特許第6502694号(P6502694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502694
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】路側通信機
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/081 20060101AFI20190408BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   G08G1/081
   G08G1/09 F
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-26087(P2015-26087)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-149042(P2016-149042A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
(72)【発明者】
【氏名】葉山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智也
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−127993(JP,A)
【文献】 特開2007−199000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の路側通信機と時刻同期を行う路側通信機であって、
GPS受信機による測位の状態を示す測位状態情報に応じて、前記GPS受信機が出力する1PPS信号によるGPS同期と、前記他の路側通信機からの受信信号に含まれる時刻情報によるエア同期とを選択的に行う同期処理部を備えており、
前記GPS受信機は、受信したGPS信号によって測位し前記GPS信号に基づいた前記1PPS信号を出力した場合、その後の前記GPS受信機の測位状態に関わらず、前記1PPS信号の出力を継続する路側通信機。
【請求項2】
前記同期処理部は、前記1PPS信号が与えられるか否かによって前記GPS同期又は前記エア同期のいずれを行うかを選択する処理部と、
前記GPS受信機からの前記1PPS信号を前記処理部に与えるか否かを前記測位状態情報に応じて切り替えるスイッチと、
を備えている請求項1に記載の路側通信機。
【請求項3】
前記処理部は、過去所定の第1期間の間に前記1PPS信号が与えられていない場合、前記エア同期を選択し、前記第1期間の間に前記1PPS信号が与えられている場合、前記GPS同期を選択する請求項2に記載の路側通信機。
【請求項4】
前記同期処理部は、前記測位状態情報が、前記GPS受信機による測位が行われていないことを示している情報以外の情報である場合、GPS同期を選択する請求項1に記載の路側通信機。
【請求項5】
前記同期処理部は、過去所定の第2期間の間における前記測位状態情報に、前記GPS受信機による測位が行われていないことを示している情報以外の情報が含まれていない場合、前記エア同期を選択し、前記第2期間の間における前記測位状態情報に、前記GPS受信機による測位が行われていないことを示している情報以外の情報が含まれている場合、前記GPS同期を選択する請求項に記載の路側通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)等に用いられる路側通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路車間通信、車車間通信による高度道路交通システム(ITS)が検討されている。路車間通信とは、路側通信機と車載通信機との間の通信であり、車車間通信とは、車載通信機間の通信である。
【0003】
上記高度道路交通システムにおいては、路車間通信をはじめ、車車間通信や、路側通信機同士の通信である路路間通信等、各通信の共存を図るに当たって、通信を行う時間を分割して路側通信機の送信専用のタイムスロットを設ける、時分割多重(TDMA:Time Division Multiple Access)によるマルチアクセス方式を採用している。
【0004】
上記TDMAによるマルチアクセス方式において、送信用タイムスロットは、通常、各路側通信機それぞれに対して周期的に設定される。各路側通信機は、周期的に設定された自路側通信機の送信用タイムスロットを用いて送信を行い、それ以外の時間は、他の路側通信機又は車載通信機からの送信信号の受信を行う。
【0005】
よって、路側通信機同士で正確に時刻が同期していないと、各路側通信機が把握するタイムスロットの開始時刻にずれが生じ、各タイムスロットで干渉を生じさせるおそれがある。このため、各路側通信機は、互いの時刻を同期させる必要がある。
【0006】
各路側通信機が他の路側通信機との間で時刻同期をとるための方式としては、GPS(Global Positioning System)信号を受信することによって得られる1PPS(One Pulse Per Second)信号に自路側通信機の時刻を同期させるGPS同期と、他の路側通信機からのパケットに含まれる時刻情報に基づいて当該他の路側通信機の時刻に自路側通信機の時刻を同期させるエア同期とが挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】一般社団法人電波産業会、”700MHz 帯高度道路交通システムARIB−STD−T109 1.2版“,[online]、平成25年12月10日、[平成27年1月9日検索]、インターネット<http://www.arib.or.jp/tyosakenkyu/kikaku_tushin/tsushin_kikaku_number.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1PPS信号は、GPS衛星からのGPS信号を受信するためのGPS受信機から出力される。
GPS受信機は、GPS衛星からのGPS信号を受信し自GPS受信機の位置を測位するとともに受信したGPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号を出力する。
