特許第6503048号(P6503048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6503048マーキング装置、マーキング制御装置、マーキングシステム、及びマーキング制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6503048
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】マーキング装置、マーキング制御装置、マーキングシステム、及びマーキング制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
   B21C51/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-239753(P2017-239753)
(22)【出願日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】593076585
【氏名又は名称】株式会社MPCソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並木 吉治
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−163920(JP,A)
【文献】 特開2012−030277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
B05D 1/32
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材に印字する印字ユニットと、
前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、
前記印字ユニットは、
ステンシルを保持するステンシル保持部と、
前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、
前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含む
マーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマーキング装置であって、
前記第1の印字ヘッドは、前記被加工材から加工される部材の部品識別子を印字し、
前記第2の印字ヘッドは、前記被加工材の種類を示す識別子を印字する
マーキング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマーキング装置であって、
前記第2の印字ヘッドは、保持された前記ステンシルを挟んで前記被加工材の反対側に配置されるインク噴霧ノズルを有する
マーキング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のマーキング装置であって、
前記ステンシル保持部は、前記ステンシルを着脱可能かつ他のステンシルと交換可能に保持する
マーキング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のマーキング装置であって、
前記ステンシル保持部は、前記ステンシルの高さ位置を変更可能に、前記ステンシルを保持する
マーキング装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のマーキング装置であって、
前記ステンシル保持部は、前記ステンシルを所定の平面内で回転可能に保持する
マーキング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマーキング装置であって、
前記印字ユニットは、異なる色の複数の前記第2の印字ヘッドを保持し、前記複数の第2の印字ヘッドを、保持された前記ステンシルに対向する位置に、選択的に配置可能に保持する
マーキング装置。
【請求項8】
マーキング装置を制御するマーキング制御装置であって、
前記マーキング装置は、
被加工材に印字する印字ユニットと、
前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、
前記印字ユニットは、
ステンシルを保持するステンシル保持部と、
前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、
前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含み、
前記マーキング制御装置は、
前記マーキング装置を制御する制御部を備える
マーキング制御装置。
【請求項9】
マーキング装置とマーキング制御装置を備えるマーキングシステムであって、
前記マーキング装置は、
被加工材に印字する印字ユニットと、
前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、
前記印字ユニットは、
ステンシルを保持するステンシル保持部と、
前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、
前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含み、
前記マーキング制御装置は、
前記マーキング装置を制御する制御部を備える
マーキングシステム。
【請求項10】
マーキング装置のマーキング制御方法であって、
前記マーキング装置は、
