(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マーカー照射部は、前記像の略中央に対応する点を前記マーカー光として前記被観察体に照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用観察装置。
前記マーカー照射部は、前記像の外郭に対応する枠を前記マーカー光として前記被観察体に照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用観察装置。
被観察体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像する位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射するマーカー照射部と、を備えた画像取得装置を制御する制御装置であって、
前記撮像部が撮像した画像に医療器具が写っているか否かを検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に応じて、前記マーカー照射部の動作を制御する照射制御部と、
を備えたことを特徴とする制御装置。
被観察体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像する位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射するマーカー照射部と、を備えた画像取得装置を制御する制御装置の作動方法であって、
検知部が、前記撮像部が撮像した画像に医療器具が写っているか否かを検知する検知ステップと、
照射制御部が、前記検知部の検知結果に応じて被観察体に対するマーカー光の照射を制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする制御装置の作動方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、患部等の被観察体を拡大観察するための通常の手術用顕微鏡における拡大観察の視野領域を確保するズーム倍率の可変範囲よりも広い範囲、すなわち医療器具を導入しやすい広角の視野範囲までズーム倍率を変更する必要がある。ここで、広角側のズーム倍率の可変範囲が小さく広角側の視野範囲が狭いと、医療器具を導入するための視野領域が狭くなり、医療器具の導入を補助し難い。また、広角側のズーム倍率の可変範囲が大きく広角側の視野範囲が広いと、医療器具の導入がしやすい反面、ズーム光学系の構成やズーム光学系を駆動するための構成を複雑にせざるを得ない。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の技術では、ズーム倍率を変更する際に倍率変更の操作と医療器具の動きとの間にタイムラグが生じてしまい、医療器具の位置を正確に把握することができないおそれがある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成によって医療器具が医療用観察装置の視野領域から外れた場合であってもユーザが容易に視野領域内に医療器具を導入することができる医療用観察装置、制御装置、制御装置の作動方法および制御装置の作動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る医療用観察装置は、被観察体の像を取得する像取得部と、前記像の取得位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射するマーカー照射部と、所定の被検知対象の有無を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に応じて、前記マーカー照射部の動作を制御する照射制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る医療用観察装置は、上記発明において、前記像取得部は、前記被観察体を撮像する撮像部であり、前記マーカー照射部は、前記撮像部が撮像する位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射し、前記検知部は、前記撮像部が撮像した画像に医療器具が写っているか否かを検知し、前記照射制御部は、前記画像に前記医療器具が写っていないことを検知した場合、前記マーカー光を照射させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る医療用観察装置は、上記発明において、前記検知部は、前記撮像部が撮像した画像に対して画像処理を行うことによって前記画像に前記医療器具が写っているか否かを検知することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る医療用観察装置は、上記発明において、前記観察像を表示する接眼部をさらに備え、前記検知部は、ユーザが前記接眼部に近接したか否かを検知し、前記照射制御部は、前記ユーザが前記接眼部へ近接していないことを前記検知部が検知した場合、前記マーカー光を照射させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る医療用観察装置は、上記発明において、前記マーカー照射部は、前記像の略中央に対応する点を前記マーカー光として前記被観察体に照射することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る医療用観察装置は、上記発明において、前記マーカー照射部は、前記像の外郭に対応する枠を前記マーカー光として前記被観察体に照射することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る制御装置は、被観察体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像する位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射するマーカー照射部と、を備えた画像取得装置を制御する制御装置であって、前記撮像部が撮像した画像に医療器具が写っているか否かを検知する検知部と、前記検知部の検知結果に応じて、前記マーカー照射部の動作を制御する照射制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る制御装置の作動方法は、被観察体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像する位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射するマーカー照射部と、を備えた画像取得装置を制御する制御装置の作動方法であって、検知部が、前記撮像部が撮像した画像に医療器具が写っているか否かを検知する検知ステップと、照射制御部が、前記検知部の検知結果に応じて被観察体に対するマーカー光の照射を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る制御装置の作動プログラムは、被観察体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像する位置を示すマーカー光を前記被観察体に照射するマーカー照射部と、を備えた画像取得装置を制御する制御装置に、検知部が、前記撮像部が撮像した画像に医療器具が写っているか否かを検知する検知ステップと、照射制御部が、前記検知部の検知結果に応じて被観察体に対するマーカー光の照射を制御する制御ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構成によって医療器具が医療用観察装置の視野領域から外れた場合であってもユーザが容易に視野領域内に医療器具を導入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る医療用観察装置を備えた医療用観察システムの一例である手術用顕微鏡システムの全体構成を模式的に示す図である。同図に示す手術用顕微鏡システム1は、所定の視野領域を拡大して撮像し、撮像した画像を表示する機能を有する。手術用顕微鏡システム1は、被観察体を観察するための画像を撮像することによって取得する画像取得装置である顕微鏡装置2と、手術用顕微鏡システム1の動作を制御する制御装置3と、顕微鏡装置2が撮像した画像を表示する表示装置4とを備える。顕微鏡装置2および制御装置3は手術用顕微鏡であり、本実施の形態に係る医療用観察装置100を構成する。なお、制御装置3と表示装置4の少なくともいずれか一方を顕微鏡装置2と一体に構成することも可能である。
【0023】
顕微鏡装置2は、被観察体の微小部位を拡大して撮像する顕微鏡部5と、顕微鏡部5の基端部に接続し、被観察体に対し顕微鏡部5を移動可能に支持すべく顕微鏡部5を回動可能に支持する支持部6と、支持部6の基端部を回動可能に保持し、床面上を移動可能なベース部7と、を有する。なお、ベース部7は、床面上に移動可能に設けるのではなく、天井や壁面やベッド等に固定して支持部6を支持する構成としてもよい。
【0024】
図2は、顕微鏡部5とその周辺の構成を示す拡大斜視図である。顕微鏡部5は、円柱状をなし、その内部に、被観察体の微小部位を拡大して該被観察体の像を取得する像取得部を有する。像取得部の詳細な構成については後述する。ユーザは、所望の撮像範囲を撮像させるために顕微鏡部5を把持し、顕微鏡部5を移動させる。顕微鏡部5の側面には、顕微鏡装置2の動作指示の入力を受け付ける入力部24を構成する各種スイッチが設けられている。顕微鏡部5の下端部の開口面には、内部を保護するカバーガラスが設けられている(図示せず)。なお、