【0009】
ここで、GPS受信機には、GPS衛星からのGPS信号を受信できなければ1PPS信号を出力しないものや、一度GPS衛星からのGPS信号を受信すると、それ以降にGPS信号を受信できなくなったとしても自GPS受信機の内部クロックに基づいて生成した信号を1PPS信号として出力し続けるものがある。
【0010】
GPS衛星からのGPS信号を受信できなければ1PPS信号を出力しないGPS受信機を用いた路側通信機においては、当該GPS受信機が1PPS信号を出力していれば、当該GPS受信機はGPS信号を受信した上でGPS信号に同期した1PPS信号を出力していると判断してGPS同期を選択し、1PPS信号が得られない場合にはエア同期を選択することで、両方式を動的に選択しながら時刻同期を行うように構成することができる。
これによって、路側通信機は、エア同期よりもより高精度で同期することができるGPS同期を行いつつ、GPS受信機がGPS信号を受信できない場合には、補完的にエア同期を選択し、全体として高い精度を維持しながら時刻同期を行うことができる。
【0011】
一方、一度GPS衛星からのGPS信号を受信すると、それ以降にGPS信号を受信できなくなったとしても1PPS信号を出力し続けるGPS受信機を用いた路側通信機においては、GPS受信機が1PPS信号を出力しているからといって必ずしもそのGPS受信機がGPS衛星からのGPS信号を受信し、それに同期した1PPS信号を出力しているとは言えず、時刻同期の方式を適切に選択することはできない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、時刻同期の方式を適切に選択することができる路側通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態である路側通信機は、他の路側通信機と時刻同期を行う路側通信機であって、GPS受信機による測位の状態を示す測位状態情報に応じて、前記GPS受信機が出力する1PPS信号によるGPS同期と、前記他の路側通信機からの受信信号に含まれる時刻情報によるエア同期とを選択的に行う同期処理部を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態の無線通信システムにおいて用いられる無線フレームを示す図である。
図3】無線フレーム内部の構造の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る路側通信機2の構成を示すブロック図である。
図5】GPS受信機が出力する1PPS信号の一例を示している。
図6】第1実施形態に係る路側通信機における、GPS受信機及び通信処理装置の要部を示したブロック図である。
図7】選択処理部が実行する選択処理を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態の変形例に係るフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る路側通信機における、GPS受信機及び通信処理装置の要部を示したブロック図である。
図10】第2実施形態による選択処理部が実行する選択処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本願発明の実施形態の説明]
【0017】
まず最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)一実施形態である路側通信機は、他の路側通信機と時刻同期を行う路側通信機であって、GPS受信機による測位の状態を示す測位状態情報に応じて、前記GPS受信機が出力する1PPS信号によるGPS同期と、前記他の路側通信機からの受信信号に含まれる時刻情報によるエア同期とを選択的に行う同期処理部を備えている。
【0018】
上記のように構成された路側通信機によれば、GPS受信機による測位の状態を示す測位状態情報に応じて前記GPS同期又は前記エア同期のいずれを行うかを選択するので、GPS受信機がGPS信号を受信して測位を行いGPS信号に同期した1PPS信号を出力しているときにGPS同期を選択することができる。よって、GPS受信機が出力する1PPS信号がGPS信号に同期しているか否かに関わらず、時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0019】
(2)上記路側通信機において、前記同期処理部は、前記1PPS信号が与えられるか否かによって前記GPS同期又は前記エア同期のいずれを行うかを選択する処理部と、前記GPS受信機からの前記1PPS信号を前記処理部に与えるか否かを前記測位状態情報に応じて切り替えるスイッチと、を備えていることが好ましい。
この場合、処理部は、1PPS信号が与えられるか否かでGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択することができるので、迅速に同期方式を切り替えることができ、同期のずれを少なくすることができる。
また、処理部は1PPS信号が与えられるか否かによって同期方式を選択するので、処理部以降の構成を、上記従来例にて示した、GPS衛星からのGPS信号を受信できなければ1PPS信号を出力しないGPS受信機を用いた路側通信機における、GPS受信機より後段の構成と同様の構成とすることができる。
【0020】
(3)また、前記処理部は、過去所定の第1期間の間に前記1PPS信号が与えられていない場合、前記エア同期を選択し、前記第1期間の間に前記1PPS信号が与えられている場合、前記GPS同期を選択してもよく、この場合、路側通信機の周囲環境の一時的な変動によって処理部へ向けた1PPS信号が一時的に遮断されたとしても、GPS同期を維持し、エア同期が選択されるのを防止できる。
【0021】
(4)上記路側通信機において、前記GPS受信機は、受信したGPS信号によって測位し前記GPS信号に基づいた前記1PPS信号を出力した場合、その後の前記GPS受信機の測位状態に関わらず、前記1PPS信号の出力を継続するものであってもよく、この場合であっても、測位状態情報に応じてGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択するので、GPS受信機がGPS信号を受信して測位を行いGPS信号に同期した1PPS信号を出力しているときにGPS同期を選択することができる。よって、GPS受信機が1PPS信号を出力するか否かに関わらず、時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0022】
