(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸状係止部は、先端が基端に対して上下方向に弾性変形可能な突起片であり、前記ブラケット部材と前記動吸振器との本固定状態において弾性力を付与することにより前記動吸振器の基部の変位を規制する、請求項1−3の何れか一項に記載の制振床構造。
前記動吸振器は、長尺状に形成され前記長尺状の一端側を前記ブラケット部材に固定される梁状ばね部材と、前記梁状ばね部材の前記長尺状の他端側に設けられるマスと、を備え、
前記凸状係止部は、前記ブラケット部材と前記動吸振器との仮固定状態において、前記マスの重力によって前記梁状ばね部材の一端が下方へ移動する動作によって、前記弾性力を大きくするように変形する、請求項5に記載の制振床構造。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(制振床構造1の構成)
第一実施形態の制振床構造1の全体構成について、
図1を参照して説明する。制振床構造1は、
図1に示すように、床材110、ブラケット部材120、第一取付部材130、動吸振器140及び第二取付部材150を備える。床材110は、例えば木質系材料又はALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)により形成される。すなわち、床材110は、梁に取り付けられる部材である。なお、床材110の表面には、図示しない合板やフローリング材などが取り付けられる。
【0010】
ブラケット部材120は、床材110の下面に第一取付部材130により固定される。ここで、第一取付部材130は、床材110を上下方向に貫通するボルト131,132、ボルト131,132に一体的に結合される座金133、及び、ボルト131,132に螺合するナット134,135を備える。つまり、第一取付部材130は、床材110の上下の両方から挟み込むようにして、ブラケット部材120を床材110の下面に固定する。なお、図示しないが、第一取付部材130は、床材110を貫通することなく、床材110の下側からブラケット部材120を床材110に固定するようにしてもよい。
【0011】
動吸振器140は、ブラケット部材120に、第二取付部材150により着脱可能に取り付けられる。動吸振器140は、ブラケット部材120に取り付けられた状態において床材110の上下振動を抑制する。本実施形態においては、動吸振器140は、梁状ばね部材141を用いる片持ち梁タイプである。第二取付部材150は、本実施形態においてはボルトである。
【0012】
次に、ブラケット部材120の詳細構成について、
図2A〜
図2Eを参照して説明する。ブラケット部材120は、別体に形成されたブラケット本体121及び抑え部材122を備える。ブラケット本体121及び抑え部材122は、鋼板をプレス加工することにより形成される。
【0013】
ブラケット本体121は、床材110の下面に固定される。ブラケット本体121は、U字部121a、フランジ121b、内方突起121c、及び、凸状係止部121dを備える。U字部121aは、上方に開口するU字状に形成される。U字部121aの底面及び側面は、何れも、平面状に形成される。
【0014】
フランジ121bは、U字部121aのU字の両端縁のそれぞれから外方に張り出す。フランジ121bは、平面状に形成され、フランジ121bの上面が床材110の下面に面接触する。フランジ121bにはボルト131,132が貫通する貫通穴が形成される。つまり、U字部121aと床材110の下面とにより、両側に開口する長方体の空間が形成される。
【0015】
内方突起121cは、U字部121aの側面の
図2Dの左右方向の端部から、それぞれ内方、すなわちU字部121aの反対側の側面に向かう方向に突出する。内方突起121cは、後述する抑え部材122の脱落防止機能を有する。凸状係止部121dは、U字部121aの底面におけるU字部121aの開口縁から、U字部121aの外方に向かって延びて形成される。凸状係止部121dは、先端が基端に対して弾性変形可能な突起片である。本実施形態においては、凸状係止部121dは、板状に形成され、上下方向に弾性変形可能である。凸状係止部121dの先端側が、床材110に向かって屈曲するクランク状又はS字状に形成される。
【0016】
