(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素系エラストマー(A)と前記フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する該フッ素系エラストマー(A)の含有割合が1重量部〜70重量部である、請求項1に記載の防汚材。
前記フッ素系エラストマー(A)と前記フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する前記オイル成分(C)の含有割合が0.1重量部〜150重量部である、請求項1または2に記載の防汚材。
【背景技術】
【0002】
船舶などの水中構造物は、海水に接触する部分において、フジツボ、カキ、ムラサキイガイ、ヒドラ、セルプラ、ホヤ、コケムシ、アオサ、アオノリ、付着珪藻などの水性生物が付着して繁殖し、流体抵抗の増加や熱伝導性の低下といった設備機械性能の低下や、付着した水性生物の海外への拡散など、好ましくない状態を引き起こしている。また、付着した水性生物を除去する作業には大きな労力と膨大な時間が必要であり、経済的な損失を被っている。
【0003】
上記のような被害を防止するため、従来、防汚塗料が水中構造物に塗装されている。防汚塗料には、古くは有機スズ化合物や現在では亜酸化銅などの毒性防汚剤が含まれている。防汚塗料の毒性によって水性生物の付着成長はほぼ抑制できるが、有機スズ化合物や亜酸化銅などの毒性防汚剤は人体や環境に少なからず悪影響を与えるため、長期的にみれば深刻な問題となる。また、防汚塗料を塗装後に乾燥させる際には、30重量%程度の有機溶剤(VOC)が揮発し、作業環境や周辺の環境に悪影響を与えている。スプレー式塗装では、VOCの大気中への排出の他に、塗料の10重量%〜20重量%は風により周囲に飛散していると言われている。一方で、長年使用した防汚塗料を塗り替える際には、古くなった防汚塗料をサンドブラストや金属研磨機で剥離するが、その際に、有機スズ化合物や亜酸化銅などの毒性防汚剤を含んだ大量の塗膜片が周囲に飛散して作業者や環境に悪影響を与えると共に、剥離した防汚塗料は産業廃棄物として処理されるため、大きな問題となっている。
【0004】
以上の様に、これまでの防汚塗料では、水性生物に対する付着阻害効果はあるものの、人体や環境に対して大きな悪影響があり、多くの問題が解決されないまま現在に至っているのが現状である。
【0005】
そこで、銅薄と粘着剤とをプライマーを介して貼り合わせた粘着テープが提案されている(特許文献1、2参照)。しかし、このような粘着テープにおいては、水性生物の付着抑制を銅薄の銅成分によって実現させているため、環境への悪影響の可能性があるという問題がある。また、このような粘着テープは、FRP板に対するピール接着力が2.6kg/25mmまたは7.5kg/25mm(プライマー前処理後)と非常に大きく設計されており、使用後の粘着テープを貼り替える場合に粘着テープが人力で容易に剥がれるとは考えにくく、結局、削り取るなどの行為が必要なため、大きな労力が必要となる。また、銅は比重が8.94g/cm
3と重い物質であり、船舶などの移動構造物に使用することは、燃費を悪化させ経済的に好ましくない。
【0006】
また、シリコーンゴムと粘着剤の2層から成る防汚テープが提案されている(特許文献3参照)。しかし、防汚効果を担うシリコーンゴム層にはオイルなどの防汚剤が含まれておらず、シリコーンゴムそのものである。防汚剤が含まれていない場合は、短期的には水性生物の付着はその撥水性によって抑制できるものの、長期間にはその防汚効果が持続できない。また、このような防汚テープは、シリコーンゴムと粘着剤の2層で構成されているため、強度的に非常に不安がある。一般的に、シリコーンゴムは破断点強度が極めて低いため、このような防汚テープを使用後に剥がす場合、テープ状態として剥がすことが困難であり現実的ではない。
【0007】
また、基材上に下塗り剤を介してシリコーンエラストマーを設け、基材の逆側には粘着層を設けたシート状テープが提案されている(特許文献4参照)。しかし、特許文献4には、水中で使用できる粘着剤組成に関する記述や接着力に関する記述などが全く無いため、水生生物付着防止粘着テープへの適用を考える上では現実性に乏しい。また、防汚テープを水中構造物に施工する際には、曲面や鋭角面に施工できるように柔軟性や伸び性の設計が必要であり、また、使用後に防汚テープを剥離する際には基材が途中で破壊しないような強度設計が必要であるが、特許文献4にはそのような記述が全く無いため、水生生物付着防止粘着テープへの適用を考える上では現実性に乏しい。
【0008】
さらに、特許文献4で提案されているような防汚テープにおいては、基材層上に防汚層を設けられているが、基材層と防汚層は要求される機能の相違に起因して物性が異なるため、互いの密着性が十分に確保できず、互いに剥がれやすいという問題がある。特に、このような防汚テープを水中構造物に施工する際には、基材層と防汚層との互いの剥がれやすさは顕著となる。
【0009】
最近、水中構造物への水性生物の付着を効果的に防止する手段として、防汚層と基材層と粘着剤層をこの順に含み、該防汚層がシリコーン樹脂を含む、水生生物付着防止粘着テープが開発されている(特許文献5)。
【0010】
この特許文献5の実施例1〜13で評価している水生生物付着防止粘着テープによれば、長期間にわたって防汚効果を持続でき、特に、各種問題を引き起こす代表的な水性生物であるフジツボの付着を効果的に防止できている。
【0011】
ここで、水中構造物に付着しやすく、各種問題を引き起こす代表的な水性生物としては、フジツボなどの動物系水性生物以外に、藻類などの植物系水性生物も良く知られている。しかし、特許文献5の実施例1〜13で評価している水生生物付着防止粘着テープにおいては、藻類などの植物系水性生物の付着については十分な効果を発現できていない。特に、水面付近の藻の付着においてその傾向がみられる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、フッ素系エラストマー(A)と、該フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)と、オイル成分(C)とを含む。本発明の樹脂組成物が、フッ素系エラストマー(A)と、該フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)と、オイル成分(C)とを含むことにより、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果を発現できる。