(5)また、上記路側通信機において、前記同期処理部は、前記測位状態情報が、前記GPS受信機による測位が行われていないことを示している情報以外の情報である場合、GPS同期を選択することが好ましく、この場合、同期処理部は、GPS受信機が出力する1PPS信号がGPS信号に同期しているか否かに関わらず、時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0023】
(6)また、前記同期処理部は、過去所定の第2期間の間における前記測位状態情報に、前記GPS受信機による測位が行われていないことを示している情報以外の情報が含まれていない場合、前記エア同期を選択し、前記第2期間の間における前記測位状態情報に、前記GPS受信機による測位が行われていないことを示している情報以外の情報が含まれている場合、前記GPS同期を選択するものであってもよく、この場合、路側通信機の周囲環境の一時的な変動によって一時的にGPS受信機がGPS信号を受信できずに測位状態情報にGPS受信機による測位が行われていないことを示している情報が含まれることとなっても、GPS同期を維持し、エア同期が選択されるのを防止できる。
【0024】
上記実施形態は、コンピュータプログラムとしても実現することができる。すなわち、路側通信機が他の路側通信機と時刻同期を行う処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、GPS受信機による測位の状態を示す測位状態情報に応じて、前記GPS受信機が出力する1PPS信号によるGPS同期と、前記他の路側通信機からの受信信号に含まれる時刻情報によるエア同期とを選択的に行うステップを実行させるためのコンピュータプログラムとして実現することができる。
【0025】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔1. システムの全体構成〕
図1は、実施形態に係る高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。本実施形態では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
【0026】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5,D1〜D5のそれぞれに設置されており、電話回線等の有線通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアの交通信号機1および路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0027】
路側センサ6は、各交差点に流入する車両台数をカウントする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。この路側センサ6は、直下を通行する車両5を超音波感知する車両感知器、或いは、道路の交通状況を時系列に撮影する監視カメラ等よりなり、感知情報や画像データは有線通信回線7を介して中央装置4に送信される。なお、図1では、図示を簡略化するために、各交差点に信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点には、互いに交差する道路の上り及び下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0028】
〔2. 無線通信の方式等〕
高度道路交通システムにおいて、無線通信システムを構成する、複数の交差点それぞれに設置された複数の路側通信機2は、その周囲を走行する車両の車載通信機3との間で無線通信(路車間通信)が可能である。
また、各路側通信機2は、自己の送信波が到達する所定範囲内に位置する他の路側通信機2とも無線通信(路路間通信)が可能である。
また、同じく無線通信システムを構成する車載通信機3は、路側通信機2との間で無線通信(車路間通信)を行うとともに、キャリアセンス方式で他の車載通信機3と無線通信(車車間通信)が可能である。
【0029】
路側通信機2には、自身が無線送信するための専用のタイムスロット(図3の路側機通信期間50)がTDMA方式で割り当てられており、このタイムスロット以外の時間帯には無線送信を行わない。すなわち、路側通信機2用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのキャリアセンス方式による送信時間として開放されている。
路側通信機2及び車載通信機3は、同一周波数帯を通信に用いるが、上記のように路側通信機2と車載通信機3の送信時間帯が区別されていることで、路側通信機2による送信信号と、車載通信機3による送信信号との衝突を回避できる。
【0030】
路側通信機2及び車載通信機3は、送信信号の受信に関しては特に制限されない。従って、路側通信機2は、車載通信機3の送信信号を受信できる他、他の路側通信機2の送信信号も受信できる。また、車載通信機3は、路側通信機2及び他の車載通信機3の送信信号を受信できる。
【0031】
図2は、本実施形態の無線通信システムにおいて用いられる無線フレームを示す図である。本システムの無線フレーム(スーパーフレーム)は、その時間軸方向の長さ(フレーム長)が100ミリ秒に設定されており、時間軸方向に並べて配置されている。つまり、無線フレームは、1秒間に10フレーム配置される。
無線フレームは、路側通信機2が有するGPS受信機(後に説明する)が出力する1PPS信号に基づいて生成される。
【0032】
図3は、無線フレーム内部の構造の一例を示す図である。
図3に示すように、無線フレームは、路側機通信期間50を含んで構成されている。
