(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高さ測定工程では、前記溶湯の湯面の所定領域内の複数箇所において湯面高さを測定し、得られたデータに基づいて前記溶湯に係る湯面高さを決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶湯供給量の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、
図1〜8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0026】
以下では、始めに、
図1を用いて、本実施形態における溶湯供給量の制御方法を実施する鋳造機の一例としての鋳造機100の全体構成を説明する。次いで、鋳造機100が備える円弧取鍋3から出湯する溶湯の供給量を算出する理論について説明し、その後、本実施形態における溶湯供給量の制御方法について説明する。
【0027】
<鋳造機>
図1の(a)は、本実施形態における溶湯供給量の制御方法を実施する鋳造機100の構成を示す断面図であり、(b)は円弧取鍋3の構成を示す斜視図である。具体的に、
図1の(a)は鋳造開始前の時点の鋳造機100の様子を示している。
【0028】
図1の(a)に示す鋳造機100は、定置取鍋1から溶湯2が供給される円弧取鍋(取鍋)3、モータ(回転機構)4、シュート5、トラフ6、鋳造部7、およびトラフ移動部8を備えている。円弧取鍋3は、取鍋本体9およびノズル(注湯口)10を備えている。また、鋳造機100は、円弧取鍋3の上方にレーザ距離計(高さ測定部)20を備えている。レーザ距離計20およびモータ4は、鋳造機100の各部の動作を制御する制御装置(
図1では図示せず)に接続されている。このレーザ距離計20および制御装置について、詳しくは後述する。
【0029】
鋳造機100は、概略的には、溶湯2が貯留された円弧取鍋3を回転させ、溶湯2を円弧取鍋3に設けられたノズル10からシュート5に供給する溶湯供給方式の装置である。より詳細には、鋳造機100は、溶湯2が円弧取鍋3からシュート5を介してトラフ6に供給され、トラフ6を流れた溶湯2が鋳造部7に供給され遠心鋳造されることにより金属管(例えば、ダクタイル鋳鉄管)を製造する遠心鋳造機である。本実施形態は、遠心鋳造方法にも関する。
【0030】
取鍋本体9は、溶湯2を貯留するものである。取鍋本体9は、第1断面(取鍋本体から外部への注湯方向と、鉛直方向とで規定される平面と平行な方向における断面、すなわち、紙面と同じ面)形状が中心3cを中心とする第1円弧である底面部9bを備えている。換言すれば、取鍋本体9の第1断面視は、中心3cを中心とする扇形である。取鍋本体9は、モータ4により、中心3cを回動軸として、取鍋本体9から外部への注湯方向と、鉛直方向とで規定される平面内で回動される。なお、底面部9bは、該回動軸に沿って(紙面表裏方向に)延伸するように設けられている。
【0031】
ここで、
図1の(b)を用いて、円弧取鍋3が備える取鍋本体9の具体的形状の一例について説明する。
図1の(b)に示すように、取鍋本体9は、底面部9bと、側面部9cとを備えている。側面部9cは、上記回動軸に沿って延伸する底面部9bの両端にそれぞれ設けられており、底面部9bと2つの側面部9cとによって溶湯2を貯留する空間が形成されるようになっている。また、側面部9cは、例えば、円弧取鍋3を上記回動軸に沿う方向から見た場合に、外縁が底面部9bと同じ円弧形状の、上記中心3cを中心とする扇形の形状である。
【0032】
上記回動軸に沿う方向における底面部9bの幅Z3は、上記第1円弧を有する円caの直径dca未満であることが好ましい。換言すれば、該底面部9bの幅は、取鍋本体9の扇形である側面部9cの幅の最大値未満であることが好ましい。この場合、円弧取鍋3の回転に伴う注湯量の変化を小さくすることが可能となるため、溶湯2の注湯量の制御が容易となる。限定されないが、例えば、取鍋本体9の外壁の半径(円caの半径に相当)は250mmであってよく、取鍋本体9の幅(回動軸に沿う方向における底面部9bの幅Z3に相当)は150mmであってよい。
【0033】
なお、取鍋本体9の側面部9cの形状は、上述の扇形に限定されない。側面部9cは、上記回動軸に沿う方向から見た場合の形状が、円の一部が欠けた形状となるように形成されていてよい。例えば、側面部9cは、後述する
図2に示すように、円形状の平面の一部が欠けた形状であってよく、その掛けた部分が、中心3c以外の点を中心とする略扇形形状となっていてよい。円弧取鍋3は、定置取鍋1から供給される溶湯2が取鍋本体9の内部に注湯可能となるように、取鍋本体9の上部に開口部が形成されている。
【0034】
取鍋本体9は、上記第1断面において、限定されないが、底面部9bの上記第1円弧が210°以上の角度となるように形成されていてよい。上記第1円弧の一端と他端の間に、上記開口部が形成される。或いは、取鍋本体9は、上記第1断面において底面部9bが円形状となっているとともに、底面部9bの一部を切り欠いて上記開口部が形成されていてもよい。
