(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体皮膜が形成された陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子内に形成される導電性固体層と、前記コンデンサ素子に含浸される電解液とを備えた電解コンデンサにおいて、前記電解液がγ−ブチロラクトンを主成分とする極性溶媒に有機酸または有機酸塩を溶解して形成され、前記極性溶媒に対して非相溶性で前記極性溶媒よりも沸点の高い液剤を前記コンデンサ素子に含浸し、
前記陽極箔、前記対向陰極箔及び前記セパレータの表面には同一の材質の前記導電性固体層が形成されていることを特徴とする電解コンデンサ。
前記有機酸塩がボロジサリチル酸トリエチルアミン、ボロジサリチル酸トリメチルアミン、ボロジグリコール酸トリメチルアミンのいずれかから成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
誘電体皮膜が形成された陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する素子形成工程と、前記コンデンサ素子内に導電性固体層を形成する導電性固体層形成工程と、前記コンデンサ素子に電解液を含浸する電解液含浸工程とを備えた電解コンデンサの製造方法において、前記電解液がγ−ブチロラクトンを主成分とする極性溶媒に有機酸または有機酸塩を溶解して形成されるとともに、前記極性溶媒に対して非相溶性で前記極性溶媒よりも沸点の高い液剤を前記コンデンサ素子に含浸させる液剤含浸工程を有し、
前記導電性固体層形成工程により、前記陽極箔、前記対向陰極箔及び前記セパレータの表面には同一の材質の前記導電性固体層が形成されていることを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
前記液剤含浸工程が、前記コンデンサ素子を収納する外装ケースに前記液剤を充填し、前記液剤に前記コンデンサ素子を浸漬することを特徴とする請求項5に記載の電解コンデンサの製造方法。
前記導電性固体層形成工程において、導電性固体の粒子またはその凝集体を分散媒に分散した分散液を前記コンデンサ素子に含浸した後、前記コンデンサ素子を乾燥して前記分散媒を除去することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電解コンデンサの製造方法。
前記導電性固体層形成工程において、前記コンデンサ素子に含浸した重合性モノマーを酸化重合によって導電性ポリマーから成る前記導電性固体層を形成することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車の電装化の進展に伴い、車両のエンジンルーム内に電子部品が配設されることが多くなっている。車両の運転中にエンジンルーム内の温度は約150℃に達する。一方で、停車中のエンジンルーム内は外気温と同程度となるため、冬季にスキー場等に長時間車両を停車するとエンジンルーム内が氷点下数十度まで低下する場合がある。このため、使用温度域の広い電解コンデンサが求められる。
【0005】
上記従来の電解コンデンサは高沸点の溶媒を含む電解液を用いることにより、高温環境下においてもESR(等価直列抵抗)の低い良好な初期特性を得ることができる。また、低温環境下で電解液の電気伝導率が低下しても、導電性固体層を有するためESRの増加を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、高温環境下で電解コンデンサを継続使用した際に電解液の溶媒が封口部分を介して蒸散する場合がある。これにより、電解コンデンサのESRが増加し、高温環境下における電解コンデンサの寿命が短くなる問題があった。
【0007】
本発明は、使用温度域が広く、長寿命の電解コンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の電解コンデンサは、誘電体皮膜が形成された陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子内に形成される導電性固体層と、前記コンデンサ素子に含浸される電解液とを備えた電解コンデンサにおいて、前記電解液がγ−ブチロラクトンを主成分とする極性溶媒に有機酸または有機酸塩を溶解して形成され、前記極性溶媒に対して非相溶性で前記極性溶媒よりも沸点の高い液剤を前記コンデンサ素子に含浸することを特徴としている。
【0009】
この構成によると、液剤が極性溶媒に対して非相溶性であるため、電解液に液剤が溶解することによる電解液の電気伝導率の低下が防止される。また、高温環境下で高沸点の液剤の蒸散が抑制され、極性溶媒が蒸散した際に液剤がコンデンサ素子内に浸透して電解液の電気伝導率の低下が抑制される。
