびに一端をメチル基で末端化され、他端をエポキシ基で末端化された、鎖中平均5個のエチレンオキシド(EO)単位を持つポリエチレングリコール(78.5グラム、0.23モル)が還流コンデンサ、機械的スターラー、熱電対を持つ温度調節器および窒素注入口を備える250mlの3口丸底フラスコへと導入された。内容物は、Karstedtの触媒(1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体、充填された全反応物の重量に基づいて30ppmのPtに相当)および100ppmのプロピオン酸ナトリウム緩衝剤の存在下で80℃〜85℃に加熱された(米国特許第4,847,398号)。ヒドロシリル化の完了後、揮発性化合物(例えば、触媒とともに導入されたトルエン)は減圧下で蒸留(蒸発)された。最終産物である、エポキシ末端化シリコーンポリエーテルは、無色透明な液体として定量的な収量で、望まれない副産物を含まずに得られた。生じる純粋な産物は、多核NMR(H、13C、29Si)分光法およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析された。本発明のシリコーンポリエーテルの合成は溶媒の存在下でも非存在下でも起こり得る。一つもしくはそれ以上の溶媒が使用されるとき、好適なものは、トルエン、イソプロピルアルコールもしくはメチルエチルケトンを含む。
【0077】
最後のステップにおいて、エポキシ末端化ポリエーテル(25グラム、0.044モル)は、メチルエチルケトン溶媒(50ml)および重合化阻害剤としての2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノオキシフリーラジカル(TEMPO)(0.004グラム、2.2×10−5モル)と混合された。70℃において、チタニウムイソプロポキシド(0.5重量パーセント)が添加され、グリシンメタクリラートの添加があとに続いた。反応は24時間90℃で続けられた。24時間後、形成された酸化チタンが、ブフナー漏斗中のセライトベッド(2cm)上でろ過により除去された。セライトはメチルエチルケトンで洗浄され(10ml×2)、ろ過物は減圧下で濃縮された。最終産物は活性炭を用いて脱色された。最終産物は淡褐色色の油として得られた。
【0078】
最終産物のモノマーのプロトンおよびケイ素NMRのデータは以下のようである:H−NMR、300MHz、CDCl(ppm):0.01〜0.14(br.m、21H、CHSi−)、0.21〜0.32(m、1H、Si−CH)、0.51〜0.62(m、1H、Si−CH−)、0.94(d、J=9Hz、3H、−CH)、1.83〜1.95(m、1H、−CH(R))、1.98(br.S、3H、=C(CH)、3.08〜3.16(m、1H,R−CHCHO−)、3.24〜3.32(m、1H、R−CHCHO−)、3.48〜3.75(m、18H、−(CHCHO)−)、4.11〜4.15(m、2H、NH−CHCOO−)、4.22〜4.26(m、2H、OOC−CH)5.38(br.S、1H、=CH)、5.77(br.S、1H、=CH)、6.49(br.S、1H、−NH−CO)。29Si−NMR、79.51 MHz、CDCl(ppm):−21.9(−OSi−(CH)(EO))、7.1(−OSi(CH)。
【0079】
例3
以下の式:
【化28】

によって表される化合物の合成。合成経路はガブリエルフタルイミド反応を用いる。例1に記載されるトシラート末端化シリコーンポリエーテルを、カリウムフタルイミドと反応し、次のステップにおいてヒドラジン化され、アミン末端化シリコーンポリエーテルを産生する。最後のステップにおいてアミン末端化シリコーンポリエーテルはメタクリル化される。
【0080】
トシラート末端化シリコーンポリエーテル(25グラム、0.037モル)が、窒素注入システムを備える500ml丸底フラスコに配置された。このフラスコに、N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)が添加され、カリウムフタルイミド(8.3グラム、0.045モル)の添加があとに続いた。生じる混合物は65℃で12時間攪拌された。12時間後、反応混合物は、ろ過され、ろ過物は減圧下で濃縮され半固形の物質を生じた。半固形の物質はヘキサン中で攪拌され、生じたものが再びろ過され、減圧下で濃縮された。最終産物である、フタルイミド末端化シリコーンポリエーテルは、明黄色の粘性の油として定量的な収量で分離された。
