特許第6503166号(P6503166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6503166酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503166
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20190408BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20190408BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/22
   A61K8/19
   A61Q5/10
   A61K8/55
   A61K8/02
   A61K8/06
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-168194(P2014-168194)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44136(P2016-44136A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸二
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235578(JP,A)
【文献】 特開2013−060391(JP,A)
【文献】 特開2010−235581(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0185874(US,A1)
【文献】 特開2012−072128(JP,A)
【文献】 特表2007−517823(JP,A)
【文献】 特開2014−47184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
DWPI(Derwent Innovation)
Japio−GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と混合して使用され、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物であって、(A)過酸化水素、(B)POEラウリルエーテルおよびPOEアルキル(12〜14)エーテルから選ばれる1種または2種以上、(C)水酸化カリウム、(D)1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸を含有し、前記(B)成分のポリオキシエチレン基の平均付加モル数が2〜15の範囲であり、前記(B)成分の含有量が1.5〜2.5重量%であり、前記(C)成分の含有量が0.02〜1重量%であり、前記(D)成分の含有量が0.05〜1重量%であるエアゾール原液と、(E)噴射剤を含有し、エアゾール原液がpH4.5以下であり、前記エアゾール原液と(E)噴射剤を、エアゾール原液:噴射剤=90:10〜95:5(重量比)の比率で含有することを特徴とする酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤で用いられる酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染毛剤としては、染毛剤、脱染剤、脱色剤、脱染・脱色剤などが知られており、2種類以上の剤を用時混合して調合される。染毛剤は一般的に第2剤として、毛髪の色を変化させるために酸化染料を毛髪中で化学反応(酸化重合)させ、色素を形成し毛髪内部に固定させたり、毛髪自身が持つメラニン色素を酸化反応によって分解して、毛髪を明るく見せる目的として、酸化剤含有組成物を用いてきた。
【0003】
酸化剤含有組成物には酸化剤として過酸化水素が用いられる。過酸化水素は、不安定で酸素を放出して分解しやすく、この分解を抑えるため安定化剤として、フェナセチン、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、スズ酸ナトリウム、アセトアニリドなどが用いられる。(例えば特許文献1)
【0004】
また、酸化剤含有エアゾール組成物は、当該組成物中に含まれている過酸化水素が、温度、pH、内容物の成分、容器内の金属粉、微生物等によって容易に分解するため、容器が膨張する危険性を有している。特にエアゾール製剤の場合には一般のプラスチック容器等とは異なり完全な密封状態となるため、過酸化水素の分解によって発生する酸素が容器内の内圧上昇をもたらし、内容物の吐出量が設定値より多くなり、製剤としての染毛性・脱色性に影響が出る可能性がある。(特許文献2)
【0005】
また、エアゾール組成物で現在の市場で最も広く用いられている噴射剤は、LPGやDME等である。しかし、LPGやDME等を噴射剤として用いた場合には、使用環境が低温の時には、好適な泡沫状態の吐出物を得ることができず、また、使用環境が高温の時には、吐出された泡は嵩比重が極度に小さいものになる等、泡沫状態が使用環境によって大きく変化してしまうという欠点がある。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−258045
【特許文献2】特開平8−301740
【特許文献3】特開2011−37772
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2の記載内容では、過酸化水素の安定化を目的としているため、エアゾール製剤化した際には低温では好適な泡沫状態の吐出物を得ることができない。また、乳化組成物をエアゾール製剤化する際に、油剤が活性剤の発泡性を阻害し、好適な泡沫状態を得ることが困難である。
【0008】
さらに、過酸化水素の安定化剤としてフェナセチンが知られているが、フェナセチンは、腎障害や腎盂、膀胱腫瘍の発生リスクがあるため、特許文献1および2に関しては、特許技術を行使し、エアゾール製剤化することは困難である。