【0010】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記電解液と前記液剤との合計重量に対する前記液剤の重量比を5%〜50%にしたことを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記電解液と前記液剤との合計重量に対する前記液剤の重量比を33%〜50%にしたことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記有機酸塩がボロジサリチル酸トリエチルアミン、ボロジサリチル酸トリメチルアミン、ボロジグリコール酸トリメチルアミンのいずれかから成ることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、誘電体皮膜が形成された陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する素子形成工程と、前記コンデンサ素子内に導電性固体層を形成する導電性固体層形成工程と、前記コンデンサ素子に電解液を含浸する電解液含浸工程とを備えた電解コンデンサの製造方法において、前記電解液がγ−ブチロラクトンを主成分とする極性溶媒に有機酸または有機酸塩を溶解して形成されるとともに、前記極性溶媒に対して非相溶性で前記極性溶媒よりも沸点の高い液剤を前記コンデンサ素子に含浸させる液剤含浸工程を有することを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の電子部品の製造方法において、前記液剤含浸工程が、前記コンデンサ素子を収納する外装ケースに前記液剤を充填し、前記液剤に前記コンデンサ素子を浸漬することを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の電子部品の製造方法において、前記導電性固体層形成工程において、導電性固体の粒子またはその凝集体を分散媒に分散した分散液を前記コンデンサ素子に含浸した後、前記コンデンサ素子を乾燥して前記分散媒を除去することを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の電子部品の製造方法において、前記導電性固体層形成工程において、前記コンデンサ素子に含浸した重合性モノマーを酸化重合によって導電性ポリマーから成る前記導電性固体層を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、電解液の極性溶媒に対して非相溶性で極性溶媒よりも沸点の高い液剤をコンデンサ素子に含浸したので、電解液に液剤が溶解することによる電解液の電気伝導率の低下が防止される。また、高温環境下で極性溶媒が蒸散した際に液剤がコンデンサ素子内に浸透して電解液の電気伝導率の低下が抑制され、長期使用時のESRの増加を防止することができる。従って、使用温度域が広く、長寿命の電解コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は一実施形態の電解コンデンサを示す側面断面図である。電解コンデンサ1は一面に開口部2aを有した有底筒状のアルミニウム等から成る外装ケース2内にコンデンサ素子10が収納される。外装ケース2の開口部2aはゴム製のパッキン3により封口される。
【0020】
図2はコンデンサ素子10の分解斜視図を示している。コンデンサ素子10は陽極箔11及び対向陰極箔12を電解紙等のセパレータ13を介して巻回して形成される。陽極箔11または対向陰極箔12の終端は巻き止めテープ14によって固定される。陽極箔11はアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属から成り、表面に誘電体皮膜が形成される。対向陰極箔12はセパレータ13を介して陽極箔11に対向し、アルミニウム等により形成される。
【0021】
陽極箔11及び対向陰極箔12にはそれぞれリードタブ21a、22aを介してリード線21、22が取り付けられている。リード線21、22によって陽極及び陰極の端子部が形成される。
【0022】
コンデンサ素子10内の陽極箔11の誘電体皮膜の表面及び対向陰極箔12の表面には導電性固体層が設けられる。導電性固体層は二酸化マンガン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、導電性ポリマー等により形成される。導電性固体層を形成する導電性ポリマーとして、ポリチオフェン、ポリピロールまたはこれらの誘導体等を用いることができる。特に、ポリエチレンジオキシチオフェンは電気伝導率が高いためより望ましい。
【0023】
コンデンサ素子10には電解液が含浸される。電解液は極性溶媒に有機酸や有機酸塩を溶解して形成される。電解液の極性溶媒は電解コンデンサ1の使用温度域よりも沸点が高く、融点が低くなっている。例えば、−30℃〜150℃の使用温度域に対して、γ−ブチロラクトンを主成分とする極性溶媒を用いることができる。
【0024】
電解液に含まれる有機酸塩として、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、ボロジサリチル酸トリメチルアミン、ボロジグリコール酸トリメチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0025】