被加工材に印字する印字ユニットと、
前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、
前記印字ユニットは、
ステンシルを保持するステンシル保持部と、
前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、
前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含み、
前記マーキング装置は、
前記ステンシル保持部で前記ステンシルを保持するステップと、
前記第1の印字ヘッドで前記被加工材に印字するステップと、
前記第2の印字ヘッドで前記被加工材に印字するステップと
実行する
マーキング制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング装置、マーキング制御装置、マーキングシステム、及びマーキング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板等の母材から切断加工された各部材を間違いなく区別するため、母材の切断加工の前又は後に、各部材の識別情報(例えば部品番号など)をマーキング(例えばインクなどによる印字)することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、レーザーヘッドから照射されるレーザー光を熱転写材に照射して被マーキング材の表面に熱転写しマーキングするマーキング装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−246476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、多種多様な要求性能に適応するために、多数の鋼種(鋼材の種類)の鋼材が生産されている。また、鋼材の製造加工及び流通業界は、分業化かつ重層化しており、建物や船舶等に使われる構造物の製作業者は、加工された部材を仕入れることが多くなっている。こうした事情から、流通業者や製作業者が必要な鋼種の部材を誤りなく判別できるように、適切に部材が管理されることが重要である。実務的な指針としては、例えば、「鋼材の識別表示標準(JSS 1 02−2017)」が改正されている。この表示標準の中では、加工部材の表面又は端面に、鋼種を表す識別情報を色文字で記入することが求められている。
【0006】
しかしながら、加工部材の表面又は端面に鋼種を表す色文字を手作業で記入するのは、生産性を著しく低下させるし、記入すべき色文字の誤りを招くこともある。また、色文字をマーキングする専用のマーキング装置を、部品番号をマーキングするマーキング装置と別に用意するのは、高いコストを必要とする。
【0007】
そこで、本発明は、低コストでかつ効率的に、鋼種等の識別情報をマーキングするマーキング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、マーキング装置であって、被加工材に印字する印字ユニットと、前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、前記印字ユニットは、ステンシルを保持するステンシル保持部と、前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含む。
【0009】
上記のマーキング装置であって、前記第1の印字ヘッドは、前記被加工材から加工される部材の識別情報を印字し、前記第2の印字ヘッドは、前記被加工材の種類を示す識別情報を印字してもよい。
【0010】
上記のいずれかのマーキング装置であって、前記第2の印字ヘッドは、保持された前記ステンシルを挟んで前記被加工材の反対側に配置されるインク噴霧ノズルを有してもよい。
【0011】
上記のいずれかのマーキング装置であって、前記ステンシル保持部は、前記ステンシルを着脱可能かつ他のステンシルと交換可能に保持してもよい。
【0012】
上記のいずれかのマーキング装置であって、前記ステンシル保持部は、前記ステンシルの高さ位置を変更可能に、前記ステンシルを保持してもよい。
【0013】
上記のいずれかのマーキング装置であって、前記ステンシル保持部は、前記ステンシルを所定の平面内で回転可能に保持してもよい。
【0014】
上記のいずれかのマーキング装置であって、前記印字ユニットは、異なる色の複数の前記第2の印字ヘッドを保持し、前記複数の第2の印字ヘッドを、保持された前記ステンシルに対向する位置に、選択的に配置可能に保持してもよい。
【0015】
上記の課題を解決する本発明の他の態様は、マーキング装置を制御するマーキング制御装置であって、前記マーキング装置は、被加工材に印字する印字ユニットと、前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、前記印字ユニットは、ステンシルを保持するステンシル保持部と、前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含み、前記マーキング制御装置は、前記マーキング装置を制御する制御部を備える。
【0016】
上記の課題を解決する本発明のさらに他の態様は、マーキング装置とマーキング制御装置を備えるマーキングシステムであって、前記マーキング装置は、被加工材に印字する印字ユニットと、前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備え、前記印字ユニットは、ステンシルを保持するステンシル保持部と、前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含み、前記マーキング制御装置は、前記マーキング装置を制御する制御部を備える。