図2に示すスイッチは入力部24を構成する各種スイッチやボタンの一部を記載しているに過ぎない。
【0025】
術者等のユーザは、顕微鏡部5を把持した状態で各種スイッチを操作しながら、顕微鏡部5を移動したりズーム操作を行ったりする。換言すれば、顕微鏡部5は、像取得部を含む顕微鏡部5のユーザによる移動指示を受け付けるとともに、入力部24が設けられた操作部である。なお、顕微鏡部5の形状はユーザが把持して視野方向を変更しやすいように、観察方向に細長く延びる形状であれば好ましい。このため、顕微鏡部5の形状は、円柱状以外の形状であってもよく、例えば多角柱状であってもよい。また、本実施の形態では、顕微鏡部5が操作部を兼ねているが、これに限らず、顕微鏡部5の移動指示を受け付けるとともに各種スイッチが設けられた操作部を、例えばリモコンやフットスイッチの様な、顕微鏡部5とは離間した位置に設けてもよい。
【0026】
支持部6は、複数の関節部およびアーム部が交互に連結されてなり、顕微鏡部5の並進または回転を実現する。
図2では、先端側から順に、第1関節部61、第1アーム部71、第2関節部62、第2アーム部72が連結されている。
【0027】
第1関節部61は、先端側で顕微鏡部5の光軸と一致する第1軸A
1のまわりに回動可能に該顕微鏡部5を保持するとともに、基端側で第1アーム部71の先端部に固定された状態で第1アーム部71に保持される。第2関節部62は、先端側で第1アーム部71を第1軸A
1と直交する第2軸A
2のまわりに回動可能に保持するとともに、基端側で第2アーム部72に保持される。
【0028】
図2は、支持部6が有する少なくとも一部の関節部およびアーム部の構成を示したものである。例えば、支持部6が全体で6つの関節部と5つのアーム部とを有する場合、支持部6は、並進3自由度および回転3自由度の6自由度の動きを実現することができる。
【0029】
図3は、手術用顕微鏡システム1の機能構成を示すブロック図である。以下、
図3を参照して手術用顕微鏡システム1の機能構成を説明する。
【0030】
まず、顕微鏡装置2の機能構成を説明する。顕微鏡装置2は、像取得部として被観察体を撮像し画像を取得する撮像部21と、レンズ駆動部22と、マーカー照射部23と、入力部24と、信号処理部25と、ブレーキ部26と、制御部27とを有する。
【0031】
図4は、顕微鏡部5に設けられた撮像部21およびマーカー照射部23の構成を模式的に示す図である。撮像部21は、互いの視野領域の一部が重なりを有し、視差を有する2つの画像を生成可能なステレオ光学系を備え、3次元画像を生成する。
【0032】
撮像部21は、ズーム機能を有する変倍光学系211Lおよび211Rと、変倍光学系211Lおよび211Rがそれぞれ通過した光を結像する結像光学系212Lおよび212Rとを有する。変倍光学系211Lおよび結像光学系212Lの組と、変倍光学系211Rおよび結像光学系212Rの組とは、互いに平行な光軸O
21L、O
21Rを有するステレオ光学系を形成している。変倍光学系211Lおよび211Rをそれぞれ構成するレンズは、レンズ駆動部22によって駆動される。結像光学系212Lおよび212Rがそれぞれ結像した被観察体像は、1つの撮像素子213の異なる受光面においてそれぞれ電気信号に変換され、視差を有する2つの画像信号として出力される。変倍光学系211Lおよび211Rの前段すなわち被観察体側には、凹レンズと凸レンズの組からなり、視差を有する2つの画像を生成可能な被観察体までの距離の範囲を広げる機能を有する光学系214が設けられている。
【0033】
変倍光学系211Lおよび211R、ならびに結像光学系212Lおよび212Rは、それぞれ1または複数のレンズを用いて構成される。撮像素子213は、例えばCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いて構成される。撮像素子213は、被観察体を観察するために用いられ、高画質で撮像するために8メガピクセル前後(例えば3840×2160ピクセル)の有効画素数、換言すればいわゆる4Kの解像度以上の有効画素数を有することが好ましい。
【0034】
以上の構成を有する撮像部21が生成する撮像信号は、伝送ケーブルを介して制御装置3に伝送される。なお、画像の倍率変更は、変倍光学系211Lおよび211Rに限らず、画像信号の処理による電子ズームにより行ってもよい。
【0035】
図5は、マーカー照射部23の構成を模式的に示す図であり、
