【実施例】
【0036】
以下、実施例のクリーニングブレードについて、図面を用いて説明する。
【0037】
(実施例1)
実施例1のクリーニングブレードについて、
図1〜
図6を用いて説明する。
図1に示されるように、本例のクリーニングブレード2は、電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材1との摺接によって相手部材1の表面に残留する残留トナー(不図示)を除去するために用いられる。本例では、相手部材1は、像担持体である感光ドラムである。また、クリーニングブレード2は、ブレード部4の先端のエッジ部411が相手部材1と摺接させるための摺接部とされる。
図1中、θは当接角である。また、矢印Yは、像担持体である感光ドラムの回転方向を示している。
【0038】
図2〜
図4に示されるように、本例のクリーニングブレード2は、板状部31を有する支持体3と、ポリウレタン製のブレード部4とを有している。ブレード部4は、板状部31に一体成形によって接合されている。本例では、支持体3は、板状部31と繋がる取付部32をさらに有している。取付部32は、画像形成装置のカートリッジに取り付けるための部位である。支持体3は、金属材料により長尺状に形成されており、板状部31および取付部32は、いずれも所定の厚みを有する長方形状に形成されている。取付部32は、板状部31の基端部から板状部31の板面と垂直な方向に突出している。したがって、本例では、支持体3は、断面「L」字状に形成されている。なお、板状部31は、長手方向の長さが354mm、短手方向の長さが15mmの大きさとされており、厚みは2mmとされている。
【0039】
ブレード部4は、板状のブレード本体部41と、補強部42とを有している。ブレード本体部41は、板状部3の板面に接合されている。本例では、具体的には、ブレード本体部41は、板状部31の板面とほぼ平行に接合されている。ブレード本体部41における相手部材1側と反対側の板面は、板状部31における相手部材1側の板面の延長面とほぼ同一面内に配置されている。ブレード本体部41は、基端側の部分が、板状部31における相手部材1側の板面に接合されている。補強部42は、ブレード本体部41の表面から延びており、板状部31の先端面に接合されている。本例では、具体的には、補強部42は、ブレード本体部41における相手部材1側と反対側の板面から延びている。
【0040】
ここで、補強部42は、内方に湾曲する湾曲面421を有している。したがって、
図4に示されるように、ブレード部4の長手方向に垂直な断面で見た場合に、補強部42は、X点とY点とを結ぶXY直線よりも下方(内側)に、湾曲面421を構成する湾曲ライン421aが位置している。なお、X点は、湾曲部42の先端縁の位置に対応しており、湾曲面421を構成する湾曲ライン421aとブレード本体部41の板面を構成する板面ライン41aとの交点である。また、Y点は、湾曲面421を構成する湾曲ライン421aと板状部31の先端面を構成する先端ライン31aとの交点である。つまり、補強部42は、湾曲ライン421aが下に凸となるようなR形状を有しているといえる。
【0041】
本例では、
図4に示される補強部42の幅Wは、具体的には、0.5〜8mmの範囲内とされる。同様に、補強部42の高さHは、0.5〜5mmの範囲内とされる。ブレード本体部41の先端厚みtは、0.7〜3mmの範囲内とされる。ブレード本体部41の自由長Lは、5〜20mmの範囲内とされる。ブレード本体部41と支持体3の板状部31との接合長BWLは、1.5〜7mmの範囲とされる。
【0042】
なお、本例では、
図3に示されるように、ブレード本体部41の厚みは、ブレード本体部41の長手方向で一定とされている。ブレード本体部41は、例えば、
図5に例示されるように、長手方向の中央部の厚みが両端部より厚く形成されていたり、
図6に例示されるように、長手方向の中央部の厚みが両端部より薄く形成されていてもよい。
【0043】
(実施例2)
実施例2のクリーニングブレードについて、
図7を用いて説明する。
図7に示されるように、本例のクリーニングブレード2は、ブレード本体部41が、板状部31の板面に対して傾斜するように接合されている。傾斜方向は、ブレード本体部31の先端が相手部材1と離れる方向とされている。実施例2のクリーニングブレード2は、実施例1の画像形成装置と異なる機種に対応させる場合の例である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0044】
(実施例3)
実施例3のクリーニングブレードについて、
図8を用いて説明する。