路側機通信期間50は、路側通信機2に割り当てられるタイムスロットであり、この時間帯においては、路側通信機2による無線送信が許容される。一方、路側機通信期間50以外の期間は、車載通信機3によるキャリアセンス方式の無線送信用として開放する期間である。このため、路側通信機2は、路側機通信期間50以外の期間では無線送信を行わない。
【0033】
無線フレームには、複数の路側機通信期間50が含まれている。
複数の路側機通信期間50には、それぞれスロット番号iが付されている。このスロット番号iは、無線フレーム内でインクリメント又はデクリメントされる。
路側通信機2には、無線フレームに含まれる複数の路側機通信期間50の内の1又は複数が割り当てられる。路側通信機2はスロット番号iによっていずれの路側機通信期間50が自機2に割り当てられるかを認識することができる。
【0034】
図3では、2つの路側通信機2−1,2−2それぞれの無線フレームの一例を示しており、路側通信機2−1にはハッチングで示されているスロット番号2の路側機通信期間50が、路側通信機2−2にはハッチングで示されているスロット番号1の路側機通信期間50が、それぞれ割り当てられている。また、両路側通信機2−1,2−2は、車載通信機が両路側通信機2−1,2−2のサービスエリア間を行き来する程度に近い位置に設置されているものとする。
【0035】
図3では、路側通信機2−2の無線フレームが、路側通信機2−1の無線フレームに対して時間軸方向に遅れが生じていることから、互いの無線フレームのタイミングにずれが生じている場合を示している。路側通信機2−1,2−2同士は、互いに異なるスロット番号の路側機通信期間50が割り当てられているので、互いの送信信号が重複して干渉を生じさせることはない。
しかし、図3中の期間51は、路側通信機2−2による時刻を基準とすれば路側機通信期間50と認識される一方、路側通信機2−1による時刻を基準とすれば路側機通信期間50と認識される。
よって、図3に示すように、路側通信機2−2に同期した車載通信機は、路側機通信期間50以外の期間であると認識するため、無線送信可能と判断する。しかし、路側通信機2−1は、自らが路側機通信期間50と判断する期間で無線送信を行う。
このため、期間51内で前記車載通信機が無線送信を行ったとすると、同じタイミングで無線送信を行う路側通信機2−1との間で干渉が生じる。
【0036】
このように、路側通信機同士で同期が取れていない場合、一の路側通信機と、他の路側通信機に同期している車載通信機との間で干渉が生じるおそれがある。このため、路側通信機2間(特に、距離的に近い位置関係にある路側通信機2間)では、互いの無線フレームのタイミングが一致するように、互いのローカル時刻を同期させる必要がある。
【0037】
そこで、本実施形態の各路側通信機2は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信したGPS受信機が出力する1PPS信号に基づいて同期を行うGPS同期と、他の路側通信機(基地局)2から送信されたパケットに含まれる時刻情報に基づいて他の路側通信機2に同期するエア同期と、を行う機能を有している。
【0038】
本実施形態におけるGPS同期及びエア同期の方法は、非特許文献1の「解説2 基地局間の時刻同期の例」に従う。
各路側通信機2は、上記2つの方式の同期方式を選択的に実行することで、互いの無線フレームのタイミングを一致させる。
【0039】
〔3. 路側通信機〕
図4は、本実施形態に係る路側通信機2の構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、図4に示すように、無線通信用アンテナ10が接続された無線通信機11と、GPS信号受信用アンテナ12が接続されたGPS受信機13と、通信制御処理を行う通信処理装置14と、を備えている。
【0040】
無線通信機11は、路車(車路)間通信及び路路間通信といった無線通信機能を有しており、通信処理装置14によって制御されている。
GPS受信機13は、1又は複数のGPS衛星15から送信されるGPS信号を受信して自機(GPS受信機)13の位置を特定(測位)する機能を有している。また、GPS受信機13は、受信したGPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号を出力するとともに、GPS受信機13による測位に関する情報を出力する機能を有している。GPS受信機13は、これら1PPS信号と、自機13の測位に関する情報とを通信処理装置14に与える。
【0041】
図5は、GPS受信機13が出力する1PPS信号の一例を示している。1PPS信号は、図5に示すように、1秒周期で得られるパルス信号である。
GPS受信機13は、GPS衛星15からのGPS信号を受信し自機13の位置を測位する場合には受信したGPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号を出力する。
一方、GPS信号を受信できない場合には、GPS受信機13は、GPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号を出力することができない。
しかし、本実施形態のGPS受信機13は、一度GPS衛星15からのGPS信号を受信すると、それ以降にGPS信号を受信できなくなったとしても自機13の内部クロックに基づいて生成した信号を1PPS信号として出力することができる。
よって、GPS受信機13は、GPS信号を受信し測位したか否かに関わらず、1PPS信号を出力するように構成されている。
【0042】
GPS受信機13は、自機13の測位に関する情報として、NMEA(National Marine Electronics Association)フォーマットのデータを出力する。
NMEAフォーマットデータは、GPS受信機13が測位した結果である位置情報の他、測位品質や、使用衛星数、GPS信号の受信状況等といった自機13による測位の状態を示す測位状態情報を含んでいる。
【0043】
NMEAフォーマットは、複数のセンテンスを含んで構成されている。各センテンスは、GPS受信機13の測位に関する情報を示すパラメータを複数含んでいる。
例えば、NMEAフォーマットに含まれている$GPGGA(GPS Fix Data)センテンスは、下記に示すように、パラメータ〈1〉〜パラメータ〈12〉を含んだデータとして定義されている。
