(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デジタル信号処理器は、前記中間デジタル信号の高速フーリエ変換の結果に基づいて、前記中間デジタル信号から、前記干渉信号の前記周波数オフセットおよび前記帯域幅を決定するように構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の光受信器。
前記デジタル信号処理器は、前記中間デジタル信号の高速フーリエ変換の結果に基づいて、前記中間デジタル信号から、前記干渉信号の前記周波数および前記帯域幅を決定するように構成されている、請求項8から13のいずれか1項に記載の光受信器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
様々な図面において、同様の参照番号および名称は、同様の要素を示す。
【0010】
上記で紹介され、以下でより詳細に説明される様々な概念は、特定の実装方法に限定されず、様々な方法で実施されてもよい。特定の実装例および応用例は、主に説明の目的で提供される。
【0011】
図1は、例示的な通信システム100を示す。具体的には、通信システム100は、通信リンク106を介して通信している第1の送受信器102と第2の送受信器104とを含む。第1の送受信器102および第2の送受信器104の各々は、各々の装置、例えば、ネットワークスイッチ、コンピュータ、データ記憶装置、ネットワークインターフェイスカード、ホストバスアダプタなどに接続することができる。第1の送受信器102および第2の送受信器104は、各々の装置間の通信を提供することができる。いくつかの実装例において、通信リンク106は、有線または無線の通信リンクを含むことができる。いくつかの実装例において、通信リンク106は、光リンクを含むことができる。
【0012】
第1の送受信器102は、第1の送信器108と、第1の受信器110とを含むことができる。同様に、第2の送受信器104は、第2の送信器112と、第2の受信器114とを含むことができる。第1の送信器108は、第1の光リンク116を介して第2の受信器114と通信することができ、第2の送信器112は、第2の光リンク118を介して第1の受信器110と通信することができる。いくつかの実装例において、第1の送受信器102および第2の送受信器104は、帯域外リンク(out-of-band link)を介して通信することができる。第1の送信器108および第2の送信器112は、光リンク116および118を各々介して送信されているデータを表す光信号を処理および送信するための回路を含むことができる。同様に、第1の受信器110および第2の受信器114は、第1の送信器108および第2の送信器112によって各々送信された光信号を受信および処理することによって、データを再生成するための回路を含むことができる。例えば、第1の送信器108は、デジタル信号処理器(DSP)152を含むことができ、第1の受信器110は、DSP154を含むことができる。第2の送信器112は、DSP158を含むことができ、第2の受信器114は、DSP156を含むことができる。送信器および受信器の各々のDSPは、制御動作および信号処理動作を実行することができ、受信器および送信器に設けられた様々な入出力光学的ポートおよび入出力電気的ポートと通信することもできる。いくつかの実装例において、光リンク118および116は、コネクタ132および134を各々含むことができる。コネクタ132および134は各々、2つの光ファイバの端部接続(end-to-end connection)を可能にすることによって、光リンク116および118の範囲を拡張することができる。
【0013】
図2は、別の例示的な通信システム200を示す。通信システム200は、通信システム100と類似している。具体的に、
図1に示す通信システム100と同様に、通信システム200も第1の送受信器102と第2の送受信器104とを含む。第1の送受信器102は、第1の送信器108と第1の受信器110とを含み、第2の送受信器104は、第2の送信器112と第2の受信器114とを含む。しかしながら、第1の送受信器102と第2の送受信器104とが別々の光リンク116および118を介して通信する通信システム100とは異なり、通信システム200の送受信器102および104は、単一の光リンク140を介して通信する。同様の光リンク140を介した通信を可能にするために、通信システムは、第1のサーキュレータ142と第2のサーキュレータ144を含むことができる。第1のサーキュレータ142および第2のサーキュレータ144は、反対方向に伝送されている光信号同士を分離することができる。したがって、第1のサーキュレータ142は、光リンク140を介して受信した光信号を第1の受信器110に送出し、第1の送信器108から受信した光信号を光リンク140に送出する。同様に、第2のサーキュレータは、光リンク140を介して受信した光信号を第2の受信器114に送出し、第2の送信器112から受信した光信号を光リンク140に送出する。いくつかの実装例において、光リンク140は、
