特許第6502811号(P6502811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502811
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/00 20060101AFI20190408BHJP
   F04B 53/18 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   F04B53/00 J
   F04B53/18
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-185358(P2015-185358)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-57828(P2017-57828A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 武
(72)【発明者】
【氏名】牛田 吉章
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆志
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−125955(JP,A)
【文献】 特開2001−221486(JP,A)
【文献】 特開2014−107359(JP,A)
【文献】 特開平10−082310(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/115249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
F04B 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給により回転駆動力を得るモータ部と、前記モータ部で駆動されるポンプ部と、前記モータ部に供給する電力を制御する制御部とが一体的に形成される共に、
前記制御部が、前記モータ部に供給する電力を制御する制御基板と、この制御基板を収容するケースとを備えて構成され、前記ケースのうち外気が触れる領域の内面と対向する位置となる前記制御基板の基板面に温度センサを備え
前記ケースに、前記温度センサに外気を供給する孔部が形成されている電動ポンプ。
【請求項2】
前記制御部が前記モータ部に隣接する位置に配置され、
前記制御基板に対し前記モータ部に供給する電力を制御する電力制御素子が備えられ、前記制御基板が、前記温度センサと前記電力制御素子との間に伝熱抵抗部を配置している請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記伝熱抵抗部が、前記制御基板のうち前記電力制御素子と前記温度センサとの中間位置の一部を取り除いた切欠部で構成されている請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記モータ部を構成するモータロータの駆動軸芯に沿う方向で、前記ポンプ部と前記モータ部と前記ケースとが、この順序で配置され、前記制御基板と前記モータ部との間に断熱部が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサで検知される流体の温度に基づいて制御可能な電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された電動ポンプとして特許文献1には、油温センサで検知される油温が所定温度以上であることを条件として、電動オイルポンプを作動させる技術が示されている。この特許文献1では、エンジンのオイルパンの内部に油温センサを設けることにより、オイルの温度を油温センサで直接的に検知する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014‐181780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを備えた車両では、エンジンのオイルパンのオイル(潤滑油)を、オイルポンプにより油圧アクチュエータや、エンジンのメインギャラリ等に供給する構成が多く採用されている。
【0005】
エンジンのオイルパンに貯留されるオイルは、低温で粘性が高く、この低温状態ではオイルポンプを通常の回転数で駆動しても適正に供給できなこともある。このような理由から特許文献1では、油温センサで検知される油温に対応してオイルポンプの駆動形態を設定している。
【0006】
ここで、油温センサによる油温の検知形態を考えると、例えば、オイルパンに貯留されているオイルに接触する油温センサを用いる構成では、油温センサの取付や配線に手間が掛かるものであった。また、オイルに接触する油温センサを用いる構成では、オイルパンの油温を正確に検知するもののオイルポンプ内部の油温を検知できなかった。
