(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  打撃機構の駆動に伴う振動は打撃軸に沿って大きく発生するため、トランスミッションハウジングとハウジングとを打撃軸方向へ相対移動させる上述の機構は、振動抑制において一定の効果を有していた。一方、打撃工具においては、当該機構により抑制することができない振動が残存するため、さらなる改良が要望されていた。
【0005】
  本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、実際の打撃作業における防振を図るための一層合理的な構成を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  上記課題を達成するため、本発明に係る打撃工具の好ましい形態によれば、先端工具を直線状に駆動させ、被加工材に対して打撃作業を遂行する打撃工具に関する。打撃工具の具体例としては、先端工具を直線状に移動させて、コンクリートなどの被加工材を破壊する電動ハンマが挙げられる。
  打撃工具は、本体部と、所定の長軸方向に延在される先端工具装着部と、長軸方向と交差する出力軸線を有する駆動モータと、駆動モータの出力により駆動されるとともに長軸方向と平行な打撃軸を有する打撃要素と、使用者に把持されるハンドル部と、駆動モータに電流を供給するためのバッテリを装着するバッテリ装着部と、を有する。出力軸線は、駆動モータのシャフトの延在方向により規定される。打撃要素の具体例としては、駆動モータにより直線状に往復駆動されるピストンと、打撃子と、当該ピストンと打撃子との間に形成される空気室とによる構成が挙げられる。この場合、ピストンが先端工具側へ移動すると空気室のエアが圧縮される。当該圧縮されたエアの膨張に伴い、打撃子が移動され先端工具に衝突することにより先端工具が長軸方向へ移動される。なお、ピストンが先端工具とは反対側に移動されると空気室のエアが膨張され、当該膨張されたエアの収縮に伴い打撃子が先端工具とは反対側へと移動される。よって、ピストンの往復移動に伴い先端工具は直線状に移動される。なお、本発明に係る打撃工具においては、打撃子と先端工具との間に中間子を設ける構成も適宜に採用可能である。打撃要素が上述した構成を有する場合、ピストンが往復駆動される方向が打撃軸を規定する。打撃軸は、長軸方向と平行に構成される。この場合、打撃軸は、ピストン上におけるいずれかの領域を通過すれば足りるものである。なお、先端工具装着部に先端工具を装着した場合において、先端工具の中心を通過する打撃軸を、特に中心打撃軸線と称する。
【0007】
  また、当該形態に係る打撃工具において、本体部は、第1本体要素と、第2本体要素と、第1本体要素と第2本体要素を付勢する付勢部材とを有する。
  付勢部材は、バネ要素、例えばコイルスプリングにより構成することが可能である。付勢部材としてコイルスプリングを用いる場合、当該コイルスプリングの一端を第1本体要素に固定し、他端を第2本体要素に固定することにより、当該コイルスプリングは第1本体要素と第2本体要素を付勢することが可能となる。
  付勢部材は、第1本体要素と第2本体要素とを離間する方向に付勢することが好ましい。これによって、第1本体要素と第2本体要素とが近接する方向へ移動した場合における、第1本体要素と第2本体要素との衝突を効果的に防止することが可能となり、当該衝突に基づく本体部の傷などの発生を抑止することができる。
【0008】
  また、本体部は、打撃要素に近接した第1領域と、第1領域よりも打撃要素から離間した第2領域とを有する。打撃要素と「近接する」および「離間する」とは、例えば長軸方向の交差方向における本体部上の任意の二点を打撃要素における所定の点とそれぞれ結んだ場合の、それぞれの直線距離により規定することが可能である。すなわち、当該交差方向において、打撃要素の所定の点との距離が短い点を有する領域を第1領域とし、打撃要素の所定の点との距離が長い点を有する領域を第2領域とすることができる。
  なお、第1本体要素には駆動モータと打撃要素が設けられ、第2本体要素にはハンドル部とバッテリ装着部が設けられる。
【0009】
  本形態に係る打撃工具は、さらに打撃要素の駆動に伴う振動を抑制する防振機構を有する。防振機構は、打撃要素の駆動に伴う振動により付勢部材を介して、第1本体要素と第2本体要素とが離間した状態と、第1本体要素と第2本体要素とが近接した状態との間で、第1本体要素と第2本体要素とを相対的に往復移動させる。
  第1本体要素と第2本体要素とが離間した状態および近接した状態につき説明を行う。まず、長軸方向における第1本体要素の所定の点と第2本体要素の所定の点とを規定する。当該第1本体要素の所定の点と第2本体要素の所定の点とを結んだ距離を、第1位置規定距離とする。次に第1本体要素と第2本体要素とを相対的に移動させた状態において、上述の第1本体要素の所定の点と第2本体要素の所定の点とを結んだ距離を第2位置規定距離とする。そして、第1位置規定距離が、第2位置規定距離よりも長いものとする。この場合、第1規定距離を形成する第1本体要素と第2本体要素の位置関係は、「離間した状態」となる。そして、第2規定距離を形成する第1本体要素と第2本体要素の位置関係は「近接した状態」となる。
【0010】
  本形態に係る打撃工具において、第1本体要素と第2本体要素とが互いに離間した状態から近接した状態に移動される場合の長軸方向の距離において、第1領域は、第2領域よりも長い距離を移動する長距離移動領域を構成する。
  本形態に係る打撃工具によれば、このような構成により、打撃要素からの振動の影響を強く受ける第1領域を、第2領域に比べて相対的に長い距離を移動することとなる長距離移動領域とすることにより、効果的な防振を図ることが可能となる。また、第2領域は、第1本体要素と第2本体要素とが互いに離間した状態から近接した状態に移動される場合の長軸方向の距離において、第1領域に対して相対的に短い距離を移動する短距離移動領域を構成するということができる。すなわち、防振機構が長距離移動領域と短距離移動領域の双方を備えることにより、打撃要素の駆動に伴い発生される振動を効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
  また、本形態に係る打撃工具において、第1本体要素は、第2本体要素に被覆される第1被覆領域と、第2本体要素に被覆されていない露出領域とを
有する。すなわち、第1本体領域と第2本体領域は、互いに重なる領域である積層領域を有する。当該積層領域においては、被覆する側が露出領域を構成し、被覆される側が被覆領域を構成する。なお、露出領域は、打撃工具の外郭を構成することが可能であり、この意味において、必ずしも他の本体要素を被覆しない構成も可能である。
  このような構成においては、
駆動モータは第1被覆領域に設けられる。すなわち、駆動モータは打撃工具の内部において第2本体領域により保護されることとなる。
【0012】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、バッテリ装着部にバッテリを装着した状態における重心位置を有し、第1本体要素と第2本体要素とは回動軸線周りに相対的に回動するよう構成することができる。
  当該構成においては、回動軸線を打撃軸よりも重心位置に近接して設けることができる。なお、回動軸線が打撃軸よりも重心位置に近接している状態とは、例えば、重心位置を通過するとともに打撃軸と直交する仮想線と、当該仮想線と打撃軸との所定の交点を規定した場合、回動軸線から重心位置までの距離が回動軸線から前述の交点までの距離よりも短いことを示す。このような構成により、長距離移動領域(第1領域)における第1本体要素と第2本体要素の移動距離を拡大することが可能となる。
  また、打撃要素の駆動に伴う振動の一部は、打撃工具の重心位置を中心とした回動方向の振動へと変化する場合がある。このような場合、当該構成によれば、打撃工具の回動方向の振動を効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、駆動モータをモータ保持部に配置することができる。この場合、第1本体要素をモータ保持部と一体化することができる。第1本体要素とモータ保持部とを一体化するとは、第1本体要素に対してモータ保持部を固定部材などにより固定することにより、第1本体要素が第2本体要素に対して移動した場合に、モータ保持部も第1本体要素とともに第2本体要素に対して移動することを示す。
  このような構成においては、第1本体要素に対して駆動モータを設けるに際して、組み付けが容易な構成を提供することが可能となる。
【0014】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、回動軸線を規定するための軸部材をモータ保持部に形成することができる。この場合、軸部材を有するモータ保持部を第1本体要素に固定することにより回動軸線を構成することができるため、製造上におけるより一層の効率化を図ることが可能となる。
【0015】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、第2本体要素は、第1本体要素に被覆される第2被覆領域を有することができる。この場合、第2本体要素における先端工具保持部側の端縁領域を第2被覆領域とすることができる。
  打撃作業においては、先端工具での加工作業時に生じる被加工材の塵芥が、先端工具からハンドル部へ向かって飛散する。このような状況において、第2本体要素における先端工具保持部側の領域を第2被覆領域とした場合、当該塵芥の第2本体要素に対する流入を効果的に防止することが可能となる。この意味において、第2被覆領域と、当該第2被覆領域を被覆する第1本体要素の領域とは、防塵機構を構成すると言うことができる。
