特許第6503011号(P6503011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503011
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】流体を送達するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20190408BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20190408BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   A61M5/158 500Z
   A61M5/20 550
   A61M5/315 500
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-108450(P2017-108450)
(22)【出願日】2017年5月31日
(62)【分割の表示】特願2015-505868(P2015-505868)の分割
【原出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2017-170176(P2017-170176A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年6月13日
(31)【優先権主張番号】61/624,026
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リチャード クローネンバーグ
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/025639(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/146166(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/133823(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/075105(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0168683(US,A1)
【文献】 特表2005−538773(JP,A)
【文献】 特表2004−501721(JP,A)
【文献】 特表2002−505601(JP,A)
【文献】 特開平4−256757(JP,A)
【文献】 実開平1−130743(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送達するためのデバイスであって、
内部スペースを画定し、患者に接触するように構成される底部表面を有するハウジングであって、前記底部表面がニードル開口部を画定する、ハウジングと、
中に流体を含有するための、前記ハウジングの前記内部スペース内に配置されるリザーバと、
前記ハウジング内に配置されるニードルキャリアと、
前記ハウジング内に配置されるパッドと、
前記ニードルキャリアによって支持され、前記リザーバと流体連通するルーメンを画定する注射ニードルと、
ニードルアクチュエータと、
を備え、
前記注射ニードルは、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる初期位置から、前記注射ニードルを前記ニードル開口部を通して延在させる使用位置まで、さらには、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させて前記注射ニードルの前記ルーメンを前記パッドよって遮断する遮蔽位置まで、移行可能であり、
前記ニードルアクチュエータは、前記注射ニードルが前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させられるときに前記注射ニードルを前記パッド内へと駆動させるように構成されている、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記ニードルアクチュエータは、傾斜セクションおよび水準セクションを有する第1のランプ部分を有し、前記水準セクションは前記ハウジングの前記底部表面に概して平行であり、
前記ニードルキャリアは、前記第1のランプ部分の前記傾斜セクションに接触して前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させるための第1の係合部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ニードルアクチュエータは、傾斜セクションと、前記ハウジングの前記底部表面に概して平行である水準セクションとを有する第2のランプ部分をさらに備え、前記ニードルキャリアは、前記第2のランプ部分の前記傾斜セクションに接触して前記注射ニードルを前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させるための第2の係合部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記注射ニードルが前記遮蔽位置にあるときに前記注射ニードルの前記ルーメンは前記パッドによって遮断されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記遮蔽位置では、前記パッドの少なくとも一部分が前記ニードルアクチュエータによって受けられることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記リザーバは、前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させた後で流体を前記注射ニードルに自動で供給するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ニードルアクチュエータは、前記ニードルキャリアに係合して前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで、さらには前記遮蔽位置まで移行させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記リザーバはシリンジ組立体を備え、前記シリンジ組立体は、
中に流体を含有するためのシリンジバレルと、
前記シリンジバレル内に配置されるストッパと、
前記シリンジバレル内で前記ストッパを前進させて、そこから前記流体を吐出するように構成されるプランジャと、
