(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
添加された抽出液をイムノクロマト法又は核酸クロマト法を利用して検査する検査手段と、前記抽出液が内部に収容される抽出容器と、一端側に前記抽出容器と密封的に連通する抽出液流入口を有し、他端側に抽出液流出口を有する筒状の誘導部材とを備えており、
前記抽出容器は、胴部と、該胴部の軸方向の一端が封止された底部と、該胴部の軸方向の他端に設けられた開口部とを有しており、
前記誘導部材は、毛管作用を有する棒状の抽出液誘導体をその筒内に有しており、該抽出液誘導体の抽出液流入口側の端部には、前記抽出容器の前記底部に貫通孔を形成するための先端を尖らせた尖端部が設けられ、該抽出液誘導体の抽出液流出口側の端部は、前記検査手段に当接可能に構成されており、
前記抽出液誘導体の尖端部によって形成された貫通孔を介して、前記抽出容器と前記誘導部材の前記抽出液流入口とが密封的に連通し、前記抽出液誘導体の前記抽出液流入口側の端部から吸収された前記抽出液が、毛管作用によって前記抽出液誘導体内を移動し、前記検査手段に当接した前記抽出液誘導体の前記抽出液流出口側の端部を介して該検査手段に添加されるように構成されていることを特徴とする検査用装置。
前記検査手段は前記抽出液を添加するための添加穴が設けられたハウジングと、前記ハウジングの内部に収容され、前記抽出液を展開可能なテストストリップとを備えており、
前記抽出液誘導体は、前記誘導部材の筒内壁に周方向に沿って連続する凸部状に形成された誘導体保持部によって前記誘導部材の筒内部を摺動可能に係止されており、
前記誘導部材は、前記添加穴に前記抽出液流出口を挿入することにより前記抽出液誘導体の抽出液流出口側の端部を前記テストストリップに当接させるように構成され、
前記抽出液誘導体の抽出液流出口側の端部の前記テストストリップへの当接の際に、前記誘導部材の前記抽出液流出口近傍の外壁は、前記ハウジングの前記添加穴近傍の内壁に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の検査用装置。
前記誘導部材の前記誘導体保持部には、略垂直方向に伸長する凹溝が前記抽出液誘導体に空気を流通させるための空気流通溝として形成され、該空気流通溝の前記抽出液誘導体と連通する部分の溝の幅長さは、0.15mm〜0.25mmであることを特徴とする請求項2に記載の検査用装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1〜
図7を参照し、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る検査用装置1は、抽出容器2と誘導部材3と検査手段4と検体採取具5とを備えている。本実施形態に係る検査用装置1は、一例としてインフルエンザウイルスの検査に用いるイムノクロマト法を利用したラテラルフロータイプの検査用装置を示しているが、本発明の検査用装置には、核酸クロマト法を利用した検査用装置も含まれる。検査対象としては、一例として、インフルエンザウイルス、RSウイルス、A群β溶連菌、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス又は肺炎マイコプラズマ等の微生物、微生物・植物・非ヒト動物由来の蛋白質、微生物・植物・非ヒト動物由来の核酸、ヘモグロビンやトランスフェリン等のヒト由来の蛋白質、ヒト由来の核酸、腫瘍マーカー類、ホルモン類、ビタミン類、生理活性アミン類、プロスタグランジン類、抗生物質、アレルゲン及び農薬等が挙げられる。この検査用装置1を使用して検査を行うことにより、
図2に示すように抽出液6を滴下することなく、閉鎖的に、抽出液6を簡単かつ確実に検査手段4に添加導入することができる。
【0026】
まず、
図1〜
図3に基づき、抽出容器2について説明する。本実施形態の抽出容器2は、検体を分散又は溶解させるための抽出液6が内部に収容された筒状の容器であり、胴部21と胴部21の軸方向の一端側が封止された底部22と、他端側が開口した開口部23を有している。この開口部23には、収容されている抽出液6が外部に流出したり、異物が混入するのを防ぐための蓋体24が予め設けられている。この蓋体24は、検体採取具5を挿入するために取り外し可能に構成されており、抽出容器2の開口部23を封止できるものである。具体的には、蓋体24として、開口部23の端面に接着剤やヒートシール、超音波溶着等で樹脂製フィルムを張り付けて開口部23を覆うフィルムシール蓋や、ねじ式の蓋、押し込み栓等が使用される。この蓋体24を取り外すことにより抽出容器2の密封状態がいったん解除されて、検体採取後の検体採取具5の検体採取部51及び軸部52を容器内部に挿入することができる。また、抽出容器2の開口部23近傍の内壁21aには、後述する検体採取具5のキャップ封止部54aと係合して開口部23を封止する凸状の開口部側封止部23bを備えている。なお、核酸クロマト法を利用した検査においては、検体採取具5は使用されず、検体としてPCR産物等の核酸溶液が抽出液6に添加され、キャップ等で開口部23が封止される。
【0027】
他方、抽出容器2の底部22には、底部側の端部22dから所定距離離れた開口部23側の位置に封止部22aが備えられている。
図3(b)に示すように、この封止部22aには、後述する誘導部材3に備えられた貫通孔形成手段である尖端部33aによって貫通孔を容易に形成することが可能なようにその部分のみを薄く形成した筋状の破断部22eが設けられている。本実施形態においては、破断部22eは、円の中央で結合する3本の直線の筋状に形成されているが、この態様に限定されない。底部22の封止部22aと端部22dとの間には、誘導部材3の抽出液流入口31側を収容するための収容領域22bを有する。収容領域22bの内壁21aには、誘導部材3の抽出液流入口31の外壁に備えられた流入口側係合部31aと係合する底部側係合部22cが備えられている。本実施形態では、底部側係合部22cとして、底部22の内壁に周方向に沿って連続する凹部が設けられている。この底部側係合部22cは、誘導部材3の流入口側係合部31aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよい。具体的には、例えば、底部22の内壁21a又は外壁21bにおいて、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0028】
抽出容器2は、流体透過性の小さい非可撓性又は剛性材料で形成されていることが好ましく、具体的には、特に限定されないが、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂又はガラス等が好適に用いられ、ポリプロピレン樹脂又は非架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。なお、ガラスで抽出容器2を形成する場合には、本実施形態のように、使用時に底部22の封止部22aに貫通孔を形成させる形態については、封止部22aに貫通孔を形成可能なように、封止部22aのみアルミニウム等の金属薄膜や樹脂等で形成することが好ましい。本実施形態の抽出容器2は非可撓性材料として非架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて、一体成形により形成されている。本発明の検査用装置では、抽出容器2を押圧して抽出液6を検査手段4に滴下する必要はなく、抽出液6は後述する誘導部材3の抽出液誘導体33の毛管作用によって検査手段4のテストストリップ41に添加される。それゆえ、抽出容器2を押圧可能な可撓性材料で形成する必要がなく、抽出容器2を流体透過性の小さい非可撓性又は剛性材料で形成することができ、抽出液6が抽出容器2外に透過して抽出液6が減少することを防ぐことができる。それにより、検査用装置1をガスバリア性の高いパッケージに封入せずともそのままの状態で長期間保存することが可能となる。なお、抽出容器2は可撓性を備えた樹脂材料で形成されていてもよく、その場合には、従来の使用方法と同様に、抽出容器2の胴部を押圧することにより、誘導部材3の抽出液流出口32から滴下して、検査手段4に添加することも可能である。
【0029】
次に
図4に基づき、誘導部材3について説明する。本実施形態の誘導部材3は、筒状に形成されており、一端側に抽出液流入口31を有し、他端側に抽出液流出口32を有し、内部には、抽出液誘導体33が収容されている。抽出液流入口31は、抽出容器2の底部22の端部22dと封止部22aとの間に設けられた収容領域22bに密封的に嵌入されるように形成されており、抽出液流入口31の外壁には、抽出容器2の底部側係合部22cと係合する流入口側係合部31aが備えられている。本実施形態では、
図4に示すように、流入口側係合部31aとして、抽出液流入口31近傍の外壁に周方向に沿って連続する凸部が設けられている。この流入口側係合部31aは、抽出容器2の底部側係合部22cと前述したように係合して、両者を確実に固定し、密封的に連結する。この流入口側係合部31aは、抽出容器2の底部側係合部22cと係合できる構造であればいかなる構造であってもよい。具体的には、例えば、抽出液流入口31の内壁又は外壁において、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0030】
他方、抽出液流出口32は、検査手段4のハウジング42の添加穴43に挿入可能なように形成されており、抽出液流出口32近傍の外壁には、検査手段4の添加穴43の添加穴側係合部43aと係合する流出口側係合部32aが備えられている。本実施形態では、流入口側係合部31aと同様に、流出口側係合部32aとして、抽出液流出口32近傍の外壁に周方向に沿って連続する凸部が設けられている。この流出口側係合部32aは、検査手段4の添加穴43の添加穴側係合部43aと係合して、両者を確実に固定し、密封的に連結する。この流出口側係合部32aは、検査手段4の添加穴側係合部43aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、抽出液流出口32近傍の外壁又は内壁において、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0031】
