(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水平検知凹部として、互いに直交するX−Y方向のX方向の磁場を検知する少なくとも2か所のX検知凹部と、Y方向の磁場を検知する少なくとも2か所のY検知凹部とが、同じ前記基板に設けられている請求項2ないし4のいずれかに記載の磁気検知装置。
前記水平検知凹部として、互いに直交するX−Y方向のX方向の磁場を検知する少なくとも2か所のX検知凹部と、Y方向の磁場を検知する少なくとも2か所のY検知凹部とを、同じ前記基板に設ける請求項8記載の磁気検知装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された磁気センサでは、一対の検知部を、基板の溝の同一の傾斜面に形成している。外部の磁界に対して一対の検知部が同じ極性の感度を持つことになるため、ブリッジ回路を構成するには、それぞれの検知部と固定抵抗とを直列に接続しなくてはならなくなる。固定抵抗は外部磁界に反応しないため、ブリッジ回路で検知される磁気検知出力の感度を高くすることに限界がある。
【0008】
特許文献2に記載の磁気抵抗効果素子は、シリコン基板の基板面に垂直な磁場を与えてアニール処理し、対向する傾斜面に形成された磁気抵抗効果素子のPIN層の磁化を傾斜面の深さ方向で且つ同じ上向きに揃えている。そのため、外部磁界に対して、対向する傾斜面に形成された磁気抵抗効果素子の抵抗値を互いに逆の極性とすることが可能である。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の発明は、磁気抵抗効果素子をどのようにして製造するのかの記載に留まっており、それぞれの磁気抵抗効果素子を使用してどのような検知回路を構成するのか不明となっている。
【0010】
また、特許文献2に記載の磁気抵抗効果素子は、シリコン基板の基板面に対して上向きの磁場を与えてアニール処理することでPIN層の磁化を固定しているため、全ての磁気抵抗効果素子のPIN層の磁化の固定方向が上向きであり、形成できる磁気抵抗効果素子の種類が限られることになる。すなわち、PIN層の磁化の固定を磁場中アニールで設定する方法では、同じ基板に感度軸が異なる磁気抵抗効果素子を混在させて配置することが困難である。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、基板の傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子を使用して、種々の向きの磁気を高精度に検知できるようにした磁気検知装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、凹部を有する基板と、前記凹部の傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子とを有する磁気検知装置において、
前記凹部は、互いに対向して基板表面に向けて対向間隔が徐々に広がる第1の傾斜側面と第2の傾斜側面とを有し、前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に磁気抵抗効果素子が設けられ、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層と、自由磁性層と、前記固定磁性層と前記自由磁性層との間に形成された非磁性中間層とを有し、
前記固定磁性層は、第1の強磁性層と、前記非磁性中間層に接する第2の強磁性層と、前記両強磁性層に挟まれた中間層とを有し、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とで磁化が反平行に固定されたセルフピン止め構造で、
それぞれの前記磁気抵抗効果素子は、前記第2の強磁性層の磁化の向きで決まる感度軸が、前記傾斜側面に沿い且つ前記基板の厚さ方向に向けて斜めに設定され
ており、
前記凹部は、前記基板の少なくとも2か所に設けられたZ検知凹部であり、
一方の前記Z検知凹部は、前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子の前記感度軸が、共に前記基板の板厚方向において下向きとなっており、他方の前記Z検知凹部は、前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子の前記感度軸が、共に前記基板の板厚方向において上向きとなっており、
異なる前記Z検知凹部の前記第1の傾斜側面に設けられた、前記感度軸の向きが互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子が直列に接続されて第1の素子列が構成され、
異なる前記Z検知凹部の前記第2の傾斜側面に設けられた、前記感度軸の向きが互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子が直列に接続されて第2の素子列が構成され、
前記第1の素子列と、前記第2の素子列とが、並列に接続されて前記ブリッジ回路が構成されて、前記基板の板厚方向であるZ方向の磁気が検知されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の磁気検知装置は、前記固定磁性層の第1の強磁性層と第2の強磁性層の磁化の向きが、磁場中成膜で決められる。
【0017】
また、本発明の磁気検知装置は、前記凹部として、前記Z検知凹部と共に少なくとも2か所の水平検知凹部が設けられ、
前記水平検知凹部に設けられた前記磁気抵抗効果素子のうちの、前記感度軸の向きが前記基板表面に沿って互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子が直列に接続されて素子列が構成され、2列の前記素子列が並列に接続されてブリッジ回路が構成されており、
前記ブリッジ回路で、前記基板表面と平行な方向の磁気が検知されるものである。
【0019】