を備えることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記注射ニードルが前記初期位置にあるときに前記プランジャに係合されるプランジャストップをさらに備え、前記プランジャストップは、前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させるときに前記ニードルキャリアに係合して前記プランジャから前記プランジャストップを解放するように構成されることを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記リザーバから所定量の流体が分注されるまで前記使用位置から前記遮蔽位置までの前記注射ニードルの移動を制限するように構成されるニードルストップをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ニードルストップは、前記注射ニードルが前記使用位置にあるときに前記ニードルアクチュエータおよび前記プランジャに係合する回転可能ボディを備え、前記注射ニードルを前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させるときに前記ニードルストップが前記プランジャから切り離されることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
作動ボタンをさらに備え、前記作動ボタンを配置することで、前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させることが可能となることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記注射ニードルが前記初期位置、前記使用位置および前記遮蔽位置にあることを指示するためのインジケータをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
流体を送達するためのデバイスであって、
内部スペースを画定し、患者に接触するように構成される底部表面を有する、ハウジングであって、前記底部表面はニードル開口部を画定する、ハウジングと、
中に流体を含有するための、前記ハウジングの前記内部スペース内に配置されるリザーバと、
前記ハウジング内に配置されるニードルキャリアと、
前記ハウジング内に配置されるパッドと、
ニードルアクチュエータと、
前記ニードルキャリアによって支持され、ルーメンを画定する注射ニードルであって、前記注射ニードルの前記ルーメンは前記リザーバと流体連通するように配置されるように構成され、前記注射ニードルは、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる初期位置から、前記注射ニードルを前記ニードル開口部を通して延在させる使用位置まで、さらには、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる遮蔽位置まで、移行可能である、注射ニードルと、
前記注射ニードルが前記初期位置、前記使用位置および前記遮蔽位置にあることを指示するためのインジケータと、
を備え、
前記ニードルアクチュエータは、前記注射ニードルが前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させられるときに前記注射ニードルを前記パッド内へと駆動させるように構成されている、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項15】
前記ハウジングは少なくとも1つのインジケータレンズを有し、前記インジケータは前記インジケータレンズを介して前記ハウジングの外部から可視となることを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記インジケータは、前記注射ニードルの位置の視覚的および触覚的指示を提供することを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記インジケータはインジケータポストを備え、前記ハウジングはインジケータ開口部を画定し、前記インジケータポストは前記注射ニードルが前記初期位置および前記使用位置にあるときに前記ハウジング内に配置され、前記インジケータポストは前記注射ニードルが前記遮蔽位置にあるときに前記インジケータ開口部を通って延在することを特徴とする請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
流体を送達するためのデバイスであって、
内部スペースを画定し、患者に接触するように構成される底部表面を有する、ハウジングであって、前記底部表面はニードル開口部を画定する、ハウジングと、
中に流体を含有するための、前記ハウジングの前記内部スペース内に配置されるリザーバと、
前記ハウジング内に配置されるニードルキャリアと、
前記ハウジング内に配置されるパッドと、
ニードルアクチュエータと、
作動ボタンと、
前記ニードルキャリアによって支持され、ルーメンを画定する注射ニードルであって、前記注射ニードルの前記ルーメンは、前記リザーバと流体連通するように配置されるように構成される、注射ニードルと、
を備え、
前記作動ボタンを配置することにより、前記注射ニードルは、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる初期位置から、前記注射ニードルを前記ニードル開口部を通して延在させる使用位置まで、さらには、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる遮蔽位置まで、移行させられ、
前記ニードルアクチュエータは、前記注射ニードルが前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させられるときに前記注射ニードルを前記パッド内へと駆動させるように構成されている、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項19】
前記ニードルアクチュエータは、前記ニードルキャリアに係合して前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで、さらには前記遮蔽位置まで移行させるように構成されていることを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記リザーバから所定量の流体が分注されるまで前記使用位置から前記遮蔽位置までの前記注射ニードルの移動を制限するように構成されるニードルストップをさらに備えることを特徴とする請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記作動ボタンは、前記注射ニードルが前記初期位置にあるときに前記ニードルアクチュエータに係合し、前記ニードルストップは、前記注射ニードルが前記使用位置にあるときに前記ニードルアクチュエータに係合し、前記ニードルストップは、前記注射ニードルが前記遮蔽位置にあるときに前記ニードルアクチュエータから切り離されることを特徴とする請求項20に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、注射により患者の身体内に流体を送達するためのデバイスに関し、より詳細には、注射後にニードルを自動で後退させるための機構を備える注入デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬液または他の液体治療製剤を、非訓練者によって投与すること、または自分で注射することを可能にするための種々のタイプの自動注射デバイスが開発されている。一般に、これらのデバイスは、液体治療製剤で予め充填されるリザーバと、ユーザによって起動され得る何らかのタイプの自動ニードル注射機構(通常はばね荷重タイプ)とを有する。