【0007】
つまり、エンジンの稼動に伴いオイルの温度が上昇した後でも、オイルポンプが低温である場合には、オイルポンプに供給されたオイルがオイルポンプの内部で低温化し、粘性を高めることもある。このような理由から、オイルポンプ内部の温度の検知が重要とあり、オイルポンプの駆動を開始した後には、ポンプの稼動に伴って発生する熱の影響を排除してオイルポンプ内部の油温を正確に検知することが求められる。
【0008】
即ち、ポンプ部で送られる流体の温度を検知できる電動ポンプが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、電力供給により回転駆動力を得るモータ部と、前記モータ部で駆動されるポンプ部と、前記モータ部に供給する電力を制御する制御部とが一体的に形成される共に、
前記制御部が、前記モータ部に供給する電力を制御する制御基板と、この制御基板を収容するケースとを備えて構成され、前記ケースのうち外気が触れる領域の内面と対向する位置となる前記制御基板の基板面に温度センサを備え
前記ケースに、前記温度センサに外気を供給する孔部が形成されている点にある。
【0010】
外部の温度が殆ど変化しない環境にある場合には、モータ部とポンプ部と制御部のケースと、このケースに収容される制御基板とが環境温度と平衡するため、制御基板の温度は、制御基板を収容するケースの温度と等しくなる。例えば、車両のエンジンにオイルポンプとして本構成の電動ポンプをエンジンに備えた場合には、エンジンが停止し、モータ部とポンプ部と制御部とが環境温度と等しい温度にある状況ではオイルパンのオイルの温度と制御基板の温度とが等しいため、温度センサで検知する温度がオイルパンのオイルの油温と等しい。
従って、ポンプ部に供給される流体の温度を検知するための温度センサとして、流体に接触させる構成を採用することなく、ポンプ部で送られる流体の温度を検知できる電動ポンプが構成された。特に、この構成の電動ポンプをエンジンのオイルを供給するオイルポンプとして構成した場合には、始動時におけるオイルの温度の検知が可能となり、エンジンが始動した後でもポンプ部の温度の検知も可能となる。
また、温度センサに孔部が形成されていると、ケースの外部の外気を、孔部を介して温度センサに接触させ、温度センサの温度を外気温と等しくして温度センサの検知精度を高くする。
【0011】
本発明は、前記制御部が前記モータ部に隣接する位置に配置され、
前記制御基板に対し前記モータ部に供給する電力を制御する電力制御素子が備えられ、前記制御基板が、前記温度センサと前記電力制御素子との間に伝熱抵抗部を配置しても良い。
【0012】
これによると、制御基板上での温度センサの配置により、モータ部の駆動時にモータ部の発生に起因する熱の伝導が抑制され、制御基板に備えた電力制御素子で発生する熱が伝熱抵抗部により温度センサに伝導し難くなるため、モータ部を駆動した場合にもポンプ部における流体の温度を温度センサで精度良く検知することが可能となる。
【0013】
本発明は、前記伝熱抵抗部が、前記制御基板のうち前記電力制御素子と前記温度センサとの中間位置の一部を取り除いた切欠部で構成されても良い。
【0014】
これによると、モータ部の駆動に伴い電力制御素子で発生する熱が、制御基板を介して温度センサに伝わることになるが、この熱の伝導は切欠部で抑制されるため、温度センサの検知精度を高く維持できる。
【0015】
本発明は、前記モータ部を構成するモータロータの駆動軸芯に沿う方向で、前記ポンプ部と前記モータ部と前記ケースとが、この順序で配置され、前記制御基板と前記モータ部との間に断熱部が形成されても良い。
【0016】
これによると、モータ部の駆動時に、モータ部で発生した熱を断熱部が遮断するため、制御基板に伝わる現象を抑制し、温度センサの検知精度を高くする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電動ポンプの断面図である。
図2】制御基板の平面図である。
図3】電動ポンプの温度変化をグラフ化した図である。
図4】電動ポンプの複数箇所における温度変化をグラフ化した図である。
図5】別実施形態のケースの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する
〔基本構成〕
図1に示すように、流体の一例としてのオイルを吸引して送り出すポンプ部Pと、このポンプ部Pを電気的に駆動するモータ部Mと、モータ部Mを制御する制御部Cとを連結により一体化して電動ポンプが構成されている。
【0021】
