(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2油路に、前記方向切換弁から前記油圧切換弁へと向かう方向のパイロット油の流れを許容するとともに、前記油圧切換弁から前記方向切換弁へと向かう方向のパイロット油の流れを阻止する第1逆止弁が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の作業機の油圧システム。
前記第3油路に、前記油圧切換弁から前記タンクへと向かう方向のパイロット油の流れを許容するとともに、前記タンクから前記油圧切換弁へと向かう方向のパイロット油の流れを阻止する第2逆止弁が設けられている請求項3に記載の作業機の油圧システム。
前記連結部は、前記第1逆止弁の上流側と下流側とを連結する分岐油路であり、前記分岐油路は、前記第1逆止弁と並列している請求項6に記載の作業機の油圧システム。
前記制御部は、前記方向切換弁を第1位置にする指令を出力している状態で前記圧力検出部で検出されたパイロット圧が予め定められた圧力以上になった場合に、前記方向切換弁を第2位置にする指令を出力可能である請求項11に記載の作業機の油圧システム。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
まず、作業機の全体の構成から説明する。
本発明に係る作業機1は、
図20及び
図21に示すように、機体フレーム(機体)2と、この機体フレーム2に装着した作業装置3と、機体フレーム2を支持する走行装置4とを備えている。尚、
図20及び
図21では、作業機の一例としてトラックローダを示しているが、本発明に係る作業機はトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等であってもよい。尚、本発明において、作業機の運転席に着座した運転者の前側(
図20の左側)を前方、運転者の後側(
図20の右側)を後方、運転者の左側(
図20の手前側)を左方、運転者の右側(
図20の奥側)を右方として説明する。
【0027】
機体フレーム2の上部であって前部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の後部は、機体フレーム2の支持ブラケット11に支持軸12回りに揺動自在に支持されている。キャビン5の前部は、機体フレーム2の前部に載置可能となっている。
キャビン5内には運転席13が設けられている。運転席13の左右一側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行用操作装置14が配置されている。
【0028】
走行装置4は、クローラ式走行装置により構成されている。走行装置4は、機体フレーム2の左側の下方及び機体フレーム2の右側の下方に設けられている。走行装置4は、油圧駆動式の走行モータ21L,21R(ホイルモータ)の駆動力によって、走行可能である。
作業装置3は、左側ブーム22Lと右側ブーム22Rからなる一対のブーム22と、該ブーム22の先端に装着したバケット23(作業具)とを備える。左側ブーム22Lは、機体フレーム2の左側に配置されている。右側ブーム22Rは、機体フレーム2の右側に配置されている。左側ブーム22Lと右側ブーム22Rとは、連結体によって相互に連結されている。左側ブーム22L及び右側ブーム22Rは、第1リフトリンク24及び第2リフトリンク25に支持されている。左側ブーム22L及び右側ブーム22Rの基部側と機体フレーム2の後下部との間には、複動式油圧シリンダからなるリフトシリンダ26が設けられている。リフトシリンダ26を左右同時に伸縮させることにより左側ブーム22L及び右側ブーム22Rが上下に揺動動作する。左側ブーム22L及び右側ブーム22Rの先端側には、それぞれ装着ブラケット27が左右軸回りに回動自在に枢支連結され、左右の装着ブラケット27にバケット23の背面側が取り付けられている。
【0029】
また、装着ブラケット27と左側ブーム22L及び右側ブーム22Rの先端側中途部との間には、複動式油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が介装されている。チルトシリンダ28の伸縮によってバケット23が揺動動作(スクイ・ダンプ動作)する。
バケット23は装着ブラケット27に対して着脱自在とされており、バケット23を取り外して装着ブラケット27に各種のアタッチメント(後述する油圧アクチュエータを有する油圧駆動式の作業具)を取り付けることで、掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)を行えるように構成されている。
【0030】
機体フレーム2の底壁6上の後側にはエンジン29が設けられ、機体フレーム2の底壁6上の前側には燃料タンク30と作動油タンク31とが設けられている。
エンジン29の前方には、左右の走行モータ21L,21Rを駆動する油圧駆動装置32が設けられている。油圧駆動装置32の前方には、油圧ポンプからなる第1〜3ポンプP1,P2,P3が設けられている。機体フレーム2の右側壁7の前後方向中途部に、作業装置3用のコントロールバルブ33(油圧制御装置)が設けられている。
【0031】
次に、本発明に係る作業機の油圧システムについて説明する。
図1は、本発明に係る作業機1の走行系の油圧システムである第1実施形態の油圧システムの全体図を示している。
油圧ポンプからなる第1〜3ポンプP1,P2,P3は、エンジン29の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプによって構成されている。
【0032】
第1ポンプP1(メインポンプ)は、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28又はブーム22の先端側に取り付けられるアタッチメントの油圧アクチュエータを駆動するために使用される。第2ポンプP2(サブポンプ)は、ブーム22の先端側に取り付けられる油圧アタッチメントの油圧アクチュエータが大容量を必要とする油圧アクチュエータである場合に、該油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を増量するのに使用される。第3ポンプP3(パイロットポンプ、チャージポンプ)は、主として制御信号圧力(パイロット圧)の供給用に使用される。
【0033】
油圧駆動装置32は、走行モータ21L及び走行モータ21Rを駆動する装置であって、左走行モータ21L用の駆動回路32A(左用駆動回路)と、右走行モータ21R用の駆動回路32B(右用駆動回路)とを備えている。
駆動回路32Aは、HSTポンプ(走行用の油圧ポンプ)66を備えている。HSTポンプ66は、一対の変速用油路100h,100iによって対応する走行モータ21L,21RのHSTモータ57に接続されている。なお、駆動回路32Bは、駆動回路32Aと同じ構造であるため説明を省略する。
【0034】
HSTポンプ66は、エンジン29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプであると共にパイロット圧で斜板の角度が変更されるパイロット方式の油圧ポンプ(斜板形可変容量油圧ポンプ)である。具体的には、HSTポンプ66は、パイロット圧が作用する前進用受圧部66aと後進用受圧部66bとを備えている。
受圧部66a,66bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度が変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって走行モータ21L,21Rの回転出力を変更する。
【0035】
HSTポンプ66の回転数が増加すると、該HSTポンプ66の吐出量が上がり、走行速度が増加する。HSTポンプ66の回転数、即ち、該HSTポンプ66の吐出量は、エンジン29の出力で変化する。作業機1は、アクセル操作部材(アクセルペダル又はアクセルレバー)53を有している。アクセル操作部材53の操作量が0である場合は、エンジン29の回転数は、アイドリングの回転数(1150rpm)となる。また、アクセル操作部材53を最大に操作した場合には、エンジン29の回転数は、マックス回転数(2480rpm)となる。
【0036】
エンジン回転数の制御は、例えば、コモンレール式の電子制御燃料供給装置SUによって行われる。電子制御燃料供給装置SUは、燃料を蓄える筒状の管からなるコモンレールと、燃料タンク30内の燃料を高圧にしてコモンレールに送るサプライポンプと、コモンレールに蓄えた高圧の燃料をエンジン29の気筒に噴射するインジェクタと、このインジェクタの燃料噴射量をコントロールするコントローラECUとを備えている。
【0037】
コントローラECUには、アクセル操作部材53の操作量を検出するアクセルセンサASとエンジン29の実際の回転数(実エンジン回転数)を検出する回転センサRSとが伝送路を介して接続されていて、該コントローラECUにアクセルセンサAS及び回転センサRSの検出信号が入力される。
そして、このアクセルセンサAS及び回転センサRSの検出信号に基づいて、エンジン29がアクセル操作部材53の操作量に応じた(アクセル操作部材53によって決定される)回転数(目標エンジン回転数)となるように、コントローラECUによってインジェクタの燃料噴射量が制御される。
【0038】
さて、
図1に示すように、第3ポンプP3の吐出ポートには、該第3ポンプP3から吐出される吐出油(パイロット油)を流通させる吐出油路100aが接続されている。尚、
図1では、第1ポンプP1及び第2ポンプP2に接続された油路は省略されており、これらの油路は後述する第8実施形態(
図9)に示されている。
吐出油路100aからは、第1供給路100b、第2供給路100c、第3供給路100dが分岐している。第3ポンプP3の吐出油路100aの終端には、2速切換弁64が接続されている。吐出油路100aの下流側には、第3ポンプP3の最高圧力を設定するリリーフ弁52が接続されている。
【0039】
第2供給路100cには、走行操作装置14のポンプポート50が接続され、第3ポンプP3の吐出油であるパイロット油は、第2供給路100cを通って走行操作装置14に供給される。
