(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のガイド部材の基端側に接続された状態で、前記溶接ワイヤーを送給するライナーを備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のワイヤー狙いガイド。
前記第2のガイド部材には、前記ライナーから送給された溶接ワイヤーを案内する第2のガイド部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のワイヤー狙いガイド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用したワイヤー狙いガイド及び溶接装置について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、TIG溶接用トーチにワイヤー狙いガイド(フィラーガイド)を取り付けることによって、溶加材である溶接ワイヤー(フィラー)の送給を自動で行いながら、半自動のTIG溶接を行う溶接装置を例に挙げて説明する。
【0018】
(溶接用トーチ)
先ず、
図1(A),(B)に示すように、TIG溶接用トーチ100の一例について説明する。なお、
図1(A)は、TIG溶接用トーチ100の一例を示す側面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示すTIG溶接用トーチ100の要部断面図である。
【0019】
TIG溶接用トーチ100は、
図1(A),(B)に示すように、被溶接物との間でアークを発生させる非消耗電極101と、非消耗電極101を内側に挿入した状態で支持するコレット102と、非消耗電極101を先端側から突出させた状態でコレット102を内側に保持するコレットボディ103と、コレットボディ103が取り付けられるトーチボディ104と、非消耗電極101の周囲を囲んだ状態でコレットボディ103に取り付けられると共に、アークによって生じた被溶接物の溶融池に向かってシールドガスを放出するトーチノズル105と、トーチボディ104とトーチノズル105との間に配置される前側ガスケット106と、トーチボディ104との間に後側ガスケット107を配置した状態で取り付けられるトーチキャップ108と、トーチボディ104が取り付けられると共に、使用者が把持するハンドル109とを概略備えている。
【0020】
以上のようなTIG溶接用トーチ100では、溶接ケーブルCを接続し、溶接ケーブルCを介して供給されるシールドガスをトーチノズル105から放出すると共に、溶接ケーブルCを介して供給される電力によって非消耗電極101と被溶接物との間でアークを発生させながら、このTIG溶接用トーチ100を用いて溶接を行うことができる。
【0021】
なお、溶接ケーブルCの他端は、溶接電源装置(図示せず。)と接続されており、この溶接ケーブルCを介して溶接電源装置からTIG溶接用トーチ100へと電力及びシールドガスを供給することが可能となっている。また、シールドガスについては、例えばアルゴンやヘリウムといった不活性ガス等を挙げることができる。なお、TIG溶接用トーチ100は、上述したハンドルタイプのものに限らず、ペンシルタイプのものであってもよい。
【0022】
(ワイヤー狙いガイド及び溶接装置)
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態として、
図2〜
図4に示すワイヤー狙いガイド1について説明する。なお、
図2は、ワイヤー狙いガイド1の構成を示す平面図である。
図3は、ワイヤー狙いガイド1の構成を示す分解平面図である。
図4は、ワイヤー狙いガイド1の構成を示す側面図である。
【0023】
ワイヤー狙いガイド1は、
図2〜
図6に示すように、溶接ワイヤーWを案内する第1のガイド部材2及び第2のガイド部材3と、第2のガイド部材3の基端側に接続された状態で溶接ワイヤーWを送給するライナー(コンジット)4と、第1のガイド部材2と第2のガイド部材3とを回動自在に連結する連結部5と、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を固定する固定部6と、第2のガイド部材3をTIG溶接用トーチ100に取り付ける取付部7とを備えている。
【0024】
第1のガイド部材2は、例えば銅又は銅合金などの電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料を用いて、略矩形平板状に形成されている。第1のガイド部材2の先端側には、溶接ワイヤーWを貫通させるノズル部8が設けられている。ノズル部8は、軸線方向に貫通する貫通孔8aを有している。ノズル部8は、その先端側が漸次細くなる形状(先細形状)を有し、その基端側を第1のガイド部材2を構成する本体部2aに対して螺合により着脱自在に取り付けることが可能となっている。