【0029】
水性生物としては、例えば、フジツボ、カキ、ムラサキイガイ、ヒドラ、セルプラ、ホヤ、コケムシ、アオサ、アオノリ、付着珪藻などが挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、フッ素系エラストマー(A)を含む。本発明の樹脂組成物がフッ素系エラストマー(A)を含むことにより、本発明の樹脂組成物に含まれるオイル成分(C)との相溶性が低いために、該オイル成分(C)が樹脂組成物の表面に移行しやすくなり、結果として、防汚効果が向上すると考えられる。また、海洋中に存在する生物種の中には、海洋中に浸漬している構造物の表面の疎水性レベルが十分に高くないと付着してしまう生物種が存在すると考えられている。このため、海洋中に浸漬している構造物の表面の疎水性レベルを向上させる技術を検討したところ、フッ素系エラストマー(A)と、該フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)と、オイル成分(C)とを含む樹脂組成物が、フジツボなどの動物系水性生物に限らず、藻類などの植物系水性生物も含めて、水生生物に起因する汚れに対する優れた付着防止効果の発現に大きく作用し得ることが判った。
【0031】
フッ素系エラストマー(A)としては、フッ素原子を含む単位モノマーの重合体または共重合体であって、ガラス転移点が室温以下であり、室温でゴム状弾性を有するものである。
【0032】
フッ素系エラストマー(A)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフッ素系エラストマーを採用し得る。
【0033】
フッ素系エラストマー(A)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0034】
フッ素系エラストマー(A)は、好ましくは、単独で形成した膜の表面自由エネルギーが11mN/m以下であるフッ素系エラストマーである。フッ素系エラストマー(A)単独で形成した膜の表面自由エネルギーは、より好ましくは10.5mN/m以下であり、さらに好ましくは10mN/m以下であり、特に好ましくは9.5mN/m以下である。フッ素系エラストマー(A)単独で形成した膜の表面自由エネルギーの下限は、本発明の効果を損なわない程度に低いことが好ましく、例えば、6mN/m以上である。フッ素系エラストマー(A)単独で形成した膜の表面自由エネルギーが上記範囲内にあれば、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。
【0035】
フッ素系エラストマー(A)は、好ましくは、その主鎖の炭素原子にフッ素原子が直接結合した構造を有する。「主鎖の炭素原子にフッ素原子が直接結合した構造」とは、例えば、「−CF
2−」、「−CF(CF
3)−」、「−CF(R)−」(Rはアルキル基)などが挙げられる。フッ素系エラストマー(A)が上記のような構造を有すれば、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。
【0036】
フッ素系エラストマー(A)としては、例えば、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンゴム、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンゴム、一般式(1)で表される構造を有するフッ素系エラストマーなどが挙げられる。なお、一般式(1)において、2つのSi原子それぞれから出ている3本の結合(a)に結合される構造は特に限定されない。
【0038】
一般式(1)で表される構造を有するフッ素系エラストマーとしては、例えば、SHIN−ETSU SIFELシリーズ(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0039】
SHIN−ETSU SIFELシリーズ(信越化学工業株式会社製)としては、SIFEL3000シリーズ、SIFEL2000シリーズ、SIFEL8000シリーズなどが挙げられ、本発明の効果発現により寄与し得る点で、好ましくは、SIFEL3000シリーズであり、より好ましくは、SIFEL3000シリーズの一液型である。さらに、空気中、型に流し込むことなく開放下で圧力等をかけずに硬化することが好ましい。
【0040】
フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な樹脂成分を採用し得る。
【0041】
フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0042】
フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンアクリル樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー類、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0043】
フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)は、好ましくは、少なくともシリコーン樹脂を含む。フッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)が少なくともシリコーン樹脂を含むことにより、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。