【0016】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、付勢部材が第1本体要素と第2本体要素を付勢する方向を、打撃軸と重ねることができる。当該構成によれば、打撃要素の駆動に伴う打撃軸方向の振動を付勢部材が受けやすくなるため、より効率的な第1本体要素と第2本体要素との相対的な移動を促すことが可能となる。
  なお、付勢部材の付勢方向が打撃軸と重なるとは、典型的には中心打撃軸線と同軸に付勢部材を配置した場合が挙げられる。なお、付勢部材が中心打撃軸線と同軸に配置されていない場合であっても、付勢部材の一部が打撃軸上に配置されていれば足りるものである。
  また、付勢部材の配置形態にあっては、付勢部材の長軸を打撃軸と平行とする構成や、付勢部材の長軸を打撃軸と交差させる構成や、打撃軸と重なるように付勢部材を湾曲させて配置した構成とすることができる。
【0017】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、第1本体要素と第2本体要素における近接方向の移動を規制する規制部を構成することができる。規制部は、本体部の内側に構成される。この場合、第1本体要素および第2本体要素における外郭(上述の露出領域)同士の衝突を防止することが可能となる。
  この意味において規制部は、第1本体要素と第2本体要素の露出領域同士の衝突を防止するための衝突防止機構を構成するということができる。
【0018】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、規制部が、第1本体要素と第2本体要素の相対移動をガイドするガイド部を兼用することが可能となる。ガイド部としては、第1本体要素と第2本体要素とにおける所定領域を接触させ、第1本体要素と第2本体要素とを摺動させる構成とすることができる。規制部がガイド部を兼用することにより、機構的にシンプルな構成とするとともに、第1本体要素と第2本体要素との組み付けの容易化を図ることが可能となる。
【0019】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、駆動モータは、一端側に設けられた吸気口と、他端側に設けられた排気口を有することができる。さらに本体部は、エア循環抑制機構を有することができる。エア循環抑制機構は、吸気口と排気口の間における本体部の内側に設けられるとともにエアが吸気口と排気口との間で循環することを抑制するように構成することができる。
  なお、エアを吸気口から取り込み排気口へと排出させることを促進するために、駆動モータのシャフトにファンを設ける構成とすることもできる。さらに、駆動モータを被覆する第2本体要素において、排気口よりも吸気口に近接した領域に本体吸気口を設け、吸気口よりも排気口に近接した領域に本体排気口を設けることが可能である。
  本発明においては、駆動モータが第1本体要素とともに第2本体要素に対して相対的に移動される構成とされている。よって、駆動モータと、当該駆動モータを被覆する第2本体要素との間に、駆動モータと第2本体要素との相対的な回動を許容するための空間が形成される。当該空間を、回動許容空間と称することができる。本体吸気口を経由して吸気口から吸入されたエアは駆動モータ内部の熱により温められて排気口から排出される。しかし、回動許容空間の構成によっては、排気口から排出されたエアが本体排気口から排出されずに回動許容空間において上昇し、再び吸気口から吸入される場合がある。この形態に係る打撃工具によれば、エア循環抑制機構を有することにより、排気口から排出されたエアが再び吸気口から吸入される現象(回動許容空間におけるエアの循環現象)を抑制することが可能となり、駆動モータの冷却を促進させることが可能となる。
【0020】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、エア循環抑制機構を壁状部材により構成することができる。この場合、当該壁状部材により、排気口から排出されたエアの吸気口への移動が遮断される。すなわち、排気口から排出されたエアは、吸気口へ再び戻ることなく本体排気口から排出される。なお、壁状部材は、駆動モータを被覆する第2本体要素から延在される構成とすることや、モータ保持部から延在される構成とされる。この場合、壁状部材は、第2本体要素もしくはモータ保持部の所定領域から一体的に延在される構成とすることができる。また、壁状部材は、第2本体要素もしくはモータ保持部とは独立した部材を、第2本体要素もしくはモータ保持部の所定領域に取り付ける構成とすることができる。
【0021】
  さらに、壁状部材の延長面上には、回動軸線を位置させることができる。壁状部材は、互いに対向する表面と、当該両表面の間に位置する中間部分とを有する。この意味において、壁状部材の延長面とは、壁状部材を延長したと仮定した場合において、壁状部材の延長方向と平行であるとともに、壁状部材の両表面もしくは中間部分のいずれかを通過する面であると定義される。壁状部材の延長面を、第1本体要素と第2本体要素の回動中心である回動軸線に位置させることにより、壁状部材の先端部に位置する回動許容空間を狭くすることが可能となる。よって、排気口から吸気口へ向かうエアを効率的に遮断することが可能となる。
【0022】
  なお、壁状部材は、駆動モータの周辺領域を全て包囲して設ける必要は無い。例えば、回動軸線上に位置する第2本体要素と駆動モータにおけるそれぞれの領域は、第1本体要素と第2本体要素とが回動することに伴う回動許容空間を設ける必要が無い。よって、当該領域においては、第2本体要素と駆動モータとを近接して配置する構成とすることが可能であるため、当該領域に壁状部材を設ける必要が無いものである。当該構成の場合は、回動軸線上に位置する第2本体要素と駆動モータにおけるそれぞれの領域により、エア循環抑制機構が構成されるということができる。
  当該構成においては、壁状部材は、回動軸線と駆動モータの出力軸線と直交するとともに回動軸線と重なる領域に設けることができる。
【0023】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、第1本体要素と第2本体要素は互いに重なるオーバーラップ領域を有する。より具体的には、オーバーラップ領域は、第1露出領域と第2被覆領域または第1被覆領域と第2露出領域とにより形成される。すなわち、上述の積層領域がオーバーラップ領域を構成する。
【0024】
  オーバーラップ領域は、第1本体要素と第2本体要素のいずれか一方に配置された可撓性部材を有する。可撓性部材は、第1本体要素または第2本体要素に配置されることにより、被覆領域または露出領域の一部もしくは全部を構成する。より具体的には、可撓性部材は、第1被覆領域、第1露出領域、第2被覆領域、第2露出領域のいずれかに配置される。可撓性部材は、エラストマー素材により構成することができる。
【0025】
  また、オーバーラップ領域は、第1本体要素と第2本体要素の他方に形成されるとともに、第1本体要素と第2本体要素とが相対的に往復移動した場合に可撓性部材が摺接する被摺動領域とを有する。すなわち、被摺動領域は、第1被覆領域、第1露出領域、第2被覆領域、第2露出領域のうち、可撓性部材が配置されない領域のいずれかに配置される。すなわち、被摺動領域は可撓性部材非配置領域に構成される。
【0026】
  この形態に係る打撃工具によれば、オーバーラップ領域における第1本体要素と第2本体要素の一方に可撓性部材が配置され、他方に被摺動領域が形成される。これによって、オーバーラップ領域における第1本体要素と第2本体要素との間に形成される間隙が、可撓性部材により閉塞されることとなる。よって、可撓性部材は、作業中において発生する粉塵の本体部への侵入を抑制することができる。この意味において、可撓性部材と被摺動領域とは防塵機構を構成するということができる。
【0027】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、可撓性部材は、第1被覆領域と第2被覆領域のいずれか一方を構成することができる。この場合、可撓性部材のみにより第1被覆領域と第2被覆領域のいずれか一方を構成することができる。また、可撓性部材と第1本体要素または第2本体要素とにより、第1被覆領域または第2被覆領域を構成することができる。
【0028】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、可撓性部材は、第2本体要素に構成することができる。
【0029】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、第1本体要素と第2本体要素とを組み付ける場合において、可撓性部材を、被摺動領域が形成される第1本体要素または第2本体要素により弾性変形可能に構成することができる。この場合、第1本体要素は開口を備えた筒状領域を有することができ、第2本体要素は、組み付けの際に当該開口から筒状体に挿入される挿入領域を有することができる。当該構成にあっては、組み付けが完了した状態において、第1本体要素に挿入された第2本体要素の領域が第2被覆領域を形成し、第2被覆領域を被覆する第1本体要素の開口周辺領域が第1露出領域を構成する。なお、筒状領域には打撃要素が収容される。
  この形態に係る打撃工具によれば、第1本体要素に第2本体要素を挿入する場合に、可撓性部材が変形するため、組み付け作業を容易に行うことができる。
【0030】