あるいは、同じ前記水平検知凹部の前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に設けられた前記磁気抵抗効果素子は、感度軸の向きが前記基板表面に沿って同じ向きで、
異なる前記水平検知凹部の間では、前記磁気抵抗効果素子の感度軸の向きが前記基板表面に沿って互いに逆向きであり、
異なる前記水平検知凹部の前記第1の傾斜側面に設けられた、前記感度軸の向きが互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子が直列に接続されて第1の素子列が構成され、
異なる前記水平検知凹部の前記第2の傾斜側面に設けられた、前記感度軸の向きが互いに逆向きとなる磁気抵抗効果素子が直列に接続されて第2の素子列が構成され、
前記第1の素子列と、前記第2の素子列とが、並列に接続されて前記ブリッジ回路が構成されている。
【0020】
あるいは本発明は、凹部を有する基板と、前記凹部の傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子とを有する磁気検知装置において、
前記凹部は、互いに対向して基板表面に向けて対向間隔が徐々に広がる第1の傾斜側面と第2の傾斜側面とを有し、前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に磁気抵抗効果素子が設けられ、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層と、自由磁性層と、前記固定磁性層と前記自由磁性層との間に形成された非磁性中間層とを有し、
前記固定磁性層は、第1の強磁性層と、前記非磁性中間層に接する第2の強磁性層と、前記両強磁性層に挟まれた中間層とを有し、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とで磁化が反平行に固定されたセルフピン止め構造で、
それぞれの前記磁気抵抗効果素子は、前記第2の強磁性層の磁化の向きで決まる感度軸が、前記傾斜側面に沿い且つ前記基板の厚さ方向に向けて斜めに設定されており、
前記凹部は、前記基板の少なくとも2か所に設けられたZ検知凹部と、前記基板の少なくとも2か所に設けられた水平検知凹部であり、
前記Z検知凹部に設けられた前記磁気抵抗効果素子のうちの、前記感度軸の向きが前記基板の板厚方向で互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子が直列に接続されて素子列が構成され、2列の前記素子列が並列に接続されてブリッジ回路が構成されて、このブリッジ回路で、前記基板の板厚方向であるZ方向の磁気が検知され、
同じ前記水平検知凹部の前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に設けられた前記磁気抵抗効果素子は、感度軸の向きが前記基板表面に沿って同じ向きで、異なる前記水平検知凹部の間では、前記磁気抵抗効果素子の感度軸の向きが前記基板表面に沿って互いに逆向きであり、
異なる前記水平検知凹部の前記第1の傾斜側面に設けられた、前記感度軸の向きが互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子が直列に接続されて第1の素子列が構成され、異なる前記水平検知凹部の前記第2の傾斜側面に設けられた、前記感度軸の向きが互いに逆向きとなる磁気抵抗効果素子が直列に接続されて第2の素子列が構成され、
前記第1の素子列と、前記第2の素子列とが、並列に接続されて前記ブリッジ回路が構成され、このブリッジ回路で、前記基板表面と平行な方向の磁気が検知されることを
特徴とするものである。
本発明の磁気検知装置は、前記水平検知凹部として、互いに直交するX?Y方向のX方向の磁場を検知する少なくとも2か所のX検知凹部と、Y方向の磁場を検知する少なくとも2か所のY検知凹部とが、同じ前記基板に設けられているものとして構成できる。
【0021】
次に、本発明は、凹部を有する基板と、前記凹部の傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子とを有する磁気検知装置の製造方法において、
前記基板に、互いに対向して基板表面に向けて対向間隔が徐々に広がる第1の傾斜側面と第2の傾斜側面とを有する前記凹部を加工して、前記第1の傾斜側面と前記第2の傾斜側面に磁気抵抗効果素子を設け、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層と、自由磁性層と、前記固定磁性層と前記自由磁性層との間に形成された非磁性中間層とを積層して形成し、
前記固定磁性層は、第1の強磁性層と、前記非磁性中間層に接する第2の強磁性層と、前記両強磁性層に挟まれた中間層とを有するセルフピン止め構造で、磁場中成膜により前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とで磁化を反平行に固定し、
それぞれの前記磁気抵抗効果素子は、前記第2の強磁性層の磁化の向きで決まる感度軸を、前記傾斜側面に沿い且つ前記基板の厚さ方向に向けて斜めに設定し、
前記磁気抵抗効果素子のうちの、前記感度軸の向きが前記基板の板厚方向で互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子を直列に接続して素子列を構成し、2列の前記素子列を並列に接続してブリッジ回路を構成する
ものであり、
前記凹部として、同じエッチング処理により前記基板の少なくとも2か所にZ検知凹部を加工し、異なる前記Z検知凹部の同一方向を向く傾斜側面上の前記磁気抵抗効果素子を、前記基板の板厚方向で前記感度軸の方向が互いに逆向きになるものとし、
板厚方向での前記感度軸の方向が互いに逆向きとなる前記磁気抵抗効果素子を直列に接続して前記素子列を構成し、
前記ブリッジ回路で前記基板の板厚方向であるZ方向の磁気を検知できるようにすることを特徴とするものである。
【0023】
さらに、本発明の磁気検知装置の製造方法は、前記基板に前記Z検知凹部と共に少なくとも2か所の水平検知凹部を設け、