【0035】
取鍋本体9は、上記第1断面において、限定されないが、底面部9bの上記第1円弧が210°以上300°以下の角度となるように形成されていてよい。開口部を適切な形状にて形成することにより、取鍋本体9に溶湯2を貯留し易くすることができるとともに、取鍋本体9のメンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
次に、円弧取鍋3が備えるノズル10について説明する。ここで、上記第1断面において、上記第1円弧の一端である第1端部から中心3cを通る直線を引いた場合、該直線と上記第1円弧との交点を交点αとする。また、上記第1円弧の他端を第2端部とする。ノズル10は、取鍋本体9の底面部9bの一部分に設けられており、上記第1円弧における交点αよりも第2端部側の位置の底面部9bに設けられている。
【0037】
ノズル10は、底面部9bに配置されている。円弧取鍋3は、このノズル10から、取鍋本体9に貯留された溶湯2を外部へ注湯することが可能となっている。モータ4により取鍋本体9の回動角度を制御することで、取鍋本体9から外部へ注湯される溶湯2の量を調節することが可能である。また、取鍋本体9の回動に追従して、ノズル10も回動される。円弧取鍋3は、円弧取鍋3を回転させてノズル10から溶湯2を供給する場合に、ノズル10が溶湯2の湯面よりも深い位置となり、溶湯2を円弧取鍋3の斜め下方に出湯するようになっている。このような円弧取鍋3は、回転式下注取鍋と称されることがある。ノズル10の長さは、限定されないが、例えば、110mmである。
【0038】
シュート5は、円弧取鍋3から注湯された溶湯2を受け、受けた溶湯2を水平方向に導く溝状の部材である。シュート5は、その表面に塗型(黒鉛等)が塗布されている。シュート5により導かれた溶湯2は、トラフ6に供給される。
【0039】
トラフ6は、溶湯2が通る溝であり、鋳造部7側が下がるようにやや傾斜して延伸しており、台車6bに載せられている。トラフ移動部8は、例えばレールであり、トラフ6の延伸方向に沿って台車6bを移動させる。トラフ6は、普段は該レールに対して平行な傾斜角度であるが、該レールに対して鋳造部7側が下がるようにさらに傾斜させることが可能となっていてもよい。トラフ6およびトラフ移動部8は、走行式トラフとして機能する。
【0040】
鋳造部7は、モールド11、スリーブ12、モールド回動機構13、および制振台14を備えている。モールド11およびスリーブ12は、円筒形状である。また、スリーブ12は、モールド11を囲むように、モールド11に対して同心円状に設けられている。さらに、モールド11とスリーブ12との間には空間15が形成されており、この空間15に冷却用の流体(水等)を供給することにより、モールド11の冷却が可能となっている。なお、トラフ6に導かれた溶湯2は、鋳造部7側のトラフ6の端部(以下、トラフ6の終端と称する)から流れ落ち、モールド11に導かれる。つまり、トラフ6の終端が、モールド11への溶湯2の供給部分となっている。
【0041】
モールド回動機構13は、モールド11およびスリーブ12を、モールド11の円筒軸を回動軸として回動させる。モールド回動機構13による回動の手法としては、スリーブ12の両端を支持ローラによって支持し、制振台14に搭載されたローラをスリーブ12の下方に接触させ、この制振台14に搭載されたローラをモータにより回動させる手法が挙げられる。
【0042】
制振台14は、モールド11およびスリーブ12の回動時における、モールド11の振動を抑えるものである。また上述したとおり、制振台14にはローラが設けられており、このローラがモールド11およびスリーブ12を回動させている(モールド回動機構13の機能の一部を担っている)。
【0043】
<注湯速度の理論式>
上述のような鋳造機100を用いて鋳造を行う場合における、円弧取鍋3からノズル10を介して出湯する溶湯2の注湯速度を算出する理論について、
図2を参照して以下に説明する。
図2の(a)は、円弧取鍋3の具体的構成の一例を示す断面図である。
図2の(b)は、出湯開始からの時間の経過と、各時刻における取鍋の回転の角速度との関係を示す図である。
【0044】
図2の(a)に示すように、円弧取鍋3は、取鍋本体9の内壁を構成する取鍋壁31、取鍋壁31を覆い取鍋本体9の外壁を構成する鉄皮32、中心3cに設けられており紙面表裏方向に延伸する回動軸33、およびノズル10を備えている。
【0045】
円弧取鍋3に貯留された溶湯2を外部へ出湯する際の溶湯供給量は、ベルヌーイの定理を基にして制御し得る。つまり、重力方向(高さ方向)における、溶湯2の湯面の位置とノズル10の出湯口の位置との互いの位置関係を一定に保つことにより、溶湯2のヘッド高さHを一定にして定量の注湯を行うことができる。このことについて以下に説明する。始めに、