また、誘導部材3の筒体の外壁には、筒体の長さの略半分程度の部分に周方向に沿って外方に張り出した鍔部36が備えられている。この鍔部36は、後述する検査手段4の添加穴43に備えられた誘導部材支持部43bに支持され、抽出液誘導体33の突出した一端、すなわち、突出部34が検査手段4に当接した際に、その当接した状態を保つように機能する。それゆえ、抽出液誘導体33の毛管作用が安定的に機能し、抽出液が効率よくテストストリップ41に添加される。さらに、抽出容器2の底部22の収容領域22bに誘導部材3の抽出液流入口31が嵌入した際には、この鍔部36の上側(抽出容器2方向)に抽出容器2の端部22dが当接し、密封されるため、抽出容器2と誘導部材3とは密封的に連通され、抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。同様に、検査手段4のハウジング42の添加穴43に誘導部材3の抽出液流出口32が挿入された際には、この鍔部36の下側(検査手段4方向)に誘導部材支持部43bが当接し、密封されるため、誘導部材3と検査手段4とは密封的に連通され、抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。
【0032】
誘導部材3の抽出液流入口31と抽出液流出口32とを連通する筒内部の空間には、棒状の抽出液誘導体33が収容されている。本実施形態においては、抽出液誘導体33は略円柱状に形成されているが、楕円柱状、多角柱状等さまざまな形状に形成することが可能である。また、軸断面の形状は一定でなくてもよい。誘導部材3に収容された抽出液誘導体33の流出口側端部33bは、抽出液流出口32から突出するように配置された突出部34を構成している。なお、抽出液誘導体33の流出口側端部33bは、後述する検査手段4のテストストリップ41と当接可能であれば、抽出液流出口32から突出していなくてもよい。抽出液誘導体33は、筒内部に設けられた誘導体保持部35で係止され、誘導部材3の筒内部から脱落しないように配置されているが、抽出液流出口32側から抽出液流入口31側に力が加えられた際には、筒内部を摺動できるように係止されている。本実施形態では、誘導体保持部35は、誘導部材3の筒内壁に周方向に沿って連続する凸部状に形成され、誘導体保持部35の部分は筒内径が少し狭くなっている。このように、誘導体保持部35は、流出口側端部33bに一定の力が加えられた際には抽出液誘導体33が筒内部を摺動できる程度に、抽出液誘導体33を誘導部材3の筒内部に係止するように構成されている。
【0033】
抽出液誘導体33の端部の形状は、流出口側端部33bについては、この流出口側端部33bを介して抽出液6が検査手段4に移動することから、抽出液6の移動効率を高めるために接触面積が大きい略平坦な形状に構成されている。しかし、抽出液6を検査手段4に移動させることができれば、いかなる形状であってもよい。他方、抽出液誘導体33の抽出液流入口31側の端部には、本実施形態においては、抽出容器2の封止部22aを突き破り、貫通孔を形成することができるよう、先端を尖らせた尖端部33aが設けられている。尖端部33aの形状としては、特に限定されないが、錘体状やテーパー状に形成されることができる。この抽出液誘導体33の尖端部33aは、
図6及び
図7の動作説明図に示すように、誘導部材3を抽出容器2の底部22の収容領域22bに嵌入させた際に、誘導部材3の抽出液流入口31から突出して封止部22aを突き破り、抽出容器2と誘導部材3とを連通させる。
【0034】
抽出液誘導体33の長さL33は、使用時に検査手段4のテストストリップ41に抽出液誘導体33の流出口側端部33bが当接しつつ、尖端部33aが抽出容器2の底部22の封止部22aに接触して突き破ることができる程度の長さであればよく、誘導部材3の筒長さよりも長く形成されていることが好ましい。本実施形態においては、誘導部材3の筒長さは14mm、抽出液誘導体33の長さL33は22mmで形成されている。また、抽出液誘導体33の直径は3.5mmで形成されている。
【0035】
抽出液誘導体33としては、毛管作用を有するものであればよく、例えば、繊維束構造体、焼結多孔体、紙、スポンジ、不織布、織布等を用いることができる。本発明においては、毛管作用に優れる観点から、繊維束構造体又は焼結多孔体が好適に用いられる。繊維束構造体とは、合成樹脂繊維、パルプ繊維、ガラス繊維等のスライバー又はフィラメントを熱や他の樹脂等で集束結合させて成形した構造体であり、繊維束を構成する各繊維の一端から他端側に液体を移動させる毛管作用を有している。合成樹脂繊維としては、ポリアミド、アクリル、レーヨン、アセテート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレン等からなる繊維が好適に選択される。本実施形態の抽出液誘導体33としては、主にポリエステル繊維からなる繊維束がポリウレタン樹脂によって結合されて形成された繊維束構造体が選択されている。繊維束構造体の繊維太さは、その毛管作用の観点から、1〜10デニールが好ましく、1〜7デニールがより好ましく、2〜5デニールが特に好ましい。また、繊維束構造体の気孔率は、その毛管作用や後述する吸収性、濾過性能の観点から、35〜80%が好ましく、40〜70%がより好ましく、45〜65%が特に好ましい。他方、焼結多孔体とは、樹脂や金属等の粒子、セラミック粉末又は金属繊維を三次元に絡み合わせた状態で焼結させて成形した多孔体であり、三次元の網目構造を介して液体を移動させる毛管作用を有している。粒子原料としては、樹脂が好ましく、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が好適に選択される。焼結多孔体の孔径は、その毛管作用の観点から、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。なお、繊維束構造体や焼結多孔体等の抽出液誘導体33は、親水性及び吸収性を高めるため、界面活性剤等で処理されていてもよい。上述した繊維束構造体や焼結多孔体等の抽出液誘導体33は、毛管作用を有するほか、高い吸収性を有する。それゆえ、抽出容器2から流入した抽出液6をすばやく吸収し、毛管作用により検査手段4に迅速に導くことができる。さらに、繊維束構造体等の抽出液誘導体33は液体の保持性も高いことから、抽出容器2と誘導部材3とを連通させた後に、抽出液誘導体33の流出口側端部33bから抽出液6のしずくが垂れてしまうようなことはなく、安全に検査を行うことができる。また、抽出液誘導体33を介して、検査手段4のテストストリップ41が吸収可能な量の抽出液6が添加された後には、さらに抽出液6が抽出液誘導体33からテストストリップ41に添加されることはないため、検査手段4からの抽出液6の漏れは生じず、安全に検査を行うことができる。さらに、繊維束構造体や焼結多孔体等の抽出液誘導体33は、その構造上、濾過性能も有しており、抽出液6に含まれる、採取された検体由来の粘性の高い分泌物や細胞片等の不要な物質を除去する作用も有している。それゆえ、抽出液を別途準備した濾過器具等を用いて濾過処理する必要がないため、検査用装置の構成を簡易な構成とすることができる。
【0036】
また、誘導部材3は、筒内部に収容された抽出液誘導体33の尖端部33aが抽出容器2の封止部22aを突き破り、抽出容器2と誘導部材3とが連通された状態となっているか否かを目視で確認することができるように、透明又は半透明の樹脂で形成されていることが好ましい。特に限定されないが、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル又はポリスチレン等の合成樹脂が好適に用いられる。
【0037】
次に、
図1及び
図5に基づき、検査手段4について説明する。本実施形態において、検査手段4は、抽出液6が展開されて検査結果が表示されるテストストリップ41と、テストストリップ41を収容するハウジング42とから概略構成されている。ハウジング42の表面には、抽出液6を添加するための略円形の添加穴43が設けられており、さらに検査結果を表示させるための判定窓44が設けられている。添加穴43は、穴の周方向に上向きに略垂直に突出して形成された筒状の添加穴壁43cを有しており、誘導部材3を支持固定すると共に、添加される抽出液6の漏れを防ぐことができるように形成されている。添加穴壁43cの内壁には誘導部材3の抽出液流出口31を添加穴43に挿入し、流出口側端部33bをテストストリップ41に当接させた際に、その当接状態を安定的に保つための添加穴側係合部43aが備えられている。具体的には、添加穴壁43cの内壁には、周方向に連続した凸状の添加穴側係合部43aが備えられている。この添加穴側係合部43aは、誘導部材3の流出口側係合部32aと係合して、両者を確実に固定し連結すると共に、抽出液6が添加される誘導部材3と検査手段4との間の空間を密封し、抽出液6の漏れを防ぐことができる。この添加穴側係合部43aは、誘導部材3の流出口側係合部32aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、添加穴43の内壁又は外壁において、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0038】
さらに、上述した添加穴側係合部43aの上側(添加穴壁43cの端部方向)の内壁には、周方向に凸状の誘導部材支持部43bが略等間隔に4箇所備えられている。この誘導部材支持部43bの段状部分は前述した誘導部材3の鍔部36を支持固定して、誘導部材3が検査手段4のテストストリップ41に当接する際の上下方向の位置を決定している。そのため、誘導部材3の抽出液誘導体33からなる突出部34がテストストリップ41に当接した際に、その当接状態を保ち、抽出液誘導体33が抽出液流出口32の内部に収容される等して当接しなくなってしまうことを防ぐことができる。本実施形態においては、誘導部材支持部43bは、添加穴側係合部43aから上方向に連続して伸長した凸状の段状部分から構成されているが、添加穴側係合部43aと誘導部材支持部43bとを別々に形成してもよく、一例として、添加穴壁43cの上端部分を誘導部材支持部43bとすることもでき、その場合には、誘導部材3の鍔部36を添加穴壁43cの上端部分に載せて支持固定することにより、誘導部材3が支持固定され得る。また、誘導部材3の鍔部36が添加穴43の誘導部材支持部43bに当接することにより、誘導部材3と検査手段4とがさらに密封され、抽出液6の漏れを防ぐことができる。