投与される流体または薬剤の量が1mLといったような概して特定の量未満である場合、通常は注射時間が約10秒から約15秒である自動注射器(auto injector)が一般に使用される。投与される流体または薬剤の量が1mLを超える場合には一般に注射時間が長くなり、患者がデバイスと患者の皮膚の目標領域とを接触させ続けることが困難となる。さらに、投与される薬剤の量が増大することで、注射のための時間を長くすることが望まれる。患者の中に薬剤をゆっくりと注射するための従来の手法は、IVを開始して患者の身体の中に薬剤をゆっくりと注射する手法である。このような手技は通常は病院または外来設備内で実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定のデバイスでは家庭環境内で自分で注射を行うことが可能であり、液体治療製剤を患者の皮膚の中に徐々に注入することができる。一部の事例では、これらのデバイスは、液体治療製剤を患者の中に注入するときに患者によって「着用」され得るくらいに十分に小さい(高さおよび全体のサイズの両方)。これらのデバイスは、通常、液体治療製剤を押圧してリザーバから流出させて注射ニードルまたは注入ニードルに入れるためのポンプまたは別のタイプの排出機構を有する。さらに、このようなデバイスは、通常、適切なタイミングで液体治療製剤が流れ始めるようにするためのバルブまたは流量制御機構と、注射を開始するためのトリガー機構とを有する。従来のシリンジと同様に、自分で注射する注入デバイスを用いる場合の針刺し事故が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、流体を送達するためのデバイスが、内部スペースを画定し、患者に接触するように構成される底部表面を有する、ハウジングを有する。前記底部表面がニードル開口部を画定する。前記デバイスがまた、中に流体を含有するための、前記ハウジングの前記内部スペース内に配置されるリザーバと、前記ハウジング内に配置されるニードルキャリアと、前記ニードルキャリアによって支持され、ルーメンを画定する注射ニードルとを有する。前記注射ニードルの前記ルーメンが、前記リザーバと流体連通するように配置されるように構成される。前記注射ニードルは、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる初期位置から、前記注射ニードルを前記ニードル開口部を通して延在させる使用位置まで、さらには、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させて前記ニードルの前記ルーメンを前記ハウジングの一部分によって遮断する実質的な遮蔽位置まで、移行可能である。
【0005】
前記デバイスがまた、傾斜セクションおよび水準(lebel)セクションを有する第1のランプ部分を有するニードルアクチュエータを有することができ、前記水準セクションが前記ハウジングの前記底部表面に概して平行である。前記ニードルキャリアは、前記第1のランプ部分の前記傾斜セクションに接触して前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させるための第1の係合部を有することができる。また、前記ニードルアクチュエータは、傾斜セクションと、前記ハウジングの前記底部表面に概して平行である水準セクションとを有する第2のランプ部分を有することができ、前記ニードルキャリアは、前記第2のランプ部分の前記傾斜セクションに接触して前記注射ニードルを前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させるための第2の係合部を有することができる。前記デバイスは前記ハウジング内に配置されるパッドを有することができ、ここでは、前記注射ニードルが前記遮蔽位置にあるときに前記注射ニードルの前記ルーメンは前記パッドによって遮断される。前記ニードルアクチュエータは、前記注射ニードルを前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させるときに前記注射ニードルを前記パッド内へと駆動させるように構成され得る。前記遮蔽位置では、前記パッドの少なくとも一部分が前記ニードルアクチュエータによって受けられ得る。
【0006】
前記リザーバは、前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させた後で流体を前記注射ニードルに自動で供給するように構成され得る。ニードルアクチュエータは、前記ニードルキャリアに係合して前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで、さらには前記遮蔽位置まで移行させるように構成され得る。前記リザーバはシリンジ組立体を備えることができ、シリンジ組立体は、中に流体を含有するためのシリンジバレルと、前記シリンジバレル内に配置されるストッパと、前記シリンジバレル内で前記ストッパを前進させて、そこから前記流体を吐出するように構成されるプランジャとを有する。前記デバイスは、前記注射ニードルが前記初期位置にあるときに前記プランジャに係合されるプランジャストップを有することができ、ここでは、前記プランジャストップは、前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させるときに前記ニードルキャリアに係合して前記プランジャから前記プランジャストップを解放するように構成される。前記デバイスは、前記リザーバから所定量の流体が分注されるまで前記使用位置から前記遮蔽位置までの前記注射ニードルの移動を制限するように構成されるニードルストップを有することができる。前記ニードルストップは、前記注射ニードルが前記使用位置にあるときに前記ニードルアクチュエータおよび前記プランジャに係合する回転可能ボディを有することができ、前記注射ニードルを前記使用位置から前記遮蔽位置まで移行させるときに前記ニードルストップが前記プランジャから切り離される。
【0007】
また、前記デバイスは作動ボタンを有することができ、ここでは、前記作動ボタンを配置することで、前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで移行させることが可能となる。前記デバイスは、前記注射ニードルが前記初期位置、前記使用位置および前記遮蔽位置にあることを指示するためのインジケータを装備することができる。
【0008】
別の実施形態では、流体を送達するためのデバイスは、内部スペースを画定し、患者に接触するように構成される底部表面を有する、ハウジングを有する。前記底部表面はニードル開口部を画定する。前記デバイスは、中に流体を含有するための、前記ハウジングの前記内部スペース内に配置されるリザーバと、前記ハウジング内に配置されるニードルキャリアと、前記ニードルキャリアによって支持され、ルーメンを画定する注射ニードルとをさらに有する。前記注射ニードルの前記ルーメンは前記リザーバと流体連通するように配置されるように構成され、ここでは、前記注射ニードルは、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる初期位置から、前記注射ニードルを前記ニードル開口部を通して延在させる使用位置まで、さらには、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる実質的な遮蔽位置まで、移行可能である。前記デバイスはまた、前記注射ニードルが前記初期位置、前記使用位置および前記遮蔽位置にあることを指示するためのインジケータを有する。
