(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るフィン内蔵管30(熱交換チューブ)が適用される二重管40を示す断面図である。二重管40は、空調装置(図示省略)の冷媒(流体)が循環する熱交換器として設けられる。
【0014】
二重管40は、内部に内側流路51を形成する円筒状の内管20と、内管20のまわりに外側流路52を形成する円筒状の外管32と、を備える。内管20の両端部には冷媒を導く配管(図示省略)が接続される。外管32の両端部36、37は、内管20の外周に接合される。外管32は、冷媒を導く配管(図示省略)が接続される入口38及び出口39を有する。
【0015】
外側流路52には、図中矢印A、Bで示すように、入口38及び出口39を通じて高温高圧の液状冷媒が流通する。内側流路51には、図中矢印C、Dで示すように、低温低圧のガス状冷媒が流通する。二重管40では、外側流路52及び内側流路51を流通する冷媒どうしが熱交換する。
【0016】
内管20の内部には、螺旋フィン10が介装される。螺旋フィン10は、後述するように、帯板状のフィン材11が螺旋状に捩られることで成形される。フィン材11の両端部11A、11Bは、内管20の内面21に例えばカシメによって固定される。
【0017】
二重管40を構成する各部材32、20、10は、例えばアルミニウム等の金属を材質とする。
【0018】
内管20及び螺旋フィン10は、熱交換器の要素としてフィン内蔵管30を構成する。フィン内蔵管30では、内側流路51を流通する冷媒が螺旋フィン10に沿って螺旋状に旋回しながら流通することで、冷媒が内管20を介して熱交換することが促される。
【0019】
二重管40は、設置されるスペースに対応して、その中程を湾曲させた湾曲部44を有する。内管20は、湾曲部44を構成する曲げ加工部24と、曲げ加工部24から直線状に延在する直管部23、25と、を有する。外管32は、湾曲部44を構成する曲げ加工部34と、曲げ加工部34から直線状に延在する直管部33、35と、を有する。
【0020】
次に、
図2を参照して、フィン内蔵管30の製造装置50について説明する。
【0021】
製造装置50は、内管20の内部に挿入する芯金60と、内管20の外周を把持するチャック70と、内管20の外周を摺動自在に支持して曲げ加工をする曲げ加工機80と、を備える。
【0022】
製造装置50は、芯金60を駆動する駆動機構65と、チャック70を駆動する駆動機構75と、を備える。駆動機構65は、矢印Eで示すように芯金60を内管20の軸Oまわりに回転駆動するとともに、矢印Fで示すように、芯金60を軸O方向に移動させる。駆動機構75は、チャック70を矢印Hで示すように軸O方向に移動させる。駆動機構65、75及び曲げ加工機80の作動は、コントローラ(図示省略)によって制御される。
【0023】
曲げ加工機80は、ロール型81、圧力型82、及びクランプ型83を備える。ロール型81は、曲げ中心軸Sを中心とする円弧状に延在する成形溝81Aを有する。圧力型82は、軸O方向に延在するガイド溝82Aを有する。内管20は、成形溝81Aとガイド溝82Aとの間に摺動自在に支持され、軸O方向に移動するように案内される。クランプ型83は、内管20の外周を把持するクランプ溝(図示省略)を有する。
【0024】
曲げ加工時には、ロール型81及びクランプ型83は、両者の間に内管20が把持された状態で、駆動機構(図示省略)によって曲げ中心軸Sを中心に回動する。これにより、駆動機構75によって送られる内管20は、成形溝81Aに沿って曲げられる。
【0025】
芯金60は、軸O方向に延在する円柱状の基端部62、支持部63、及び先端部64と、支持部63及び先端部64にわたって開口するスリット61と、を有する。
【0026】
芯金60の基端部62は、駆動機構65に連結される部位である。
【0027】
芯金60の支持部63は、基端部62に対して先端部64を支持する部位である。支持部63は、基端部62及び先端部64より縮径して形成され、内管20の内面21に間隙をもって軸O方向に延在する。これにより、芯金60の摺動抵抗が小さく抑えられる。
【0028】
図3に示すように、先端部64は、内管20の内面21に摺接する型部64Aと、型部64Aから軸O方向に次第に縮径するように延在する型先端部64B及び先端逃げ部64Cと、を有する。
【0029】
型部64Aは、円柱状に形成される。型部64Aの外周面は、内管20の内面21に間隙をもって対峙する。型部64Aは、後述するように、曲げ加工時に相対回転しながら曲げ加工部24の近傍で内管20の内面21に当接して、曲げ加工部24を成形するようになっている。