前記水平検知凹部に設けられた前記磁気抵抗効果素子として、基板表面に沿う方向での前記感度軸の向きが互いに異なるものを混在させ、
前記感度軸方向が互いに逆向きとなる記磁気抵抗効果素子を直列に接続して前記素子列を構成し、
前記ブリッジ回路で前記基板の基板表面に沿う水平方向の磁気を検知できるようにするものである。
【0024】
本発明の磁気検知装置の製造方法は、前記水平検知凹部として、互いに直交するX−Y方向のX方向の磁場を検知する少なくとも2か所のX検知凹部と、Y方向の磁場を検知する少なくとも2か所のY検知凹部とを、同じ前記基板に設けることが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の磁気検知装置は、基板に形成された凹部において対向する第1の傾斜側面と第2の傾斜側面の双方に磁気抵抗効果素子を設け、対向する傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子は、固定磁性層の固定磁化で決まる感度軸の向きが、傾斜側面に沿い且つ基板の厚さ方向に向けて斜めに設定されている。感度軸の向きが互いに逆向きとなる磁気抵抗効果素子を直列に接続して素子列を構成し、2つの素子列でブリッジ回路を構成することで、高感度な磁気検知出力を得るブリッジ回路を構成することができる。
【0026】
本発明では、固定磁性層を、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に中間層が挟まれたセルフピン止め構造として、第1の強磁性層と第2の強磁性層の少なくとも一方を磁場中で成膜して、第2の強磁性層の固定磁化の向き決まる感度軸を設定している。固定磁性層を磁場中で成膜して固定磁化の向きを固定することで、感度軸の向きが相違する磁気抵抗効果素子を同じ基板に混在して形成することができる。その結果、共通の基板にZ検知部とX検知部およびY検知部を形成することができる。
【0027】
また、第1の傾斜側面に設けた磁気抵抗効果素子と第2の傾斜側面に設けた磁気抵抗効果素子とで、固定磁化を前記基板の板厚方向において逆向きに設定し、あるいは第1の傾斜側面に設けた磁気抵抗効果素子と第2の傾斜側面に設けた磁気抵抗効果素子とで、固定磁化を前記基板の板厚方向において同じ向きに設定することで、感度軸の向きが相違する磁気抵抗効果素子を全て傾斜側面に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の実施の形態の磁気検知装置1を示している。
磁気検知装置1は基板2を有しており、基板2の実装表面(基板表面)3に、Z検知部10とX検知部20とY検知部30が設けられている。
【0030】
Z検知部10は、基板2の実装表面3に垂直な向きのZ方向の磁気を検知するものである。
図2(A)に示す第1の実施の形態では、Z検知部10に、少なくとも2個のZ検知凹部11A,11Bが形成されている。X検知部20は、基板2の実装表面3と平行な向きのX方向の磁気を検知するものである。
図2(B)に示すように、X検知部20には、少なくとも2個のX検知凹部21A,21Bが形成されている。Y検知部30は、基板2の実装表面3と平行な向きのY方向の磁気を検知するものである。
図2(C)に示すように、Y検知部30には、少なくとも2個のY検知凹部31A,31Bが形成されている。
【0031】
X検知部20とY検知部30は、実装表面3に沿う方向の磁気を検知する水平検知部であり、X検知凹部21A,21Bと、Y検知凹部31A,31Bは、水平検知凹部である。
【0032】
図2(A)に示すように、Z検知凹部11A,11Bは、底面12と、X1側に位置する第1の傾斜側面13と、X2側に位置する第2の傾斜側面14を有している。さらに、Y方向に対向する傾斜側面15,16を有している。第1の傾斜側面13と第2の傾斜側面14はX方向で対向し、その対向間隔は、底面12側で最も短く、実装表面3に向かうにしたがって徐々に広くなるように決められている。
【0033】
図3(A)と
図11(A)に示すように、使用している基板2は実装表面3の面方位が(100)面のシリコン(Si)基板である。基板2の実装表面3において、Z検知凹部11A,11Bを形成する面以外を酸化ケイ素(SiO
2)などの層でマスキングし、エッチング液を使用して異方性エッチングを行うことで、(111)面である第1の傾斜側面13と第2の傾斜側面14および他の2つの傾斜側面15,16を有する凹部が形成される。各傾斜側面13,14,15,16の水平面に対する傾き角度θは約55度である。
【0034】
図11(B)(C)に、基板2の他の加工方法が示されている。
図11(B)に示す加工方法では、面方位が(100)面のN型のシリコン基板の上に面方位が(100)面のP型のシリコン基板を重ねたものを基板2として使用し、電気化学エッチングを行う。この電気化学エッチングでは、N型のシリコン基板の表面がエッチングのストッパ面となり、Z検知凹部11A,11Bの第1の傾斜側面13と第2の傾斜側面14の厚さ方向(Z方向)の寸法を均一に且つ高精度に形成することが可能である。
【0035】
図11(C)に示す加工方法では、面方位が(100)面のP型のシリコン基板の上に面方位が(100)面のN型のシリコン基板を重ねたものを基板2として使用し、パルス電流陽極酸化法でエッチングを行なう。この加工方法によっても、P型のシリコン基板の表面をエッチングのストッパ面にでき、第1の傾斜側面13と第2の傾斜側面14の厚さ方向(Z方向)の寸法を均一に且つ高精度に形成することができる。
【0036】
図2(B)に示すように、水平検知凹部であるX検知凹部21A,21Bは、X方向の幅寸法よりもY方向の長さ寸法が大きく形成された長尺の長方形である。
図3(B)にも示すように、X検知凹部21A,21Bは、X1側に第1の傾斜側面23が、X2側に第2の傾斜側面24が形成されている。第1の傾斜側面23と第2の傾斜側面24のX方向での対向間隔は、底面22において最も短く、実装表面3に向けて徐々に広くなるように形成されている。また、