【0017】
上記の課題を解決する本発明のさらに他の態様は、マーキング装置のマーキング制御方法であって、ステンシルを保持するステップと、前記ステンシルを用いずに第1の印字ヘッドで被加工材に印字するステップと、前記ステンシルを用いて第2の印字ヘッドで前記被加工材に印字するステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストでかつ効率的に、鋼種等の識別情報をマーキングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るマーキングシステムの概略構成例を示すブロック図である。
図2図2は、ステンシルの構成例を示す図であり、(A)は平面図、(B)はA−A断面図である。
図3図3は、印字された鋼板の例を示す図であり、(A)は鋼種識別子が印字されていない鋼板、(B)は鋼種識別子が印字された鋼板を示す。
図4図4は、マーキング装置の構成例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図5図5は、印字ユニットの可動範囲の例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図6図6は、印字ユニットの構成例及び動作例を示す図であり、(A)はステンシルを装着していない状態、(B)はステンシルを装着した状態、(C)は印字を行っている状態を示す。
図7図7は、マーキングシステムの印字処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る印字ユニットの構成例を示す図である。
図9図9は、マーキングシステムの印字処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、ステンシル格納部の構成例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照して説明する。各実施形態では、説明を分かり易くするため、母材(被加工材とも呼べる)としての鋼板から切断加工される各部材に、各部材の識別情報(部品識別子)と、鋼種の識別情報(鋼種識別子)とを印字する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るマーキングシステム1の概略構成例を示すブロック図である。マーキングシステム1は、マーキング制御装置10と、マーキング装置20とを備える。マーキングシステム1は、後述するステンシル(ステンシル型プレートのことを意味する)40を格納するステンシル格納部30を備えていてもよい。マーキング制御装置10は、マーキング装置20による鋼板Wへの印字動作を制御する装置である。マーキング装置20は、マーキング制御装置10からの制御指令に従って鋼板Wへ印字する。
【0022】
マーキング制御装置10は、制御部11、記憶部12、インターフェイス部13、表示部14、及び入力部15を備える。制御部11は、マーキング制御装置10及びマーキング装置20の動作を統合的に制御する。制御部11は、印字データ生成部111、及び印字制御部112を備える。
【0023】
印字データ生成部111は、印字データを生成する。具体的には、記憶部12には、印字データの元となる、CADデータなどの構造データが記憶される。この構造データは、例えば、通信インターフェイス(図示せず)を介して他のコンピュータから受信されて、あるいは、リーダ装置(図示せず)を介して記録媒体から読み出されて、記憶部12に格納される。この構造データは、例えば、印字対象である鋼板Wの設計情報(形状、寸法など)や鋼板Wから切断加工される各部材の設計情報(各部材を切断加工するための切断線及び位置)に加え、各部材に印字される設計情報(各部材の部品識別子及び位置など)を含む。さらに、本実施形態の構造データは、各部材に印字される設計情報(鋼板Wの鋼種識別子及び位置)を含む。
【0024】
印字データ生成部111は、上述の構造データを用いて、鋼板Wの表面に各種情報(部品識別子、鋼種識別子など)を印字する制御を行うための印字データを生成する。後述するように、本実施形態では、部品識別子は、第1の印字ヘッド27によって印字され、鋼種識別子は、第2の印字ヘッド28によってステンシル40を用いて印字される。従って、印字データには、少なくとも、第1の印字ヘッド27及び第2の印字ヘッド28を動作させるための制御指令群がスケジュールされている。
【0025】
印字制御部112は、印字データ生成部111により生成された印字データに基づいて、マーキング装置20に制御指令群を送って動作させ、鋼板Wへの印字を実行する。具体的には、印字制御部112は、後述するX軸駆動部21、Y軸駆動部22、Z軸駆動部23、及びθ軸駆動部24を動作させることで、後述する印字ユニット保持部25を移動及び回転させる。また、印字制御部112は、後述する印字ユニット26を動作させることで、印字を実行する。
【0026】
記憶部12は、制御部11が処理に使用する制御プログラムやデータを格納する。インターフェイス部13は、マーキング装置20と通信する。表示部14は、ユーザーに操作画面などを表示する。入力部15は、ユーザーからの操作を受け付ける。
【0027】