【0039】
また、
図1及び
図5に示すように、テストストリップ41は、本実施形態においては、イムノクロマト法を利用したラテラルフロータイプのテストストリップとして構成されており、添加された抽出液6を吸収するサンプルパッド41aと、標識抗体等を含有するコンジュゲートパッド41bと、補足抗体等を含有し検査結果が表示されるメンブレン41cと、余剰の抽出液を吸収する吸収パッド41dとを有している。また、検査手段4を、核酸クロマト法を利用した検査手段4とする場合には、テストストリップ41を核酸クロマト用のものとすればよい。核酸クロマト法を利用したテストストリップ41は、一例として、添加された抽出液6を吸収するサンプルパッド41aと、ラテックス粒子等の標識物質等を含有するコンジュゲートパッド41bと、補足プローブ等を含有し検査結果が表示されるメンブレン41cと、余剰の抽出液を吸収する吸収パッド41dとから構成される。添加穴43から誘導部材3を介して導入された抽出液6は、まずサンプルパッド41aに毛管作用にて導入され、その後、毛管作用によりコンジュゲートパッド41b、メンブレン41c及び吸収パッドに移動する。メンブレン41c上に表示された検査結果は判定窓44を通じて確認することができる。テストストリップ41は、上述の構成のものに限定されず、フロースルータイプのテストストリップや他の構成を適宜組み合わせたものも広く含まれる。
【0040】
テストストリップ41は、テストストリップ41を構成する素材の仕様等を調整することにより、抽出液6を一定量のみ吸収可能に設計しておくことも可能である。抽出液誘導体33は、その毛管作用により、一定量の抽出液6を吸収してしまったテストストリップ41に対しては、それ以上の抽出液6の添加は行わないため、常に一定量の抽出液6が抽出液誘導体33を介してテストストリップ41に添加されるように構成することができる。
【0041】
なお、検査手段4に添加された抽出液6との接触を避け、さらに検査用装置1を閉鎖的にするために、ハウジング42の判定窓44部分を透明の樹脂フィルムでシールしたり、ハウジングの添加穴43を除く部分を透明の樹脂フィルムでシュリンク加工等することが可能である。また、テストストリップ41のうち、少なくとも判定窓44から露出する部分を樹脂フィルムでラミネート加工しておくことも可能である。
【0042】
次に、
図1に基づき、検査対象である検体を採取するための検体採取具5について説明する。
図1に示すように、本実施形態における検体採取具5は、軸部52と、軸部52の長手方向の一端に一体的に設けられた検体採取部51と、その長手方向の他端に一体的に設けられたキャップ部54とから主に構成されており、患者の鼻孔や口等から挿入して、鼻やのどの奥をその先端部に設けられた検体採取部51で拭って検体を採取できるように構成されている。このうち、キャップ部54は、抽出容器2の開口部23近傍の内壁に備えられた開口部側封止部23bと係合して開口部23を封止可能なキャップ封止部54aを備えている。これにより、
図2に示すように、抽出容器2の内部に検体を採取した検体採取具5の検体採取部51及び軸部52を折り曲げて収容し、そのままキャップ部54で開口部23を封止して抽出容器2を密封することが可能である。なお、検体採取具5はキャップ部54を備えずに検体採取部51と軸部52のみから構成されることも可能である。また、検査対象によっては、抽出容器2に折り曲げずにそのまま収容できるように、軸部52の長さを短く形成してもよい。
【0043】
図1に示すように、本実施形態においては、検体採取具5の軸部52は、可撓部52aと基部52bとから構成されている。可撓部52aは、所定の位置から検体採取部51までの細径の部分であり、応力を加えることにより変形する可撓性を有している。基部52bは、可撓部52aとの境界部からキャップ部54までの太径の部分であり、可撓部52aよりも高い剛性を有している。そのため、
図2に示すように、検体採取具5の検体採取部51及び軸部52を抽出容器2に収容する際に、軸部52の可撓部52aに力を加えることにより、可撓部52aを折り曲げたり、湾曲させて変形させ、収容された状態での軸部52の長さを短くすることができる。軸部52の基部52bの所定位置には、この基部52bを軸方向と垂直の方向に容易に切断し、分割するための切り欠き53が設けられている。切り欠き53が設けられた位置で基部52bを折り曲げることにより、基部52bが容易に切断され、その軸方向に関して分割するため、抽出容器2に収容された状態の軸部52の長さをさらに短くすることができる。
【0044】
軸部52を構成する材料としては特に限定されないが、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン又はポリエステル等の樹脂や紙等が好適に用いられる。また、軸部52に可撓部52aを備える本実施形態では、応力を加えることにより変形する可撓性を有する材料が選択される。また、検体採取部51としては、検体を付着させることができるものであればよく、綿球、綿球を備えた綿棒、スポンジ又はブラシ等が適宜選択される。特に、検体採取機能に優れることから、合成繊維をフロック加工して綿球を形成した綿棒が好適に用いられる。このような検体採取具5で採取する検体としては、特に限定されないが、ヒト又は非ヒト動物の鼻腔や咽頭のぬぐい液、鼻汁、喀痰、尿、血液、血漿、血清、糞便、直腸ぬぐい液、結膜ぬぐい液、唾液、涙液、羊水、生体組織ぬぐい液、髄液及び膿液のほか、食品ぬぐい液、食品抽出液、飲料、水道水、排水、環境水、土壌及び植物抽出液等が挙げられる。なお、検体採取具5は、核酸クロマト法を利用した検査には使用されない。
【0045】
次に、
図1、
図2及び
図6に基づいて、本実施形態に係る検査用装置1の使用方法について説明する。なお、
図6においては、検体採取具5は省略されている。
【0046】
まず、
図1に示す検体採取具5を用いて検体を採取する(図示せず)。検体を採取する際には、キャップ部54を持って検体採取部51及び軸部52を操作することができる。検体は、患者の鼻孔、咽頭、結膜、尿道、子宮、膣、糞便、尿又は喀痰等を検体採取部51で拭うことにより採取される。採取された検体は検体採取部51に付着し、保持される。
【0047】
次に、抽出容器2の開口部23から検体採取後の検体採取具5を、キャップ部54を持った状態で、抽出容器2の開口部23から検体採取部51を先端にして挿入し、検体採取部51と軸部52とを容器内部に収容させる。この際、
図2に示すように、軸部52の可撓部52aを湾曲させてループ状に変形させ、軸部52の切り欠き53が施された位置を開口部23の端縁に押し当て折り曲げること等により、この位置で軸部52を切断して分割する。これにより、抽出容器2の容器内部に検体採取具5の軸部52等の長さを実質的に短くして収容することができる。収容したのち、そのまま、キャップ部54のキャップ封止部54aで抽出容器2の開口部23を封止して密封する。
【0048】
次に、
図6(a)に示すように、抽出容器2の底部22の収容領域22bに誘導部材3の抽出液流入口31側を押し込んで取付けする。この段階では、抽出容器2と誘導部材3とは連通しておらず、仮嵌めされた状態である。
【0049】
次に、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、抽出容器2に仮嵌めされた誘導部材3の突出部34を検査手段4のハウジング42の添加穴43に挿入する。抽出容器2の胴部21等を持ち、誘導部材3を添加穴43に挿入していくと、誘導部材3の突出部34が検査手段4のテストストリップ41のサンプルパッド41aに当接する。さらに抽出容器2側から検査手段4側の方向に力を加えると、
図6(b)に示すように、(i)繊維束構造体からなる抽出液誘導体33が誘導部材3の筒内部を抽出液流入口31側(上側)に摺動する、(ii)誘導部材3の流出口側係合部32aと検査手段4の添加穴側係合部43aとが係合して、誘導部材3と検査手段4とが閉鎖的に連結される、(iii)誘導部材3の鍔部36が検査手段4の誘導部材支持部43bに当接して、上下方向の位置が決定される、という(i)〜(iii)の動作が生じる。
【0050】
次に、
図6(c)に示すように、さらに、抽出容器2の胴部21側から検査手段4側の方向に力を加えると、抽出液流入口31側(上側)に摺動した抽出液誘導体33の尖端部33aが抽出容器2の封止部22aに到達し、この尖端部33aが封止部22aの破断部22eを破って貫通孔25を形成する。抽出液誘導体33を構成する繊維束構造体は、封止部22aを突破ることのできる程度の一定の硬さを備えており、容易に貫通孔25を形成させることができる。これにより、抽出容器2と誘導部材3とが連通し、抽出容器2に収容されていた抽出液6が貫通孔25又は貫通孔25から突出している抽出液誘導体33を通じて誘導部材3の抽出液流入口31に流入する。また、抽出容器2の端部22dが誘導部材3の鍔部36に当接すると共に、抽出容器2の底部側係合部22cと誘導部材3の流入口側係合部31aとが係合する。これにより、抽出容器2と誘導部材3とが密封的に連通するため、誘導部材3に流入する抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。誘導部材3の抽出液流入口31に流入した抽出液6及び突出している尖端部33aを通じて吸収された抽出液6は抽出液誘導体33に吸い込まれ、毛管作用により抽出液誘導体33の流出口側端部33bに移動する。抽出液誘導体33の流出口側端部33bは検査手段4のテストストリップ41のサンプルパッド41aに当接しているため、抽出液6はこの誘導部材3の流出口側端部33bを通じてサンプルパッド41aに移動する。このように、抽出液6を滴下することなく、テストストリップ41に簡単かつ確実に抽出液6を閉鎖的に導入することができる。本実施形態では、抽出液流入口31に流入する抽出液6は抽出液誘導体33に吸収され、抽出液誘導体33の流出口側端部33bを介して検査手段4のテストストリップ41に移動するように構成されている。抽出液6は繊維束構造体からなる抽出液誘導体33の毛管作用を利用してテストストリップ41に添加されるため、テストストリップ41における抽出液6の展開状況に応じて、抽出液誘導体33がその内部に吸収し保持している抽出液6がテストストリップ41に添加される。そのため、従来の滴下による添加では、一定量以上の抽出液が一時にテストストリップに添加されて、抽出液がテストストリップに吸収されず、抽出液が漏れ出したりすることがあったが、本発明の抽出液誘導体33を介した添加によれば、このような漏出を防ぐことができる。