図2(B)に示すように、X検知凹部21A,21BにはY方向で対向する傾斜側面25,26が形成されている。
【0037】
X検知凹部21A,21Bの形成方法は、Z検知凹部11A,11Bの形成方法と同じであり、
図11(A)(B)(C)のいずれかに示すエッチング方法で加工することができる。
【0038】
図2(C)に示すように、水平検知凹部であるY検知凹部31A,31Bは、Y方向の幅寸法よりもX方向の長さ寸法が大きい長尺の長方形である。Y検知凹部31A,31Bは底面32と、Y1側に位置する第1の傾斜側面33とY2側に位置する第2の傾斜側面34を有している。第1の傾斜側面33と第2の傾斜側面34のY方向の対向間隔は、底面32において最短であり、実装表面3に向けて対向間隔が徐々に広くなっている。またY検知凹部31A,31Bには、X方向で対向する傾斜側面35,36が形成されている。
【0039】
Y検知凹部31A,31Bの形成方法は、Z検知凹部11A,11Bの形成方法と同じであり、
図11(A)(B)(C)のいずれかに示すエッチング方法で形成される。
【0040】
図2(A)と
図3(A)に示すように、一方のZ検知凹部11Aの第1の傾斜側面13に第1の磁気抵抗効果素子40(R1)が、第2の傾斜側面14に第2の磁気抵抗効果素子40(R2)が設けられている。他方のZ検知凹部11Bでは、第1の傾斜側面13に第4の磁気抵抗効果素子40(R4)が、第2の傾斜側面14に第3の磁気抵抗効果素子40(R3)が設けられている。
【0041】
磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)は、いずれも同じ構造のGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)である。
図4(A)(B)に磁気抵抗効果素子40の積層構造が示されている。
【0042】
図4(A)に示す磁気抵抗効果素子40の製造工程では、基板2の表面にNi−Fe−Crのシード層42を形成し、その上に、Co−Feの第1の強磁性層43とRuの中間層44とCo−Feの第2の強磁性層45を順に成膜して、3層構造のセルフピン止め構造の固定磁性層を形成する。
【0043】
図3(A)に示すように、Z検知部10に磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)を形成するときは、X軸方向(X2方向)の磁場Bxを印加しながら、第1の強磁性層43を成膜し、中間層44を成膜した後に、第1の強磁性層43の成膜時とはX軸方向で逆向き方向(X1方向)の磁場Bxを印加しながら第2の強磁性層45を成膜する。
【0044】
Ruの中間層44の厚さを適正に設定することで、第1の強磁性層43の磁化がX2方向に向けて固定され、第2の強磁性層45の磁化がX1方向に向けて固定される。第2の強磁性層45の磁化の向きが固定磁化(P)の方向となる。
図2と
図3では固定磁化(P)の向きが実線の矢印で示されている。
【0045】
なお、第1の強磁性層43を第2の強磁性層45より保磁力の高い高保磁力層にしておくと、X2方向の磁場Bxを印加しながら、第1の強磁性層43を成膜すれば、その後は、無磁場で第2の強磁性層45を成膜しても、あるいは、どの方向への磁場を与えながら第2の強磁性層45を成膜したとしても、成膜後は、第1の強磁性層43の磁化がX2方向に向けて固定され、第2の強磁性層45の磁化がX1方向に向けて固定される。
【0046】
第1の強磁性層43と中間層44と第2の強磁性層45の3層の固定磁性層が形成された後に、第2の強磁性層45の上にCuの非磁性中間層46を形成し、その上にCo−Fe層とNi−Fe層の2層構造の自由磁性層47を形成し、最上部をTaのキャップ層で覆う。
【0047】
図4に示す各層が積層された後に、エッチング処理で磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)のみを残し、他の積層体を除去する。
【0048】
図4(B)に示す磁気抵抗効果素子40の製造工程では、シード層42の上に、自由磁性層47と非磁性中間層46を形成し、その上に3層構造のセルフピン止め構造の固定磁性層を形成する。
【0049】
図4(B)での固定磁性層は、非磁性中間層46の上に、第2の強磁性層45と中間層44と第1の強磁性層43を順番に成膜する。ここで、磁場中成膜により、第1の強磁性層43の磁化の向きをX2方向に設定すると、中間層44を挟んだ相互結合(反平行結合)により、第2の強磁性層45の磁化がX1方向に固定され、感度軸方向である固定磁化(P)の方向がX1方向となる。
【0050】
例えば、第2の強磁性層45を無磁場であるいはいずれかの方向の磁場を与えながら成膜し、さらに中間層44を成膜した後に、X1方向の磁場を与えながら第1の強磁性層43を成膜する。このとき、第1の強磁性層43を第2の強磁性層45より保磁力の高い高保磁力層とする。磁場で第2の強磁性層45をX1方向へ磁化させた状態で、中間層44の上に第1の強磁性層43を徐々に成膜していくと、成膜中の第1の強磁性層43が第2の強磁性層45との相互結合(反平行結合)によりX2方向に磁化される。第1の強磁性層43の成膜が完了すると、高保磁力層である第1の強磁性層43の磁化がX2方向に固定され、第2の強磁性層45の磁化がX1方向に向けて固定された状態が設定される。
【0051】
図4(B)に示す磁気抵抗効果素子40の製造過程では、第1の強磁性層43の上にIr−Mn合金(イリジウムーマンガン合金)やPt−Mn合金(白金−マンガン合金)などの反強磁性層49aを積層し、積層後に無磁場でアニール処理する。これによると、X2方向に磁化されている第1の強磁性層43と反強磁性層49aとの間に交換結合が形成され、第1の強磁性層43の磁化が強固に固定される。その結果、第2の強磁性層45のX1方向の磁化も安定して固定されるようになる。
【0052】
図2(A)と