マーキング制御装置10は、例えば、PC(Personal Computer)、専用端末、制御盤などの機器を用いて実現できる。そして、制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えるユニットにより実現できる。また、制御部11の処理及び機能は、例えば、ROMや記憶部12に記憶されている所定の制御プログラムをCPUが実行することにより実現できる。記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置により実現できる。インターフェイス部13は、例えば、所定の通信規格に準拠した通信装置により実現できる。表示部14は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置により実現できる。入力部15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置により実現できる。
【0028】
マーキング装置20は、後に詳述するが、複数のスライド軸(リニア軸)を組み合わせた直交ロボットにより基本的に構成される。マーキング装置20は、X軸駆動部21、Y軸駆動部22、Z軸駆動部23、θ軸駆動部24、印字ユニット保持部25、及び印字ユニット26を備える。また、印字ユニット26は、第1の印字ヘッド27と、第2の印字ヘッド28とを備える。また、印字ユニット26は、ステンシル40を着脱可能に保持する。なお、本実施形態では、X軸及びY軸は、水平面を構成する互いに直交する方向に対応し、Z軸は、水平面に直交する高さ方向に対応し、θ軸は、Z軸に平行な回転軸に対応する。
【0029】
X軸駆動部21は、印字ユニット26をX軸方向に移動させる。Y軸駆動部22は、印字ユニット26をY軸方向に移動させる。Z軸駆動部23は、印字ユニット26をZ軸方向に移動させる。θ軸駆動部24は、印字ユニット26をθ軸周りに回転させる。X軸駆動部21、Y軸駆動部22、Z軸駆動部23、及びθ軸駆動部24は、印字制御部112から送られる制御指令に従って動作する。
【0030】
印字ユニット保持部25は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ軸周りに動作できるように、印字ユニット26を保持する。
【0031】
第1の印字ヘッド27は、例えば、インク滴をドットとして吐出する複数のノズルを備える。ここでは、文書の印字などとは異なり、鋼板Wという比較的大きな物を対象としているため、第1の印字ヘッド27は、例えば、直径数mmのノズルを16ドット配列したヘッドを用いれば、印字される文字のサイズや印字速度の要求を十分満たすことができる。
【0032】
なお、図示しないが、印字ユニット26は、第1の印字ヘッド27で使用するインクを格納するインクタンク、インクタンクと第1の印字ヘッド27を接続するインク流路等を備えてもよい。第1の印字ヘッド27のインク吐出動作は、印字制御部112から送られる制御指令に従って制御される。
【0033】
第2の印字ヘッド28は、例えば、インクを噴霧する1つのスプレーノズルを備える。第2の印字ヘッド28から噴霧された霧状のインクは、その一部がステンシル40の孔を通過し、他の一部がステンシル40の孔以外の領域で遮断されることにより、鋼板Wに文字等の形で転写される。
【0034】
なお、図示しないが、印字ユニット26は、第2の印字ヘッド28で使用するインクを格納するインクタンク、インクタンクと第2の印字ヘッド28を接続するインク流路等を備えてもよい。第2の印字ヘッド28のインク噴霧動作は、印字制御部112から送られる制御指令に従って制御される。
【0035】
一般的に、工業的な用途において、スプレーノズルは、ドット式印字ヘッドと比べて低価格かつ小サイズである。第2の印字ヘッド28に、ドット式印字ヘッドではなくスプレーノズルを用いることで、印字ユニット26を低コストかつ小サイズで提供することができる。また、一般的に、ドット式印字ヘッドは、特殊な専用インクを使用しなければならない。一方、スプレーノズルには、一般消費者向けの低価格のインクを用いることができるため、保守費用を低減することができる。
【0036】
図2は、ステンシル40の構成例を示す図であり、(A)は平面図、(B)はA−A断面図である。ステンシル40は、支持部材41、平板42、及び枠体43から構成される。平板42には、転写する文字等の形状の孔44(図2では「NA」)が形成されている。
【0037】
枠体43は、平板42の上面(第2の印字ヘッド28が配置される側)の外周に形成されている。この枠体43は、平板42の上面に溜まったインクが平板42の外周から下に垂れるのを防ぐことができる。なお、孔44の外周にも孔44の輪郭に沿って枠体(あるいは壁)が立設されてもよい。このようにすれば、平板42の上面に溜まったインクが孔44から下に垂れるのを防ぐことができる。
【0038】
支持部材41は、枠体43の外周に外方向に伸びるように接続されている。後に詳述するが、支持部材41は、印字ユニット26によって着脱可能に保持される。
【0039】
なお、ステンシル40は、例えば、ステンレス、合成樹脂などの、インクに対して耐腐食性を有する材料で作製するのが望ましい。
【0040】
図1の説明に戻る。ステンシル格納部30は、ステンシル40を格納する。ステンシル格納部30は、例えば、ステンシル40を置くためのテーブルを備え、モータ、歯車、レールなどの機械構造により、当該テーブルをステンシル格納部30の筐体から出し入れすることができる。