【0030】
型先端部64Bは、型部64Aから段差なく縮径する紡錘状に形成される。型先端部64Bの外周面は、型部64Aの外周面から曲折することなく曲面状に延在している。型先端部64Bは、後述するように、曲げ加工時に相対回転しながら曲げ加工部24の内面21に当接し、曲げ加工部24を成形するようになっている。
【0031】
先端逃げ部64Cは、型先端部64Bからさらに縮径して突出する。先端逃げ部64Cは、後述するように、曲げ加工時に曲げ加工部24の内面21に干渉しないようになっている。
【0032】
スリット61は、一定の開口幅を有して軸O方向に延在する間隙であり、芯金60に収容されるフィン材11を支持する支持壁部を形成する。スリット61の開口端部61Aは、次第に開口幅が増大して先端逃げ部64Cに開口している。
【0033】
次に、製造装置50を用いてフィン内蔵管30を製造する方法について説明する。
【0034】
まず、
図2に矢印Gで示すように、フィン材11を内管20に挿入する。そして、内管20の外周をカシメることによって、フィン材11の先端部11Aを内管20に固定する。
【0035】
なお、上記した構成に限らず、例えば、フィン材11の先端部11Aを内管20の内面21に圧入して内管20に固定する構成としてもよい。
【0036】
続いて、
図4に示すように、芯金60を内管20に挿入する。このとき、芯金60のスリット61にフィン材11が挿入される。
【0037】
続いて、
図5、6に矢印Hで示すように、内管20を芯金60に対して軸O方向に移動するとともに、
図5、6に矢印Eで示すように、芯金60を内管20に対して一方向に回転させる。
【0038】
これにより、芯金60のスリット61から出ていくフィン材11は、先端部11Aを支点として捩られる。こうして、内管20の直管部25の内部で螺旋フィン10が形成される。
【0039】
続いて、
図7、8に示すように、曲げ加工機80を作動して内管20を曲げる。このときに、ロール型81及びクランプ型83が内管20を把持した状態で矢印Iで示すように曲げ中心軸Sを中心に回動する。これにより、駆動機構75によって矢印Hで示すように送られる内管20は、円弧状の成形溝81Aに沿って曲げられる。
【0040】
上記曲げ加工時に、内管20は、その内面21に芯金60の先端部64の外周が当接することによって曲げ加工部24が成形される。
【0041】
上記曲げ加工時に、曲げ加工部24の内側に位置する湾曲内側部分24Aでは、圧縮応力が生じるが、その近傍で円柱状の型部64Aが内管20の内面21に当接することによって、座屈することが抑えられる。これにより、湾曲内側部分24Aには、
図8に2点鎖線で示すように、シワ24C等の成形不良が発生することが抑えられる。
【0042】
上記曲げ加工時に、曲げ加工部24の外側に位置する湾曲外側部分24Bでは、引張応力が生じるが、紡錘状の型先端部64Bが相対回転してその内面21に当接することによって、その円弧形状をした断面形状が維持される。これにより、湾曲外側部分24Bでは、
図8に2点鎖線で示すように、その断面形状が過度に扁平になった部位24Dが形成されることが抑えられる。
【0043】
コントローラは、上記曲げ加工時に、駆動機構75によって内管20を矢印Hで示すように軸O方向に送る移動速度に対して駆動機構65によって芯金60を矢印Eで示すように回転させる回転速度を低下させる制御を行う。こうして、螺旋フィン10は、フィン材11が軸Oについて一定角度だけ捩れる軸O方向の長さ(螺旋ピッチ)が直管部23、25に比べて曲げ加工部24で大きくなるように形成される。これにより、曲げ加工部24では、その内部に配置されるフィン材11の角度に応じて螺旋フィン10の曲げ剛性の変化することが小さく抑えられる。よって、曲げ加工部24の成形精度を高められる。
【0044】
上記曲げ加工が行われた後に、曲げ加工機80は、内管20を把持していたクランプ型83を退避位置に移動させる。そして、内管20を芯金60に対して軸O方向に移動するとともに、芯金60を回転させることで、内管20の直管部23の内部に螺旋フィン10を形成する。
【0045】
そして、内管20の外周をカシメることによって、フィン材11の基端部11Bを内管20に固定する。
【0046】
こうして、フィン内蔵管30が製造される。その後、フィン内蔵管30に分割構造をした外管32を組み立てて内管20に接合することで、二重管40が製造される。
【0047】