図4の矢視A方向におけるマーカー照射部23の側面図である。マーカー照射部23は、撮像部21が撮像する位置を示すマーカー光を被観察体に照射する。マーカー照射部23は、マーカー光源231と、ミラー232とを有する。ミラー232は、撮像部21の対をなすステレオ光学系の間に設けられるとともにマーカー光源231と光学系214の間に設けられ、マーカー光源231が照射するマーカー光(以下、単にマーカーという)を反射して光学系214の光軸と一致する方向へ導くように配置される。
図5に示す光路O
23は、マーカー光源231が出力したマーカーがミラー232によって反射されて入射方向と直交する方向に反射されて光学系214へ導かれる場合を示している。光学系214を通過した光は、被観察体に照射される。マーカー光源231は、例えばレーザーダイオードを用いて構成され、マーカーとしてレーザ光を発生する。マーカー光源231が発生したレーザ光は、被観察体に照射され、被観察体上で点状のマーカー像を形成する。光路O
23は、撮像部21の視野(画像)中心と一致するかまたは近傍であることが望ましい。換言すれば、マーカー照射部23は、画像の略中央に対応する点をマーカー光として被観察体に照射する。
【0036】
手術用顕微鏡システム1は、マーカー照射部23の動作を停止しマーカーの照射を停止した状態を維持するマーカー停止モードと、撮像部21が撮像した画像における医療器具の有無を検知し、検知結果に応じてマーカー光源231の起動と停止を切り替えてマーカーの照射のオンとオフを切り替えるマーカー制御モードとを設定可能である。
【0037】
レンズ駆動部22は、制御部27の制御のもとで撮像部21の変倍光学系211Lおよび211Rをそれぞれ駆動する2つのアクチュエータを有する。
【0038】
入力部24は、
図2を参照して説明したように、少なくとも一部が操作部である顕微鏡部5の側面に設けられる。入力部24は、マーカー停止モードの指示入力を受け付けるマーカー停止ボタンや、ズーム操作の指示入力を受け付けるズームスイッチ等を有する。手術用顕微鏡システム1は、マーカー停止ボタンが押されている状態でマーカー停止モードに設定される一方、マーカー停止ボタンが押されていない状態でマーカー制御モードに設定される。マーカー停止ボタンおよびズームスイッチは、操作部である顕微鏡部5の側面に設けて、ユーザが顕微鏡部5を把持した状態で指が届くようにしておくことが望ましい。なお、入力部24として、顕微鏡部5の側面以外に、ユーザが足で操作可能なフットスイッチを設けてもよい。
【0039】
信号処理部25は、撮像部21が撮像した画像に対して所定の信号処理を施して出力する。
【0040】
ブレーキ部26は、支持部6の関節部ごとに設けられる複数の電磁ブレーキを有する。電磁ブレーキは、入力部24が入力を受け付ける解除指示信号に応じて、制御部27の制御のもとで解除される。電磁ブレーキが解除されると、顕微鏡部5および各アーム部は、対応する関節部に対して回動可能な状態となる。顕微鏡部5および全てのアーム部が対応する関節部に対して回動可能な状態を、オールアームフリーという。なお、ブレーキ部26として電磁ブレーキの代わりにエアブレーキを適用してもよい。
【0041】
制御部27は、制御装置3の制御部34と通信可能であり、制御部34と連携して顕微鏡装置2の動作を制御する。制御部27は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサ、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の特定の機能を実行する専用の集積回路等を用いて実現される。
【0042】
なお、信号処理部25や制御部27は、顕微鏡部5や支持部6やベース部7の任意の場所に設けてよく、また制御装置3に設けてもよい。
【0043】
次に、制御装置3の機能構成を説明する。制御装置3は、顕微鏡装置2から送られてきた撮像信号に所定の画像処理を施す画像処理部31と、各種指示信号の入力を受け付ける入力部32と、手術用顕微鏡システム1の動作に必要な情報を含む各種情報を記憶する記憶部33と、手術用顕微鏡システム1を統括して制御する制御部34とを有する。
【0044】
画像処理部31は、顕微鏡装置2から送られてきた撮像画像内に写っている鉗子等の所定の被検知対象である医療器具の存在を検知する検知部311を有する。検知部311は、画像処理によって医療器具に対応する色を検知する。ここでいう医療器具に対応する色とは、具体的には銀色である。また、例えば医療器具の先端部等に予め特定の色の識別部を設け、検知部311がその識別部の色を検知することにより、視野領域内の医療器具の存在を検知するようにしてもよい。なお、検知部311は、パターンマッチングを行うことによって医療器具を検出してもよい。パターンマッチングを適用する場合には、記憶部33に予め医療器具のテンプレートを記憶させておけばよい。画像処理部31は、CPU等の汎用プロセッサ、またはASICもしくはFPGA等の集積回路等を用いて実現される。
