特許第6502283号(P6502283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスゼット ディージェイアイ テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000002
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000003
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000004
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000005
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000006
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000007
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000008
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000009
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000010
  • 特許6502283-マイクロ慣性測定装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502283
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】マイクロ慣性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20190408BHJP
【FI】
   G01C19/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-80735(P2016-80735)
(22)【出願日】2016年4月14日
(62)【分割の表示】特願2013-523464(P2013-523464)の分割
【原出願日】2010年12月6日
(65)【公開番号】特開2016-148677(P2016-148677A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年5月13日
【審判番号】不服2018-2847(P2018-2847/J1)
【審判請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】201010250948.4
(32)【優先日】2010年8月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513068816
【氏名又は名称】エスゼット ディージェイアイ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SZ DJI TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】汪 滔
【合議体】
【審判長】 清水 稔
【審判官】 須原 宏光
【審判官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0308157(US,A1)
【文献】 特開平7−306047(JP,A)
【文献】 特開昭63−217787(JP,A)
【文献】 特開2002−299545(JP,A)
【文献】 米国特許第5038613(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0039529(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101349564(CN,A)
【文献】 実開平5−70001(JP,U)
【文献】 特開2002−195834(JP,A)
【文献】 J Barton, A Gonzalez, J Buckley, B O’Flynn, S C O’Mathuna, Design,Fabrication and Testing of Miniaturised Wireless Inertial Measurement Unit(IMU),Electronic Components and Technology Conference, 2,米国,IEEE,2007年,pp.1143−1148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ慣性測定装置であって、
センサ支持部と、フレキシブル計測制御回路基板とを含むセンサモジュールを含み、
前記センサ支持部は、6つの平面を含み、少なくとも1つの平面は凹部を含み、
前記フレキシブル計測制御回路基板は、一体構造を形成するために一体化され、且つ、形状が前記センサ支持部の6つの平面の展開平面と一致し、それぞれセンサ支持部の縁に沿うように90°曲げられて、前記センサ支持部の6つの平面を覆い、