【0025】
第1のガイド部材2には、溶接ワイヤーWをノズル部8側へと案内する第1のガイドローラー(第1のガイド部)9が設けられている。第1のガイドローラー9は、その軸部9aが本体部2aの一面にネジ止めにより取り付けられることによって、本体部2aの一面と平行な面内で回転自在に支持されている。また、第1のガイドローラー9の外周面には、溶接ワイヤーWを案内するガイド溝9bが設けられている。
【0026】
第1のガイドローラー9の外周面、すなわち溶接ワイヤーWと接触する部分は、溶接ワイヤーWとの接触により電流が流れないように、例えばセラミックや樹脂などの絶縁体からなっている。なお、第1のガイドローラー9の外周面、すなわち溶接ワイヤーWと接触する部分については、金属とすることも可能である。しかしながら、溶接ワイヤーWと第1のガイドローラー9との絶縁が必要な場合には、上述した溶接ワイヤーWと接触する部分をセラミックや樹脂などの絶縁体とすることが望ましい。
【0027】
第1のガイドローラー9は、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置されている。互いに対向する第1のガイドローラー9の間は、ノズル部8の貫通孔8aの延長線上に位置している。また、互いに対向する第1のガイドローラー9の間に形成される隙間は、溶接ワイヤーWの外径とほぼ一致している。これにより、溶接ワイヤーWは、互いに対向する第1のガイドローラー9に挟み込まれた状態で、ノズル部8の貫通孔8aへと案内される。
【0028】
第2のガイド部材3は、例えば銅又は銅合金などの電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料を用いて、第1のガイド部材2と同程度の大きさで略矩形平板状に形成されている。第2のガイド部材3の基端側には、ライナー4から送給された溶接ワイヤーWを案内する第2のガイドローラー(第2のガイド部)10が設けられている。
【0029】
第2のガイドローラー10は、その軸部10aが第2のガイド部材3を構成する本体部3aの一面にネジ止めにより取り付けられることによって、本体部3aの一面と平行な面内で回転自在に支持されている。また、第2のガイドローラー10の外周面には、溶接ワイヤーWを案内するガイド溝10bが設けられている。
【0030】
第2のガイドローラー10の外周面、すなわち溶接ワイヤーWと接触する部分は、溶接ワイヤーWとの接触により電流が流れないように、例えばセラミックや樹脂などの絶縁体からなっている。なお、第2のガイドローラー10の外周面、すなわち溶接ワイヤーWと接触する部分については、金属とすることも可能である。しかしながら、溶接ワイヤーWと第2のガイドローラー10との絶縁が必要な場合には、上述した溶接ワイヤーWと接触する部分をセラミックや樹脂などの絶縁体とすることが望ましい。
【0031】
第2のガイドローラー10は、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置されている。互いに対向する第2のガイドローラー10の間は、本体部3aの基端側の取り付けられたライナー4の延長線上に位置している。また、互いに対向する第2のガイドローラー10の間に形成される隙間は、溶接ワイヤーWの外径とほぼ一致している。これにより、溶接ワイヤーWは、互いに対向する第2のガイドローラー10に挟み込まれた状態で、第1のガイド部材2側へと案内される。
【0032】
ライナー4は、本体部3aの基端側に軸線方向に延長して設けられた延長部3bに対して、螺合により着脱自在に取り付けることが可能となっている。また、ライナー4は、ワイヤー送給装置(図示せず。)と接続されており、このワイヤー送給装置によって溶接ワイヤーWを自動で送給することが可能となっている。
【0033】
連結部5は、第1のガイド部材2の基端側に第1の連結片11と、第2のガイド部材3の先端側に第2の連結片12とを有している。第1の連結片11は、第1のガイド部材2(本体部2a)の第2の連結片12と対向する面側に、第2の連結片12の厚みに対応した深さの凹部11aを形成した部分からなる。第2の連結片12は、第2のガイド部材3(本体部3a)の第1の連結片11と対向する面側に、第1の連結片11の厚みに対応した深さの凹部12aを形成した部分からなる。
【0034】