【0081】
フタルイミド末端化シリコーンポリエーテル(20グラム、0.031モル)は、還流コンデンサを備えた2口丸底フラスコ中で窒素雰囲気下でエチルアルコールと混合された。溶液は95℃で還流された。還流は、1回のエチルアルコール中50%v/v溶液のヒドラジンヒドラート(1.71グラム、0.034モル)の添加後も3時間続けられた。ヒドラジンヒドラートの添加後5分以内に激しい白色の沈殿が見られた。3時間後、反応混合物はWhatmann−1ろ過紙によってろ過された。ろ過物は減圧下でロータリーエバポレータにかけられエチルアルコールが除去された。得られた半固形の産物はヘキサンで希釈されろ過された。ろ過物は、減圧下で蒸発され、淡黄色の油として定量的な収量でアミン末端化シリコーンポリエーテルが得られた。
【0082】
滴下漏斗を備える250mlの2口丸底フラスコ中で、窒素雰囲気下でアミン末端化シリコーンエーテル(15グラム、0.027モル)がトルエン(25ml)に溶解された。トリエチルアミン(3.2ml、0.033モル)が反応フラスコに添加された。丸底フラスコがアイスバス中に保持され、反応温度は5℃未満に維持された。反応混合物にメタクリロイルクロリド(4.6グラム、0.033モル)が15〜20分間滴下された。反応混合物が室温へと温められ、攪拌が3時間続けられた。反応混合物がろ過され、第一の副産物としてトリエチルアミンヒドロクロリドが除去された。ろ過物は、Thermax 8XMP(Thermax India Ltd.からのTulsion)塩基性イオン交換樹脂上で攪拌され、メタクリル酸が第二の副産物として除去された。最終的に、物質は活性炭上で攪拌され、最終的にメタクリルアミド末端化シリコーンポリエーテルが淡黄色の油として定量的な収量で得られた。
【0083】
最終産物のモノマーのプロトンおよびケイ素NMRのデータは以下のようである:H−NMR、300MHz、CDCl(ppm):0.01〜0.18(br.m、21H、CHSi−)、0.23〜0.36(m、1H、Si−CH)、0.52〜0.65(m、1H、Si−CH−)、0.96(d、J=9Hz、3H、−CH)、1.83〜1.95(m、1H、−CH(R))、1.97(br.S、3H、=C(CH)、3.09〜3.19(m、1H、R−CHCHO−)、3.24〜3.35(m、1H、R−CHCHO−)、3.46〜3.95(m、18H、−(CHCHO)−)、5.34(br.S、1H、=CH)、5.72(br.S、1H、=CH)、6.44(br.S、1H、−NH−CO)。29Si−NMR、79.51MHz、CDCl(ppm):−22(−OSi−(CH)(EO))、7.1(−OSi(CH)。
【0084】
例4
以下の式:
【化29】

によって表される化合物の合成。
【0085】
ヘキサメチルシクロトリシロキサンもしくはD3(21グラム、9.44ミリモル)およびジクロロメチルシラン(12.0グラムおよび10.4ミリモル)が250ml丸底フラスコに配置された。フラスコが40℃で10分間加熱された。加熱を停止し、攪拌しながらヘキサメチルリン酸トリアミド(10μl)が反応混合物へと添加された。反応混合物は30分間攪拌され、進捗はHNMR分光法を実行しつつ観測された。反応混合物は、250ml丸底フラスコ中のジイソプロピルエーテル(50ml)および水(20ml)の攪拌溶液中に、室温で60分間、滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下された。攪拌はさらに60分間続けられた。有機層が分離し、7パーセントNaHCOで中和され(2×50ml)、水洗浄(40ml)が後に続き、無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、蒸発により粗生成のヘプタメチルシクロテトラシロキサン(D)を得た。これは真空蒸留(90℃で20mmHgで実行)によって精製され、無色の溶液として63パーセントDをもたらした。産物はHNMRおよび29SiNMRによって分析された。
【0086】