  さらに、第2本体要素を、一方の第2本体要素と他方の第2本体要素とを有する二分割構造とすることができる。当該構成にあっては、まず、第1本体要素と一方の第2本体要素とを組み付け、次に他方の第2本体要素を、第1本体要素および一方の第2本体要素に対して組み付ける。この際、例えば他方の第2本体要素における挿入領域に可撓性部材を配置した場合は、他方の第2本体要素の挿入領域を第1本体要素の開口に挿入する際に、当該開口周縁領域に可撓性部材が当接して変形することとなる。よって、他方の第2本体要素を第1本体要素に組み付ける際に、組み付け作業の容易化を図ることができる。なお。他方の第2本体要素の可撓性部材を変形させた状態で筒状部に挿入し、さらに他方の第2本体要素を第1本体要素に対し進行させる場合には、他方の第2本体要素は、変形された可撓性部材にガイドされながら第1本体要素側へ進行することとなる。よって、他方の第2本体要素を第1本体要素に対し、円滑に組み付けることが可能となる。この意味において、可撓性部材は、第1本体要素と第2本体要素1とを組み付ける際のガイド部を構成するということができる。
【0031】
  また、本発明に係る打撃工具の他の形態として、可撓性部材は、オーバーラップ領域における第1本体要素と第2本体要素のいずれか一方と一体成型することができる。
  この形態に係る打撃工具によれば、可撓性部材を容易に構成することが可能となる。
  なお、第2本体要素のハンドル部に対し、エラストマーによる滑り止め部を設けることができる。このような場合、当該滑り止め部と可撓性部材とを連続した構成とすることができ、さらに、第2本体要素と、滑り止め部および可撓性部材とを一体成型することができる。当該構成にあっては、第2本体要素と、可撓性部材と、滑り止め部とを容易に形成することが可能となる。
 
【発明の効果】
【0032】
  本発明によれば、実際の打撃作業における防振を図るための一層合理的な構成を提供することとなった。
 
 
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
  図1〜
図16に基づき、第1実施形態〜第6実施形態に係る打撃工具の説明を行う。なお、
図1は第1実施形態、
図2〜
図8は第2実施形態、
図9〜
図11は第3実施形態、
図12〜
図14は第4実施形態、
図15は第5実施形態、
図16は第6実施形態をそれぞれ示す。第1実施形態〜第6実施形態の説明において、同一または同様の機能を奏する部品や機構にあっては、同一の名称および符号を使用し、その説明を省略することがある。
【0035】
(本発明に係る第1実施形態)
  本発明に係る第1実施形態を、
図1に基づき説明する。第1実施形態は、後述する第2実施形態〜第6実施形態の構成に関連する総括的な構成につき詳細に説明を行うものである。
【0036】
  打撃工具100は、先端工具119を装着する先端工具装着部159と、バッテリ161を装着するバッテリ装着部160とを有し、先端工具119を直線状に駆動させ、被加工材に対して打撃作業を遂行する。先端工具装着部159は先端工具119を着脱自在とするように構成される。先端工具装着部159の長軸方向は、打撃工具100の長軸方向を規定する。なお、長軸方向は、先端工具が駆動される先端工具駆動軸線と平行である。また、バッテリ装着部160はバッテリ161を着脱自在とするように構成される。
  説明の便宜上、長軸方向において、先端工具装着部159の先端側を前側と規定し、当該前側と対向する側を後側と規定する。また、長軸方向の交差方向において、先端工具装着部159が配置される側を上側と規定し、バッテリ装着部160が配置される側を下側と規定する。この方向に関する定義を
図1に充当すると、
図1における右側、左側、上側、下側が、打撃工具100における前側、後側、上側、下側にそれぞれ相当する。
【0037】
  打撃工具100は、本体部101と、先端工具装着部159と、長軸方向と交差する出力軸線111aを有するとともにバッテリ161からの電流により駆動される駆動モータ110と、駆動モータ110の出力により駆動される打撃要素140と、使用者に把持されるハンドル部109と、バッテリ装着部160と、を有する。出力軸線111aは、駆動モータ110のシャフト111の延在方向により規定される。また、バッテリ161をバッテリ装着部160に装着した状態における打撃工具100の重心位置100cは、駆動モータ110上となるように設計される。ハンドル部109には、駆動モータ110に供給されるバッテリ161の電流量を調節するために、使用者に操作されるトリガ109aが設けられる。
【0038】
  本体部101は、第1本体要素101aと、第2本体要素101bとを主体として構成される。第1本体要素101aには駆動モータ110と打撃要素140が設けられ、第2本体要素101bには、ハンドル部109とバッテリ装着部160が設けられる。駆動モータ110は、モータ保持部110aに包囲されており、当該モータ保持部110aが第1本体要素に配置される。このような構成により、第1本体要素101aと駆動モータ110とが一体化される。
【0039】
  第1本体要素101aと第2本体要素101bにおいては、打撃工具100の外部に露出する露出領域が設定される。さらに、第1本体要素101aと第2本体要素101bとは、互いに重なり合う積層領域を有する。当該積層領域においては、被覆する側が露出領域を構成し、被覆される側が被覆領域を構成する。積層領域において、第2本体要素101bに被覆される第1本体要素101aの領域は、第1被覆領域101a1を構成する。また、第1本体要素101aに被覆される第2本体要素101bの領域は、第2被覆領域101b1を構成する。なお、第2本体要素101bに被覆されない第1本体要素101aの領域は第1露出領域101a2を構成し、第1本体要素101aに被覆されない第2本体要素101bの領域は第2露出領域101b2を構成する。
【0040】
  駆動モータ110は、第1被覆領域101a1に配置される。すなわち、駆動モータ110は第2露出領域101b2に被覆される。
  また、第2本体要素101bは、先端側に設けられた開口を含む領域である先端開口領域101baを有する。先端開口領域101baが構成されていない第2本体要素101bの領域は主体領域101bbとされる。第1本体要素101の後側端縁101aaは、先端開口領域101baの先端側端縁を被覆する。すなわち、第2本体要素101bにおける先端工具保持部159側の端縁領域が、第2被覆領域101b1とされる。このような構成により、打撃作業において先端工具119からハンドル部109へ向かって飛散した塵芥が、第2本体要素101b2へと流入することを防止することが可能となる。この意味において、第1本体要素101aの後側端縁101aaを含む領域と、当該領域に被覆される第2被覆領域101b1とは、防塵機構430を構成すると言うことができる。また、防塵機構430として、第2本体要素101bの先端領域は、第1本体要素101aに挿入される挿入領域を構成するということができる。
  なお、先端開口領域101baと主体領域101bbとの境界には段差部101bcが形成される。
【0041】
  打撃工具100は、打撃要素140の駆動に伴う振動を抑制する防振機構180を有する。防振機構180は打撃要素140の駆動に伴う振動により、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが離間した状態と、第1本体要素と第2本体要素とが互いに近接した状態との間で、第1本体要素と第2本体要素とを相対的に往復移動させる。
  なお、打撃要素140の具体例としては、駆動モータ110により直線状に往復駆動されるピストンと、打撃子と、当該ピストンと打撃子との間に形成される空気室とによる構成が挙げられる。この場合、ピストンが先端工具側へ移動すると、空気室のエアが圧縮される。当該圧縮されたエアの膨張に伴い、打撃子が移動され先端工具に衝突することにより先端工具が移動される。なお、ピストンが先端工具とは反対側に移動されると、空気室のエアが膨張され、当該膨張されたエアの収縮に伴い打撃子が先端工具とは反対側へと移動される。このようなピストンの往復移動に伴い、先端工具は先端工具駆動軸線に沿って直線状に移動される。なお、打撃子と先端工具119との間に中間子を有することも可能である。このように構成された打撃要素140の駆動により、長軸方向に振動が発生する。なお、ピストンが往復移動をする方向は打撃軸を規定する。打撃軸は、ピストン上におけるいずれかの領域を通過すれば足りるものである。なお、先端工具装着部159に先端工具119を装着した場合において、先端工具119の中心を通過する打撃軸を、特に中心打撃軸線140aと称する。
【0042】
  本体部101は、打撃要素140に近接した第1領域100aと、第1領域100aよりも打撃要素140から離間した第2領域100bとを有する。打撃要素140と「近接する」および「離間する」とは、例えば長軸方向の交差方向における本体部101上の任意の二点を打撃要素140における所定の点とそれぞれ結んだ場合の、それぞれの直線距離により規定することが可能である。すなわち、当該交差方向において、打撃要素140の所定の点との距離が短い点を有する領域を第1領域100aとし、打撃要素140の所定の点との距離が長い点を有する領域を第2領域100bとすることができる。
【0043】
  第1本体要素101aと第2本体要素101bとが互いに離間した状態から近接した状態に移動される場合の長軸方向の距離において、第1領域100aは、第2領域100bよりも長い距離を移動する長距離移動領域200を構成する。このような構成により、打撃要素140からの振動の影響を強く受ける第1領域100aを長距離移動領域200とすることにより、効果的な防振を図ることが可能となる。また、第2領域100bは、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが互いに離間した状態から近接した状態に移動される場合の長軸方向の距離において、第1領域100aより短い距離を移動する短距離移動領域210を構成するということができる。すなわち、防振機構180が長距離移動領域200と短距離移動領域210の双方を備えることにより、複雑な方向性を有する振動を効果的に抑制することが可能となる。