図2を参照して、下記(i)〜(v)のように用語を定義する。
【0046】
(i)鉛直方向(重力方向)に対して直交する面を水平面とし、中心3cを通る水平面を基準水平面P1とする。溶湯2の湯面P2は水平面と平行な面である。
【0047】
(ii)ノズル10における、取鍋本体9の内部側の端部である流入口(ノズル10内に溶湯2が流入する入口)の中心を流入口中心10aとする。ノズル10における、取鍋本体9の外部側の端部である出湯口の中心を出湯口中心10bとする。
【0048】
(iii)上記第1断面において、中心3cとノズル10の中心10cとを結ぶ直線上にノズル10の軸芯が配置されており、当該直線をノズル軸10axと称する。そして、上記第1断面において、基準水平面P1を示す直線と上記ノズル軸10axとが成す角を傾動角θとする。
【0049】
(iv)湯面P2からノズル10の上記流入口がどの程度の深さにあるかを表す値として、流入口中心10aを通る水平面と湯面P2との互いの距離をノズル深さh1とする。また、ノズル10の長さ、すなわち流入口中心10aから出湯口中心10bまでの距離をノズル長さLとする。
【0050】
(v)流入口中心10aを通る水平面と出湯口中心10bを通る水平面との互いの距離を高さh2とする。
【0051】
上記(i)〜(v)に定義した用語を用いて、溶湯2のヘッド高さHは、上記ノズル深さh1と、ノズル10の流入口から出湯口までの高さh2との和で表すことができる。ここで、h2=L・sinθと表すことができる。よって、ベルヌーイの定理を基にして、注湯速度Qは下記式で表すことができる。
【0053】
上記式において、Cは損失係数[kg/mm
3]、gは重力加速度[mm/s
2]、Hはヘッド高さ[mm]、Aはノズル断面積[mm
2]、Lはノズル長さ[mm]、θは取鍋角度(上記傾動角)[deg]、である。注湯速度Qの単位は[kg/s]であって、実質的には速度ではなく溶湯2の供給量を意味している。なお、損失係数Cは、注湯速度Qの理論値と実測値との差を補正する補正係数である。
【0054】
円弧取鍋3から溶湯2を注湯する際、時間が経過するにつれて、溶湯2の容量が減少する。そのため湯面P2の位置は時間の経過とともに変化する(湯面高さが低くなる)。円弧取鍋3が、湯面P2の高さ方向の位置の変化に合わせて回転し出湯口の位置を変化させることにより、溶湯2のヘッド高さHを一定に維持することができる。これにより、理論的に、一定の注湯速度Qとすることができる。出湯口の位置を変化させることは、傾動角θを変化させることを意味する。傾動角θの角速度を傾動角速度Vθとする。
【0055】
例えば、
図2の(b)に示すように、出湯開始からの時間経過に伴って、傾動角速度Vθが増加するように制御する。これにより、理論的に、注湯速度Qを一定とし得る。
【0056】
なお、本明細書において説明する、湯面等の位置(高さ方向の位置)およびその変化について、以下のことが言える。概して、高さ方向の位置を表す値は、基準となる位置に応じてその値が変動する性質がある。高さ方向の位置は、床からの高さ、または中心3cからの深さ等によって空間的に認識および表現されてよく、位置の基準は特に限定されない。設計者は、何らかの基準を選択して、選択した基準に基づいて高さ方向の位置を把握して、本願発明を適用すればよい。
【0057】
<発明の知見>
従来、注湯速度Qの定量制御を行う方法として、例えば特許文献1に記載の技術のように、取鍋等の重量変化量を測定し、その結果に基づいて溶湯供給量を制御する方法が提案されている。これは、溶湯の注湯を開始した後、重量変化量を測定可能な期間の溶湯供給量の制御においては、このようなフィードバック制御で対応し得るためである。
【0058】
しかしながら、例えば鋳造機100のような遠心鋳造を行う装置では、注湯初期の溶湯供給量を正確に制御することが重要である。このことは、例えば、
図1の(a)に示すように、モールド11における回動軸方向の端部に、ダクタイル鋳鉄管に拡管部を形成するための拡管形成領域がある場合に、特に重要となる。これは、注湯初期の溶湯供給量のバラつきが拡管部の品質に影響を与え得るためである。
【0059】
そこで、本発明者らは、円弧取鍋3に貯留された溶湯2を外部へ出湯する際の、注湯初期における溶湯供給量を精度よく制御するために、上記式(1)を採用することを試みた。その結果、以下のような課題が生じることがわかった。この課題について、
図3を用いて説明する。
【0060】
図3は、円弧取鍋3の内部の劣化の一例を説明するための図であり、(a)は取鍋本体9の内部の様子、(b)はノズル10の内部の様子をそれぞれ示す断面図である。
【0061】
図3の(a)の左側は、正常時の取鍋本体9の内部の様子を示している。正常時とは、例えば、取鍋本体9の使用回数が少ない状態である。この場合、取鍋本体9の内部における各部は、製造時の寸法を維持しており、取鍋本体9に貯留された溶湯2の湯面は、理想湯面P21の位置となる。また、このときの取鍋本体9の内部の容積を理想容積と称する。