【0009】
前記ハウジングは少なくとも1つのインジケータレンズを有することができ、前記インジケータは前記インジケータレンズを介して前記ハウジングの外部から可視となる。前記インジケータは、前記注射ニードルの位置の視覚的および触覚的指示を提供することができる。前記インジケータはインジケータポストを有することができ、前記ハウジングはインジケータ開口部を画定する。前記インジケータポストは、前記注射ニードルが前記初期位置および前記使用位置にあるときに前記ハウジング内に配置され、前記注射ニードルが前記遮蔽位置にあるときに前記インジケータ開口部を通って延在する。
【0010】
別の実施形態では、流体を送達するためのデバイスは、内部スペースを画定し、患者に接触するように構成される底部表面を有する、ハウジングを有する。前記底部表面はニードル開口部を画定する。前記デバイスは、中に流体を含有するための、前記ハウジングの前記内部スペース内に配置されるリザーバと、前記ハウジング内に配置されるニードルキャリアと、作動部材と、前記ニードルキャリアによって支持され、ルーメンを画定する注射ニードルとをさらに有する。前記注射ニードルの前記ルーメンは、前記リザーバと流体連通するように配置されるように構成される。前記作動部材を配置することにより、前記注射ニードルは、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる初期位置から、前記注射ニードルを前記ニードル開口部を通して延在させる使用位置まで、さらには、前記注射ニードルを前記ハウジング内に配置させる実質的な遮蔽位置まで、移行させられる。
【0011】
前記デバイスは、前記ニードルキャリアに係合して前記注射ニードルを前記初期位置から前記使用位置まで、さらには前記遮蔽位置まで移行させるように構成されるニードルアクチュエータを有することができる。前記デバイスはまた、前記リザーバから所定量の流体が分注されるまで前記使用位置から前記遮蔽位置までの前記注射ニードルの移動を制限するように構成されるニードルストップを有することができる。前記作動部材は、前記注射ニードルが前記初期位置にあるときに前記ニードルアクチュエータに係合することができる。前記ニードルストップは、前記注射ニードルが前記使用位置にあるときに前記ニードルアクチュエータに係合され得、前記ニードルストップは、前記注射ニードルが前記遮蔽位置にあるときに前記ニードルアクチュエータから切り離され得る。
【0012】
全体を通して同様の部品が同様の参照符号で示される添付図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより、本発明の別の細部および利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による、注射により流体を患者の中に送達するためのデバイスを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態による図1のデバイスを示す正面図である。
図3】本発明の実施形態による図1のデバイスを示す右面図である。
図4】本発明の実施形態による図1のデバイスを示す背面図である。
図5】本発明の実施形態による図1のデバイスを示す上面図である。
図6】本発明の実施形態による図1のデバイスを示す左面図である。
図7】本発明の実施形態による図1のデバイスを示す底面図である。
図8】本発明の実施形態による、ニードルキャップが取り外された状態を示している図1のデバイスを示す底面図である。
図9】本発明の実施形態による、トップカバーが取り外された状態を示している図1のデバイスを示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態による、作動ボタンの詳細を示している図1のデバイスを示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態による作動ボタンを示す斜視図である。
図12】本発明の実施形態による、ハウジングの底部分が取り外された状態を示している図1のデバイスを示す底面図である。
図13】本発明の実施形態による、プランジャストップの第1の位置を示している図1のデバイスを示す斜視図である。
図14】本発明の実施形態による、プランジャストップの第2の位置を示している図1のデバイスを示す拡大斜視図である。
図15】本発明の実施形態による、プランジャストップの第2の位置を示している図1のデバイスを示す部分斜視図である。
図16】本発明の実施形態による、図10の線16−16に沿う断面図である。
図17】本発明の実施形態によるストッパを示す斜視図である。
図18】本発明の実施形態によるストッパを示す斜視図である。
図19】本発明の実施形態による、ニードルストップとニードルアクチュエータとの間の係合を示している図1のデバイスを示す上面図である。
図20】本発明の実施形態による、ニードルストップとプランジャとの間の係合を示している図1のデバイスを示す部分底面図である。
図21】本発明の実施形態による、ニードルアクチュエータが取り外されており、プランジャが延在位置にある状態を示している、図1のデバイスを示す部分斜視図である。
図22】本発明の実施形態による、ニードルストップの回転位置を示している図1のデバイスを示す部分上面図である。
図23】本発明の実施形態による、注射器ニードルの使用位置を示している図1のデバイスを示す上面斜視図である。
図24】本発明の実施形態による、注射器ニードルの使用位置を示している図1のデバイスを示す底面斜視図である。
図25】本発明の実施形態による、使用位置から遮蔽位置まで移行している注射器ニードルを示している、図1のデバイスを示す斜視図である。
図26】本発明の実施形態による、遮蔽位置にある注射器ニードルを示している、図1のデバイスを示す斜視図である。
図27】本発明の実施形態による、注射器ニードルが遮蔽位置にあり、ニードルアクチュエータが取り外された状態を示している、図1のデバイスを示す部分斜視図である。
図28】本発明の実施形態による、遮蔽位置にある注射器ニードルを示している、図1のデバイスを示す底面図である。
図29】本発明の実施形態によるニードルアクチュエータを示す断面図である。
図30】本発明の実施形態による、注射ニードルを使用位置まで移動させる直前のニードルキャリアの予荷重位置を示している、ニードルキャリアを示す概略図である。
図31】本発明の実施形態による、注射ニードルを遮蔽位置まで移動させる直前のニードルキャリアの予荷重位置を示している、ニードルキャリアを示す概略図である。
図32】本発明の実施形態による、ニードルキャリアが取り外された状態を示している、図1のデバイスを示す上面図である。
図33】本発明の別の実施形態による、注射により流体を患者の中に送達するためのデバイスを示す斜視図である。
図34】本発明の別の実施形態による、第2の位置にあるボタンロックを示している、図33のデバイスを示す斜視図である。
図35】本発明の別の実施形態による、トップカバーが取り外された状態を示している、図33のデバイスを示す斜視図である。