(14.9グラム、5.27ミリモル)およびメタリルポリオキシエチレン(8EO鎖)(22.3グラム、5.27ミリモル)、プロピオン酸ナトリウム(100ppm)が、還流コンデンサを備える2口丸底フラスコ中で70℃に加熱された。Karstedtの触媒(希釈2−プロパノール溶液として、30ppm)が上述の混合物へと添加され、90℃に加熱された。攪拌は3時間続けられた。反応は反応混合物のHNMRを実行しながら観察された。完了後、反応混合物は室温まで冷却され、濃黄色の液体が得られ、活性炭(1グラム)によって脱色され、ヒドロキシ末端化環状シロキサンポリエーテルコポリマーの無色のオイルが定量的な収量で得られた。ヒドロキシル化産物は、HNMRおよび29SiNMRによって分析された。
【0087】
ヒドロキシル末端化環状シロキサンポリエーテルコポリマー(50グラム、0.071モル)、トリエチルアミン(16.5ml、0.12モル)およびトルエン(50ml)が、窒素雰囲気下の滴下漏斗および機械的スターラーを備える2口丸底フラスコ中に入れられた。全ての装置はアイスバス中に保持され、反応温度は5℃未満に維持された。攪拌中の反応混合物に、メタクリロイルクロリド(8.3ml、0.085モル)が30分の間滴下された。約3時間攪拌を継続しながら反応は室温に暖められた。トリエチルアンモニウムクロリド塩がろ過により除去され、ろ過物はThermax 8XMP(Thermax India Ltd.からのTulsion)塩基性イオン交換樹脂(25グラム)とともに混合され、12時間攪拌された。混合物はろ過され、活性炭(1グラム)で脱色され、減圧下で溶媒が蒸発され、定量的な収量でメタクリル化環状シロキサンポリエーテルコポリマーを得た。最終産物は、HNMRおよび29SiNMRによって分析された。
【0088】
H−NMR、300MHz、CDCl(ppm):0.08(br.s、21H、CHSi−)、0.26〜0.40(m、1H、Si−CH)、0.61〜0.72(m、1H、Si−CH−)、0.96(d、J=9Hz,3H、−CH)、1.86〜1.9(m、1H、−CH(R))、1.94(br.S、3H、=C(CH)、3.11〜3.21(m、1H、R−CHCHO−)、3.24〜3.31(m、1H、R−CHCHO−)、3.52〜3.89−(CHCHO)−)、4.27〜4.34(m、2H、CHCHCOO−)、5.56(br.s、1H、=CH)、6.13(br.S、1H、=CH2)。29Si−NMR、79.51MHz、CDCl(ppm):−18.9(−OSi−(CH−O)、−19.2(−OSi−(CH−O)、20.1(−OSi−(CH)(EO)−O−)。
【0089】
例5
以下の式:
【化30】

によって表される化合物の合成。
【0090】
合成は、D3およびジクロロメチルシランからはじめられ、Dを得、そして上述の例4のように8−EOを含むメタリルポリエーテルによってヒドロシリル化した。
【0091】
トシル化は、ヒドロキシル末端化環状シリコーンポリエーテル(25グラム、0.035モル)およびトリエチルアミン(8.3ml、0.06モル)を還流コンデンサおよび滴下漏斗を備える250mlの3口丸底フラスコに配置することで実施された。反応中、1秒当たり約20〜30の気泡の速度で窒素ガスが、アダプタとゴムのチューブを用いてフラスコの第三の口から連続的に投入された。攪拌中の反応物に対して無水テトラヒドロフラン(50ml)が添加され攪拌が継続された。反応温度は35℃に上昇し、反応中維持された。無水テトラヒドロフラン(25ml)中のp−トルエンスルホニルクロリド(8.1グラム、0.042モル)溶液が40〜45分間滴下された。トリエチルアンモニウム塩酸塩の白い沈殿物が45分間の反応中に生じた。反応時間は4〜5時間であった。反応の後、有機塩がろ過され、ろ過物はロータリーエバポレータ中で減圧下において濃縮された。溶媒の除去の後、27℃での12時間の貯蔵の後、さらなる有機塩が産物から析出した。ろ過により、定量的収量で、トシラート末端化シリコーンポリエーテルを生じた。産物はNMR法により確認された。
【0092】
SN反応のために、トシラート末端化環状シリコーンポリエーテル(10グラム、0.012モル)が、還流コンデンサ、ヒートバスおよび窒素注入器を備える100mlの2口丸底フラスコ中の溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(15ml)を用いて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(1.94グラム、0.013モル)およびグリシンメタクリルアミド(1.65グラム、0.013モル)と反応させられた。期待していない重合化を避けるために、100〜200ppmのヒドロキノンが反応中に使用された。反応中、ヒートバスの温度は65℃に保たれた。12時間後、N,N−ジメチルホルムアミドがロータリーエバポレータ(70℃、20mbar)を用いて減圧下で除去された。粗生成物が25mlのクロロホルムに溶解され、ブリン溶液で洗浄された(15ml×3)。クロロホルム層が分離し、無水NaSO上で乾燥され、活性炭で脱色され、溶媒がロータリーエバポレータ中で減圧下で除去された。最終産物は定量的な収量で得られた。