【0041】
図3は、印字された鋼板の例を示す図であり、(A)は鋼種識別子が印字されていない鋼板W1、(B)は鋼種識別子が印字された鋼板W2を示す。鋼板W1及び鋼板W2は、略長方形である。鋼板W1の表面には、各部材に対して、部品識別子bが印字されている。鋼板W2の表面には、各部材に対して、部品識別子b、及び鋼種識別子cが印字されている。図の例では、部品識別子bは、文字列と文字列をハイフンで繋げた文字列であり、鋼種識別子cは、2文字の文字列である。鋼種識別子cは、部品識別子bの近傍に印字されている。各部材の輪郭である切断線aは、実際には印字されないが、参考のため図示している。
【0042】
上述したように、本実施形態では、部品識別子bは、第1の印字ヘッド27によって印字され、鋼種識別子cは、第2の印字ヘッド28によってステンシル40を用いて印字される。1枚の鋼板Wは、通常1つの鋼種であるため、当該鋼種に対応する1枚のステンシル40が使用される。鋼種の異なる複数の鋼板Wを印字対象とする場合は、各鋼種に対応する複数のステンシル40が用意される。
【0043】
次に、図4及び図5を参照して、マーキング装置20の機械的な構造例について説明する。
【0044】
図4は、マーキング装置20の構成例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。図5は、印字ユニット26の可動範囲の例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【0045】
マーキング装置20は、鋼板Wを搬送するコンベア装置C及び鋼板Wよりも上方に設置される。本図では、コンベア装置Cは、Y軸に沿った矢印方向へ鋼板Wを搬送する。
【0046】
マーキング装置20は、リニア軸部201及びリニア軸部202と、接続部材203とを備える。リニア軸部201及びリニア軸部202は、X軸方向に伸び、互いに平行に配置されている。接続部材203は、Y軸方向に伸び、リニア軸部201とリニア軸部202の端部(図中の右端部)を接続する。印字ユニット保持部25は、リニア軸部201とリニア軸部202の下側に、X軸方向に移動可能に設けられている。印字ユニット26は、印字ユニット保持部25の下方に保持されている。
【0047】
印字ユニット保持部25は、第1のベース部251と、第2のベース部252と、リニア軸部253と、伸縮部254と、回転軸部255とを備える。第1のベース部251及び第2のベース部252は、それぞれ、リニア軸部201及びリニア軸部202の下側に、X軸方向にスライド移動可能に装着されている。リニア軸部253は、Y軸方向に伸び、第1のベース部251及び第2のベース部252の下側に装着されている。
【0048】
伸縮部254は、Z軸方向に伸び、その上端部は、リニア軸部253にY軸方向にスライド移動可能に装着されている。伸縮部254は、Z軸方向に伸縮自在であり、その下端部に、回転軸部255が装着されている。回転軸部255は、Z軸に平行なθ軸周りに回転可能であり、その下端部に、印字ユニット26が装着されている。
【0049】
第1のベース部251及び第2のベース部252がリニア軸部201及びリニア軸部202上をX軸方向にスライド移動することで、印字ユニット26はX軸方向に移動する。また、伸縮部254がリニア軸部253上をY軸方向にスライド移動することで、印字ユニット26はY軸方向に移動する。また、伸縮部254がZ軸方向に伸縮することで、印字ユニット26はZ軸方向に移動する。また、回転軸部255がθ軸周りに回転することで、印字ユニット26はXY平面上で回転する。
【0050】
印字ユニット26のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の可動範囲の例は、それぞれ、図5の(A)〜(C)に示すとおりである。
【0051】
なお、リニア軸部201及びリニア軸部202は、X軸駆動部21により駆動される。また、リニア軸部253は、Y軸駆動部22により駆動される。また、伸縮部254は、Z軸駆動部23により駆動される。また、回転軸部255は、θ軸駆動部24により駆動される。
【0052】
図6は、印字ユニット26の構成例及び動作例を示す図であり、(A)はステンシル40を装着していない状態、(B)はステンシル40を装着した状態、(C)は印字を行っている状態を示す。上述したように、ステンシル格納部30は、ステンシル40が置かれたテーブル(図示せず)を筐体から出し入れすることができる。
【0053】
印字ユニット26は、ベース部261を備える。ベース部261は、第1の印字ヘッド27と第2の印字ヘッド28を保持しており、第1の印字ヘッド27と第2の印字ヘッド28のノズルが形成された面は、下方を向いている。また、ベース部261には、ステンシル保持部262が設けられている。ステンシル保持部262の下端部には、ステンシル40を保持する保持部材263が設けられており、保持部材263は、第2の印字ヘッド28の下面よりも下に配置されている。ステンシル保持部262は、印字制御部112の制御に従って、ステンシル40の高さを変更すべく、Z軸方向に伸縮自在であってもよい。この場合、保持部材263もZ軸方向に移動可能である。
【0054】
なお、本実施形態では、保持部材263は、吸着をオンオフ制御可能な電磁石を含み、印字制御部112により制御される。これにより、保持部材263は、ステンシル40の支持部材41を吸着したり放したりすることが可能となる。もちろん、保持部材263が支持部材41を保持する仕組みは、電磁石に限られず、例えば、真空吸引、物理的な把持機構などであってもよい。