図1に示す光コネクタ132および134と同様のコネクタ146を含むことができる。
【0014】
いくつかの実装例において、
図1および2に示されている第1の送受信器と第2の送受信器との間の光通信は、望ましくない干渉を受けることがある。例えば、
図1を参照して、コネクタ132は、第1の光リンク116を介して伝送された光信号の反射を引き起こすことができる。具体的には、コネクタ132は、第1の送信器108から第2の受信器114に送信された光信号の反射をもたらすことができる。したがって、第2の受信器114は、第1の送信器108から送信された光信号だけではなく、反射された光信号も受信する。同様に、第1の受信器110は、コネクタ134による反射信号に加えて、第2の光リンク118を介して第2の送信器112から送信された光信号を受信することができる。いくつかの実装例において、一方向光リンクを介して送信された元の信号の反射に起因する干渉信号による信号干渉は、マルチパス干渉(MPI)として知られている。反射された干渉信号は本質的に光リンクを介して送信された元の光信号の遅延コピーであるため、干渉信号は、元の信号に実質的に等しい搬送波周波数を有する。本明細書に言及するように、ノイズ光信号は、望ましくない光信号を含むことができる。望ましくない光信号の一例として、他の光信号の反射成分または干渉光信号が挙げられる。
【0015】
双方向光リンク140を含む
図2の通信システム200は、反射信号からの干渉を受ける可能性もある。例えば、コネクタ146は、第2の送信器112から第1の受信器110に送信された光信号の一部を反射して、第2の受信器114に戻すことができる。したがって、第2の受信器114は、第1の送信器108から送信された光信号だけではなく、第2の送信器112から送信された光信号の反射成分を受信する。同様に、第1の受信器110は、第2の送信器112から送信された光信号に加えて、第1の送信器108から送信された光信号の反射成分を受信することができる。いくつかの実装例において、第1の送信器108および第2の送信器112は、異なる搬送波波長で光信号を送信する。したがって、例えば、第1の受信器110で受信された反射信号は、第2の送信器114から送信された元の光信号と、第1の送信器108から送信された光信号の搬送波波長と同様の搬送波波長を有する干渉信号とを含む。第1の送信器108および第2の送信器112の搬送波波長がこれらの送信器から送信された光信号の帯域幅よりも小さい帯域幅で分離された場合、干渉反射信号は、帯域内干渉(in-band interference)をもたらす可能性がある。
【0016】
いくつかの実装例において、特に直接検出型光学システムにおいて、高次変調技術(例えば、PAM4)またはエラー訂正技術(例えば、順方向エラー訂正(FEC))を利用して、従来の付加的ガウス分布ノイズ、例えば、トランスインピーダンス増幅器からの熱ノイズの影響を低減することができる。しかしながら、このような技術は、例えば、
図1および2に関連して上記で説明した光信号の反射に起因する帯域内干渉の影響を軽減する効果があまりない。以下の説明は、元の信号と、元の信号の搬送波周波数に実質的に等しい搬送波周波数を有する反射信号または元の光信号の帯域幅内にある搬送波周波数を有する反射信号との間の干渉によって引き起こされた帯域内ノイズを軽減するための技術に関する。
【0017】
いくつかの実装例において、光リンクを介して送信器から送信される強度変調光信号(本明細書では元の光信号とも呼ぶ)は、式(1)で表すことができる。
【0019】
一方、送信器から送信される光信号に加えて、受信器によって受信される干渉光信号は、式(2)で表すことができる。
【0021】
式中、I
0TおよびI
0Iは、元の変調信号の平均光信号強度および第2の受信器によって受信される干渉信号の平均光信号強度を各々表す。a(t)およびb(t)は、光信号の正規化されたA/C成分および干渉信号の正規化されたA/C成分を各々表す。ωTおよびθ(t)は、元の光信号の搬送波周波数および位相各々を表し、ω