【0093】
最終産物は赤外分光法、多核NMR(H、13C、29Si)分光法によってよく分析された。H−NMR、300MHz、CDCl(ppm):0.08(br.s、21H、CHSi−)、0.26〜0.41(m、1H、Si−CH)、0.61〜0.73(m、1H、Si−CH−)、0.97(d、J=9Hz、3H、−CH3)、1.89〜1.96(m、1H、−CH(R))、1.99(br.S、3H、=C(CH))、3.11〜3.2(m、1H、R−CHCHO−)、3.24〜3.32(m、1H、R−CHCHO−)、3.54〜3.76−(CHCHO)−)、4.11〜4.18(m、2H、NH−CHCOO−)、4.29〜4.36(m、2H、OOC−CH)5.39(br.S、1H、=CH)、5.78(br.S、1H、=CH)、6.45(br.S、1H、−NH−CO)。29Si−NMR、79.51MHz、CDCl(ppm):−18.8(−OSi(CH−O)、−19.1(−OSi(CH−O)、−20.2(−OSi−(CH)EO)−O−)。
【0094】
例6
式:
【化31】

によって表される化合物の合成。
【0095】
メタクリル化シリコーンポリエーテルモノマーは2ステップのプロセスによって合成された。第一のステップにおいて、ヒドロシリル化反応はヒドロキシル末端化メタリルポリエーテルとモノヒドリド官能化トリシロキサン部分の間で起こる。第二のステップにおいて、ヒドロキシル基はメタクリル化反応によって重合可能なメタクリラート基へと転換される。
【0096】
具体的なプロセスにおいて、ヘプタメチルトリシロキサン(70グラム)および鎖中平均4個のエチレンオキシド(EO)単位を持つメタリル末端化ポリエチレングリコール(75グラム)が、還流コンデンサ、機械的スターラー、熱電対を持つ温度調節器および窒素注入口を備える500mlの3口丸底フラスコへと導入された。内容物は、Karstedtの触媒(1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体、充填された全反応物の重量に基づいて30ppmのPtに相当)および50ppmのプロピオン酸ナトリウム緩衝剤の存在下で80℃〜85℃に加熱された(米国特許第4,847,398号)。ヒドロシリル化の完了後、揮発性化合物(例えば、触媒とともに導入されたトルエン)は減圧下で蒸留(蒸発)された。最終産物である、ヒドロキシル末端化シリコーンポリエーテルは、無色透明な液体として定量的な収量で、望まれない副産物を含まずに得られた。生じる純粋な産物は、多核NMR(H、13C、29Si)分光法およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析された。本発明のシリコーンポリエーテルの合成は溶媒の存在下でも非存在下でも起こり得る。一つもしくはそれ以上の溶媒が使用されるとき、好適なものは、トルエン、イソプロピルアルコールもしくはメチルエチルケトンを含む。
【0097】
次に、上述のステップで合成されたシリコーンポリエーテル(142グラム)、トリエチルアミン(30.3グラム)(もしくは代替的に塩基性イオン交換樹脂の酸捕捉剤)、およびメチルエチルケトン(250ml)が、滴下漏斗および攪拌ブレードを備える3口丸底フラスコに導入された。フラスコは、アイスバスに浸けられ、メタクリロイルクロリド(31.3グラム)がおおよそ1時間かけて攪拌しながら滴下された。添加の後、攪拌はさらに3時間室温で続けられた。トリエチルアミンヒドロクロリド塩が反応中に生じて沈殿した。イオン交換樹脂が使用されるとき、それはろ過して除去された。溶媒が真空ロータリーエバポレータによって除去され、最終産物のモノマーが無色透明な液体として得られた。使用された溶媒の低い沸点のために、真空下(約10mmHg未満)で約30〜40℃の温度で溶媒を完全に取り除けるようになった。生じる親水性モノマー産物は、無色から淡い黄色であった。それは琥珀色の瓶で冷蔵庫中に保存された。赤外分光法、多核NMR(H、13C、29Si)分光法によって分析は以下のようである。H−NMR、300MHz、CDCl(ppm):0.07((CH)Si−)、0.26、0.56(Si−CH−)、0.95(−CH)、1.93(=C(CH))、3.64(−CHCHO−)、4.29(CHCOO)、5.56、6.12(=CH)。29Si−NMR、79.51MHz、CDCl(ppm):−22(−OSi(CH)(EO))、7(−OSi(CH)。