抑え部材122は、ブラケット本体121のU字部121aとは逆方向のU字状、すなわち下方に開口するU字状に形成される。抑え部材122は、ブラケット本体121の上面側に配置される。詳細には、抑え部材122は、ブラケット本体121のU字部121aの内部において、U字部121aの上面側に配置される。つまり、抑え部材122の底面は、ブラケット本体121のU字部121aの底面に上下方向に隙間を介して対向する。抑え部材122の底面の中央には、貫通孔が形成され、さらにナットが一体的に結合される。抑え部材122のナットには、第二取付部材150としてのボルトが螺合される。この他に、ナットに替えて、抑え部材122の底面の中央に、タップ加工などにより雌ねじが形成されるようにしてもよい。
【0017】
抑え部材122は、ブラケット本体121の内方突起121cの存在により、ブラケット本体121のU字部121aからの脱落が防止される。ただし、抑え部材122は、第二取付部材150を取り付けていない状態において、U字部121aに対して上下方向に相対移動可能である。つまり、抑え部材122の底面とU字部121aの底面との隙間が変化する。そして、抑え部材122は、第二取付部材150を取り付けた状態において、
図1に示すように、ブラケット本体121のU字部121aとの上下方向間に、動吸振器140の梁状ばね部材141の基部を挟み込んで保持する。
【0018】
ここで、上述したように、内方突起121cは、抑え部材122がU字部121aからの脱落を防止するための部位である。内方突起121cに関わらず、U字部121aと抑え部材122とが上下方向の相対移動を許容しつつ他の方向への相対移動を規制する係合関係にあればよい。例えば、U字部121aの側面に直線状突起又は溝が形成され、抑え部材122に溝又は直線状突起が形成されるようにしてもよい。
【0019】
次に、動吸振器140について
図3A〜
図3Dを参照して説明する。本実施形態においては、動吸振器140は、梁状ばね式動吸振器である。動吸振器140は、梁状ばね部材141、マス142及び粘弾性体143を備える。梁状ばね部材141は、長尺状に形成される。梁状ばね部材141は、例えば、金属によって、角パイプにより長尺状に形成される。つまり、梁状ばね部材141は、平行に対向する二対の平面を備える。さらに、梁状ばね部材141は、パイプの全周に亘って隙間を有しない形状、すなわち無端状に形成される。
【0020】
梁状ばね部材141の長尺状の一端側(梁状ばね部材141の基部側)は、ブラケット部材120に固定される。詳細には、梁状ばね部材141の基部側は、ブラケット本体121のU字部121aと抑え部材122との上下方向間に挟み込まれる。つまり、梁状ばね部材141の基部側は、ブラケット部材120を介して床材110に固定される。一方、梁状ばね部材141の先端側は、床材110に対して固定されていないため、上下方向に振動可能となる。このとき、梁状ばね部材141における対向する一対の面が床材110の振動方向(上下方向)に平行な方向となるように、梁状ばね部材141は配置される。従って、梁状ばね部材141が撓み変形する場合には、梁状ばね部材141の一対の側面が大きなばね力を発揮する。
【0021】
さらに、梁状ばね部材141の基部側には、対向する一対の面に、第二取付部材150としてのボルトを挿通する貫通孔141aが形成される。また、梁状ばね部材141の基部側のうち下方に位置する面(
図3Bの手前面)には、貫通孔である凹部141bが形成される。凹部141bは、ブラケット本体121の凸状係止部121dに係止する。凹部141bは、矩形の貫通孔である。なお、両者の係止態様については、後述する。
【0022】
マス142は、金属又はコンクリートなどの大きな質量を有する材料により形成されるマス142は、梁状ばね部材141の先端側の下面に固定される。マス142が床材110に接触しないように設けられる。
【0023】
粘弾性体143は、梁状ばね部材141の先端側の上面に設けられる。粘弾性体143は、床材110の下面に接触する。ここで、粘弾性体143は、梁状ばね部材141の先端の振動に伴って、接触と離間とを繰り返すようにしてもよいし、梁状ばね部材141の先端が振動する間、常時接触している状態を維持するようにしてもよい。前者の場合には、粘弾性体143は、床材110に対して打撃を与えることになる。後者の場合には、粘弾性体143は、状態に応じた圧縮力を付与することになる。
【0024】
つまり、動吸振器140のマス142が床材110の振動を肩代わりして振動することで、床材110の振動を抑制する。さらに、動吸振器140の粘弾性体143が床材110に接触することで、床材110の振動をさらに抑制する。
【0025】
(動吸振器140の取付工程)
次に、動吸振器140をブラケット部材120に取り付ける工程について、
図4A〜
図4Eを参照して説明する。
図4Aに示すように、作業者は、ブラケット本体121を床材110の下面に第一取付部材130により固定する。このとき、抑え部材122は、ブラケット本体121のU字部121aと床材110との間に配置され、ブラケット本体121に対して上下方向に相対移動可能な状態である。