Iおよびφ(t)は、干渉信号の搬送波周波数および位相を各々表す。また、θ(t)およびφ(t)は、変調により誘発される搬送波位相の変化を表す。
【0024】
受信器に設けられた光検出器は、式(5)で表された元の強度変調光信号および式(6)で表された干渉信号の両方を受信する。光検出器は、当該光信号を変換することによって、対応する電気信号を生成する。元の光信号の偏光状態と干渉光信号の偏光状態とが整列している(最悪の場合)と仮定し且つ干渉信号の強度が元の光信号の強度よりも著しく小さいと仮定する場合、受光器の光検出器によって生成される電流は、以下の式(7)で表すことができる。
【0026】
図3は、光信号における干渉を軽減することができる第1の受信器300を示す。具体的には、第1の受信器300を用いて、
図1および2に示す第1の受信器110および第2の受信器112を実装することができる。第1の受信器300は、受信した光信号内の干渉信号を自動的に検出し、干渉をフィルタリングするようにノッチフィルタを設定することができる。第1の受信器300は、光検出器302と、アナログデジタル変換器(ADC)304と、チューニング可能なノッチフィルタ306と、等化器308と、シンボル決定モジュール310と、復調器312と、周波数オフセットモニタ314とを含む。光検出器302は、入射レーザ光の強度を対応する電流に変換するように構成された半導体PINダイオードであってもよい。送信信号の帯域幅に実質的に等しいかまたはそれより大きいスペクトル応答範囲を有するフォトダイオードを利用することができる。いくつかの実装例において、高感度および低暗電流のフォトダイオードを利用することもできる。
【0027】
光検出器302によって受信された光信号は、送信器から送信された元の強度変調光信号を含むだけではなく、光リンクに沿って1つ以上の反射に起因する干渉光信号も含む。光検出器302は、受信した光信号をアナログ電気受信信号に変換する。いくつかの実装例において、光検出器302は、受信した光信号に対応するアナログ電流を生成することができる。例えば、上記の式(7)に示す電流I(t)は、光検出器302によって生成されたアナログ電気受信信号を表すことができる。
【0028】
いくつかの実装例において、増幅器を用いて、光検出器302によって生成された電流I(t)を増幅および/または変換することができる。例えば、トランスインピーダンス増幅器(TIA)を用いて、電流I(t)を増幅することができ、電圧V(t)に変換することができる。いくつかの実装例において、演算増幅器を用いて、TIAを実装することができる。
【0029】
光検出器302によって出力されたアナログ電気受信信号は、ADC304に提供され、デジタル受信信号に変換され得る。ADC304は、光検出器302によって出力されたアナログ電気受信信号をデジタル信号y
kに変換する。y
kは、アナログ電気受信信号のk番目サンプルのデジタル値yを表す。いくつかの実装例において、直接変換ADC、逐次近似ADC、ランプ比較ADC、シグマデルタADCなどのいずれか1つを利用して、ADC304を実装することができる。ADC304によって出力されたデジタル受信信号は、周波数オフセットモニタ314およびチューニング可能なノッチフィルタ306に供給されてもよい。
【0030】
周波数オフセットモニタ314は、デジタル受信信号を処理することによって、チューニング可能なノッチフィルタ306の中心周波数を決定する。具体的には、周波数オフセットモニタ314は、干渉光信号のビート周波数Δωを決定する。このビート周波数Δωは、元の光信号の搬送波周波数ω
Tと干渉光信号の搬送波周波数ω
Iとの間の差である。ビート周波数Δωを決定するために、周波数オフセットモニタ314は、まず、デジタル受信信号y
kからデータ変調を除去する。デジタル受信信号y
kからデータ変調を除去するために、周波数オフセットモニタ314は、デジタル受信信号y
kから、シンボル決定モジュール310の出力d
kを減算する。減算の結果は、中間信号x
kである。次に、周波数オフセットモニタ314は、中間信号x
kに対して高速フーリエ変換(FFT)分析を実行することによって、ビート周波数Δωを決定する。具体的には、周波数オフセットモニタ314は、FFT分析の結果を[Δω,Z]に等しくする。式中、Zは、振幅スペクトルを表し、Δωは、Zから抽出したビート周波数を表す。その後、周波数オフセットモニタ314は、Zの最大値またはピーク値をもたらすΔωの値を決定する。Zの最大値またはピーク値をもたらすΔωは、干渉信号のビート周波数である。