【0044】
シリコーン樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なシリコーン樹脂を採用し得る。シリコーン樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。このようなシリコーン樹脂としては、常温で液状のシリコーン樹脂であっても良いし、常温で固体状のシリコーン樹脂であっても良い。また、このようなシリコーン樹脂としては、縮合型のシリコーン樹脂であっても良いし、付加型のシリコーン樹脂であっても良い。また、このようなシリコーン樹脂としては、単独で乾燥させる1液型のシリコーン樹脂(例えば、1液型の室温硬化性(RTV)樹脂)であっても良いし、2液型のシリコーン樹脂(例えば、2液型の室温硬化性(RTV)樹脂)であっても良い。
【0045】
シリコーン樹脂としては、具体的には、例えば、信越化学工業(株)製のLIMS(液状シリコーンゴム射出成形システム)(例えば、KEG−2000−40A/B、KEG−2000−50A/B、KEG−2000−60A/B、KEG−2000−70A/B、KEG−2001−40A/B、KEG−2001−50A/B、KE−1950−10A/B、KE−1950−20A/B、KE−1950−30A/B、KE−1950−35A/B、KE−1950−40A/B、KE−1950−50A/B、KE−1950−60A/B、KE−1950−70A/B、KE−1935A/B、KE−1987A/B、KE−1988A/B、KE−2019−40A/B、KE−2019−50A/B、KE−2019−60A/B、KE−2017−30A/B、KE−2017−40A/B、KE−2017−50A/B、KE−2090−40A/B、KE−2090−50A/B、KE−2090−60A/B、KE−2090−70A/B、KE−2096−40A/B、KE−2096−50A/B、KE−2096−60A/Bなど)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のシリコーンゴム(例えば、LSR2010A/B、LSR2020A/B、LSR2030A/B、LSR2040A/B、LSR2050A/B、LSR2060A/B、LSR2070A/Bなど)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製の付加型シリコーンエラストマー(例えば、LR7665A/B、LR3033A/B)などが挙げられる。これらの中でも、水生生物による汚染に対してより優れた付着防止効果を発現できるシリコーン系樹脂組成物を提供させる点で、付加型シリコーン樹脂が好ましく、より好ましくは、信越化学工業(株)製のKE−1950シリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のLSR2050A/B、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のLR7665A/BやLR3033A/Bなどの2液付加型シリコーン樹脂である。
【0046】
オイル成分(C)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオイル成分を採用し得る。
【0047】
オイル成分(C)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0048】
オイル成分(C)としては、例えば、シリコーンオイル、流動パラフィン、ワックス、ペトロラタム、鉱物油、植物油、動物脂類、脂肪酸などが挙げられる。
【0049】
オイル成分(C)は、好ましくは、少なくともシリコーンオイルを含む。オイル成分(C)が少なくともシリコーンオイルを含むことにより、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。
【0050】
シリコーンオイルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なシリコーンオイルを採用し得る。シリコーンオイルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。シリコーンオイルは、シリコーン樹脂との反応性や自己縮合性を有さないものが好ましい。このようなシリコーンオイルとしては、長期間にわたって防汚効果を持続できるものが好ましい。このようなシリコーンオイルとしては、例えば、末端水酸基含有ジメチルシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0051】
シリコーンオイルとしては、好ましくは、例えば、一般式(2)で表されるシリコーンオイルが挙げられる。
【0053】
一般式(2)中、R
1は、同一または異なって、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フルオロアルキル基、ポリエーテル基、または水酸基を表し、R
2は、同一または異なって、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ポリエーテル基、フルオロアルキル基を表し、nは0〜150の整数を表す。
【0054】
一般式(2)中のR
1としては、好ましくは、メチル基、フェニル基、水酸基、ポリエーテル基である。一般式(2)中のR
2としては、好ましくは、メチル基、フェニル基、4−トリフルオロブチル基、ポリエーテル基である。
【0055】
一般式(2)で表されるシリコーンオイルは、数平均分子量が、好ましくは180〜20000、より好ましくは1000〜10000である。
【0056】
一般式(2)で表されるシリコーンオイルは、粘度が、好ましくは10センチストークス〜10000センチストークス、より好ましくは100センチストークス〜5000センチストークスである。
【0057】
一般式(2)で表されるシリコーンオイルとしては、具体的には、例えば、両末端または片末端のR
1が水酸基である末端水酸基含有ジメチルシリコーンオイル、R