この走行操作装置14は、前進用のパイロット弁36と、後進用のパイロット弁37と、右旋回用のパイロット弁38と、左旋回用のパイロット弁39と、走行レバー40と、第1〜4シャトル弁41,42,43,44とを有する。各パイロット弁37、38、39は、共通、即ち、1本の走行レバー40によって操作される。
【0040】
走行レバー40は、中立位置から、前後左右と前後左右の間の斜め方向に傾動操作可能とされ、該走行レバー40を傾動操作することにより、走行操作装置14の各パイロット弁37,38,39が操作されると共に、走行レバー40の中立位置からの操作量に比例したパイロット圧が該操作されたパイロット弁37,38,39の二次側ポートから出力される。
【0041】
走行レバー40を前側(
図1では矢示A1方向)に傾動させると、前進用パイロット弁36が操作されて該パイロット弁36からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁41から第1流路46を介して左用駆動回路32Aの前進用受圧部66aに作用すると共に第2シャトル弁42から第2流路47を介して右用駆動回路32Bの前進用受圧部66aに作用する。これにより左右の走行モータ21L,21Rの出力軸57aが走行レバー40の傾動量に比例した速度で正転(前進回転)してトラックローダ1が前方に直進する。
【0042】
また、走行レバー40を後側(
図1では矢示A2方向)に傾動させると、後進用パイロット弁37が操作されて該パイロット弁37からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第3シャトル弁43から第3流路48を介して左用駆動回路32Aの後進用受圧部66bに作用すると共に第4シャトル弁44から第4流路49を介して右用駆動回路32Bの後進用受圧部66bに作用する。これにより左右の走行モータ21L,21Rの出力軸57aが走行レバー40の傾動量に比例した速度で逆転(後進回転)してトラックローダ1が後方に直進する。
【0043】
また、走行レバー40を右側(
図1では矢示A3方向)に傾動させると、右旋回用パイロット弁38が操作されて該パイロット弁38からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第1シャトル弁41から第1流路46を介して左用駆動回路32Aの前進用受圧部66aに作用すると共に第4シャトル弁44から第4流路49を介して右用駆動回路32Bの後進用受圧部66bに作用する。これにより左走行モータ21Lの出力軸57aが正転し且つ右走行モータ21Rの出力軸57aが逆転してトラックローダ1が右側に旋回する。
【0044】
また、走行レバー40を左側(
図3では矢示A4方向)に傾動させると、左旋回用パイロット弁39が操作されて該パイロット弁39からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第2シャトル弁42から第2流路47を介して右用駆動回路32Bの前進用受圧部66aに作用すると共に第3シャトル弁43から第3流路48を介して左用駆動回路32Aの後進用受圧部66bに作用する。これにより右走行モータ21Rの出力軸57aが正転し且つ左走行モータ21Lの出力軸57aが逆転してトラックローダ1が左側に旋回する。
【0045】
また、走行レバー40を斜め方向に傾動させると、各駆動回路32A,32Bの前進用受圧部66aと後進用受圧部66bとに作用するパイロット圧の差圧によって、走行モータ21L,21Rの出力軸57aの回転方向及び回転速度が決定され、トラックローダ1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が前進しながら左旋回し、走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が前進しながら右旋回し、走行レバー40を左斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が後進しながら左旋回し、走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が後進しながら右旋回する。
【0046】
なお、第1〜4流路46〜49には、それぞれショック緩和用絞り77が設けられ、HSTポンプ66の前進用受圧部66a及び後進用受圧部66bに対する走行操作装置14からのパイロット油の供給又は前進用受圧部66a及び後進用受圧部66bからのパイロット油の戻りはショック緩和用絞り77を介して行われるので、急激な車速の変動が防止される。
【0047】
走行モータ21L及び走行モータ21Rは、HSTモータ57(走行用の油圧モータ)と、斜板切換シリンダ58と、ブレーキシリンダ59と、フラッシング弁60と、フラッシング用リリーフ弁61とを有する。HSTモータ57は、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータである。斜板切換シリンダ58は、HSTモータ57の斜板の角度を切り換えることによりHSTモータ57を高低2速に変速操作する。ブレーキシリンダ59は、HSTモータ57の出力軸57a(走行モータ21Lの出力軸57a)を制動する。右側の走行モータ21Rは、左側の走行モータ21Lと同じ構造であるため、詳しい図示及び説明を省略する。
【0048】
斜板切換シリンダ58への圧油を作用させるか否かはパイロット方式の油圧切換弁63(シリンダ切換弁ということがある)で行う。シリンダ切換弁(油圧切換弁)63は、パイロット油の圧力(パイロット圧)に応じて、第1切換位置63aと第2切換位置63bとに移動可能なスプールを有する二位置切換弁からなる。シリンダ切換弁63のスプールは、パイロット圧が所定の圧力(以下、設定圧と称す)に達すると第2切換位置63bに移動し、パイロット圧が設定圧未満になるとバネにより第1切換位置63aに戻される。
【0049】
シリンダ切換弁63のスプールが、第1切換位置63aに移動したときには、斜板切換シリンダ58からパイロット油が抜けて、HSTモータ57が1速状態となる。シリンダ切換弁63のスプールが、第2切換位置63bに移動したときには、斜板切換シリンダ58にパイロット油が供給され、HSTモータ57が2速状態となる。
シリンダ切換弁63は、電磁方式の2速切換弁(方向切換弁)64によって切り換え操作される。シリンダ切換弁63と2速切換弁64とは、第2油路100xにより接続されている。2速切換弁64は、励磁により第1位置64aと第2位置64bとに切り換え可能な二位置切換弁からなる。2速切換弁(方向切換弁)64は、第2位置64bに切り換えられたときには、第3ポンプP3の吐出油路100a(第4油路100a)ということがある)とシリンダ切換弁63とを接続する。そして、第3ポンプP3から吐出したパイロット油が2速切換弁64及び第2油路100xを通って、シリンダ切換弁63のスプールに作用する。シリンダ切換弁63のスプールは、2速切換弁からシリンダ切換弁63へ至るパイロット油の圧力(パイロット圧)により、第2切換位置63bに移動する。一方、第1位置64aに切り換えられたときには、作動油タンク31とシリンダ切換弁63とを接続して、シリンダ切換弁63のパイロット油を作動油タンク31に排出する。これにより、シリンダ切換弁63はパイロット圧が低下し、第1切換位置63aに切り換わる。
【0050】
フラッシング弁60は、高圧側の変速用油路100h,100iの圧によって低圧側の変速用油路100h,100iをフラッシング用リリーフ油路100mに接続するように切り換えられ、低圧側の変速用油路100h,100iに作動油を補充させるべく該低圧側の変速用油路100h,100iの作動油の一部をフラッシング用リリーフ油路100mを介して走行モータ21L,21Rのハウジング内の油溜まりに逃がすものである。フラッシング用リリーフ弁61は、フラッシング用リリーフ油路100mに介装されている。
【0051】
また、ブレーキシリンダ59には、HSTモータ57の出力軸57aを制動するバネが内蔵されると共に第3供給路100dが接続されている。第3供給路100dに設けられた電磁方式の二位置切換弁からなるブレーキ解除弁65を励磁することにより、該ブレーキシリンダ59に第3供給路100dのパイロット油が作用して、HSTモータ57の出力軸57aの制動を解除する。
【0052】
本発明に係る油圧システムは、シリンダ切換弁63に対して、該シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに移動させるパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力を付与する圧力付与部、及び/又は、シリンダ切換弁63に付与するパイロット圧の変化速度を低減する速度低減部を有している。変化速度とは、単位時間当たりのパイロット圧の増加率、或いは、単位時間当たりの減少率である。言い換えれば、パイロット圧の増加速度、或いは、パイロット圧の減少速度である。
【0053】
以下、圧力付与部及び速度低減部の具体的構成について説明する。
図1に示す実施形態(第1実施形態)の油圧システムにおいて、圧力付与部は、第1油路100vと、第1絞り部80とを有している。第1油路100vは、2速切換弁(方向切換弁)64を介さずに、第3ポンプP3とシリンダ切換弁(油圧切換弁)63とを接続する油路である。具体的には、第1油路100vは、2速切換弁64の近傍で吐出油路100aから分岐し、且つ、第2油路100xに接続する油路である。即ち、第3ポンプP3から吐出されるパイロット油は、第1油路100vを通ることで、吐出油路100aから2速切換弁64を介さずにシリンダ切換弁63へと流れる。第1絞り部80は、第1油路100vの中途部に設けられた絞り弁である。第1絞り部80は、第1油路100vに流れるパイロット油の圧力(パイロット圧)を、シリンダ切換弁63のスプールが第2切換位置63bに移動するパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力にする。これにより、シリンダ切換弁63に対して、該シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに移動させるパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力が、常に付与されることとなる。