前記フレキシブル計測制御回路基板の回路部品の少なくとも一部は、前記センサ支持部の前記少なくとも1つの平面の前記凹部内にはめ込まれていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記センサ支持部の前記6つの各平面は、他の4つの平面に隣接する4辺を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センサ支持部は、前記6つの平面を含む立方体形状の構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記1つ以上の回路部品を支持するように構成された前面と、前記前面の反対側の裏面とを含み、
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記フレキシブル計測制御回路基板の前記前面が前記少なくとも1つの平面と対向し、且つ前記裏面が前記少なくとも1つの平面と逆方向を向いているとともに、前記凹部を含む前記少なくとも1つの平面の上方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記センサモジュールは、前記フレキシブル計測制御回路基板に接続されている1つ以上のセンサ部品をさらに含み、前記1つ以上のセンサ部品は、1つ以上の加速度計及びジャイロスコープを含み、
前記フレキシブル計測制御回路基板は、少なくとも1つの前記1つ以上のセンサ部品が前記センサ支持部の前記平面の前記凹部内にはめ込まれていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記1つ以上の回路部品と前記1つ以上のセンサ部品とを支持するように構成された前面を含み、
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記前面の反対側の裏面を含み、前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記フレキシブル計測制御回路基板の前記前面が前記少なくとも1つの平面と対向し、且つ前記裏面が前記少なくとも1つの平面と逆方向を向いているとともに、前記凹部を含む前記少なくとも1つの平面の上方に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記センサモジュールが内蔵されているハウジングを含み、
1つ以上の減衰部が前記センサモジュールと前記ハウジングとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記1つ以上の減衰部は6つの減衰部を含み、
前記6つの減衰部のそれぞれは、前記フレキシブル計測制御回路基板の対応する平面と接触していることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1に記載のマイクロ慣性測定装置を製造するための方法であって、
前記6つの平面を含む前記センサ支持部を提供することと、
前記一体構造を形成するために一体化され、且つ、形状が前記センサ支持部の6つの平面の展開平面と一致したフレキシブル計測制御回路基板を提供することと、
前記フレキシブル計測制御回路基板を、それぞれセンサ支持部の縁に沿うように90°曲げて、前記センサ支持部の6つの平面を覆うことと、
前記フレキシブル計測制御回路基板の前記少なくとも1つの回路部品を前記センサ支持部の前記少なくとも1つの平面の前記凹部内にはめ込むことにより、前記センサモジュールを形成することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記はめ込みは、前記少なくとも1つの回路部品が前記少なくとも1つの平面の前記凹部に対向するとともに、前記少なくとも1つの回路部品を前記少なくとも1つの平面の前記凹部内にはめ込むことを含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記1つ以上の回路部品を支持するように構成された前面と、前記前面の反対側の裏面とを含み、
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記フレキシブル計測制御回路基板の前記前面が前記少なくとも1つの平面と対向し、且つ前記裏面が前記少なくとも1つの平面と逆方向を向いていることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記センサモジュールは、前記フレキシブル計測制御回路基板に接続されている1つ以上のセンサ部品をさらに含み、前記1つ以上のセンサ部品は、1つ以上の加速度計及びジャイロスコープを含み、
少なくとも1つのセンサ部品を前記センサ支持部の平面の凹部内にはめ込むことを特徴