【0026】
続いて、
図4Aに示すように、作業者は、動吸振器140の梁状ばね部材141の基部を、ブラケット本体121のU字部121aと抑え部材122との上下方向間に挿入する。ここで、梁状ばね部材141の挿入側は、凸状係止部121dの反対側である。作業者は、梁状ばね部材141を
図4Aの左から右へ向かう水平方向へ移動させる。梁状ばね部材141をさらに奥へ挿入すると、梁状ばね部材141の基部側の下面が、凸状係止部121dに接触し、梁状ばね部材141が傾いた状態となる。
【0027】
そして、梁状ばね部材141の凹部141bが、凸状係止部121dの位置に位置する状態となる。そうすると、
図4Bに示すように、作業者は、梁状ばね部材141の基部を、下方へ移動する。つまり、凹部141bが、凸状係止部121dに対して第一方向としての下方へ移動することになる。このとき、凸状係止部121dの先端は、凹部141bより飛び出した位置に存在する。ここで、第一方向とは、凸状係止部121dの弾性変形可能な方向に一致する。
【0028】
続いて、作業者は、梁状ばね部材141を、
図4Cに示すように、
図4Cの右から左に向かう水平方向に移動させる。つまり、梁状ばね部材141は、ブラケット本体121のU字部121aと抑え部材122との上下方向間に挿入する方向とは反対方向に移動させる。そうすると、凹部141bは、凸状係止部121dに対して、第二方向としての
図4Cの左側へ相対移動する。ここで、第二方向とは、第一方向とは異なる方向となり、且つ、梁状ばね部材141がブラケット本体121のU字部121aと抑え部材122との上下方向間に挿入する方向とは反対方向となる。その結果、凸状係止部121dが凹部141bに係止する。
【0029】
凸状係止部121dと凹部141bとの係止によって、ブラケット部材120と動吸振器140との仮固定が行われる。つまり、作業者が動吸振器140から手を離したとしても、動吸振器140はブラケット部材120から脱落することはない。
【0030】
また、仮固定状態において、凸状係止部121dの先端は、梁状ばね部材141の基部に対して下方への弾性力を付与する。つまり、凸状係止部121dは、仮固定状態において、梁状ばね部材141の基部の変位を規制する。特に、凸状係止部121dは、動吸振器140のマス142とは反対側に位置する。そのため、凸状係止部121dは、仮固定状態において、マス142の重力によって梁状ばね部材141の先端(
図4Cの左側)が下方へ移動する動作によって、弾性力を大きくするように変形する。つまり、マス142の重力によって梁状ばね部材141の先端が下方へ移動しようとすると、凸状係止部121dが、より大きな弾性力によって梁状ばね部材141の基部の変位を規制する。
【0031】
続いて、
図4Dに示すように、作業者は、梁状ばね部材141の貫通孔141aとブラケット本体121のU字部121aの貫通孔とが一致する状態とし、且つ、抑え部材122を下方へ移動させる。つまり、作業者は、抑え部材122を梁状ばね部材141に押し付けることにより、梁状ばね部材141を水平状態とする。
【0032】
この状態において、作業者は、
図4Eに示すように、第二取付部材150であるボルトをブラケット本体121の下方から挿入し、さらに梁状ばね部材141の貫通孔141aを挿通させ、抑え部材122のナットに螺合する。つまり、抑え部材122が、ブラケット本体121に本固定される。そうすると、ブラケット部材120と動吸振器140との本固定が行われる。
【0033】
ここで、凸状係止部121dの先端は、本固定状態においても、梁状ばね部材141の基部に対して下方への弾性力を付与する。つまり、凸状係止部121dは、本固定状態において、梁状ばね部材141の基部の変位を規制する。床材110の上下方向への振動に伴ってマス142が上下方向に振動する場合のうち、マス142が下方へ移動する場合に、凸状係止部121dが梁状ばね部材141の基部の変位を規制する。特に、凸状係止部121dは、梁状ばね部材141の先端(
図4Eの左側)が下方へ移動する動作によって、弾性力を大きくするように変形する。つまり、凸状係止部121dは、より大きな弾性力によって、梁状ばね部材141の基部の変位を規制する。
【0034】
<第一実施形態の変形態様>
第一実施形態の変形態様の制振床構造1aについて
図5を参照して説明する。第一実施形態の制振床構造1においては、凸状係止部121dがU字部121aの底面の縁から外方に延びて形成される。一方、