第1の連結片11には、支持ボルト13を貫通させる第1の軸孔14が設けられている。第1の軸孔14は、第1の連結片11の面内における幅方向の一方側に位置して、支持ボルト13の軸部を貫通させる丸孔を形成している。第2の連結片12には、支持ボルト13を貫通させる第2の軸孔15が設けられている。第2の軸孔15は、第2の連結片12の面内における幅方向の一方側に位置して、支持ボルト13の軸部を貫通させる丸孔を形成している。
【0035】
連結部5では、互いの凹部11a,12aが対向するように第1の連結片11と第2の連結片12とを重ね合わせた状態で、第1の軸孔14及び第2の軸孔15に支持ボルト13の軸部を貫通させた状態で、この軸部の先端側にナット16を締結する。これにより、第1の連結片11(第1のガイド部材2の基端側)と第2の連結片12(第2のガイド部材3の先端側)とを回動自在に連結することが可能となっている。
【0036】
連結部5では、支持ボルト13とナット16との締結状態を保持するため、その間に例えば板座金やばね座金などのワッシャー(図示せず。)を適宜配置することが可能である。
【0037】
固定部6は、第1の連結片11側に固定ボルト17を貫通させるガイドスリット18と、固定ボルト17を貫通させる第3の軸孔19とを有している。ガイドスリット18は、第1の連結片11の面内における幅方向の他方側に位置して、固定ボルト17の軸部を貫通させると共に、第1の軸孔14を中心とした円弧状の長孔を形成している。第3の軸孔19は、第2の連結片12の面内における幅方向の他方側に位置して、固定ボルト17の軸部を貫通させる丸孔を形成している。
【0038】
固定部6では、ガイドスリット18及び第3の軸孔19に固定ボルト17の軸部を貫通させた状態で、この軸部の先端側にナット20を締結する。これにより、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を所定の回動範囲θで回動させることができる。すなわち、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を所定の角度範囲θで折り曲げることが可能である。
【0039】
ここで、上述した回動範囲(角度範囲)θは、ガイドスリット18内を固定ボルト17の軸部が相対的に移動する範囲である。この回動範囲(角度範囲)θについては、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を折り曲げる前の状態(互いの中心軸が一致した状態)を0°としたとき、0°〜90°の範囲、より好ましくは0°〜70°の範囲とすることが好ましい。
【0040】
また、固定部6では、固定ボルト17とナット20との締結力を強めることによって、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を固定することが可能である。これにより、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2が折り曲げられた状態を保持することが可能である。
【0041】
なお、固定部6では、固定ボルト17とナット20との締結状態を保持するため、その間に例えば板座金やばね座金などのワッシャー(図示せず。)を適宜配置することが可能である。
【0042】
なお、
図2中に示すナット16,20については、支持ボルト13及び固定ボルト17とは反対側(裏側)に位置するため、図示されていないが、便宜上支持ボルト13及び固定ボルト17と同じ位置に符号を付すものとする。
【0043】
取付部7は、第2のガイド部材3の延長部3bに取り付けられた取付治具である。取付部7は、TIG溶接用トーチ100に取り付け可能な構造であればよく、その取付構造については特に限定されるものではない。また、取付部7は、TIG溶接用トーチ100に対して着脱自在とすることも可能である。さらに、ワイヤー狙いガイド1を前後方向にスライドさせることによって取付位置を調整することも可能である。
【0044】
以上のような構成を有するワイヤー狙いガイド1は、
図5に示すように、トーチノズル105とノズル部8とが並ぶように取付部7を介してTIG溶接用トーチ100に取り付けられる。これにより、TIG溶接用トーチ100とワイヤー狙いガイド1とを備えた溶接装置が構成される。
【0045】
この溶接装置では、