「$GPGGAセンテンス」
$GPGGA,〈1〉,〈2〉,〈3〉,〈4〉,〈5〉,〈6〉,〈7〉,〈8〉,〈9〉,〈10〉,〈11〉,〈12〉*hh
【0044】
「$」は、センテンスの開始を示している。「GP」はトーカ(talker)ID、「GGA」は、センテンスの形式を示しており、以降のカンマ「,」で区切られている〈1〉〜〈12〉に各パラメータ〈1〉〜〈12〉が配置される。
各パラメータ〈1〉〜〈12〉の内容は、以下の通りである。
〈1〉:測位時のUTC(協定世界時:Coordinated universal time)時刻 hhmmss.s形式で表される。
〈2〉:緯度 ddmm.mmmm形式で表される。
〈3〉:北緯又は南緯 「N」又は「S」で表される。
〈4〉:経度 ddmm.mmmm形式で表される。
〈5〉:東経又は西経 「E」又は「W」で表される。
〈6〉:測位品質 「0」:不測位 「1」:単独測位 「2」:DGPS測位 「6」:推定測位
〈7〉:使用衛星数
〈8〉:水平精度低下率HDOP(Horizontal Dilution of Precision)
〈9〉:アンテナの海抜高さ(メートル)
〈10〉:ジオイド高さ(メートル)
〈11〉:DGPSデータのエイジ(Age)(秒)
〈12〉:差動基準地点ID
*hh :チェックサム
【0045】
図4に戻って、通信処理装置14は、無線通信機11を制御することで路車(車路)間通信及び路路間通信を行う機能を有している。さらに、通信処理装置14は、GPS受信機13から与えられる1PPS信号及びNMEAフォーマットデータの少なくとも一方の情報を用いて、GPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択する選択処理を実行する機能を有している。
【0046】
通信処理装置14は、その機能の一部又は全部が、ハードウェア回路によって構成されていてもよいし、その機能の一部又は全部が、コンピュータプログラムによって実現されていてもよい。通信処理装置14の機能の一部又は全部がコンピュータプログラムによって実現される場合、通信処理装置14は、コンピュータを含み、コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムは、図示しない記憶部に記憶される。
【0047】
〔4. 第1実施形態について〕
図6は、第1実施形態に係る路側通信機2における、GPS受信機13及び通信処理装置14の要部を示したブロック図である。
通信処理装置14は、GPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択して時刻同期を実行する同期処理部20を機能的に備えている。
同期処理部20には、GPS受信機13が出力する1PPS信号及びNMEAフォーマットデータが与えられる。
同期処理部20は、GPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択する選択処理を行う選択処理部21を機能的に備えている。
選択処理部21は、GPS受信機13から与えられたNMEAフォーマットデータに含まれる、GPS受信機13による測位の状態を示す測位状態情報を参照する。選択処理部21は、この測位状態情報に応じてGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択する。
【0048】
同期処理部20は、選択処理部21が選択した選択結果に応じて、GPS同期又はエア同期のいずれかを実行する。同期処理部20は、選択処理部21によってGPS同期が選択されると、GPS受信機13から与えられる1PPS信号に基づいてGPS同期を実行する。
【0049】
図7は、選択処理部21が実行する選択処理を示すフローチャートである。
まず選択処理部21は、GPS受信機13からのNMEAフォーマットデータを受け付けたか否かを判断する(ステップS11)。
NMEAフォーマットデータを受け付けていないと判断する場合、選択処理部21は、再度、ステップS11に戻り、GPS受信機13からのNMEAフォーマットデータを受け付けたか否かを判断する。よって、選択処理部21は、NMEAフォーマットデータを受け付けるまでステップS11を繰り返すことで、NMEAフォーマットデータが出力されるのを待つ。
【0050】
ステップS11において、NMEAフォーマットデータを受け付けたと判断すると、選択処理部21は、NMEAフォーマットデータに含まれる測位の品質を示す「測位品質」(上記〈6〉)を参照する。
さらに、選択処理部21は、「測位品質」が「0」以外であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0051】
「測位品質」は、上述のように、「0」である場合、不測位を示し、「1」である場合単独測位で測位したことを示し、「2」である場合DGPS測位で測位したことを示し、「6」である場合、推定測位で測位したことを示している。よって、NMEAフォーマットデータに含まれている「測位品質」は、GPS受信機13による測位の状態を示す測位状態情報を構成している。
また、測位状態情報である「測位品質」は、「0」である場合、GPS受信機13による測位が行われていないことを示しており、「0」以外である場合、GPS受信機13による測位が行われていることを示している。つまり、「測位品質」は、GPS受信機13による測位が行われたか否かを示している。
【0052】
よって、選択処理部21は、ステップS12において、「測位品質」に基づいて、GPS受信機13が自機13の位置について測位したか否かを判断することができる。
【0053】
ステップS12において「測位品質」が「0」以外であると判断すると、選択処理部21は、時刻同期の方式としてGPS同期を選択し(ステップS13)、再度ステップS11に戻る。
【0054】
一方、ステップS12において「測位品質」が「0」以外でない(「0」である)と判断すると、選択処理部21は、直近から過去に向かう期間である過去所定の第2期間の間で受け付けた「測位品質」に「0」以外の情報が含まれていないか否かについて判断する(ステップS14)。