図5に示すように、制振床構造1aにおいては、U字部121a1の底面の縁部に切欠121eを形成し、当該切欠121eの部分によって凸状係止部121d1が形成される。または、U字部121a1の底面の中央部に打ち抜き穴(121e)を形成し、当該打ち抜き穴(121e)の部分によって凸状係止部121d1が形成される。従って、凸状係止部121d1の部分が、U字部121a1の底面の縁から突出しないように形成されるため、ブラケット本体121の剛性を高くしつつ、ブラケット本体121の歩留まりを高くできる。
【0035】
<第二実施形態>
第二実施形態の制振床構造2について、
図6A〜
図6Cを参照して説明する。第二実施形態の制振床構造2は、第一実施形態の制振床構造1に対して、凸状係止部と凹部の取付対象を逆にした構成となる。なお、制振床構造2の構成のうち制振床構造1と同一構成については同一符号を付す。
【0036】
制振床構造2は、
図6Aに示すように、床材110、ブラケット部材220、第一取付部材130、動吸振器240及び第二取付部材150を備える。そして、ブラケット本体221は、凸状係止部を備えず、凹部221dを備える。一方、梁状ばね部材241は、凹部を備えず、凸状係止部241bを備える。凸状係止部241bの先端が、梁状ばね部材241の基部から先端側を向く。
【0037】
第二実施形態の制振床構造2において、動吸振器240をブラケット部材220に取り付ける工程は、第一実施形態と実質的に同様である。つまり、凸状係止部241bが凹部221dに対して下方(第一方向)へ移動した後に、凸状係止部241bが凹部221dに対して水平方向(第二方向)へ移動することにより、凸状係止部241bと凹部221dとの仮固定が行われる。また、凸状係止部241bは、弾性変形可能な突起片としての機能についても、第一実施形態の凸状係止部121dと同様である。
【0038】
<第三実施形態>
(制振床構造3の構成)
第三実施形態の制振床構造3の構成について、
図7〜
図9Bを参照して説明する。制振床構造3は、床材110、ブラケット部材320、第一取付部材130、動吸振器340及び第二取付部材350を備える。
【0039】
ブラケット部材320は、床材110の下面に第一取付部材130により固定されるブラケット本体321と、ブラケット本体321の下面側に着脱可能に取り付けられる抑え部材322とを備える。ブラケット本体321は、第一実施形態のブラケット本体121と近似形状のU字部321a及びフランジ部321bを備える。さらに、ブラケット本体321は、U字部321aから下方に延びるボルトである凸状係止部321cを備える。
【0040】
抑え部材322は、上方に開口するU字状に形成され、U字部321aの下面に対向する位置に配置される。抑え部材322は、凸状係止部321cを挿通する貫通孔を有する。抑え部材322をブラケット本体321に固定するための第二取付部材350は、抑え部材322の下面に配置されるナットである。
【0041】
動吸振器340は、梁状ばね部材341、マス142及び粘弾性体143を備える。梁状ばね部材341は、第一実施形態の梁状ばね部材141と同様に角パイプにより形成される。梁状ばね部材341は、
図9A及び
図9Bに示すように、側方に開口する凹部341aを備える。
【0042】
凹部341aは、側方の開口部から奥部に至る途中に屈曲部を備える。本実施形態においては、凹部341aは、L字状に形成される。つまり、凹部341aにおいて開口部から屈曲部へ至る方向は、梁状ばね部材341の長尺方向に対して直交する方向である。さらに、凹部341aにおいて屈曲部から奥部へ至る方向は、梁状ばね部材341の長尺方向に平行な方向である。ただし、凹部341aは、開口部から屈曲部に至る方向と屈曲部から奥部へ至る方向とが異なれば、上記以外の方向に形成してもよい。また、凹部341aは、開口部から屈曲部に至るまでを直線状としたが曲線状としてもよく、屈曲部から奥部に至るまでを直線状としたが曲線状としてもよい。
【0043】
(動吸振器340の取付工程)
次に、動吸振器340をブラケット部材320に取り付ける工程について、
図8A、
図10A及び
図10Bを参照して説明する。
図8Aに示すように、作業者は、第二取付部材350により抑え部材322をブラケット本体321に仮固定する。このとき、抑え部材322とブラケット本体321との隙間は、最終状態に比べて広くしておく。
【0044】
この状態で、
図10Aに示すように、作業者は、梁状ばね部材341の凹部341aの開口部から凸状係止部321cが挿入されるように、梁状ばね部材341を水平方向へ相対移動させる。このとき、凸状係止部321cは、凹部341aに対して、梁状ばね部材341の長尺方向に直交する水平方向(第一方向)に相対移動する。そうすると、凸状係止部321cは、凹部341aの屈曲部まで進入する。
【0045】
続いて、