【0054】
このような圧力付与部を設けることにより、2速切換弁(方向切換弁)64が第1位置64aにあるときでも、第1油路100v及び第1絞り部80を介して、シリンダ切換弁63に対して設定圧未満の予圧が与えられる。そのため、2速切換弁64が第2位置64bに切り換わると、シリンダ切換弁63のパイロット圧が速やかに設定圧に達することとなる。これにより、シリンダ切換弁63のスプールは、第1切換位置63aから第2切換位置63bへと速やかに切り換わるため、その結果、HSTモータ57の1速から2速への切り換え速度が向上する。
【0055】
本発明(全ての実施形態を含む)において、圧力付与部により油圧切換弁(シリンダ切換弁63、ハイフロー弁145(後述する))に付与される圧力(予圧)は、設定圧よりも僅かに低い圧力(例えば、設定圧の80%以上)とすることが好ましい。圧力付与部により付与される圧力を、設定圧よりも僅かに低い圧力とすることで、油圧切換弁(シリンダ切換弁63、ハイフロー弁145(後述する))のパイロット圧が設定圧に達するまでの時間を短縮することができ、切り換えの応答性を向上させることが可能となる。
【0056】
第1実施形態の油圧システムにおいて、速度低減部は、第2油路100xと、第2絞り部81とを有している。第2絞り部81は、第2油路100xであって、当該第2油路100xと第1油路100vとが合流する合流部VXと、2速切換弁64との間に設けられた絞り弁である。
第2絞り部81は、第2油路100xを流れるパイロット油の量を制限して、2速切換弁64からシリンダ切換弁63に向かうパイロット油の圧力(パイロット圧)を低減させる。これにより、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧の変化速度が低減されるため、シリンダ切換弁63のスプールの移動速度が低下する。その結果、HSTモータ57を1速から2速に切り換える際の衝撃が緩和される。
<第2実施形態>
図2は本発明に係る油圧システムの第2実施形態を示している。
【0057】
以下、
図2に基づいて第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
第2実施形態の油圧システムは、圧力付与部の構成は第1実施形態と同様であり、速度低減部の構成が第1実施形態と異なっている。
速度低減部は、第2油路100xと、第2絞り部81と、第3油路100yと、第3絞り部83とを有している。合流部VXと2速切換弁64との間であって、第2絞り部81の上流側(第3ポンプP3側)には、第1逆止弁84が設けられている。第1逆止弁84は、2速切換弁64からシリンダ切換弁63へと向かう方向のパイロット油の流れを当該パイロット油の圧力が所定圧以上になったときに許容し、シリンダ切換弁63から2速切換弁64へと向かう方向のパイロット油の流れを阻止する。
【0058】
第3油路100yは、合流部VXと作動油タンク31とを接続する油路である。第3絞り部83は、第3油路100yであって、合流部VXと作動油タンク31との間に設けられた絞り弁である。第3絞り部83は、第3油路100yに流れるパイロット油の量を制限して、第3油路100yを流れるパイロット油の圧力(パイロット圧)を低減させる。
第2実施形態の油圧システムにおいて、1速から2速に切り換える際には、第2油路100xの第2絞り部81を通ってシリンダ切換弁63に流入するパイロット油の量(流入量)を、第3油路100yの第3絞り部83を通ってシリンダ切換弁63から排出されるパイロット油の量(排出量)よりも多くして、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧を増加させ、シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに切り換える。このとき、第2絞り部81と第3絞り部83の絞り量のバランスを適当に設定し、流入量と排出量とのバランスを最適化することで、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧の変化(増加)速度を低減することができる。これにより、変速時の衝撃を緩和することができる。
【0059】
一方、2速から1速に切り換える際には、第3油路100yの第3絞り部83を通してシリンダ切換弁63からパイロット油を排出する。このとき、第2油路100xに第1逆止弁84が設けられていることで、シリンダ切換弁63内のパイロット油は、第1逆止弁84から上流側の第2油路100xを通っては排出されずに第3油路100yを通って排出される。
【0060】
この第3油路100yからのパイロット油の排出によって、シリンダ切換弁63に付与されているパイロット圧が減少し、シリンダ切換弁63のスプールが第1切換位置63aに切り換わる。このとき、第3油路100yに第3絞り部83が設けられている。これにより、シリンダ切換弁63に付与されているパイロット圧の変化(減少)速度を低減することができる。これにより、変速時の衝撃を緩和することが可能となる。
【0061】
また、1速と2速のいずれの状態においても、シリンダ切換弁63内のパイロット油を作動油タンク31へと排出することができる。これにより、パイロット油が循環した状態となり暖機されるため、パイロット油の温度低下に起因して変速操作時の応答性が低下することが防がれる。そのため、パイロット油の温度変化に起因する変速の応答性(フィーリング)の変化を抑制することができる。
【0062】
第2実施形態の油圧システムにおいて、上述した通り、圧力付与部の構成は第1実施形態と同様であるが、速度低減部として設けられている第3油路100y及び第3絞り部83が、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧(予圧)に影響するため、この点について説明する。
第2実施形態の油圧システムでは、第1絞り部80の絞り量と第3絞り部83の絞り量を調整することにより、第1油路100vを通ってシリンダ切換弁63に供給されるパイロット油の量(供給量)と、第3油路100yを通ってシリンダ切換弁63から作動油タンク31に排出されるパイロット油の量(排出量)を調整することができる。そのため、第1絞り部80の絞り量と第3絞り部83の絞り量のバランスを適当に設定し、流入量と排出量とのバランスを最適化することで、シリンダ切換弁63に対して、該シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに移動させるパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力を常に付与することができる。
【0063】
これにより、2速切換弁64が第1位置64aにあるときでも、シリンダ切換弁63に対して設定圧未満の予圧が与えられる。そのため、2速切換弁64が第2位置64bに切り換わると、シリンダ切換弁63のパイロット圧が速やかに設定圧に達することとなる。その結果、シリンダ切換弁63のスプールは、第1切換位置63aから第2切換位置63bへと速やかに切り換わり、HSTモータ57の1速から2速への切り換え速度が向上する。
<第3実施形態>
図3は本発明に係る油圧システムの第3実施形態を示している。なお、上述した実施形
態と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0064】
第3実施形態の油圧システムは、圧力付与部の構成の一部が第2実施形態と異なっている。具体的には、2速切換弁64と作動油タンク31とを接続する第3油路100yに第2逆止弁85が設けられている点が、第2実施形態と異なっている。
第2逆止弁85は、第3絞り部83と作動油タンク31の間に設けられており、シリンダ切換弁63から作動油タンク31へと向かう方向のパイロット油の流れを当該パイロット油の圧力が所定圧以上になったときに許容し、作動油タンク31からシリンダ切換弁63へと向かう方向のパイロット油の流れを阻止する。このように、第2逆止弁85が設けられているため、第3油路100yのパイロット油の圧力が所定圧未満であるときは、シリンダ切換弁63からパイロット油が排出されず、第2油路100xの圧力は所定以上に保持されることになる。なお、第2逆止弁85の設定圧は、1速と2速との境界値の近傍に設定されていることが好ましい。
【0065】
したがって、エンジン29の回転数の変化等に起因して、第3ポンプP3から供給されるパイロット油の吐出圧が低下した場合でも、第2油路100xの圧力を所定以上に保持することができるため、1速から2速への応答性を向上させることができる。
<第4実施形態>
図4は本発明に係る油圧システムの第4実施形態を示している。上述した実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0066】
第4実施形態の油圧システムは、第2油路100xに第1逆止弁84の上流側と下流側とを連結する連結部zが設けられている。この連結部zは、第1逆止弁84の上流側及び下流側とを連結する分岐油路で構成されている。この分岐油路100zは、第1逆止弁84と並列している。なお、第1逆止弁84のポペットに、絞り穴を構成する環状の縁部を設けることにより、連結部を構成してもよい。
【0067】
分岐油路100zは、2速切換弁64を通って第2油路100xに流入したパイロット油を、第1逆止弁84に阻害されることなくシリンダ切換弁63へと送るための迂回路として機能する。
第5絞り部86は、分岐油路100zを流れるパイロット油の量を制限して、分岐油路100zを流れるパイロット油の圧力(パイロット圧)を低減させる。
【0068】
第1絞り部80の絞り径S1、第2絞り部81の絞り径S2、第3絞り部83の絞り径S3、第5絞り部86の絞り径S5は、S2>S3>S1>S5の関係を満たすように設定することが好ましい。一例として、S1=φ0.7mm、S2=φ1.6mm、S3=φ1.4mm、S5=φ0.5mmに設定される。