とする請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記センサモジュールをハウジング内に位置決めすることをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記センサモジュールと前記ハウジングとの間に、1つ以上の減衰部を配置することをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ハウジングを無人航空機に取り付けることをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
可動装置であって、
請求項1に記載のマイクロ慣性測定装置と、
前記マイクロ慣性測定装置を載置する運送機と、を含み、
前記フレキシブル計測制御回路基板は、前記運送機の加速又は回転を示す信号を生成するように設けられていることを特徴とする装置。
【請求項17】
前記運送機は無人航空機であることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
制御コンピュータをさらに含み、
前記制御コンピュータは、作動可能に前記フレキシブル計測制御回路基板に接続され、且つ前記運送機の前記加速又は前記回転の少なくとも1つを測定するために、前記信号を受信且つ処理するように設けられていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば無人航空機(UAV)などの輸送機で用いられるストラップダウン方式の慣性航法技術に関する。特に、本発明は、ストラップダウン方式の慣性航法で用いるマイクロ慣性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ストラップダウン方式の慣性航法は急成長している先進航法技術の1つである。輸送機に固定されているジャイロスコープ、加速度計などの慣性要素は、慣性座標系に対する輸送機の加速度を測定するために直接利用される。その後、ニュートンの慣性の法則に基づいて積分演算することにより、出発点から目的地まで運送機を誘導するための航法座標系における速度、姿勢角および位置に関する情報を得ることができる。さらに、ストラップダウン方式の慣性航法技術では、姿勢マトリクスの成分から姿勢データおよび航法データを抽出して航法ミッションを終了するための、ジャイロスコープおよび加速度計による測定データの座標変換や微分方程式解法を含む数学的な演算が、制御コンピュータによって行われる。ストラップダウン方式の慣性航法装置では、たとえば更新されたストラップダウン行列のような更新されたデータに基づいて作られる「数学的なプラットフォーム」は、従来の電気機械的な航法プラットフォームの代わりとして、装置の大きさとコストを著しく低下させ、かつ、慣性要素の設置と維持が容易な簡単なシステム構成を実現するために用いることができる。また、ストラップダウン方式の慣性航法装置は、外部のシステムサポートとは独立しており、自らの姿勢、速度および位置についての情報を取得する。ストラップダウン方式の慣性航法装置は、外部に情報を発することもない。したがって、たとえばリアルタイムに、独立して、妨害されることなく、領域や時間や気象条件だけでなく、包括的な出力パラメータの制限がないという利点により、ストラップダウン方式の慣性航法装置は、航空、航海および交通などの複数の分野で広く適用される。
【0003】
ストラップダウン方式の慣性航法装置は、通常は、慣性測定装置、制御コンピュータ、制御ディスプレイおよび関連する支援部品から構成される。なかでも、慣性測定装置は、装置全体における重要な構成要素である。慣性測定装置は、ジャイロスコープと加速度計とを備えており、その動作原理は次のとおりである。まず、運送機の3軸角速度をジャイロスコープによって検出し、3軸に沿って移動する機体の線形加速度を加速度計によって検出する。その後、たとえば瞬間的な向首角や傾斜角など、いくつかの航行中の姿勢情報を算出するために、ジャイロスコープによって検出された角速度の信号を制御コンピュータによって時間で積分する。また、加速度計によって検出された加速度の信号を、瞬間的な速度を算出するために時間で積分する。最後に、この時間における距離と航行位置を算出するために2回目の積分を実行する。
【0004】
慣性測定装置とその姿勢解を得る技術は、ストラップダウン方式の慣性航法装置の特性に影響を及ぼす重要な技術点である。なぜなら、慣性測定と姿勢解は、運送機の進路を制御する前提となるからである。したがって、それらの精度と効率は、航法の老朽化と精度に直接的な影響を与える。第2に、慣性測定装置は、過酷な空気圧の環境における振動、衝撃および角運動に耐えなければならないので、多くの不安定な影響と誤差の影響をもたらしやすく、ストラップダウン方式の慣性航法装置の弱点となっている。第3に、ストラップダウン方式の慣性航法装置の微細化や産業化には、いくつかの課題が存在する。特に、マイクロエレクトロニクス技術の発展とともに、低コストかつバッチによりストラップダウン方式の慣性航法装置を製造するために、中間精度あるいは低精度の超小型電気機械による慣性部品を採用することが必要である。
【0005】