【0044】
  ここで、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが「離間した状態」および「近接した状態」につき説明を行う。まず、長軸方向における第1本体要素101aの所定の点と第2本体要素101bの所定の点とを規定する。当該第1本体要素101aの所定の点と第2本体要素101bの所定の点とを結んだ距離を、第1位置規定距離とする。次に第1本体要素101aと第2本体要素101bとを相対的に移動させた状態において、上述の第1本体要素101aの所定の点と第2本体要素101bの所定の点とを結んだ距離を第2位置規定距離とする。そして、第1位置規定距離が、第2位置規定距離よりも長いものとする。この場合、第1規定距離を形成する第1本体要素101aと第2本体要素101bの位置関係は、「離間した状態」となる。そして、第2規定距離を形成する第1本体要素101aと第2本体要素101bの位置関係は「近接した状態」となる。
【0045】
  第1本体要素101aと第2本体要素101bとは、付勢部材181により連結される。付勢部材181が第1本体要素101aと第2本体要素101bとを付勢することにより、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが相対的に往復移動される。
  付勢部材181は、バネ弾性を有する部材により構成される。付勢部材181の具体例として、コイルスプリングを挙げることができる。付勢部材181としてコイルスプリングを使用した場合、当該コイルスプリングの一端を第1本体要素101aに固定し、他端を第2本体要素101bに固定することにより、当該コイルスプリングは、第1本体要素101aと第2本体要素101bを付勢することが可能となる。付勢部材181は、第1本体要素101aと第2本体要素101bとを離間する方向に付勢することが好ましい。これによって、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが近接する方向へ移動した場合に、第1本体要素101aと第2本体要素101bの外郭同士が衝突することが抑制される。
【0046】
  付勢部材181が第1本体要素101aと第2本体要素101bとを付勢する方向を打撃軸と重ねた場合、打撃機構140の駆動により生ずる振動を効果的に抑制することが可能となる。すなわちこのような構成によれば、打撃要素140の駆動に伴う打撃軸方向の振動を付勢部材181が受けやすくなるため、より効率的な第1本体要素101aと第2本体要素101bとの相対的な移動を促すことが可能となる。付勢部材181の付勢方向が打撃軸と重なるとは、典型的には中心打撃軸線140aと同軸に付勢部材181を配置した場合が挙げられる。なお、
図1に示すように、付勢部材181が中心打撃軸線140aと同軸に配置されていない場合であっても、付勢部材181の一部が打撃軸上に配置されていれば所定の効果を奏する。
  また、付勢部材181の配置形態にあっては、付勢部材181の長軸を打撃軸と平行とする構成や、付勢部材181の長軸を打撃軸と交差させる構成や、打撃軸と重なるように付勢部材181を湾曲させて配置した構成とすることができる。
【0047】
  長距離移動領域200と短距離移動領域210とは、例えば第1領域100aと第2領域100bとのそれぞれに付勢部材181を設けるとともに、第1領域100aの付勢部材181の付勢力を第2領域100bの付勢部材181の付勢力より弱く設定することにより構成することができる。
  また、長距離移動領域200と短距離移動領域210とは、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが回動軸線182周りに相対的に回動するように構成することができる。この場合、回動軸線182は、第1領域100aよりも第2領域100bに近接して設けられる。さらに、回動軸線182を、打撃軸よりもバッテリ装着部160にバッテリ161を装着した状態における打撃工具100の重心位置100cに近接して設けることができる。なお、回動軸線182が打撃軸よりも重心位置100cに近接している状態とは、例えば、重心位置100cを通過するとともに打撃軸と直交する仮想線と、当該仮想線と打撃軸との交点を規定した場合、回動軸線182から重心位置100cまでの距離が、回動軸線182から前述の交点までの距離よりも短いことを示す。
【0048】
  防振機構180は、第1本体要素101aと第2本体要素101bにおける離間方向の移動および近接方向の移動を規制する規制部190を構成する。規制部190が当該離間方向の移動を規制することにより、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが離脱することを防止できる。また、規制部190が当該近接方向の移動を規制することにより、第1本体要素101aの後側端縁101aaと第2本体要素101bの段差部101bcとが衝突することを防止できる。すなわち、規制部190により、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが衝突することにより生ずる、本体部101の傷の発生を抑止することが可能となる。この意味において規制部190は、第1露出領域101a2と第2露出領域101b2同士の衝突を防止するための衝突防止機構を構成するということができる。
  規制部190は、打撃軸よりも上側に配置することが好ましい。当該構成により、長距離領域200における第1本体要素101aと第2本体要素101bとの離間方向に係る移動距離の設定が容易となる。
【0049】
  上述の構成により、打撃要素140の駆動に伴う振動によって第1本体要素101aと第2本体要素101bとが相対的に往復移動することで、使用者の手に伝達される振動が抑制される。なお、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが相対的に往復移動されるとは、打撃要素140および駆動モータ110とを有するグループと、ハンドル部109とバッテリ装着部160とを有するグループとが相対的に往復移動するものであると言い換えることが可能となる。
【0050】
  なお、駆動モータ110を冷却するために、駆動モータ110にモータ吸気口303とモータ排気口304とを設けることが可能である。この際、本体部101に本体吸気口301および本体排気口302を設ける。本体吸気口301は、モータ排気口304よりもモータ吸気口303に隣接した第2被覆領域101b1の領域に設けられる。また、本体排気口302は、モータ吸気口303よりもモータ排気口304に近接した第2被覆領域101b1の領域に設けられる。
【0051】
  なお、本発明に係る打撃工具100においては、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが長距離移動領域200と短距離移動領域210を構成しつつ、相対的に移動されるものである。そのため、特に駆動モータ110の周辺領域には、駆動モータ110が第2本体要素101b内にて相対的に移動することを許容するための空間として、回動許容空間320が形成される。回動許容空間320の構成によっては、モータ排気口304から排気されたエアが本体排気口302から排出されずに、モータ吸気口303へと戻ってしまう(循環してしまう)現象が生ずる場合がある。このようなエアの循環現象が発生した場合には、駆動モータ110の効率的な冷却が図りにくくなる。本発明においては、このような事態を防止するためにモータ吸気口303とモータ排気口303との間にエア循環抑制機構300を構成することができる。
【0052】
  エア循環抑制機構300の具体的な例として、所定の方向に延在する壁状部材310を本体部101の内側に配置することができる。壁状部材310は、第1本体要素101aもしくは第2本体要素101bのいずれかに設けることができる。
図1においては、モータケース110a(第1本体要素101a)の一部にフランジを設けて壁状部材310を構成する例を示す。壁状部材310の先端部と、第2本体要素101bの内側領域との間には、回動許容空間320として所定の空隙が形成される。これによって、第1本体要素101aと第2本体要素101bとの相対的な移動によって、壁状部材310の先端部と第2露出領域101b2の内壁とが衝突することを防止することが可能となる。この意味において、壁状部材310と第2本体要素101bとの間における空隙は、衝突回避空隙と言うことができる。なお、第2本体要素に壁状部材310を設けた場合は、衝突回避空隙は壁状部材310の先端部と第1被覆領域101a1(モータケース110a)との間に形成される。
【0053】
  このような構成により、モータ排気口304から排出されたエアがモータ吸気口303へ移動しようとしても、当該エアの移動は壁状部材310により阻止される。よって、モータ排気口304からのエアは、本体排気口302から本体101の外部へ排出される。すなわち、壁状部材310により、モータ排気口304からモータ吸気口303へのエアの循環が抑止される。
  なお、
図1において、壁状部材310は単一の構成が示されているが、複数の壁状部材310を設けることも可能である。
【0054】
(本発明に係る第2実施形態)
  以下、本発明の第2実施形態につき、
図2〜
図8に基づき説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比して第1本体要素101aと第2本体要素101bとが相対的に回動する構成を有する。
