(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0013】
図1において符号1は橋梁を示す。この橋梁1は、例えば鉄道や道路が建設される高架橋であり、本実施形態における橋梁1は、道路が建設される高架橋を指している。
高架橋である橋梁1は、橋脚(図示せず)間に架設された複数の橋桁2と、これら複数の橋桁2上に敷設されて橋梁1の路面を構成するコンクリート床版3と、を備える。
なお、本実施形態における橋梁1は高架橋であるとしたが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその他の種類の橋を採用してもよい。
【0014】
コンクリート床版3の側縁部にはコンクリート製の壁高欄4が設けられている。なお、壁高欄4は、コンクリート床版3に対して一体的に設けられており、コンクリート床版3と同時に解体することができる。
また、このコンクリート床版3は、橋梁1の建造時に、橋桁2の上面に突出して設けられた複数のジベル2a(例えば頭付きスタッドジベル)を含んだ状態にコンクリート打設されて形成されている。そのため、コンクリート床版3は、複数のジベル2aを介して橋桁2と接合した状態となっている。このように橋桁2とコンクリート床版3とが接合し合う面を接合境界面C1と称する。
【0015】
コンクリート床版3は橋梁1の路面を構成しており、通常時には多くの車両が通行する。そのため、年月の経過によって老朽化したり、設計荷重よりも大きな交通荷重によって損傷したりするのに応じて橋梁改修工事が適時行われる。
橋梁改修工事は、橋梁1の延在方向に沿って長い区間で行われる場合が多いため、改修工事予定区間のコンクリート床版3は、複数のエリア(解体予定箇所)に分割されて解体・撤去作業が行われるものとする。
また、このような橋梁改修工事は、橋梁1の通行を全て止めて橋梁1の幅方向に亘って一挙にコンクリート床版3の解体・撤去作業が行われる場合と、橋梁1の一部の通行だけを止めてコンクリート床版3の一部の解体・撤去作業が行われる場合とがあり、本発明の解体システムは、その両方の場合に対応することができる。
なお、本実施形態では、橋梁1の一部の通行だけを止めてコンクリート床版3の一部の解体・撤去作業が行われる場合について説明するが、橋梁1の通行を全て止めて橋梁1の幅方向に亘って一挙にコンクリート床版3の解体・撤去作業が行われる場合も同様の作業工程となっている。
【0016】
本実施形態における解体システムは、橋梁改修工事においてコンクリート床版3の解体・撤去作業を行うためのものであり、移動式ステージ10と、床版切断装置20と、床版吊り上げ手段30と、集塵手段40と、発電手段50と、制御手段と、を備える。
なお、コンクリート床版3は、このような解体システムによって、輸送車両Tに積み込むことができる程度の大きさとなるように複数に、かつ順次解体される(
図11参照)。また、解体システムによって解体された部位には、壁高欄4も含まれた状態となる。このようなコンクリート床版3の解体された(または解体される)部位を、以下、ブロック3aと称する。
【0017】
移動式ステージ10は、
図1,
図2に示すように、コンクリート床版3の解体・撤去作業を行うための前記各手段が搭載され、これら各手段を搭載した状態で橋梁1の延在方向に沿って移動できるものであり、ステージ本体11と、脚部12と、防護工13と、下部防護吊足場16と、防護柵17と、集塵機収納部18と、を備える。
なお、このような移動式ステージ10は、コンクリート床版3を切断してブロック3aを残存部分から切り離した後、
図1,
図2,
図8,
図11に示した作業方向(矢印Y)に移動させられ、次に解体・撤去作業が行われる箇所に配置される。
【0018】
ステージ本体11は、平面視において縦横に配置された複数の鉄骨11aによって、橋梁1の延在方向に長い矩形枠状に形成されている。そして、脚部12によって橋梁1の路面の上方(例えば2.5m程度の高さ)に支持された状態となっている。
ステージ本体11の周縁部には柵11bと、橋梁1の路面とステージ本体11との間を昇降するためのタラップ11cが設けられている。
また、このステージ本体11は、
図2に示すように、縦横に配置された複数の鉄骨11aによって形成され、かつ後述する作業スペース10Sの上方に位置する箇所に形成された開口部11dを有する。なお、ステージ本体11は、例えばエキスパンドメタル等の金網によって構成され、かつ開口部11dを除く位置に設けられた床部を有する。
さらに、複数の鉄骨11aのうち、後述する作業スペース10Sの上方に位置する2本の鉄骨11a,11aは、橋梁1の外側(壁高欄4の外側に)突出するようにして設けられている。
【0019】