図3(A)に示すように、Z検知部10では、磁気抵抗効果素子40の固定磁化(P)の向きが、第1の傾斜側面13と第2の傾斜側面14に沿う向きで、且つ基板2の厚さ方向(Z検知凹部11A,11Bの深さ方向)に向けられている。磁場Bxを印加しながらの成膜により、Z検知凹部11Aでは、第1の磁気抵抗効果素子40(R1)の固定磁化(P)の向きが、底面12から実装表面3に向けて上向きに固定され、第2の磁気抵抗効果素子40(R2)の固定磁化(P)の向きが、実装表面3から底面12に向けて下向きに固定される。
【0053】
他方のZ検知凹部11Bでは、第4の磁気抵抗効果素子40(R4)の固定磁化(P)の向きが、第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と同じであり、第3の磁気抵抗効果素子40(R3)の固定磁化(P)の向きが、第2の磁気抵抗効果素子40(R2)と同じである。
【0054】
それぞれの磁気抵抗効果素子20は、自由磁性層47を単磁区化し磁化方向を揃えることが好ましい。自由磁性層47は、形状異方性によって磁化が決められ、あるいは外部に設けられた磁石によるハードバイアスによって磁化の向きが揃えられている。
図2に示すZ検知部10では、破線の矢印で示すように、全ての磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)において、自由磁性層47の磁化(F)がY2方向に向けられている。
【0055】
Z検知部10では、Z1方向またはZ2方向の外部磁界が与えられると、自由磁性層47の磁化(F)の向きが外部磁界の方向へ向けられる。自由磁性層47の磁化(F)と固定磁性層の固定磁化(P)とが同じ向きになると抵抗値が極小となり、自由磁性層47の磁化(F)と固定磁性層の固定磁化(P)とが逆向きになると抵抗値が極大となる。
【0056】
Z検知部10では、Z1方向またはZ2方向の外部磁界に対し、第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と第4の磁気抵抗効果素子40(R4)とで抵抗値が同じ極性で変化し、第2の磁気抵抗効果素子40(R2)と第3の磁気抵抗効果素子40(R3)とで抵抗値が同じ極性で変化する。
【0057】
図10(A)に、Z検知用のブリッジ回路51が示されている。ブリッジ回路51では、第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と第2の磁気抵抗効果素子40(R2)とが直列に接続されて第1の素子列が構成され、第3の磁気抵抗効果素子40(R3)と第4の磁気抵抗効果素子40(R4)とが接続されて第2の素子列が構成されている。2つの素子列が並列に接続され、第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と第3の磁気抵抗効果素子40(R3)が直流電源に接続され、第2の磁気抵抗効果素子40(R2)と第4の磁気抵抗効果素子40(R4)が接地されている。
【0058】
なお、
図10(A)に示すブリッジ回路51において、第2の磁気抵抗効果素子40(R2)と第3の磁気抵抗効果素子40(R3)を互いに入れ替えることも可能である。
【0059】
図10(A)に示すように、第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と第2の磁気抵抗効果素子40(R2)との間の中点電位と、第3の磁気抵抗効果素子40(R3)と第4の磁気抵抗効果素子40(R4)との間の中点電位が、差動増幅器54に与えられてZ方向の磁気検知出力Ozが得られる。
【0060】
図2(A)と
図3(A)に示す例では、Z検知部10にZ1方向の磁界が与えられて各磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)の自由磁性層47の磁化がZ1方向へ向けられると、磁気抵抗効果素子40(R1,R4)の抵抗値が低下し、磁気抵抗効果素子40(R2,R3)の抵抗値が上昇する。よって、磁気検知出力Ozが増大する。逆に、Z2方向の磁界が与えられて、各磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)の自由磁性層47の磁化がZ2方向へ向けられると、磁気検知出力Ozが低下する。
【0061】
Z検知部10では、
図3(A)に示すように、磁気抵抗効果素子40を成膜するときに、X軸方向に沿う磁場Bxを与えながらの磁場中成膜で固定磁性層を形成することで、Z検知凹部11A,11Bの第1の傾斜側面13に設けられた磁気抵抗効果素子40(R1,R4)と、第2の傾斜側面14に設けられた磁気抵抗効果素子40(R2,R3)とで、固定磁性層の固定磁化(P)の向きを傾斜側面に沿って、Z方向に互いに逆向きに設定することができる。
【0062】
そのため、第1の傾斜側面13に設けられた磁気抵抗効果素子40(R1,R4)と、第2の傾斜側面14に設けられた磁気抵抗効果素子40(R2,R3)とを直列に接続してブリッジ回路51を構成することで、Z方向の磁界を高精度に検知することが可能になる。
【0063】
図2(B)と
図3(B)に示すように、X検知部20では、X検知凹部21Aの第1の傾斜側面23に第5の磁気抵抗効果素子40(R5)が設けられ、第2の傾斜側面24に第6の磁気抵抗効果素子40(R6)が設けられている。他方のX検知凹部21Bでは、第1の傾斜側面23に第8の磁気抵抗効果素子40(R8)が設けられ、第2の傾斜側面24に第7の磁気抵抗効果素子40(R7)が設けられている。
【0064】
各磁気抵抗効果素子40(R5,R6,R7,R8)の膜構成は
図4に示したものと同じである。X検知部20では、
図3(B)に示すように、磁気抵抗効果素子40を形成する際に、Z2方向に磁場Bzを与えて磁場中成膜することで、第1の強磁性層43の磁化をZ2方向に沿う向きに固定し、Z1方向に磁場Bzを与えて磁場中成膜することで、第2の強磁性層45の磁化を上向きに固定している。よって、各磁気抵抗効果素子40(R5,R6,R7,R8)の固定磁性層の固定磁化(P)は、実線の矢印で示すように、各傾斜側面23,24に沿って、基板2の板厚方向に対して角度を有して上向きに固定される。