また、コンデンサ素子10には電解液に加え、電解液の極性溶媒に対して非相溶性で極性溶媒よりも沸点の高い液剤が含浸される。このような液剤として、グリセリン脂肪酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−オクチルドデカノール等を主成分とする液剤を用いることができる。グリセリン脂肪酸エステルとして、テトラグリセロールペンタエステル、デカグリセロールデカエステル、デカグリセロールモノエステル、デカグリセロールトリエステル、ヘキサグリセロールモノエステル、ヘキサグリセロールジエステル、ヘキサグリセロールトリエステル、ヘキサグリセロールペンタエステル、テトラグリセロールモノエステル、テトラグリセロールトリエステル等を用いることができる。
【0026】
図3は電解コンデンサ1の製造工程を示す工程図である。電解コンデンサ1は素子形成工程、組立工程、洗浄工程、エージング工程及び検査工程を順に行って形成される。また、コンデンサ素子10を形成する素子形成工程は、陽極化成工程、端子形成工程、巻回工程、素子化成工程、導電性固体層形成工程、電解液含浸工程及び液剤含浸工程が順に行われる。
【0027】
陽極化成工程では、まず弁作用金属から成る陽極箔11の表面をエッチング処理により粗面化する。エッチング処理を施した陽極箔11は化成液中で陽極酸化され、表面に酸化膜から成る誘電体皮膜が形成される。
【0028】
端子形成工程では陽極箔11及び対向陰極箔12の一端にリード線21、22のリードタブ21a、22aがカシメによって接合される。
【0029】
巻回工程では陽極箔11及び対向陰極箔12がセパレータ13を介して巻回され、終端が巻き止めテープ14によって固定される。これにより、コンデンサ素子10の素体が形成される。
【0030】
素子化成工程ではコンデンサ素子10を化成液中に浸漬して陽極酸化する。これにより、巻回工程等で欠損した誘電体皮膜が修復される。
【0031】
導電性固体層形成工程では、まず導電性固体の粒子やその凝集体を分散媒に分散した分散液にコンデンサ素子10を浸漬して分散液をコンデンサ素子10に含浸させる。次に、コンデンサ素子10を高温で乾燥し、分散媒を除去して導電性固体層を形成する。
【0032】
分散媒は導電性固体を溶解しないことが望ましく、取り扱い性や導電性固体の分散性等を考慮して水を用いるとより望ましい。例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンの粒子を水に分散した分散液にコンデンサ素子10を減圧下で浸漬して、分散液をコンデンサ素子10に含浸させることができる。この時、分散媒にドーパント剤を含有してもよい。また、分散媒は例えば、100℃〜200℃でコンデンサ素子10を乾燥させることによって除去することができる。
【0033】
尚、導電性固体層形成工程において重合性モノマーを酸化重合して導電性固体層を形成してもよい。即ち、コンデンサ素子10に重合性モノマー(例えば、エチレンジオキシチオフェンのモノマー)を含浸させる。次に、酸化剤(例えば、パラトルエンスルホン酸鉄のエタノール溶液)にコンデンサ素子10を浸漬して酸化重合を行う。これにより、導電性ポリマー(例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン)から成る導電性固体層が形成される。
【0034】
電解液含浸工程ではコンデンサ素子10を電解液中に浸漬し、コンデンサ素子10に電解液を含浸する。電解液は前述したように、γ−ブチロラクトン等の極性溶媒に有機酸または有機酸塩の電解質が溶解される。極性溶媒中の電解質の濃度は特に制限されるものではなく、例えば、5〜50重量%とすることができる。また、コンデンサ素子10の浸漬時間はサイズに応じて異なるが、例えば、1秒〜数時間、好ましくは1秒〜5分とすることができる。また、コンデンサ素子10の浸漬温度は特に制限されないが、例えば、0℃〜80℃、好ましくは10℃〜40℃とすることができる。
【0035】
液剤含浸工程では、前述の液剤を充填した外装ケース2にコンデンサ素子10が収納される。これにより、コンデンサ素子10が液剤に浸漬され、コンデンサ素子10内に液剤が含浸される。
【0036】
尚、液剤含浸工程において、所定の容器内の液剤にコンデンサ素子10を浸漬して液剤を含浸し、液剤内から取り出したコンデンサ素子10を外装ケース2に収納してもよい。この時、電解液と液剤とを混合し、電解液含浸工程と液剤含浸工程とを同時に行ってもよい。
【0037】
組立工程では外装ケース2の開口部2aにパッキン3を装着する。そして、パッキン3に対向した外装ケース2の周面に絞り加工が施されるとともに、開口部2aの周縁にカーリング加工が施される。これにより、コンデンサ素子10を収納した外装ケース2が封口される。
【0038】
洗浄工程では外装ケース2の外面に付着した電解液や液剤による汚れが洗浄される。
【0039】
エージング工程では、リード線21、22間に定格電圧または定格電圧よりも高電圧を印加しながら、例えば、約125℃で約1時間のエージング処理を行う。エージング処理によって陽極箔11の切断面やリード線21の接続部分等に生じる誘電体皮膜の欠陥が修復される。
【0040】
検査工程では電解コンデンサ1の外観及び特性が検査される。これにより、電解コンデンサ1が完成する。
【0041】