【0051】
抽出液6を検査手段4に導入した後には、本実施形態においては、通常のラテラルフロー法による検査が行われる。検査結果はハウジング42の判定窓44より確認可能である。そして、使用済みの検査用装置1は、
図2に示す閉鎖状態のまま廃棄処理することが可能である。これにより、検体を含む抽出液6が外部に漏出しない状態で、検査用装置1を廃棄処理することができる。このように、本発明の検査用装置によれば、ウイルスや感染力の高い細菌などが含まれる可能性のある検体について検査を行う際に、検体を効率よく取り扱い、処理することが可能になる。
【0052】
次に、
図1、
図2及び
図7に基づいて、本実施形態に係る検査用装置1の他の使用方法について説明する。なお、
図7においては、検体採取具5は省略されている。
【0053】
検査用装置1の他の使用方法について、前述した使用方法と異なる部分を説明する。本実施形態の検査用装置1を使用する際には、
図7(a)に示すように、抽出容器2と誘導部材3とを係合させる前に、検査手段4のハウジング42の添加穴43に誘導部材3を挿入し、抽出液流出口32を係合させておいてもよい。具体的には、誘導部材3を添加穴43に挿入すると、誘導部材3の突出部34が検査手段4のテストストリップ41のサンプルパッド41aに当接する。誘導部材3の流出口側係合部32aが添加穴43の添加穴側係合部43aに嵌り込むよう、誘導部材の抽出液流入口31側から検査手段4側の方向に力を加えると、
図7(a)に示すように、(i)抽出液誘導体33が誘導部材3の筒内部を抽出液流入口31側(上側)に摺動する、(ii)誘導部材3の鍔部36が検査手段4の誘導部材支持部43bに当接して、上下方向の位置が決定される、(iii)誘導部材3の流出口側係合部32aと検査手段4の添加穴側係合部43aとが係合して、誘導部材3と検査手段4との閉鎖的な連結状態が固定される、という(i)〜(iii)の動作が生じる。
【0054】
次に、
図7(b)に示すように、検査手段4と連結された誘導部材3の抽出液流入口31を、容器2の底部22の収容領域22bに収容する。具体的には、誘導部材3の収容領域22bを抽出液流入口31にかぶせるように押し込むことにより取付けされる。
【0055】
次に、
図7(c)に示すように、抽出容器2側から誘導部材3側の方向にさらに力を加えると、抽出液誘導体33の尖端部33aが抽出容器2の封止部22aに到達し、この尖端部33aが封止部22aの破断部22eを破って貫通孔25を形成する。これにより、抽出容器2と誘導部材3とが連通し、抽出容器2に収容されていた抽出液6が貫通孔25又は貫通孔25から突出している抽出液誘導体33を通じて誘導部材3の抽出液流入口31に流入する。また、抽出容器2の端部22dが誘導部材3の鍔部36に当接すると共に、抽出容器2の底部側係合部22cと誘導部材3の流入口側係合部31aとが係合する。これにより、抽出容器2と誘導部材3とが密封的に連通するため、誘導部材3に流入する抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。検査用装置1の使用方法に関するその他の説明は、上述した使用方法の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0056】
次に、
図8及び
図9を参照し、本発明の第二の実施形態について説明する。
【0057】
本発明の第二の実施形態に係る検査用装置10は、第一の実施形態に係る検査用装置1とは抽出容器20の底部122、誘導部材30の抽出液流入口131、検査手段4の添加穴143の構成が一部異なっているほかは、第一の実施形態と同様の構成を備えている。なお、本実施形態において、第一の実施形態と同じ構成については、同じ参照符号を使用して説明する。
【0058】
図8(a)に基づき、本実施形態の抽出容器20について説明する。抽出容器20の底部122は、底部側の端部122dから所定距離離れた位置に封止部122aが備えられている。この封止部122aは、後述する誘導部材30の抽出液流入口131に設けられた凸状爪部131bによって貫通孔125を容易に形成することが可能なように、凸状爪部131bが当接する部分、本実施形態では封止部122aの周端部にその部分のみを薄く形成した円状の破断部122fを有している。底部122の封止部122aと端部122dとの間には、誘導部材30の抽出液流入口131を収容するための収容領域122bが設けられている。収容領域122bの内壁には、抽出液流入口131の外壁に設けられた流入口側係合部131aと係合する底部側係合部122cが備えられている。
【0059】
次に、
図8(b)に基づき、本実施形態の誘導部材30について説明する。誘導部材30には、抽出液流入口131の一端側に凸状爪部131bが配設されている。誘導部材30を抽出容器20の端部122dから収容領域122bに押し込むことにより、抽出容器20の底部122に誘導部材30の抽出液流入口131が嵌入され、抽出容器20の封止部122aの破断部122fを凸状爪部131bが押圧して貫通孔が形成される。なお、貫通孔をより確実に形成させるために、誘導部材30の凸状爪部131bは、先端側の肉薄部分と基端側(抽出液流入口側)の肉厚部分とを備え、先端側の肉薄部分と、基端側の肉厚部分との間に段差が形成されていることも好ましい。このような構成とした場合、凸状爪部131bの段差が抽出容器20の封止部122aに当接しその破断部122f等に変形を生じさせることから、この凸状爪部131bで形成された貫通孔25の近傍に隙間が形成されやすくなり、この隙間により迅速に抽出液6が誘導部材30に流入する。
【0060】
次に、
図8(c)に基づき、本実施形態の検査手段40について説明する。本実施形態において、検査手段40のハウジング142の表面には、抽出液6を添加するための略円形の添加穴143が設けられている。本実施形態では、前述した第一の実施形態と異なり、添加穴143が設けられたハウジング142の表面は平坦に構成され、ハウジング142の厚み(高さ)を大きく設計することによって、ハウジング142の内部に添加穴壁143cやその他係合部等を有する構造となっている。それゆえ、添加穴243の周方向には下向き(テストストリップ141が収容されている方向)に略垂直に形成された添加穴壁143cが設けられている。この添加穴壁143cは誘導部材30を支持固定すると共に、抽出液6の漏れを防ぐことができるように形成されている。添加穴壁143cの内壁には誘導部材30の抽出液流出口131を添加穴143に挿入し、流出口側端部133bをテストストリップ141に当接させた際に、その当接状態を安定的に保つための添加穴側係合部143aが備えられている。具体的には、添加穴壁143cの内壁には、周方向に凸状の添加穴側係合部143aが連続して備えられている。この添加穴側係合部143aは、誘導部材30の流出口側係合部132aと係合して、両者を確実に固定し連結する。この添加穴側係合部143aは、誘導部材30の流出口側係合部132aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、添加穴143の内壁に周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0061】
また、上述した添加穴側係合部143aの上側(ハウジング142の表面方向)の添加穴壁143cの内壁には、周方向に凸状の誘導部材支持部143bが略等間隔に4箇所備えられている。この誘導部材支持部143bの段状部分は前述した誘導部材30の鍔部136を支持固定して、誘導部材30が検査手段40のテストストリップ141に当接する際の上下方向の位置を決定している。そのため、誘導部材30の抽出液誘導体133からなる突出部134がテストストリップ141に当接した状態を保つことができる。本実施形態においては、誘導部材支持部143bは、添加穴側係合部143aから上方向に連続して伸長した凸状の段状部分から構成されているが、添加穴側係合部143aと誘導部材支持部143bとを別々に形成してもよい。また、誘導部材30の鍔部136が添加穴143の誘導部材支持部143bに当接することにより、誘導部材30と検査手段40とがさらに密封され、抽出液6の漏れを防ぐことができる。
【0062】
抽出容器20、誘導部材30及び検査手段40の構成についてのその他の説明は、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。また、検査用装置10を構成する検体採取具5の構成についても、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0063】
次に、
図9に基づいて、本実施形態に係る検査用装置10の使用方法について説明する。なお、
図9においては、検体採取具5は省略されている。
【0064】
検査用装置10を使用するにあたっては、検体採取具5で検体を採取し、検体を抽出容器20内部の抽出液6に懸濁させたのち、
図9(a)に示すように、抽出容器20の底部122の収容領域122bに誘導部材30の抽出液流入口131側を押し込んで取付けする。この段階では、抽出容器20と誘導部材30とは連通しておらず、仮嵌めされた状態である。
【0065】
次に、
図9(b)に示すように、抽出容器20に仮嵌めされた誘導部材30の抽出液流出口132側を検査手段40のハウジング142の添加穴143に挿入する。抽出容器20の胴部を持ち、誘導部材30を添加穴143の内部に挿入していくと、誘導部材30の流出口側端部133bが検査手段4のテストストリップ141のサンプルパッド141aに当接する。さらに抽出容器20側から検査手段40側の方向に力を加えると、
図9(b)に示すように、(i)抽出液誘導体133が誘導部材30の筒内部を抽出液流入口131側(上側)に摺動する、(ii)誘導部材30の流出口側係合部132aと検査手段40の添加穴側係合部143aとが係合して、誘導部材30と検査手段40とが閉鎖的に連結される、(iii)誘導部材30の鍔部136が検査手段40の誘導部材支持部143bに当接して、上下方向の位置が決定される、という(i)〜(iii)の動作が生じる。