【0065】
また、X検知凹部21AとX検知凹部21Bの双方において、第1の傾斜側面23に設けられた磁気抵抗効果素子40(R5,R8)と、第2の傾斜側面24に設けられた磁気抵抗効果素子40(R6,R7)とで、固定磁性層の固定磁化(P)の向きがX方向において互いに逆向きである。
【0066】
したがって、X方向の外部磁界に対して、第5の磁気抵抗効果素子40(R5)および第8の磁気抵抗効果素子40(R8)の抵抗変化と、第6の磁気抵抗効果素子40(R6)および第7の磁気抵抗効果素子40(R7)との抵抗変化が逆極性となる。
【0067】
図10(B)に示すように、X検知部20では、各磁気抵抗効果素子40(R5,R6,R7,R8)によって、X検知用のブリッジ回路52が構成されている。X検知部20にX1方向の外部磁界が与えられると、差動増幅器55からの磁気検知出力Oxが増大し、X2方向の外部磁界が与えられると、差動増幅器55からの磁気検知出力Oxが低下する。
【0068】
図2(C)に示すY検知部30では、Y検知凹部31Aの第1の傾斜側面33に第9の磁気抵抗効果素子40(R9)が設けられ、第2の傾斜側面34に第10の磁気抵抗効果素子40(R10)が設けられている。他方のY検知凹部31Bでは、第1の傾斜側面33に第12の磁気抵抗効果素子40(R12)が設けられ、第2の傾斜側面34に第11の磁気抵抗効果素子40(R11)が設けられている。
【0069】
各磁気抵抗効果素子40(R9,R10,R11,R12)の膜構成は
図4に示したものと同じである。Y検知部30では、X検知部20と同様に、磁気抵抗効果素子40を形成する際に、磁場Bzを与えながら磁場中成膜して固定磁性層を形成することで、各磁気抵抗効果素子40(R9,R10,R11,R12)の固定磁性層の固定磁化(P)が、実線の矢印で示すように、各傾斜側面33,34に沿って、基板2の板厚方向に対して角度を有して上向きに固定される。
【0070】
また、Y検知凹部31AとY検知凹部31Bの双方において、第1の傾斜側面33に設けられた磁気抵抗効果素子40(R9,R12)と、第2の傾斜側面34に設けられた磁気抵抗効果素子40(R10,R11)とで、固定磁性層の固定磁化(P)の向きがY方向において互いに逆向きである。
【0071】
したがって、Y方向の外部磁界に対して、第9の磁気抵抗効果素子40(R9)および第12の磁気抵抗効果素子40(R12)の抵抗変化と、第10の磁気抵抗効果素子40(R10)および第11の磁気抵抗効果素子40(R11)との抵抗変化が逆極性となる。
【0072】
図10(C)に示すように、Y検知部30では、各磁気抵抗効果素子40(R9,R10,R11,R12)によって、Y検知用のブリッジ回路53が構成されている。Y検知部30にY1方向の外部磁界が与えられると、差動増幅器56からの磁気検知出力Oyが増大し、Y2方向の外部磁界が与えられると、差動増幅器56からの磁気検知出力Oyが低下する。
【0073】
なお、X検知部20の各磁気抵抗効果素子40(R5,R6,R7,R8)と、Y検知部30の各磁気抵抗効果素子40(R9,R10,R11,R12)では、自由磁性層47の磁化は、形状異方性やハードバイアスなどによって
図2(B)(C)で破線の矢印で示すように、Y2方向とX1方向に向けられている。
【0074】
図1に示す磁気検知装置1では、1つの基板2にZ検知部10とX検知部20およびY検知部30が形成されているため、1つの基板2を使用してZ方向およびX方向とY方向の磁界およびその強度の変化を検知することができる。
【0075】
また、Z検知部10のZ検知凹部11A,11Bと、X検知部20のX検知凹部21A,21BおよびY検知部30のY検知凹部31A,31Bは、同時にエッチング処理で形成することができる。
【0076】
Z検知部10に磁気抵抗効果素子40を形成するときは、磁場Bxを印加しながら固定磁性層を磁場中成膜する。X検知部20とY検知部30に磁気抵抗効果素子40を形成する際には、両検知部20,30において、同時に磁場Bzを与えながら固定磁性層を磁場中成膜することで、X検知部20とY検知部30の双方において、固定磁性層の固定磁化(P)の向きを傾斜側面に沿う向きで且つ基板の厚さ方向に向けて設定することができる。
【0077】
第1の実施の形態では、磁気抵抗効果素子40の固定磁性層を磁場中成膜するときの印加磁場の向きが2方向のみであっても、Z検知部10とX検知部20およびY検知部30を形成することができる。
【0078】
図5に、本発明の第2の実施の形態の磁気検知装置101が示されている。
この磁気検知装置101は、
図2に示した第1の実施の形態の磁気検知装置1と同様に、Z検知部10にZ検知凹部11A,11Bが形成され、X検知部20にX検知凹部21A,21Bが形成され、Y検知部30にY検知凹部31A,31Bが形成されている。
【0079】
図5(A)と
図6(A)に示すように、Z検知凹部11Aの第1の傾斜側面13に第1の磁気抵抗効果素子50(R1)が形成され、第2の傾斜側面14に第2の磁気抵抗効果素子50(R2)が形成されている。
図5(A)に示すように、他方のZ検知凹部11Bでは、第1の傾斜側面13に第4の磁気抵抗効果素子50(R4)が形成され、第2の傾斜側面14に第3の磁気抵抗効果素子50(R3)が形成されている。
【0080】
図5(B)と
図6(B)に示すように、X検知凹部21Aの第1の傾斜側面23に第5の磁気抵抗効果素子50(R5)が形成され、第2の傾斜側面24に第6の磁気抵抗効果素子50(R6)が形成されている。他方のX検知凹部21Bでは、第1の傾斜側面23に第8の磁気抵抗効果素子50(R8)が形成され、第2の傾斜側面24に第7の磁気抵抗効果素子50(R7)が形成されている。
【0081】