この電動ポンプは、ポンプ部Pのポンプハウジング4と、モータ部Mのモータハウジング13と、制御部Cのケース22とを、この順序でモータロータ11の駆動軸芯Yに沿う方向に重ね合わせて連結固定した構造を有している。
【0022】
電動ポンプは、車両のトランスミッション(例えば、ATやCVT等)用のオイルポンプとしてエンジンに設けられるものを示している。尚、この電動ポンプはオイル以外の流体の供給に使用しても良い。
【0023】
〔ポンプ部〕
ポンプ部Pは、シャフト1と嵌合することでシャフト1と一体回転し、外周に外歯部が形成されたインナロータ2と、このインナロータ2の外周の外歯部に対し、その内周の内歯部が咬合するアウタロータ3とを備えたポンプユニットを有し、このポンプユニットを、アルミニウム合金等の金属製のポンプハウジング4のロータ室に収容して構成されている。
【0024】
ポンプユニットはトロコイド型であり、インナロータ2は、シャフト1の駆動軸芯Yと同軸芯で回転自在に支持され、アウタロータ3は、駆動軸芯Yから所定量だけ変位する位置で駆動軸芯Yと平行姿勢となる遊転軸芯(図示せず)を中心に回転するように支持されている。尚、ポンプユニットはトロコイド型に限るものではなく、ギヤポンプとして構成されるものや、ベーンを備えた遠心ポンプ型に構成されるものでも良い。
【0025】
ポンプハウジング4は、メインハウジング4Aと、プレート状のサブハウジング4Bとを駆動軸芯Yに沿う方向で重ね合わせてボルト等で連結することにより、インナロータ2とアウタロータ3とを収容するロータ室が形成されている。メインハウジング4Aには吸引ポート5と吐出ポート6とを備え、駆動軸芯Yと同軸芯でモータ部Mの方向に突出する膨出部7が一体形成されている。同図には、吐出ポート6からのオイルを送り出す吐出管6Aが示されている。このポンプハウジング4は、アルミニウム合金のように金属材料で形成されるものであるが、樹脂で形成しても良い。
【0026】
膨出部7は、駆動軸芯Yを中心にする円柱状の外周面を有し、駆動軸芯Yと同軸芯上にシャフト1が貫通する貫通孔部が形成されている。この貫通孔部にはシャフト1の外周に接触するオイルシール8を備えている。
【0027】
〔モータ部〕
モータ部Mは、シャフト1に連結する円柱状のモータロータ11と、このモータロータ11を取り囲む位置に配置されたステータ12とをアルミニウム合金等の金属製のモータハウジング13に収容してセンサレスブラシレスDCモータとして構成されている。
【0028】
モータロータ11は、シャフト1に連結する円筒状のバックヨーク11Aの外周に複数の永久磁石11Bを備えることにより全体的に円柱状に形成されている。ステータ12は、磁性鋼板を積層したコア12Aと、絶縁性樹脂で構成されるインシュレータ12Bと、絶縁被膜が形成された銅線等の導体で成るコイル12Cとを備えて構成されている。
【0029】
コア12Aは、リング状となるヨーク部から駆動軸芯Yの方向(内方)に突出する複数のティース部を一体形成した構造を有している。インシュレータ12Bは、ヨーク部から複数のティース部に亘る領域に外嵌するものであり、このインシュレータ12Bのうちティース部に外嵌する部位にコイル12Cが巻回している。
【0030】
モータハウジング13のうちポンプ部側の端部には、駆動軸芯Yを中心とするシリンダ内面状の嵌合面14が形成され、この嵌合面14の内径を、ポンプハウジング4の膨出部7の外形と一致させている。この構成により電動ポンプを組み立てた状態では、嵌合面14に対して膨出部7が密嵌合する状態で嵌り込むため、ポンプハウジング4とモータハウジング13との位置関係が決まり、シャフト1の軸芯精度が向上する。このモータハウジング13は、アルミニウム合金のように金属材料で形成されるものであるが、樹脂で形成しても良い。
【0031】
〔制御部〕
制御部Cは、ポンプハウジング4のうち、ポンプ部Pと反対側の面に支持される制御基板21と、これを覆う位置に配置されるケース22とを備えて構成されている。
【0032】
ケース22は、アルミニウム合金により、制御基板21を収容するため凹状となる内部空間を内側に形成し、外面には放熱のため複数のフィン22Aが突設されている。このケース22は、連結ボルト23によりポンプハウジング4に連結されることで制御基板21が収容される内部空間を密封する。
【0033】
制御基板21は、モータハウジング13に一体形成された支持部13Sに対して固定ボルト24で固定されている。これにより、制御基板21とモータハウジング13との間に隙間状の空間が形成され、この空間に断熱部としての断熱材28が配置されている。
【0034】
制御基板21は、絶縁性の板材に対してプリント配線の技術により金属箔で成る配線を形成した一般的な構成を有しており、基板面にはモータ部Mのコイル12Cに供給する電力を制御するためFET等で成る電力制御回路と、コイル12Cに発生する逆起電力に基づいてロータの回転角を検知する検知回路と、検知回路の検知結果に基づいて電力制御素子26を所定の周期で制御する回転制御回路とが備えられている。