【0066】
図9(c)に示すように、さらに、抽出容器20の胴部側から検査手段40側の方向に力を加えると、抽出容器20の封止部122aの破断部122fが抽出液流入口131に設けられている凸状爪部131bに押圧され、凸状爪部131bが破断部122fを破って貫通孔125を形成する。これにより、抽出容器20と誘導部材30とが連通し、抽出容器20に収容されていた抽出液6が貫通孔125を通じて誘導部材30の抽出液流入口131に流入する。また、抽出容器20の端部122dが誘導部材30の鍔部136に当接すると共に、抽出容器20の底部側係合部122cと誘導部材30の流入口側係合部131aとが係合する。これにより、抽出容器20と誘導部材30とが密封的に連通するため、抽出液流入口131に流入する抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。抽出液流入口131に流入した抽出液6は、誘導部材30の筒内部に収容されている抽出液誘導体133に吸収され、毛管作用により抽出液誘導体133の流出口側端部133bに移動する。抽出液誘導体133の流出口側端部133bは検査手段40のテストストリップ141のサンプルパッド141aに当接しているため、抽出液6はこの誘導部材30の流出口側端部133bを通じてサンプルパッド141aに移動する。このように、抽出液6を滴下することなく、テストストリップ141に簡単かつ確実に抽出液6を閉鎖的に導入することができる。
【0067】
次に、
図10に基づいて、本実施形態に係る検査用装置10の他の使用方法について説明する。なお、
図10においては、検体採取具5は省略されている。
【0068】
検査用装置10の他の使用方法について、前述した使用方法と異なる部分を説明する。本実施形態の検査用装置10を使用する際には、
図10(a)に示すように、抽出容器20と誘導部材30とを係合させる前に、検査手段40のハウジング142の添加穴143の内部に誘導部材30を挿入し、抽出液流出口132を係合させておいてもよい。具体的には、誘導部材30を添加穴143に挿入すると、誘導部材30の流出口側端部133bが検査手段40のテストストリップ141のサンプルパッド141aに当接する。そこで、誘導部材30の流出口側係合部132aが添加穴143の添加穴側係合部143aに嵌り込むよう、誘導部材の抽出液流入口131側から検査手段40側の方向に力を加えると、
図10(a)に示すように、(i)抽出液誘導体133が誘導部材30の筒内部を抽出液流入口131側(上側)に摺動する、(ii)誘導部材30の鍔部136が検査手段40の誘導部材支持部143bに当接して、上下方向の位置が決定される、(iii)誘導部材30の流出口側係合部132aと検査手段40の添加穴側係合部143aとが係合して、誘導部材30と検査手段40との閉鎖的な連結状態が固定される、という(i)〜(iii)の動作が生じる。
【0069】
次に、
図10(b)に示すように、検査手段40と連結された誘導部材30の抽出液流入口131を、容器20の底部122の収容領域122bに収容する。具体的には、誘導部材30の収容領域122bを抽出液流入口131にかぶせるように押し込むことにより取付けされる。
【0070】
次に、
図10(c)に示すように、抽出容器20側から誘導部材30側の方向にさらに力を加えると、誘導部材30の抽出液流入口131に設けられている凸状爪部131bが、抽出容器20の封止部122aの破断部122fを押圧して突き破り、封止部122aに貫通孔125を形成する。これにより、抽出容器20と誘導部材30とが連通し、抽出容器20に収容されていた抽出液6が貫通孔125を通じて誘導部材30の抽出液流入口131に流入する。また、抽出容器20の端部122dが誘導部材30の鍔部136に当接すると共に、抽出容器20の底部側係合部122cと誘導部材30の流入口側係合部131aとが係合する。これにより、抽出容器20と誘導部材30とが密封的に連通するため、誘導部材30に流入する抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。検査用装置10の使用方法に関するその他の説明は、上述した第一の実施態様の使用方法の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0071】
次に、
図11及び
図12を参照し、本発明の第三の実施形態について説明する。
【0072】
本発明の第三の実施形態に係る検査用装置100は、第一の実施形態に係る検査用装置1とは抽出容器200の開口部223及び底部222、誘導部材300の抽出液流入口231及び検査手段400の添加穴243の構成が一部異なっているほかは、第一の実施形態と同様の構成を有している。
【0073】
図11(a)に基づき、抽出容器200について説明する。本実施形態の抽出容器200は、胴部221と胴部221の軸方向の一端側が封止された底部222と、他端側が開口した開口部223を有している。本実施形態においては、抽出容器200と誘導部材300とは、抽出容器200の開口部223を通じて連通するため、抽出容器200の底部222は、他の実施形態とは異なり、貫通孔等が形成可能なように形成されていない。他方、開口部223近傍の内壁には、後述する誘導部材300の抽出液流入口231の外壁に設けられた流入口側係合部231aと係合する開口部側係合部223aが設けられている。本実施形態では、
図11(a)に示すように、開口部側係合部223aとして、開口部223近傍の内壁に周方向に沿って連続する凹部が設けられている。この開口部側係合部223aは、後述する誘導部材300の流入口側係合部231aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、開口部223近傍の内壁又は外壁において、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0074】
次に、
図11(b)に基づき、誘導部材300について説明する。本実施形態の誘導部材300は、一端側に抽出液流入口231を有し、他端側に抽出液流出口232を有し、内部には、抽出液誘導体233が収容されている。抽出液流入口231は、抽出容器200の開口部223と密封的に係合できるように形成されており、抽出液流入口231の外壁には、抽出容器2の開口部側係合部223aと係合する流入口側係合部231aが備えられている。本実施形態では、
図11(b)に示すように、流入口側係合部231aとして、抽出液流入口231近傍の外壁に周方向に沿って連続する凸部が設けられている。この流入口側係合部231aは、抽出容器200の開口部側係合部223aと前述したように係合して、両者を確実に固定し、密封的に連結する。この流入口側係合部231aは、抽出容器200の開口部側係合部223aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、抽出液流入口231の内壁又は外壁において、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0075】
また、誘導部材300の筒体の外壁には、周方向に沿って鍔部236が形成されている。この鍔部236は、後述する検査手段400の添加穴243の添加穴壁243cの上端部に設けられた誘導部材支持部243bに支持されて、抽出液誘導体233からなる突出部234が検査手段400に当接した際に、その当接状態を保つように機能する。それゆえ、抽出液誘導体233の毛管作用が安定的に機能し、抽出液6が効率よく検査手段400に添加される。さらに、検査手段400の添加穴243に誘導部材300の抽出液流出口232が挿入された際には、この鍔部236に誘導部材支持部243bが当接し、密封されるため、誘導部材300と検査手段400とは密封的に連通され、抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。
【0076】
上述した抽出液流入口231と抽出液流出口232とを連通する筒内部には、棒状の抽出液誘導体233が収容されている。本実施形態においては、抽出液誘導体233は略円柱状に形成されている。抽出液誘導体233の抽出液流出口232側の流出口側端部233bは、抽出液流出口232から突出するように配置された突出部234を構成している。抽出液誘導体233は、筒内部に設けられた誘導体保持部235で係止され、誘導部材300の筒内部から脱落しないように配置されているが、抽出液流出口232側から抽出液流入口231側に力が加えられた際には、筒内部を摺動できるように設計されている。本実施形態では、誘導体保持部235は、誘導部材300の筒内壁に周方向に沿って連続する凸部状に形成され、誘導体保持部235の部分は筒内径が少し狭くなっている。このように、誘導体保持部235は、流出口側端部233bに一定の力が加えられた際には抽出液誘導体233が筒内部を摺動できる程度に、抽出液誘導体233を誘導部材300の筒内部に係止するように構成されている。本実施形態においては、抽出液誘導体233には貫通孔を形成させる機能は必要ないため、抽出液誘導体233の端部については、両端部とも略平坦に構成されている。しかし、抽出液6を検査手段400に移動させることができれば、いかなる形状であってもよい。
【0077】
次に、
図11(c)に基づき、検査手段400について説明する。本実施形態において、検査手段400のハウジング242の表面には、抽出液6を添加するための添加穴243が設けられている。添加穴243は、穴の周方向に略垂直に形成された添加穴壁243cを有しており、誘導部材300を支持固定すると共に、抽出液6の漏れを防ぐことができるように形成されている。添加穴壁243cの内壁には誘導部材300の抽出液流出口231を添加穴243に挿入し、流出口側端部233bをテストストリップ241に当接させた際に、その当接状態を安定的に保つための添加穴側係合部243aが備えられている。具体的には、添加穴壁243cの内壁には、周方向に凹状の添加穴側係合部243aが連続して備えられている。この添加穴側係合部243aは、誘導部材300の流出口側係合部232aと係合して、両者を確実に固定し連結する。この添加穴側係合部243aは、誘導部材300の流出口側係合部232aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、添加穴243の内壁又は外壁において、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0078】