運送機が小型化、微細化する傾向にある場合には、その土台となる大部分は従来の運送機よりも小さくなるので、航行中の動的環境におけるより激しくランダムな振動の影響を受けることにより、従来の運送機と比べてより不安定となる。したがって、不安定な航法、低精度および電子部品の短い耐用年数という欠点を克服するために、主に機械構造面、減衰設計面および微細技術面に的を絞った技術的手段が、慣性測定装置に提案されなければならない。
【0006】
図1は、従来の小型無人航空機(UAV)におけるストラップダウン方式の慣性航法装置に用いられる慣性測定装置を示す構造図である。センサ支持部11は、固定ネジを介してハウジング12の内部に固定されている。減衰部13は、4つのゴム製ブランケットによって形成されている。ハウジングは、運送機の下部に固定されている。センサ支持部は、互いに垂直に設置された3枚のジャイロ回路基板111,112,113から構成されている(図2参照)。それぞれのジャイロ回路基板には、1軸ジャイロスコープ111a,112a,113aが配置されている。水平に配置されているジャイロ回路基板111は、結合された基板である。また、ジャイロ111aの傍には3軸加速度計111bが備えられている。これらの3つのジャイロスコープは、それらの感度軸がお互いに直交し、測定のための直交座標系を形成するように、3つの直交する平面上に設置する必要がある。結合されたジャイロ回路基板111上において、3軸加速度計111bの測定軸がジャイロ111aの測定軸と平行となっている。結合されたジャイロ回路基板111は、調整回路基板114およびマスタープロセッサ回路基板115と、コネクタを介して直接接続されている。
【0007】
図3は、上述の慣性測定装置における減衰構造の等価解析図である。図3において、マスブロックMは慣性測定装置を表しており、その質量中心はmである。減衰部は{Ki,ci}で示される。Kiは剛性を表し、Ciは減衰係数を表し、添え字iはダンパーに含まれる減衰部の番号を表している。図1においては、4つのゴム製ブランケットが減衰部として用いられているので、i=1,2,3,4に相当する。Bは航行中の運送機を表し、Pはダンパーの弾性中心を表す。運送機Bが航空中の場合、慣性測定装置Mに基礎励起が発生する。このとき、慣性測定装置Mにおける運送機Bの振動による影響を減らすために、減衰部{Ki,ci}は運送機Bからの強制振動エネルギーを吸収および消耗し、点Pが中心をとりながら弾性的上下運動しはじめる。
【0008】
上述した慣性測定装置には、いくつかの問題がある。
(1)センサ支持部がお互いに分離した3枚の回路基板で構成されているので、あまりにも多くの領域を占有するとともに、3軸方向において剛性に著しい違いが生じる。
(2)減衰部が慣性測定装置の外側に取り付けられているので、余分なスペースをとる。さらに、慣性測定部が強制的に振動する場合に、不平衡な剛性と不合理な機械構造に起因するねじり振動が容易に起こり得る。
(3)ダンパーについては、理想的な活動範囲は1軸方向に限られる。すなわち、垂直方向からの振動を減衰することができるにすぎず、他の方向からの振動を抑制する効果的な手段を持たない。結果として、異なる自由度の線形振動および角振動が結合し、ダンピング帯が狭くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術における上記の欠点に対し、本発明の目的は、従来の慣性測定装置があまりに多くの領域を占有していること、ねじり振動が容易に起こり得ること、ダンピングの周波数帯が相対的に狭いことを解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を解決するための技術的解決法は次のとおりである。すなわち、マイクロ慣性測定装置は、ハウジングと、センサモジュールと、ダンパーと、を備え、センサモジュールは、剛体のセンサ支持部と、センサ支持部上に実装された計測制御回路基板と、計測制御回路基板上に搭載された慣性センサと、を含み、慣性センサは、ジャイロスコープと加速度計と、を含み、センサモジュールは、ハウジングに取り付けられており、ダンパーはハウジングに取り付けられているとともに、センサモジュールとハウジングの内壁面との間の隙間に位置している。
【0011】
本発明の有利な解決法において、センサ支持部は、立方体形状を有する剛体の支持部であり、少なくとも1つの平面に凹部が形成されており、計測制御回路基板はフレキシブル計測制御回路基板であり、フレキシブル計測制御回路基板の回路部品の少なくとも一部は、少なくとも1つの平面の凹部内にはめ込まれている。
【0012】
本発明の有利な解決法において、センサ支持部の6つの平面すべてに凹部が形成されており、フレキシブル計測制御回路基板の数は最大6つまでであり、フレキシブル計測制御回路基板はセンサ支持部の平面をそれぞれ覆い、各フレキシブル計測制御回路基板上の回路部品は、フレキシブル計測制御回路基板がセンサ支持部の各平面を平坦に覆うように、センサ支持部の対応する平面における凹部内にはめ込まれる。
【0013】