【0055】
ステンシル格納部30は、印字制御部112からの制御指令に従って、テーブルを移動させてステンシル40を筐体外部に出す(図6(A))。
【0056】
マーキング装置20は、印字制御部112からの制御指令に従って、保持部材263が支持部材41の上面に位置するように、印字ユニット26を移動させ、保持部材263で支持部材41を保持する(図6(B))。このとき、ステンシル40の平板42は、第2の印字ヘッド28のノズル面に対向するように配置される。印字制御部112は、保持部材263をZ軸方向に上下移動させてもよい。
【0057】
なお、ステンシル保持部262は、印字制御部112の制御に従って保持部材263をθ軸回転させる回転軸部を備えていてもよい。このようにすれば、保持したステンシル40のXY平面内の向きを適切に変更することができる。
【0058】
マーキング装置20は、印字制御部112からの制御指令に従って、第1の印字ヘッド27及び第2の印字ヘッド28が鋼板Wの上方に位置するように、印字ユニット26を移動させ、第1の印字ヘッド27による印字と第2の印字ヘッド28によるステンシル40を使った印字を実行する(図6(C))。
【0059】
図7は、マーキングシステムの印字処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
本フローチャートの開始時において、1つ以上のステンシル40がステンシル格納部30に格納されており、保持部材263にはステンシル40が保持されていないものとする。また、本フローチャートの開始後に、1つ以上の鋼板Wが順次コンベア装置C上で搬送され、印字データ生成部111により鋼板Wごとに順次印字データが生成されるものとする。
【0061】
まず、印字制御部112は、次の鋼板Wの印字データがあるかどうかを判定する(ステップS10)。次の鋼板Wの印字データがないと判定した場合(ステップS10でNO)、印字制御部112は、ステップS10の処理を再度実行する。次の鋼板Wの印字データがあると判定した場合(ステップS10でYES)、印字制御部112は、印字データを印字データ生成部111から取得する(ステップS20)。
【0062】
その後、印字制御部112は、鋼種に変更があるか否かを判定する。(ステップS30)。具体的には、印字制御部112は、初回の印字処理であるか否か(すなわちステンシル40が保持されているか否か)を判定する。また、印字制御部112は、初回の印字処理でない場合(すなわちステンシル40が保持されている)場合には、前回の印字処理を行った鋼種と今回の印字処理の対象となる鋼種が一致するか否かを判定する。初回の印字処理であると判定した場合、又は、前回と今回の鋼種が一致しないと判定した場合、印字制御部112は、鋼種に変更があると判定する。
【0063】
鋼種に変更があると判定した場合(ステップS30でYES)、印字制御部112は、ステンシル40を交換する(ステップS40)。
【0064】
具体的には、初回の印字処理であると判定した場合、印字制御部112は、今回の鋼種に対応するステンシル40を出すようにステンシル格納部30に指示する。また、印字制御部112は、保持部材263が支持部材41の上面まで移動して支持部材41を保持するように、マーキング装置20に指示する。また、印字制御部112は、第1の印字ヘッド27及び第2の印字ヘッド28が鋼板Wの上方に移動するように、マーキング装置20に指示する。
【0065】
一方、前回と今回の鋼種が一致しないと判定した場合、印字制御部112は、前回の鋼種に対応するステンシル40を置くためのテーブルを出すようにステンシル格納部30に指示する。また、印字制御部112は、保持部材263をテーブルの上面まで移動して支持部材41を放すように、マーキング装置20に指示する。それから、印字制御部112は、今回の鋼種に対応するステンシル40を出すようにステンシル格納部30に指示する。また、印字制御部112は、保持部材263が支持部材41の上面まで移動して支持部材41を保持するように、マーキング装置20に指示する。また、印字制御部112は、第1の印字ヘッド27及び第2の印字ヘッド28が鋼板Wの上方に移動するように、マーキング装置20に指示する。
【0066】
鋼種に変更がないと判定した場合(ステップS30でNO)、又は、ステップS40でステンシル40を交換した後、印字制御部112は、印字を実行し(ステップS50)、処理をステップS10に戻す。具体的には、印字制御部112は、印字ユニット保持部25を移動及び回転させるとともに、第1の印字ヘッド27にインクを吐出させ、また、第2の印字ヘッド28にインクを噴霧させる。このようにして、鋼板Wの表面には、部品識別子、鋼種識別子などが印字される。
【0067】
本実施形態では、印字データ生成部111は、印字ユニット26の移動及び回転ができる限り少なくなるようにスケジュールされた印字データを生成し、印字制御部112はこの印字データを用いて印字ユニット26を制御する。例えば、部材ごとに、第1の印字ヘッド27により部品識別子を印字した直前若しくは直後又は並列に、第2の印字ヘッド28により鋼種識別子を印字する。このようにすれば、印字ユニット26の移動及び回転を少なくすることができ、印字時間を減らして効率的に印字を行うことができる。これに対して、例えば、複数部材について部品識別子を印字した後、再び複数部材について鋼種識別子を印字すると、移動距離及び印字時間が長くなり、効率が低下する。