【0062】
一方で、
図3の(a)の右側は、或る程度使用を繰り返した後の、取鍋本体9の内部の様子を示している。
図3の(a)の右側に示すように、溶湯2の貯留および出湯を繰り返すことによって、取鍋本体9の内部の取鍋壁31には、地金、垢等の付着物2aが付着し得る。付着物2aが付着することによって、取鍋本体9の内部の容積は上記理想容積に比べて減少する。また、取鍋壁31を構成する耐火物の剥離等が発生することがある。この場合、取鍋壁31の一部に剥離部31aが形成される。剥離部31aが形成することによって、取鍋本体9の内部の容積は上記理想容積に比べて増大する。
【0063】
上記のような付着物2aおよび剥離部31aが存在することにより、取鍋本体9に貯留された溶湯2の湯面は、理想湯面P21とは異なる実湯面P22の位置となり得る。そのため、上記ヘッド高さHが変動し、注湯初期の溶湯供給量を精度良く推定することが難しい。
【0064】
本発明者らは、上記のような取鍋本体9の劣化によって生じ得る、湯面P2の位置の変動の問題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、円弧取鍋3から溶湯2の供給を開始する前に、溶湯2の湯面P2の位置を測定し、その測定結果に基づいてヘッド高さHを制御することを着想し、本発明を想到した。本発明者らは、湯面P2の位置を測定する具体的手段として、レーザ距離計を採用した。
【0065】
(レーザ距離計)
鋳造機100が備えるレーザ距離計20は、円弧取鍋3の上方から、取鍋本体9に貯留された溶湯2の湯面P2にレーザ(測定光)を照射し、湯面P2の位置を測定する。レーザ距離計20は、湯面の位置を測定することが可能であればよく、具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、青色レーザを出射する青色レーザ距離計であってよい。青色レーザの波長は、例えば450nmであってよい。或いは、レーザ距離計20は、赤外線レーザを用いる方式のものであってもよい。
【0066】
また、レーザ距離計20は、レーザ光を出射するレーザ発信部と、湯面P2によって反射されたレーザ光を受光する受光部とが別々の装置となっていてよく、または一体に構成されていてもよい。
【0067】
レーザ距離計20を用いて湯面P2の位置を測定する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。レーザ距離計20は、自身並びに取鍋本体9の底面および中心3c等の空間座標を予め把握しており、レーザ距離計20と湯面P2との互いの距離を測定することによって、湯面P2の位置を測定する。なお、本明細書書において、「湯面P2の位置を測定する」とは、説明の便宜上「湯面高さを測定する」と表現されることがある。
【0068】
レーザ距離計20は、円弧取鍋3の上方に固定して設置されていてよく、または、取鍋本体9に溶湯2が貯留された後に、円弧取鍋3の上方の所定の位置に移動することができるように、移動手段と共に設置されていてもよい。レーザ距離計20の設置の具体的な態様は特に限定されない。
【0069】
上記のようなレーザ距離計20を用いて、注湯を開始する前の時点における湯面P2の位置を測定することにより、取鍋本体9の内部の劣化の影響を低減して、より正確に所望のヘッド高さHに制御することができる。つまり、上記式(1)を用いて、所望の注湯速度Qとなるように初期傾動角を設定することができる。その結果、注湯初期における溶湯供給量の制御の精度を高めることができる。
【0070】
また、レーザ距離計20は、湯面P2の所定領域内の複数箇所において溶湯2の湯面高さを測定するようになっていることが好ましい。溶湯2の表面には、垢等の浮遊物が存在していることがある。そのような浮遊物は、湯面高さの正確な測定を妨害し得る。レーザ距離計20は、得られた複数の測定値(データ)に基づいて溶湯2の湯面高さを決定することにより、浮遊物の影響を低減することができ、より正確に溶湯2の湯面高さの情報を取得することができる。
【0071】
(ノズルについて)
図3の(b)は、或る程度使用を繰り返した後の、ノズル10の内部の様子を示す断面図である。
【0072】
本発明者らは、さらなる問題点として、以下のことを認識した。すなわち、
図3の(b)に示すように、ノズル10の内部または近傍に付着物2aが付着することがあり、ノズル10の内部に溶損が生じることもある。これらのことは、ノズル10の断面積を変化させる等の影響を生じ、注湯速度Qを増減させ得る。
【0073】
このようなノズル10の状態の変化は、上記式(1)に含まれる損失係数Cの値に影響する。本発明者らは、ノズル10の劣化の影響を低減するために、過去の注湯における注湯速度を用いて、最新の損失係数Cを設定することにより問題の解決を図った。これにより、初期傾動角をより正確に設定することができる。また、上記式(1)を用いて注湯速度Qを定量制御するための、円弧取鍋3の回転の角速度(