第4実施形態の油圧システムでは、第2油路100xに分岐油路100z及び第5絞り部86が設けられていることで、2速切換弁64を第1位置64aに切り換えて2速から1速に切り換える際に、シリンダ切換弁63内のパイロット油を、第3油路100y及び第3絞り部83を通してだけでなく、分岐油路100z及び第5絞り部86を通しても排出することができる。第4実施形態の油圧システムにおいて、第2油路100xに設けられた第2絞り部81を省略することもできる。この場合、第5絞り部86が第2絞り部81を兼ねることとなる。
<第5実施形態>
図5は本発明に係る油圧システムの第5実施形態を示している。上述した実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0069】
第5実施形態の油圧システムにおいて、圧力付与部は、第2油路100xと、第4絞り部87とを有している。第4絞り部87は、2速切換弁64の内部に設けられた絞り弁である。この第4絞り部87は、2速切換弁64の第1位置64aに設けられている。第4絞り部87の絞り量は、2速切換弁64が第1位置64aに切り換えられたときに当該2速切換弁64内を流れるパイロット油の圧力を、設定圧(シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに移動させるパイロット圧)よりも低い圧力にするように設定されている。
【0070】
したがって、2速切換弁64が第1位置64aに切り換えられると、吐出油路100aとシリンダ切換弁63とが接続する。このとき、吐出油路100aからシリンダ切換弁63へ向かうパイロット油の圧力は、第4絞り部87によって低い圧力となる。即ち、シリンダ切換弁63に対して設定圧(シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに移動させるパイロット圧)よりも低い圧力(予圧)が付与される。それゆえ、2速切換弁64が第2位置64bに切り換わると、シリンダ切換弁63のパイロット圧が速やかに設定圧に達することとなる。シリンダ切換弁63のスプールは、第1切換位置63aから第2切換位置63bへと速やかに切り換わるため、その結果、HSTモータ57の1速から2速への切り換え速度が向上する。
【0071】
第5実施形態の油圧システムによれば、圧力付与部が、2速切換弁64の内部に設けられた第4絞り部87を有している。そのため、第1油路100v及び第1絞り部80を省略することができるため、油圧回路を簡略化することが可能となる。なお、圧力を付与するという観点からすれば、第2絞り部81は設けなくてもよい。
<第6実施形態>
図6は本発明に係る油圧システムの第6実施形態を示している。上述した実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0072】
第6実施形態の油圧システムにおいて、速度低減部は、第2油路100xと、第3油路100yと、第6絞り部88とを有している。
第6絞り部88は、第5絞り部87とは異なっていて、2速切換弁64の第2位置64bに設けられている。そして、第6絞り部88の絞り径S6と第4絞り部87の絞り径S4とは、S6>S4の関係を満たすように設定される。これにより、2速切換弁64は、第2位置64bに切り換えられたときに、吐出油路100aとシリンダ切換弁63とを第6絞り部88を介して接続し、パイロット油の吐出油路100aからシリンダ切換弁63へのパイロット油の流れを一定量以下に制限しながら許容する。このとき許容される油量は、S6>S4に設定されているため、第1位置64aに切り換えられたときに許容される油量に比べて多い。
【0073】
第6絞り部88が、パイロット油の吐出油路100aからシリンダ切換弁63へのパイロット油の油量を制限することで、第2油路100xを流れる油量が減少し、第2油路100xに流れるパイロット油の圧力が低減される。つまり、第6絞り部88は、第2絞り部81と同様の機能を発揮することができる。そのため、第6絞り部88を設けることにより、第2絞り部81を省略することができ、油圧回路を簡略化することが可能となる。
<第7実施形態>
図7は本発明に係る油圧システムの第7実施形態を示している。上述した実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0074】
第7実施形態の油圧システムにおいて、圧力付与部は、第1油路100vと、第1リリーフ弁89と、第5油路100tと、第2リリーフ弁90、第3絞り部83とを有している。
第1リリーフ弁89は、第1油路100vに設けられ、第5油路100tは、吐出油路100aの中途部から分岐して作動油タンク31に接続する油路である。なお、第5油路100tは、第1油路100vであって、第1リリーフ弁89よりも上流側(第3ポンプP3側)と、作動油タンク31とを接続する油路であってもよい。
【0075】
第2リリーフ弁90は、第5油路100tに設けられている。第2リリーフ弁90の設定圧は、第1リリーフ弁89の設定圧よりも高く設定される。例えば、第1リリーフ弁89の設定圧P5、第2リリーフ弁90の設定圧P6、第3絞り部83の設定圧P7としたとき、P5=20kg/cm
2、P6=30kg/cm
2、P5=5kg/cm
2に設定する。ここで、第3ポンプP3の吐出圧が25〜30kg/cm
2である場合、2速切換弁64が第1位置64aに切り換えている状況下でも、シリンダ切換弁63には、大凡5kg/cm
2の圧力を加えることができる。ここで、シリンダ切換弁63のスプールを第2切換位置63bに移動させるパイロット圧(設定圧)が5kg/cm
2にすれば、シリンダ切換弁63のスプールを、第1切換位置63aから第2切換位置63bへと速やかに切り換えることができる。
【0076】
上述した第1乃至第7実施形態の油圧システムは、圧力付与部と速度低減部の両方を具備している。そのため、変速操作時における応答性の向上と衝撃の緩和を両立させることが可能となる。
但し、本発明に係る油圧システムは、必ずしも圧力付与部と速度低減部の両方を具備する必要はなく、少なくともいずれか一方を具備していればよい。従って、第1乃至第7実施形態の油圧システムにおいて、圧力付与部と速度低減部のいずれか一方のみを具備する構成を採用することもできる。
【0077】
図8は、本発明に係る油圧システムの作用(変速時の油圧変化)を模式的に示すグラフである。
図8において、本発明に係る油圧システムを実線で示し、従来の油圧システムを一点鎖線で示している。
図8Aは、圧力付与部のみを具備する場合(実施例1)を示し、
図8Bは、速度低減部のみを具備する場合(実施例2)を示し、
図8Cは、圧力付与部と速度低減部の両方を具備する場合(実施例3)を示している。なお、
図8A〜
図8Cは、それぞれ圧力付与部と速度低減部のいずれも具備しない従来の油圧システム(従来例)と比較している。
【0078】
図8Aに示すように、圧力付与部のみを具備するシステム(実施例1)の場合は、1速から2速に切り換えられる前であって1速状態の期間(t1)でも、2速の状態にならない程度に所定の圧力がシリンダ切換弁63に圧力(パイロット圧)が付与されている。そのため、1速から2速に素早く切り換えることができる。従来例に比べて早期に設定圧P1に達することができる。即ち、1速から2速への変速の応答性が向上する。
【0079】
図8Bに示すように、速度低減部のみを具備するシステム(実施例2)の場合は、2速切換弁64が第2位置64bに切り換えられると、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧が増加するが、このときのパイロット圧の増加速度が従来例に比べて低減される。つまり、
図8Bにおいて、傾きα1>傾きα2となる。
また、2速切換トリガがOFFになる(2速切換弁64が第1位置64aに切り換えられる)と、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧が減少するが、このときのパイロット圧の減少速度が従来例に比べて低減される。つまり、
図8Bにおいて、傾きα3>傾きα4となる。
【0080】
このように、シリンダ切換弁63に付与されるパイロット圧の変化(増加又は減少)速度が低減されることにより、変速(1速から2速、2速から1速)が緩やかとなり、変速時の衝撃が緩和される。
図8Cに示すように、圧力付与部と速度低減部の両方を具備するシステム(実施例3)の場合は、1速から2速に切り換える際に、パイロット圧は、従来例に比べて緩やかに増加し且つ早期に設定圧P1に達することができる。従って、1速から2速への変速について、応答性の向上と衝撃の緩和の両方を達成することが可能となる。
【0081】
上述した実施形態においては、変速される油圧モータとして、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータによって構成されたHSTモータ57を使用した例を示したが、油圧モータの種類はこれに限定されない。例えば、HSTモータ57を、斜板形可変容量アキシャルモータに代えて、低速高トルク(大容量)モードと高速低トルク(小容量)モードとを切り換えることにより変速可能なカムモータ(ラジアルピストンモータ)を用いてもよい。
【0082】
また、本発明に係る油圧システムの適用対象は、上述した実施形態のような変速装置を構成する油圧回路に限定されるものではなく、他の種類の油圧回路にも適用することが可能である。
以下、本発明に係る油圧システムの更に別の第8実施形態及びその変形例について、
図9乃至
図11を参照しながら説明する。
<第8実施形態>
図9は本発明に係る油圧システムの第8実施形態を示している。第8実施形態の油圧システムは、上述した実施形態(第1乃至第7実施形態)の油圧システムと同様に、
図20に示すような作業機1に設けられるものである。
【0083】
第8実施形態の油圧システムは、第1ポンプP1と、補助制御弁135と、一対の補助操作弁136,137と備えている。
補助制御弁135は、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁から構成されて、パイロット圧によって中立位置135aと第1位置135bと第2位置135cとに切換可能である。なお、補助制御弁135は、バネによって中立位置135aに戻されるように構成されている。
【0084】