図36】本発明の別の実施形態による、注射サイクルの終了時のデバイスを示している、図33のデバイスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では説明のために、空間配向的用語(spatial orientation term)が使用される場合、添付図で方向付けられるかまたは以下の詳細な説明で説明される参照の実施形態に関連するものとする。しかし、以下で説明される実施形態が多くの代替的変更形態および代替的実施形態をとることができることを理解されたい。また、添付図面に示されて本明細書で説明される特定のデバイスが単に例示であり、限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0015】
図1図16を参照するに、注射により患者の中に流体を送達するためのデバイス10が示される。デバイス10は、概して、第1の端部14および第2の端部16を有するハウジング12を有する。ハウジング12は、内部空間22を画定する底部分18およびトップカバー20を有する。デバイスは、ハウジング12によって収容される、リザーバ26と、注射ニードル28と、ニードルキャリア30と、ニードルアクチュエータ32と、プランジャストップ34と、ニードルストップ36と、作動ボタン38とをさらに有する。デバイス10は薬剤または薬剤を患者の中に注射するのに利用され、自分での投与のために患者の皮膚上に設置されるなどして患者の皮膚に係合されるように構成される。1または複数の薬学的活性試薬を含めた、例えば液体またはスラリなどの任意の形態の薬剤がデバイス10によって投与され得る。
【0016】
図1図9を参照するに、ハウジング12のトップカバー20は、リザーバ開口部44と、ボタン開口部46と、第1のインジケータレンズ48と、第2のインジケータレンズ50と、第3のインジケータレンズ52とを有する。リザーバ開口部44は、トップカバー20を取り外すことなくリザーバ26を目視検査するのを可能にする。ボタン開口部46は作動ボタン38を受け、作動ボタン38の一部分が開口部46を通って延在する。第1のインジケータレンズ48、第2のインジケータレンズ50および第3のインジケータレンズ52は、デバイス10の状態を指示するためにニードルアクチュエータ32の一部分を目視検査するのを可能にすることができる。具体的には、第1のインジケータレンズ48、第2のインジケータレンズ50および第3のインジケータレンズ52は、本明細書で説明されるようにハウジング12の内部空間22を目視検査するのを可能にするために透明材料から作られてよい。ハウジング12の底部分18は、ニードル開口部56を画定する底部表面54を有する。底部表面54は、患者の目標表面(図示せず)と接触するように配置されるように構成される。図7に示されるように、ニードルキャップ58は、図8に示されるように使用前に注射ニードル28を遮蔽するために、初期の使用前位置でニードル開口部56によって受けられる。
【0017】
図10図12を参照するに、作動ボタン38は、ユーザに係合されるための頂表面62を有するボディ60を有する。ボディ60の頂表面62は、ハウジング12のボタン開口部46を通って延在する。一対のタブ部材64がボディ60から外側に延在し、ハウジング12のトップカバー20によって受けられる。作動ボタン38のボディ60は、ニードルアクチュエータ32に向かって延在するロック部材66を有する。作動ボタン38はハウジング12内で移動可能であり、ニードルアクチュエータ32の移動を制限するように構成される。具体的には、作動ボタン38が図10に示される位置にあるとき、作動ボタン38のロック部材66がニードルアクチュエータ32に干渉係合され、それによりニードルアクチュエータ32が前方に移動することが制限される。作動ボタン38を下に押すことによりロック部材66がニードルアクチュエータ32から解放され、後でより詳細に考察するようにデバイス10の動作が開始される。
【0018】
図13図15を参照するに、プランジャストップ34は、アタッチメント部分72と、プランジャ係合部分74と、アクチュエータタブ76とを有するボディ70を有する。アタッチメント部分72は、ハウジング12の底部分18に回転可能に固定されるように構成される。プランジャ係合部分74はアタッチメント部分72から延在し、後でより詳細に考察されるようにリザーバ26に係合されるように構成される。アクチュエータタブ76がアタッチメント部分72から延在し、ニードルアクチェエータ32の対応する形状の部分に係合されるように構成される傾斜平坦表面78を有する。プランジャストップ34が、図13に示される第1の部分と、図14および図15に示される第2の部分とを有する。
【0019】
図13および図16図18を参照するに、リザーバ26は、シリンジバレル84と、バルブストッパ86と、プランジャ88と、フィルストッパ90とを有するシリンジ組立体82として具体化されるが、別の適切なリザーバが利用されてもよい。シリンジ組立体82はハウジング12内に配置されてハウジング12の長手方向軸に沿うように設置されるように構成される。シリンジバレル84が中に流体を受けるための内部スペース92を画定し、さらに、バルブストッパ86およびフィルストッパ90を受ける。プランジャ88は第1の端部94および第2の端部96を有し、プランジャ88の第2の端部96がバルブストッパ86に係合される。バルブ部材98はバルブストッパ86によって受けられ、開位置と閉位置との間で移動可能となる。バルブストッパ86は、入口104と、概してバルブストッパ86を通って延在する出口106とを有する通路102を有する。バルブ部材98が開位置にあるとき、バルブストッパ86の通路102がシリンジバレル84の内部スペース92と流体連通する。チューブ(図示せず)が通路102の出口106から注射ニードル28まで延在する。シリンジ組立体82が、バルブストッパ86をフィルストッパ90の方に付勢するように構成されるプランジャばね108をさらに有し、それにより、シリンジバレル84内の流体がバルブストッパ86の通路102を通って変位するようになる。プランジャばね108の上にはプランジャガード110が配置される。プランジャ88の第1の端部94は、プランジャストップ34のプランジャ係合部分74に係合されるように構成されるノッチ112を画定する。プランジャ88がまた、シリンジバレル84に概して平行に延在し、シリンジバレル84を基準としたプランジャ88の所定の位置に基づいてニードルストップ36に係合されるように構成される細長アーム114を有する。プランジャ88は、シリンジバレル84から薬剤または流体を分注するためにバルブストッパ86をフィルストッパ90の方向に移動させるように構成される。
【0020】
図6および図7を参照するに、シリンジ組立体82はまた、フィルストッパ90を密閉して取り囲むフィルカバー116を有する。フィルカバー116は、デバイス10の組み立て時にフィルストッパ90にアクセスするのを可能にする。フィルカバー116は、デバイス10のユーザによって取り外し可能とならずにハウジング12に固定されるように構成される。
【0021】
図19図22を参照するに、ニードルストップ36は、ハウジング12の底部分18から上方に延在するピン124を受けるための中央開口部122を画定するボディ120を有する。ニードルストップ36のボディ120はピン124を中心として回転可能であり、アクチュエータ表面126およびプランジャ表面128を有する。アクチュエータ表面126およびプランジャ表面128は、それぞれ、ニードルアクチュエータ32およびプランジャ88に係合されるように構成される。プランジャ表面128は持ち上げられてアクチェエータ表面126から上方に配置される。