図6に示すように、TIG溶接用トーチ100にワイヤー狙いガイド1取り付けた後に、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を折り曲げることによって、第2のガイド部材3に対する第1のガイド部材2の角度調整を行う。これにより、第1のガイド部材2のノズル部8から送り出される溶接ワイヤーWの向きを変える(調整する)ことが可能である。そして、このような調整を行った後に、固定部6により第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を固定する。
【0046】
以上のように、本実施形態のワイヤー狙いガイド1では、上述した第2のガイド部材3に対する第1のガイド部材2の角度調整を行うことによって、ノズル部8からアーク直下の溶融池に向かって溶接ワイヤーWを正確に供給することが可能である。さらに、従来のような取付治具に回動機構を設けてワイヤー狙いガイドの角度調整を行う構成に比べて、TIG溶接用トーチ100のノズル廻りを小さくできるため、狭隘部へのアプローチが容易となる。
【0047】
また、本実施形態のワイヤー狙いガイド1では、ライナー4から送給される溶接ワイヤーWをノズル部8に挿入する際に、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を折り曲げる前の状態(θ=0°)とする。この場合、ライナー4から送給される溶接ワイヤーWの軸線上において、この溶接ワイヤーWを挟み込む第1のガイドローラー9の間と、第2のガイドローラー10の間とが一直線上に並ぶことになる。これにより、ライナー4から送給される溶接ワイヤーWを曲げることなく、ノズル部8の貫通孔8aに容易に挿入することが可能である。
【0048】
一方、溶接ワイヤーWをノズル部8に挿入した後は、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を折り曲げることによって、溶接ワイヤーWを挟み込む第1のガイドローラー9と第2のガイドローラー10との間で、溶接ワイヤーWを容易に曲げることが可能である。
【0049】
さらに、本実施形態のワイヤー狙いガイド1では、
図7に示すように、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2が折り曲げられた状態において、溶接ワイヤーWをノズル部8の内側に確実に接触させることができる。この場合、溶接ワイヤーWに電流を流すホットワイヤーにおいて、溶接ワイヤーWのノズル部8と接触する位置(給電部)が固定されるため、ワイヤー狙いガイド1側の給電部と被溶接物(母材)との間の電気抵抗の変動を抑制し、安定した状態で溶接を行うことが可能である。
【0050】
なお、本発明は、上記ワイヤー狙いガイド1の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。以下、上記ワイヤー狙いガイド1の変形例について説明するが、上記ワイヤー狙いガイド1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0051】
(変形例1)
第1の変形例では、例えば
図8(A)〜(H)に示すように、上述した第1のガイドローラー9及び第2のガイドローラー10の配置や数について、適宜変更を加えることが可能である。
【0052】
具体的には、
図8(A)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、上記第2のガイドローラー10を省略し、上記第1のガイドローラー9のみを配置した構成とすることが可能である。
【0053】
また、
図8(B)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、上記第1のガイドローラー9を省略し、上記第2のガイドローラー10のみを配置した構成とすることが可能である。
【0054】
また、
図8(C)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置された上記第1のガイドローラー9及び上記第2のガイドローラー10の一方側のみを配置した構成とすることが可能である。
【0055】
また、
図8(D)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置された上記第1のガイドローラー9及び上記第2のガイドローラー10の他方側のみを配置した構成とすることが可能である。
【0056】
また、
図8(E)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置された上記第1のガイドローラー9の一方側と、上記第2のガイドローラー10の他方側との片側のみを配置した構成とすることが可能である。
【0057】
また、