1およびR
2の全てがメチル基であるジメチルシリコーンオイル、これらのジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部がフェニル基に置換されたフェニルメチルシリコーンオイル、これらのメチル基の一部がポリエーテル基に置換されたポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0058】
シリコーンオイルとしては、具体的には、例えば、信越化学工業(株)製のシリコーンオイル(例えば、KF96L、KF96、KF69、KF99、KF45、KF50、KF53、KF54、KF410、KF412、KF413、KF414、KF415、KF6011、KF6012、KF6013、KF6015、KF6016、KF6017、KF351A、KF352A、KF353、KF354L、KF355A、KF615A、KF945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−644、KF−6020、KF−6204、X22−4515、FL、KF910など)、東レダウコーニング株式会社製のシリコーンオイル(例えば、BY16−846、SF8416、SH200、SH203、SH230、SF8419、FS1265、SH510、SH550、SH710、FZ−2110、FZ−2203など)などが挙げられる。
【0059】
本発明の樹脂組成物において、フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する該フッ素系エラストマー(A)の含有割合は、好ましくは1重量部〜70重量部であり、より好ましくは3重量部〜60重量部であり、さらに好ましくは5重量部〜50重量部である。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する該フッ素系エラストマー(A)の含有割合が上記範囲内に収まることにより、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する該フッ素系エラストマー(A)の含有割合が1重量部未満の場合、樹脂表面に存在するフッ素エラストマーの割合もごくわずかであるとともに、オイル成分との相溶性の低さでオイルブリード性を向上させる効果が十分でないおそれがある。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する該フッ素系エラストマー(A)の含有割合が70重量部を超えると、オイルとエラストマーが分離してしまい防汚膜が十分に硬化しないもしくは十分な強度を得られないおそれがある。
【0060】
本発明の樹脂組成物において、フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対するオイル成分(C)の含有割合は、好ましくは0.1重量部〜150重量部であり、より好ましくは1重量部〜140重量部であり、さらに好ましくは5重量部〜130重量部であり、特に好ましくは10重量部〜125重量部である。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対するオイル成分(C)の含有割合が上記範囲内に収まることにより、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対するオイル成分(C)の含有割合が0.1重量部未満の場合、表面に流出するオイル量が十分ではなく、十分な防汚性が発揮されないおそれがある。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対するオイル成分(C)の含有割合が150重量部を超えると、オイル含有量として膜の強度が著しく低下するおそれがある。
【0061】
オイル成分(C)として、シリコーンオイルと流動パラフィンとを併用することも、本発明の好ましい実施態様の一つである。オイル成分(C)として、シリコーンオイルと流動パラフィンとを併用することによって、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。この場合、フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する流動パラフィンの含有割合は、好ましくは0.01重量部〜100重量部であり、より好ましくは0.03重量部〜50重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部〜30重量部であり、特に好ましくは0.08重量部〜20重量部である。フッ素系エラストマー(A)とフッ素系エラストマー以外の樹脂成分(B)との合計量100重量部に対する流動パラフィンの含有割合が上記範囲内に収まることにより、本発明の樹脂組成物は、水生生物に起因する汚れにおいて優れた付着防止効果をより発現できる。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、ワックス、ペトロラタム、動物脂類、脂肪酸、珪藻付着防止剤、農薬、医薬品(メデトミジンなど)、酵素活性阻害剤(アルキルフェノール、アルキルレゾルシノールなど)、生物忌避剤、触媒、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ポリエチレンイミン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、リン酸エステル、滑剤、充填剤、顔料、シリコーンパウダー、シリカ粒子などが挙げられる。これらは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0063】
≪防汚材≫
本発明の防汚材は、本発明の樹脂組成物から形成される。本発明の防汚材は、本発明の樹脂組成物から任意の適切な方法によって形成される。本発明の防汚材は、好ましくは、本発明の樹脂組成物を加熱乾燥することによって製造することができる。本発明の防汚材は、例えば、任意の適切な基材上に、本発明の樹脂組成物を塗布し、任意の適切な温度によって加熱乾燥することにより製造することができる。加熱温度は、好ましくは30℃〜300℃であり、より好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは80℃〜200℃である。