【0009】
特許文献3に関しては、低温では好適な泡沫状態の吐出物を得ることが出来るが、過酸化水素を含有した際の安定性は考慮されていない。
【0010】
また、従来の技術では、過酸化水素の分解を抑制することが十分でなく、特に夏場の高温になる車内や、海外などへの運搬に用いられるコンテナ中で高温条件下に長時間さらされた場合、過酸化水素の安定性が低下する問題があった。
【0011】
また、低温時の好適な泡沫状態の吐出物を得るために発泡性を良くしてしまうと、常温での吐出物の嵩比重が極度に小さいものになるため、染毛性や明度を損なう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、(A)過酸化水素、(B)POEラウリルエーテルおよびPOEアルキル(12〜14)エーテルから選ばれる1種または2種以上、(C)アルカリ金属の水酸化物、(D)1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有するエアゾール原液と、(E)噴射剤を含有し、エアゾール原液がpH4.5以下であることを特徴とする酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を提供することによって本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、保管条件や運搬条件を考慮する必要がなく、高温条件下に長時間さらされても、過酸化水素の安定性に優れた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物であり、なおかつ低温時の使用にも発泡性を損なうことなく使用できる酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と用時混合して使用される酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物であって、(A)過酸化水素、(B)POEラウリルエーテルおよびPOEアルキル(12〜14)エーテルから選ばれる1種または2種以上、(C)アルカリ金属の水酸化物、(D)1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有するエアゾール原液と、(E)噴射剤を含有し、エアゾール原液がpH4.5以下であることを特徴とする酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物である。
【0015】
本発明による酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物は(A)過酸化水素を含有する。(A)過酸化水素はアルカリ剤を含有する第1剤中に含有する酸化染料を毛髪中で化学反応(酸化重合)させ、色素を形成し毛髪内部に固定させ毛髪の染毛を行ったり、毛髪自身が持つメラニン色素を酸化反応によって分解して、毛髪を明るく見せることができる。
【0016】
本発明に用いられる前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、1〜6重量%が好ましい。前記(A)成分が1重量%未満の場合、酸化染料を十分に酸化重合することができないか、メラニンを十分に分解することができない恐れがある。また、前記(A)成分の含有量が6重量%を超える場合、毛髪に負担がかかり毛髪を損傷する恐れがある。なお、本発明において他の成分についての含有量を示す値は、特段の断りがない限り重量%とする。
【0017】
本発明に用いられる前記(A)成分の残存率が経時的に低下していくと、酸化染料を十分に酸化重合することができないか、メラニンを十分に分解することができず、適正な染毛性または明度を得ることが出来ない恐れがある。
【0018】
本発明に用いられる前記(B)成分は、エアゾール原液の発泡性を向上させる観点から、(B)POEラウリルエーテルおよびPOEアルキル(12〜14)エーテルから選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。また、前記(B)成分は他の非イオン性界面活性剤とは違い、低温での発泡性に特筆すべき効果がある。
【0019】
本発明に用いられる前記(B)成分は、POEラウリルエーテルまたはPOEアルキル(12〜14)エーテルであれば、特に限定されないが、ポリオキシエチレン基の平均付加モル数が2〜15であることが好ましい。より好ましくは2〜9の範囲である。ポリオキシエチレン基の平均付加モル数が15より大きいと、5℃条件下での発泡性が悪くなる恐れがある。
【0020】
本発明に用いられる前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、1〜3%が好ましい。より好ましくは1.5〜2.5%の範囲である。前記(B)成分が1%未満の場合、十分な発泡性が得られず、液ダレする恐れがある。3%を超える場合、泡が使用時に頭髪内部に浸透しにくくなり、適正な染毛性または明度を得ることが出来ない恐れがある。
【0021】
本発明に用いられる前記(C)成分は、pH調整剤として用いられ、前記(A)成分の安定性を向上する特筆すべき効果がある。
【0022】
本発明に用いられる前記(C)成分は、特に限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムを用いることができ、前記(C)成分は1種または2種以上を含有してもよい。その中でも前記(C)成分は、過酸化水素の安定性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。より好ましくは、水酸化カリウムである。
【0023】