図2参照)をより正確に設定することができる。
【0074】
さらには、過去の注湯における損失係数Cの値も用いて最新の損失係数Cを設定することにより、より一層正確に初期傾動角および円弧取鍋3の回転の角速度を設定することができる。
【0075】
<溶湯供給量の制御>
本実施形態における溶湯供給量の制御方法を実施する溶湯供給ユニット100Aの具体的構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態の溶湯供給ユニット100Aの概略的な構成を示すブロック図である。
【0076】
図4に示すように、溶湯供給ユニット100Aは、円弧取鍋3と、円弧取鍋3を回転させるモータ4と、円弧取鍋3の上方に設けられたレーザ距離計20と、円弧取鍋3の重量を測定するロードセル41と、モータ4およびレーザ距離計20と通信可能に接続されたPC(Personal Computer)60と、を備えている。モータ4にはPLC(Programmable Logic Controller)70が通信可能に接続されている。
【0077】
PC60は、制御部61、注湯データ作成部62、および記憶部63を備えている。制御部61は、傾動角設定部61a、取鍋傾動制御部61b、および係数設定部61cを備えている。記憶部63は、注湯データ63a、係数データ63b、および鋳造条件データ63cを含む。
【0078】
PC60およびPLC70は、鋳造機100の各部の動作を制御する制御装置として機能する。PC60およびPLC70は、それぞれ独立して、鋳造機100が備えていてもよく、鋳造機100の外部に設けられていてもよい。或いは、鋳造機100は、PLC70を備えておらず、PLC70が実行する処理をPC60が行うようになっていてもよい。
【0079】
(溶湯重量測定)
円弧取鍋3は、架台40によって支持されている。例えば、限定されないが、円弧取鍋3の左右(紙面の裏表方向)に、回動軸を規定するとともに円弧取鍋3を回転可能に軸支する支持部材(図示せず)が設置されている。この支持部材が、架台40に載置されている。また、架台40は、ロードセル41の上に載置されている。
【0080】
本実施形態では、ロードセル41は、4台設置されている。なお、ロードセル41の設置台数は特に限定されない。4台のロードセル41を用いて測定した重量データ(電圧値)が和算部42に送信される。該重量データは、和算部42にて統合された後、増幅部43に送信され、信号が増幅される。その後、重量データは、増幅部43からA/D変換部50にてデジタルデータに変換され、PC60に送信される。
【0081】
ロードセル41を用いて、円弧取鍋3に貯留されている溶湯2の重量変化を測定することができる。これにより、円弧取鍋3からノズル10を介して外部に溶湯2を供給している間の溶湯供給量を算出することができる。
【0082】
ロードセル41による重量測定の、サンプリング周期および移動平均処理等については、設計者によって適宜設定されてよい。ローパスフィルタの性能についても、設計者が適宜設定すればよい。
【0083】
(湯面高さ測定)
レーザ距離計20を用いて測定した湯面高さデータ(電流値)は、A/D変換部50にてデジタルデータに変換され、PC60に送信される。
【0084】
湯面高さデータは、レーザ距離計20と湯面P2との互いの距離のデータであってよい。この場合、PC60は、レーザ距離計20および取鍋本体9の空間座標を把握しており、湯面高さを算出すればよい。或いは、レーザ距離計20によって、湯面高さが算出されて、算出した結果がPC60に送信されてよい。
【0085】
(円弧取鍋の回転)
詳しくは後述するが、PC60によって、円弧取鍋3の回転の角速度が設定され、設定された取鍋角速度データがPLC70に送信される。
【0086】
モータ4は、サーボモータであり、PLC70によって制御される。また、PLC70は、エンコーダから得られた情報をPC60に送信する。
【0087】
(PC60)
PC60が備える各部について、詳しくは溶湯供給ユニット100Aが実行する処理の流れの説明と合わせて後述するが、概略的に説明すれば以下のとおりである。
【0088】
制御部61は、上記湯面高さデータおよび設定した損失係数Cに基づいて、所望の注湯速度Qとなるような円弧取鍋3の初期傾動角を算出するとともに、定量注湯制御を行うための円弧取鍋3の回転の角速度の時間変化のデータを算出および設定する。そして、設定したデータをPLC70に送信する。
【0089】
注湯データ作成部62は、注湯初期における注湯速度Qのデータを制御部61から受信して、受信したデータを注湯データ63aとして記憶部63に格納する。
【0090】
記憶部63の係数データ63bは、過去の注湯における損失係数Cの値である。鋳造条件データ63cは、PC60が演算を行う上で必要となる各種のデータである。鋳造条件データ63cは、例えば、ノズル長さL、円弧取鍋3の傾動角1度に対応するヘッド高さH(後述)、および各種のパラメータ等を含む。