過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」に「0」以外の情報が含まれていないと判断する場合、選択処理部21は、時刻同期の方式としてエア同期を選択し(ステップS15)、再度ステップS11に戻る。
なお、ステップS14における「直近」とは、このステップS14の処理前に実行されたステップS11においてNMEAデータ(「測位品質」)を受け付けたときを指す。
【0055】
ステップS14において、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」の中に、「0」以外の「1」、「2」、及び「6」の内のいずれかが1つでも含まれていると判断する場合、選択処理部21は、ステップS13に進み、時刻同期の方式としてGPS同期を選択し(ステップS13)、再度ステップS11に戻る。
【0056】
上記ステップS12において「測位品質」が「0」以外である場合、GPS受信機13による測位が行われていると判断することができるので、GPS受信機13がGPS信号を確実に受信し、受信したGPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号を出力していると判断することができる。よってこの場合、同期処理部20は、GPS同期を選択することで(ステップS13)、GPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号に基づいた時刻同期を行うことができる。
つまり、同期処理部20は、「測位品質」に応じて時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0057】
また、ステップS12において「測位品質」が「0」以外でない(「0」である)ことからGPS受信機13による測位が行われていないと判断する場合、GPS受信機13がGPS信号を受信しておらず、自機13の内部クロックに基づいて生成した信号を1PPS信号として出力していると判断することができる。
【0058】
この場合、選択処理部21は、ステップS14において、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」に「0」以外の情報が含まれておらず、全て「0」であれば、直近から過去第2期間の間でGPS受信機13による測位が継続的に行われておらずGPS信号も受信していないと判断することができる。よって、この場合、選択処理部21は、ステップS15に進み、同期処理部20にエア同期を実行させることができる。
これにより、選択処理部21は、たとえGPS受信機13から1PPS信号が与えられていたとしても、GPS同期を選択することはない。よって、同期処理部20は、GPS受信機13の内部クロックに基づいて生成された1PPS信号によって時刻同期を行うことはない。
なお、第2期間は、GPS受信機13による測位が継続的に行われていないと判断することができる期間に設定されている。
【0059】
また、ステップS14において、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」が、「0」以外の情報である、「1」、「2」、及び「6」といった測位が行われていないことを示している情報以外の情報を含んでいる場合、路側通信機2の周囲環境の一時的な変動によってGPS信号が受信できず、「測位品質」が「0」となっている可能性がある。
【0060】
この点、本実施形態の選択処理部21は、ステップS14において、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」に「0」以外の情報が含まれていない場合、エア同期を選択し、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」に「0」以外の情報が含まれている場合、GPS同期を選択する。
これにより、選択処理部21は、路側通信機2の周囲環境の一時的な変動によって一時的にGPS受信機13がGPS信号を受信できずに「測位品質」が「0」となっても、GPS同期を維持し、エア同期が選択されるのを防止できる。
【0061】
以上のように、本実施形態の路側通信機2は、他の路側通信機2と時刻同期を行うものであって、GPS受信機13による測位の状態を示す測位状態情報である「測位品質」に応じて、GPS同期と、エア同期とを選択的に行う同期処理部20を備えている。
【0062】
本実施形態では、GPS信号を受信し測位したか否かに関わらず、1PPS信号を出力するように構成されたGPS受信機13を用いたが、上記構成の路側通信機2によれば、GPS受信機13による測位の状態を示す測位状態情報である「測位品質」に応じてGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択するので、同期処理部20の選択処理部21は、GPS受信機13がGPS信号を受信し測位を行っているときにGPS同期を選択することができる。よって、GPS受信機13が出力する1PPS信号がGPS信号に同期しているか否かに関わらず、時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0063】
なお、仮に、GPS信号を受信し測位したときのみGPS信号に同期した1PPS信号を出力するように構成されたGPS受信機を用いたとしても、上記構成の路側通信機2によれば、時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、できるだけGPS同期が優先的に選択されるように設定した場合を例示したが、例えば、図8に示すように、できるだけ「測位品質」が良好であると判断できる場合にGPS同期を選択しそれ以外ではエア同期を選択するように構成することもできる。
【0065】
図8に示す第1実施形態の変形例に係るフローチャートは、図7中のフローチャートにおけるステップS14が除かれ、図7中ステップS12とステップS13との間にステップS17が加えられている点において相違している。
【0066】
図8では、ステップS12において「測位品質」が「0」以外でない(「0」である)と判断すると、選択処理部21は、時刻同期の方式としてエア同期を選択し(ステップS15)、再度ステップS11に戻る。
【0067】