本発明に用いられる前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、0.004〜1%が好ましい。より好ましくは0.02〜0.5%の範囲である。前記(C)成分が0.004%未満の場合、pH調整作用が十分に得られず、前記(A)成分を安定化することができない恐れがある。1%を超える場合、これ以上のpH調整作用を得ることはできず、製剤の安定性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0024】
本発明に用いられる前記(D)成分は、前記(A)成分の安定化剤として優れた金属封鎖作用、pH調整作用および前記(A)成分の安定性向上の効果がある。
【0025】
本発明に用いられる前記(D)成分の含有量は、特に限定されないが、0.01〜2%が好ましい。より好ましくは0.05〜1%の範囲である。前記(D)成分が0.01%未満の場合、pH調整作用が十分に得られず、前記(A)成分を安定化することができない恐れがある。2%を超える場合、これ以上の金属封鎖作用やpH調整作用を得ることはできず、かえって製剤の安定性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0026】
本発明に用いられる前記(E)成分は、エアゾール原液を液ダレすることなく、安定した泡沫を得ることができる。
【0027】
本発明に用いられる前記(E)成分は、特に限定されないが、LPG、ジメチルエーテル等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス等の圧縮ガスを用いることができ、前記(E)成分は1種または2種以上を含有してもよい。その中でも前記(E)成分は、製剤の安定した吐出量を維持できる観点から、液化ガスが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる前記(E)成分は、初期内圧が20℃で0.2〜0.5MPaの範囲がよい。液化ガスは組成を変えることにより任意の初期内圧に調整できる。
【0029】
前記(A)〜(D)成分を含有するエアゾール原液と前記(E)成分との重量比は、エアゾール原液:噴射剤=88:12〜97:3が好ましい。より好ましくは、エアゾール原液:噴射剤=90:10〜95:5の範囲である。前記(E)成分の重量比がエアゾール原液:噴射剤=97:3未満の場合、5℃条件下での発泡性を損なう恐れがある。また、前記(E)成分の重量比がエアゾール原液:噴射剤=88:12を超える場合、吐出物の嵩比重が小さいものになり、本来使用する目的の効果が得られない、すなわち適正な染毛性または明度を得ることが出来ない恐れがある。
【0030】
本発明による酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物はpH4.5以下が好ましい。
pH4.5を超える場合、前記(A)成分を安定化することができず、容器内の内圧上昇をもたらし、内容物の吐出量が設定値より多くなり、適正な染毛性または明度を得ることが出来ない恐れがある。
【0031】
本発明の酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物は、その他の化粧料等に通常用いられる原料を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。油剤、溶剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料、ビタミン類、植物抽出液等を用いることができ、これらは1種または2種以上を含有してもよい。
【0032】
以下に、実施例および比較例をあげて、本発明をより詳細に説明する。本発明はこれにより制限されるものではない。
【実施例】
【0033】
本明細書に示す評価試験において、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物に含まれる成分およびその含有量を種々変更しながら実施した各種の実験結果を以下に示す。
【0034】
本明細書に示す評価試験において、「(A)過酸化水素の安定性」、「毛髪の染毛性」、「毛髪の明度」および「5℃条件下での発泡性」について評価した。
【0035】
本明細書に示す評価試験において、「(A)過酸化水素の安定性」は得られた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を40℃条件下で3ヵ月間保存した後、(A)過酸化水素の残存率を測定した。(A)過酸化水素の定量方法は、酸化還元滴定法を用いた。
【0036】
本明細書に示す評価試験において、「毛髪の染毛性」および「毛髪の明度」は得られた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物をポリエチレン製内袋付き金属製の密閉容器に充填し、40℃条件下で3ヵ月間保存した酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物と染毛試験当日に調製した酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物とを用いて同時に染毛し比較評価した。
【0037】
「毛髪の染毛性」、「毛髪の明度」および評価で用いた「アルカリ剤を含有する脱色剤」および「アルカリ剤と酸化染料を含有する染毛剤」の成分および含有量は後述する。「アルカリ剤を含有する脱色剤」および「アルカリ剤と酸化染料を含有する染毛剤」と同量比で混合し、得られた染毛剤組成物を25℃条件下で、毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775N」)の毛髪全体に120gを塗布し20分間放置後、洗い流す染毛操作を行ない、乾かした毛髪を目視で確認して評価した。
【0038】
本明細書に示す評価試験において、「5℃条件下での発泡性」は得られた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を5℃条件下で24時間保存した後、取り出してすぐに手の上に吐出し、製剤の発泡性を目視にて評価した。
【0039】
「過酸化水素の残存率」の評価基準