本発明の有利な解決法において、センサモジュールは、フレキシブル計測制御回路基板上に備えられたアンチエイリアシング回路と、A/D変換回路と、を含み、慣性センサは、3つのジャイロスコープと、1つの速度計と、を含み、当該回路モジュールは、それぞれフレキシブル計測制御回路基板上に配列される。
【0014】
本発明の有利な解決法において、フレキシブル計測制御回路基板は、一体構造を形成するために一体化されており、それぞれセンサ支持部の縁に沿うように90°曲げられて、センサ支持部の各平面を完全に覆う。
【0015】
本発明の有利な解決法において、ダンパーは、少なくとも2つの減衰部を含んでおり、センサモジュールの対応する平面とハウジングの内壁面との間の隙間に配置される。ダンパーは、最大6つの減衰部を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の有利な解決法において、センサモジュールは、6つの減衰部によりハウジングの内部空洞の中心に支持されており、ダンパーの弾性中心Pはセンサモジュールの質量中心mと一致する。
【0017】
本発明の有利な解決法において、ハウジングは、下部に開口部を有する上部ハウジングと、その開口部に合う下部カバーとを含む。
【発明の効果】
【0018】
上記の技術的解決法に起因して、本発明は次のような効果を有する。(1)サポートのための剛性が増すだけでなく、装置の機械的構造が向上する。結果として、3次元の等剛的振動減少が実現し、慣性測定装置の雑音排除性が大幅に向上する。(2)慣性測定装置の固有振動数が、たとえばジャイロスコープの振動発生部などの高感度部品の動作振動数と著しく区別されて、慣性測定装置の振動特性が向上する。結果として、慣性センサの取り付け平面に対する相対的な振幅が最小となる。(3)慣性測定装置の大きさおよび重さを著しく減らし、運送機の積荷スペースを拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の小型無人航空機(UAV)におけるストラップダウン方式の慣性測定装置を示す構造図である。
図2図1に示す慣性測定装置におけるセンサ支持部を示す構造図である。
図3図1に示す慣性測定装置におけるダンパーの等価モデルの模式図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るダンパーの内部減衰単位の分布を示す図である。図中のSは、ハウジングの上下左右の内壁面をあらわす。
図5】本発明の好ましい実施の形態に係るセンサ支持部を示す模式図である。
図6図5に示すセンサ支持部と組み合わせるフレキシブル計測制御回路基板と、このフレキシブル計測制御回路基板上の部品の配置を示す外観図である。
図7】本発明の好ましい実施の形態に係るセンサモジュールの構成を示す模式図である。
図8図7に示すセンサモジュールと組み合わせるハウジングを示す構造図である。
図9】本発明の好ましい実施の形態において用いられる内部ダンピングユニットとセンシングモジュールとの位置関係を示す図である。
図10】本発明の好ましい実施の形態に係るマイクロ慣性測定装置を示す組立略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
運転中、ストラップダウン方式の慣性航法装置の機械的な環境において、激しいランダム振動がしばしば起こり得る。このような振動は、装置の不安定さを誘発するとともに、電子部品に損傷を与える可能性がある。このことは、装置の安定性に大きな影響を与える。運送機の激しいランダム振動は、電子部品に損傷を与え、また慣性測定ユニットを不安定にする。このようなランダム振動によってもたらされる影響を減少するために、各センサ回路基板間の接続部剛性が強化される以外は、所望の減衰効果を実現するために、慣性測定ユニットは減衰媒体としてのダンパーを使用して運送機に弾性的に接続されている。減衰モードの選択は、減衰性能と慣性航法装置による測定精度の両方に影響を与えるので、常にその構造設計において重要な点である。本発明のさまざまな態様によれば、センサ支持部と合理的な減衰機械構造の改良された設計によって、マイクロ慣性測定装置の性能を向上することが可能となる。
【0021】
センサ支持部は、ジャイロスコープ、計測制御回路基板および接続線を取り付けるための重要な構成要素である。センサ支持部は、ジャイロスコープの取付け面が相対的な最大振幅を有する場合に、運転中のさまざまな激しい振動を受ける。したがって、取付け面の構造の動的性質は、ジャイロスコープの動作信頼性と精度に明らかに影響を与える。そのような影響を最小限に抑えるためには、一定の静的強度、防振強度および耐用年数を有する必要がある。工程に関して、支持部は、取付けおよび製造が容易であることを要する。その上、支持部の構造は、その剛性および減衰性能を向上させるだけでなく、合理的に設計されている。このことにより、支持部の固有周波数は、ジャイロスコープの振動発生部の動作振動数から確実に大きく離されて、ジャイロスコープの取付け面の相対振幅が最小となる。従来は、支持部を最適化するための伝統的な手法として、剛性を高めるために壁の厚さを大幅に増加し、対応する構造の固有周波数を増加していた。本発明において、構造設計は、支持部の構造的剛性と減衰性能を高めるために、一方的に増加された厚みの代わりに、最適化材料、形状および接合面によって最適化される。さらに、全体的にみると、支持部と減衰装置の条件付けも解決しなくてはならない。支持部上の回路基板の取付位置と配線経路も考慮すべきである。