上記構成の電解コンデンサ1はコンデンサ素子10に含浸される液剤が電解液の極性溶媒に対して非相溶性であるため、電解液に液剤が溶解することによる電解液の電気伝導率の低下が防止される。これにより、電解コンデンサ1の初期のESRの増大を防止し、使用温度域よりも高沸点の極性溶媒を用いて高温環境下のESRを低くすることができる。また、低温環境下で電解液の電気伝導率が低下しても、導電性固体層を有するためESRの増加を抑制することができる。従って、使用温度域の広い電解コンデンサ1が得られる。
【0042】
また、コンデンサ素子10に含浸される液剤は極性溶媒よりも高い沸点を有するため、高温環境下で蒸散しにくい。このため、高温環境下で電解コンデンサ1を継続使用して極性溶媒が蒸散した際に、コンデンサ素子10の内部に液剤が浸透する。これにより、電解液の電気伝導率の低下が抑制され、ESRを低く維持することができる。従って、電解コンデンサ1の長寿命化を図ることができる。
【0043】
この時、電解液と液剤との合計重量に対する液剤の重量比が5%よりも低いと、電解コンデンサ1の寿命の延長効果が少なくなる。また、該重量比が50%を超えると電解コンデンサ1の初期のESRが大きくなる。このため、該重量比を5〜50%にするとより望ましい。
【0044】
本実施形態によると、電解液の極性溶媒に対して非相溶性で極性溶媒よりも沸点の高い液剤をコンデンサ素子10に含浸したので、電解液に液剤が溶解することによる電解液の電気伝導率の低下が防止される。また、高温環境下で極性溶媒が蒸散した際に液剤がコンデンサ素子10内に浸透して電解液の電気伝導率の低下が抑制され、長期使用時のESRの増加を防止することができる。従って、使用温度域が広く、長寿命の電解コンデンサ1を得ることができる。
【0045】
また、電解液と液剤との合計重量に対する液剤の重量比を5〜50%にしたので、電解コンデンサ1のESRの増大を防止して確実に長寿命化を図ることができる。
【0046】
以下に本実施形態の電解コンデンサ1の特性評価を行うために形成した実施例及び比較例について説明する。
【0048】
表1は以下の実施例1〜9及び比較例1〜3の導電性固体層の形成方法、定格容量、電解液の成分、液剤の成分、電解液と液剤との合計重量に対する液剤の重量比をそれぞれ示している。
【実施例1】
【0049】
実施例1の電解コンデンサ1は完成寸法(外装ケース2に収納した状態での電解コンデンサ1の外形寸法)をφ10mm×H10.5mmとし、定格35V−150μFのコンデンサ素子10を作成した。
【0050】
導電性固体層形成工程において、ポリエチレンジオキシチオフェンの粒子を水に分散してドーパント剤を含有する分散液(濃度:10質量%)にコンデンサ素子10を25℃で1分間、80kPaの減圧下で浸漬した。分散液を含浸したコンデンサ素子10は分散液から取り出して125℃の乾燥炉内で乾燥し、ポリエチレンジオキシチオフェンの導電性固体層を形成した。尚、この工程により形成した導電性固体層を表1において「A」で示している。
【0051】
電解液含浸工程ではγ−ブチロラクトンにボロジサリチル酸トリエチルアミンを30%溶解した電解液200mgをコンデンサ素子10に含浸した。液剤含浸工程ではテトラグリセロールペンタエステル100mgを充填した外装ケース2にコンデンサ素子10を収納した。これにより、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は約33%になっている。
【0052】
エージング工程では電解コンデンサ1に定格電圧の1.15倍の電圧を印加しながら、約125℃で約1時間エージングした。
【実施例2】
【0053】
実施例2の電解コンデンサ1は定格6.3V−1000μFでコンデンサ素子10を作成した。また、導電性固体層形成工程において、コンデンサ素子10にエチレンジオキシチオフェンのモノマーを含浸した。その後、コンデンサ素子10をパラトルエンスルホン酸鉄のエタノール溶液から成る酸化剤に浸漬し、酸化重合によりポリエチレンジオキシチオフェンの導電性固体層を形成した。尚、この工程により形成した導電性固体層を表1において「B」で示している。その他は実施例1と同一である。
【実施例3】
【0054】
実施例3の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、電解液及び液剤を実施例1と異なる量にした。具体的には電解液含浸工程で電解液を285mg(電解質濃度30%)とし、液剤含浸工程で液剤を15mgとした。これにより、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は5%になっている。その他は実施例1と同一である。
【実施例4】
【0055】
実施例4の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、電解液及び液剤を実施例1と異なる量にした。具体的には電解液含浸工程で電解液を150mg(電解質濃度30%)とし、液剤含浸工程で液剤を150mgとした。これにより、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は50%になっている。その他は実施例1と同一である。