40℃条件下で3ヵ月間保存での過酸化水素の残存率
◎:99%以上
○:96%以上99%未満
△:94%以上96%未満
×:94%未満
【0040】
「毛髪の染毛性」または「毛髪の明度」の評価基準
◎:染毛性または明度に全く変化なし。
○:染毛性または明度に変化があるが問題ない程度。
△:染毛性または明度に変化がある。
×:染毛性または明度に明らかに異なる変化がある。
【0041】
「5℃条件下での発泡性」の評価基準
◎:泡を形成する。
○:泡を形成し、しばらく泡を保つ。
△:泡を形成するが、すぐに崩れる。
×:泡を形成しない。
【0042】
調製方法
(B)成分、その他の油性成分、活性剤等および精製水を80℃以上にて混合乳化する。乳化後、冷却し、35℃の時点で、(A)成分、(C)成分および(D)成分を混合し、エアゾール原液を得る。前記エアゾール原液を、(E)成分と混合し、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を得る。
【0043】
表1はアルカリ剤と酸化染料を含有する染毛剤第1剤の成分と含有量を示す。この染毛剤第1剤と得られた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を「染毛剤第1剤:酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物(第2剤)=1:1」の混合比で混合し、これを用いて「毛髪の染毛性」を評価した。
【0044】
【表1】
【0045】
表2はアルカリ剤を含有する脱色剤第1剤の成分と含有量を示す。この脱色剤第1剤と得られた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を「脱色剤第1剤:酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物(第2剤)=1:1」の混合比で混合し、これを用いて「毛髪の明度」を評価した。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
比較例1は非イオン界面活性剤を含有せず評価した。また、比較例2〜5は、界面活性剤の種類を変えて評価した。
【0050】
比較例1、2は毛髪の染毛性または明度に変化が見られた。さらに、5℃条件下での良好な発泡性は得られなかった。また、比較例3、5は、過酸化水素の残存率が良好ではなく、毛髪の染毛性または明度に変化が見られた。さらに、5℃条件下での良好な発泡性は得られなかった。比較例4は、過酸化水素の残存率が良好ではなく、毛髪の染毛性または明度に変化が見られた。
【0051】
実施例1〜15は全て良好であった。(B)成分が3.0重量%より多くなると、毛髪の染毛性または明度に変化が見られる恐れがある。1.0重量より少なくなると5℃条件下での発泡性が悪くなる恐れがある。
【0052】
【表5】
【0053】
比較例6は、(C)成分を含有せずアルカリ土類金属の水酸化物である水酸化カルシウムを含有した酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物について評価した。この結果、(A)成分の残存率が良好ではなかった。
【0054】
また、比較例7は(D)成分を含有せず、従来技術であるクエン酸をpH調整剤として用いて評価し、比較例8は(C)成分を含有せず、従来技術からあるクエン酸ナトリウムをpH調整剤として用いて評価した。この結果、(A)成分の残存率は良好ではなかった。
【0055】
比較例9は、従来技術である(A)成分の安定化剤であるスズ酸ナトリウムを含有し、さらに、比較例10ではクエン酸およびクエン酸ナトリウムを用いて実施例1と同じpHに調整して評価した。この結果、(A)成分の残存率は良好ではなかった。
【0056】
実施例16〜20の結果から、(C)成分の種類を変えたとしても良好であった。また、実施例16および17の結果から、(C)成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが良好であり、特に水酸化カリウムは良好であった。
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
実施例21〜31は全て良好であった。(C)成分は、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物中に含有されていればよいが、好ましくは0.004〜1重量%、より好ましくは0.02〜0.5重量%が良好であった。さらに(D)成分は酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物中に含有されていれば良いが、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%が良好であった。また、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物のpHは4.5以下が良く、特に3.5以下が良好であった。
【0060】
比較例11は、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物のpHを7.0として評価した。その結果、過酸化水素の残存率が良好ではなく、毛髪の染毛性または明度に変化が見られた。
【0061】
【表8】
【0062】
実施例32〜36は全て良好であった。特にエアゾール原液:噴射剤=90:10〜95:5が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、染毛剤で用いられる酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物に関するものである。さらに詳しくは低温時にも発泡性が失わず、なおかつ高温条件下で長時間保存されても安定な酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を提供できる。