【0091】
<定量注湯制御>
溶湯供給ユニット100Aが実行する溶湯供給量の制御について、
図5を用いて以下に説明する。
図5は、溶湯供給ユニット100Aが実行する処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートでは、定置取鍋1から円弧取鍋3に溶湯2が供給され、円弧取鍋3に溶湯2が貯留されている状態(鋳造機100による鋳造開始前の状態)から始まる処理について説明する。なお、以下の説明における「注湯開始前」とは、定置取鍋1から円弧取鍋3への溶湯2の供給が完了してから、円弧取鍋3を回転させてノズル10を介して溶湯2の注湯が開始するまでの間を意味している。
【0092】
図5に示すように、まず、レーザ距離計20は、円弧取鍋3に貯留されている溶湯2の湯面高さを測定し、得られた湯面高さデータを、A/D変換部50を介してPC60に送信する(ステップ10;以下S10のように略記する)(高さ測定工程)。
【0093】
また、ロードセル41は、注湯開始前における、溶湯2が貯留された円弧取鍋3の重量を測定し、得られた注湯開始前の重量データを、和算部42、増幅部43、およびA/D変換部50を介して、PC60に送信する(S12)。
【0094】
なお、S10およびS12の処理の順番が逆であってよく、S10およびS12の処理が並行して実行されてもよい。
【0095】
制御部61が備える傾動角設定部61aは、上記湯面高さデータおよび注湯開始前の重量データを受信する。傾動角設定部61aは、前述した式(1)の理論式を用いて、所望の注湯速度Qとなるようなヘッド高さHを算出する。ここで、損失係数Cは、係数データ63bから取得されてよく、係数設定部61cによって最新の損失係数Cが設定されてよい。係数設定部61cの動作については後述する。
【0097】
傾動角設定部61aは、湯面高さデータに基づいて、所望の注湯速度Qとなるような円弧取鍋3の初期回転角度θ1を算出する。この初期回転角度θ1の算出は、限定されないが、例えば以下のようにして行うことができる。
【0098】
傾動角設定部61aは、注湯開始前の重量データに基づいて、溶湯2の重量を推定し、その結果に基づいて基準湯面高さH0を算出する。そして、傾動角設定部61aは、この基準湯面高さH0を用いて、基準初期回転角度θ0を求める。
【0099】
傾動角設定部61aは、下記式(2)および式(3)を用いて、初期回転角度θ1を算出する(S14:傾動角設定工程)。
【0102】
ここでHmは湯面高さ測定値、Hdは取鍋角度1度に対応するヘッド高さ、rは円弧取鍋3の中心3cから取鍋壁31までの半径である。
【0103】
また、傾動角設定部61aは、所望の注湯速度Qにて定量注湯することができるように、円弧取鍋3の回転の角速度の時間変化を示す取鍋動作基準データ(例えば
図2の(b)のグラフに示すデータ)を算出し、設定する(S14:傾動角設定工程)。
【0104】
傾動角設定部61aは、設定した基準初期回転角度θ0および取鍋動作基準データを、取鍋傾動制御部61bに送信する。
【0105】
取鍋傾動制御部61bは、受信したデータに基づいて、PLC70に指令を送信する。PLC70は、指令に基づいてモータ4を動作させる。具体的には、先ず、PLC70は、円弧取鍋3の傾動角が基準初期回転角度θ0となるように、モータ4を動作させる。この動作は、なるべく短時間で行われることが好ましい。PLC70は、円弧取鍋3の傾動角が基準初期回転角度θ0となった後は、上記取鍋動作基準データに基づいて、円弧取鍋3が回転するようにモータ4を動作させる(S16:定量注湯工程)。
【0106】
S16の後、ロードセル41は、円弧取鍋3の重量を適時測定し、測定した重量データをPC60に送信する。これにより、取鍋傾動制御部61bは、円弧取鍋3に貯留された溶湯2の重量変化についての情報を知ることができ、この情報に基づいて注湯速度Qを算出することができる(S18)。
【0107】
注湯を開始した初期において(S20でYES)、取鍋傾動制御部61bは、算出した注湯速度Qのデータを注湯データ作成部62に送信する。注湯データ作成部62は、受信したデータに基づいて初期の注湯速度のデータとしての注湯データ63aを作成し、記憶部63に格納する(S22)。この注湯初期の期間は、例えば、円弧取鍋3の回転を開始してから数秒後における、例えば1秒間であってよい。
【0108】
注湯初期よりも後の時間において(S20でNO)、取鍋傾動制御部61bは、注湯速度Qの定量注湯制御を行う。取鍋傾動制御部61bは、注湯速度Qの目標値と、溶湯2の重量変化のデータに基づいて算出された注湯速度Qの実測値との誤差が大きくなった場合(S24でYES)、次のような制御を行う。すなわち、取鍋傾動制御部61bは、注湯速度Qの変動量に合わせて、上記取鍋動作基準データにて規定された円弧取鍋3の回転の角速度を修正し、注湯速度Qを目標値に近づける(S26)。この角速度を修正する方法は特に限定されないが、例えば、目標値と実測値との差に応じて制御を行う比例制御(P制御)と、注湯速度Qの変動度合に応じて制御を行う微分制御(D制御)との2つの方法を組み合わせて、円弧取鍋3の回転の角速度を修正してよい。取鍋傾動制御部61bは、その他の公知の方法を用いて、溶湯2の重量変化のデータに基づいて注湯速度Qの定量注湯制御を行ってよい。取鍋傾動制御部61bは、修正した角速度に基づいて、PLC70に指令を送信する。そして、S16からの処理を繰り返す。