【0045】
記憶部33は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を用いて構成され、手術用顕微鏡システム1を動作させるための各種プログラムや、手術用顕微鏡システム1の動作に必要な各種パラメータ等を記憶する。検知部311がパターンマッチングを行うことによって撮像画像における医療器具の有無を検知する場合、記憶部33は医療器具のテンプレートを記憶している。
【0046】
各種プログラムの中には、制御装置3の作動方法を実行するための作動プログラムも含まれる。なお、各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD−ROM、DVD−ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。また、各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などによって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0047】
制御部34は、顕微鏡装置2の制御部27と通信可能であり、制御部27と連携して顕微鏡装置2を含む手術用顕微鏡システム1全体を統括して制御する。制御部34は、検知部311の検知結果に応じて顕微鏡装置2のマーカー照射部23の照射動作を制御する照射制御部341を有する。照射制御部341の制御信号は顕微鏡装置2に送信される。顕微鏡装置2では、照射制御部341から受信した制御信号に基づいて、制御部27がマーカー照射部23を制御する。なお、本実施の形態においては、照射制御部341を制御装置3の制御部34に設けているが、これに限らず例えば制御部27等、顕微鏡装置2に設けてもよい。
【0048】
制御部34は、CPU等の汎用プロセッサ、またはASICもしくはFPGA等の集積回路等を用いて構成される。制御部34の少なくとも一部と画像処理部31の少なくとも一部を共通のCPUまたはASICもしくはFPGAを用いて構成してもよい。
【0049】
以上の構成を有する制御装置3は、1または複数のコンピュータを用いて構成される。複数のコンピュータを用いて制御装置3を構成する場合には、通信ネットワークを介して、複数のコンピュータを通信可能に接続すればよい。
【0050】
顕微鏡装置2と制御装置3との間のデータ伝送は、電気信号により行ってもよいし、光信号により行ってもよい。また、画像データのようにデータ量が大きい信号を光信号として伝送し、それ以外の信号を電気信号として伝送してもよい。
【0051】
次に、表示装置4の機能構成を説明する。表示装置4は、制御装置3が生成した動画データを制御装置3から受信し、該動画データに対応する画像を表示する。このような表示装置4は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)からなる表示パネルを有する。表示装置4は、観察時の没入感を得やすくするために、画像を表示する表示部が55インチ以上を有するものが好ましいが、これに限らない。
【0052】
以上の機能構成を有する手術用顕微鏡システム1を用いて行われる手術の概要を説明する。まず、ユーザが手術を開始する前に行う動作の概略を説明する。ユーザは、操作部である顕微鏡部5を把持しつつ、入力部24を操作して解除指示信号を入力することによって、ブレーキ部26の動作を解除して顕微鏡部5を動かしながら、対象患部に視野範囲を合わせる。このとき、ユーザは入力部24のマーカー停止ボタンを押下せず動作モードをマーカー制御モードに設定する。この段階では医療器具は患部付近に存在せず、撮像部21が撮像した画像内に医療器具が検知されないため、マーカー照射部23から被観察体に向けマーカーが照射される。ユーザは被観察体を直接目視し、対象患部にマーカー照射される位置に顕微鏡部5を動かし、対象患部に視野範囲を合わせる。
【0053】
その後、所望する患部付近が表示装置4に表示されると、ユーザは表示部4に表示される画像を目視し、所望する患部付近が表示装置4に表示されるように顕微鏡部5の位置を微調整するとともに、必要に応じ入力部24を操作して撮像部21のズーム等を調整し、適切な観察画像が得られる状態にする。このとき、ユーザは入力部24のマーカー停止ボタンを押下して動作モードをマーカー停止モードに設定し、被観察体へのマーカーの照射を停止してもよい。その後、入力部24を介した解除指示信号の入力を終了してブレーキ部26を作動させ、顕微鏡部5の位置を固定する。