【0031】
上記で説明したように、干渉信号がMPIによる結果である場合、干渉光信号の搬送波周波数ω
Iは、元の光信号の搬送波周波数ω
Tに実質的に等しい。したがって、この場合のビート周波数Δωは、ゼロに等しい。しかしながら、干渉光信号および元の光信号が異なる送信器からの信号である帯域内干渉の場合、ビート周波数Δωは、非ゼロ値である。いくつかの実装例において、干渉信号がMPIによる結果である場合、
図3に示す第1の受信器300において、周波数オフセットモニタ314を除外することができ、低域フィルタを用いて、チューニング可能なノッチフィルタ306を置き換えることができる。このような実装例において、低域フィルタは、アナログ低域フィルタであってもよく、光検出器302の後方且つADC304の前方に配置されてもよい。いくつかの実装例において、上述したアナログ低域フィルタは、受信器にADCを設けていない通信システムに設けられてもよい。
【0032】
周波数オフセットモニタ314は、経時的に発生するビート周波数の変化を監視することができる。例えば、元の光信号の搬送波周波数ω
Tを生成するために使用されるレーザダイオードの周波数が経時的に変動する場合、周波数オフセットモニタ314は、搬送波周波数の変動を追跡することにより、干渉光信号のビート周波数Δωの修正値を決定する。
【0033】
ビート周波数Δωを決定した後、ビート周波数Δωの値は、チューニング可能なノッチフィルタ306に送信される。チューニング可能なノッチフィルタ306は、中心周波数の付近の狭帯域幅内の入力信号に高減衰を実行すると共に、狭帯域幅外側の入力信号の成分を実質的に変更しない。いくつかの実装例において、周波数オフセットモニタ314は、チューニング可能なノッチフィルタの中心周波数を提供するが、チューニング可能なノッチフィルタは、自らの帯域幅を比較的一定に保つことができる。例えば、いくつかの実装例において、元の光信号を生成するためのレーザの線幅が数MHzに制限され且つ元の光信号における変調誘起チャープが比較的小さい場合、干渉信号の実質的な部分は、ビート周波数Δωの数十MHzの範囲に制限される。したがって、チューニング可能なノッチフィルタの帯域幅は、数十MHzに設定することができる。例えば、いくつかの実装例において、(約10MHzの線幅を有する)分布帰還型(DFB)レーザを用いて搬送波周波数を生成し且つ(変調誘導チャープが比較的小さい)外部変調器を使用する場合、チューニング可能なノッチフィルタ306の帯域幅は、数十MHz、例えば、約10MHz〜約90MHzになるように選択することができる。チューニング可能なノッチフィルタ306は、ビート周波数Δωの付近の所望の帯域幅内のデジタル受信信号y
kの周波数成分を減衰させることによって、干渉信号を実質的に減衰させる。
【0034】
チューニング可能なノッチフィルタ306は、フィルタリングされたデジタル受信信号を出力し、等化器308に供給する。等化器308は、周波数依存の位相および振幅歪みなどの送信リンク損失を補償することによって、シンボル検出における損失を低減する。いくつかの実装例において、等化器308は、シンボル間干渉を低減することもできる。いくつかの実装例において、等化器308は、フィルタリングされたデジタル受信信号の光減衰および/または色分散を補正することができる。等化器308は、フィルタリングされたデジタル受信信号を処理することにより、等化されたデジタル受信信号を生成し、シンボル決定モジュール310に供給する。
【0035】
シンボル決定モジュール310は、等化されたデジタル受信信号からデータシンボルd
kを決定する。データシンボルd
kは、周波数オフセットモニタ314および復調器312に供給される。復調器312は、送信器に使用された符号化および変調技術に基づいて、シンボルによって表された実際のビットを復調する。
【0036】
いくつかの実装例において、チューニング可能なノッチフィルタ306を用いて、入来するデジタル受信信号を直接にフィルタリングすることで干渉信号を減衰させることにより、元のデータ信号を減衰させることもできる。元のデータ信号の減衰は、結果的に、信号損失およびデータ伝送のエラー率の増加をもたらす可能性がある。以下の説明は、元のデータ信号に実質的に影響することなく、望ましくない干渉信号をフィルタリングするための技術の利用に関する。
【0037】
図4は、光信号における干渉を軽減することができる第2の受信器400を示す。具体的には、第2の受信器400を利用して、受信した光信号におけるMPIをフィルタリングすることができる。デジタル受信信号を直接にフィルタリングすることによって干渉信号を減衰させる