図10Bに示すように、作業者は、凸状係止部321cが凹部341aの屈曲部から奥部へ向かって移動するように、梁状ばね部材341を自身の長尺方向へ相対移動させる。このとき、凸状係止部321cは、凹部341aに対して、梁状ばね部材341の長尺方向の水平方向(第二方向)に相対移動する。そうすると、凸状係止部321cは、凹部341aの奥部まで進入する。このようにして、動吸振器340は、ブラケット部材320に仮固定される。仮固定後は、作業者は、抑え部材322を上方へ移動させて梁状ばね部材341に押し付け、さらに第二取付部材350であるナットを締め付ける。
【0046】
<第四実施形態>
(制振床構造4の構成)
第四実施形態の制振床構造4の構成について、
図11〜
図13を参照して説明する。制振床構造4は、床材110、ブラケット部材420、第一取付部材130、動吸振器440及び第二取付部材450を備える。
【0047】
ブラケット部材420は、床材110の下面に第一取付部材130により固定されるブラケット本体421と、ブラケット本体421の下面側に着脱可能に取り付けられる抑え部材422とを備える。ブラケット本体421は、第一実施形態のブラケット本体121と近似形状のU字部421a及びフランジ部421bを備える。
【0048】
さらに、ブラケット本体421は、U字部421aの底面の中央部から下方に延びるボルト421cを備える。さらに、ブラケット本体421は、U字部421aの底面から下方に延び、L字板状に形成される複数の凸状係止部421dを備える。複数の凸状係止部421dは、ボルト421cを幅方向に挟むように配置される。複数の凸状係止部421dは、先端側が
図12Aの右へ延びるように形成される。
【0049】
抑え部材422は、上方に開口するU字状に形成され、U字部421aの下面に対向する位置に配置される。抑え部材422は、ボルト421cを挿通する貫通孔を有する。抑え部材422をブラケット本体421に固定するための第二取付部材450は、抑え部材422の下面に配置されるナットである。
【0050】
動吸振器440は、梁状ばね部材441、マス142及び粘弾性体143を備える。梁状ばね部材441は、第一実施形態の梁状ばね部材141と同様に角パイプにより形成される。梁状ばね部材441の基部側には、
図13に示すように、対向する一対の面に、ボルト421cを挿通する貫通孔441aが形成される。貫通孔441aは、長円形に形成される。また、梁状ばね部材441の基部側のうち上方に位置する面には、貫通孔である複数の凹部441bが形成される。複数の凹部441bは、ブラケット本体421の複数の凸状係止部421dに係止する。複数の凹部441bは、細長い矩形の貫通孔である。
【0051】
(動吸振器440の取付工程)
次に、動吸振器440をブラケット部材420に取り付ける工程について、
図14A及び
図14Bを参照して説明する。
図14Aに示すように、作業者は、抑え部材422をブラケット本体421に取り付けられていない状態にしておく。この状態で、作業者は、梁状ばね部材441をブラケット本体421に対して上方へ相対移動させて、ブラケット本体421のボルト421cを梁状ばね部材441の貫通孔441aに挿入する。
【0052】
作業者は、梁状ばね部材441をブラケット本体421に対してさらに上方(第一方向)へ相対移動させて、複数の凸状係止部421dを、梁状ばね部材441の複数の凹部441bに挿入する。
【0053】
続いて、
図14Bに示すように、作業者は、梁状ばね部材441をブラケット本体421に対して梁状ばね部材441の長尺方向の水平方向(第二方向)に相対移動させる。梁状ばね部材441の相対移動方向(第二方向)は、凸状係止部421dのL字状の先端部分の延びる方向とは反対方向である。従って、凸状係止部421dが、凹部441bの縁に係止される。このようにして、動吸振器440は、ブラケット部材420に仮固定される。
【0054】
仮固定後は、
図11に示すように、作業者は、抑え部材422により、梁状ばね部材441の基部をブラケット本体421との上下方向間で挟み込む。そして、第二取付部材450であるナットで抑え部材422がブラケット本体421に固定されることにより、ブラケット部材420と動吸振器440との本固定が行われる。
【0055】
<第五実施形態>
(制振床構造5の構成)
第五実施形態の制振床構造5の構成について、
図15〜
図17を参照して説明する。制振床構造5は、床材110、ブラケット部材520、第一取付部材130、動吸振器540及び第二取付部材550を備える。
【0056】
ブラケット部材520は、床材110の下面に第一取付部材130により固定されるブラケット本体521と、ブラケット本体521の下面に着脱可能に取り付けられる抑え部材522とを備える。ブラケット本体521は、第一実施形態のブラケット本体121と近似形状のU字部521a及びフランジ部521bを備える。さらに、