【0054】
このように、手術用顕微鏡システム1では、適切な観察画像が得られる位置に顕微鏡部5の位置を固定する迄に、撮像部21が撮像する位置を示すマーカーを被観察体に照射することが可能であり、撮像部21の画像範囲と患部との位置調整を簡易に行うことができる。また、ユーザからの顕微鏡部5の移動指示を受け付ける部位やユーザが操作する入力部24を、1か所の顕微鏡部5(操作部)にまとめて設けており、顕微鏡部5の位置調整に係る各種動作を簡易に行うことができる。
【0055】
図6は、手術用顕微鏡システム1を用いた手術の状況を模式的に示す図である。具体的には、
図6は、ユーザである術者401が被観察体である患者402の頭部を手術している状況を模式的に示す図である。術者401は、表示装置4を見ながら患者402の手術を行う。本実施の形態において、表示装置4には3次元画像が表示される。このため、術者401は、3次元画像用の眼鏡501を装着し、表示装置4が表示する3次元画像を目視しながら手術を行う。
【0056】
術者401は、顕微鏡部5の位置が固定された状態で、入力部24のマーカー停止ボタンを押下せずマーカー制御モードを設定し、手術を行う。例えば、手術を始める際や術者401が意図せず患部から医療器具を離間させた際に、術者401が撮像部21の画像内に医療器具を導入する場合、術者401は被観察体を直接目視し、患部に医療器具を近付ける。このとき、医療器具は患部付近に存在せず、撮像部21が撮像した画像内に医療器具が検知されないため、マーカー照射部23から被観察体に向けマーカーが照射される。ユーザは被観察体を直接目視し、被観察体のマーカーが照射される位置に医療器具を近付ける。そして、医療器具が撮像部21の画像内に入り、撮像部21が医療器具を撮像すると、マーカー照射部23から被観察体へのマーカー照射が停止する。つまり、術者401が被観察体を直接目視し続け、マーカーの照射が停止するまで医療器具をマーカーに近付けることにより、医療器具が撮像部21の画像内に導入される。
【0057】
そして、マーカーの照射が停止した後、術者401は表示装置4に医療器具が表示された状態で、表示装置4を見ながら手術を行う。このとき、動作モードはマーカー制御モードに設定されており、且つ撮像部21が撮像した画像内に医療器具が検知されるため、マーカーの照射は停止される。
【0058】
このように、手術用顕微鏡システム1では、術者401は視線を被観察体に向けたまま視線を移動させることなく、医療器具を高倍率画像の視野範囲内に導くことができる。また、マーカーの照射が停止するまで医療器具をマーカーに近付けることにより、簡易な構造で容易に医療器具を撮像部21の画像内に導入することができる。また、手術中は術者401が両手に医療器具を把持している状態が想定されるが、手術中に医療器具が画像内から外れた際に、顕微鏡部5の入力部24を操作してズーム倍率を広角側に変更する必要がなく、術者401は両手に医療器具を把持したままで、医療器具を患部近傍から離間移動させることなく、医療器具を画像内に導くことができる。また、画像内に医療器具が表示されている間は、手術(観察)時に必要とされないマーカーの照射を停止することができる。
【0059】
以下、制御装置3が行う処理の概要を、
図7に示すフローチャートを参照して説明する。手術用顕微鏡システム1がマーカー制御モードに設定されている場合(ステップS1:Yes)、検知部311は、第1撮像部21が撮像した撮像画像に医療器具が写っているか否かを検知する処理を行う(ステップS2)。
【0060】
検知部311が検知した結果、医療器具が撮像画像に写っている場合(ステップS3:Yes)、照射制御部341は、マーカー照射部23のマーカー光源231をオフ(マーカーオフ)する制御を行う(ステップS4)。一方、検知部311が検知した結果、医療器具が撮像画像に写っていない場合(ステップS3:No)、照射制御部341は、マーカー光源231をオン(マーカーオン)する制御を行う(ステップS5)。例えば、ユーザが手術を開始する前に対象患部に視野範囲を合わせたいときは、画像内に医療器具が写っていない。したがって、このような場合に表示制御部341は、マーカー光源231をオンする制御を行う。
【0061】
ステップS4またはS5の後、入力部24が終了指示信号の入力を受け付けた場合(ステップS6:Yes)、手術用顕微鏡システム1は一連の動作を終了する。一方、ステップS4またはS5の後、入力部24が終了指示信号の入力を受け付けていない場合(ステップS6:No)、手術用顕微鏡システム1はステップS1に戻る。
【0062】