【0068】
また、本実施形態では、第2の印字ヘッド28及びステンシル40は、第1の印字ヘッド27の近傍に設けられている。従って、部材のサイズや形状に拠って図3(B)に示すように部品識別子bと鋼種識別子cを近接して配置できない場合を除いて、第1の印字ヘッド27と第2の印字ヘッド28による印字処理を、印字ユニット26を移動や回転させずに実行することができる。
【0069】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。本実施形態によれば、低コストでかつ効率的に、鋼種等の識別情報をマーキングすることができる。
【0070】
[第2実施形態]
第1実施形態のマーキング装置20は、1つの第2の印字ヘッド28を備え、1色の印字に使用されることを前提としている。第2実施形態のマーキング装置20は、複数の第2の印字ヘッド28を備え、複数色の印字に使用することができる。以下、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0071】
図8は、本発明の第2実施形態に係る印字ユニット26aの構成例を示す図である。図8は、印字ユニット26aの平面図を示している。
【0072】
印字ユニット26aは、円環状レール部264及び回転軸部265を備える。円環状レール部264は、ベース部261に保持されており、レールの下側には、レールに沿って複数の第2の印字ヘッド28(図では7個)が配列されている。各第2の印字ヘッド28は、レールに沿って移動可能に設けられている。回転軸部265も、ベース部261に保持されており、各第2の印字ヘッド28は、回転軸部265の回転によって移動することができる。
【0073】
各第2の印字ヘッド28を移動させる機構は、特に限定されないが、例えば次のような機構である。円環状レール部264の内部には、同様に円環状のスライドレールが設けられる。各第2の印字ヘッド28は、このスライドレールに固定されている。また、スライドレールの内周側には、内歯車が形成されており、回転軸部265の回転軸には、内歯車と噛み合う外歯車が設けられる。これにより、回転軸部265の回転がスライドレールの移動に変換され、各第2の印字ヘッド28がレールに沿って移動することができる。
【0074】
なお、図示しないが、印字ユニット26aは、各第2の印字ヘッド28で使用する複数色のインクを格納する複数のインクタンク、各インクタンクと各第2の印字ヘッド28を接続する複数のインク流路等を備えてもよい。各第2の印字ヘッド28のインク噴霧動作は、印字制御部112から送られる制御指令に従って制御される。また、回転軸部265の回転は、印字制御部112から送られる制御指令に従って制御される。
【0075】
図9は、マーキングシステムの印字処理の一例を示すフローチャートである。図9のフローチャートは、図7のフローチャートのステップS40とステップS50の間に、ステップS60とステップS70を追加したものである。
【0076】
鋼種に変更がないと判定した場合(ステップS30でNO)、又は、ステップS40でステンシル40を交換した後、印字制御部112は、印字色に変更があるか否かを判定する(ステップS60)。具体的には、印字制御部112は、初回の印字処理であるか否かを判定する。また、印字制御部112は、初回の印字処理でない場合には、前回の印字処理を行った印字色と今回の印字処理の印字色が一致するか否かを判定する。初回の印字処理であると判定した場合、又は、前回と今回の印字色が一致しないと判定した場合、印字制御部112は、印字色に変更があると判定する。なお、印字色は、印字データに含まれている。
【0077】
印字色に変更があると判定した場合(ステップS60でYES)、印字制御部112は、第2の印字ヘッド28を交換する(ステップS70)。具体的には、印字制御部112は、今回の印字色に対応する第2の印字ヘッド28を選択して、レール上の所定位置(印字を行うための位置、ステンシル40に対向する位置)に移動するように、マーキング装置20に指示する。
【0078】
印字色に変更がないと判定した場合(ステップS60でNO)、又は、ステップS70で第2の印字ヘッド28を交換した後、印字制御部112は、印字を実行し(ステップS50)、処理をステップS10に戻す。
【0079】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。本実施形態によれば、低コストでかつ効率的に、鋼種等の識別情報を複数色でマーキングすることができる。
【0080】
ステンシル格納部30の構成は、上述した例に限られない。図10に、より具体的なステンシル格納部30aの構成例を示す。
【0081】
図10は、ステンシル格納部30aの構成例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。ステンシル格納部30aは、各ステンシル40を把持する複数の把持部(不図示)と、これらの把持部が外周に設けられた回転部31とを備える。各把持部は、例えば、歯車、モータ、レールなどの機械構造によって伸縮可能であり、各ステンシル40をステンシル格納部30の筐体から出し入れすることができる。また、回転部31は、回転することにより、選択した把持部を所定位置(例えば、保持部材263がステンシル40を保持する位置)に移動させることができる。各把持部の伸縮と回転部31の回転は、印字制御部112により制御される。