【0022】
上記の説明からもわかるように、従来の慣性測定装置における上述の技術的欠点を克服するために、本発明では、次のような技術的手段が取られる。マイクロ慣性測定装置は、その機械的構造を向上するという概念に基づいて提供される。装置は、大幅に大きさを減らし、3次元の等剛性をもつ減衰構造を含む。マイクロ慣性測定装置は、ストラップダウン方式の慣性航法装置における3次元の不均衡な剛性、共鳴励起、ねじり振動を含むさまざまな欠点による悪影響を克服するような方法で提供される。
【0023】
本発明の好適な実施形態を、図4から図10に示す。マイクロ慣性測定装置は、センサモジュール12と、減衰部と、上部ハウジング16と、下部カバー18と、を有する。
【0024】
センサモジュール12は、センサ支持部121と、慣性センサ122と、フレキシブル計測制御回路基板123と、を有する。この実施態様では、センサ支持部121は、固有の比重および剛性の一定の要件を満たす立方体形状の剛体の支持部である。また、センサ支持部121は、各平面に凹部が形成されている。
【0025】
慣性センサ122は、ジャイロスコープと加速度計と、を有する。具体的には、慣性センサ122は、3つのジャイロスコープと1つの加速度計と、を有し、それらすべてはフレキシブル計測制御回路基板123に接着されている。
【0026】
フレキシブル計測制御回路基板123は、センサ信号の前処理機能を有するべきである。このために、当該フレキシブル計測制御回路基板123は、少なくともアンチエイリアシング回路およびA/D変換回路を含んで構成されるべきである。一方では、回路基板および接続線は、90°の屈曲に耐えられるようなフレキシブルな材料で形成されている。他方では、フレキシブル計測制御回路基板の形状は、センサ支持部の縁に沿うように90°曲げてもセンサ支持部の各平面を完全に平坦に覆うことができるように、センサ支持部の展開平面と一致する必要がある。
【0027】
確実に実施するために、アンチエイリアシング回路と、A/D変換回路と、3つのジャイロスコープと、1つの加速度計と、を有する6つの回路モジュールは、それぞれ6つのフレキシブル計測制御回路基板に配置される。さらに、各フレキシブル計測制御回路基板の回路部品は、センサ支持部の対応する平面における凹部内にそれぞれはめ込まれる。
【0028】
上部ハウジング16および下部カバー18によって形成される内部空洞は、センサモジュール12の立体構造と類似する形状を有しており、内部空洞の大きさはセンサモジュール12より相対的に大きい。その結果、ハウジングの内壁面と対応するセンサモジュールの平面部との間に形成された各空間はほぼ同一となり、その中に内部減衰部14が配置される。
【0029】
内部ダンパーは、適切な減衰特性を有する多くの内部減衰部{Ki,ci}14を有する。当該内部減衰部は、上部ハウジング16の内壁面Sとセンサモジュール12の6面との間に組み込まれる。内部減衰部の数は、さまざまな運送機の振動特性に応じて決定され、その最大数は6である。センサモジュールは、ハウジングの内部空洞の中心に支持されている。この配置において、各内部減衰部のひずみ力の軸は、それぞれ互いに直交し、運送機の強制振動が均一に吸収および消耗されるように、内部減衰部の弾性中心Pがセンサモジュールの質量中心mと一致している。具体的には、減衰部は特定の減衰効果を奏する弾性物質で形成されている。このような弾性物質としては、バネ、ゴム製のブランケット、シリカゲル、スポンジに限られず、その他の弾性物質を選択することができる。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、立方体形状を有するセンサ支持部121は、一定の比重および剛性を有する金属材料あるいは非金属材料から形成され、一体成型加工により製造されている。剛性不足および異方性に起因する測定誤差を減らすために十分な支持部自身の剛性を確保するために、センサ支持部121の組み立ての代わりに一体成型が用いられる(図5参照)。
【0031】
図6は、本発明の好適な実施形態における、フレキシブル計測制御回路基板123の展開平面およびその表面の部品配置を示す模式図である。フレキシブル計測制御回路基板123における回路基板と接続線は、ともに90°の屈曲に耐えるフレキシブルな物質で形成されている。さらに、フレキシブル計測制御回路基板は6つの展開平面を有しており、その形状は、センサ支持部の展開した外側平面と一致するように設計されている。センサおよびほかの電子部品は、6つの展開平面の表面側における適切な位置にそれぞれ接着されている。
【0032】