ステップS1において、入力部24のマーカー停止ボタンが押されて手術用顕微鏡システム1がマーカー停止モードに設定されている場合(ステップS1:No)、手術用顕微鏡システム1はステップS4へ移行する。このようなマーカー光源231をオフする制御を行う場合として、例えば、画像内に医療器具が写っておらず、かつユーザが表示装置4を目視している状態で、患部を観察するような場合を挙げることができる。
【0063】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、撮像部21によって撮像された画像中に医療器具が存在することを検知部311が検知した場合にはマーカーをオフする一方、検知しない場合にはマーカーをオンすることにより、簡易な構成を追加するだけでタイムラグを生じることなくマーカーを照射することができる。したがって、本実施の形態によれば、簡易な構成によって、医療器具が撮像部21の視野領域から外れた場合であってもユーザは視野(画像)領域への医療器具の導入を容易に行うことができる。
【0064】
なお、マーカーは点状をなしていなくても、また画像の略中央に位置しなくても、撮像部21が撮像し画像を取得する位置を示すことができればよい。
図8は、マーカー照射部23が照射するマーカーの形状の別な態様を示す図である。
図8に示すマーカーFは、被観察体の像の外郭に対応する枠状をなす。このようなマーカーFは、レーザ光よりも広がりのあるハロゲンランプやキセノンランプ、LED等からなるマーカー光源231と、そのマーカー光源231とミラー232との間に枠形状に相当するマスクを設けることによって実現される。この場合には、マーカー光源231とミラー232との間に変倍光学系を設けることにより、撮像部21のズーム倍率と連動してマーカーFが撮像部21の撮像視野に対応すればより好ましい。
【0065】
また、ステレオ光学系の間にミラー232を設置するスペースを確保できない場合には、イメージファイバ等を用いてマーカー照射部を構成してもよい。また、逆にステレオ光学系の間に十分なスペースを確保できる場合は、ミラー232を設けず、マーカー光源231をステレオ光学系の間であり光学系214の光軸上に設けてもよい。
【0066】
また、撮像画像中の医療器具の有無を画像処理によって検知する代わりに、撮像部と医療器具との相対位置に基づいて検知するようにしてもよい。この場合には、例えば上記特許文献1に記載されている構成を採用することができる。具体的には、顕微鏡部5および医療器具に指標をそれぞれ取り付けるとともに、各指標の位置情報を検出して顕微鏡部5と医療器具との相対位置を検出するナビゲーション装置を具備させることにより、撮像画像中の医療器具の有無を検知する。
【0067】
また、例えば手術中に医療器具が視野領域から外れた場合や、医療器具が視野領域に導入され始めた場合のように、表示装置4が表示する画像が切り替わったタイミングをメタデータとして撮像画像のデータに付加して記憶させておくようにしてもよい。これにより、手術の動画を編集する際、実際の手術中に表示が切り替わったタイミングを容易に把握して編集することができる。
【0068】
また、撮像部は、単眼の撮像光学系を有するものであってもよい。この場合には、例えばマーカー光源を撮像光学系の近傍に配置して撮像光学系の視野領域にマーカーが照射されるようにすればよい。また、撮像光学系に可動式のハーフミラーをさらに設けておき、撮像中はハーフミラーと撮像光学系が干渉しないようにハーフミラーを配置する一方、マーカーを照射する際にはマーカーからの光がハーフミラーによって反射されて被観察体へ照射されるように配置するようにしてもよい。
【0069】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
図9は、本発明の別な実施の形態に係る医療用観察装置を備えた医療用観察システムの一例である内視鏡システムの全体構成を模式的に示す図である。同図に示す内視鏡システム81は、被観察体の内部に先端部が挿入されることによって該被観察体の体内画像を撮像する画像取得装置である内視鏡装置82と、内視鏡装置82に接続され、内視鏡装置82が撮像した体内画像に所定の画像処理を施して表示用の画像データを生成するとともに、内視鏡システム81全体の動作を統括して制御する制御装置83と、内視鏡装置82の先端から被観察体へ照射する照明光を発生する光源装置84と、内視鏡装置82が撮像した画像等を表示する表示装置85と、を備える。内視鏡装置82および制御装置83は、本実施の形態に係る医療用観察装置101を構成する。
【0070】