  本発明の第2実施形態は、打撃工具の一例としてバッテリ式のハンマドリル100を用いて説明する。
図2は、ハンマドリル100の打撃動作および回転動作に係る機構を説明するための断面図である。
図2に示すように、ハンマドリル100は、使用者に把持されるハンドグリップ109を有する手持ち式の打撃工具であり、ハンマビット119を当該ハンマビット119の長軸方向に駆動させて被加工材に対してハツリ作業などの打撃作業を行う打撃動作や、ハンマビット119を長軸方向周りに回転駆動させて被加工材に対して穴あけ作業を行う回転動作を行うために構成される。ハンマドリル100がハンマビット100を駆動させる長軸方向は、ハンマドリル100の長軸方向を規定する。この長軸方向は、ハンマドリル100にハンマビット119を取付けた場合におけるハンマビット119の長軸方向と一致する。なお、ハンドグリップ109の前側には使用者により操作されるトリガ109aが配置される。このハンマドリル100が本発明に係る「打撃工具」の一例であり、ハンマビット119が本発明に係る「先端工具」の一例であり、ハンドグリップ109が本発明に係る「ハンドル部」の一例である。
【0055】
(本体部の構成)
  
図2に示すように、ハンマドリル100は、概括的に見てハンマドリル100の外郭を形成する本体部101を主体として構成される。本体部101の先端領域には、ハンマビット119が筒状のツールホルダ159を介して着脱自在に取り付けられる。ハンマビット119は、ツールホルダ159のビット挿入孔159a内に挿入され、その長軸方向への相対的な往復動が可能に、且つその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。このツールホルダ159が本発明に係る「先端工具装着部」の一例である。
【0056】
  図2に示すように、本体部101は、第1本体要素101aと第2本体要素101bとにより構成される。この第1本体要素101aが本発明に係る「第1本体要素」の一例であり、第2本体要素101bが本発明に係る「第2本体要素」の一例である。
  第1本体要素101aは、電動モータ110を収容するモータハウジング103と、運動変換機構120、打撃要素140及び回転動力伝達機構150を収容するギアハウジング105と、モータハウジング103とギアハウジング105の双方に固定されるインナーハウジング104とを主体として構成される。なお、電動モータ110はモータケース110aに収容され、モータハウジング103に固定される。モータハウジング104とインナーハウジング104はネジなどの固定部材104bにより固定される。これにより、電動モータ110と第1本体要素101aとが一体化される。なお、モータケース110aは、上側部材と下側部材とにより構成されている。当該上側部材と下側部材とにより電動モータ110を包囲した後、上側部材と下側部材はネジなどの固定手段110bにより固定される。この電動モータ110が本発明に係る「駆動モータ」の一例であり、モータケース110aが本発明に係る「モータ保持部」の一例である。また、ツールホルダ159は第1本体要素101aに取り付けられる。
  第2本体要素101bは、ハンドグリップ109と、電動モータ110に電流を供給するためのバッテリ161を装着するバッテリ装着部160とを主体として構成される。バッテリ装着部160は、長軸方向に延びる溝部とバッテリ161の端子と電気的に結合するための端子が設けられる。バッテリ161には、バッテリ装着部160の溝部に係合するためのガイドレールと、バッテリ装着部160の端子と接続するバッテリ側端子とが設けられる。このバッテリ161が本発明に係る「バッテリ」の一例であり、バッテリ装着部160が本発明に係る「バッテリ装着部」の一例である。
【0057】
  なお、第2実施形態では、
図1にて説明した第1実施形態と同様に、長軸方向において、ツールホルダ159の先端側を前側と規定し、当該前側と対向するハンドグリップ109側を後側と規定する。また、長軸方向の交差方向において、ツールホルダ159が配置される側を上側と規定し、バッテリ装着部160が配置される側を下側と規定する。この方向に関する定義を
図2、
図3および
図7に充当すると、
図2、
図3および
図7における右側、左側、上側、下側が、ハンマドリル100における前側、後側、上側、下側にそれぞれ相当する。また、
図4は
図3におけるI−I線断面図を示すが、
図4における左側、右側がハンマドリル100における左側、右側にそれぞれ相当する。この意味において、
図2、
図3および
図7は、ハンマドリル100の右側面断面図を示すものと言うことができる。
【0058】
  図2に示すように、第1本体要素101aは、ハンマビット119の長軸方向に関して、前方にギアハウジング105が、後方にインナーハウジング104が、下方にモータハウジング103がそれぞれ配置される。このような構成により、電動モータ110は第1被覆領域101a1に配置される。電動モータ110は、当該電動モータ110のシャフト111における出力軸線111aがハンマドリル100の長軸方向に対して交差している。この第1露出領域101a2が本発明に係る「露出領域」の一例であり、第1被覆領域101a1が本発明に係る「第1被覆領域」の一例であり、出力軸線111aが本発明に係る「出力軸線」の一例である。
  第2本体要素101bは、後方にハンドグリップ109が配置された構成とされる。なお、第2本体要素101bの前側には先端開口領域101baが構成されており、先端開口領域101baと主体領域101bbとの境界には段差部101bcが構成される。先端開口領域101baの前方領域は第2被覆領域101b1とされる。この第2被覆領域101b1が本発明に係る「第2被覆領域」の一例である。ハンドグリップ109は第2露出領域101b2における主体領域101bbに構成される。
  なお第2本体要素101bは、ハンマビット119の長軸方向に沿って2分割された左右の半割体を、ネジなどの固定部材101cにより互いに接合することで構成される。
【0059】
(打撃作業および回転作業に係る構成)
  
図2に示すように、電動モータ110の回転出力は、運動変換機構120によって直線動作に適宜変換された上で打撃要素140に伝達され、当該打撃要素140を介してハンマビット119の長軸方向(
図1の左右方向)への衝撃力を発生する。この打撃要素140が、本発明に係る「打撃要素」の一例である。また、電動モータ110の回転出力は、回転動力伝達機構150によって適宜減速された上でハンマビット119に伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。電動モータ110は、ハンドグリップ109に配置されたトリガ109aを引くことによって操作されるスイッチにより通電駆動される。
【0060】
  図2に示すように、運動変換機構120は、電動モータ110のシャフト111の上方に配置されており、シャフト111の回転出力をハンマドリル100の前後方向への直線運動に変換する機構である。運動変換機構120は、シャフト111のピニオンギア111bと噛み合い係合するベベルギア122によって回転駆動される中間軸121と、中間軸121に取り付けられた回転体123と、中間軸121(回転体123)の回転に伴いハンマドリル100の前後方向に揺動される揺動部材125と、揺動部材125の揺動動作に伴ってハンマドリル100の前後方向に往復移動する駆動体としての筒状のピストン127と、ピストン127を収容するシリンダ129を主体として構成されている。シリンダ129は、ツールホルダ159の後方に配置されるとともに当該ツールホルダ159と一体化されている。なお、揺動部材125はベアリング125aを介して回転体123に取り付けられる。
【0061】
  図2に示すように、打撃要素140は、運動変換機構120の上方であって、ツールホルダ159の後方に配置されており、運動変換機構120によって電動モータ110の回転が変換されたハンマドリル100の前後方向への直線動作を、ハンマビット119に打撃力として伝達する機構である。打撃要素140は、筒状のピストン127内に摺動可能に配置された打撃子としてのストライカ143と、ストライカ143の前方に配置され、ストライカ143が衝突する中間子としてのインパクトボルト145を主体として構成されている。なお、ストライカ143の後方のピストン127の空間は、ピストン127の摺動動作を空気の圧力変動を介してストライカ143に伝達する空気室127aを形成している。
【0062】
  図2に示すように、回転動力伝達機構150は、運動変換機構120の前側に配置されており、運動変換機構120の中間軸121から伝達された電動モータ110の回転出力をツールホルダ159に伝達する機構である。回転動力伝達機構150は、中間軸121と共に回転する第1ギア151と、第1ギア151と噛み合い係合されるとともに、ツールホルダ159(シリンダ129)に取り付けられた第2ギア153等の複数のギアからなるギア減速機構を主体として構成されている。
【0063】
  図3は後述する防振機構180を説明する断面図であり、
図4は
図3に示すI−I線断面図である。具体的には、
図4は
図3のI−I線断面においてハンドグリップ109側を臨んだ図である。なお、便宜上、
図4においては部品相互の関係を明確とするため、ピストン127の断面を記載している。
  
図4に示すように、第1本体要素101aにはハンマドリル100の駆動モードを切り替える切替機構170が構成されている。切替機構170は、使用者に操作される操作ダイヤル171を有し、当該操作ダイヤル171の切替動作により、ハンマビット119が打撃動作を行うハンマモードと、ハンマビット119が回転動作を行うドリルモードと、ハンマビット119が直線動作と回転動作の双方を行うハンマドリルモードが適宜選択される。なお、切替機構170の構成および切替機構170を切替えることに伴う運動変換機構120および回転動力伝達機構150の動作については、便宜上説明を省略する。