図5(C)示すように、Y検知凹部31Aの第1の傾斜側面33に第9の磁気抵抗効果素子50(R9)が形成され、第2の傾斜側面34に第10の磁気抵抗効果素子50(R10)が形成されている。他方のY検知凹部31Bでは、第1の傾斜側面33に第12の磁気抵抗効果素子50(R12)が形成され、第2の傾斜側面34に第11の磁気抵抗効果素子50(R11)が形成されている。
【0082】
図9に示すように、第2の実施の形態で使用されている磁気抵抗効果素子50は、
図4(A)に示した磁気抵抗効果素子40と同様に、シード層42の上に、Co−Feの強磁性層43と、Ruの中間層44と、Co−Feの第2の強磁性層45が成膜されて、3層構造のセルフピン止め構造の固定磁性層が形成されている。
【0083】
図6(A)に示すように、Z検知部10では、3層構造の固定磁性層を形成する際に、磁場Bxを与えて磁場中で成膜することで、磁気抵抗効果素子50(R1,R2,R3,R4)の固定磁性層の固定磁化(P)が実線の矢印で示す向きに固定される。
図6(B)に示すように、X検知部20では、3層構造の固定磁性層を形成する際に、磁場Bzを与えながら磁場中で成膜することで、磁気抵抗効果素子50(R5,R6,R7,R8)の固定磁性層の固定磁化(P)が実線の矢印で示す向きに固定される。同様に、Y検知部30でも、磁場Bzを与えながら磁場中で成膜することで、磁気抵抗効果素子50(R9,R10,R11,R12)の固定磁性層の固定磁化(P)が実線の矢印で示す向きに固定される。
【0084】
図9に示すように、各磁気抵抗効果素子50の固定磁性層の固定磁化(P)の向きが固定された後に、固定磁性層の上に非磁性中間層46を形成し、さらに自由磁性層47の一部を形成しておく。
【0085】
その後に、さらに自由磁性層47の上層部分を形成し、その上に磁場中でIr−Mnの上部反強磁性層49bが磁場中で成膜される。磁場中成膜により、上部反強磁性層49bと自由磁性層47との交換結合が生成されて、自由磁性層47が単磁区化されて磁化の向きが揃えられる。
【0086】
Z検知部10では、上部反強磁性層49bの磁場中成膜での磁場を、X1方向とすることで、
図5(A)と
図6(A)に破線の矢印で示すように、自由磁性層47の磁化(F)が固定磁化(P)と同じ向きに揃えられる。X検知部20とY検知部30では、上部反強磁性層49bの磁場中成膜での磁場を、Z1方向とすることで、破線の矢印で示すように、自由磁性層47の磁化(F)が固定磁化(P)と同じ向きに揃えられる。
【0087】
第2の実施の形態の磁気検知装置101においても、各磁気抵抗効果素子を接続したブリッジ回路の構成は
図10(A)(B)(C)と同じである。
【0088】
第2の実施の形態の磁気検知装置101では、
図5と
図6に示すように、各磁気抵抗効果素子50(R1〜R12)において、外部磁界が与えられていないときに、固定磁性層の固定磁化(P)の向きと自由磁性層47の磁化(F)の向きが同じである。よって、磁気抵抗効果素子50の抵抗値は極小値である。自由磁性層47の磁化(F)の向きと逆方向の外部磁界が徐々に大きくなっていくと、自由磁性層47の磁化(F)が反転し、磁気抵抗効果素子50の抵抗値が極大値となる。これにより、磁気検知出力Oz,Ox,Oyが変化するようになる。
【0089】
ただし、Z検知部10での自由磁性層47の磁化(F)の向きが、
図6(A)に示す破線矢印と逆向きであってもよい。同様に、X検知部20とY検知部30において、自由磁性層47の磁化(F)の向きが、
図6(B)に示す破線矢印と逆向きであってもよい。
【0090】
図5に示すように、第2の実施の形態の磁気検知装置101では、Z検知部10において、各Z検知凹部11A,11Bの底面12に、NI−Feなどの軟磁性材料層によるシールド層61が形成されている。また各Z検知凹部11A,11Bの周囲を囲むように、基板2の実装表面3にもシールド層が形成されていることが好ましい。このシールド層61を設けることで、感度方向であるZ方向以外の磁界を吸収でき、外乱磁界により磁気検知出力Ozにノイズが重畳するのを防止できるようになる。
【0091】
同様に、X検知部20では、X検知凹部21A,21Bの底面22にシールド層62が形成され、X検知凹部21Aと21Bの間の実装表面3にもシールド層63が形成されている。シールド層62,63は、磁気抵抗効果素子50(R5,R6,R7,R8)の固定磁性層の固定磁化(P)の方向と直交する方向に長辺が向けられた長尺形状である。これにより感度方向であるX方向以外の外乱磁界を吸収できるようになっている。
【0092】
Y検知部30では、Y検知凹部31A,31Bの底面32にシールド層64が形成され、Y検知凹部31Aと31Bの間の実装表面3にもシールド層65が形成されている。シールド層64,65は、磁気抵抗効果素子50(R9,R10,R11,R12)の固定磁性層の固定磁化(P)の方向と直交する方向に長辺が向けられた長尺形状である。これにより感度方向であるX方向以外の外乱磁界を吸収できるようになっている。
【0093】
また、各検知凹部の底面にシールド層を設けることでスペース効率を有効に利用して、必要なシールド層を形成することが可能となる。
【0094】
図7に、第1の実施の形態の変形例となる磁気検知装置1aが示されている。
図7(A)に示すZ検知部10aは、
図2に示した磁気検知装置1のZ検知部10の変形例である。また、
図7(B)に示すX検知部20と
図7(C)に示すY検知部30の構造は、
図2に示したものと同じである。
【0095】
図2(A)に示したZ検知部10では、Z検知凹部11A,11Bの形状が正方形であり、X検知凹部21A,21BおよびY検知凹部31A,31Bの長方形と相違している。また、
図2(A)に示すZ検知凹部11A,11Bに設けられた磁気抵抗効果素子40の基板表面に沿う方向の寸法は、
図2(B)に示すX検知部20と
図2(C)に示すY検知部30に設けられた磁気抵抗効果素子40の基板表面に沿う寸法よりも短くなっている。
【0096】
これに対し、
