(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502806
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20190408BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20190408BHJP
A61F 13/505 20060101ALI20190408BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
A61F13/514 500
A61F13/511
A61F13/505
A61F13/494 111
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-181510(P2015-181510)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-55872(P2017-55872A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友記
【審査官】
▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−004370(JP,A)
【文献】
特開2011−030718(JP,A)
【文献】
特開2000−102562(JP,A)
【文献】
特開2001−145662(JP,A)
【文献】
実開昭55−075607(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の肌側を覆う透液性のトップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う透液性の第1バックシートと、前記第1バックシートの非肌側を覆う不透液性の第2バックシートとを備え、
前記トップシート及び第1バックシートの前記吸収体より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線が形成されるとともに、前記引裂線より幅方向外側に、前記第1バックシートと第2バックシートとを接合するための接合部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1バックシートの非肌側面であって、前記引裂線より幅方向内側の長手方向両端部に幅方向に沿って、前記第2バックシートに対して剥離可能な粘着剤層が設けられている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記引裂線と重なる前記第2バックシートの長手方向両端部にそれぞれ、前記引裂線の端部が非肌側に露出するようにした切欠部が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
肌側の両側部にそれぞれ、長手方向に沿って肌側に突出する立体ギャザーを形成するギャザーシートが配設され、前記ギャザーシートは、前記引裂線より幅方向外側の前記トップシートに接合されるか、前記引裂線より幅方向内側の前記トップシートに接合されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、失禁パンツ、おむつカバーなどのアウターの内面に装着して使用される尿取りパッド、失禁パッドなどの吸収性物品に係り、詳しくは非肌側が不透液性とされた簡易交換用としての使用態様と、非肌側が透液性とされた補助吸収用としての使用態様とを選択可能とした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用される尿取りパッドなどのインナーパッドとして、前記簡易交換用としての使用態様と、前記補助吸収用としての使用態様の2通りの使用態様があることが知られている。前記簡易交換用としての使用態様では、頻繁に使い捨ておむつを交換する手間を軽減するとともに、おむつの購入費用を削減することなどを目的として、尿を吸収したインナーパッドのみを交換して使い捨ておむつを繰り返し使用できるように、吸収体に吸収された尿のアウター側への漏れを防止するため、インナーパッドの非肌側が不透液性のシート材で覆われている。この簡易交換用のインナーパッドは、昼間などパッドを頻繁に交換できるときに主に使用されている。
【0003】
一方、前記補助吸収用としての使用態様では、使い捨ておむつなどのアウターの吸収能力を増大させることなどを目的として、使い捨ておむつの内面に積層して使用し、吸収体に吸収された尿が速やかに使い捨ておむつの吸収体に移行するように、インナーパッドの非肌側が透液性のシート材で覆われている。この補助吸収用のインナーパッドは、就寝時などパッドを長時間に亘って交換できないときに主に使用されている。
【0004】
このように、前記簡易交換用としての使用態様ではアウターに尿が溢れ出ないことが要求される一方で、前記補助吸収用としての使用態様ではインナーパッド及びアウターの各吸収体の吸収性能を有効に活用するため、インナーパッドからアウター側に尿がスムーズに移行することが要求されている。このように、簡易交換用としての使用態様と補助吸収用としての使用態様とでは、相反する性能が要求されることとなる。
【0005】
従来のインナーパッドでは、非肌側のシート材を不透液性とするか透液性とするかによって、何れか一方の機能を備えることしかできなかったため、使用者は各機能に応じたパッドを2種類用意しておかなければならなかった。
【0006】