【0109】
注湯速度Qの目標値と実測値との誤差が小さい場合(S24でNO)、円弧取鍋3から所定量の溶湯2の注湯が終了するまで(S28でNO)、S16からの処理を繰り替えす。
【0110】
所定量の溶湯2の注湯が終了した場合(S28でYES)、溶湯供給ユニット100Aは、溶湯供給量の制御を終了する。
【0111】
(有利な点)
本実施形態の溶湯供給量の制御方法による利点について、
図6を用いて説明する。
図6の(a)は、注湯開始前の円弧取鍋3の具体的構成の一例を示す断面図である。
図6の(b)は、注湯開始直後の円弧取鍋3の具体的構成の一例を示す断面図である。
【0112】
図6の(a)に示すように、例えば、注湯開始前の円弧取鍋3の内部において、基準水平面P1の下方に溶湯2の湯面P2があり、ノズル10が水平方向を向いており、基準水平面P1とノズル軸10axが一致しているとする。取鍋本体9の取鍋壁31に付着物2aが付着していることにより、湯面P2の湯面高さは、理想湯面P21よりも高くなっている。
【0113】
この湯面P2の位置をレーザ距離計20によって測定する。傾動角設定部61aは、測定したデータを用いて、上述のように、基準初期回転角度θ0を初期回転角度θ1に修正する。
【0114】
つまり、
図6の(b)に示すように、理想湯面P21に基づけば補正前軸Ax0の軸上にノズル10が位置するところ、湯面P2の実際の位置に基づいて、補正後軸Ax1の軸上にノズル10があるように、取鍋傾動制御部61bは注湯開始位置を修正する。
【0115】
このように、本実施形態の溶湯供給量の制御方法では、所望の注湯速度Qとなるヘッド高さHとなるように、初期回転角度θ1にて円弧取鍋3を回転させるようになっている。これにより、注湯初期における溶湯供給量の制御の精度を高めることができる。
【0116】
これに対して、従来の方法では、修正前のヘッド高さHBは、修正後のヘッド高さHAよりも高くなっている。そのため、補正前軸Ax0の軸上にノズル10が位置するように円弧取鍋3を回転させた場合、所望の注湯速度Qよりも溶湯供給量が多くなってしまう。この場合、注湯初期における溶湯供給量を正確に制御することは難しい。
【0117】
(ノズルの劣化を考慮した定量注湯制御)
溶湯供給ユニット100Aが実行する、ノズルの劣化を考慮した溶湯供給量の制御について、
図7を用いて以下に説明する。
図7は、溶湯供給ユニット100Aが実行する、損失係数を設定する処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートでは、円弧取鍋3から所定量の溶湯2が供給された後(
図5のS28の後)、次の鋳造が開始される前(
図5のS16の前)までに行われる処理について説明する。
【0118】
図7に示すように、まず、係数設定部61cは、記憶部63から、過去の運転における初期の注湯速度のデータである注湯データ63aを取得する(S30)。
【0119】
次に、過去の運転における係数データ63bを考慮しない場合(S32でNO)、係数設定部61cは、注湯データ63aに基づいて、損失係数Cを最新の値に設定する。具体的には、限定されないが、例えば過去の数回の運転における注湯初期の注湯速度Qの平均値QAVを算出する。この平均値QAVを、目標値の注湯速度Q0で除算し、その結果を現在の損失係数Cに乗ずることによって、最新の損失係数Cの値を算出し、設定する(S36)。係数設定部61cは、設定した最新の損失係数Cを、係数データ63bに格納する。
【0120】
或いは、過去の運転における係数データ63bを考慮する場合(S32でYES)、係数設定部61cは、係数データ63bから過去の運転において用いた損失係数Cを取得する。高精度の注湯制御を行うためには、過去の損失係数Cのデータを利用することが好ましい。この場合、係数設定部61cは、注湯データ63aおよび係数データ63bに基づいて、損失係数Cを最新の値に設定する。具体的には、限定されないが、例えば過去の数回の運転における、注湯初期の注湯速度Qと損失係数Cとを用いて、以下のように最新の損失係数Cを算出する。すなわち、係数設定部61cは、直近の運転における注湯速度Qのそれぞれに重み付けをして、目標値の注湯速度Q0からの平均的なバラつきを示す値を求める。また、係数設定部61cは、直近の運転における損失係数Cの値についてそれぞれ重み付けを行い、もっともらしい損失係数Cの値を推定する。そして、上記算出した注湯速度Qおよび損失係数Cに関する値を乗じて、最新の損失係数Cの値を算出し、設定する(S36:係数設定工程)。係数設定部61cは、設定した最新の損失係数Cを、係数データ63bに格納する。なお、直近の運転とは、例えば、過去の10回の運転であってよい。