図8に示されるように、本例のクリーニングブレード2は、ブレード本体部41が、板状部31の板面に対して傾斜するように接合されている。傾斜方向は、具体的には、ブレード本体部41の先端が相手部材1に近づく方向とされている。本例のクリーニングブレード2は、実施例1および実施例2の画像形成装置と異なる機種に対応させる場合の例である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0045】
(実施例4)
実施例4のクリーニングブレードについて、
図9を用いて説明する。
図9に示されるように、本例のクリーニングブレード2は、ブレード本体部41における相手部材1側と反対側の板面が、板状部31における相手部材1側の板面の延長面と、板状部31における相手部材1側と反対側の板面の延長面との間に配置されている。本例のクリーニングブレード2は、ブレード本体部41の厚みを、実施例1のクリーニングブレード2よりも薄く形成する場合の例である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0046】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0047】
−ウレタン組成物の準備−
80℃にて1時間、真空脱泡したポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):44質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」):56質量部とを混合し、窒素雰囲気下、80℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーを含む主剤液を調製した。
【0048】
また、上記ポリブチレンアジペート(PBA):87質量部と、1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)とトリメチロールプロパン(広栄パーストープ社製)とが重量比6:4にて混合されてなる低分子量ポリオール:13質量部と、触媒としてのトリエチレンジアミン(東ソー社製):0.01質量部とを、窒素雰囲気下、80℃にて1時間混合することにより、硬化剤液を調製した。
【0049】
上記調製した主剤液と硬化剤液とを、主剤液100質量部に対して硬化剤液94質量部の配合割合にて、真空雰囲気下、60℃で3分間混合し、十分に脱泡した。これによりウレタン組成物(1)を調製した。ウレタン組成物(1)は、試料1〜10、13〜15のクリーニングブレードの作製に用いられる。
【0050】
ウレタン組成物(1)の調製において、主剤液100質量部に対してシリカ微粒子(平均粒子径:200nm、コアフロント社製、「SICASTAR 43−00−202」)10質量部を添加した以外は同様にして、ウレタン組成物(2)を調製した。ウレタン組成物(2)は、試料11のクリーニングブレードの作製に用いられる。
【0051】
ウレタン組成物(1)の調製において、主剤液100質量部に対してイオン導電剤(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−12」)10質量部を添加した以外は同様にして、ウレタン組成物(3)を調製した。ウレタン組成物(3)は、試料12のクリーニングブレードの作製に用いられる。
【0052】
−試料1〜12のクリーニングブレードの作製−
図2に示されるように、断面「L」字状に折り曲げ形成された金属製の長尺板材からなる支持体を準備した。また、
図4に示されるようなブレード部を形成可能なキャビティを有する各金型を準備した。なお、各金型は、ブレード本体部の長さ=354mm、ブレード本体部の幅BW=13mm、ブレード本体部の自由長L=8.6mm、ブレード本体部の厚み=2mm、表1に示される補強部の幅Wmm、補強部の高さHmm、および、ブレード本体部の先端厚みtmmを有する各ブレード部を形成可能な各キャビティを有している。
【0053】
次いで、支持体がセットされた所定の金型内のキャビティに所定のウレタン組成物を注入し、130℃で10分間加熱して硬化させた。硬化後、金型から取り出した。これにより、試料1〜9、11、12のクリーニングブレードを得た。また、試料10のクリーニングブレードの作製では、形成されたブレード部の表面を表面処理液にて表面処理することにより、硬化層を形成した。なお、表面処理液は、イソシアネート系の表面処理液であり、具体的には、ポリイソシアネートと重合触媒と有機溶剤とを含んでいる。また、表面処理は、具体的には、ブレード部を表面処理液中に30分間浸漬させた後、ブレード部を表面処理液から取り出し、120℃で加熱することにより行った。
【0054】
−試料13のクリーニングブレードの作製−
試料1のクリーニングブレードの作製において、
図10(a)に示されるように、補強部を形成することなく、補強部のないブレード本体部91をブレード部とした以外は同様にして、試料13のクリーニングブレードを作製した。
【0055】