ところが近年では、このようなパッドにも幾多の改良が重ねられ、1つのパッドで簡易交換用としての使用態様と、補助吸収用としての使用態様とを選択可能としたものが提案されている。例えば、下記特許文献1では、内面側に液透過性のトップシートが、内部に前記トップシートを通過した液を吸収する吸収コアが、外面側に液不透過性のバックシートが設けられ、前記バックシートには、前記吸収コアを透過した液を通過させる開口部が形成されている吸収性物品が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献2では、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体を有する吸収性物品において、前記バックシートに線状の引裂線を形成する分離手段を具備したことにより、前記バックシートに開口部を形成することができる吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3756000号公報
【特許文献2】特許第4023005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の吸収性物品では、開口部が形成されたバックシートの外側に、前記開口部を塞ぐための被覆シートが粘着剤層を介して接着されているが、簡易交換用としての使用態様においては、被覆シートの接着不良などにより、吸収体に吸収された尿が開口部を通じてアウターの使い捨ておむつ側に浸出するおそれがあった。また、バックシートの開口部を塞ぐための被覆シートが余分に必要となり、資材コストや製造コストが嵩む要因となっていた。更に、前記被覆シートを取り除いてバックシートの開口部を開口させた補助吸収用としての使用態様において、インナーパッドからアウターへの尿の移行が前記開口部を通じてしか行われないため、尿がスムーズに移行できない欠点があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の吸収性物品では、バックシートに線状の引裂線を形成する分離手段として、ミシン目状の切り込み線などが挙げられているが、簡易交換用としての使用態様において、このミシン目を通じて吸収体に吸収された尿がアウターの使い捨ておむつ側に浸出するおそれがあった。また、補助吸収用としての使用態様において、インナーパッドからアウターへの尿の移行が線状の引裂線によって形成された開口部を通じてしか行われないため、尿がスムーズに移行できない欠点があった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れ出しを防止するとともに、補助吸収用としての使用態様においてアウターに尿がスムーズに移行できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体と、前記吸収体の肌側を覆う透液性のトップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う透液性の第1バックシートと、前記第1バックシートの非肌側を覆う不透液性の第2バックシートとを備え、
前記トップシート及び第1バックシートの前記吸収体より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線が形成されるとともに、前記引裂線より幅方向外側に、前記第1バックシートと第2バックシートとを接合するための接合部が設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、非肌側が前記不透液性の第2バックシートで覆われた状態で、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用する簡易交換用としての使用態様と、前記引裂線でトップシート及び第1バックシートを引き裂いて、トップシート及び第1バックシートの前記引裂線より幅方向外側部分を取り除くのに伴って、この幅方向外側部分に前記接合部にて接合された第2バックシートを取り除くことにより、非肌側が前記透液性の第1バックシートで覆われた状態で、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用する補助吸収用としての使用態様とが選択可能となっている。なお、前記引裂線とは、ミシン目、スリット、切り込み線、圧縮線などを指し、特に、タイ:カット=1〜5mm:2〜5mmのミシン目であることが好ましい。
【0014】
前記簡易交換用としての使用態様においては、前記トップシート及び第1バックシートの吸収体より幅方向外側に延在する部分に前記引裂線が形成され、不透液性の第2バックシートには引裂線が一切設けられていないため、前記第2バックシートによって尿の漏れ出しが確実に防止できるようになる。
【0015】
また、前記補助吸収用としての使用態様においては、前記引裂線にてトップシート及び第1バックシートの幅方向外側部分を切り離すことにより不透液性の第2バックシートが完全に取り除かれ、非肌側の全面が透液性の第1バックシートによって覆われるため、アウターへの尿の移行がスムーズになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記第1バックシートの非肌側面であって、前記引裂線より幅方向内側の長手方向両端部に幅方向に沿って、前記第2バックシートに対して剥離可能な粘着剤層が設けられている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前記第1バックシートの非肌側面であって、前記引裂線より幅方向内側の長手方向両端部に幅方向に沿って、前記第2バックシートに対して剥離可能な粘着剤層を設けることによって、非肌側が不透液性の第2バックシートで覆われた前記簡易交換用としての使用態様において、第1バックシートと第2バックシートとの間に隙間が形成されなくなり、尿の漏れがより確実に防止できるようになる。また、第2バックシートを取り除いた前記補助吸収用としての使用態様において、前記粘着剤層がアウターの表面に接着してズレ止めとして作用するようになる。前記剥離可能な粘着剤層を設ける範囲としては、吸収性物品の幅方向については前記引裂線よりも内側の範囲とし、吸収性物品の長手方向については長手方向端部から吸収体までの吸収体が介在しない範囲とし、塗布する粘着剤の目付としては15〜30g/m