補助制御弁135には、第1ポンプP1の吐出路e1に連通する供給油路f1が接続されている。また、補助制御弁135には、排油路k1を介してバイパス油路p1が接続され、タンク側に戻るドレン油路g1も接続されている。また、補助制御弁135と油圧アクチュエータ134を接続する接続装置138との間には、第1供給路139が接続されている。第1供給路139は、2つの流路から構成されており、一方の流路139aには、第1逃がし路o1を介してバイパス油路p1に接続され、他方の流路139bには、第2逃がし路n1を介してバイパス油路p1に接続されている。第1,第2逃がし路n1,o1には、それぞれリリーフ弁140,141が設けられている。
【0085】
一方の補助操作弁136は、第1パイロット油路q1を介して補助制御弁135の一側の受圧部142aに接続されている。他方の補助操作弁137は第2パイロット油路r1を介して補助制御弁135の他側の受圧部142bに接続されている。なお、一対の補助操作弁136,137にはパイロット圧供給油路sを介して第3ポンプP3からの圧油(パイロット油)が供給可能とされている。したがって、補助操作弁136、137によって、補助制御弁135を第1位置135bに切り換えると、一方の流路139aから油圧アクチュエータ134へと第1ポンプP1からの作動油が供給されると共に油圧アクチュエータ134からの戻りの油が他方の流路139bから排油路k1に流れる。
【0086】
また、補助操作弁136、137によって、第2位置135cに切り換えると、他方の流路139bから油圧アクチュエータ134へと第1ポンプP1からの作動油が供給されると共に油圧アクチュエータ134からの戻りの油が第1作動油流通路139aから排油路k1に流れる。以上により、第1ポンプP1からの作動油をバケットの代わりに取り付ける各種アタッチメントの油圧アクチュエータ134に供給することができる。
【0087】
油圧システムは、第2ポンプP2と、ハイフロー弁145と、このハイフロー弁145を操作するハイフロー切換弁146とを備えている。
ハイフロー弁145は、パイロット方式の2位置切換弁から構成される油圧切換弁である。ハイフロー弁(油圧切換弁)145は、パイロット圧によって2つの切換位置(非増量位置145aと増量位置145b)に切り換え可能である。このハイフロー弁145には、第2ポンプP2の吐出側の流路が接続されている。第1供給路139の一方側の流路139aに接続された第2作動油供給路(増量油路)βが接続されている。また、ハイフロー弁145には、タンク側に戻るドレン油路g1も接続されている。
【0088】
ハイフロー切換弁146は、ハイフロー弁145の受圧部145cに接続され、この受圧部145cにパイロット圧を作用させる作用位置(第2位置)146aと、該受圧部145cにパイロット圧を作用させない非作用位置(第1位置)146bとに切換え自在な電磁方式の2位置切換弁から構成される方向切換弁である。このハイフロー切換弁(方向切換弁)146には、第1パイロット油路q1に連通する連動油路wの一端側が接続されている。
【0089】
したがって、ハイフロー切換弁146を作用位置146aにすると、ハイフロー弁145の受圧部145cに第3ポンプP3から吐出されたパイロット油の圧力(パイロット圧)が作用し、ハイフロー弁145が増量位置145bになる。その結果、第2ポンプP2からの吐出油が増量油路βに流れ、この増量油路βの作動油と第1供給路139の一方側の流路139aとが合流部147で合わさって、合流部147から接続装置138へかけての作動油が増量することになる。
【0090】
また、ハイフロー切換弁146を、ハイフロー弁145のスプールを移動させるために必要な圧力(設定圧)のパイロット圧を受圧部145cに作用させない非作用位置146bにすると、ハイフロー弁145の受圧部145cに、設定圧以上のパイロット圧が作用しなくなり、ハイフロー弁145が非増量位置145aになる(非増量モードに切り換わる)。尚、後述する圧力付与部の作用により、ハイフロー切換弁146を非作用位置146bにした場合でも、ハイフロー弁145の受圧部145cには設定圧未満のパイロット油が作用する。この圧力付与部の構成及び作用については後ほど詳述する。
【0091】
ハイフロー弁145が非増量位置145aになる結果、第2ポンプP2からの吐出油は増量油路βに流れなくなり、合流部147から接続装置138へかけての作動油は第1ポンプP1からのものだけになる。これにより、第2ポンプからの作動油を第1ポンプの作動油に加えることができる。
接続装置138は、増量油路uからの増量が必要な大容量の油圧アクチュエータ(大容量仕様の油圧アクチュエータということがある)134aと、増量油路βからの増量が不要な標準の油圧アクチュエータ(標準仕様の油圧アクチュエータということがある)134bとをそれぞれ接続可能なものである。なお、
図9においては、説明の便宜上、大容量仕様の油圧アクチュエータ134a、油圧アクチュエータ134bの両方が接続装置138に接続されているものになっているが、実際には、この接続装置138には、大容量仕様の油圧アクチュエータ134aと油圧アクチュエータ134bとのいずれかが接続されることになる。
【0092】
この接続装置138は、一方の流路139a及び他方の流路139bに接続された接続部150を備えている。接続部150の流路139aに接続された部分、接続部の流路139bに接続された部分のそれぞれには、逆止弁152、154が設けられていて、各逆止弁152,154にはそれぞれ接続口153、155が形成されている。
大容量仕様の油圧アクチュエータ134aを備えたアタッチメント(例えば、ブラッシュカッター、フォレストモアー等)を接続装置138に接続する場合は、例えば、一方の油圧ホース157を接続口153に接続し、他方の油圧ホース158を接続口155に接続する。
【0093】
標準仕様の油圧アクチュエータ134bを備えたアタッチメント(例えば、油圧ブレーカ、チルトバケット等)を接続装置138に接続する場合も、例えば、一方の油圧ホース164を接続口153に接続し、他方の油圧ホース165を接続口155に接続する。
作業機1には、制御部(コントローラ)170が設けられている。制御部170は、作動油操作装置15に設けられたスライドボタン171の操作量に応じて、補助操作弁136,137の操作(補助制御弁135の操作)やハイフロー切換弁146の操作(ハイフロー弁145の操作)の操作を行う。
【0094】
スライドボタン(操作手段)171を一方にスライド操作すると、操作量に対応した操作信号が制御部170に入力され、この制御部170からスライドボタン171の操作量に対応した指令信号が一方の補助操作弁136に出力されて該補助操作弁136のソレノイド136aが励磁される。これにより、一方の補助操作弁136からスライドボタン171の操作量に比例したパイロット圧が出力され、該パイロット圧が第1パイロット油路q1を介して補助制御弁135の一側の受圧部142aに作用して補助制御弁135がスライドボタン171の操作量に比例して第1位置135bへと操作される。
【0095】
また、スライドボタン171を他方にスライド操作すると、操作量に対応した操作信号が制御部170に入力され、この制御部170から指令信号が他方の補助操作弁137に出力されて該補助操作弁137のソレノイド137aが励磁される。これにより他方の補助操作弁137からスライドボタン171の操作量に比例したパイロット圧が出力され、該パイロット圧が第2パイロット油路r1を介して補助制御弁135の他側の受圧部142bに作用して補助制御弁135がスライドボタン171の操作量に比例して第2位置135cへと操作される。
【0096】
スライドボタン171を最大位置にすると、ハイフロー切換弁146のソレノイド146cが連続的に励磁され、ハイフロー切換弁146が作用位置146aに切り換わり、作動油が増量される(増量モードに切り換わる)。即ち、スライドボタン171が最大位置にすると、ハイフロー弁145からの作動油がサブポンプP3から増量油路βを介して第1作動油流通路139aへと流れるため、作動油を増量させることができる。
【0097】
第8実施形態の油圧システムにおいて、圧力付与部は、第1油路v1と、第1油路v1に設けられた第1絞り部180とから構成されている。
第1油路v1は、連動油路wの中途部と、ハイフロー切換弁(方向切換弁)146とハイフロー弁(油圧切換弁)145とを接続する第2油路x1とを接続している。連動油路wは、補助操作弁136及びパイロット圧供給油路sを介して第3ポンプP3と接続されている。そのため、第1油路v1は、第3ポンプP3とハイフロー弁145とを接続している。
【0098】
これにより、第3ポンプP3から吐出されて連動油路βを流れてきたパイロット油は、ハイフロー切換弁146を介さずにハイフロー弁145へと流れる。
第1絞り部180は、第1油路v1に流れるパイロット油の圧力(パイロット圧)を、ハイフロー弁145のスプールが増量位置145bに移動するパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力にする。これにより、ハイフロー弁145に対して、該ハイフロー弁145のスプールを増量位置145bに移動させるパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力が、常に付与されることとなる。
【0099】
このような圧力付与部を設けることにより、ハイフロー切換弁(方向切換弁)146が非作用位置146bにあるときでも、第1油路v1及び第1絞り部180を介して、ハイフロー弁145に対して設定圧未満の予圧が与えられる。そのため、ハイフロー切換弁146が作用位置146aに切り換わると、ハイフロー弁145のパイロット圧が速やかに設定圧に達することとなる。これにより、ハイフロー弁145のスプールは、非増量位置145aから増量位置145bへと速やかに切り換わるため、その結果、油圧アクチュエータに流す作動油を増量させる増量モードへの切り換え速度が向上する。
【0100】
第8実施形態の油圧システムにおいて、速度低減部は、ハイフロー切換弁146とハイフロー弁145とを接続する第2油路x1と、第2油路x1に設けられた第2絞り部181からなる。