図8(F)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置された上記第1のガイドローラー9の他方側と、上記第2のガイドローラー10の一方側との片側のみを配置した構成とすることが可能である。
【0058】
また、
図8(G)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置された上記第1のガイドローラー9の片側のみを配置し、上記第2のガイドローラー10を省略した構成とすることが可能である。
【0059】
また、
図8(H)に示すように、上記ワイヤー狙いガイド1の構成のうち、溶接ワイヤーWを挟んだ両側に互いに対向して配置された上記第2のガイドローラー10の片側のみを配置し、上記第1のガイドローラー9を省略した構成とすることが可能である。
【0060】
なお、本実施形態では、第1のガイド部及び第2のガイド部として、第1のガイドローラー9及び第2のガイドローラー10を例示しているが、このような回転自在とされたガイドローラーの代わりに、溶接ワイヤーWを案内するガイド溝が設けられたガイドピンとすることも可能である。
【0061】
(変形例2)
第2の変形例では、例えば
図9、
図10及び
図11に示すワイヤー狙いガイド1Aのような構成とすることも可能である。具体的に、このワイヤー狙いガイド1Aは、
図9、
図10及び
図11に示すように、上記ガイドスリット18の代わりに、ガイド部18Aを有している。ガイド部18Aは、第1の連結片11の幅方向の他方側の端縁部に沿って、第1の軸孔14を中心に円弧状に切り欠き形成されている。また、ワイヤー狙いガイド1Aでは、上記ナット20の代わりに、ガイド部18Aに沿った方向の両端部と当接される特殊ナット20Aが用いられている。
【0062】
この構成の場合、ガイド部18Aに沿って固定ボルト17の軸部が相対的に移動し、特殊ナット20Aがガイド部18Aに沿った方向の両端部と当接される以外は、上記固定部6と同じ構成である。これにより、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を所定の角度範囲θで折り曲げることが可能である。また、固定ボルト17と特殊ナット20Aとの締結力を強めることによって、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を固定することが可能である。
【0063】
(変形例3)
第3の変形例では、上述したワイヤー狙いガイド1,1Aの構成に限らず、例えば
図12(A),(B)に示すような構成に、適宜変更を加えることが可能である。
【0064】
具体的には、
図12(A)に示すように、上記ガイドスリット18の代わりに、第1の連結片11の面内における幅方向の他方側に位置して、第1の軸孔14を中心に複数の位置決め孔18Bが円弧状に配置された構成とすることが可能である。この構成の場合、複数の位置決め孔18Bの中から固定ボルト17の軸部を貫通させる位置決め孔18Bを選択することによって、第2のガイド部材3に対する第1のガイド部材2の角度θを段階的に切り替えることが可能である。
【0065】
また、
図12(B)に示すように、上記ガイドスリット18の代わりに、第1の連結片11の面内における幅方向の他方側に位置して、第1の軸孔14を中心に円弧状のガイド溝18Cを形成した構成としてもよい。この構成の場合、固定ボルト17及びナット20を省略し、第3の軸孔19からボールタイプのネジ(図示せず。)を締結する。これにより、ガイド溝18C内をボールタイプのネジが相対的に移動する範囲で、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を折り曲げることが可能である。さらに、ボールタイプのネジをガイド溝18Cの底面に押し付ける位置まで締め込むことによって、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を固定することが可能である。
【0066】
また、上記固定ボルト17やナット20については、手動により締結可能な蝶ボルトや蝶ネジを用いることも可能である。この場合、工具を用いることなく、第2のガイド部材3に対して第1のガイド部材2を容易に固定することが可能となる。
【0067】
(変形例4)
第4の変形例では、例えば
図13(A),(B)に示すように、上述したワイヤー狙いガイド1の構成の加えて、ライナー4とノズル部8との間に、溶接ワイヤーWを貫通させる絶縁チューブ21を配置した構成としてもよい。絶縁チューブ21は、ライナー4とノズル部8との間を連結するように配置されている。また、第1のガイド部材2と第2のガイド部材3との間で、溶接ワイヤーWと共に曲げることが可能である。なお、絶縁チューブには、例えばコイルライナーや樹脂チューブなどを用いることができる。