2とするのが望ましい。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記引裂線と重なる前記第2バックシートの長手方向両端部にそれぞれ、前記引裂線の端部が非肌側に露出するようにした切欠部が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前記引裂線と重なる前記第2バックシートの長手方向両端部にそれぞれ、前記引裂線の端部が非肌側に露出するようにした切欠部が設けられているため、前記引裂線でトップシート及び第1バックシートを引き裂く際の最初の引き裂きが容易となる。前記切欠部は、長手方向の製品端から吸収体までの距離以下を半径とする半円又は略半円であることが望ましい。
【0020】
請求項4に係る本発明として、肌側の両側部にそれぞれ、長手方向に沿って肌側に突出する立体ギャザーを形成するギャザーシートが配設され、前記ギャザーシートは、前記引裂線より幅方向外側の前記トップシートに接合されるか、前記引裂線より幅方向内側の前記トップシートに接合されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、肌側の両側部にギャザーシートを配設し、このギャザーシートによって立体ギャザーを形成する場合、前記ギャザーシートとトップシートとの接合位置によって、補助吸収用としての使用態様において立体ギャザーを存在させるか否かを規定している。具体的には、ギャザーシートを引裂線より幅方向外側のトップシートに接合した場合、前記引裂線にてトップシート及び第1バックシートの幅方向外側部分を切り離すのに伴って、前記ギャザーシートも同時に取り除かれるため、補助吸収用としての使用態様において立体ギャザーが存在しない吸収性物品が得られるようになる。一方、ギャザーシートを引裂線より幅方向内側のトップシートに接合した場合、前記引裂線にてトップシート及び第1バックシートの幅方向外側部分を切り離してもギャザーシートが本体部分に残るため、補助吸収用としての使用態様において立体ギャザーが設けられた吸収性物品が得られるようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れ出しが防止でき、補助吸収用としての使用態様においてアウターに尿がスムーズに移行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】インナーパッド1の使用状態(アウター30への装着状態)を示す展開図である。
【
図3】本発明に係るインナーパッド1の一部破断展開図(簡易吸収用としての使用態様)である。
【
図5】補助吸収用としての使用態様を示す一部破断展開図である。
【
図7】他の形態例に係るインナーパッド1の平面図である。
【
図9】他の形態例に係るインナーパッド1の裏面図である。
【
図10】(A)は簡易吸収用としての使用態様、(B)は補助吸収用としての使用態様における他の形態例に係るインナーパッド1の断面図である。
【
図11】(A)は簡易吸収用としての使用態様、(B)は補助吸収用としての使用態様における他の形態例に係るインナーパッド1の断面図である。
【
図12】(A)、(B)は、他の形態例に係るインナーパッド1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「長手方向」とは、インナーパッド1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(インナーパッド1の展開時の左右方向)を意味する。
【0025】
本発明に係るインナーパッド1は、
図1及び
図2に示されるように、使い捨ておむつ、失禁パンツ、おむつカバーなどのアウター30の内面に装着して使用されるものであり、具体的には尿取りパッドや失禁パッドなどとして知られるものである。
【0026】
前記アウター30(使い捨ておむつ)は、
図1及び
図2に示されるように、不織布などからなる透液性トップシート31と、バックシート32との間に、綿状パルプ等からなる吸収体33を介在させた構造から成る。より具体的には、有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなり使用面側を覆う透液性トップシート31と、不織布からなりおむつの外面側を覆うとともに、おむつ両側部では後述のギャザーシート35とともにサイドフラップ部を構成するバックシート32と、前記透液性トップシート31とバックシート32との間に介在された、綿状パルプ等からなる、たとえば砂時計形状(または長方形状等)のある程度の剛性を有する吸収体33と、前記吸収体33とバックシート32との間に少なくとも吸収体33の全面積を覆うように配設されたポリエチレン等からなる防水フィルム34と、アウター30の両側部に肌側に起立する立体ギャザー36、36を形成するとともに、おむつ両側部では前記バックシート32とともにサイドフラップ部を構成するためのギャザーシート35とから主に構成されている。なお、前記吸収体33は、形状保持と透液性トップシート31を透過した体液の拡散性向上のためにクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞されているのが好ましい。
【0027】
前記インナーパッド1は、
図3及び