図3の第1の受信器300とは異なり、第2の受信器400は、干渉信号を推定した後、デジタル受信信号から干渉信号の推定値を減算する。第2の受信器400は、デジタル受信信号を直接にフィルタリングすることを回避することによって、干渉信号と共に元のデータ信号の一部を減衰させることを回避する。
【0038】
図3に示す第1の受信器300と同様に、第2の受信器400は、光検出器402およびADC404を含む。光検出器402およびADC404は各々、
図3に関連して上記で説明した光検出器302およびADC304と同様である。光検出器402は、光信号を受信する。この光信号は、元の光信号と、MPIに起因し且つ元の搬送波周波数に実質的に等しい搬送波周波数を有する干渉光信号とを含む。光検出器402は、受信した光信号に対応するアナログ受信信号を生成する。ADC404は、このアナログ受信信号をデジタル受信信号にデジタル化する。
【0039】
また、第2の受信器400は、
図3に示す第1の受信器に関連して上記で説明した等化器308と類似する等化器408を含む。しかしながら、フィルタリングされたデジタル受信信号を等化する第1の受信器300の等化器308とは異なり、第2の受信器400の等化器408は、ADC404によって出力されたデジタル受信信号を等化することによって、等化されたデジタル受信信号を生成する。デジタル受信信号を等化することによって、(以下にさらに説明する)MPI軽減ブロック414で実行されるシンボル決定処理におけるエラーを低減することができる。
【0040】
第2の受信器400は、MPI軽減ブロック414をさらに含む。MPI軽減ブロック414は、初期シンボル決定モジュール416と、データ除去モジュール418と、低域フィルタ420と、MPI信号減算器422とを含む。また、第2の受信器400は、最終シンボル決定および復調器ブロック424を含む。この最終シンボル決定および復調器ブロック424は、
図3に示す第1の受信器300に関連して上記で説明したシンボル決定モジュール310と復調器312との組み合わせと同様であり得る。
【0041】
再びMPI軽減ブロック414を参照すると、初期シンボル決定モジュール416は、等化器408によって出力された等化されたデジタル受信信号y
kを処理することにより、受信信号に含まれたデータシンボルc
kを決定する。次いで、データ除去モジュール418は、デジタル受信信号y
kからデータシンボルc
kを減算することによって、中間データ信号を生成する。その後、低域フィルタは、中間データ信号をフィルタリングすることによって、干渉信号の推定値ε
kを生成する。いくつかの実装例において、低域フィルタの帯域幅は、搬送波信号を生成するために使用されたレーザの信号搬送波の位相ノイズ(または線幅)に基づくことができる。例えば、DFBレーザおよび外部変調器が利用されるいくつかの実装例において、信号搬送波の線幅は、約10MHz〜約90MHzであってもよい。このような実装例において、低域フィルタの帯域幅を約10MHz〜約90MHzに選択することもできる。次いで、デジタル受信信号y
kから干渉信号の推定値ε
kを減算することにより、干渉抑制デジタル受信信号を生成する。その後、最終シンボル決定および復調器ブロック424は、干渉抑制デジタル受信信号を処理することによって、干渉抑制デジタル受信信号に含まれたデータを抽出する。上述したように、干渉信号の推定値は、デジタル受信信号をフィルタリングするのではなく、デジタル受信信号から減算される。この方法は、干渉信号と共に元のデータ信号の一部をフィルタリングにより除去してしまうリスクを軽減する。
【0042】
図4に示す第2の受信器400は、受信した光信号からMPIを除去するように構成されているが、以下で説明する
図5および6の受信器は、受信した光信号から任意の(MPIまたは帯域内)干渉信号を除去するように構成されている。
【0043】
図5は、光信号における干渉を軽減することができる第3の受信器500を示す。具体的には、第3の受信器500を利用して、受信した光信号からMPIまたは帯域内干渉信号をフィルタリングすることができる。
図4に示す第2の受信器400と同様に、第3の受信器500は、干渉信号の推定値を決定し、デジタル受信信号から干渉信号の推定値を減算することによって、デジタル受信信号から干渉信号を直接にフィルタリングする必要性を軽減する。また、第3の受信器500は、元の光信号の搬送波周波数と干渉光信号の搬送波周波数との間のビート周波数を監視する。
【0044】