【0121】
以上のように、最新の損失係数Cを設定することにより、各種要因によるノズル10の状態の変動の影響を抑制することができ、補正係数の値の正確性および信頼性が向上する。そのため、注湯速度Qを算出する理論式の精度を高めることができる。その結果、傾動角(注湯時間全体の傾動角)をより一層正確に設定することができ、溶湯2の供給量を、より一層、所望の値に制御し易くすることができる。
【0122】
(実施例)
本実施形態の溶湯供給ユニット100Aを用いて溶湯供給量を制御した場合の注湯速度Qについて、
図8を用いて説明する。
図8は、注湯開始からの時間の経過による注湯速度Qの変化の一例を示すグラフである。ここで、注湯速度Qは、取鍋傾動制御部61bが受信した円弧取鍋3の重量変化のデータに基づいて、各時刻について算出された値である。
【0123】
図8に示すように、注湯を開始した時刻t0から少し後までの短い期間T1において、円弧取鍋3は、初期回転角度θ1となるようにモータ4によって回転される。また、円弧取鍋3は、傾動角設定部61aが設定した取鍋動作基準データに基づいて、各時刻において所定の角速度にてモータ4によって回転される。
【0124】
時刻t11からt12の間の期間において、注湯データ作成部62が、注湯初期の注湯速度Qのデータを取得し、取得したデータを注湯データ63aとして記憶部63に格納する。
【0125】
取鍋傾動制御部61bは、重量変化のデータに基づいて注湯速度Qを算出可能となった後の期間T2において、注湯速度Qの定量注湯制御を行う。
【0126】
ここで、
図8に示すグラフの縦軸における、目標値Q0よりも少し高い注湯速度Q2から、目標値Q0よりも少し低い注湯速度Q1までの注湯速度Qの範囲を目標制御範囲A2とする。目標制御範囲A2は、例えば、目標値Q0の±3%であってよい。
【0127】
また、目標値Q0と注湯速度Q2との間の注湯速度QAから、目標値Q0と注湯速度Q1との間の注湯速度Qαまでの注湯速度Qの範囲を非修正範囲A1とする。非修正範囲A1は、例えば、目標値Q0の±2%であってよい。注湯速度Qが非修正範囲A1の範囲内の場合、取鍋傾動制御部61bは、傾動角設定部61aが設定した取鍋動作基準データに基づいて制御を行う。一方で、注湯速度Qが非修正範囲A1の範囲外となり、目標値と実測値との誤差が大きくなった場合、取鍋傾動制御部61bは、PD制御を行い、注湯速度Qが目標制御範囲A2の範囲内に収まるように円弧取鍋3の回転の角速度を修正する。
【0128】
注湯を開始した時刻t0から後の期間T3において、取鍋傾動制御部61bは、設定した最新の損失係数Cを用いて、注湯速度Qが目標制御範囲A2の範囲内に収まるように定量注湯制御を行う。
【0129】
〔付記事項〕
鋳造機100では、円弧取鍋3に注湯口としてノズル10を設けたが、注湯口の形態は円筒状のノズル10に限定されず、円錐状、角柱状等の形態であってもよい。また、注湯口の形成方法としては例えば、取鍋本体9の底面部9bを切り欠いて注湯口を形成してもよい。
【0130】
〔実施の形態2〕
図9は、実施の形態2に係る溶湯供給ユニット100Bの要部構成を示す側断面図である。
図9では、構造を表現するために、架台40の上に、円弧取鍋3を回転可能に軸支する支持部材を模式的に追加して図示している。
【0131】
図9に示すように、溶湯供給ユニット100Bは、ロードセル41を支持する台よりも鉛直方向の下側に、防振ゴム(防振部材)80が設置されている。
【0132】
モールド11の振動が、ロードセル41に伝播した場合、円弧取鍋3の重量測定にノイズが生じ得る。防振ゴム80は、モールド11の振動がロードセル41に伝わることを抑制し、そのようなノイズの発生を低減することができる。そのため、溶湯供給量の定量制御の精度をより一層高めることができる。
【0133】
防振ゴム80の材質および硬度は、モールド11の振動の周波数、設置環境の温度等に応じて設定される性能を満たすように選択されることが好ましい。例えば、防振ゴム80は、硬度が40°〜50°の天然ゴムから構成されている。
【0134】
なお、防振ゴム80は、ゴムに限定されず、その他の防振部材を代わりに用いることもできる。
【0135】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【解決手段】溶湯供給量の制御方法は、溶湯(2)が貯留された円弧取鍋(3)を回転させ、溶湯(2)を円弧取鍋(3)に設けられたノズル(10)からシュート(5)に供給する溶湯供給方式であって、円弧取鍋(3)から溶湯(2)を供給する前に、溶湯(2)に係る湯面高さを測定する高さ測定工程と、測定された湯面高さに基づき、円弧取鍋(3)を回転させるべき傾動角を設定する傾動角設定工程と、を含む。