図7(A)に示すZ検知部10aでは、Z検知凹部11A,11Bの形状と寸法が、X検知凹部21A,21BおよびY検知凹部31A,31Bの形状および寸法と同じである。また、Z検知凹部11A,11Bに設けられた磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)の形状と寸法が、X検知凹部21A,21Bに設けられた磁気抵抗効果素子40(R5,R6,R7,R8)およびY検知凹部31A,31Bに設けられた磁気抵抗効果素子40(R9,R10,R11,R12)と同じである。
【0097】
図7に示すZ検知部10aでは、Z検知凹部11A,11Bの長手方向をX検知凹部21A,21Bと同じ向きで加工でき、あるいはZ検知凹部11A,11Bの長手方向をY検知凹部31A,31Bと同じ向きで形成できる。さらに、全ての磁気抵抗効果素子40を同じパターンで同じ大きさに加工できる。また、
図7に示すZ検知部10aに設けられた磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)は、
図2に示したZ検知部10に設けられた磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)よりも面積が大きくなるため、磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)の抵抗変化率を大きくでき、Z検知部の感度を高めることができる。
【0098】
なお、本発明でのZ感知部10,10aの形状や大きさは、前記実施の形態に限定されるものではなく、同じ基板上に各検知部を配置する場合に、例えばZ検知部10,10aを、X検知部20またはY検知部30よりも面積が大きくなるように形成することも可能である。
【0099】
図8に本発明の第3の実施の形態の磁気検知装置201が示されている。
図8(A)に示すZ検知部10bと
図2(A)に示すZ検知部10では、Z検知凹部11A,11Bの形状と寸法が同じである。
図8(A)に示すZ検知部10bでは、Z検知凹部11Aの第1の傾斜側面13に設けられた第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と第2の傾斜側面14に設けられた第4の磁気抵抗効果素子40(R4)とで、共に固定磁化(P)の向きがZ1方向に向けられている。また、Z検知凹部11Bの第1の傾斜側面13に設けられた第2の磁気抵抗効果素子40(R2)と第2の傾斜側面14に設けられた第3の磁気抵抗効果素子40(R3)とで、共に固定磁化(P)の向きがZ2方向に向けられている。
【0100】
図8(A)に示すZ検知部10bでは、各磁気抵抗効果素子40(R1,R2,R3,R4)で構成されるブリッジ回路51が、
図10(A)の回路図と同じである。ここでは、Z検知凹部11Aの第1の傾斜側面13に設けられた第1の磁気抵抗効果素子40(R1)とZ検知凹部11Bの第1の傾斜側面13に設けられた第2の磁気抵抗効果素子40(R2)とが直列に接続されて第1の素子列が形成される。Z検知凹部11Bの第2の傾斜側面14に設けられた第3の磁気抵抗効果素子40(R3)とZ検知凹部11Aの第2の傾斜側面14に設けられた第4の磁気抵抗効果素子40(R4)とが直列に接続されて第2の素子列が形成される。そして、第1の素子列と第2の素子列が並列に接続されブリッジ回路が構成されている。
【0101】
Z検知凹部11AとZ検知凹部11Bは同じエッチング処理で形成される。そのため、同じ結晶面で形成されるZ検知凹部11Aの第1の傾斜側面13とZ検知凹部11Bの第1の傾斜側面13とは、角度が一致しやすく、同じ結晶面で形成されるZ検知凹部11Aの第2の傾斜側面14とZ検知凹部11Bの第2の傾斜側面14とで、角度が一致しやすい。そこで、同じ角度で形成されやすい第1の傾斜側面13に設けられた第1の磁気抵抗効果素子40(R1)と第2の磁気抵抗効果素子40(R2)を直列に接続して第1の素子列を構成し、その中点電位を得ることで、製品ごとの第1の素子列の中点電位のばらつきを抑制しやすくなる。同様に、同じ角度で形成されやすい第2の傾斜側面14に設けられた第3の磁気抵抗効果素子40(R3)と第4の磁気抵抗効果素子40(R4)を直列に接続して第2の素子列を形成し、その中点電位を得ることで、製品ごとの第2の素子列の中点電位のばらつきを抑制しやすくなる。
【0102】
図8(B)に示すX検知部20bでは、X検知凹部21Aの傾斜側面に設けられた第5の磁気抵抗効果素子40(R5)と第8の磁気抵抗効果素子40(R8)の固定磁化(P)が同じX1方向である。また、X検知凹部21Bの傾斜側面に設けられた第6の磁気抵抗効果素子40(R6)と第7の磁気抵抗効果素子40(R7)の固定磁化(P)が同じX2方向である。すなわち、X検知凹部21AとX検知凹部21Bとで、それぞれに設けられた磁気抵抗効果素子40の固定磁化(P)がX方向において互いに逆向きである。
【0103】
X検知部20でも、X検知凹部21AとX検知凹部21Bにおいて、同じ角度に形成されやすい第1の傾斜側面23に設けられた第5の磁気抵抗効果素子40(R5)と第6の磁気抵抗効果素子40(R6)とが直列に接続されて第1の素子列が構成されている。また、X検知凹部21AとX検知凹部21Bにおいて、同じ角度に形成されやすい第2の傾斜側面24に設けられた第7の磁気抵抗効果素子40(R7)と第8の磁気抵抗効果素子40(R8)とが直列に接続されて第2の素子列が構成されている。同じ角度に形成されやすい傾斜側面に設けられた磁気抵抗効果素子を直列に接続することで、第1の素子列と第2の素子列の中点電位のばらつきを抑制しやすくなる。
【0104】
なお、Y検知部30bは、X検知部20bを基板表面に沿って90度回転させた構造であり、Y検知部30bにおいても、X検知部20bと同じ効果を奏することができる。
【0105】
前記各実施の形態では、磁気抵抗効果素子の固定磁性層が、セルフピン止め構造であり、固定磁性層が磁場中成膜で形成され、磁場中アニールを必要としていない。そのため、同じ基板の各検知凹部の傾斜側面に設けられる磁気抵抗効果素子の固定磁化(P)の向きを自由に組み合わせて設定することが可能である。