また、上述した添加穴壁243cの上端部分は誘導部材支持部243bとして作用し、前述した誘導部材300の鍔部236を支持固定して、誘導部材300の検査手段400のテストストリップ241に当接する際の上下方向の位置を決定している。そのため、誘導部材300の抽出液誘導体233からなる突出部234がテストストリップ241に当接した際に、流出口側端部233bがテストストリップ241に当接した状態を保つことができる。また、誘導部材300の鍔部236が添加穴243の誘導部材支持部243bに当接することにより、誘導部材300と検査手段400とが密封され、抽出液6の漏れを防ぐことができる。
【0079】
抽出容器200、誘導部材300及び検査手段400の構成についてのその他の説明は、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。また、検査用装置100を構成する検体採取具5の構成についても、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0080】
次に、
図12に基づいて、本実施形態に係る検査用装置100の使用方法について説明する。なお、
図12においては、検体採取具5は省略されている。
【0081】
検査用装置100を使用するにあたっては、検体採取具5で検体を採取し、検体を抽出容器200内部の抽出液6に懸濁させる。なお、本実施形態においては、抽出容器200の開口部223には、誘導部材300を装着させるため、抽出容器200内にはキャップ部5を備えた検体採取具5は収容されないが、キャップ部5を有さない検体採取具を収容してもよい。次に、
図12(a)に示すように、抽出容器200の開口部223に誘導部材300の抽出液流入口231を押し込んで係合させる。これにより、抽出容器200の開口部側係合手段231と誘導部材300の流入口側係合手段231とが係合して、抽出容器200と誘導部材300とが密封的に接続され、連通する。このように、抽出容器200と誘導部材300とが密封的に連通するため、抽出液流入口231に流入する抽出液6の外部環境への漏れを防ぐことができる。次に、
図12(b)に示すように、誘導部材300の抽出液流出口232を下向きに向けると、抽出容器200に収容されていた抽出液6が誘導部材300の抽出液流入口231に流入する。抽出液流入口231に流入した抽出液6は、誘導部材300の筒内部に収容されている抽出液誘導体233に吸収され、毛管作用により抽出液誘導体233の流出口側端部233bに移動する。
【0082】
次に、
図12(c)に示すように、抽出容器200と接続された誘導部材300の抽出液流出口232を添加穴243に挿入すると、誘導部材300の流出口側端部233bが検査手段400のテストストリップ241のサンプルパッド241aに当接する。これにより、抽出液6はこの誘導部材300の流出口側端部233bを通じてサンプルパッド241aに簡単に移動する。このように、抽出液6を滴下することなく、テストストリップ241に簡単かつ確実に抽出液6を閉鎖的に導入することができる。また、抽出容器200側から検査手段400側の方向に力を加えて嵌めこむことにより、(i)誘導部材300の鍔部236が検査手段400の誘導部材支持部243bに当接して、上下方向の位置が固定される、(ii)誘導部材300の流出口側係合部232aと検査手段400の添加穴側係合部243aとが係合して、誘導部材300と検査手段400との閉鎖的な連結状態が固定される、という動作が生じる。これにより、検査手段400と誘導部材300とが密封的に連結し、外部環境に抽出液6が漏れることなく、検査手段に抽出液が添加される。検査用装置100の使用方法に関するその他の説明は、上述した第一の実施態様の使用方法の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0083】
次に、
図13及び
図14を参照し、本発明の第四の実施形態について説明する。
【0084】
本発明の第四の実施形態に係る検査用装置101は、第三の実施形態に係る検査用装置100とは誘導部材301の誘導体保持部335を含めた筒体の内壁の構造及び検査手段401の添加穴343の構造が一部異なっているほかは、第三の実施形態と同様の構成を有している。
【0085】
まず、
図13に基づき、誘導部材301について説明する。本実施形態の誘導部材301は、一端側に抽出液流入口331を有し、他端側に抽出液流出口332を有し、内部には抽出液誘導体333が収容されている。また、誘導部材301の筒体の外壁には、周方向に沿って鍔部336が形成されている。この鍔部336は、本実施形態においては、抽出容器200の開口部223と誘導部材301の抽出液流入口331とが係合した際、この鍔部336の上側(抽出容器200方向)と抽出容器200の開口部に設けられた段状部分とが当接し、抽出容器200と誘導部材301とがより密封的に連通されるため、抽出液6の外部環境への漏れを防ぐ役割を果たしている。
【0086】
誘導部材301における抽出液流入口331と抽出液流出口332との間の筒内部には、棒状の抽出液誘導体333が収容されている。抽出液誘導体333は、筒内部に設けられた誘導体保持部335及び誘導体支持部337により係止され、誘導部材301の筒内部から脱落しないように配置されているが、抽出液流出口332側から抽出液流入口331側に力が加えられた際には、筒内部を摺動できるように設計されている。
図13(b)〜(e)に示すように、本実施形態では、誘導体保持部335は、誘導部材301の抽出液流出口332側の筒内壁に周方向に沿って連続する凸部状に形成されている。そのため、誘導体保持部335は、抽出液誘導体333を周囲から押圧して保持できるよう筒内径が少し狭くなっている。さらに、本実施形態においては、
図13(a)、(b)及び(d)に示すように、誘導体支持部337が誘導体保持部335よりも上側(抽出液流入口331側)の位置に筒内壁に沿って形成された凸状曲面として形成され、この凸状曲面は周方向に一定の間隔で4つ設けられている。
図13(a)及び(b)に示すように、抽出液誘導体333は、誘導体支持部337の4つの凸状曲面により支持される。これにより、誘導部材301内部に収容された抽出液誘導体333の抽出液流入口331側でのぐらつきが抑えられ、安定して抽出液誘導体333が係止される。また、抽出液誘導体333が誘導部材301の筒内部を摺動する際には、誘導体支持部337の凸状曲面が摺動方向を案内するため、抽出液誘導体333が略中心軸に沿って摺動される。誘導体支持部337は、抽出液誘導体333を支持可能な構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、誘導部材301の筒内壁において、周方向に所定の間隔で設けられた凸状平面、凸状溝若しくはあらゆる形状の凸部又は周方向に沿って環状に連続する凸部等の構造が挙げられる。
【0087】
さらに、本実施形態においては、
図13(a)、(d)及び(e)に示すように、誘導部材301の誘導体保持部335に、抽出液誘導体333に空気を流通させるための空気流通溝339を設けている。これにより、抽出液誘導体333に空気が供給され、抽出液誘導体333内部の圧力も調整されるため、抽出液誘導体333の抽出液6の吸収及び検出手段401への抽出液6の移動がより効率よく行われる。本実施形態においては、空気流通溝339は、
図13(a)、(d)及び(e)に示すように、誘導体支持部337が形成されていない間隙338の下側(抽出液流出口332側)の誘導体保持部335に、断面が略三角形状の略垂直方向に伸長する凹溝として形成されており、周方向に一定の間隔で4つ設けられている。この空気流通溝339は、
図13(a)及び(e)に示すように、略三角形状の頂点部分がわずかに切り取られたような形状をしており、この切り取られた頂点部分において抽出液誘導体333と連通している。この空気流通溝339は、抽出液6の液滴を空気流通溝339の内部に入り込ませず、実質的に空気のみを流通させることができるよう、抽出液誘導体333と連通する部分の溝の幅長さが設計されている。具体的には、この空気流通溝339の抽出液誘導体333と連通する側の溝の幅長さは、0.15mm〜0.25mmが好ましく、0.19mm〜0.22mmであることがより好ましい。この空気流通溝339は、誘導部材支持部337が設けられていない間隙338部分と連通しており、抽出液流出口332側から空気流通溝339を介して流入した空気は抽出液誘導体333に供給されるか、間隙338を介して抽出液流入口331側に流通する。これにより、抽出液6は抽出液誘導体333を介してスムーズに検出手段401に移動する。なお、空気流通溝339は、抽出液6の液滴を溝の内部に入り込ませず、実質的に空気のみを流通させることができる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、平面視で略多角形状、略円形状、略扇形状若しくは不定形状の溝又は複数本のリブ等の構造が挙げられる。
【0088】
次に、
図14に基づき、検査手段401について説明する。検査手段401のハウジング342の上面には、抽出液6を添加するための添加穴343が設けられている。添加穴343は、穴の周方向に略垂直に形成された添加穴壁343cを有しており、誘導部材301を支持固定すると共に、抽出液6の漏れを防ぐことができるように形成されている。添加穴壁343cの内壁には誘導部材301の抽出液流出口332を添加穴343に挿入し、流出口側端部333bをテストストリップ341に当接させた際に、その当接状態を安定的に保つための添加穴側係合部343aが備えられている。具体的には、添加穴壁343cの内壁には、周方向に凹状の添加穴側係合部343aが連続して備えられている。この添加穴側係合部343aは、誘導部材301の流出口側係合部332aと係合して、両者を確実に固定し連結する。また、上述した添加穴側係合部343aの下側(添加穴343の底方向)の内壁には、周方向に連続して張り出した環状の誘導部材支持部343bが設けられている。