【0098】
例7
式:
【化32】

によって表される化合物の具体的な合成。
【0099】
このプロセスは4ステップを含む。第一のステップにおいて、ヒドロシリル化反応が、ヒドロキシル末端化メタリルポリエーテルとモノヒドリド官能性トリシロキサン部分との間で起こる。末端ヒドロキシル基は、第二のステップにおいてトシル化反応によって望ましい脱離基へと変換される。第三のステップは、グリシンのメタクリル化、最後のステップのための反応物の調製を含む。最後のステップにおいて、グリシンメタクリルアミド塩を用いるトシラートのSN反応によって所望の目的物を製造する。
【0100】
この場合、ヘプタメチルトリシロキサン(100グラム)および鎖中平均9個のエチレンオキシド(EO)単位を持つメタリル末端化ポリエチレングリコール(209グラム)が、還流コンデンサ、機械的スターラー、熱電対を持つ温度調節器および窒素注入口を備える1000mlの3口丸底フラスコへと導入された。内容物は、Karstedtの触媒(1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体、充填された全反応物の重量に基づいて30ppmのPtに相当)および50〜100ppmのプロピオン酸ナトリウム緩衝剤の存在下で80℃〜85℃に加熱された(米国特許第4,847,398号)。ヒドロシリル化の完了後、揮発性化合物(例えば、触媒とともに導入されたトルエン)は減圧下で蒸留(蒸発)された。最終産物である、ヒドロキシル末端化シリコーンポリエーテルは、無色透明な液体として定量的な収量(302グラムが単離された)で、望まれない副産物を含まずに得られた。生じる純粋な産物は、多核NMR(H、13C、29Si)分光法およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析された。本発明のシリコーンポリエーテルの合成は溶媒の存在下でも非存在下でも起こり得る。一つもしくはそれ以上の溶媒が使用されるとき、好適なものは、トルエン、イソプロピルアルコールもしくはメチルエチルケトンを含む。
【0101】
トシル化は、ヒドロキシル末端化シリコーンポリエーテル(100グラム、0.15モル)およびトリエチルアミン(53ml、0.36モル)を還流コンデンサおよび滴下漏斗を備える500mlの3口丸底フラスコに配置することで実施された。反応中、1秒当たり約20〜30の気泡の速度で窒素ガスが、アダプタとゴムのチューブを用いてフラスコの第三の口から連続的に投入された。攪拌中の反応物に対して無水テトラヒドロフラン(50ml)が添加され攪拌が継続された。反応温度は35℃に上昇し、反応中維持された。p−トルエンスルホニルクロリド(35.9グラム、0.19モル)が40〜45分間かけて一つまみずつ添加された。トリエチルアンモニウム塩酸塩の白い沈殿物が45分間の反応中に生じた。反応時間は通常4〜5時間であり、完了を確かにするため普通は24時間まで維持された。反応の後、有機塩がろ過され、ろ過物はロータリーエバポレータ中で減圧下において濃縮された。溶媒の除去の後、22〜25℃での12時間の貯蔵の後、さらなる有機塩が産物から析出した。ろ過により、定量的収量で、トシラート末端化シリコーンポリエーテルを生じた。産物はNMR法により確認された。
【0102】
25グラム(0.33モル)のグリシンが、100ml脱イオン水中の水性NaOH溶液(34グラム、0.83モル)を含む250mlの丸底フラスコへと一つまみずつ添加された。フラスコはアイス塩バスを用いて0〜5℃へと冷却された。バスの温度を5℃未満に保ちつつ、メタクリロイルクロリド(39ml、0.39モル)が30〜45分間滴下された。反応混合物が室温へと温められた。反応混合物がpH3へと酸性化され、酢酸エチルによって4回抽出された(40ml×4)。酢酸エチル層が分離漏斗によって分離され、無水硫酸ナトリウム(50グラム)を含む三角フラスコへと移された。酢酸エチルは丸底フラスコへとデカントされ、溶媒が減圧下で除去され、白い固形粒としてグリシンメタクリルアミド(70%を超える収量)が得られた。産物はNMR法によって確認された。