【0035】
図2に示すように、制御基板21は、基板面に直交する方向視で一方の端部側に電力制御回路を構成するFET等の複数の電力制御素子26を備え、これより中央位置には検知回路や回転制御回路を構成するCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ロジック等の制御ユニット27を備えている。
【0036】
また、制御基板21において他方の端部側には、サーミスタで成る温度センサTSを備えており、この制御基板21において電力制御素子26と温度センサTSとの中間位置には、制御基板21の側縁の一部を取り除いた切欠部21Aが形成されている。
【0037】
この制御基板21では、電力制御素子26から温度センサTSに伝えられる熱を低減するための伝熱抵抗部の構成として、電力制御素子26と温度センサTSとを大きく離間させる構成が採用されている。また、前述した切欠部21Aも伝熱抵抗部として電力制御素子26と温度センサTSと間での熱伝導を抑制する。
【0038】
これにより、電力制御素子26で発生する熱の伝導が制御基板21の伝熱抵抗部に抑制されると共に、モータ部Mのコイル12Cで発生した熱が断熱材28によって遮断される結果、モータ部Mに電力が供給される場合でも温度センサTSにおける熱の影響を小さくして検知温度の精度を向上する。
【0039】
尚、断熱材28は、ウレタンフォームのように発泡系の樹脂材料を想定しているが、グラスウールや、コルク等を用いることができる。
【0040】
制御基板21は、エンジンの稼動を管理するECU(Engine Control Unit)等のエンジン制御部からの制御信号に基づいてモータ部Mを制御するように構成されている。特に、この制御基板21では、温度センサTSの検知結果をエンジン制御部に出力するようにも構成されている。
【0041】
従って、制御基板21では、エンジン制御部からの制御信号に対応してモータ部Mのコイル12Cに供給する電力を制御することでモータロータ11とシャフト1とを目標とする回転速度で回転駆動し、インナロータ2とアウタロータ3を回転させ吸引ポート5からオイルを吸引し、吐出ポート6からオイルを吐出する作動を実現する。
【0042】
〔実施形態の作用・効果〕
特許文献1(特開2014‐181780号公報)にも記載されるように、車両のエンジンのオイルパンのオイルを送るオイルポンプでは、エンジンの始動時にオイルの温度が設定値未満である場合には、オイルの温度に対応した形態でオイルポンプを制御している。その理由は、低温であるほど、オイルの粘性が高まる現象に対応するためであり、粘性に対応して回転速度を低減する等、最適なモータ部Mの制御形態が設定される。
【0043】
オイルの温度を検知するために、例えば、オイルパンの内部のようにオイルに接触する位置に温度センサTSを配置するものでは、オイルの温度を適正に検知できるものの、温度センサTSの取付けや配線に手間が掛かるものである。しかも、このようにオイルパンの内部に温度センサTSを配置したものでは、モータ部Mが作動を開始した後のポンプ部Pの内部の温度を正確に検知できないものである。このような課題を解決するため、前述のように制御基板21に温度センサTSを備えている。
【0044】
つまり、本実施形態のように制御基板21においてケース22の内面に温度センサTSを備えたものでは、ケース22の温度が外気温と等しい状態に達した場合にはケース22の内面と温度センサTSとの間での相互の熱の輻射、あるいは、ケース22の内部の空気の対流現象によって温度センサTSの温度を外気温と一致させることが可能となる。その結果、エンジンが停止し、電動ポンプが環境温度と等しい温度にある状況ではトランスミッションのオイルの温度と温度センサTSの温度とが等しくなり、この温度センサTSによってトランスミッションのオイルの油温を検知できることになる。
【0045】
これにより、エンジンの始動時には、エンジン制御部が制御基板21に備えた温度センサTSで検知される温度をオイル温度とみなして適正な制御を行える。具体的には、温度センサTSで検知される温度が設定値未満である場合には、検知された温度に対応してモータ部Mを駆動する制御を行うことが可能となり、温度センサTSをオイルに接触する位置に配置する必要もない。
【0046】
次に、エンジンの始動に伴いエンジン制御部が、モータ部Mの駆動を開始した後であっても、オイルの粘性が高い場合には、前述したようにモータ部Mの回転速度を低減する等の制御形態でモータ部Mが継続的に駆動される。特に、オイルがエンジンの熱により設定値を超えて上昇した場合でも、ポンプ部Pの温度が低温である場合には、ポンプ部Pでオイルが冷却され粘性が上昇するため、モータ部Mを継続的に駆動するための制御情報として温度センサTSによりポンプ部Pの正確な温度を検知する必要性がある。