図16Aに示すように、ブラケット本体521は、U字部521aの底面の中央部から下方に延びるボルト521cを備える。
【0057】
さらに、ブラケット本体521は、U字部521aの底面から下方に延び、ボルト521cを挟むように配置される一対の凸状係止部521dを備える。一対の凸状係止部521dは、下方に行くに従って広がるように形成される。また、一対の凸状係止部521dは、
図16Bに示すように、下方から見た場合に、長円形に形成される。
【0058】
抑え部材522は、第四実施形態の抑え部材422と同様である。すなわち、抑え部材522は、上方に開口するU字状に形成され、U字部521aの下面に対向する位置に配置される。抑え部材522は、ボルト521cを挿通する貫通孔を有する。抑え部材522をブラケット本体521に固定するための第二取付部材550は、抑え部材522の下面に配置されるナットである。
【0059】
動吸振器540は、梁状ばね部材541、マス142及び粘弾性体143を備える。梁状ばね部材541は、第一実施形態の梁状ばね部材141と同様に角パイプにより形成される。
図17に示すように、梁状ばね部材541の基部側のうち上方に位置する面には、凸状係止部521dを挿入可能な凹部541aが形成される。
【0060】
凹部541aにおける梁状ばね部材541の長手方向の間隔は、梁状ばね部材541の幅方向の中央部が大きく、幅方向の側方が小さくなるように形成される。つまり、凹部541aは、梁状ばね部材541の幅方向の中央部において、凸状係止部521dの全てを挿入可能な長円形状に形成される。また、凹部541aは、梁状ばね部材541の幅方向の中央部からずれた位置においては、凸状係止部521dの長手方向の全長より短い長さに形成される。さらに、梁状ばね部材541の基部側のうち下方に位置する面には、ボルト521cを挿通する貫通孔541bが形成される。
【0061】
(動吸振器540の取付工程)
次に、動吸振器540をブラケット部材520に取り付ける工程について、
図18A〜
図19を参照して説明する。作業者は、抑え部材522をブラケット本体521に取り付けられていない状態にしておく。この状態で、作業者は、
図18Aに示すように、梁状ばね部材541をブラケット本体521に対して上方(第一方向)へ相対移動させて、ブラケット本体521のボルト521cを梁状ばね部材541の凹部541a及び貫通孔541bに挿入する。
【0062】
このとき、
図18Bに示すように、凸状係止部521dの長手方向は、凹部541aにおける梁状ばね部材541の幅方向の中央部に一致させる。本実施形態においては、梁状ばね部材541が、最終取付状態に対して、鉛直軸回りに45度回転させた状態となる。そうすると、凸状係止部521dが凹部541aに挿入される。
【0063】
続いて、
図19に示すように、作業者は、梁状ばね部材541をブラケット本体521に対して、鉛直軸回りの回転方向(第二方向)に回転させる。本実施形態においては、作業者は、梁状ばね部材541をブラケット本体521に対して45度回転させる。そうすると、凸状係止部521dが、凹部541aの縁に係止される。このようにして、動吸振器540は、ブラケット部材520に仮固定される。
【0064】
仮固定後は、
図15に示すように、作業者は、抑え部材522により、梁状ばね部材541の基部をブラケット本体521との上下方向間で挟み込む。そして、第二取付部材550であるナットで抑え部材522がブラケット本体521に固定されることにより、ブラケット部材520と動吸振器540との本固定が行われる。
【0065】
<実施形態の効果>
第一〜第五実施形態の制振床構造1,1a,2,3,4,5は、床材110の下面に取り付けられるブラケット部材120,220,320,420,520と、ブラケット部材120,220,320,420,520に着脱可能に取り付けられ、ブラケット部材120,220,320,420,520に取り付けられた状態において床材110の上下振動を抑制する動吸振器140,240,340,440,540とを備える。
【0066】
ブラケット部材120,220,320,420,520及び動吸振器140,240,340,440,540の一方は、凸状係止部121d,241b,321c,421d,521dを備える。ブラケット部材120,220,320,420,520及び動吸振器140,240,340,440,540の他方は、凹部141b,221d,341a,441b,541aを備える。
【0067】