図14(b)に示すように、この誘導部材支持部343bの上面に前述した誘導部材301の抽出液流出口332側の端部が当接し、誘導部材301が検出手段401に支持固定される。
【0089】
さらに、本実施形態においては、
図14(a)に示すように、添加穴343の誘導部材支持部343bに、誘導部材301の筒内部に空気を流通させるためのスリット343d及び添加穴側凹溝343eを設けている。これにより、抽出液誘導体333に空気が供給され、抽出液誘導体333内部の圧力も調整されるため、抽出液誘導体333の抽出液6の吸収及び検出手段401への抽出液6の移動がさらに効率よく行われる。本実施形態においては、スリット343dは、環状に形成されている誘導部材支持部343bを上下方向に貫通する細い切れこみとして形成されており、添加穴343の中心から互いに対向する位置に2箇所設けられている。また、添加穴側凹溝343eは、誘導部材支持部343b上に形成された凹溝として形成されており、環状に形成された誘導部材支持部343bの表面上に6箇所の凹溝が放射状に設けられている。これらにより、検出手段401の添加穴343と密封的に係合した誘導部材301に対し、検出手段401の誘導部材支持部343bと誘導部材301の抽出液流出口332側との間に空気が通ることのできる間隙が形成される。そのため、スリット343d及び添加穴側凹溝343eを介して誘導部材301の流出口332側に流入した空気は抽出液誘導体333に供給されるか、抽出液流入口331側に流通する。これにより、抽出液6が抽出液誘導体333を介してスムーズに検出手段401に移動する。なお、スリット343dは、実質的に空気を流通させることができる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、誘導部材支持部343b上に形成された貫通孔等であってもよい。同様に、添加穴側凹溝343eも環状に形成された凹部等であってもよい。
【0090】
誘導部材301及び検査手段401の構成並びに使用方法についてのその他の説明は、上述した第三の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。また、検査用装置101を構成する抽出容器200及び検体採取具5の構成並びに使用方法についても、上述した第三の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0091】
次に、
図15及び
図16を参照し、本発明の第五の実施形態について説明する。
【0092】
本発明の第五の実施形態に係る検査用装置102は、第一の実施形態に係る検査用装置1とは誘導部材302の誘導体保持部335を含めた筒体の内壁の構造及び検査手段401の添加穴443の構成が一部異なっているほかは、第一の実施形態と同様の構成を有している。
【0093】
図15に基づき、誘導部材302について説明する。本実施形態の誘導部材302は、一端側に抽出液流入口431を有し、他端側に抽出液流出口432を有し、内部には尖端部433aを有する抽出液誘導体433が収容されている。また、誘導部材302の筒体の外壁には、周方向に沿って鍔部436が形成されている。この鍔部436は、本実施形態においては、抽出容器2の底部22の収容領域22bに誘導部材302の抽出液流入口431が嵌入した際、この鍔部436の上側(抽出容器2方向)に抽出容器2の端部22dが当接し、抽出容器2と誘導部材302とは密封的に連通されるため、抽出液6の外部環境への漏れを防ぐ役割を果たしている。
【0094】
誘導部材302の抽出液流入口431と抽出液流出口432とを連通する筒内部には、抽出液誘導体433が収容されている。抽出液誘導体433は、筒内部に設けられた誘導体保持部435及び誘導体支持部437により係止され、誘導部材302の筒内部から脱落しないように配置されているが、抽出液流出口432側から抽出液流入口431側に力が加えられた際には、筒内部を摺動できるように設計されている。
図15(b)〜(d)に示すように、本実施形態では、誘導体保持部435は、誘導部材302の抽出液流出口432側の筒内壁に周方向に沿って連続する凸部状に形成されている。そのため、誘導体保持部435は、抽出液誘導体433を周囲から押圧して保持できるよう筒内径が少し狭くなっている。さらに、本実施形態においては、
図15(a)、(b)、(d)及び(e)に示すように、誘導体支持部437が誘導体保持部435よりも上側(抽出液流入口431側)の位置に筒内壁に沿って形成された凸状曲面として形成され、この凸状曲面は周方向に一定の間隔で4つ設けられている。
図15(a)及び(b)に示すように、抽出液誘導体433は、誘導体支持部437の4つの凸状曲面により支持される。これにより、誘導部材302内部に収容された抽出液誘導体433の抽出液流入口431側でのぐらつきが抑えられ、安定して抽出液誘導体433が係止される。また、抽出液誘導体433が誘導部材302の筒内部を摺動する際には、誘導体支持部437の凸状曲面が摺動方向を案内するため、抽出液誘導体433が略中心軸に沿って摺動される。誘導体支持部437は、抽出液誘導体433を支持可能な構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、誘導部材302の筒内壁において、周方向に所定の間隔で設けられた凸状平面、凸状溝若しくはあらゆる形状の凸部又は周方向に沿って環状に連続する凸部等の構造が挙げられる。
【0095】
また、本実施形態においては、
図15(a)及び(d)〜(f)に示すように、誘導部材302の誘導体保持部435に、抽出液誘導体433に空気を流通させるための空気流通溝439を設けている。これにより、抽出液誘導体433に空気が供給され、抽出液誘導体433内部の圧力も調整されるため、抽出液誘導体433の抽出液6の吸収及び検出手段401への抽出液6の移動がより効率よく行われる。本実施形態においては、空気流通溝439は、
図15(a)及び(d)〜(f)に示すように、誘導体支持部437が形成されていない間隙438の下方(抽出液流出口432側)の誘導体保持部435に、断面が略三角形状の略垂直方向に伸長する凹溝として形成されており、周方向に一定の間隔で4つ設けられている。この空気流通溝439は、
図15(a)及び(f)に示すように、略三角形状の頂点部分がわずかに切り取られたような形状をしており、この切り取られた頂点部分において抽出液誘導体433と連通している。この空気流通溝439は、抽出液6の液滴を空気流通溝439の内部に入り込ませず、実質的に空気のみを流通させることができるよう、抽出液誘導体433と連通する部分の溝の幅長さが設計されている。具体的には、この空気流通溝439の抽出液誘導体433と連通する側の溝の幅長さは、0.15mm〜0.25mmが好ましく、0.19mm〜0.22mmであることがより好ましい。この空気流通溝439は、誘導部材支持部437が設けられていない間隙438部分と連通しており、抽出液流出口432側から空気流通溝439を介して流入した空気は抽出液誘導体433に供給されるか、間隙438を介して抽出液流入口431側に流通する。これにより、抽出液6は抽出液誘導体433を介してスムーズに検出手段401に移動する。なお、空気流通溝439は、抽出液6の液滴を溝の内部に入り込ませず、実質的に空気のみを流通させることができる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、平面視で略多角形状、略円形状、略扇形状若しくは不定形状の溝又は複数本のリブ等の構造が挙げられる。
【0096】
さらに、本実施形態においては、
図15(a)〜(e)に示すように、誘導部材302の筒内部の内壁の誘導体支持部437が形成されていない間隙438部分に、抽出液誘導体433にさらに空気を流通させるための空気ガイド溝440を設けている。これにより、誘導部材302の筒内部において、間隙438部分における空気の流通がなされるため、抽出液誘導体433の抽出液6の吸収及び検出手段401への抽出液6の移動がより効率よく行われる。本実施形態においては、空気ガイド溝440は、
図15(a)〜(e)に示すように、誘導部材302の抽出液流入口431の端部から誘導部材保持部435の上端に亘り、略垂直方向に伸長するW字状の凸溝として形成されており、周方向に一定の間隔で4つ設けられている。また、この空気ガイド溝440は、誘導部材保持部435に形成された空気流通溝439とは溝が連続しない位置に設けられている。この空気ガイド溝440は、W字状の溝の間に形成された小さな隙間に実質的に空気のみを流通させることができるよう、溝の隙間の幅長さが設計されている。具体的には、この空気ガイド溝440の空気を流通させる隙間の幅長さは、0.05mm〜0.15mmが好ましく、0.08mm〜0.12mmであることがより好ましい。この空気ガイド溝440により、抽出液流出口432側から空気流通溝439を介して流入した空気が、この空気ガイド溝440を介して抽出液流入口331側に流れ、抽出液誘導体433に空気を流通させる。これにより、抽出液6は抽出液誘導体433を介してスムーズに検出手段401に移動する。なお、空気ガイド溝440は、抽出液6の液滴をガイド溝の間の隙間に入り込ませず、実質的に空気のみを流通させることができる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、平面視で略多角形状、略円形状、略扇形状若しくは不定形状の溝又は複数本のリブ等の構造が挙げられる。
【0097】
また、本実施形態においては、
図15(d)に示すように、誘導部材302の抽出液流出口432には、誘導部材302と検出手段401とを係合させた際に抽出部材302の筒内部に空気を確実に取り込むための流出口側凹溝432bが設けられている。これにより、使用時において、抽出部材302の筒内部に空気が確実に供給されて、抽出液誘導体433に空気が供給され、抽出液誘導体433内部の圧力等も調整されるため、抽出液誘導体433の抽出液6の吸収及び検出手段401への抽出液6の移動がさらに効率よく行われる。本実施形態においては、流出口側凹溝432bは、誘導部材302の抽出液流出口432の端部底面に形成された凹溝として形成されており、抽出液流出口432の端部底面上に4箇所の凹溝が一定間隔で設けられている。形成された凹溝の深さは空気が流入できる深さであればよく、本実施形態では0.25mmで形成されている。