【0064】
(防振機構の構成)
  
図3、
図5〜
図8に基づき、防振機構180の説明を行う。
図3に示す通り、防振機構180は、第1本体要素101aと第2本体要素101bとを離間する方向に付勢する付勢部材181と、第1本体要素101aと第2本体要素101bとを相対的に回動するための回動軸線182と、第1本体要素101aと第2本体要素101bが離間する方向の移動および近接する方向の移動を規制する規制部190とを有する。この防振機構180が本発明に係る「防振機構」の一例であり、付勢部材181が本発明に係る「付勢部材」の一例であり、回動軸線182が本発明に係る「回動軸線」の一例であり、規制部190が本発明に係る「規制部」の一例である。
【0065】
  図3に示すように、付勢部材181はコイルスプリングにより構成される。付勢部材181は、その一端側が第1本体要素101aに固定され、他端側が第2本体要素101bに固定される。具体的には、付勢部材181の一端側はギアハウジング105の後方に位置するインナーハウジング104の領域に設けられた付勢部材支持部104aに固定され、他端側は第2本体要素101bに取り付けられた支持プレート101b3に固定される。この際、付勢部材181の中心軸は、中心打撃軸線140aと同軸とされる。
【0066】
  図3に示すように、回転軸182は、中心打撃軸線140aよりもハンマドリル100の重心位置100cに近接して設けられている。なお、重心位置100cは、バッテリ装着部160にバッテリ161を装着した状態におけるものである。この重心位置100cが、本発明に係る「重心位置」の一例である。
  回動軸線182の詳細な構成を、
図5に基づき説明する。
図5は、
図3におけるII−II線断面図である。
図5に示すように、回動軸線182はハンマドリル100の長軸方向と直交する方向である左右方向に延在する。回動軸線182は、モータケース110aの外側に突出するとともに凹部を有する第1軸支部182aと、第2本体要素101bの内側に突出するとともに凹部を有する第2軸支部182bと、第1軸支部182aの凹部と第2軸支部182bの凹部の双方に嵌合された軸部材182cとにより構成される。すなわち、回動軸線182は、軸部材182cの長軸方向を通過する直線である。なお、第1軸支部182aにおける突出部分の先端部と第2軸支部182bにおける突出部分の先端部とは当接されている。第1軸支部182aがモータケース110aに設けられていることから、軸部材182cはモータケース110aに形成されているということが可能である。この軸部材182cが本発明に係る「軸部材」の一例である。
【0067】
  図3に示される規制部190は、第1本体要素101aと第2本体要素101bにおける近接方向の移動および離間方向の移動をそれぞれ規制する。規制部190は中心打撃軸線140aよりも上側に形成される。すなわち、規制部190は、回動軸線182から離間した位置に配置される。当該構成により、規制部190の長軸方向の長さを増加させることが可能となる。よって、規制部190自体の構造的な精度を厳格化することなく、第1本体要素101aと第2本体要素101bとにおける相対的な移動距離を確保することができる。
【0068】
  規制部190の具体的な構成を、
図6に基づき説明する。
図6は、
図3におけるIII−III線断面図である。規制部190は、互いに重なる第1本体要素101aと第2本体要素101bの所定領域に形成される。規制部190が構成される所定領域は、第1本体要素101a側が第1規制領域191とされ、第2本体要素101b側が第2規制領域192とされる。第2実施形態においては、第1規制領域191は第1被覆領域101a1の外側に形成され、第2規制領域192は第2露出領域101b2の内側に形成される。
【0069】
  図6に示すように、第1規制領域191は、第2本体要素101b内において長軸方向に延出する第1本体要素101a(第1被覆領域101a1)に形成され、前側壁部191aと、後側壁部191cと、当該前側壁部191aと後側壁部191cとの間に設けられるとともに長軸方向に延在する延在部191bとを有する。前側壁部191aと、延在部191bと、後側壁部191cは、ハンマドリル100の外側方向に向けて形成される。
  第2規制領域192は、第1規制領域191を被覆する第2露出領域101b2に形成され、前側リブ192aと、後側リブ192cと、当該前側リブ192aと後側リブ192cとの間に形成される中間リブ192bとを有する。前側リブ192aと、中間リブ192bと、後側リブ192cは、ハンマドリル100の内側方向に向けて形成される。
  前側リブ192aの先端と、後側リブ192cの先端は、延在部191bに当接するよう構成される。このような構成により、後述する通り、前側リブ192aと後側リブ192cと延在部191bとは、第1本体要素101aと第2本体要素101bとの相対移動をガイドする摺動ガイド部193を構成する。この摺動ガイド部193が本発明に係る「ガイド部」の一例である。なお、中間リブ192bは、第2規制領域192の強度を確保する機能を有する。すなわち、第2規制領域192は、強度保持要素を有するということができる。
【0070】
(ハンマドリルの動作について)
  次に、
図3、
図6〜
図8に基づき、第2実施形態に係るハンマドリル100の動作につき説明を行う。
図3および
図6は、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが付勢部材181により付勢され、回動軸線182を中心として互いに離間方向に回動されている状態を示す。
図7は、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが付勢部材181の付勢力に抗して、回動軸線182を中心として互いに近接方向に回動されている状態を示す。なお
図8は、
図7に示すIV−IV線断面図である。
  防振機構180は、ハンマモードもしくはハンマドリルモードにおける打撃要素140の駆動に伴う振動により、第1本体要素101aと第2本体要素101bとを、
図3に示す状態と
図7に示す状態とにおいて、回動軸線182を中心として相対的に回動する。
【0071】
  ハンマドリル100は、打撃要素140に近接した第1領域100aと、第1領域100aよりも打撃要素140から離間した第2領域100bとを有する。この第1領域100aが本発明に係る「第1領域」の一例であり、第2領域100bが本発明に係る「第2領域」の一例である。第1本体要素101aと第2本体要素101bとが回動軸線182を中心として相対的に回動する場合、第1本体要素101と第2本体要素101とが移動する長軸方向の距離においては、第1領域100aの方が、第2領域100bよりも長い。すなわち、第1領域100aは長距離移動領域200を構成し、第2領域100bは短距離移動領域210を構成する。この長距離移動領域200が本発明に係る「長距離移動領域」の一例である。
  ハンマドリル100は、打撃要素140に近接した第1領域100aが長距離移動距離200となるように構成されている。これにより、打撃要素140の駆動に伴う振動を、より効果的に抑制することが可能となる。特に、付勢部材180の中心軸が中心打撃軸線140aと一致していることから、付勢部材180が打撃要素140の振動を効率的に受けることが可能となる。
【0072】
  なお、規制機構190にあっては、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが互いに離間する方向に移動した場合は、
図6に示すように、後側リブ192cが後側壁部191cに当接する。これにより、第1本体要素101aと第2本体要素101bとがさらに離間した方向に移動することを規制することができる。
  また、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが互いに近接する方向に移動した場合は、
図8に示すように、前側リブ192aが前側壁部191aに当接する。これにより、第1本体要素101aと第2本体要素101bとがさらに近接した方向に移動することを規制することができる。特に、
図2に示される第1本体要素101aの後側端縁101aaと、第2本体要素101bの段差部101bcとの接触を防止することが可能となる。
【0073】
  また、規制部190において、延在部191bと、前側リブ192aおよび後側リブ192cとが接触することにより摺動ガイド部193を構成している。当該摺動ガイド部193により、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが回動軸線182を中心に回動する場合において、長軸方向に交差する左右方向に対する第1本体要素101aと第2本体要素101bとの相対的な移動を防止することが可能となる。
  すなわち、規制部190は、第1本体要素101aと第2本体要素101bとにおける回動方向の移動距離と、回動軸線182の延在方向の移動距離とを規制する構成であるということが可能である。
【0074】
  また、前側リブ192aと後側リブ192cとが延在部191bに対し移動する領域において、延在部191bは、前側リブ192aと後側リブ192cとの移動を阻害しないように平滑とされている。この意味において、延在部191bは平滑領域を有しており、前側リブ192aと後側リブ192cとは当該平滑領域に対し摺動可能に構成されているということができる。また、平滑領域とは、前側リブ192aと後側リブ192cとの摺動を阻害する障害物が存在しないことを意味するものであり、この意味において、平滑領域を障害物非形成領域ということができる。