脚部12は、
図1,
図2に示すように、ステージ本体11を構成する複数の鉄骨11aのうち、ステージ本体11および前記各手段をバランスよく支持できる4箇所の下面にそれぞれ設けられている。
各脚部12の下端部には車輪12aが設けられており、ステージ本体11を橋梁1の延在方向に沿って移動させることができる。
【0020】
防護工13は、
図1〜
図5に示すように、ステージ本体11に連結されるとともに橋梁1の外側に位置し、床版切断装置20によって切断されるコンクリート床版3の側方から下方にかけて配置されている。この防護工13は、コンクリート床版3の側方から下方にかけて配置されていることにより、作業時の足場として、さらに側方および下方に対する安全設備として機能する。
このような防護工13は、上部防護工14と、下部防護工15と、を有しており、これら上部防護工14と下部防護工15は回転部材13aを介して連結されている。
【0021】
上部防護工14は、複数の金属材料により形成された骨組み構造体であり、ステージ本体11を構成する鉄骨11aのうち、上述の橋梁1の外側に突出する鉄骨11a,11aに対して一体的に連結されている。
この上部防護工14の下端部中央に回転部材13aが設けられた状態となっている。
【0022】
下部防護工15は、複数の金属材料により形成された骨組み構造体であり、コンクリート床版3よりも下方に位置している。
また、この下部防護工15は、
図3〜
図5に示すように、自身の下端部に設けられ、かつ水平方向に伸縮する伸縮足場15aを備える。下部防護工15は、伸縮足場15aを備えることにより、側面視において略L型に形成されている。なお、伸縮足場15aは、例えばエキスパンドメタル等の金網によって構成された床部を有する。
この下部防護工15の上端部中央に回転部材13aが設けられた状態となっている。下部防護工15は、この回転部材13aによって水平方向に転回可能となっている。
【0023】
下部防護吊足場16は、解体・撤去される予定のコンクリート床版3の側方から下方にかけて配置されたものであり、橋桁2に引っ掛けられたチェーン等の吊部材により、防護工13の内側に位置するようにして設けられている。
この下部防護吊足場16は、コンクリート床版3の側方から下方にかけて配置されていることにより、作業時の足場として、さらに側方および下方に対する安全設備として機能する。
【0024】
作業スペース10Sは、コンクリート床版3のうちブロック状に解体される部位(ブロック3a)と移動式ステージ10との間のスペースを指しており、ステージ本体11に形成された開口部11dの下方に位置する。
作業スペース10Sの周囲には、作業スペース10S内への侵入を防いだり、床版切断装置20の切断作業で発生する粉塵の飛散を抑制したりするための防護柵17が設けられている。なお、防護柵17は、作業スペース10Sの四周に設けられているものとする。
【0025】
集塵機収納部18は、ステージ本体11の下面に設けられており、後述する複数の集塵機40を収納することができる。また、この集塵機収納部18は、4つの脚部12に囲まれた位置であって、かつ作業スペース10Sに隣り合う位置に配置されている。
【0026】
床版切断装置20は、
図5〜
図9に示すように、コンクリート床版3のうちブロック状に解体される部位(ブロック3a)の上(当該ブロック状に解体される部位と移動式ステージ10との間の作業スペース10S)に設置されて、コンクリート床版3をブロック状に切断するためのものである。
本実施形態における床版切断装置20は、
第1ワイヤーソー切断装置21と、
第2ワイヤーソー切断装置22と、
これら第1ワイヤーソー切断装置21と第2ワイヤーソー切断装置22によって走行駆動される無端状のワイヤーソー23と、
第1ワイヤーソー切断装置21に内蔵された各種プーリ210,211,212と、
第2ワイヤーソー切断装置22に内蔵された各種プーリ220,221と、
切断箇所に応じて配置された複数の従動プーリ24と、
ガイドローラ25と、を備える。
なお、第1ワイヤーソー切断装置21は、橋梁1の最も外側に位置する橋桁2(以下、第1橋桁2A)の上方に設置され、第2ワイヤーソー切断装置22は、最も外側に位置する第1橋桁2Aよりも一つ内側に位置する橋桁2(以下、第2橋桁2B)の上方に設置されている。
【0027】
ワイヤーソー23は、橋桁2(第1橋桁2A、第2橋桁2B)とコンクリート床版3の接合境界面C1に沿う方向と、コンクリート床版3の幅方向および厚み方向に連続して延設されている。
第1ワイヤーソー切断装置21および第2ワイヤーソー切断装置22に内蔵された複数のプーリ210,211,212,220,221と、複数の従動プーリ24は、ワイヤーソー23をその延設経路に沿った走行方向に案内するとともに走行駆動させるためのものである。