【実施例5】
【0056】
実施例5の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、液剤を実施例1と異なる成分にした。具体的には電解液200mgにデカグリセロールデカエステル100mgを乳化させた液剤を混合してコンデンサ素子10を浸漬し、電解液含浸工程と液剤含浸工程とを同時に行った。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は約33%になっている。その他は実施例1と同一である。
【実施例6】
【0057】
実施例6の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、液剤を実施例1と異なる成分にした。具体的には液剤含浸工程で外装ケース2にアゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)100mgを充填してコンデンサ素子10を浸漬した。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は約33%になっている。その他は実施例1と同一である。
【実施例7】
【0058】
実施例7の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、液剤を実施例1と異なる成分にした。具体的には液剤含浸工程で外装ケース2に2−オクチルドデカノール100mgを充填してコンデンサ素子10を浸漬した。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は約33%になっている。その他は実施例1と同一である。
【実施例8】
【0059】
実施例8の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、電解液の溶質を実施例1と異なる成分にした。具体的には電解液含浸工程でγ−ブチロラクトンにボロジサリチル酸トリメチルアミンを30%溶解した電解液200mgをコンデンサ素子10に含浸した。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は約33%になっている。その他は実施例1と同一である。
【実施例9】
【0060】
実施例9の電解コンデンサ1は実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、電解液の溶質を実施例1と異なる成分にした。具体的には電解液含浸工程でγ−ブチロラクトンにボロジグリコール酸トリメチルアミンを30%溶解した電解液200mgをコンデンサ素子10に含浸した。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は約33%になっている。その他は実施例1と同一である。
【0061】
<比較例1>
比較例1の電解コンデンサ1は液剤含浸工程を省いて実施例1と同様にコンデンサ素子10を作成した。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は0%になっている。その他は実施例1と同一である。
【0062】
<比較例2>
比較例2の電解コンデンサ1は液剤含浸工程を省いて実施例2と同様にコンデンサ素子10を作成した。この時、外装ケース2内の電解液と液剤との重量和に対する液剤の重量比は0%になっている。その他は実施例2と同一である。
【0063】
<比較例3>
比較例3の電解コンデンサ1は比較例1と同様にコンデンサ素子10を作成し、電解液の溶媒を比較例1と異なる成分にした。具体的には電解液含浸工程でγ−ブチロラクトンとポリエチレングリコール(200)とを7:3の割合で混合した溶媒を用いた。ポリエチレングリコール(200)は極性溶媒であるγ−ブチロラクトンに対して相溶性を有する。その他は比較例1と同一である。
【0064】
上記のようにして作成した実施例1〜7及び比較例1〜3の電解コンデンサ1について、150℃の高温環境下で定格電圧を2000時間印加した高温負荷試験を行った。表2は各実施例及び各比較例の電解コンデンサ1の静電容量(単位:μF)、ESR(単位:mΩ)について高温負荷試験の前後で測定した結果を示している。尚、静電容量の測定周波数は120Hzであり、ESRの測定周波数は100kHzである。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示すように、比較例1、2は高温負荷試験後に静電容量及びESRが著しく悪化している。比較例3はポリエチレングリコール(200)がγ−ブチロラクトンに溶解するため電解液の電気伝導率が低くなり、初期特性のESRが液剤の重量比50%の実施例4よりも悪くなっている。また、比較例3はポリエチレングリコール(200)が高沸点であるため高温負荷試験後の静電容量及びESRが比較例1、2に比して悪化を抑制されるが、液剤の重量比5%の実施例3よりも悪くなっている。
【0067】
これに対して、実施例1〜9は初期特性が良好で高温負荷試験後に静電容量及びESRの悪化が防止される。従って、各実施例は高温環境下で非常に長寿命であることがわかる。