第3の受信器500は、光検出器502と、ADC504と、等化器508と、干渉軽減ブロック514と、最終シンボル決定および復調器モジュール524とを含む。干渉軽減ブロック514は、初期シンボル決定モジュール516と、データ除去モジュール518と、チューニング可能な帯域フィルタ520と、周波数オフセットモニタ526と、信号減算器522とを含む。光検出器502、ADC504、等化器508、初期シンボル決定モジュール516、データ除去モジュール最終シンボル決定および復調器モジュール524は、
図4に関連して上記で説明した光検出器402、ADC404、等化器408、初期シンボル決定モジュール416、データ除去モジュール418、最終シンボル決定および復調器ブロック424と同様である。また、周波数オフセットモニタ526は、
図3に関連して上記で説明した周波数オフセットモニタ314と同様である。
【0045】
干渉軽減ブロック514は、周波数オフセットモニタ526を利用して、ビート周波数Δωを監視および決定し、このビート周波数を用いて干渉信号の推定値ε
kを決定する。具体的には、周波数オフセットモニタ526は、デジタル受信信号y
kから、初期シンボル決定モジュール516によって決定されたデータシンボルを減算することによって、中間信号a
kを生成する。次に、周波数オフセットモニタ526は、中間信号に対してFFT分析を行うことによって、ビート周波数Δωを決定する。上記で説明したように、ビート周波数Δωは、干渉信号の中心周波数を表す。チューニング可能な帯域フィルタ520の中心周波数は、周波数オフセットモニタによって決定されたビート周波数Δωに設定される。帯域フィルタ520は、データ除去モジュール518によって生成されたデータ除去デジタル受信信号をフィルタリングする。帯域フィルタ520の中心周波数および帯域幅は推定された中心周波数および干渉信号の帯域幅に設定されるため、帯域フィルタ520の出力は、干渉信号の推定値ε
kである。その後、デジタル受信信号y
kからこの推定値を減算することによって、干渉抑制デジタル受信信号を生成する。シンボル決定および復調器モジュール524は、この干渉抑制デジタル受信信号を処理することによって、データを生成する。
【0046】
いくつかの実装例において、周波数オフセットモニタ526によって決定されるビート周波数の精度は、初期シンボル決定モジュール516によって行われたシンボル決定におけるエラーに依存し得る。いくつかの実装例において、シンボル決定におけるエラーが高い場合、周波数オフセットモニタ526によって決定されるビート周波数の精度は、許容できないほど低くなる可能性がある。これによって、干渉信号の推定精度およびデジタル受信信号から干渉信号を除去する際の干渉軽減ブロック514の有効性を低下させる。このようないくつかの実装例において、ビート周波数を決定するための反復的な手法を利用することができ、その一例を
図6に関連して以下に説明する。
【0047】
図6は、
図5に示す第3の受信器500に使用される別の例示的な干渉軽減ブロック614を示す。具体的には、干渉軽減ブロック514の代わりに、干渉軽減ブロック614を使用することができる。干渉軽減ブロック614は、2つのサブブロック、すなわち、第1のサブブロック652および第2のサブブロック654を含む。第1のサブブロック652は、
図5に示す干渉軽減ブロック514と同様であり、同様の参照番号を含む。第2のサブブロック654は、第2のシンボル決定モジュール616と、第2のデータ除去モジュール618と、第2のチューニング可能な帯域フィルタ620と、第2の信号減算器622とを含む。第2のシンボル決定モジュール616、第2のデータ除去モジュール618、第2のチューニング可能な帯域フィルタ620および第2の信号減算器622は、第1のサブブロック652に含まれたシンボル決定モジュール516、データ除去モジュール518、チューニング可能な帯域フィルタ520および信号減算器522と同様である。しかしながら、第2のサブブロック654は、例えば、第1のサブブロック652内の周波数オフセットモニタ526のような周波数オフセットモニタを含まない。その代わりに、第2のチューニング可能なフィルタ620は、周波数オフセットモニタ526からビート周波数を受信する。干渉軽減ブロック614は、第2のシンボル決定モジュール616を用いてシンボル決定を繰り返すことによって、干渉信号推定値の精度を改善する。したがって、シンボル決定モジュール516によって導入されたシンボル決定のエラーを軽減することができる。第2のシンボル決定モジュール616によって検出されたシンボルに基づいて、干渉信号の推定値を再決定し、デジタル受信信号からこの第2の推定値を減算する。いくつかの実装例において、