図4に示されるように、綿状パルプ等からなり、たとえば長方形状のある程度の剛性を有するとともに、必要に応じてクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞された吸収体2と、前記吸収体2の肌側(表面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性のトップシート3と、前記吸収体2の非肌側(裏面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性の第1バックシート4と、前記第1バックシート4の非肌側を覆うように配設されたポリエチレン等からなる不透液性の第2バックシート5とから主に構成されている。また、前記吸収体2の周囲において、その吸収体2の外縁よりも外側に延出しているトップシート3と第1バックシート4とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体2の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0028】
前記インナーパッド1は、アウター30の前側領域から後側領域に亘る製品長とされるとともに、アウター30の立体ギャザー36、36間に配置可能であって、アウター30の吸収体33より小さな寸法幅で形成されている。
【0029】
前記吸収体2は、図示例では平面形状を略長方形状として成形されたものが使用されているが、後述のように楕円形や六角形状などとしてもよい。この吸収体2は、形状保持とトップシート3を透過した体液の拡散性向上のために前記被包シートによって被包されているのが好ましい。
【0030】
前記吸収体2の肌側(上層側)を覆う透液性のトップシート3としては、液を透過する性質を有し、例えば、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、特に限定されない。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性=ソフト性が高い点で優れている。また、トップシート3は、1枚のシートから成るものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせて得た積層シートから成るもでのあってもよい。透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0031】
前記吸収体2の非肌側(下層側)を覆う透液性の第1バックシート4は、上記透液性のトップシート3と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。
【0032】
前記第1バックシート4の非肌側(下層側)を覆う第2バックシート5は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも用いることができる。前記第2バックシート5は、前記トップシート3及び第1バックシート4と同様に吸収体2の外縁よりも外側に延出して設けられ、前記トップシート3及び第1バックシート4の外縁とほぼ同じ位置まで延在している。
【0033】
本インナーパッド1においては、前記トップシート3及び第1バックシート4の前記吸収体2より幅方向外側に延在する部分に、パッド長手方向に沿って引裂可能な引裂線6が形成されている。前記引裂線6は、ミシン目、スリット、切り込み線、圧縮線などの公知の技術で形成される線状弱化領域であり、特に、タイ:カット=1〜5mm:2〜5mmのミシン目であることが好ましい。前記引裂線6は、トップシート3及び第1バックシート4にのみ形成され、第2バックシート5には一切形成されていない。前記引裂線6は、トップシート3及び第1バックシート4が吸収体2の外縁よりも外側に延出したトップシート3と第1バックシート4との直接の接着部分に形成され、トップシート3と第1バックシート4との間に吸収体2が介在する部分には設けられていない。前記引裂線6は、吸収体2より幅方向外側に延在するトップシート3及び第1バックシート4を一体的に弱化処理を施すことにより形成したものであり、トップシート3及び第1バックシート4の表裏方向に一致する位置に形成されている。前記引裂線6は、トップシート3及び第1バックシート4の全長に亘って設けられている。すなわち、トップシート3及び第1バックシート4の前側端縁と後側端縁とを結ぶ長手方向に亘って設けられている。前記引裂線6の線上及びその近傍において、トップシート3と第1バックシート4との接合手段を設けてもよいが、設けない方が引裂線6での引き裂きが容易となるため好ましい。
【0034】
前記引裂線6より幅方向外側に、前記第1バックシート4と第2バックシート5とを接合するためのホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シールなどからなる接合部7が設けられている。前記接合部7は、第1バックシート4と第2バックシート5とが容易に剥離しないように強固に固着する構造用接合部である。前記接合部7は、前記引裂線6より幅方向外側の領域にのみ設けられ、引裂線6より幅方向内側の領域には、これら第1バックシート4と第2バックシート5とを固着した部分が設けられていない。前記接合部7は、第1バックシート4及び第2バックシート5の全長に亘って連続的又は間欠的に設けられている。
【0035】
以上の構成からなる本インナーパッド1では、
図3及び
図4に示されるように、非肌側が不透液性の第2バックシート5で覆われた状態で、アウター30の内面に装着して使用する簡易交換用としての使用態様と、
図5及び
図6に示されるように、前記引裂線6でトップシート3及び第1バックシート4を引き裂いて、トップシート3及び第1バックシート4の吸収体2より幅方向外側部分を取り除くのに伴って、この幅方向外側部分に前記接合部7にて接合された第2バックシート5を取り除くことにより、非肌側が透液性の第1バックシート4で覆われた状態で、アウター30の内面に装着して使用する補助吸収用としての使用態様とが選択可能となっている。
【0036】