凸状係止部121d,241b,321c,421d,521d及び凹部141b,221d,341a,441b,541aの一方がその他方に対して第一方向へ相対移動することにより、凸状係止部121d,241b,321c,421d,521dが凹部141b,221d,341a,441b,541aに挿入する。さらに、凸状係止部121d,241b,321c,421d,521dの挿入後に、凸状係止部121d,241b,321c,421d,521d及び凹部141b,221d,341a,441b,541aの一方がその他方に対して第一方向とは異なる第二方向へ相対移動することにより、凸状係止部121d,241b,321c,421d,521dが凹部141b,221d,341a,441b,541aに係止する。
【0068】
凸状係止部121d,241b,321c,421d,521dと凹部141b,221d,341a,441b,541aとの係止によって、ブラケット部材120,220,320,420,520と動吸振器140,240,340,440,540との仮固定が行われる。
【0069】
ブラケット部材120,220,320,420,520と動吸振器140,240,340,440,540との仮固定状態において、作業者が動吸振器140,240,340,440,540を支持しなくても、仮固定状態が維持される。そうすると、作業者がブラケット部材120,220,320,420,520と動吸振器140,240,340,440,540との本固定を行う場合に、作業者は動吸振器140,240,340,440,540を軽く支持する程度で、動吸振器140,240,340,440,540を所望の位置及び姿勢に位置決めすることができる。従って、作業者による施工性が良好となり、動吸振器140,240,340,440,540の施工品質も向上できる。結果として、所望の制振効果が得られる。
【0070】
また、第一、第二、第三実施形態における制振床構造1,1a,2,3では、ブラケット部材120,220,320は、床材110に固定されるブラケット本体121,221,321と、ブラケット本体121,221,321の上面側又は下面側に配置され、ブラケット本体121,221,321との上下方向間に動吸振器140,240,340の基部を挟み込んで保持する抑え部材122,322とを備える。
【0071】
抑え部材122,322がブラケット本体121,221,321に仮固定された状態において、動吸振器140,240,340の基部がブラケット本体121,221,321と抑え部材122,322との上下方向間に挿入された後に、凸状係止部121d,241b,321cと凹部141b,221d,341aとの係止によりブラケット部材120,220,320と動吸振器140,240,340との仮固定が行なわれる。
【0072】
ブラケット部材120,220,320と動吸振器140,240,340との仮固定の後に、抑え部材122,322がブラケット本体121,221,321に本固定されることにより、ブラケット部材120,220,320と動吸振器140,240,340との本固定が行われる。
【0073】
動吸振器140,240,340とブラケット部材120,220,320との仮固定状態において、動吸振器140,240,340の基部は、ブラケット本体121,221,321と抑え部材122,322とに挟まれた状態となる。従って、仮固定状態において、動吸振器140,240,340は、より安定した状態となる。その結果、作業者による施工性が良好となり、動吸振器140,240,340の施工品質も向上できる。
【0074】
また、第一、第二、第三実施形態の制振床構造1,1a,2,3では、ブラケット本体121,221,321は、凸状係止部121d,241b,321c又は凹部141b,221d,341aを備える。ブラケット本体121,221,321は、床材110に固定されている。従って、仮固定状態において、動吸振器140,240,340は、より安定する。その結果、作業者による施工性がより良好となる。
【0075】
また、第一、第二実施形態の制振床構造1,1a,2では、第二方向は、動吸振器140,240の基部をブラケット本体121,221と抑え部材122との上下方向間に挿入する方向とは反対方向である。従って、仮固定状態において、動吸振器140,240がブラケット部材120,220から、より抜けにくくなる。つまり、仮固定状態において、動吸振器140,240は、より安定する。
【0076】
また、第一、第二実施形態の制振床構造1,1a,2では、凸状係止部121d,241bは、先端が基端に対して上下方向に弾性変形可能な突起片である。そして、凸状係止部121d,241bは、ブラケット部材120,220と動吸振器140,240との本固定状態において弾性力を付与することにより、動吸振器140,240の基部の変位を規制する。本固定状態において、弾性片可能な凸状係止部121d,241bによって、動吸振器140,240がより安定した状態となる。