【0028】
第1ワイヤーソー切断装置21は、内蔵された複数のプーリとして、駆動プーリ210と、固定プーリ211と、移動プーリ212と、を備える。
また、複数のプーリ210,211,212は、筐体21a内に収納されているものとする。すなわち、複数のプーリ210,211,212は、筐体21aによってカバーされた状態となっている。
さらに、第1ワイヤーソー切断装置21は、路面上に設置された支持台21b上に設置されている。
なお、第1ワイヤーソー切断装置21は、内蔵された複数のプーリ210,211,212の他にも、ワイヤーソー23を冷却する冷却装置を始め、コンクリート床版3の解体・撤去作業に必要な種々の装置や機能を有するものとする。
【0029】
駆動プーリ210は、駆動装置210a,210bに取り付けられて回転するように構成されており、壁高欄4側に位置する駆動プーリ210(以下、第1駆動プーリ210A)と、橋梁1の中央側に位置する駆動プーリ210(以下、第2駆動プーリ210B)と、からなる。
ワイヤーソー23は、これら第1駆動プーリ210Aおよび第2駆動プーリ210Bの回転駆動に伴って繰り出されて高速で走行する。
【0030】
固定プーリ211は、第1駆動プーリ210Aと第2駆動プーリ210Bとの間の位置に固定されるとともに回転自在とされた第1固定プーリ211Aと、第2固定プーリ211Bと、第3固定プーリ211Cと、からなる。
各固定プーリ211A,211B,211Cには、移動プーリ212と交互にワイヤーソー23が巻き掛けられており、切断作業が進むにつれて弛緩するワイヤーソー23に対して張力を付加する際に効果的に機能する。
【0031】
移動プーリ212は、第1駆動プーリ210Aと第2駆動プーリ210Bとの間の位置から上方に移動可能(上下移動可能)であるとともに回転自在とされた第1移動プーリ212Aと、第2移動プーリ212Bと、からなる。
各移動プーリ212A,212Bには、固定プーリ211と交互にワイヤーソー23が巻き掛けられており、固定プーリ211との間隔を拡げるように移動することによってワイヤーソー23に張力を付加することができる。
【0032】
第2ワイヤーソー切断装置22は、内蔵された複数のプーリとして、駆動プーリ220と、固定プーリ221と、を備える。
なお、第2ワイヤーソー切断装置22は、以上のような内蔵された複数のプーリの他にも、ワイヤーソー23を冷却する冷却装置を始め、コンクリート床版3の解体・撤去作業に必要な種々の装置や機能を有するものとする。
また、複数のプーリは、筐体22a内に収納されているものとする。すなわち、複数のプーリは、筐体22aによってカバーされた状態となっている。
【0033】
駆動プーリ220は、駆動装置220aに取り付けられて回転するように構成されている。また、この駆動プーリ220は、上下方向に移動可能とされている。すなわち、この駆動プーリ220は、ワイヤーソー23を高速で走行させるだけでなく、上下方向に移動することによってワイヤーソー23に張力を付加できるものである。また、駆動プーリ220の回転速度は、第1ワイヤーソー切断装置21における第1駆動プーリ210Aおよび第2駆動プーリ210Bの回転速度と同等である。
【0034】
固定プーリ221は、駆動プーリ220に近接する位置に固定されるとともに回転自在とされている。
固定プーリ221には、移動プーリ212と交互にワイヤーソー23が巻き掛けられており、切断作業が進むにつれて弛緩するワイヤーソー23に対して張力を付加する際に効果的に機能する。
【0035】
複数の従動プーリ24は、
図6〜
図9に示すように、第1ワイヤーソー切断装置21における第1駆動プーリ210Aに続いて設けられる第1従動プーリ240から、第2ワイヤーソー切断装置22を経由して、第1ワイヤーソー切断装置21における第2駆動プーリ210Bの手前に設けられる第10従動プーリ249までを備える。
【0036】
第1従動プーリ240は、第1ワイヤーソー切断装置21の下端部に、取付部材240aを介して取り付けられているとともに、第1ワイヤーソー切断装置21における第1駆動プーリ210Aの下方に位置している。
第1ワイヤーソー切断装置21から繰り出されたワイヤーソー23は、この第1従動プーリ240を介して、壁高欄4の上端部へと続く状態に延設されている。
【0037】
第2従動プーリ241は、壁高欄4からコンクリート床版3の下方に回り込んだ位置に配置されている。なお、この第2従動プーリ241は、取付部材241aを介して第1橋桁2Aに取り付けられている。
ワイヤーソー23は、第2従動プーリ241の上側から巻き掛けられて下方に繰り出される状態に延設されている。