【0022】
図23図29および図32を参照するに、ニードルアクチェエータ32は、第1の端部134および第2の端部136を備える細長ボディ132を有する。ニードルアクチェエータ32のボディ132は、第1の端部134と第2の端部136との間を延在する一対の側壁138を有する。アクチュエータ32のボディ132は、ニードルキャリア30の一部分を受けるように構成される内部スペース140を画定する。第1のランプ部分142および第2のランプ部分144が側壁138のうちの1つから内部スペース140に向かって内側に延在している。第1のランプ部分142は下向き傾斜セクション146および水準セクション148を有する。第1のランプ部分142の下向き傾斜セクション146は、ハウジング12の底部分18に向かうように、さらには、ニードルアクチュエータ32の第2の端部136に向かうように延在する。水準セクション148はハウジング12の底部分18の底部表面54に概して平行であり、ニードルアクチュエータ32の端部134、136の中間に配置される。第2のランプ部分144は、ハウジング12の底部分18から離れてニードルアクチュエータ32の第2の端部136の方に延在する上向き傾斜セクション150を有する。第2のランプ部分144はまた、ハウジング12の底部分18の底部表面54に概して平行な水準セクション151を有する。ニードルアクチュエータ32の側壁138の各々が第1のランプ部分142および第2のランプ部分144を有するが、側壁138の1つのみがランプ部分142、144を装備してもよい。また、ニードルアクチュエータ32がプランジャ係合タブ152およびインジケータタブ154を有する。プランジャ係合タブ152は、プランジャストップ34のアクチュエータタブ76に係合されるように構成される傾斜平坦部分156を有する。プランジャ係合タブ152がニードルアクチュエータ32のボディ132の第1の端部134に隣接するように配置される。インジケータタブ154は、第1のインジケータカラー160および第2のインジケータカラー162を有する平坦表面158を有する。インジケータタブ154がニードルアクチュエータ32のボディ132の第1の端部134の方を向くように配置され、側壁138のうちの1つに対して実質的に垂直となるように構成される。
【0023】
図12図23図29および図32を参照するに、ニードルアクチュエータ32は、側壁138の1つに対して実質的に垂直に延在し、ニードルアクチュエータ32の第1の端部134と第2の端部136との中間に配置されるボタン係合部164をさらに有している。ボタン係合部164は、作動ボタン38のロック部材66に係合されるように構成される。作動ボタン38が下方に移動するとき、ニードルアクチュエータ32のボタン係合部164が作動ボタン38のロック部材66との係合から解放されるように構成される。図12に示されるように、ニードルアクチュエータ32の底部165が底部開口部166を画定する。さらに、ニードルアクチュエータ32はニードルアクチュエータ32の内部スペース140内に配置されるニードルばね168を有し、ニードルアクチュエータ32をハウジング12の第1の端部14の方に前方に付勢するように構成される。ニードルアクチュエータ32はまた、ニードルアクチュエータ32の内部スペース140内に配置されてニードルアクチュエータ32の底部表面172上に位置するパッド170を有する。パッド170はゴム材料から構成されるが、別の適切な材料が利用されてもよい。したがって、ニードルアクチュエータ32が、ハウジング12の第2の端部16に隣接するように配置される第1の部分と、ハウジング12の第1の端部14に隣接するように配置される第2の部分とを有し、ニードルばね168がニードルアクチュエータ32を第1の部分から第2の部分まで移動させるように構成される。
【0024】
図9図10および図12を参照するに、ニードルキャリア30は、第1の端部182および第2の端部184を有する細長ボディ180を有する。ニードルキャリア30のボディ180が、ハウジング12の底部分18に固定されるように構成されるアタッチメント部材186をボディ180の第1の端部182に有する。ニードルキャリア30が、アタッチメント部材186から概して片持ちとなり、ハウジング12の第1の端部14からハウジング12の第2の端部16に向かって延在するように構成される。ニードルキャリア30の一部分がニードルアクチュエータ32によって受けられて係合されるように構成される。ニードルキャリア30はまた、ニードルキャリア30のボディ180の端部182と184との間に配置される第1の係合部分188と、ニードルキャリア30のボディ180の第2の端部184に隣接するように配置される第2の係合部190とを有する。第1の係合部188および第2の係合部190がボディ180から外側に径方向に延在し、ニードルキャリア30の長手方向軸に対して実質的に垂直である。ニードルキャリア30は、注射ニードル28を受けて係合される概略円筒形ニードルレシーバ192をさらに有する。ニードルキャリア30が、シリンジ組立体82のバルブストッパ86の出口106からの管材料(図示せず)を受けるように構成される入口196を有する通路194を画定する。注射ニードル28のルーメン(図示せず)は、通路194およびバルブストッパ86からの管材料と流体連通する。ニードルキャリア30は概して可撓性または半剛性であり、それにより、ニードルキャリア30が非付勢状態から曲げられたり、曲げられた後で非付勢状態に戻ったりすることが可能となる。
【0025】
図9図32を参照するに、デバイス10を組み立てるとき、デバイス10が初期の使用前状態となる。後でより詳細に考察するように、デバイス10は使用前状態と、使用状態と、完了状態とを有する。初期状態で、シリンジ組立体82がハウジング12の底部分18によって受けられ、概して、ハウジング12の第1の端部14からハウジング12の第2の端部16まで延在する。薬剤がシリンジバレル84内に入れられ、プランジャ88が図9に示されるように完全な後退位置にある。プランジャばね108がハウジング12の底部分18およびプランジャ88に係合され、それにより、プランジャ88およびバルブストッパ86がフィルストッパ90の方に付勢される。バルブストッパ86内に構成されるバルブ部材98が閉位置にある。プランジャストップ34のアタッチメント部分72がハウジング12の底部分18に固定され、ハウジング12の底部分18を基準としてプランジャストップ34を回転させるのを可能にする。プランジャストップ34のプランジャ係合部分74がプランジャ88のノッチ112に係合され、それにより、プランジャ88がフィルストッパ90に向かって移動することが制限される。作動ボタン38が上昇位置にあり、ボディ60の頂表面62がハウジング12のボタン開口部46を通って延在する。ロック部材66がニードルアクチュエータ32のボタン係合部164に係合され、ニードルアクチュエータ32の移動を防止する。ニードルアクチュエータ32がハウジング12の第2の端部16に隣接するように配置され、ニードルアクチュエータ32の第2の端部136がハウジング12の第2の端部16に当接される。ニードルばね168がニードルアクチュエータ32の内部スペース140内に配置され、ばね168の第1の端部200がニードルアクチェエータ32の第1の端部134に係合され、ニードルばね168の第2の端部198がハウジング12の底部分18上のばねシート202に係合される。したがって、ニードルアクチュエータ32がニードルばね168によって付勢され、ボタン係合部164を作動ボタン38のロック部材66から解放するときにハウジング12の第2の端部16からハウジング12の第1の端部14までニードルアクチュエータ32を移動させるように構成される。