【0047】
実施形態の電動ポンプでは、ポンプ部Pとモータ部Mと制御部Cとが熱伝導により互いに等しい温度に維持されるため、温度センサTSで検知される温度は、ポンプ部Pの温度も示している。また、制御基板21とモータハウジング13との間に断熱材28を備え、制御基板21には伝熱抵抗部形成している。これにより、モータ部Mの駆動を開始した場合でも、この駆動に伴って発生する熱の影響を抑制して温度センサTSでポンプ部Pの温度を正確に検知し、ポンプ部Pにおけるオイルの粘性に対応した制御を可能にする。
【0048】
図3には、電動ポンプ全体の温度が70℃にある状況においてモータ部Mを駆動し、この後にエンジンを停止した状態での電動ポンプの温度変化の計測結果を示している。この計測は電動ポンプの各部にセンサを備えて行ったものであるが、複数のセンサで計測される温度変化の傾向が略決まっているため単一のグラフとして示している。
【0049】
同図の横軸の「0」のタイミングでモータ部Mの駆動を開始した場合には、電動ポンプの全体の温度が僅かに上昇する。この後にTsのタイミングでエンジンと共にモータ部Mを停止した場合には、放熱により電動ポンプ全体の温度が低下しTxのタイミングで環境温度と平衡し、環境温度と等しくなる。同図では環境温度を−1℃としており、TsのタイミングからTxのタイミングまでの経過時間Tはおよそ60分である。
【0050】
また、図4には、Txのタイミングでの温度センサTSの位置の制御基板21の温度をTaとして示し、ケース22の周囲の温度をTbとして示し、吸引ポート5の温度をTcとして示している。このようにエンジンを停止した場合には、Ta,Tb,Tcの各位置の温度は僅かに異なる傾向で下降するものの、モータ部Mの停止から60分程度経過したタイミングTXで制御基板21と、ケース22の周囲と吸引ポート5との温度は、略等しく環境温度まで低下することが理解できる。
【0051】
このことは、エンジンを停止した後に、エンジンを始動する場合には、先の停止から60分以上経過している場合には、制御基板21に備えた温度センサTSの検知結果をオイルの温度と見なしても良いことになり、制御が簡素化する。
【0052】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0053】
(a)実施形態では、制御基板21とモータハウジング13との間に断熱材28を配置していたが、制御基板21とモータハウジング13との間の空間に断熱部材等を備えず、この空間の空気層を断熱部としても良い。このように構成することにより、単純な構成でありながらモータハウジング13から温度センサTSに作用する熱を抑制することが可能となる。
【0054】
(b)図5に示すように、制御部Cのケース22のうち、温度センサTSの近傍に孔部22Bを形成し、外気を温度センサTSに供給できるように構成する。この別実施形態では、孔部22Bを介してケース22の内部に水滴や塵埃の侵入を抑制するために、湿気や塵埃を遮断しつつ通気性を有する樹脂材30を孔部22Bの外部を覆う位置に備えている。この構成から、ケース22の外部の空気を温度センサTSに接触させ、温度センサTSで環境の温度を正確に計測することが可能となる。
【0055】
(c)実施形態では、凹状の内部空間が形成されたケース22を用いていたが、これに代えて、例えば、内部に制御基板21収容されるようにケース22を密封構造とし、これをポンプハウジング4に連結して制御部Cを構成しても良い。このように構成したものであっても、制御基板21に備えた温度センサTSに基づいてポンプ部Pの流体の温度を検知することが可能となる。
【0056】
(d)電動ポンプを、単一のハウジングにモータ部Mのモータロータ11を収容し、かつ、ポンプ部Pのインナロータ2とアウタロータ3とを収容するように構成しても良い。このように構成することにより、ポンプ部Pとモータ部Mとの間での熱伝導を良好に行わせることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、温度センサで検知される流体の温度に基づいて制御可能な電動ポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
11 モータロータ
21 制御基板
21A 伝熱抵抗部:切欠部
22 ケース
22B 孔部
26 電力制御素子
28 断熱部(断熱材)
C 制御部
M モータ部
P ポンプ部
Y 駆動軸芯
TS 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5