なお、上記した構成に限らず、内管20に外管32を接合した後に、製造装置50を用いてフィン内蔵管30を製造する構成としてもよい。この場合、製造装置50は、曲げ加工機80を用いて内管20及び外管32を共に曲げ加工する。
【0048】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0049】
本実施形態によれば、螺旋フィン10(フィン)を支持する芯金60を内管20(管)の内部に挿入して内管20を曲げることで、内管20の内部に螺旋フィン10を介装するフィン内蔵管30の製造方法を提供することができる。
【0050】
又、本実施形態によれば、螺旋フィン10を支持する芯金60と、フィン及び芯金60を内管20の内部に挿入して内管20を曲げる曲げ加工機80と、を備える。これにより、内管20の内部に螺旋フィン10を介装するフィン内蔵管30の製造装置50を提供することができる。
【0051】
フィン内蔵管30の製造方法及び製造装置50では、フィン内蔵管30は、曲げ加工時にフィンを支持する芯金60が内管20の内部に介在する。フィン内蔵管30は、内管20の内面21が相対回転する芯金60に当接して成形されることにより、内管20の曲げ加工部24にシワ24C等の成形不良が発生することが抑えられる。よって、フィン内蔵管30は、曲げ加工部24の成形不良を抑制できる。
【0052】
又、本実施形態によれば、内管20の内部に板状のフィン材11を挿入し、フィン材11の先端部11A(一部)を内管20に固定し、内管20と芯金60とを相対回転し、芯金60がフィン材11を捩って螺旋フィン10を螺旋状に成形することでフィン内蔵管30を製造する製造方法を提供することができる。
【0053】
これにより、フィン内蔵管30は、芯金60を回転することにより、内管20の内部で螺旋フィン10が螺旋状に成形される。このため、フィン内蔵管30を製造するときに、螺旋状に成形された螺旋フィン10を内管20の内部に挿入する工程が無くなる。よって、フィン内蔵管30の組み立て性を向上させることができる。
【0054】
そして、螺旋フィン10は、内管20に固定されたフィン材11の先端部11Aを基準として内管20の所定位置に介装することができる。
【0055】
なお、フィン材11を内管20に固定する部位は、先端部11Aに限らず、フィン材11の中程の部位であってもよい。
【0056】
又、本実施形態によれば、芯金60は、フィン材11を収容するスリット61を有し、芯金60を内管20に対して回転させながら内管20の軸O方向に相対移動させてスリット61から出て行くフィン材11を捩ることでフィン内蔵管30を製造する製造方法を提供することができる。
【0057】
これにより、コントローラが駆動機構75によって芯金60を内管20の軸O方向に移動する移動速度と、芯金60を回転させる回転速度とを変えることにより、内管20に対して任意の位置でフィン材11を捩ることができる。よって、フィン内蔵管30は、内管20に対するフィン材11の捩れ位置を任意に設定することができる。
【0058】
又、本実施形態によれば、芯金60は、曲げ加工される前の内管20の内面21に当接する型部64Aと、型部64Aから縮径して内管20の曲げ加工部24の内部に臨むように突出する型先端部64Bと、を有することでフィン内蔵管30を製造する製造方法を提供することができる。
【0059】
これにより、内管20の曲げ加工部24では、相対回転する芯金60の型部64Aが曲げ加工される前の内管20の内面21に当接することにより、曲げ加工によって圧縮される湾曲内側部分24Aにシワ24C等の成形不良が発生することが抑えられる。そして、曲げ加工部24では、曲げ加工によって引っ張られる湾曲外側部分24Bが相対回転する芯金60の型先端部64Bに当接することにより、扁平になることが抑えられる。こうして、フィン内蔵管30は、曲げ加工部24の成形不良を抑制できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0061】
例えば、上記実施形態では、製造装置50は、芯金60を内管20の内部に挿入して回転させる構成とした。これに限らず、製造装置50は、芯金60を回転することなく、芯金60を介して内管20の内部にフィン材11を介装する構成としてもよい。この場合に、フィン内蔵管30は、内管20の内部に平板状のフィンを有するものとなる。
【0062】
上記実施形態のフィン内蔵管30は、熱交換器を構成する熱交換チューブとして好適であるが、熱交換器以外に使用される機械又は設備にも適用できる。