【0068】
この構成の場合、絶縁チューブ21により溶接ワイヤーWが被覆されているため、ホットワイヤー時に溶接ワイヤーWとの接触による感電や火花の発生などを防ぐことが可能である。
【0069】
(変形例5)
変形例5では、上記TIG溶接用トーチ100に限らず、上記ワイヤー狙いガイド1が取り付けられる溶接用トーチについては、例えば
図14(A)に示すMIG/MAG溶接用トーチ100Aや、
図14(B)に示すプラズマアーク溶接用トーチ100Bであってもよい。
【0070】
また、溶接方法としては、上述した溶接ワイヤーWに電流を流すホットワイヤーに限らず、溶接ワイヤーに電流を流さないコールドワイヤーや、これらホットワイヤー及びコールドワイヤーを組み合わせた方法としてもよい。
【0071】
さらに、溶接方法としては、MAG溶接やMIG溶接などの消耗電極式溶接、TIG溶接やプラズマ溶接などの非消耗電極式溶接、レーザー光を用いたレーザー溶接、又は、それらを組み合わせた複合溶接などがある。
【0072】
特に、溶接ワイヤーWの外径がΦ1.0mm以上となる場合は、溶接ワイヤーがより一層硬くなるため、本実施形態のワイヤー狙いガイド1,1Aを用いることによって、作業性を改善することが可能である。
【0073】
また、本発明が適用される溶接用トーチについては、トーチノズルからシールドガスを放出する一重ノズル構造に必ずしも限定されるものではない。例えば、シールドガスとして、内側のトーチノズル(インナーノズル)から不活性ガスを放出すると共に、それよりも外側のトーチノズル(アウターノズル)から酸化性ガスを放出するといった二重ノズル構造とすることも可能である。
【0074】
また、本発明が適用される溶接用トーチについては、空冷式と水冷式との何れも採用可能である。水冷式を採用した場合は、溶接電源装置に接続された冷却装置によって溶接用トーチ内を流れる冷却液を循環させることで、溶接用トーチを強制的に冷却することが可能である。
【0075】
(変形例6)
第6の変形例では、上述した
図14(A)に示すMIG/MAG溶接用トーチ100Aに上記ワイヤー狙いガイド1に取り付けた構造(溶接装置)において、例えば
図15及び
図16に示すように、溶接後の溶接ビードの周囲をアウターノズル200で囲むアフターシールド構造としてもよい。
【0076】
具体的に、このアウターノズル200は、
図15に示すように、トーチノズル105の周囲を囲む位置から溶接線方向の後方に向かって溶接ビードの周囲を囲む位置まで延長して設けられている。上記ワイヤー狙いガイド1は、このアウターノズル200の延長部分200aからアウターノズル200の内側に向かってノズル部8が配置されている。
【0077】
アウターノズル200については、例えば
図16(A)〜(F)に示すような構成とすることが可能である。具体的には、
図16(A)に示すように、トーチノズル105を貫通させる孔部201の周囲が円筒状に形成され、延長部分200aが矩形筒状に形成され、この延長部分200aにノズル部8を貫通させる孔部202が設けられた構成とすることが可能である。
【0078】
また、
図16(B)に示すように、トーチノズル105を貫通させる孔部201の周囲が矩形筒状に形成され、延長部分200aが矩形筒状に形成され、この延長部分200aにノズル部8を貫通させる孔部202が設けられた構成とすることが可能である。
【0079】
また、
図16(C)に示すように、上記
図15(B)の構成に加えて、孔部201,202の周囲に絶縁材201a,202aが配置された構成とすることが可能である。
【0080】
また、
図16(D)に示すように、トーチノズル105を貫通させる孔部201の周囲が円筒状に形成され、延長部分200aが矩形筒状に形成され、この延長部分200aにノズル部8を貫通させるスリット203が設けられた構成とすることが可能である。
【0081】
また、
図16(E)に示すように、トーチノズル105を貫通させる孔部201の周囲が矩形筒状に形成され、延長部分200aが矩形筒状に形成され、この延長部分200aにノズル部8を貫通させるスリット203が設けられた構成とすることが可能である。
【0082】
また、
図16(F)に示すように、上記
図15(E)の構成に加えて、孔部201及びスリット203の周囲に絶縁材201a,203aが配置された構成とすることが可能である。
【0083】
(変形例7)