【0026】
シリンジバレル84が任意の適切な手法によって薬剤で充填され得る。一実施形態では、フィルカバー116およびフィルストッパ90がハウジング12から取り外されると、シリンジバレル84が薬剤で充填される。シリンジバレル84の内径よりわずかに小さい直径を有するガイドチューブ(図示せず)が、フィルストッパ90を後退させて定位置に配置する前に薬剤のすぐ上までフィルストッパ90を押し進めて配置するのに使用される。別の手法では、シリンジバレル84の頂部を係合させてシリンジバレル84を予め設定される真空まで排気するための機械または装置を使用する。予め設定される真空に達すると、フィルストッパ90がシリンジバレル84内へと下方に押圧され、真空が解放され、大気圧によりフィルストッパ90が定位置へと引っ張られ、空隙が排除される。シリンジバレル84を充填するための別の手法では、フィルストッパ90の外側に沿う一部片のワイヤまたはストリングを利用し、この間、フィルストッパ90がシリンジバレル84内に配置される。ワイヤまたはストリングが密閉状態を一時的に中断し、それにより、フィルストッパ90が定位置まで押圧されて、フィルストッパ90と薬剤との間から空気が逃げる。
【0027】
デバイス10の初期の使用前状態では、ニードルキャリア30が非付勢位置を有し、ニードルキャリア30の細長ボディ180が実質的に平坦である。ニードルキャリア30のアタッチメント部材186が、ハウジング12の底部分18から上方に延在するキャリアシート204に回転可能に固定される。ニードルキャリア30の一部分がニードルアクチュエータ32内に配置され、ニードルキャリア30の細長ボディ180がニードルアクチュエータ32に実質的に平行に延在する。ニードルキャリア30の第1の係合部188がニードルアクチュエータ32の第1のランプ部分142に隣接するように配置される。ニードルアクチュエータ32のプランジャ係合タブ152がプランジャストップ34のアクチュエータタブ76に隣接するように配置される。さらに、ニードルアクチュエータ32のインジケータタブ154が、デバイス10の使用準備が整っていることを指示するためにハウジング12の第1のインジケータレンズ48を通して第1のインジケータカラー160を可視とするように位置決めされる。
【0028】
図14および図15を参照するに、ハウジング12の底部分18内のニードル開口部56からニードルキャップ58を取り外して作動ボタン38を押し下げてハウジング12内で作動ボタン38をさらに移動させると、デバイス10が使用前位置から使用位置まで移行する。作動ボタン38を押圧した後、作動ボタン38のロック部材66がニードルアクチュエータ32のボタン係合部164から解放され、それにより、ニードルアクチュエータ32がハウジング12の第1の端部14に向かって前方に移動することが可能となる。ニードルアクチュエータ32が図14に示されるように前方に移動し、ニードルアクチュエータ32のプランジャ係合タブ152がプランジャストップ34のアクチュエータタブ76に係合され、それにより、プランジャストップ34が図15に示される位置まで下方に回転する。プランジャストップ34が十分な距離下方に回転すると、プランジャストップ34のプランジャ係合部分74がプランジャ88のノッチ112から解放され、それにより、プランジャ88がプランジャばね108によりフィルストッパ90に向かって移動することが可能となる。プランジャ88が移動すると、バルブストッパ86内のバルブ部材98が開位置まで移動させられ、注射ニードル28がシリンジバレル84と流体連通する。具体的には、使用前位置では、プランジャ88はバルブストッパ86内で所定の距離だけ移動可能である。プランジャ88がプランジャストップ34から切り離されるとプランジャ88がバルブストッパ86内で移動し、バルブ部材98が開位置まで移動させられる。バルブストッパ86がフィルストッパ90に向かって移動すると、シリンジバレル84内の流体が、管材料(図示せず)を通るバルブストッパ86内の通路102と、注射ニードル28のルーメンとを通って移動するようになる。
【0029】
図23および図24を参照するに、デバイス10が使用前状態から使用状態へと移行すると、注射ニードル28が使用位置まで移動し、ここでは、注射ニードル28がハウジング12の底部分18内のニードル開口部56を通って延在する。使用時、ハウジング12の底部分18の底表面54が患者の身体の目標表面に接触するように配置され、注射ニードル28が患者の目標表面を貫通する。上で考察したように、注射ニードル28が初期位置から使用位置まで移動すると、シリンジバレル84内の流体が、患者に注入されるために注射ニードル28のルーメンに自動で供給される。
【0030】
図29および図30を参照するに、注射ニードル28が初期位置から使用位置まで移行するとき、ニードルキャリア30が予荷重を受け、ニードルキャリア30が下方にスナップされ、注射ニードル28により患者の身体の目標領域が迅速に貫通される。具体的には、ニードルアクチュエータ32がハウジング12の第1の端部14に向かって前方に移動すると、ニードルキャリア30の第1の係合部188が第1のランプ部分142の傾斜セクション146の底部に係合され、ニードルキャリア30の第2の係合部190が第1のランプ部分142の水準セクション148の頂部に係合される。ニードルアクチュエータ32がさらに移動すると、ニードルキャリア30の第1の端部182と第2の端部184との間の中間部分が図30に示されるように曲げられ、ニードルキャリア30の第2の端部184が第1のランプ部分142の水準セクション148によって支持される。ニードルアクチュエータ32が継続して移動すると、ニードルキャリア30の第2の係合部190が第1のランプ部分142の水準セクション148を超えて延在するようになり、それにより、ニードルキャリア30の第2の端部184が解放され、ニードルキャリア30および注射ニードル28が下方にスナップされる。
【0031】
図23を参照するに、デバイス10が使用状態にあり、注射ニードル28が使用位置にあるとき、ニードルキャリア30がハウジング12の第1の端部14と第2の端部16との間に配置される。インジケータタブ154の第1のインジケータカラー160がハウジング12の第2のインジケータレンズ50の下方に配置され、それにより、デバイス10が使用状態にあることが指示される。
【0032】