前記簡易交換用としての使用態様においては、トップシート3及び第1バックシート4の吸収体2より幅方向外側に延在する部分に前記引裂線6が形成され、不透液性の第2バックシート5には引裂線が一切設けられていないため、前記第2バックシート5により尿の漏れ出しが完全に防止できるようになる。従って、アウター30を汚さずに済むため、インナーパッド1を交換するだけでアウター30を繰り返し使用できるようになる。
【0037】
また、前記補助吸収用としての使用態様においては、前記引裂線6で引き裂いて前記トップシート3及び第1バックシート4の吸収体2より幅方向外側部分を取り除くことにより、不透液性の第2バックシート5が完全に取り除かれ、非肌側の全面が透液性の第1バックシート4のみによって覆われるため、アウター30への尿の移行がスムーズに行われ、インナーパッド1とアウター30が備える各吸収体の吸収性能を有効に活用できるようになる。
【0038】
さらに、本インナーパッド1では、第2バックシート5に開口などが形成されていないため、この開口を塞ぐシート材を別途設ける必要が無く、資材コスト及び製造コストの上昇を抑えることができる。
【0039】
前記インナーパッド1の変形例として、
図7及び
図8に示されるように、前記第1バックシート4の非肌側面であって、前記引裂線6より幅方向内側の長手方向両端部に幅方向に沿って、前記第2バックシート5に対して剥離可能な粘着剤層8を設けるようにしてもよい。前記粘着剤層8を設けることによって、非肌側が第2バックシート5で覆われた前記簡易交換用としての使用態様において、第2バックシート5が第1バックシート4に剥離可能に接着されるため、第1バックシート4と第2バックシート5との間に隙間が形成されなくなり、長手方向両端部からの尿の漏れが確実に防止できるようになる。また、第2バックシート5を取り除き非肌側が第1バックシート4で覆われた補助吸収用としての使用態様において、前記粘着剤層8がアウター30の表面に対するズレ止めとして作用するようになる。前記剥離可能な粘着剤層8を設ける範囲としては、インナーパッド1の幅方向については前記引裂線6よりも内側の範囲とし、インナーパッド1の長手方向についてはインナーパッド1の長手方向端部から吸収体2までの吸収体2が介在しない外周フラップ部とするのが望ましい。また、塗布する粘着剤の目付としては15〜30g/m
2とするのが望ましい。
【0040】
また、他の変形例として、
図9に示されるように、前記引裂線6と重なる第2バックシート5の長手方向両端部にそれぞれ、引裂線6の端部が非肌側に露出するように切欠部9を設けてもよい。第2バックシート5に前記切欠部9を設けることにより、前記切欠部9から臨むトップシート3及び第1バックシート4の引裂線6端部の両側をそれぞれ両方の手の指で摘んで前後方向に引き裂くことにより、引裂線6でトップシート3及び第1バックシート4を引き裂く際の最初の引き裂きが容易となる。前記切欠部9の平面形状としては、長手方向の製品端から吸収体2までの距離以下の半径を有するとともに、長手方向の製品端側に中心を有する半円又は中心が長手方向の製品端から前後に若干ずれた略半円とするのが望ましい。
【0041】
ところで、
図10及び
図11に示されるように、前記インナーパッド1の肌当接面側の両側部にそれぞれ、トップシート3の側部を覆う不織布などからなるギャザーシート10が配設され、このギャザーシート10の内方側シート部分により、内方側に向かって開口する一対のポケットを形成する立体ギャザー11、11が形成されるようにしてもよい。前記立体ギャザー11は、ギャザーシート10の内方側が二重に折り返され、この折返し部分に1又は複数本の弾性伸縮部材12がパッド長手方向に沿って配設され、内方側シート部分が前記弾性伸縮部材の収縮力を利用して表面側に起立するようになっている。
【0042】
前記ギャザーシート10は、
図10及び
図11に示されるように、トップシート3に対する接合位置によって、前記補助吸収用としての使用態様において立体ギャザー11を存在させるか否かを決定している。具体的には、
図10(A)に示されるように、前記ギャザーシート10を引裂線6より幅方向外側のトップシート3に接合し、引裂線6より幅方向内側のトップシート3には接合しない場合、同
図10(B)に示されるように、前記引裂線6でトップシート3及び第1バックシート4を引き裂いて引裂線6より幅方向外側部分を取り除いて使用する補助吸収用としての使用態様において、この取り除かれた幅方向外側部分にギャザーシート10が接合されているため、ギャザーシート10も一緒に取り除かれ立体ギャザー11が形成されないインナーパッド1が得られるようになる。一方、
図11(A)に示されるように、前記ギャザーシート10を引裂線6より幅方向内側のトップシート3に接合し、引裂線6より幅方向外側に前記ギャザーシート10を延在させないようにした場合、同
図11(B)に示されるように、前記補助吸収用としての使用態様において、トップシート3及び第1バックシート4の幅方向外側部分を取り除いた後もギャザーシート10が本体部分に存置され、立体ギャザー11が形成されたインナーパッド1が得られるようになる。
【0043】
また、肌当接面側の両側部にギャザーシート10によって立体ギャザー11を形成する場合、
図12に示されるように、前記吸収体2の平面形状は、長方形状より、立体ギャザー11の起立区間で立体ギャザー11の下側に入り込むように形成した長手方向中央部で幅方向外側に膨出する形状、例えば、同
図12(A)の楕円形状や(B)の六角形状などとするのが好ましい。これにより、吸収体2を、両側のギャザーシート10、10より幅方向内側の領域に長方形状で設けたときより、吸収体2の面積を大きくとることができ、吸収体2の吸収容量が増加できるようになる。
【符号の説明】
【0044】
1…インナーパッド、2…吸収体、3…トップシート、4…第1バックシート、5…第2バックシート、6…引裂線、7…接合部、8…粘着剤層、9…切欠部、10…ギャザーシート、11…立体ギャザー、12…弾性伸縮部材、30…アウター