第7の変形例では、上述した
図14(A)に示すMIG/MAG溶接用トーチ100Aに上記ワイヤー狙いガイド1に取り付けた構造(溶接装置)において、例えば
図17及び
図18に示すように、溶接後の溶接ビードの周囲をアウターノズル300で囲むアフターシールド構造としてもよい。
【0084】
具体的に、このアウターノズル300は、
図17に示すように、トーチノズル105の周囲を囲む位置から溶接線方向の後方に向かって溶接ビードの周囲を囲む位置まで筒状に形成されている。上記ワイヤー狙いガイド1は、トーチノズル105と共に、アウターノズル300の内側に配置されている。
【0085】
アウターノズル300については、例えば
図18(A)〜(C)に示すような構成とすることが可能である。具体的には、
図18(A)に示すように、トーチノズル105を貫通させる孔部301と、ワイヤー狙いガイド1を貫通させる孔部302とを有して、その周囲が楕円筒状に形成された構成とすることが可能である。
【0086】
また、
図18(B)に示すように、トーチノズル105を貫通させる孔部301と、ワイヤー狙いガイド1を貫通させる孔部302とを有して、その周囲が矩形筒状に形成された構成とすることが可能である。
【0087】
また、
図18(C)に示すように、上記
図17(B)の構成に加えて、孔部301,302の周囲に絶縁材301a,302aが配置された構成とすることが可能である。
【0088】
(変形例8)
第8の変形例では、上述した
図14(A)に示すMIG/MAG溶接用トーチ100Aに上記ワイヤー狙いガイド1に取り付けた構造(溶接装置)において、例えば
図19に示すように、溶接後の溶接ビードの周囲をアウターノズル400で囲むアフターシールド構造と共に、第2のシールドガスを導入する構成としてもよい。
【0089】
具体的に、このアウターノズル400は、
図19に示すように、トーチノズル105の周囲を囲む位置から溶接線方向の後方に向かって溶接ビードの周囲を囲む位置まで延長して設けられている。上記ワイヤー狙いガイド1は、このアウターノズル400の延長部分400aからアウターノズル400の内側に向かってノズル部8が配置されている。さらに、アウターノズル400の延長部分400aには、第2のシールドガスを導入するホース401が接続されている。
【0090】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として、
図20及び
図21に示すワイヤー狙いガイド50について説明する。なお、
図20は、ワイヤー狙いガイド50の構成を示す平面図である。
図21は、ワイヤー狙いガイド50の構成を示す側面図である。また、以下の説明では、上記ワイヤー狙いガイド1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0091】
ワイヤー狙いガイド50は、
図20及び
図21に示すように、溶接ワイヤーWを案内する第1のガイド部51と第2のガイド部52とが設けられたガイド部材53と、ガイド部材53の基端側に接続された状態で、溶接ワイヤーWを送給するライナー54とを備えている。
【0092】
ガイド部材53は、例えば銅又は銅合金などの電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料を用いて、略矩形平板状に形成されている。また、ガイド部材53は、基端側に対して先端側が面内の一方側に曲げられた形状を有している。
【0093】
第1のガイド部51は、第2のガイド部52よりもガイド部材53の先端側に位置すると共に、第2のガイド部52よりもライナー54から送給される溶接ワイヤーWの延長方向に対して偏った位置にある。すなわち、第1のガイド部51は、ガイド部材53の先端側の折り曲げられた位置にある。一方、第2のガイド部52は、ガイド部材53の基端側のライナー54から送給される溶接ワイヤーWの延長方向に沿った位置にある。
【0094】
第1のガイド部51は、ガイドピンからなり、その軸部51aがガイド部材53を構成する本体部53aの一面にネジ止めにより取り付けられることによって、本体部53aの一面から突出した状態で支持されている。また、第1のガイド部51には、溶接ワイヤーWを案内するガイド溝51bが設けられている。
【0095】
第1のガイド部51は、例えば銅又は銅合金などの電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料を用いて形成されている。これにより、第1のガイド部51は、給電部として溶接ワイヤーWと接触することになる。なお、第1のガイド部51に給電部としての機能が不要な場合には、絶縁体を用いて第1のガイド部51を形成してもよい。