図6に示すように、第2のデータ除去モジュール618は、第1のサブブロック652によって出力された干渉抑制デジタル受信信号からではなく、第1のサブブロック652によって受信された同様の光信号y
kから、第2のシンボル決定モジュール616によって出力されたデータシンボルc
kを減算することができる。同様に、第2の信号減算器622は、第1のサブブロック652によって出力された干渉抑制デジタル受信信号からではなく、第1のサブブロック652によって受信された同一の光信号y
kから、第2のチューニング可能なフィルタ620によって生成された干渉信号の推定値を減算することができる。
【0048】
いくつかの実装例において、
図3に示すチューニング可能なノッチフィルタ306並びに
図5および6に示すチューニング可能な帯域フィルタ520および620は、無限インパルス応答(IIR)デジタルフィルタを用いて実装することができる。しかしながら、IIRフィルタの動作は、不安定になることがある。以下の説明は、IIRフィルタに比べて改善された安定性を提供するチューニング可能なノッチフィルタおよびチューニング可能な帯域フィルタを実装するための代替の手法に関する。
【0049】
図7は、例示的な帯域フィルタ700のブロック図を示す。具体的には、帯域フィルタ700を用いて、
図5および6に示す帯域フィルタを実装することができる。帯域フィルタ700は、第1の余弦ブロック702と、第1の正弦ブロック704と、第1の低域フィルタ706と、第2の低域フィルタ708と、第2の余弦ブロック710と、第2の正弦ブロック712と、加算器714と、変倍ブロック716とを含む。
図5および6に関連して上記で説明したように、帯域フィルタは、データ除去モジュール518および618によって提供されたデータ除去デジタル受信信号a
kをフィルタリングする。信号a
kは、第1の余弦ブロック702および第1の正弦ブロック704の両方に提供される。第1の余弦ブロック702は、信号a
kにcos(ωt
k)を乗算し、第1の正弦ブロック704は、信号a
kにsin(ωt
k)を乗算する。ωは、中心周波数(すなわち、Δω)を表す。第1の余弦ブロック702と第1の正弦ブロック704との両方は、信号a
kの高周波成分を低周波数成分にシフトする。信号a
kの高周波成分を低周波成分にシフトすることにより、帯域フィルタの代わりに、低域フィルタを用いて、信号a
kをフィルタリングすることができる。デジタル領域において、帯域フィルタに比べて低域フィルタをより効率的に実装することができるため、帯域フィルタの代わりに低域フィルタを使用することは、有利である。第1の低域フィルタ706および第2の低域フィルタ708の帯域幅は、周波数オフセットモニタによってモニタすることができる元の搬送波信号および干渉搬送波信号の線幅または帯域幅に実質的に等しくなるように選択することができる。低域フィルタ706および708は、干渉信号の必要なスペクトル成分を選択することにより、フィルタリングされた信号u
kおよびv
kを各々生成する。第2の余弦ブロック710および第2の正弦ブロック712は、フィルタリングされた信号u
kおよびv
kを各々アップコンバートまたはより高い周波数成分にシフトする。第2の余弦ブロック710および第2の正弦ブロック712は、アップコンバートされた信号を加算器714に出力する。加算器714は、アップコンバートされた信号を加算し、倍率αで変倍することにより、干渉信号の推定値ε
kを生成する。いくつかの実装例において、第1の低域フィルタ706および第2の低域フィルタ708は、ハードウェア効率的な移動平均フィルタを用いて実装することができる。いくつかの実装例において、移動平均フィルタの例示的なウィンドウサイズは、約64個のサンプルであってもよい。
【0050】
いくつかの実装例において、
図7に示す帯域フィルタ700を用いて、ノッチフィルタ、例えば、
図3に示すノッチフィルタ306を実装することができる。このような実装例において、ディジタル受信信号y
kから帯域フィルタの出力ε
kを減算することは、中心周波数ωおよび帯域フィルタ700と同様の帯域幅でディジタル受信信号y
kをフィルタリングすることと等価である。
【0051】
図8は、帯域内干渉を軽減するための例示的な送受信器800を示す。具体的には、送受信器800を利用して、
図2に示す通信システム200の第1の送受信器102および第2の送受信器104の一方または両方を実装することができる。