第2絞り部181は、第2油路x1を流れるパイロット油の量を制限して、第2油路x1を流れるパイロット油の圧力(パイロット圧)を低減させる。これにより、ハイフロー弁145に付与されるパイロット圧の変化速度が低減されるため、ハイフロー弁145のスプールの移動速度が低下する。その結果、油圧アクチュエータに流す作動油を増量させる増量モードへの切り換え(ハイフロー起動)が緩やかになり、衝撃が緩和される。
【0101】
図10は、速度低減部の第1変形例を示し、
図11は、速度低減部の第2変形例を示している。これらの変形例について説明する。
図10に示す第1変形例において、速度低減部は、第2油路x1と、第2絞り部181と、第3絞り部183と、第3油路y1とを有している。第2油路x1及び第2絞り部181は、
図9に示した第8実施形態と同様である。第3油路y1は、第2絞り部181とハイフロー弁145との間から分岐していて、油タンク131と接続する油路である。第3絞り部183は、第3油路y1に設けられた絞りである。
【0102】
したがって、第1変形例では、第2油路x1の第2絞り部181を通ってハイフロー弁145に流入するパイロット油の量(流入量)を、第3油路y1の第3絞り部183を通ってハイフロー弁145から排出されるパイロット油の量(排出量)よりも多くして、ハイフロー弁145に付与されるパイロット圧を増加させ、ハイフロー弁145のスプールを増量位置145bに切り換える。このとき、第2絞り部181と第3絞り部183の絞り量のバランスを適当に設定し、流入量と排出量とのバランスを最適化することで、ハイフロー弁145に付与されるパイロット圧の変化(増加)速度を低減することができる。これにより、増量モードへの切り換えを緩やかにして衝撃を緩和することができる。
【0103】
一方、非増量モードに切り換える際には、第3油路y1の第3絞り部183を通してハイフロー弁145からパイロット油を排出する。この第3油路y1からのパイロット油の排出によって、ハイフロー弁145に付与されているパイロット圧が減少し、ハイフロー弁45のスプールが非増量位置145aに切り換わる。このとき、第3油路y1に第3絞り部183が設けられていることで、ハイフロー弁145に付与されているパイロット圧の変化(減少)速度を低減することができる。これにより、変速時の衝撃を緩和することが可能となる。
【0104】
図11に示す第2変形例において、速度低減部は、第2油路x1と、第1絞り部180と、第2絞り部181、第3絞り部183及び第3油路y1とを有している。第2変形例において、第2油路x1、第2絞り部181、第3絞り部183及び第3油路y1は、第1変形例と同様である。第1絞り部180は、第2絞り部181とハイフロー弁145との間から分岐し且つ第2パイロット油路r1に接続する油路に設けられている。
【0105】
第2変形例では、第1絞り部180の絞り量と第3絞り部183の絞り量を調整することにより、第1油路v1を通ってハイフロー弁145に供給されるパイロット油の量(供給量)と、第3油路y1を通ってハイフロー弁145からタンク131に排出されるパイロット油の量(排出量)を調整することができる。そのため、第1絞り部180の絞り量と第3絞り部183の絞り量のバランスを適当に設定し、流入量と排出量とのバランスを最適化することで、ハイフロー弁145に対して、該ハイフロー弁145のスプールを増量位置145bに移動させるパイロット圧(設定圧)よりも低い圧力を常に付与することができる。
【0106】
一例として、上述した実施形態においては、油圧切換弁(シリンダ切換弁63、ハイフロー弁145)として、パイロット圧に応じて2つの切換位置(第2切換位置63aと第2切換位置63b、非増量位置145aと増量位置145b)に移動可能なスプールを有する油圧切換弁を用いた例を示したが、3つ以上の切換位置に移動可能なスプールを有する油圧切換弁を用いてもよい。例えば、パイロット圧に応じて3つの切換位置に移動可能なスプールを有する油圧切換弁を用いてもよい。具体的には、油圧切換弁(シリンダ切換弁63、ハイフロー弁145)として、第2切換位置63aと第2切換位置63b、非増量位置145aと増量位置145bの間に中立(ニュートラル)位置を有する油圧切換弁を用いることができる。
<第9実施形態>
図12は、本発明に係る油圧システムの第9実施形態を示している。第9実施形態は、HSTモータ(走行用の油圧モータ)及び油圧切換弁を変更した変形例である。第9実施形態で示すHSTモータ(走行用の油圧モータ)及び油圧切換弁は、全ての実施形態に適用可能である。即ち、他の実施形態のHSTモータ及び油圧切換弁を、第9実施形態で示すHSTモータ及び油圧切換弁に変更してもよい。また、第9実施形態においても、上述した実施形態と同様な構成について説明を省略する。
【0107】
図12に示すように、第9実施形態では、HSTモータ257として、カムモータ(ラジアルピストンモータ)を採用している。このHSTモータ257では、稼動時における容量(モータ容量)の大きさを可変することによって、出力軸の回転やトルクを変更する。詳しくは、HSTモータ257は、第1モータ257Aと、第2モータ257Bとを有している。第1モータ257A及び第2モータ257Bの両方に作動油を供給することにより、モータ容量は大きくなり、HSTモータ257は1速となる。また、第1モータ257Aと第2モータ257Bとのいずれかに作動油を供給することによって、モータ容量は小さくなり、HSTモータ257は2速となる。
【0108】
油圧切換弁263は、HSTモータ257を1速或いは2速に切り換える弁であって、第1切換位置63aと、第2切換位置63bと、中立位置63cとに切り換え可能な弁である。詳しくは、油圧切換弁263の受圧部264に作用するパイロット油の圧力が、設定圧未満である場合、油圧切換弁263は、第1切換位置63aになる。油圧切換弁263が第1切換位置63aである場合、第1モータ257A及び第2モータ257Bの両方に作動油が供給され、HSTモータ257は1速となる。油圧切換弁263の受圧部264に作用するパイロット油の圧力が、設定圧以上である場合、油圧切換弁263は、中立位置63cを経て第2切換位置63bになる。油圧切換弁263が第2切換位置63bである場合、第1モータ257Aに作動油が供給され、HSTモータ257は2速となる。
【0109】
上述した油圧切換弁263と2速切換弁(方向切換弁)64とは、第2油路100xにより接続されている。第1油路100vには第1絞り部80が設けられ、合流部VXと2速切換弁64との間には、第2絞り部81が設けられている。
第3ポンプP3から吐出したパイロット油は、第1絞り部80を通過して油圧切換弁263の受圧部264に作用させることができる。受圧部264に設定圧未満の予圧が与えられた状況下で、2速切換弁64を第2位置64bに切り換えると、油圧切換弁263のパイロット圧が速やかに設定圧に達する。即ち、油圧切換弁263は、第1切換位置63aから中立位置63cを経て第2切換位置63bへと速やかに切り換えることができ、HSTモータ257の1速から2速への切り換え速度を向上させることができる。
【0110】
第2絞り部81は、第2油路100xを流れるパイロット油の量を制限して、2速切換弁64から油圧切換弁263に向かうパイロット圧を低減させる。これにより、油圧切換弁263に付与されるパイロット圧の変化速度が低減されるため、油圧切換弁263の切換え速度を低下させることができる。その結果、HSTモータ257を1速から2速に切り換える際の衝撃が緩和することができる。
<第10実施形態>
図13は、本発明に係る油圧システムの第10実施形態を示している。
図13に示すように、第10実施形態では、第2油路100xのパイロット圧に基づいて2速切換弁(方向切換弁)64を制御する。また、第10実施形態においても、上述した実施形態と同様な構成について説明を省略する。
【0111】
図13に示すように、第2油路100xであって、油圧切換弁263の受圧部264と合流部VXとの間には、パイロット圧を検出する圧力検出部300が接続されている。圧力検出部300は、圧力計(圧力センサ)から構成されている。圧力検出部300は、CPU等から構成された制御部301に接続されている。
制御部301は、当該制御部301に接続された操作部材302及び圧力検出部300が検出したパイロット圧に基づき、2速切換弁64の制御を行う。操作部材302は、速度の切換の操作、即ち、1速或いは2速を設定するスイッチであって、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。シーソ型スイッチにあっては、一方側に揺動することにより1速、他方側に揺動することにより2速に設定することができる。スライド型スイッチにあっては、一方側にスライドすることにより1速、他方側にスライドすることにより2速に設定することができる。プッシュ型スイッチにあっては、押圧を行う毎に1速、2速の順に切り換わる。
【0112】
次に、制御部301による制御について説明する。
圧力検出部300が検出したパイロット圧が設定値未満(設定圧未満)であって、且つ、操作部材302によって1速にする操作がなされた場合、制御部301は、方向切換弁64を第1位置64aにする指令(1速指令ということがある)を当該方向切換弁64に出力する。
【0113】
また、圧力検出部300が検出したパイロット圧が設定値以上(設定圧以上)であって、且つ、操作部材302により2速にする操作がなされた場合、制御部301は、方向切換弁64を第2位置64bにする指令(2速指令ということがある)を当該方向切換弁64に出力する。
制御部301は、方向切換弁64を第2位置にする指令を出力している状態(2速指令を出力している状態)において、圧力検出部300で検出されたパイロット圧が予め定められた圧力未満(設定値未満)になった場合には、1速指令を方向切換弁64に出力する。例えば、2速指令を出力後に第2油路100xのパイロット圧が設定圧以上に上昇し、その後に、第2油路100xのパイロット圧が設定圧未満に低下した場合、制御部301は、方向切換弁64に1速指令を当該方向切換弁64に出力する。また、2速指令を出力後に第2油路100xのパイロット圧が設定圧以上に上昇せずに、設定圧未満のままの状態が所定時間続いた場合、制御部301は、1速指令を方向切換弁64に出力する。
【0114】