【0082】
本発明は、上記の各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、それらの態様を含むものである。ある実施形態の一部の構成要素を、他の実施形態に加えたり、他の実施形態の一部の構成要素と置換したりしてもよい。ある実施形態の構成要素のうち、一部の構成要素を省略することもできる。
【0083】
ある変形例では、マーキング装置20の印字ユニット26を動作せるための機械的構造は、複数のスライド軸を組み合わせた直交ロボット型ではなく、スカラロボット型であってもよい。例えば、マーキング装置20は、X軸方向に伸びるリニア軸部と、リニア軸部上にX軸方向に移動可能に装着されたベース部と、ベース部の下側に装着されたロボットアームとを備える。当該ロボットアームは、例えば、6軸などの多軸アームであり、XYZ軸方向にその先端部を移動させることができる。この変形例では、ベース部とロボットアームが印字ユニット保持部に相当する。印字ユニット26は、このロボットアームの先端部に設けられる。このような構成であっても、低コストでかつ効率的に、鋼種等の識別情報をマーキングすることができる。リニア軸部上に複数のベース部を設け、各ベース部にそれぞれロボットアームを設けてもよい。このようにすれば、各ロボットアームが担当する印字領域が小さくなるので、印字時間を短縮できる。
【0084】
ある変形例では、印字ユニット26は、インクの吸引部を備えてもよい。第2の印字ヘッド28は、インクを噴霧するため、例えば第1の印字ヘッド27の印字領域までインクを飛散させて汚すおそれがある。これを防ぐため、例えば第1の印字ヘッド27と第2の印字ヘッド28の間に、インクを吸引する吸引部を設けることができる。吸引部は、例えば、真空ポンプ、吸引管、インクタンクなどにより構成することができる。吸引部の吸引動作は、印字制御部112から送られる制御指令に従って制御される。
【0085】
なお、図1で示したマーキングシステム1の構成は、その構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本発明が制限されることはない。マーキングシステム1の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。また、各構成要素の処理又は機能の分担は、本発明の目的及び効果を達成できるのであれば、図示したものに限られない。
【0086】
また、図7及び図9で示したフローチャートの処理単位は、マーキングシステム1の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が制限されることはない。マーキングシステム1の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。さらに、本発明の目的及び効果を達成できるのであれば、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0087】
また、マーキング装置20の各構成要素の配置、寸法、形状等の構成は、本発明の目的を達成できれば、上記に説明あるいは図示した例に限られない。また例えば、「水平」、「直交」などの構成要素の関係や形状を表す言葉は、本発明の目的及び効果を達成できるのであれば、言葉どおりの厳密な意味に限られず、その意味と実質的に同一な場合も含むことができる。
【0088】
本発明は、マーキングシステム、マーキング制御装置、マーキング装置に限られず、マーキング制御方法、コンピュータ読み取り可能なプログラム、ステンシル、などの様々な態様で提供することができる。
【0089】
また、本発明は、鋼板への印字だけでなく、様々なワークへの印字に利用できる。また、本発明は、部品識別子と鋼種識別子の印字だけでなく、様々な印字内容の印字に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1…マーキングシステム、10…マーキング制御装置、11…制御部、12…記憶部、13…インターフェイス部、14…表示部、15…入力部、20…マーキング装置、21…X軸駆動部、22…Y軸駆動部、23…Z軸駆動部、24…θ軸駆動部、25…印字ユニット保持部、26…印字ユニット、26a…印字ユニット、27…第1の印字ヘッド、28…第2の印字ヘッド、30…ステンシル格納部、30a…ステンシル格納部、31…回転部、40…ステンシル、41…支持部材、42…平板、43…枠体、44…孔、111…印字データ生成部、112…印字制御部、201…リニア軸部、202…リニア軸部、203…接続部材、251…第1のベース部、252…第2のベース部、253…リニア軸部、254…伸縮部、255…回転軸部、261…ベース部、262…ステンシル保持部、263…保持部材、264…円環状レール部、265…回転軸部、W…鋼板、C…コンベア装置、a…切断線、b…部品識別子、c…鋼種識別子
【要約】
【課題】低コストでかつ効率的に、鋼種等の識別情報をマーキングする。
【解決手段】マーキング装置は、被加工材に印字する印字ユニットと、前記印字ユニットを移動可能に保持する印字ユニット保持部と、を備える。前記印字ユニットは、ステンシルを保持するステンシル保持部と、前記ステンシルを用いずに前記被加工材に印字する第1の印字ヘッドと、前記ステンシルを用いて前記被加工材に印字する第2の印字ヘッドと、を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10