図19および図20を参照するに、所定量の薬剤がシリンジバレル84から分注されるまでデバイス10が使用状態にあるとき、ニードルアクチュエータ32がさらに移動することが制限される。具体的には、ニードルストップ36のアクチュエータ表面126がニードルアクチュエータ32に係合され、プランジャ表面128がプランジャ88の細長アーム114に係合される。ニードルアクチュエータ32がニードルストップ36に係合されているとき、ニードルストップ36のプランジャ表面128がプランジャ88の細長アーム114に干渉することにより、ニードルストップ36が回転することが制限される。バルブストッパ86がフィルストッパ90に係合されるときなどでプランジャ88がさらに移動すると、ニードルストップ36のプランジャ表面128がプランジャ88の細長アーム114との干渉から解放され、それにより、ニードルアクチュエータ32がニードルストップ36を回転させてニードルアクチュエータ32をハウジング12の第1の端部14の方に継続して移動させることが可能となる。
【0033】
図21図22および図25図28を参照するに、ニードルアクチュエータ32がニードルストップ36を通過してハウジング12の第1の端部14の方に移動すると、デバイス10が使用状態から完了状態まで移行する。上で考察したように、所定の時間後にプランジャ88がバルブストッパ86をフィルストッパ90に係合させるように移動させると、ニードルストップ36が回転し、それにより、ニードルアクチュエータ32がハウジング12の第1の端部14まで移動することが可能となり、ニードルアクチェエータ32の第1の端部134が図26に示されるようにハウジング12の第1の端部14に当接される。ニードルストップ36が回転することおよびプランジャ88の細長アーム114が解放されることが図21および図22に示されている。注射ニードル28が使用位置から遮蔽位置まで移行され、ここでは、注射ニードル28のルーメンが遮断され、注射ニードル28がハウジング12内に配置される。具体的には、遮蔽位置では、注射ニードル28がニードルアクチュエータ32内に配置されるパッド170に係合され、それにより注射ニードル28のルーメンが遮断され、流体が注射ニードル28から外に出ることが防止される。デバイスの完了状態では、ニードルアクチュエータ32のインジケータタブ154の第2のインジケータカラー162がハウジング12の第3のインジケータレンズ52の下方に配置され、それによりデバイス10の完了状態が指示される。さらに、図28に示されるように、ニードルアクチュエータ32の底部165がハウジング12の底部分18内のニードル開口部56を閉じる。
【0034】
図25図29および図31を参照するに、注射ニードル28が使用位置から遮蔽位置まで移行するとき、ニードルキャリア30が予荷重を受け、それによりニードルキャリア30が下方にスナップされてニードルアクチュエータ32内に配置されるパッド170に係合される。ニードルアクチュエータ32がハウジング12の第1の端部14に向かって前方に移動すると、ニードルキャリア30の第1の係合部188が第1のランプ部分142の水準セクション148の底部に係合され、ニードルキャリア30の第2の係合部190が第2のランプ部分144の傾斜セクション150の頂部に係合される。ニードルアクチュエータ32がさらに移動すると、第2の係合部190が第2のランプ部分144の傾斜セクション150に沿って前進して、第1の係合部188が第1のランプ部分142の水準セクション148に沿って摺動することにより、ニードルキャリア30の第2の端部184が上方に曲げられる。ニードルアクチュエータ32がハウジング12の第1の端部14に向かって継続して移動すると、ニードルキャリア30の第2の係合部190が第2のランプ部分144の水準セクション151を超えて延在するようになり、それにより、ニードルキャリア30および注射ニードル28がパッド170内まで下方にスナップされる。注射ニードル28がパッド170に係合された後、注射ニードル28のルーメンがパッド170によって遮断され、それにより、デバイス10が完了状態にあるときに流体がデバイス10から漏洩することが防止される。
【0035】
図33図36を参照するに、注射により患者の中に流体を送達するためのデバイス220の第2の実施形態が示される。デバイス220は、後で考察する差異を除いて図1図32に示されるデバイス10と同様である。同様の要素には同様の参照符号が使用される。第1のインジケータレンズ48、第2のインジケータレンズ50および第3のインジケータレンズ52が提供される代わりに、図33図36に示されるデバイス220は、ハウジング12のトップカバー20から外側に延在するインジケータレンズ222を有する。さらに、ニードルアクチュエータ32は、ニードルアクチュエータ32のボディ132から上方に延在する上昇したインジケータタブ224を有する。ニードルアクチュエータ32の上昇したインジケータタブ224がインジケータレンズ222内まで延在し、インジケータレンズ222によって受けられる。ニードルアクチュエータ32はまた、ニードルアクチュエータ32の第1の端部134から外側に延在するインジケータポスト226を有する。ハウジング12の第1の端部14は、インジケータポスト226を受けるように構成されるインジケータ開口部228を画定する。デバイス220が、使用前状態、使用状態および完了状態から移動させられると、ニードルアクチュエータ32上のインジケータタブ224がインジケータレンズ222内で移動し、それによりデバイス220の状態が指示される。さらに、デバイス220が完了状態にあるとき、ニードルアクチュエータ32のインジケータポスト226がハウジング12のインジケータ開口部228を通って突出し、それにより、デバイス220の完了状態の視覚的および触覚的フィードバックが提供される。この実施形態のインジケータタブ224とインジケータレンズ222との構成により、第1の実施形態のインジケータ構成と比較してより大きい表示面積でインジケータタブ224を見ることが可能となる。
【0036】
図33図36を再び参照するに、第2の実施形態のデバイス220はまた、第1の部分232および第2の部分234を有する2部片の作動ボタン230を有する。第1の部分232は第2の部分234を基準として移動可能であり、ロック位置(図34に示される)と、使用位置(図33に示される)とを有する。第1の部分232がロック位置にあるとき、突出部236がハウジング12のトップカバー20内のボタン開口部46に干渉されるように径方向外側に延在し、それにより、作動ボタン38が押し下げられることが防止される。作動ボタン230の第1の部分232が使用位置まで移動させられると、突出部236が第2の部分234によって受けられ、それにより、作動ボタン230を押し下げて注射プロセスを開始することが可能となる。しかし、作動ボタン230は、別の形では、第1の実施形態に関連させて上で説明した手法と同様の手法で動作する。このように、2部片の作動ボタン230により、デバイスが誤って動作するのを防止することを目的として作動ボタンをロックすることが可能となる。
【0037】
上の詳細な説明で複数の実施形態を説明してきたが、当業者であれば本発明の範囲および精神から逸脱することなくこれらの実施形態に対して修正形態および変形形態を作ることができる。したがって、上記の説明は例示であることを意図され、限定的であることを意図されない。上で説明される本発明は添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等の意味および範囲内にある本発明に対するいかなる変更形態も本発明の範囲に含まれる。
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