つまり、制御部301は、2速指令を出力後に第2油路100xにおけるパイロット圧を監視する。第2油路100xにおけるパイロット圧が設定値以上であれば、2速指令の通り、油圧切換弁263は第2切換位置63bになっていて、HSTモータ257は2速の状態であると考えられる。しかしながら、第2油路100xにおけるパイロット圧が設定値未満の場合は、制御部301は2速指令を出力しているのにも関わらず、油圧切換弁263は第2切換位置63bではなく、中立位置63cになる可能性がある。そのため、制御部301は、方向切換弁64に2速指令を出力後、第2油路100xにおけるパイロット圧が設定値未満である場合には、2速指令の出力を停止して1速指令を出力する。
【0115】
したがって、制御部301が2速指令を出力している状況下で何らかの事情によって第2油路100xにおけるパイロット圧が低下した場合には、1速指令を方向切換弁64に出力することにより、油圧切換弁263が中立位置63cで維持されることを防止している。例えば、制御部301が2速指令を出力している状況下において、エンジン回転数の急速な低下、ヒッチシリンダの急速な使用時、作動油の極端な高温化などによって、第2油路100xにおけるパイロット圧が一時的に低下した場合での不用意な中立位置63cの切換を防止することができる。
【0116】
上述した第10実施形態では、第2油路100xに圧力検出部300を設けていたが、
図18に示す第3変形例ように、第4油路100aに圧力検出部300を設けてもよい。この場合も、制御部301は、2速指令を出力している状態において、圧力検出部300で検出されたパイロット圧が設定値未満になった場合には、1速指令を方向切換弁64に出力する。また、制御部301は、1速指令を方向切換弁64に出力後、圧力検出部300で検出されたパイロット圧が設定値以上になり、且つ、操作部材302で2速の設定が行われれば、方向切換弁64に2速指令を出力する。第3変形例では、何らかの事情によって第4油路100aにおけるパイロット圧が低下した場合には、2速から1速に強制的に変更することができる。その後、第4油路100aにおけるパイロット圧の低下が回復した場合、作業者が操作部材302を操作することにより、1速から2速に戻すことができる。
【0117】
また、
図19に示す第4変形例ように、第2油路100x及び第4油路100aに圧力検出部300を設けてもよい。圧力検出部300は、第2油路100xに設けられて当該第2油路100xのパイロット油を検出する第1圧力検出部300aと、第4油路100aに設けられて当該第4油路100aのパイロット油を検出する第2圧力検出部300bとを有している。
【0118】
制御部301は、2速指令を出力している状態において、第1圧力検出部300aで検出されたパイロット圧が設定値未満になった場合には、1速指令を方向切換弁64に出力する。ここで、制御部301が1速指令を方向切換弁64に出力後、第2圧力検出部300bで検出されたパイロット圧が再び設定値以上になる場合がある。パイロット圧が設定値以上になった場合には、制御部301は、方向切換弁64に対して自動的に2速指令を出力する。
【0119】
或いは、制御部301は、1速指令を方向切換弁64に出力後、第2圧力検出部300bで検出されたパイロット圧が設定値以上になり、且つ、操作部材302で2速の設定が行われれば、方向切換弁64に2速指令を出力する。この場合、第2圧力検出部300bで検出されたパイロット圧が所定値未満になっている状態で、操作部材302によって、方向切換弁64を2速指令(第2位置)にする操作が行われたとしても、制御部302は、方向切換弁64を1速指令(第1位置)に保持する。
【0120】
つまり、制御部302は、2速から1速に強制的に変更している状況下(第1位置64aにする指令を出力している状態)で第2圧力検出部300bで検出されたパイロット圧が設定値以上に復帰した場合に、方向切換弁64を第2位置64bすることにより、2速に回復させることができる。なお、1速から2速に復帰させるときの第2圧力検出部300bで検出されたパイロット圧(復帰圧)は、上述した設定値以上でなくてもよい。例えば、第2切換位置63bにするパイロット圧(設定値)と、1速から2速に復帰させるための復帰圧とは同じであってもよいが、復帰圧が設定圧と異なっていてもよい。
<第11実施形態>
図14は、本発明に係る油圧システムの第11実施形態を示している。
図14に示すように、第11実施形態では、第2油路x1のパイロット圧に基づいてハイフロー切換弁146を制御する。また、第11実施形態においても、上述した実施形態と同様な構成について説明を省略する。
【0121】
図14に示すように、ハイフロー切換弁146とハイフロー弁145とを接続する第2油路x1には、パイロット圧を検出する圧力検出部300が接続されている。圧力検出部300で検出した圧力は、制御部170に出力される。
圧力検出部300が検出したパイロット圧が設定値未満であって、且つ、スライドボタン171によって増量モードにする操作がなされた場合、制御部170は、ハイフロー切換弁146を作用位置(第2位置)146aにする指令(増量指令ということがある)を当該ハイフロー切換弁146のソレノイド146cに出力する。即ち、制御部170は、ハイフロー切換弁146のソレノイド146cを励磁する。
【0122】
制御部170は、ソレノイド146cを励磁している状態(増量指令を出力している状態)において、圧力検出部300で検出されたパイロット圧が予め定められた圧力未満(設定値未満)になった場合には、ハイフロー切換弁146を非作用位置(第1位置)146bにする指令(非増量指令ということがある)を当該ハイフロー切換弁146のソレノイド146cに出力する。即ち、制御部170は、ハイフロー切換弁146のソレノイド146cを消磁する。
【0123】
例えば、増量指令を出力後に第2油路x1のパイロット圧が設定圧以上に上昇し、その後に、第2油路x1のパイロット圧が設定圧未満に低下した場合、制御部170は、非増量指令をハイフロー切換弁146に出力する。また、増量指令を出力後に第2油路x1のパイロット圧が設定圧以上に上昇せずに、設定圧未満のままの状態が所定時間続いた場合、制御部170は、非増量指令をハイフロー切換弁146に出力する。
【0124】
つまり、制御部170は、増量指令を出力後に第2油路x1におけるパイロット圧を監視する。第2油路x1におけるパイロット圧が設定値以上であれば、増量指令の通り、ハイフロー弁146は増量位置145bになっていて、確実に作動油の増量が行われていると考えられる。しかしながら、第2油路x1におけるパイロット圧が設定値未満の場合は、制御部170が増量指令を出力しているのにも関わらず、ハイフロー弁146のスプールの移動量が小さくなる。その結果、ハイフロー弁146を通過して増量油路βに流れる作動油が減少してしまい、作業性が低下する可能性がある。そのため、制御部170は、ハイフロー切換弁146に増量指令を出力後、第2油路x1におけるパイロット圧が設定値未満になり、増量が不十分になると、強制的に増量指令の出力を停止して非増量指令を出力する。
<第12実施形態>
図15〜
図17は、本発明に係る油圧システムの第12実施形態を示している。第12実施形態は、HSTモータ(走行用の油圧モータ)、油圧切換弁、方向切換弁、圧力付与部、速度低減部を変更した変形例である。HSTモータ及び油圧切換弁は、第9実施形態で示した構成と同様であるため説明を省略する。また、第12実施形態においても、上述した実施形態と同様な構成について説明を省略する。
【0125】
図15に示すように、第3ポンプP3の吐出油路100aの終端には、方向切換弁64が接続されている。方向切換弁64と油圧切換弁263とは、第2油路100xにより接続されている。この方向切換弁64は、励磁によって内部に弁の開度が変更可能な電磁式の比例弁、即ち、電磁比例弁である。比例弁(電磁比例弁)64の開度を変更すると、吐出油路100aから第2油路100xに流れるパイロット油の流量が変わる。即ち、比例弁64の開度を変更すると、油圧切換弁263に作用するパイロット圧を変更することができる。
【0126】
例えば、比例弁64を閉鎖した状態(全閉した状態)では、油圧切換弁263に作用するパイロット圧は略零である。その結果、油圧切換弁263は、第1位置63aとなる。この状態から比例弁64を閉鎖した状態から徐々に開き、当該比例弁64の開度を大きくすると、油圧切換弁263に作用するパイロット圧が比例弁64の開度に応じて増加する。油圧切換弁263に作用するパイロット圧が設定値を超える状態まで、比例弁64の開度を大きくすると、油圧切換弁263は、中立位置63cを経て第2切換位置63bに切り換わる。つまり、比例弁64の開度と油圧切換弁263に作用するパイロット圧とは比例関係にあって、比例弁64の開度に伴って油圧切換弁263における切換位置が変化する。
【0127】
説明の便宜上、比例弁64の開度に関して、油圧切換弁263を第1位置63aにする開度を第1開度、油圧切換弁263を第2位置63bにする開度を第2開度という。また、油圧切換弁263が第1位置63aから中立位置に切り換わる境界の開度を第1境界値、油圧切換弁263が中立位置から第2位置63bに切り換わる境界の開度を第2境界値という。
【0128】
比例弁64は、制御部400に接続されている。制御部400は、当該制御部400に接続された操作部材302に基づき、比例弁64の開度の制御を行う。操作部材302は、第10実施形態と同様である。
次に、制御部400による制御について説明する。
操作部材302によって1速にする操作がなされた場合、制御部400は、比例弁64に電流等の指令(制御信号)を出力して、当該比例弁64の開度を第1開度にする。操作部材302により2速にする操作がなされた場合、制御部400は、比例弁64に電流等の指令(制御信号)を出力して、当該比例弁64の開度を第2開度にする。
【0129】
さて、制御部400は、圧力付与部401を備えている。圧力付与部401は、電気・電子回路やプログラム等から構成されている。この圧力付与部401は、後述するように、比例弁64に指令(制御信号)を出力することで当該比例弁64の開度を設定する。
圧力付与部401は、操作部材302によって1速に設定されている場合、比例弁64の開度を零ではなく、第1境界値の近傍に設定する。