第1従動プーリ240と第2従動プーリ241に巻き掛けられた状態のワイヤーソー23に張力を付加することにより、コンクリート床版3における第1橋桁2Aよりも外側に位置する部分の切断作業を行うことができる。
【0038】
第3従動プーリ242は、第2従動プーリ241の下方・第1橋桁2A寄りに配置されている。なお、この第3従動プーリ242は、取付部材242aを介して第1橋桁2Aに取り付けられている。また、この取付部材242aは、第2従動プーリ241における取付部材241aと一体的に構成されている。
ワイヤーソー23は、第3従動プーリ242の下側に巻き掛けられて上方に繰り出される状態に延設されている。
【0039】
第4従動プーリ243は、第3従動プーリ242の上方であって、かつ第2従動プーリ241に隣り合うようにして配置されている。また、この第4従動プーリ243は、第2従動プーリ241と交差する向きに配置されている。さらに、この第4従動プーリ243は、取付部材243aを介して第1橋桁2Aに取り付けられている。また、この取付部材243aは、第2従動プーリ241における取付部材241aと第3従動プーリ242のける取付部材242aと一体的に構成されている。
ワイヤーソー23は、第4従動プーリ242の上側に巻き掛けられ、第1橋桁2Aの長さ方向に水平に繰り出される状態に延設されている。第4従動プーリ243から繰り出されたワイヤーソー23は、橋梁1の最も外側に位置する第1橋桁2Aとコンクリート床版3との接合境界面C1の縁に巻き掛けられた状態に延設されている。
【0040】
第5従動プーリ244は、最も外側に位置する第1橋桁2Aよりも内側(橋梁1の中央側)に、かつブロック3aの厚み方向の切断予定面C2よりも内側に設けられている。
第1橋桁2Aとコンクリート床版3との接合境界面C1の縁に巻き掛けられたワイヤーソー23は、この第5従動プーリ244に巻き掛けられている。すなわち、第4従動プーリ243と第5従動プーリ244に巻き掛けられた状態のワイヤーソー23に張力を付加することにより、第1橋桁2Aとコンクリート床版3との接合境界面C1における切断作業を行うことができる。このとき、第1橋桁2Aの上面に設けられた複数のジベル2aも同時に切断することができる。
第5従動プーリ244に巻き掛けられたワイヤーソー23は、第2橋桁2Bに向かって繰り出される状態に延設されている。
【0041】
第6従動プーリ245は、第1橋桁2Aと第2橋桁2Bとの中間地点であって、かつ第5従動プーリ244と後述する第7従動プーリ246との中間地点に設けられている。
ワイヤーソー23は、第6従動プーリ245の上側に接した状態に延設されている。すなわち、第6従動プーリ245は、第5従動プーリ244と後述する第7従動プーリ246との中間地点にあって、ワイヤーソー23の撓みを抑制するために設けられている。
【0042】
第7従動プーリ246は、第5従動プーリ244と平行する位置であって、かつ第2橋桁2Bにおける第1橋桁2A側に設けられている。すなわち、第7従動プーリ246は、第5従動プーリ244と対極的な位置取りとなっている。
第5従動プーリ244から繰り出されたワイヤーソー23は、第6従動プーリ245を介して、この第7従動プーリ246に巻き掛けられており、この第7従動プーリ246から繰り出されたワイヤーソー23は、第2橋桁2Bとコンクリート床版3との接合境界面C1の縁に巻き掛けられた状態に延設されている。
【0043】
第8従動プーリ247は、第2橋桁2Bよりも内側に(橋梁1の中央側)に、かつブロック3aの厚み方向の切断予定面C2と揃う位置に設けられている。
第2橋桁2Bとコンクリート床版3との接合境界面C1の縁に巻き掛けられたワイヤーソー23は、この第8従動プーリ247に巻き掛けられている。すなわち、第7従動プーリ246と第8従動プーリ247に巻き掛けられた状態のワイヤーソー23に張力を付加することにより、第2橋桁2Bとコンクリート床版3との接合境界面C1における切断作業を行うことができる。このとき、第2橋桁2Bの上面に設けられた複数のジベル2aも同時に切断することができる。
第8従動プーリ247に巻き掛けられたワイヤーソー23は、第2橋桁2Bに向かって繰り出される状態に延設されている。
【0044】
第9従動プーリ248は、第2ワイヤーソー切断装置22の下端部に、取付部材248aを介して取り付けられているとともに、コンクリート床版3に形成された第2橋桁2B側のコアラインカット部3c(後述する)の内部に設けられている。さらに、この第9従動プーリ248は、ブロック3aの厚み方向の切断予定面C2に沿ってワイヤーソー23を繰り出せる位置・向きに配置されている。