図7は、本発明の好適な実施形態における、センサモジュールの構造を示す模式図である。慣性センサ122および他の電子部品は、フレキシブル計測制御回路基板123の前面側に接着されている。フレキシブル計測制御回路基板の前面側は、センサ支持部に取り付けられるとともに、センサ支持部の縁に沿って90°に屈曲している。そして、各センサまたは電子部品は、センサ支持部の各平面の凹部の中にはめ込まれている。すべてのフレキシブル計測制御回路基板の裏面側は、外側に向いている。すなわち、フレキシブル計測制御回路基板は、センサの構成要素および電子部品とともにセンサ支持部を囲み、センサ支持部の各平面を完全に平坦に覆うことができる。
【0033】
本発明において、ストラップダウン方式の慣性航法減衰装置を設計するために第1に考慮すべきことは、連成振動を回避または軽減する方法である。このような装置の機械構造が不合理であると、線形振動および角振動の交差励振を生成するように、6自由度それぞれの振動がお互いに結合する。このため、慣性測定装置の検出データは、独自の断面励起情報を含み、結果として、慣性航法装置の測定精度に大きく影響を与える可能性がある偽の動作信号が装置にもたらされる。装置の角運動の測定中にダンパーによって生成される干渉を軽減するために、減衰装置の角振動数は慣性航法装置の測定帯域幅から大きく離されるべきである。広帯域のランダム振動の状況では、ダンピング周波数が下がるほど高い減衰効果が得られる。
【0034】
図8は、本発明の好適な実施形態における、ハウジング16を示す概略図である。ハウジング16は、下部カバー18とともに立方体形状の内部空洞を形成する(図8において下部カバー18は不図示)。内部空洞は、センサモジュール12および減衰部14を保持するために用いられる。この場合、センサモジュール12の形状と比較して、上述のとおり形成されたハウジングの内部空洞は、同一の形状を有するように設計されている。すなわち、立方体形状を有し、相対的に大きな大きさを有している。このような設計により、ハウジングの6つの内壁面のそれぞれと、センシングモジュールの6つの外側平面のうちの対応する面との間に形成されるそれぞれの空間は、お互いに形状と大きさが略同一となる。なお、ハウジングの6つの内壁面は、上部ハウジング16および下部カバー18によって形成される。それぞれの空間と略同一の形状を有する減衰部14は、この空間に組み込まれて、相対的に優れた減衰効果を提供するための内部のダンパーの組み立てが完了する。
【0035】
図9は、本発明の好適な実施形態における、内部減衰部14全体から成る内部ダンパーとセンサモジュールとの位置関係を示す図である。本実施の形態において、前後、左右、上下の自由度から成る6自由度におけるセンサモジュール12の強制振動の効果的な減衰と完全な吸収をもたらすために、6つの内部減衰部14、すなわち、同一形状を有する6つの減衰パッドが上部ハウジング16の内壁面とセンサモジュール12との間に取り付けられる。さらに、輸送機の強制振動が一様に吸収および消耗できるように、センサモジュールはハウジングの内部空洞の中心に支持され、各内部減衰部のひずみ力の軸は、それぞれ互いに直交している。
【0036】
図10は、本発明の好適な実施形態における、2.1マイクロ慣性測定装置を示す組立略図である。上記のように一連の技術的手段により、固有振動数、減衰係数、減衰効率、ダンパーの機械的強度のすべてが耐衝撃性および耐震性の条件を満たすことができることが保証される。マイクロ慣性測定装置における3つの座標系、すなわち、弾性座標系、慣性座標系および解を求めるための座標系において、それぞれ一致する座標軸はお互いに平行であり、慣性装置の質量中心は、減衰装置の弾性中心と一致する。このような最適状態において、それぞれの自由度において振動中の著しいデカップリング効果が得られる。そして、それぞれの固有振動数は狭い周波数分布の技術的効果を実行するために互いに接近する。
【0037】
本発明に係るマイクロ慣性測定装置は、無人航空機(UAV)、自動操縦航空機、船、水中自動探査機器、さまざまな車、ロボットなどに適用可能である。上記実施形態以外にも、本発明には他の実施がある。たとえば、(1)ハウジングは上部ハウジングと下部カバーとの結合によって形成されるものに限定されず、代わりに下部ハウジングと上部カバー、あるいは中部ハウジングと上部カバーと下部カバーとの結合によって形成されていてもよい。(2)集中処理はフレキシブル計測制御回路基板の6つ機能モジュールのすべてまたは一部で実行される。フレキシブル計測制御回路基板の数は6より削減することができ、センサ支持部の平面の凹部の数もそれに応じて同様に削減できる。(3)支持部は、直方体形状とすることができる。そして、このとき回路基板の構造は適宜結合される。関連性のある同等の代替技術的解決法は、本発明の請求された保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
12 センサモジュール
121 センサ支持部
122 慣性センサ
123 フレキシブル計測制御回路基板
14 内部減衰部
16 上部ハウジング
18 下部カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10