一方、ステップS12において「測位品質」が「0」以外であると判断すると、選択処理部21は、直近から過去に向かう期間である過去所定の第2期間の間で受け付けた「測位品質」に「0」が含まれていないか否かについて判断する(ステップS17)。
過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」に「0」が含まれていると判断する場合、選択処理部21は、時刻同期の方式としてエア同期を選択し(ステップS15)、再度ステップS11に戻る。
【0068】
ステップS17において、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」の中に、「0」が含まれていないと判断する場合、選択処理部21は、ステップS13に進み、時刻同期の方式としてGPS同期を選択し(ステップS13)、再度ステップS11に戻る。
【0069】
この図8に示す変形例では、選択処理部21は、「測位品質」が「0」となるとエア同期を選択し、エア同期を選択した後、過去所定の第2期間の間で受け付けた複数の「測位品質」に「0」が含まれていなければ、選択処理部21は、ステップS13に進み、同期処理部20にGPS同期を実行させる。つまり、選択処理部21は、ステップS17において、断続的にも不測位とならず安定して測位されている状態が継続していると判断できれば、GPS同期を選択し、それ以外ではエア同期を選択するように構成されている。
このように、できるだけ「測位品質」が良好であると判断できる場合にGPS同期を選択しそれ以外ではエア同期を選択するように構成してもよい。
【0070】
〔5. 第2実施形態について〕
図9は、第2実施形態に係る路側通信機2における、GPS受信機13及び通信処理装置14の要部を示したブロック図である。
本実施形態は、同期処理部20が、選択処理部21の他に、スイッチ部25を備えている点で第1実施形態と相違している。
【0071】
スイッチ部25には、GPS受信機13が出力する1PPS信号と、NMEAフォーマットデータとが与えられる。
スイッチ部25は、GPS受信機13からの1PPS信号を選択処理部21に与えるか否かをNMEAフォーマットデータに含まれる「測位品質」に応じて切り替える。
【0072】
スイッチ部25は、GPS受信機13から与えられる「測位品質」がGPS受信機13による測位が行われていることを示している「1」、「2」、「6」である場合、GPS受信機13と選択処理部21との間を接続し、1PPS信号が選択処理部21に与えられるように切り替える。
【0073】
一方、スイッチ部25は、「測位品質」がGPS受信機13による測位が行われていないことを示している「0」である場合、GPS受信機13と選択処理部21との間を切断し、選択処理部21へ向けた1PPS信号を遮断するように切り替える。
よって、GPS受信機13から与えられる「測位品質」が「0」である場合、1PPS信号は、選択処理部21に与えられることはない。
【0074】
本実施形態の選択処理部21は、1PPS信号が与えられるか否かによってGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択する。同期処理部20は、選択処理部21が選択した選択結果に応じて、GPS同期又はエア同期のいずれかを実行する。同期処理部20は、選択処理部21に与えられた1PPS信号に基づいてGPS同期を行う。
【0075】
図10は、第2実施形態による選択処理部21が実行する選択処理を示すフローチャートである。
選択処理部21は、スイッチ部25からの1PPS信号を受け付けたか否かを判断する(ステップS21)。
1PPS信号を受け付けたと判断すると、選択処理部21は、時刻同期の方式としてGPS同期を選択し(ステップS22)、再度ステップS21に戻る。
【0076】
一方、ステップS21において1PPS信号を受け付けていないと判断すると、選択処理部21は、ステップS23に進む。
なお、選択処理部21は、ステップS21における1PPS信号を受け付けたか否かの判断を1秒間隔で行う。1PPS信号は、1秒間隔のパルス信号であり、1秒間隔で判断を行うことで、1PPS信号を受け付けたか否かを確実に判断することができる。
【0077】
ステップS23において、選択処理部21は、直近から過去に向かう期間である過去所定の第1期間の間に1PPS信号を受け付けていないか否かを判断する。
過去所定の第1期間の間に1PPS信号を受け付けていないと判断する場合、選択処理部21は、時刻同期の方式としてエア同期を選択し(ステップS24)、再度ステップS21に戻る。
なお、ステップS23における「直近」とは、このステップS23の処理前に実行されたステップS21において1PPS信号を受け付けたか否かを判断したときを指す。
【0078】
ステップS23において、過去所定の第1期間の間に1PPS信号を受け付けていると判断する場合、選択処理部21は、ステップS22に進み、時刻同期の方式としてGPS同期を選択し、再度ステップS21に戻る。
【0079】
本実施形態では、「測位品質」が、GPS受信機13による測位が行われていないことを示している「0」である場合に選択処理部21へ向けた1PPS信号を遮断するようにスイッチ部25が構成されている。
よって、上記ステップS21において1PPS信号を受け付けた場合、GPS受信機13による測位が行われていると判断することができるので、GPS受信機13がGPS信号を確実に受信し、GPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号を出力していると判断することができる。よってこの場合、同期処理部20は、GPS同期を選択することができ(ステップS22)、GPS信号に含まれる時刻情報に同期した1PPS信号に基づいた時刻同期を行うことができる。
このように、同期処理部20は、1PPS信号が与えられたか否かによって時刻同期の方式を適切に選択することができる。
【0080】
また、ステップS21において1PPS信号を受け付けていないと判断する場合、GPS受信機13がGPS信号を受信していないと判断することができる。