ワイヤーソー23は、第9従動プーリ248の下側に巻き掛けられ、上方に向かって繰り出される状態に延設されている。上方に向かって繰り出されたワイヤーソー23は、第2ワイヤーソー切断装置22に内蔵された駆動プーリ220に巻き掛けられている。
【0045】
第9従動プーリ248から繰り出されたワイヤーソー23は、第9従動プーリ248の上方に位置する、第2ワイヤーソー切断装置22の駆動プーリ220に巻き掛けられている。
駆動プーリ220から繰り出されたワイヤーソー23は、第2ワイヤーソー切断装置22の固定プーリ221に巻き掛けられている。
固定プーリ221から繰り出されたワイヤーソー23は、第2ワイヤーソー切断装置22の下端部から出て、コンクリート床版3における第1橋桁2Aと第2橋桁2Bとの間に位置する部分の下面を通過し、コンクリート床版3に形成された第1橋桁2A側のコアラインカット部3b(後述する)を上方に向かって通過し、第10従動プーリ249に巻き掛けられている。
【0046】
第10従動プーリ249は、第1ワイヤーソー切断装置21の下端部に、取付部材249aを介して取り付けられているとともに、第1ワイヤーソー切断装置21における第2駆動プーリ210Bの下方に位置している。
第10従動プーリ249から繰り出されたワイヤーソー23は、第1ワイヤーソー切断装置21における第2駆動プーリ210Bに巻き掛けられている。
【0047】
そして、第2駆動プーリ210Bから繰り出されたワイヤーソー23は、第1ワイヤーソー切断装置21における各固定プーリ211(211A,211B,211C)と、各移動プーリ212(212A,212B)に交互に巻き掛けられており、第1駆動プーリ210Aに至る。
ワイヤーソー23は無端状であるため、以上のような延設経路に沿って走行することによって、コンクリート床版3を切断することができる。
切断作業が進むにつれてワイヤーソー23は弛緩するため、第1ワイヤーソー切断装置21における各移動プーリ212(212A,212B)と、第2ワイヤーソー切断装置22における駆動プーリ220は操作されて適宜移動し、ワイヤーソー23に対して張力が付加されることになる。
【0048】
ガイドローラ25は、
図8,
図9に示すように、回転軸が、第1橋桁2Aと第2橋桁2B双方の上端部における両側縁に沿うようにして、かつ第1橋桁2Aと第2橋桁2B双方の上端部における両側縁よりも外側にはみ出したワイヤーソー23の下面に接するようにして配置されている。このようなガイドローラ25は、ワイヤーソー23の走行に合わせて軸周りに回転自在に構成されている。
すなわち、ガイドローラ25は、第1橋桁2Aとコンクリート床版3との接合境界面C1を切断するために第4従動プーリ243と第5従動プーリ244に巻き掛けられた状態のワイヤーソー23と、第2橋桁2Bとコンクリート床版3との接合境界面C1を切断するために第7従動プーリ246と第8従動プーリ247に巻き掛けられた状態のワイヤーソー23の撓みを抑制しつつ、ワイヤーソー23の走行をガイドするためのものである。
第4従動プーリ243と第5従動プーリ244は第1橋桁2Aの上端部から水平方向に離間しており、第7従動プーリ246と第8従動プーリ247は第2橋桁2Bの上端部から水平方向に離間している。そのため、これら各プーリ243,244・246,247に巻き掛けられたワイヤーソー23は、各プーリ243,244・246,247に向かうにつれて「ハの字」に開いた状態となる。また、切断作業を進めるとワイヤーソー23は、徐々に各プーリ243,244・246,247に近づくため、ワイヤーソー23における撓みを抑制すべき箇所も切断作業が進むにつれて徐々に変化することになる。ガイドローラ25は、これに対応すべく長尺に形成されており、ワイヤーソー23の撓む位置が切断作業の進行に伴って徐々に変化したとしても、ワイヤーソー23の撓みをより確実に抑制しつつワイヤーソー23の走行をガイドすることができる。
なお、ガイドローラ25は、第1橋桁2Aの上端部における両側縁に沿う第1ガイドローラ25A・第2ガイドローラ25Bと、第2橋桁2Bの上端部における両側縁に沿う第3ガイドローラ25C・第4ガイドローラ25Dと、からなる。
また、これら各ガイドローラ25A,25B,25C,25Dは、支持部材26を介して第1橋桁2Aと第2橋桁2Bに固定されている。
【0049】
コンクリート床版3は、第1橋桁2Aと第2橋桁2Bに敷設された状態となっているため、床版切断装置20によってブロック3aが切り離されたコンクリート床版3は、第1橋桁2Aと第2橋桁2Bのいずれにも載らない箇所が生じることとなる。
このような箇所が生じてもコンクリート床版3を確実に支持できるようにするために、第2橋桁2Bには、