内視鏡装置82は、硬質で細長形状をなし、先端部が被観察体の内部へ挿入される挿入部821と、挿入部821の基端に着脱自在に接続され、挿入部821を介して集光される被観察体の像を撮像して撮像信号を出力するカメラヘッド822と、カメラヘッド822が出力する撮像信号を制御装置83に伝送するケーブル823と、ケーブル823の基端部に設けられて制御装置83に着脱自在に装着されるコネクタ824と、光源装置84が発生した照明光を挿入部821の先端部まで伝送するライトガイド825と、を有する。カメラヘッド822の内部には、被観察体の患部の微小部位を拡大して撮像する撮像部(取得手段)と、マーカー照射部とが設けられている。そして、挿入部821は、カメラヘッド822のマーカー照射部からのマーカーを被観察体に導く光導体を有する。また、カメラヘッド822は、内視鏡装置82の視野方向を変更させるために把持されるとともに、表面には、マーカー停止ボタンやズームスイッチ等を含む入力部822aが設けられている。つまり、カメラヘッド822は操作部である。
【0071】
以上の構成を有する内視鏡システム81においても、マーカー制御モードに設定されている場合には、制御装置83が、撮像画像に医療器具が写っているか否かを検知し、検知結果に応じてマーカーのオン・オフを切り替える制御を行うことにより、実施の形態と同様の効果を得ることができる。例えば、患部の詳細を撮像する内視鏡装置82と、患部を含む広域を観察する内視鏡装置82とは別の内視鏡装置を用い、手術を行う場合において、内視鏡装置82の画像内から医療器具が外れたとき、マーカーが照射されるため、ユーザは別の内視鏡装置で被観察体を観察し、医療器具を内視鏡装置82の画像範囲内に簡易に導くことができる。
【0072】
図10は、本発明のさらに別な実施の形態に係る医療用観察装置である光学式の手術用顕微鏡システムの全体構成を模式的に示す図である。同図に示す顕微鏡システム91は、被観察体の光学像を取得する像取得部である顕微鏡装置92と、顕微鏡システム91全体の動作を統括して制御する制御装置93と、を備える。なお、顕微鏡装置92と制御装置93を一体に構成することも可能である。
【0073】
顕微鏡装置92は、被観察体の微小部位を拡大して該被観察体の像を取得する像取得部である顕微鏡部921と、被観察体に対し顕微鏡部5を移動可能に支持すべく顕微鏡部921の基端部に接続し、顕微鏡部921を回動可能に支持する支持部922と、支持部922の基端部を回動可能に保持し、床面上を移動可能なベース部923と、を有する。なお、ベース部923は、床面上に移動可能に設けるのではなく、天井や壁面やベッド等に固定して支持部922を支持する構成としてもよい。
【0074】
顕微鏡部921は、前述した顕微鏡部5と同様に、マーカー照射部を有するとともに、内部に変倍光学系と結像光学系とを有する。顕微鏡部921は前述した顕微鏡部5と異なり、被観察体の像を表示し、術者等のユーザが目を近づけて被観察体の像を観察する接眼部924が設けられている。また、顕微鏡部921は、ユーザが顕微鏡部921を移動させる際などに手で把持する把持部925と、把持部925に設けられ、マーカー停止モードやズームスイッチ等を含む入力部926とを備えたハンドル状の操作部を有する。
【0075】
以上の構成を有する顕微鏡システム91においても、マーカー制御モードに設定されている場合には、制御装置83が、撮像画像に医療器具が写っているか否かを検知し、検知結果に応じてマーカーのオン・オフを切り替える制御を行うことにより、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
なお、顕微鏡システム91において、検知部として接眼部924または接眼部924の近傍に物体の接近を検知する接近検知部を設け、接近検知部が検知する被検知対象を接眼部924に接近する物体(目)としてもよい。接近検知部は、例えば接触センサまたは赤外線センサ等を用いて構成される。そして照射制御部は、顕微鏡装置92または制御装置93に設けられ、近接検知部の検知結果に応じマーカー照射部の照射動作を制御する。この場合、ユーザが接眼部94に目を近づけており、接近検知部が物体(目)の接近を検知しているときはマーカーを照射せず、ユーザが接眼部94から目を離しており、接近検知部が何も検知しないときはマーカーを照射するように、マーカー照射部の動作を照射制御部が制御してもよい。
【0077】
以上の構成を有する顕微鏡システム91においては、ユーザが接眼部924から離間し被観察体を直接目視するときに、像取得部の像取得位置にマーカーが照射される。このような顕微鏡システム91においても、簡易な構造で、像取得部の像取得範囲と患部との位置調整を簡易に行うことができ、また接眼部の像取得範囲から医療器具が外れたときに像取得範囲内に容易に医療器具を導入することができる。
【0078】
このように、本発明は、特許請求の範囲に記載した技術的思想を逸脱しない範囲内において、さまざまな実施の形態等を含み得るものである。