【0098】
次に、
図16に基づき、検査手段401について説明する。検査手段401は、第四の実施形態に係る検査手段401と同様の構成を有している。本実施形態においては、誘導部材302の抽出液流出口432に流出口側凹溝432bが設けられていることから、検出手段401と誘導部材302とを係合させた際、検出手段401の誘導部材支持部343bと誘導部材302の抽出液流出口432側との間に空気が通ることのできる間隙が確実に形成される。そのため、検出手段401のスリット343d及び添加穴側凹溝343eを介して誘導部材302の抽出液流出口432に空気が安定的に流入し、流入した空気は空気流通溝439を介して抽出液誘導体433に供給されるか、空気ガイド溝440を介して抽出液流入口431側に流通する。これにより、抽出液6が抽出液誘導体433を介してスムーズに検出手段401に移動する。
【0099】
誘導部材302の構成についてのその他の説明は、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。また、検査手段401のその他の説明は、上述した第四の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。また、検査用装置102を構成する抽出容器2及び検体採取具5の構成についても、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0101】
以下実施例及び比較例では、検査手段のテストストリップとして、
図16に示す検査手段401で用いたテストストリップ341の構造に合わせた
図17に示す構造のイムノクロマト法を利用したラテラルフロータイプのテストストリップ341を用いた。具体的には、テストストリップ(幅4mm×長さ77mm)は、
図17に示すように、バッキングシートBS(幅4mm×長さ77mm、GL−187、ローマン社製品)の上に、テストストリップを構成する各シート片が所定の位置になるように重ねて作製した。シート片としては、サンプルパッド341a(幅4mm×長さ35mm、GFDX203000、メルクミリポア社製品)、コンジュゲートパッド341b(幅4mm×長さ10mm、GFDX203000、メルクミリポア社製品)、メンブレン341c(幅4mm×長さ25mm、ニトロセルロースメンブレンHF180、メルクミリポア社製品)及び吸収パッド341d(幅4mm×長さ25mm、ワットマン濾紙740−E、GEヘルスケア バイオサイエンス社製品)を用いた。試料液又は抽出液の添加位置Sはテストストリップの一端から10mmの位置とし、当該添加位置SからコントロールラインCLまでの距離が36mmとなるようにメンブレン341cにコントロールラインCLを設けた。コントロールラインCLは、抗マウスIgGヤギ抗体(フィッツジェラルドインダストリーズ社製品)をメンブレン341c上に線状に塗布することにより形成した。また、コンジュゲートパッド341bとしては、予め、金コロイド(径60nm、BBインターナショナル社製品、EM.GC60)でインフルエンザIgGマウス抗体(フィッツジェラルドインダストリーズ社製品)を標識させた金コロイド標識抗体を吸着させたものを用いた。
【0102】
[実施例1]
図16に示す検査用装置102を用い以下の試験を行った。抽出容器2に50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)を350μL入れた。
図1に示す検体採取具5の検体採取部51で以下表1に示す検体をぬぐって採取し、
図2に示すように検体採取具5の軸部52ごと抽出容器2内に収容して検体を採取した検体採取部52をTris−HCl緩衝液に浸漬させた。誘導部材302の抽出液誘導体433で抽出容器2の底部22に貫通孔を形成し、抽出液誘導体433を介して検査手段401のテストストリップ341に抽出液を添加した。抽出液誘導体433としては、主にポリエステル繊維からなる繊維束構造体(気孔率43%、直径3.5mm×長さ25mm、ENKR−14−243、エッセントラポーラステクノロジーズ社製品)を用いた。なお、試験区2〜4の検体は、試験直前に被検者2名から採取した鼻かみ検体であり、試験区3は、試験区2と同じ検体を検体採取具で2回採取して検体濃度を高めたものである。また、試験区5〜7の検体は市販の鼻汁検体であるが、試験区2〜4の検体と比べて粘性が低かった。抽出液添加直後からテストストリップ上のコントロールラインCLの視認が開始されるまでの時間、すなわち、添加位置Sに添加された抽出液がコントロールラインCLに到達するまでの時間を測定した。結果を以下表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
上記実施例1の結果によれば、コントロールラインCLの視認が開始されるまでの時間は、抽出液誘導体を介して抽出液がテストストリップに導入されるにもかかわらず、略1分以内と短く、スムーズに抽出液が誘導部材からテストストリップに導入されることがわかった。また、粘性を有していない試験区1の緩衝液と、粘性を有している試験区2〜7の検体抽出液とを比較すると、検体濃度が高く粘性が高い試験区3を除いては、CL視認開始時間には大きな差はみられなかった。また、試験終了後に繊維束構造体を誘導部材から取り出して観察したところ、試験区2〜4で用いられた繊維束構造体の周囲に粘性物質が付着しているのが認められた。このことから、繊維束構造体は抽出液中の粘性物質を濾過しつつ、抽出液を導入する作用を有することがわかった。また、試験終了後に検査手段からテストストリップを取り出して観察したところ、以下に示す比較例とは異なり、抽出液の溢れは認められなかった。これは、誘導部材の抽出液誘導体が吸収作用を有するため、余剰の抽出液が抽出液誘導体中に留まったためと考えられる。
【0105】
[比較例]
図18に示す従来の検査用装置を用い、以下表2に示す試料液をピペットを用いて検査手段のテストストリップ上に直接滴下して添加した。試料液添加直後からテストストリップ上のコントロールラインCLの視認が開始されるまでの時間、すなわち、添加位置Sに添加された試料液がコントロールラインCLに到達するまでの時間を測定した。結果を以下表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
上記比較例の結果によれば、コントロールラインCLの視認が開始されるまでの時間は、略30秒以内であった。また、試験終了後に検査手段からテストストリップを取り出して観察したところ、余剰の試料液がテストストリップから溢れているのが認められた。
【0108】
[実施例2]
図16に示す検査用装置102を用い以下の試験を行った。抽出容器2に50mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)を以下表3に示す量をそれぞれ入れた。誘導部材302の抽出液誘導体433で抽出容器2の底部22に貫通孔を形成し、抽出液誘導体433を介して検査手段401のテストストリップ341に試料液を添加した。なお、抽出液誘導体433としては、主にポリエステル繊維からなる繊維束構造体1(気孔率43%、直径3.5mm×長さ25mm、ENKR−14−243、エッセントラポーラステクノロジーズ社製品)及び繊維束構造体2(気孔率55%、直径3.5mm×長さ25mm、ENKR−14−242、エッセントラポーラステクノロジーズ社製品)の2種類をそれぞれ試験した。試料液添加直後からテストストリップ上のコントロールラインCLの視認が開始されるまでの時間、すなわち、添加位置Sに添加された試料液がコントロールラインCLに到達するまでの時間を測定した。また、試験開始から5分経過した後において抽出容器2内に残存した試料液の量を測定した。
【0109】
【表3】
【0110】
上記実施例2の結果によれば、コントロールラインCLの視認が開始されるまでの時間は、気孔率が小さい繊維束構造体1の方がやや早いことがわかった。また、いずれの繊維束構造体を用いた試験区においても、余剰の試料液は抽出容器2内に残存し、テストストリップの吸収量を超えて試料液が導入され、テストストリップから試料液が溢れるようなことはなかった。なお、使用した繊維束構造体の種類によって試料液の容器残存量に違いが見られたが、これは、気孔率が大きい方が、繊維束構造体内に吸収保持できる液体量が多いことに起因するものと考えられる。
【0111】
[実施例3]
図16に示す検査用装置102を用い以下の試験を行った。
図17に示すテストストリップ341について、吸収パッド341dの長さのみを20mm、10mm、5mmに変更したテストストリップ341を作製し、テストストリップ341中に吸収される試料液量を確認する試験を行った。抽出容器2に50mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)を400μL入れ、誘導部材302の抽出液誘導体433で抽出容器2の底部22に貫通孔を形成し、抽出液誘導体433を介して検査手段401のテストストリップ341に試料液を添加した。なお、抽出液誘導体433としては、主にポリエステル繊維からなる繊維束構造体(気孔率43%、直径3.5mm×長さ25mm、ENKR−14−243、エッセントラポーラステクノロジーズ社製品)を用いた。試験開始から15分経過した後にテストストリップの重量を測定し、テストストリップに吸収された試料液の量を算出した。
【0112】
【表4】
【0113】
上記実施例3の結果によれば、吸収パッドの長さが長くなるのに比例して、テストストリップの試料液吸収量が増加することが確認された。また、いずれの試験区においても、余剰の試料液は抽出容器内に残存し、テストストリップから試料液が溢れるようなことはなかった。これにより、テストストリップの構成要素、特に吸収パッドの長さや面積、厚み等を調整することにより、テストストリップに試料液を導入できる量をほぼ一定量にできることがわかった。
【0114】
本発明は、上記の実施形態及び実施例の内容に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。