図7に示すように、斜材27aを介して補強縦桁27が設けられている。この補強縦桁27は、コンクリート床版3の解体・撤去作業が行われる箇所に沿って事前に設けられるものとする。また、この補強縦桁27の設置作業は、防護工13または下部防護吊足場16の設置後に、防護工13または下部防護吊足場16を作業足場として利用して行われるものとしてもよい。
【0050】
床版吊り上げ手段30は、移動式ステージ10に搭載され、床版切断装置20によって他の部位から切り離されたコンクリート床版3のブロック3aを吊り上げるためのものである。本実施形態においてはジブクレーンが採用されており、ステージ本体11を構成する複数の鉄骨11aの上に位置するようにして当該鉄骨11aに固定されている。
床版吊り上げ手段30であるジブクレーンのフックは、ステージ本体11の開口部11dから作業スペース10S内に差し入れることができる。
なお、本実施形態における床版吊り上げ手段30はジブクレーンを採用したが、これに限られるものではない。すなわち、ステージ本体11に固定でき、ブロック3aを吊り上げることができ、かつ、ブロック3aを吊り上げて旋回できるクレーンであればよい。
【0051】
集塵手段40は、床版切断装置20によってコンクリート床版3を切断する際に発生する粉塵を吸引するためのものであり、複数の集塵機40からなる。
複数の集塵機40は、上述のようにステージ本体11の下面に設けられた集塵機収納部18に収納されている。また、複数の集塵機40は、図示しないホースを備えており、作業スペース10Sや下部防護吊足場16内などのように、特に粉塵が発生する箇所に向けてホースが配置されている。
【0052】
発電手段50は、ステージ本体11の上面に、床版吊り上げ手段30に隣接して配置された電源装置である。この電源装置50は、図示しない送電用のケーブルを備えており、電力が必要な装置に向かって配線されている。
【0053】
制御手段は、図示はしないが、以上の解体システムを構成する床版切断装置20や床版吊り上げ手段30等の各種手段の制御を行うためのものであり、各種手段との間で通信を行うことができる。これによって、解体システムを構成する各種手段の遠隔操作を行うことができ、作業時の安全性を向上させることができる。
また、移動式ステージ10や作業現場の周囲にはカメラが設置されており、作業員が遠隔監視できるようになっている。
【0054】
次に、以上のような構成の解体システムによって、橋梁1の路面を構成するコンクリート床版3を解体する方法について説明する。
【0055】
橋梁1の改修工事を行うに当たっては、まず、
図1,
図2等に示すように、ロードコーン5および規制バー6を用いて、橋梁1における車線規制を行う。
ただし、本実施形態における橋梁1の改修工事は、橋梁1の一部の通行だけを止めてコンクリート床版3の一部の解体・撤去作業が行われるものであり、橋梁1の幅方向に亘って一挙にコンクリート床版3の解体・撤去作業が行われる場合には橋梁1の通行止めが行われる。
【0056】
続いて、移動式ステージ10を、コンクリート床版3のうち床版切断装置20によって他の部位から切り離される予定の部位(ブロック3a)との間に作業スペース10Sを形成するようにして配置する。
より詳細に説明すると、ロードコーン5および規制バー6によって囲まれた改修工事の現場にて、移動式ステージ10の組み立てを行い、さらに、ジブクレーン30と複数の集塵機40と電源装置50を移動式ステージ10に搭載する。
なお、移動式ステージ10の組み立てに際しては、防護工13の組み立ても行われ、ステージ本体11に対して連結される。さらに、下部防護吊足場16も第1橋桁2Aと第2橋桁2Bに設置する。
【0057】
続いて、防護工13における下部防護工15または下部防護吊足場16を利用して、第2橋桁2Bに補強縦桁27を設置する。なお、補強縦桁27の設置は、下部防護工15上または下部防護吊足場16上で、例えばワイヤーロープおよび滑車等を用いて行われるものとする。
なお、補強縦桁27の設置作業を行う場合や、コンクリート床版3の切断作業中は、
図3,
図4等に示すように、下部防護工15の伸縮足場15aを伸ばした状態とする。
【0058】
続いて、コンクリート床版3のうち、他の部位から切り離されるブロック3aの周縁部に含まれ、かつ第1橋桁2Aと第2橋桁2Bの上に位置する箇所を、図示しないダイヤモンドビット(筒状の削孔機)によって連続的に削孔する(
図8等参照)。
これによって、コンクリート床版3のうち、第1橋桁2A上に位置する2箇所にコアラインカット部3b,3cが形成され、第2橋桁2B上に位置する2箇所にコアラインカット部3d,3eが形成された状態となる。