図16Aに示すように、比例弁64の開度が0以上第1境界値未満であれば、油圧切換弁263は第1位置63aであってHSTモータ257は1速となる。比例弁64の開度が第1境界値を超えると、油圧切換弁263は中立位置63cとなる。
【0130】
ここで、操作部材302によって1速に設定されている場合、圧力付与部401は、比例弁64の開度を、第1開度の範囲内であって出来るだけ第1境界値に近づけた値に設定する。つまり、圧力付与部401は、1速に設定されている場合は、比例弁64を全閉にするのではなく、油圧切換弁263が中立位置63cに切り換わる直前の開度に設定する。
図16Aに示すように、例えば、比例弁64の開度を第1開度の範囲内で所定値Qに設定する。なお、制御部400は、操作部材302によって2速に設定された場合、比例弁64の開度を増加させて、比例弁64の開度を第2開度にする。
【0131】
したがって、圧力付与部401は、1速に設定されている場合は、比例弁64の開度を第1境界値の近傍に設定して保持しているため、第2油路100xに流れるパイロット油の圧力を、所定の切換位置の1つである中立位置63cに切換えるパイロット圧に近づけて保持することができる。その結果、1速から2速に切り換えた場合は、素早く2速にすることができる。
【0132】
さて、制御部400は、速度変更部402を備えている。
速度変更部402は、電気・電子回路やプログラム等から構成されている。速度変更部402は、速度低減部403を含んでいる。
図16AのG1、G2に示すように、速度変更部402は、1速から2速に切り換える場合、比例弁64の弁を開く速度を変更することで、油圧切換弁263に作用するパイロット圧の増加速度を変更する。また、2速から1速に切り換える場合は、速度変更部402(速度低減部403)は、比例弁65の弁を閉じる速度を変更することで、油圧切換弁263に作用するパイロット圧の減少速度を変更する。
【0133】
制御部400には、作業機1の走行速度(対地速度)を検出する第1走行検出部404が接続されている。第1走行検出部404は、作業機1の車速を検出する車速センサ等で構成されている。第1走行検出部404は、作業機1を検出可能なものであればどのようなものであってもよい。
図16Aに示すように、速度変更部402は、比例弁64の開度の速度である開閉速度に関し、走行速度が第1速度(予め設定された所定値以上であって高速)である場合に当該第1速度に対応する第1開閉速度(制御値)G1と、走行速度が第1速度より低い第2速度(高速よりも低い低速)である場合に当該第2速度に対応する第2開閉速度(制御値)G2とを設定可能である。即ち、第1走行検出部404で検出された走行速度が予め設定された所定値以上であって高速である場合、速度変更部402は、変速時(1速から2速に切り換える際、或いは、2速から1速に切り換える際)には、比例弁64の開閉速度を、第2開閉速度である制御値G2よりも小さい第1開閉速度である制御値G1に設定する。つまり、速度変更部402は、走行速度が高速である場合は、変速時での比例弁64の開閉速度を低速に比べて遅くする。このように、速度低減部402は、比例弁64の開閉速度を遅くすることで、第2油路100xから油圧切換弁263に付与するパイロット圧の変化速度を低減する。これによれば、走行速度が高速の場合は、油圧切換弁263が中立位置63である時間(ニュートラルである時間)を長くすることができ、変速による衝撃を緩和することができる。
【0134】
一方、
図16Aに示すように、速度変更部402は、走行速度が低速である場合、変速時には、比例弁64の開閉速度を、第1開閉速度である制御値G1よりも大きい第2開閉速度である制御値G2に設定する。つまり、速度変更部402は、走行速度が低速である場合は、変速時での比例弁64の開閉速度を高速に比べて速くする。これによれば、走行速度が低速の場合は、ニュートラルである時間を短くすることができ、変速による振動を抑えることができる。
【0135】
上述した実施形態では、速度変更部402が走行速度に応じて比例弁64の開閉速度を変化させているが、速度変更部が様々な条件に応じて比例弁64の開閉速度を変化させてもよい。以下、変形例について説明する。説明の便宜上、1速から2速に変速することを増速、2速から1速に変速することを減速という。
第5変形例では、走行の有無により比例弁64の開閉速度を変更する。第5変形例を採用する場合は、
図15に示すように、作業機1の走行の有無を検出する第2走行検出部405を接続する。第2走行検出部405は、作業機1の車速を検出する車速センサ等で構成されている。第2走行検出部405は、作業機1の有無を検出可能なものであればどのようなものであってもよい。例えば、第2走行検出部405は、走行系の操作部材の操作の有無により走行の有無を検出する装置であってもよいし、走行系のリモコン弁のパイロット圧により走行の有無を検出する装置であってもよい。
【0136】
図16Bに示すように、速度変更部402は、比例弁64の開度の速度である開閉速度に関し、走行が有りに対応する第3開閉速度(制御値)G3と、走行が無しに対応する第4開閉速度(制御値)G4とを設定可能である。即ち、速度変更部402は、走行の有無によって、比例弁64の開閉速度を変更可能である。ここで、第2走行検出部405が計測した車速が0を超えることにより作業機の走行があると当該第2走行検出部405が判断する(走行を検出する)と、速度変更部は402は、第3開閉速度(制御値)G3に示すように、変速時の比例弁64の開閉速度を緩やかにする。一方、第2走行検出部405が計測した車速が0であることにより作業機の走行が無しと当該第2走行検出部405が判断する(走行が無いことを検出する)と、速度変更部402は、第4開閉速度(制御値)G4に示すように、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。
【0137】
第6変形例では、作業機が斜面を登っているときに比例弁64の開閉速度を変更する。作業機が斜面を登っている状況下で増速する場合は、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を遅くする。これにより、作業機が斜面を登っているときに増速した場合における衝撃を緩和することができる。一方、作業機が斜面を登っている状況下で減速した場合は、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。これにより、作業機が斜面を登っているときに減速した場合における一時的な速度低下を抑制することができる。
【0138】
第7変形例では、作業機が斜面を下っているときに比例弁64の開閉速度を変更する。作業機が斜面を下っている状況下で増速する場合は、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。これにより、作業機の斜面を下っている状況でも増速の応答性が上がり、増速の操作性を向上させることができる。一方、作業機が斜面を下っている状況下で減速する場合は、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を遅くする。これにより、作業機が斜面を下っている状況下で減速した場合における衝撃の緩和を行うことができる。
【0139】
なお、作業機が斜面を登っているか下っているかは、作業機に搭載した角度センサに基づき判断する。機体フレーム2に、水平方向に対する角度を検出可能な角度センサを設け、角度センサを制御部400に接続する。制御部400は、角度センサで検出された角度に基づいて作業機が斜面を登っているか下っているかを判断する。
第8変形例では、作動油の温度(油温)に応じて比例弁64の開閉速度を変更する。作動油の温度が低温である状況下で増速をする場合に、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を遅くする。一方、作動油の温度が低温である状況下で減速をする場合に、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。これにより、作動油の温度が低いことにより走行負荷が増加している状況下での変速の操作性を向上させることができる。
【0140】
なお、作動油の温度は、作業機に搭載した温度センサに基づき判断する。機体フレーム2に、第2油路100xに流れる作動油の温度を検出可能な温度センサを設け、温度センサを制御部400に接続する。制御部400は、温度センサで検出された油温に基づいて、油温が低温であるか否かを判断する。低温とは、作業機で一般的に用いられる粘度グレード(動粘度)の作動油における粘度が非常に高くなる温度域であって、この高い粘度の影響を受けて、油路における油圧が上昇しやすくなる。また、作動油の温度及び外気が低温であり且つ1速に保持している場合は、2速にならない程度に比例弁64の開度を大きくすることが望ましい。
【0141】
第9変形例では、走行負荷に応じて比例弁64の開閉速度を変更する。走行負荷とは、作業機1が走行したときの走行系機器に掛かる負荷である。例えば、走行モータ21L,21Rに掛かる作動油の圧力(走行圧)、エンジンに掛かる負荷である。走行圧が高い場合に、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。或いは、エンジン回転数が目標回転数に対して低い場合に、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。或いは、エンジンのシリンダ内に噴射する燃料噴射量が多くエンジンに負荷が掛かっている場合に、速度変更部は、変速時の比例弁64の開閉速度を速くする。
【0142】
なお、速度変更部によって比例弁64の開閉速度を増減(変更)する方法は、
図17Aに示すように、時間の経過に基づいて直線的に増減させてもよい。また、
図17Bに示すように、時間経過に基づいて曲線的に増減させてもよいし、
図17C及び17Dに示すように時間経過に基づいて段階的に増減させてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0143】
第8実施形態、第1変形例及び第2変形例では、第1油路v1は、第2油路x1と連動油路wとを接続していたが、これに代え、第1油路v1は、第2油路x1とパイロット圧供給油路sとを接続してもよい。