−試料14のクリーニングブレードの作製−
ウレタン組成物(1)から形成した厚み2mmのポリウレタンゴムシートより、長さ354mm×幅13mmの大きさを有するブレード部を採取した。また、同様に、ウレタン組成物(1)用いて、表1に示される寸法を有する断面直角三角形の補強部形成材料を形成した。次いで、
図10(b)に示されるように、試料1で準備した支持体3の板状部31に、プライマー、ホットメルト接着剤920を用いて上記ブレード部92を接合した。また、上記ブレード部92の板面と板状部31の先端面に、プライマー、ホットメルト接着剤920を用いて上記補強部形成材料921を接合することにより補強部を形成した。これにより、試料14のクリーニングブレードを作製した。
【0056】
−試料15のクリーニングブレードの作製−
試料1のクリーニングブレードの作製において、
図10(c)に示されるように、ブレード本体部93と、湾曲面を有さず、表1に示される寸法を有する断面直角三角形の補強部931とを有するブレード部を形成した以外は同様にして、試料15のクリーニングブレードを作製した。
【0057】
−耐久時のトナーのすり抜け評価−
各クリーニングブレードを、デジタル複写機(リコー社製、「imagio MPC4000」の感光ドラムと摺接するように装着し、23℃×55%RHの環境下、画像面積率5%の文字チャート画像(A4サイズ)を連続10万枚出力した。上記10万枚出力後、白、黒ベタ、ハーフトーン画像を出力し、画像評価を行った。また、上記10万枚出力後、感光ドラム上のトナーすり抜け状態を目視にて確認した。上記画像評価において、画像スジが見られず、かつ、上記目視確認において、感光ドラム上にスジ跡がなかった場合を長期使用時におけるトナーのすり抜けを抑制可能であるとして「A」とした。画像スジが見られた場合を、長期使用時におけるトナーのすり抜けを抑制できないとして「C」とした。画像スジが見られ、かつ、上記目視確認において、感光ドラム上にスジ跡があった場合を、長期使用時におけるトナーのすり抜けが著しいとして「C
−」とした。
【0058】
表1に、作製した各試料のクリーニングブレードの詳細構成と評価結果を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1によれば、以下のことがいえる。試料1〜試料12のクリーニングブレードは、支持体の板状部に一体成形によって接合されたブレード部を有している。そして、このブレード部は、ブレード本体部以外にも補強部を有している。そのため、ブレード部は、補強部によりブレード部の基端側における厚み(断面積)が増し、剛性が高くなる。それ故、上記クリーニングブレードは、当該クリーニングブレードを、相手部材である感光ドラム側へ近づける設計変更をしなくても、ブレード部による当接圧を高めることができる。
【0061】
さらに、上記補強部は、ブレード本体部の表面から延びているため、ブレード本体部と一体的に繋がっている。また、補強部は、外表面が内方に湾曲する湾曲面とされているので、補強部の先端縁においてその湾曲面がブレード本体部の表面に滑らかに移行する。そのため、補強部は、全体で力を分散させることが可能であり、補強部の先端縁に応力が集中し難い。そのため、ブレード部は、相手部材との摺接時に、補強部の先端縁部分にてブレード本体部が曲がり難く、当接角を大きく保持しやすい。それ故、上記クリーニングブレードは、相手部材である感光ドラム表面に対する良好な追従性を確保することができる。
【0062】
その結果、上記クリーニングブレードは、相手部材である感光ドラム側へ近づける設計変更をすることなく当接圧を高めるとともに、感光ドラム表面に対する良好な追従性を確保することにより、長期使用時にトナーのすり抜けを抑制することが可能であることが分かる。
【0063】
なお、試料10〜12のクリーニングブレードは、試料1〜9のクリーニングブレードと比較して、感光ドラムの汚れがより少なかった。これは、ブレード本体部に低摩擦化のための表面処理や微粒子や導電剤を添加することにより、ブレード本体部の滑り性が向上(表面処理、微粒子添加)したり、ブレード本体部によるトナーの除電性が向上(導電剤添加)したりしたことによって、トナーの掻き取り能力が長期にわたって発揮されやすくなったためである。
【0064】
これらに対し、試料13のクリーニングブレードは、ブレード部が補強部を有していない。そのため、当接圧が不十分となり、耐久時にトナーのすり抜けが発生し、これが原因でスジ画像の画像不具合が生じた。
【0065】
また、試料14、15のクリーニングブレードは、補強部を有するものの、補強部が湾曲面を有していない。そのため、追従性が低下し、耐久時にトナーのすり抜けが発生し、これが原因でスジ画像の画像不具合が生じた。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。