【0077】
また、第一、第二実施形態の制振床構造1,1a,2では、凸状係止部121d,241bは、ブラケット部材120,220と動吸振器140,240との仮固定状態において弾性力を付与することにより、動吸振器140,240の基部の変位を規制する。仮固定状態において、弾性変形可能な凸状係止部121d,241bによって、動吸振器140,240がより安定した状態となる。
【0078】
また、第一、第二実施形態の制振床構造1,1a,2では、動吸振器140,240は、長尺状に形成され長尺状の一端側をブラケット部材120,220に固定される梁状ばね部材141,241と、梁状ばね部材141,241の長尺状の他端側に設けられるマス142とを備える。
【0079】
そして、凸状係止部121d,241bは、ブラケット部材120,220と動吸振器140,240との仮固定状態において、マス142の重力によって梁状ばね部材141,241の一端が下方へ移動する動作によって、弾性力を大きくするように変形する。その結果、仮固定状態において、動吸振器140,240の安定性が高まる。
【0080】
また、第一、第二実施形態の制振床構造1,1a,2では、凸状係止部121d,241bは、先端が基端に対して弾性変形可能な突起片であり、第一方向は、凸状係止部121d,241bの弾性変形方向であり、第二方向は、凸状係止部121d,241bの弾性変形方向とは異なる水平方向である。これにより、凸状係止部121d,241bが容易に且つ確実に形成できる。
【0081】
また、第三実施形態の制振床構造3では、凹部341aは、側方に開口し、且つ、側方の開口部から奥部に至る途中に屈曲部を備える。第一方向は、凹部341aの開口から屈曲部へ至る水平方向であり、第二方向は、凹部341aの屈曲部から奥部へ至る水平方向である。これにより、作業者は、動吸振器340をブラケット部材320に仮固定することを容易にできる。
【0082】
また、第四、第五実施形態の制振床構造4,5では、ブラケット部材420,520は、床材110に固定され、凸状係止部421d,521d又は凹部441b,541aを備えるブラケット本体421,521と、ブラケット本体421,521の上面側又は下面側に配置され、ブラケット本体421,521との上下方向間に動吸振器440,540の基部を挟み込んで保持する抑え部材422,522とを備える。
【0083】
さらに、抑え部材422,522がブラケット本体421,521に取り付けられていない状態において、凸状係止部421d,521dと凹部441b,541aとの係止により、ブラケット部材420,520と動吸振器440,540との仮固定が行なわれる。
【0084】
動吸振器440,540の基部がブラケット本体421,521と抑え部材422,522との上下方向間に挟み込まれるように、抑え部材422,522がブラケット本体421,521に固定されることにより、ブラケット部材420,520と動吸振器440,540との本固定が行われる。
【0085】
作業者が動吸振器440,540をブラケット部材420,520に仮固定する際に、抑え部材422,522がブラケット本体421,521に取り付けられていないため、仮固定の作業性が良好となる。
【0086】
また、第四実施形態の制振床構造4では、第一方向は、上下方向の一方であり、第二方向は、水平方向である。作業者による作業の手順が分かりやすい。その結果、作業性が良好となる。
【0087】
また、第五実施形態の制振床構造5では、第一方向は、上下方向の一方であり、第二方向は、鉛直軸回りの回転方向である。このようにしたとしても、確実に、動吸振器540とブラケット本体521との仮固定が可能となる。
【0088】
また、第一〜第五実施形態の制振床構造1,1a,2,3,4,5では、動吸振器140,240,340,440,540の梁状ばね部材141,241,341,441,541は、角パイプにより長尺状に形成され、対向する一対の面が床材110の振動方向に平行な方向となるように配置される。梁状ばね部材141,241,341,441,541が角パイプであることにより、梁状ばね部材141,241,341,441,541は、床材110が振動することに伴って振動する場合に、横揺れしにくくなる。つまり、梁状ばね部材141,241,341,441,541のピッチングが小さい。従って、制振効果が高くなる。例えば、特開2010−230031号公報に記載の梁状ばね部材と比べると、制振効果が高いことが実験結果により分かった。