  以上の動作に基づき、ハンマドリル100は、打撃要素140の駆動に伴う振動を効果的に抑制することが可能となる。
【0075】
(本発明に係る第3実施形態)
  以下、本発明の第3実施形態につき、
図9〜
図11に基づき説明する。
  第3実施形態に係るハンマドリル100は、第2実施形態に係るハンマドリル100と比して、エア循環抑制機構300を有する。このエア循環抑制機構300が本発明に係る「エア循環抑制機構」の一例である。
【0076】
  図9に示すように、第3実施形態に係るハンマドリル100の第2本体要素101bは、外気を取り込むための本体吸気口301と、本体部101の内部のエアを排出するための本体排気口302とを有する。本体部101の内部において、本体吸気口301と本体排気口302との間における第1被覆領域101a1には駆動モータ110が配置される。これによって、本体吸気口301から取り込まれたエアが本体排気口302に排出される間に駆動モータ110を経由するため、駆動モータ110の冷却を図ることが可能となる。
【0077】
  なお、
図10に示すように、駆動モータ110の上面にはモータ吸気口303が設けられる。モータ吸気口303に対応するモータケース110aの領域には、モータケース吸気口306が設けられる。また、駆動モータ110の内部には、シャフト111に取り付けられるとともにシャフト111により回転駆動されるファン305が設けられる。ファン305に対応する駆動モータ110の外郭領域にはモータ排気口304が設けられ、モータ排気口304に対応するモータケース110aの領域には、モータケース排気口307が設けられる。このモータ吸気口303が本発明に係る「吸気口」の一例であり、モータ排気口304が本発明に係る「排気口」の一例である。
  これによって、本体吸気口301から取り込まれたエアが、ファン305の回転によってモータケース吸気口306とモータ吸気口303とを通過して駆動モータ110内に吸入される。そして、駆動モータ110内のエアは、ファン305の回転によってモータ排気口304とモータケース排気口307とを通過して本体排気口302へと排出される。このように、駆動モータ110にエアを通過させることにより、駆動モータ110の冷却効果を高めることが可能となる。
【0078】
  さらに、
図11に示すように、第3実施形態に係るハンマドリル100においては、エア循環抑制機構300として壁状部材310が設けられる。この壁状部材310が本発明に係る「壁状部材」の一例である。壁状部材310は、駆動モータ110を被覆する第2露出領域101b2の内壁から内側方向へ突出されるリブにより構成される。壁状部材310は駆動モータ110を包囲するとともに、壁状部材310の先端(内周縁)と駆動モータ110との間には
図1に基づき説明した衝突回避空隙として所定の空隙が構成されている。当該空隙により、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが相対的な移動を行った場合であっても、壁状部材310と駆動モータ110とは衝突をすることが無い。
【0079】
  図11に示すように、壁状部材310は、第1壁状部材311と第2壁状部材312とにより構成される。第1壁状部材311の延長面311aは、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが離間した状態におけるモータ吸気口303(モータケース吸気口306)上に置かれる。また、第2壁状部材312の延長面312a上には、回動軸線182が位置されている。ここで、壁状部材310の延長面について説明を行う。壁状部材310は、互いに対向する表面と、当該両表面の間に位置する中間部分とを有する。壁状部材310の延長面とは、壁状部材310を延長したと仮定した場合において、壁状部材310の延長方向と平行であるとともに、壁状部材310の両表面もしくは中間部分のいずれかを通過する面であると定義される。
  また、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが回動していない状態における駆動モータ110の出力軸線111aと、第2壁状部材312の延長面312aは直交するよう構成されている。すなわち、第2壁状部材312の延長面312aは、回動軸線182に位置するとともに駆動モータ110の出力軸線111aと直交している。
  なお他の構成として、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが回動している状態において、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが最も近接した場合における駆動モータ110の出力軸線111aと、第2壁状部材312の延長面312aとを直交させる構成とすることもできる。
【0080】
  なお、第3実施形態に係るハンマドリル100においては、回動軸線182上に位置する領域には第2壁状部材312が構成されていない。すなわち、回動軸線182上に位置する領域においては、回動許容空間320を設ける必要が無いことから、第2本体要素101bと駆動モータ110とが隣接して配置されている。この意味において、回動軸線182上に位置する第2本体要素101bと駆動モータ110におけるそれぞれの領域は、エア循環抑制機構300を構成すると言える。
  つまり、第2壁状部材312は、回動軸線182と駆動モータ110の出力軸線111aの双方に直交するとともに回動軸線182と重なる領域を中心として設けられている。より具体的には、第2壁状部材312は、一方の第2軸支部182b(
図5参照)の後側に隣接した領域から他方の第2軸支部182bの後側に隣接した領域に亘り設けられる部分と、一方の第2軸支部182bの前側に隣接した領域から他方の第2軸支部182bの前側に隣接した領域に亘り設けられる部分とにより構成されている。当該構成により、駆動モータ110を被覆する第2本体要素101bの小型化と、駆動モータ110の冷却という異なる機能を両立することが可能となる。
  なお、第1壁状部材311は、駆動モータ110の周囲を包囲するように構成されている。第1壁状部材311と駆動モータ110の間には、所定の空隙(衝突回避空隙)が設けられている。
【0081】
  このような構成により、第3実施形態に係るハンマドリル100は、第1実施形態および第2実施形態に係るハンマドリル100と同様に、第1本体要素101aと第2本体要素101bとが回動軸線182を中心として相対的に回動される。これにより、使用者の手に伝わる振動を抑制することができる。
  さらに、壁状部材310がモータ排気口304からモータ吸気口303へ移動しようとするエアの流れを遮断するため、モータ排気口304から排出されたエアが本体排気口302から効率よく排出される。よって、第3実施形態に係るハンマドリル100においては、駆動モータ110を冷却することができる。
【0082】
  (本発明に係る第4実施形態)
  以下、本発明の第4実施形態につき、
図12〜
図14に基づき説明する。
  
図12は、第4実施形態のハンマドリル100の外観を示す図である。上述した通り、第1本体要素101aと第2本体要素101bは互いに重なり合う積層領域を形成し、当該積層領域においては、被覆する側が露出領域(第1露出領域101a2、第2露出領域101b2)を構成し、被覆される側が被覆領域(第1被覆領域101a1、第2被覆領域101b1)を構成する。この意味において、当該積層領域は、露出領域と被覆領域がオーバーラップ(重複)する、オーバーラップ領域400を構成するということができる。第4実施形態のハンマドリル100は、第3実施形態のハンマドリル100の構成と比してオーバーラップ領域400の構成が異なる。このオーバーラップ領域400が本発明に係る「オーバーラップ領域」の一例である。
【0083】
  図13はオーバーラップ領域400を説明するための図であり、
図12のV−V線における断面の一部を示したものである。第2本体要素101bは、可撓性部材411を有する。当該可撓性部材411は、第1露出領域101a2に被覆されることにより、第2被覆領域101b1を構成する。この可撓性部材411が本発明に係る「可撓性部材」の一例である。可撓性部材411はエラストマーにより構成されており、第2本体要素101bと一体成型されている。
  より具体的には、第2本体要素101bは、前側の先端領域に前側突設部410aと、後側突設部410bと、を備える可撓性部材配置領域410を有する。可撓性部材411は、当該前側突設部410aと後側突設部410bとの間に配置される凸部411aと、前側突設部410aが配置される凹部411bと、当該凹部411bから前側に延在する延在部411cと、延在部411cの先端に設けられるとともに第1露出領域ba2の機構側面に接触するよう構成された突出部411dとを有する。
【0084】
  ハンマドリル100の駆動操作に伴って防振機構180が第1本体要素101aと第2本体要素101bとを相対的に往復移動させるが、この状態にあっては、可撓性部材411の突出部411dが第1露出領域101a2の機構側面に摺接する。すなわち、第1露出領域101a2の機構側面は、被摺動領域420を構成する。この被摺動領域420が本発明に係る「被摺動領域」の一例である。
  可撓性部材411と被摺動領域420は、第1露出領域101a2と第2被覆領域101b1との間に形成される空隙を閉塞することにより防塵機構430を構成する。当該防塵機構430により、ハンマドリル100の加工作業により発生した粉塵が、第1露出領域101a2と第2被覆領域101b1の間から侵入することを抑制することができる。よって、第4実施形態のハンマドリル100においては、本体部101に粉塵が侵入することによる故障を低減化させ、さらにはハンマドリル100の長寿命化を図ることが可能となる。