【0096】
第2のガイド部52は、ガイドローラーからなり、その軸部52aがガイド部材53を構成する本体部53aの一面にネジ止めにより取り付けられることによって、本体部53aの一面と平行な面内で回転自在に支持されている。
【0097】
第2のガイド部52の外周面には、溶接ワイヤーWを案内するガイド溝52bが設けられている。また、第2のガイド部52の外周面、すなわち溶接ワイヤーWと接触する部分は、溶接ワイヤーWとの接触により電流が流れないように、例えばセラミックや樹脂などの絶縁体からなっている。なお、第2のガイド部52の外周面、すなわち溶接ワイヤーWと接触する部分については、金属とすることも可能である。しかしながら、溶接ワイヤーWと第2のガイド部52との絶縁が必要な場合には、上述した溶接ワイヤーWと接触する部分をセラミックや樹脂などの絶縁体とすることが望ましい。
【0098】
ライナー54は、ガイド部材53の基端側に軸線方向に延長して設けられた延長部53bに対して、螺合により着脱自在に取り付けることが可能となっている。また、ライナー54は、ワイヤー送給装置(図示せず。)と接続されており、このワイヤー送給装置によって溶接ワイヤーWを自動で送給することが可能となっている。
【0099】
また、ワイヤー狙いガイド50は、図示を省略するものの、ガイド部材53をTIG溶接用トーチ100に取り付ける取付部を備えている。この取付部は、ガイド部材53の延長部53bに取り付けられた取付治具であり、上記取付部7と同じ構成である。
【0100】
以上のような構成を有するワイヤー狙いガイド50は、トーチノズル105とガイド部材53とが並ぶように取付部を介してTIG溶接用トーチ100に取り付けられる。これにより、TIG溶接用トーチ100とワイヤー狙いガイド50とを備えた溶接装置が構成される。
【0101】
本実施形態のワイヤー狙いガイド50では、
図22(A),(B)に示す状態から
図23(A),(B)に示す状態へと、第2のガイド部52を支点に溶接ワイヤーWが曲げられると共に、例えば指等で溶接ワイヤーWを持ち上げながら、第1のガイド部51に溶接ワイヤーWが掛け止めされた状態とする。これにより、溶接ワイヤーWを案内しながら、ガイド部材53の先端側から溶接ワイヤーWをと送り出すことが可能となる。
【0102】
なお、
図22は、ワイヤー狙いガイド50の溶接ワイヤーWが掛け止めされる前の状態を示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。
図23は、ワイヤー狙いガイド50の溶接ワイヤーWが掛け止めされた後の状態を示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。
【0103】
以上のように、本実施形態のワイヤー狙いガイド50では、上述した
図23(A),(B)に示す状態から、アーク直下の溶融池に向かって溶接ワイヤーWを正確に供給することが可能である。さらに、従来のような取付治具に回動機構を設けてワイヤー狙いガイドの角度調整を行う構成に比べて、TIG溶接用トーチ100のノズル廻りを小さくできるため、狭隘部へのアプローチが容易となる。
【0104】
さらに、本実施形態のワイヤー狙いガイド50では、第1のガイド部51に溶接ワイヤーWが掛け止めされた状態において、溶接ワイヤーWを第1のガイド部51のガイド溝51bに確実に接触させることができる。この場合、溶接ワイヤーWに電流を流すホットワイヤーにおいて、溶接ワイヤーWの第1のガイド部51と接触する位置(給電部)が固定されるため、ワイヤー狙いガイド50側の給電部と被溶接物(母材)との間の電気抵抗の変動を抑制し、安定した状態で溶接を行うことが可能である。
【0105】
なお、本発明は、上記ワイヤー狙いガイド1の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記ガイド部材53を、上述した連結部5を介して回動自在に連結された第1のガイド部材2及び第2のガイド部材3のような構成とすることで、第2のガイド部材3に対する第1のガイド部材2の角度調整を行い、溶接ワイヤーWの向きを変える(調整する)ことが可能な構成としてもよい。
【0106】
すなわち、本発明では、上記ノズル部8に溶接ワイヤーWを貫通させる代わりに、上記第1のガイド部51に溶接ワイヤーWを掛け止めする構成とすることが可能である。これにより、上述したワイヤー狙いガイド1の各変形例1〜8についても、上記ワイヤー狙いガイド50と同様の構成を適用することが可能である。