【0103】
SN反応のために、トシラート末端化シリコーンポリエーテル(25グラム、0.03モル)が、還流コンデンサ、ヒートバスおよび窒素注入器を備える250mlの2口丸底フラスコ中の溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)を用いて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(5.4グラム、0.04モル)およびグリシンメタクリルアミド(5.4グラム、0.04モル)と反応させられた。期待していない重合化を避けるために、100〜200ppmのヒドロキノンが反応中に使用された。反応中、ヒートバスの温度は55℃に保たれた。12時間後、N,N−ジメチルホルムアミドがロータリーエバポレータ(55℃、8mbar)を用いて減圧下で除去された。粗生成物が50mlの酢酸エチルに溶解され、ブリン溶液で洗浄された(15ml×3)。酢酸エチル層が分離し、無水NaSO上で乾燥され、活性炭で脱色され、溶媒がロータリーエバポレータ中で減圧下で除去された。最終産物は定量的な収量で得られた(18グラムの単離した収量)。
【0104】
最終産物は赤外分光法、多核NMR(H、13C、29Si)分光法によってよく分析された。
【0105】
最終産物のモノマーのプロトンおよびケイ素NMRの結果は以下のようである:H−NMR、400MHz、CDCl(ppm):0.03〜0.12(br.m、21H、CHSi−)、0.2〜0.3(m、1H、Si−CH)、0.52〜0.60)(m、1H、Si−CH−)、0.92(d、J=8Hz、3H、−CH)、1.8〜1.9(m、1H、−CH(R))、1.97(br.S、3H、=C(CH)、3.06〜3.1(m、1H、R−CHCHO−)、3.22〜3.35(m、1H、R−CHCHO−)、3.4〜3.8(m、34H、−(CHCHO)−)、4.08〜4.18((m、2H、NH−CHCOO−、4.27〜4.37(m、2H、OOC−CH)5.37(br.S、1H、=CH)、5.76(br.S、1H、=CH)、6.46(br.S、1H、−NH−CO)。29Si−NMR、79.51MHz、CDCl(ppm):−22.3(−OSi−(CH)(EO))、6.8(−OSi(CH)。
【0106】
ヒドロゲルフィルムの一般例
例1、2、3、4、5および7によってもたらされる物質と、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、4モルのエチレンオキシドを含むトリシロキサングラフト化メタリルポリエーテルメタクリラート(例6)のような有機コモノマーと、任意選択でエチルグリコールジメタクリラート(EGDMA)のような架橋剤とからの配合物1〜9から異なるヒドロゲルフィルムが調製された。2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(HMPP)もしくはIrgacure819がUV開始剤として使用された。すべてのフィルムは1重量パーセントの開始剤を用いて硬化され、365nmの光により5〜60秒間、ガラスもしくはポリ(プロピレン)で作製された透明な型もしくはポリエステルシートで硬化された。硬化は、ガラスを型として使用した時より早かった(2〜3秒)。配合物の詳細とヒドロゲルフィルムの性質は表1にまとめられる。公知のシリコーンアクリラート(例6)と比較された本発明のシリコーンアクリルアミド(例1〜5および7)の硬化性能は、表2にまとめられる。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
発明はさまざまな実施態様を参照して記載されるが、当業者なら本発明の範囲を離れることなく、多くの変更がなされ、その要素が均等物と置換され得るこは理解できるであろう。本発明書は本発明を実施するためのベストモードとして開示される特定の実施態様に限定されることが意図されるのではなく、本発明は添付される請求の範囲に包含されるすべての実施態様を含むことが意図される。ここに引用される全ての引用物は参照によりそのすべての内容を明示的に本明細書に組み入れられる。