また、最初にコンクリート床版3を切断してブロック3aを他の部位から切り離す場合に限って、第1橋桁2A上のコアラインカット部3cと第2橋桁2B上のコアラインカット部3eとの間、およびコアラインカット部3cとコンクリート床版3の外側端部までの間(壁高欄4を含む)を、図示しない切断機によって切断する。これによって、コア間カット部3fが形成された状態となる。
さらに、改修工事が行われる箇所(撤去される箇所)と橋梁1中央側の箇所(残存する箇所)との境界部分を、図示しない切断機によって、橋梁1の延在方向(改修工事が行われる箇所の延在方向:矢印Yの方向)に沿って切断する。これによって、境界カット部3gが形成された状態となる。
なお、コアラインカット部3b〜3eおよびコア間カット部3fは、コンクリート床版3を厚み方向に貫通した状態に形成されている。
また、第2橋桁2B上に位置するコアラインカット部3d,3eにおける橋梁1中央側の端部は、撤去されるブロック3aにおける橋梁1中央側端部に相当する。同じく、境界カット部3gは、撤去されるブロック3aにおける橋梁1中央側辺に相当する。
【0059】
続いて、ガイドローラ25(25A,25B,25C,25D)を第1橋桁2Aと第2橋桁2B双方の上端部における両側縁に沿って配置する。このとき、各ガイドローラ25(25A,25B,25C,25D)の回転軸も、第1橋桁2Aと第2橋桁2B双方の上端部における両側縁に沿った状態となっている。
【0060】
続いて、
図5等に示すように、第1ワイヤーソー切断装置21と第2ワイヤーソー切断装置22を作業スペース10Sに設置固定する。第1ワイヤーソー切断装置21については、支持台21bを介してコンクリート床版3上に設置する。
さらに、ワイヤーソー23を第1橋桁2Aおよび第2橋桁2Bとコンクリート床版3の接合境界面C1に沿う方向と、コンクリート床版3の幅方向および厚み方向に連続して延設する。
すなわち、各従動プーリ240〜249を、所定の位置・向きに配置する。そして、無端状のワイヤーソー23を、第1ワイヤーソー切断装置21に内蔵された各プーリ210,211,212と、第2ワイヤーソー切断装置22に内蔵された各プーリ220,221と、各従動プーリ240〜249と、に巻き掛ける。
このとき、ワイヤーソー23は、壁高欄4の上端部にも引っ掛けられ、各コアラインカット部3b〜3eにも通された状態となっている。
また、第1橋桁2Aと第2橋桁2B双方の上端部における両側縁に沿って配置した各ガイドローラ25(25A,25B,25C,25D)に、ワイヤーソー23が接した状態となっている。
【0061】
続いて、作業スペース10Sの外周に防護柵17を設置する。
さらに、複数の集塵機40から延びる図示しないホースを、作業スペース10Sや下部防護吊足場16内などのように特に粉塵が発生する箇所や、その他の必要な箇所に向けて配置する。
また、切断範囲の粉塵の飛散が予想される箇所には、粉塵の飛散を抑制するシートカバーを適宜設けるようにする。
【0062】
続いて、第1ワイヤーソー切断装置21と第2ワイヤーソー切断装置22における各駆動プーリ210A,210B,220を回転させて、ワイヤーソー23をその延設方向に沿って走行駆動させる。これにより、コンクリート床版3の切断作業が開始される。
切断作業が進むにつれてワイヤーソー23は弛緩するので、
図6に示すように、第1ワイヤーソー切断装置21に内蔵された各移動プーリ212A,212Bと、第2ワイヤーソー切断装置22における駆動プーリ220を上方に移動させながら切断作業を行ない、コンクリート床版3を切断できる程度の張力を維持する。
なお、ワイヤーソー23を走行させている間は、第1ワイヤーソー切断装置21および第2ワイヤーソー切断装置22に内蔵された図示しない冷却装置によってワイヤーソー23を冷却して、ワイヤーソー23の発熱を抑制する。
【0063】
このようにワイヤーソー23を走行駆動させることにより、コンクリート床版3を切断してブロック状に解体することができる。すなわち、ブロック3aを、
図10に示すように、コンクリート床版3における他の部位から切り離すことができる。
なお、床版切断装置20によってコンクリート床版3の切断作業を行っている最中は、他の部位から切り離される予定の部位(ブロック3a)をジブクレーン30によって吊支持した状態としておくようにする。
ブロック3aが切り離された後は、第1ワイヤーソー切断装置21および第2ワイヤーソー切断装置22と、ワイヤーソー23と、各従動プーリ240〜249を撤去する。撤去された当該各装置等は、次の解体予定箇所まで運搬される。この時、各装置等は、ジブクレーン30を用いるなどして移動式ステージ10上の空きスペースに載せて運搬してもよい。
【0064】
他の部位から切り離されたブロック3aは、ジブクレーン30によって吊り上げられ、
図11に示すように、輸送車両Tに載せられる。