図2に関連して上記で説明したように、第1の受信器110は、第1の送信器108から第2の受信器112に送信された光信号の反射成分である干渉信号を受信することができる。第1の送信器108から送信された光信号の反射は、双方向光リンク140上のコネクタ146によって引き起こされる。いくつかの実装例において、第1の受信器110によって受信された元の光信号の搬送波周波数と(送信器108の搬送波周波数を有する)干渉信号の搬送波周波数との間の差が大きくなる場合、元の光信号に与える干渉信号の影響が小さくなる。いくつかの実装例において、搬送波周波数の差が受信器110によって受信された元の光信号の帯域幅よりも大きい場合、干渉信号は、もはや帯域内干渉信号ではなくなり、無視することができる。
図8に示す送受信器800は、得られた干渉信号の搬送波周波数が受信器によって受信された元の光信号の帯域外になるように、送信器の搬送波周波数を変更することができる。
【0052】
送受信器800は、送信器802と、受信器804とを含む。送信器802は、送信器802に光搬送波信号を生成するためのレーザ806と、レーザ806によって生成された光搬送波信号をデータで変調するための変調器808と、レーザ806の波長(または搬送波周波数)を制御するための波長制御装置810とを含む。受信器804は、
図3に関連して上記で説明した受信器300と同様であり、受信器300の構成要素と同様の構成要素を含む。具体的には、受信器804は、入力光信号を監視し、ビート周波数Δωを決定するための周波数オフセットモニタ314を含む。いくつかの実装例において、周波数オフセットモニタ314によって決定されたビート周波数Δωは、送信器802の波長制御装置810にも伝達される。波長制御装置810はまた、受信器804によって受信した光信号の帯域幅をメモリに記憶するまたは受信器804から光信号の帯域幅を受信する。その後、波長制御装置810は、ビート周波数Δωが受信器によって受信された光信号の帯域幅よりも大きくなるように、レーザ806の搬送波周波数を変更することができる。その結果、得られた干渉信号は、帯域外になり、受信器804で受信した元の光信号に最小の影響しか与えない。
【0053】
いくつかの実装例において、波長制御装置は、マイクロ制御装置、マイクロ処理器、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の1つまたは複数を用いて実装することができる。いくつかの実装例において、波長制御装置は、熱電冷却器(TEC)を制御して、レーザ806の動作温度を調整することによって、レーザの搬送波周波数を変更することができる。いくつかの実装例において、例えば、レーザ806の波長は、約0.1nm/℃の速度で変化することができる。このようないくつかの実装例において、約2℃の温度変化は、レーザ806の周波数に約34GHzの変化をもたらすことができる。
【0054】
上記で説明したように、周波数オフセットモニタ、例えば、
図3に示す周波数オフセットモニタ314は、通常のデータ送信中に、光信号からビート周波数Δωを決定することができる。いくつかの他の実装例において、パイロットトレーニングパルスを利用して、ビート周波数Δωを決定することもできる。例えば、
図1を参照して、第1の送信器108は、パイロットトレーニングパルスを送信することができ、第2の受信器114は、干渉光信号と共にパイロットトレーニングパルスを受信することができる。第2の受信器114に設けられた周波数オフセットモニタ、例えば、
図3に示す周波数オフセットモニタ314は、受信したパイロットトレーニングパルスを用いて、ビート周波数Δωを決定することができる。
図5、6および8に示す周波数オフセットモニタも、受信したパイロットトレーニングパルスを用いて、ビート周波数Δωを決定することができる。このようないくつかの実装例において、周波数オフセットモニタは、パイロットトレーニングパルスが停止され、データ送信が開始された後に、周波数オフセットを監視し続けることができる。
【0055】
本開示に記載された実装例に対する様々な変更は、当業者にとって容易に分かるであろう。本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本開示に記載の一般的な原理を他の実装例に適用することができる。したがって、特許請求の範囲は、本開示に記載の実施例に限定されることを意図しておらず、本開示に記載の原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲で解釈されるべきである。