【0085】
  また、可撓性部材411によって、第1本体要素101aと第2本体要素101bとの組み付けの容易化を図ることができる。
  
図14に示す通り、第2本体要素101bは、右側第2本体要素101bdと左側第2本体要素101beとを有する二分割構造とされている。また、第1本体要素101aは、開口101abを備える筒状部101acを有する。当該筒状部101acには、打撃要素140、回転動力伝達機構150などが配置される。
  当該構成を有する第1本体要素101aと第2本体要素101bの組み付けに際しては、
図14に示す通り、まず、機構がアッセンブリされた状態の第1本体要素101aと左側第2本体要素101beとを組み付ける。この際、左側第2本体要素101beの可撓性部材411が第1本体要素101aの開口101abを通じて筒状部101acに挿入される。これによって、左側第2本体要素101beの可撓性部材411は、第2被覆領域101b1を構成する。この意味において、可撓性部材411は、組み付けの際の挿入領域101bfを構成するということができる。また、第1本体要素101aと左側第2本体要素101beとを組み付けた後、当該第1本体要素101aと左側第2本体要素101beに対し、さらに所定の機構を配置する。
【0086】
  そして、次に、第1本体要素101aおよび左側第2本体要素101beに対し、右側第2本体要素101bdを組み付ける。まずは、右側第2本体要素101bdの可撓性部材411(挿入領域101bf)を第1本体要素101aの開口101abを通じて筒状部101acに挿入する。この際、可撓性部材411は、開口101abの開口縁部(後側端縁101aa)に当接し、変形することができる。これによって、可撓性部材411を筒状部101acへ挿入することが可能となる。この際、可撓性部材411の先端部を筒状部101acに挿入するとともに、可撓性部材411を湾曲させつつさらに筒状部101ac内に進行させることができるが、当該状態にあっては、可撓性部材411が、右側第2本体要素101bdを第1本体要素101aに挿入する際のガイド機能を果たすため、容易に当該組み付け作業を遂行することが可能となる。
  上述した通り、第4実施形態のハンマドリル100は、第3実施形態のハンマドリル100が奏する機能に加えて可撓性部材411による防塵機能や、組み付け容易機能を有するものである。
【0087】
  (本発明に係る第5実施形態)
  以下、本発明の第5実施形態につき、
図15に基づき説明する。
  
図15は、第5実施形態のハンマドリル100のオーバーラップ領域400を示す説明図である。
図15に示す通り、第5実施形態のハンマドリル100においては、可撓性部材411が第1本体要素101aに設けられている。すなわち、第1本体要素101aには前側突設部410aと後側突設部410bとを有する可撓性部材配置領域410が構成される。また、第2本体要素101bにおける第2被覆領域101b1の外側(機構が配置される側とは反対側)には、可撓性部材411の突出部411dが摺動される被摺動領域420が構成される。
  当該構成によって、第5実施形態のハンマドリル100においても、第4実施形態のハンマドリル100と同様に、可撓性部材411による防塵機能や、組み付け容易機能を有するものである。
【0088】
  (本発明に係る第6実施形態)
  以下、本発明の第6実施形態につき、
図16に基づき説明する。
  
図16は、第6実施形態のハンマドリル100の外観を示す説明図である。第6実施形態のハンマドリル100は、第4実施形態のハンマドリル100に対し、可撓性部材411に対する工夫をさらに加えたものである。
  
図16に示されるハンマドリル100は、第2本体要素101bにバンパー101dが設けられている。使用者は、ハンマドリル100を机や床に載置することがあるが、当該載置場所の素材や形状により、第2本体要素101bが傷ついてしまう場合がある。第6実施形態のハンマドリル100においては、第2本体要素101の外装にバンパー101dが形成されているため、ハンマドリル101を載置場所に載置した際の傷の発生を抑制することができる。
  バンパー101dは、エラストマーにより形成される。第6実施形態のハンマドリル100においては、バンパー101dと可撓性部材411とが連続して形成されている。よって、第2本体要素101bと、可撓性部材411およびバンパー101dを効率的に一体成型することができる。
【0089】
  当該構成によって、第6実施形態のハンマドリル100においても、第4実施形態のハンマドリル100と同様に、可撓性部材411による防塵機能や、組み付け容易機能を有する。さらに、バンパー101dが形成されていることから、第2本体要素101bに傷が発生することを抑制することができる。また、バンパー101d、可撓性部材411および第2本体要素101bを一体成型することができるため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0090】
  なお、本実施形態に係るハンマドリル100の一例として、ハンマドリルの場合で説明したが、ハンマビット119に長軸方向の打撃動作のみを行なわせるハンマに適用してもよいし、あるいはブレードに往復直線運動を行わせて被加工材の切断作業を行うレシプロソーやジグソー等の切断作業工具に適用してもよい。
  また、本体部101に配置される、エラストマーによる構成としてバンパー101dを説明したが、エラストマーによる構成はこれに限らず、例えばハンドグリップ109に形成される滑り止めなどを挙げることができる。当該エラストマーによる構成は、本体部に対して、可撓性部材411とともに一体成型を行うことが可能である。この場合、当該エラストマーによる構成と可撓性部材411とによる構成とを連続させた場合にあっては、さらに効率的な一体成型を行うことができるため、製造コストの向上を抑制することが可能となる。
【0091】
  以上の発明の趣旨に鑑み、本発明に係るハンマドリルは、下記の態様が構成可能である。なお、各態様は、単独で、あるいは互いに組み合わされて用いられるだけでなく、請求項に記載された発明と組み合わされて用いられる。
(態様1)
  前記第1本体要素と前記第2本体要素とが互いに離間した状態から近接した状態に移動される場合の前記長軸方向の距離において、前記第2領域は、前記第1領域よりも短い距離を移動する短距離移動領域を構成する。
(態様2)
  前記打撃工具における前記長軸方向の交差方向おいて、前記先端工具装着部が配置される側を上側と規定し、前記バッテリ装着部が配置される側を下側と規定した場合において、前記規制部は、前記打撃軸よりも上側に配置される。
(態様3)
  前記壁状部材の先端部と前記本体部の内壁との間には空隙部が構成されている。
(態様4)
  前記可撓性部材と前記被摺動領域は、前記オーバーラップ領域からの粉塵の侵入を抑制する防塵機構を構成する。
(態様5)
  前記可撓性部材は、前記第1本体要素に対して前記第2本体要素を挿入する場合におけるガイド部を構成する。
【0092】
(実施形態の各構成要素と本発明の構成要素との対応関係)
  本実施形態における各構成要素と、本発明における構成要素との発明特定事項との関係は、以下のとおりである。もちろん、本実施形態における各構成要素は、対応する本発明の特定事項に関する一つの実施構成例に過ぎず、本発明の各構成要素はこれに限定されるものではない。
  ハンマドリル100は本発明に係る「打撃工具」の一例である。ハンマビット119は本発明に係る「先端工具」の一例である。ハンドグリップ109は本発明に係る「ハンドル部」の一例である。ツールホルダ159は本発明に係る「先端工具装着部」の一例である。第1本体要素101aは本発明に係る「第1本体要素」の一例である。第2本体要素101bは本発明に係る「第2本体要素」の一例である。電動モータ110は本発明に係る「駆動モータ」の一例である。モータケース110aは本発明に係る「モータ保持部」の一例である。バッテリ161は本発明に係る「バッテリ」の一例である。バッテリ装着部160は本発明に係る「バッテリ装着部」の一例である。第1露出領域101a2は本発明に係る「露出領域」の一例である。第1被覆領域101a1は本発明に係る「第1被覆領域」の一例である。出力軸線111aは本発明に係る「出力軸線」の一例である。第2被覆領域101b1は本発明に係る「第2被覆領域」の一例である。打撃要素140は、本発明に係る「打撃要素」の一例である。防振機構180は本発明に係る「防振機構」の一例である。付勢部材181は本発明に係る「付勢部材」の一例である。回動軸線182は本発明に係る「回動軸線」の一例である。規制部190は本発明に係る「規制部」の一例である。重心位置100cは、本発明に係る「重心位置」の一例である。軸部材182cは本発明に係る「軸部材」の一例である。摺動ガイド部193は本発明に係る「ガイド部」の一例である。第1領域100aは本発明に係る「第1領域」の一例である。第2領域100bは本発明に係る「第2領域」の一例である。長距離移動領域200は本発明に係る「長距離移動領域」の一例である。エア循環抑制機構300は本発明に係る「エア循環抑制機構」の一例である。モータ吸気口303は本発明に係る「吸気口」の一例である。モータ排気口304は本発明に係る「排気口」の一例である。壁状部材310は本発明に係る「壁状部材」の一例である。オーバーラップ領域400は本発明に係る「オーバーラップ領域」の一例である。可撓性部材411は本発明に係る「可撓性部材」の一例である。被摺動領域420は本発明に係る「被摺動領域」の一例である。