なお、ブロック3aがステージ本体11の開口部11dを通過できる大きさである場合には、ブロック3aはジブクレーン30によって開口部11dを通過させて上方に吊り上げられる。
一方、ブロック3aが開口部11dを通過できない大きさの場合には、作業スペース10S内に留まる高さに吊り上げたまま、いったん移動式ステージ10を作業方向に移動させて、次の解体予定箇所にブロック3aを仮置きする。続いて、移動式ステージ10をさらに作業方向に移動させて、ブロック3aを作業スペース10Sの範囲外に出した後に、ジブクレーン30によって吊り上げて輸送車両Tに載せる。そして、ブロック3aは、輸送車両Tによって搬出される。
【0065】
ブロック3aを輸送車両Tに載せた後は、第1橋桁2Aと第2橋桁2Bにおけるブロック3aが撤去された箇所の清掃や付着コンクリートの撤去を行う。
なお、この作業は、改修工事予定区間すべてのコンクリート床版3の解体・撤去作業が行われた後にまとめて行なってもよいものとする。
【0066】
その後、移動式ステージ10を、次の解体予定箇所の上に作業スペース10Sが位置するように移動させて、上述した作業工程を繰り返し、改修工事予定区間の全てのコンクリート床版3における解体・撤去作業を行う。
なお、改修工事予定区間に橋脚がある場合は、防護工13における下部防護工15を、回転部材13aを介して90度または180度回転させて、下部防護工15と橋脚が接触しないようにする。このとき、伸縮足場15aを縮めた状態にして、ステージ本体11に掛かる荷重を軽減することが望ましい。
【0067】
図示はしないが、改修工事予定区間の全てのコンクリート床版3における解体・撤去作業が行われた後は、予め工場で製造された鋼床版やプレキャストコンクリート床版等の新設床版を設置する。
以上のようにして橋梁改修工事が行われる。
【0068】
本実施の形態によれば、コンクリート床版と移動式ステージとの間の作業スペースに床版切断装置が設置され、床版吊り上げ手段が移動式ステージに搭載されているので、各手段を移動式ステージおよびその近傍に一まとめに集めることができる。そのため、各手段が互いの作業の妨げとなりにくく、各手段が移動ステージの移動の妨げになることも防ぐことができる。さらに、床版切断装置20が、橋桁2とコンクリート床版3の接合境界面C1に沿う方向と、コンクリート床版3の幅方向および厚み方向に延設されるワイヤーソー23を有するので、コンクリート床版3をブロック状に解体することができる。これによって、コンクリート床版3の解体・撤去作業を効率よく行うことができる。
【0069】
また、床版切断装置20は、回転軸が橋桁2(2A,2B)の上端部における両側縁に沿うようにして、かつ橋桁2の上端部における両側縁よりも外側にはみ出したワイヤーソー23の下面に接するようにして配置されたガイドローラ25(25A,25B,25C,25D)を有し、ガイドローラ25は、ワイヤーソー23の走行に合わせて軸周りに回転自在に構成されているので、切断作業が進むにつれて弛緩するワイヤーソー23の撓みを確実に抑制しつつ、ワイヤーソー23の走行をガイドできる。これによって、ワイヤーソー23の水平度を確保することができるので、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面C1の切断作業を正確に行うことができる。
【0070】
また、解体システムは、移動式ステージ10に搭載され、床版切断装置20によってコンクリート床版3を切断する際に発生する粉塵を吸引する複数の集塵機40を備えるので、例えば作業スペース10Sや下部防護吊足場16内などのように特に粉塵が発生する箇所や、その他の必要な箇所において発生した粉塵を確実に吸引することができる。これによって、周囲への粉塵の飛散を抑制できるので、周辺環境に配慮した解体・撤去作業を行うことができる。
【0071】
また、移動式ステージ10は、ステージ本体11に連結されるとともに橋脚の外側に位置し、床版切断装置20によって切断されるコンクリート床版3の側方から下方にかけて配置された防護工13を有するので、この防護工13は、作業時の足場として、さらに側方および下方に対する安全設備として機能することになり、作業時の安全性を向上させることができる。
また、防護工13のうちコンクリート床版3よりも下方に位置する部位である下部防護工15は、上部防護工14に対して水平方向に転回可能に構成されているので、改修工事予定区間に橋脚がある場合に、この下部防護工15を回転させることにより、橋脚との接触を防ぐことができる。そのため、改修工事予定区間に橋脚がある場合であっても、移動式ステージ10を移動させることができるので、コンクリート床版3の解体・撤去作業を滞りなく行うことができる。