この場合、選択処理部21は、ステップS23において、過去所定の第1期間の間に1PPS信号を受け付けていなければ、その間、GPS受信機13による測位が継続的に行われておらずGPS信号も受信していないと判断することができる。よって、この場合、選択処理部21は、ステップS24に進み、同期処理部20にエア同期を実行させることができる。
なお、第1期間は、GPS受信機13による測位が継続的に行われていないと判断することができる期間に設定されている。
【0081】
以上のように、本実施形態の同期処理部20は、1PPS信号が与えられるか否かによってGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択する選択処理部21と、GPS受信機13からの1PPS信号を選択処理部21に与えるか否かを測位状態情報である「測位品質」に応じて切り替えるスイッチ部25とを備えている。
【0082】
本実施形態では、「測位品質」に応じて選択処理部21に1PPS信号が与えられるか否かでGPS同期又はエア同期のいずれを行うかを選択することができるので、迅速に同期方式を切り替えることができ、同期のずれを少なくすることができる。
また、選択処理部21は1PPS信号が与えられるか否かによって同期方式を選択するので、選択処理部21以降の構成を、上記従来例にて示した、GPS衛星からのGPS信号を受信できなければ1PPS信号を出力しないGPS受信機を用いた路側通信機における、GPS受信機より後段の構成と同様の構成とすることができる。
【0083】
また、本実施形態では、「測位品質」が、GPS受信機13による測位が行われていないことを示している「0」である場合に選択処理部21へ向けた1PPS信号を遮断するようにスイッチ部25が構成されている。よって、GPS受信機13がGPS信号を受信せずに出力した1PPS信号が選択処理部21に与えられるのを防止することができる。
これにより、精度の低い信号を用いることによって時刻同期の精度を低下させてしまうのを防止することができる。
【0084】
また、ステップS23において、過去所定の第1期間の間に1PPS信号を受け付けていると判断する場合、路側通信機2の周囲環境の一時的な変動によってGPS信号が受信できず、「測位品質」が「0」となり、選択処理部21へ向けた1PPS信号がスイッチ部25によって遮断された可能性がある。
【0085】
この点、本実施形態の選択処理部21は、ステップS23において、過去所定の第1期間の間に1PPS信号が与えられていない場合、エア同期を選択し、過去所定の第1期間の間に1PPS信号が与えられている場合、GPS同期を選択する。
これにより、選択処理部21は、路側通信機の周囲環境の一時的な変動によって選択処理部21へ向けた1PPS信号が一時的に遮断されたとしても、GPS同期を維持し、エア同期が選択されるのを防止できる。
【0086】
また、本実施形態では、「測位品質」に基づいて判断を行う処理をスイッチ部25に分担させたので、「測位品質」に基づいた判断を行う処理を有しない選択処理部であっても、スイッチ部25を追加すれば、GPS信号を受信し測位したか否かに関わらず1PPS信号を出力するように構成されているGPS受信機を用いた場合にも、時刻同期の方式を適切に選択することができるように構成ことができる。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では、測位状態情報として、NMEAフォーマットデータの$GPGGAセンテンスに含まれる「測位品質」を用いてGPS受信機13による測位が行われているか否かを判断した場合を示したが、この「測位品質」以外の他の情報を用いることもできる。
【0088】
例えば、NMEAフォーマットデータの$GPGGAセンテンスに含まれる「使用衛星数」を用いて、GPS受信機13による測位が行われているか否かを判断することができる。この「使用衛星数」(上記〈7〉)を用いる場合、例えば、「使用衛星数」の値が「1」以上である場合、GPS受信機13による測位が行われていると判断し、「0」である場合、GPS受信機13による測位が行われていないと判断することができる。
【0089】
また、NMEAフォーマットデータの$GPGLLセンテンスに含まれる「ステータス」を用いて、GPS受信機13による測位が行われているか否かを判断することができる。「ステータス」は、測位位置に整合性がある場合、「A」が格納され、NAV受信警告の場合、「V」が格納される。よって、この「ステータス」を用いる場合、例えば、「ステータス」が「A」である場合、GPS受信機13による測位が行われていると判断し、「V」である場合、GPS受信機13による測位が行われていないと判断することができる。
【0090】
また、NMEAフォーマットデータの$PGRMFセンテンスに含まれる「測位形式」を用いて、GPS受信機13による測位が行われているか否かを判断することができる。「測位形式」は、非測位である場合、「0」が格納され、2Dで測位された場合、「1」が格納され、3Dで測位された場合、「2」が格納される。よって、この「測位形式」を用いる場合、例えば、「測位形式」が「1」又は「2」である場合、GPS受信機13による測位が行われていると判断し、「0」である場合、GPS受信機13による測位が行われていないと判断することができる。
【0091】
また、上記各実施形態では、NMEAフォーマットのデータを出力するGPS受信機を用いた場合を例示したが、例えば、NMEAフォーマットに対応していないGPS受信機であっても、上記各実施形態にて示した各情報に相当する情報を出力する場合には、それら情報を用いることで、上記各実施形態と同様の構成を採ることができる。
【0092】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 交通信号機
2 路側通信機
3 車載通信機
4 中央装置
5 車両
6 路側センサ
7 有線通信回線
8 ルータ
10 無線通信用アンテナ
11 無線通信機
12 GPS信号受信用アンテナ
13 GPS受信機
14 通信処理装置
15 GPS衛星
20 同期処理部
21 選択処理部
25 スイッチ部
A1〜A5 交差点
B1〜B5 交差点
C1〜C5 交差点
D1〜D5 交差点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10