【0064】
≪防汚層≫
本発明の防汚層は、本発明の防汚材から構成される。
【0065】
本発明の防汚層の厚みとしては、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、例えば、好ましくは1μm〜300μmであり、より好ましくは5μm〜250μmであり、さらに好ましくは10μm〜200μm、特に好ましくは15μm〜150μm、最も好ましくは20μm〜120μmである。
【0066】
≪積層フィルム≫
本発明の積層フィルムは、本発明の防汚層と基材層と粘着剤層を含む。本発明の積層フィルムは、好ましくは、本発明の防汚層と基材層と粘着剤層をこの順に含む。
【0067】
本発明の積層フィルムは、本発明の防汚層と基材層と粘着剤層を含んでいれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していても良い。
【0068】
本発明の積層フィルムは、本発明の防汚層と基材層と粘着剤層がこの順に直接に積層されたものであっても良い。
【0069】
本発明の積層フィルムの厚みは、それに含まれる各層の厚みによって、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みに設定される。本発明の積層フィルムの厚みは、好ましくは50μm〜500μmである。
【0070】
図1に、本発明の積層フィルムの一例の概略断面図を示す。本発明の積層フィルム100は、防汚層2と基材層3と粘着剤層4をこの順に含む。
図1に示すように、防汚層2の表面や、粘着剤層4の表面には、剥離フィルム1が設けられていても良い。
【0071】
基材層の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料を採用し得る。このような基材層の材料としては、好ましくは、耐水性、強度、柔軟性、裂け性に優れるものである。このような基材層の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンアクリル樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー類、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、アクリル樹脂などが挙げられる。このような基材層の材料は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0072】
基材層は、好ましくは、エラストマー樹脂を含む。エラストマー樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なエラストマー樹脂を採用し得る。このようなエラストマー樹脂としては、例えば、加硫ゴム、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、アクリル系エラストマーなどが挙げられる。基材層中のエラストマー樹脂の含有割合は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜99重量%であり、特に好ましくは80重量%〜98重量%であり、最も好ましくは90重量%〜97重量%である。
【0073】
基材層中に含まれ得るエラストマー樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。基材層がエラストマー樹脂を含むことにより、曲面や鋭角面など、平面以外の部位にも容易に作業性良く貼着でき、貼着後の表面にしわや浮きなどの外観不良が生じ難い、積層フィルムを提供することができる。
【0074】
本発明において、基材層に含まれ得るエラストマー樹脂としては、好ましくは、ウレタン系エラストマーである。ウレタン系エラストマーとしては、好ましくは、ポリウレタンアクリル樹脂およびポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種である。ポリウレタン樹脂としては、例えば、カーボネート系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタンなどが挙げられる。エラストマー樹脂としてウレタン系エラストマーを採用することにより、曲面や鋭角面など、平面以外の部位にも一層容易に作業性良く貼着でき、貼着後の表面にしわや浮きなどの外観不良が一層生じ難い、積層フィルムを提供することができる。
【0075】
ポリウレタン樹脂中のウレタンポリマーは、好ましくは、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、触媒を用いても良い。
【0076】
低分子量のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0077】
高分子量のジオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール;上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオール;アクリルポリオール;カーボネートポリオール;エポキシポリオール;カプロラクトンポリオール;等が挙げられる。本発明の効果を一層発現できる点で、高分子量のジオールとしては、これらの中でも、好ましくは、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)が挙げられる。
【0078】
アクリルポリオールとしては、水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物と(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0079】
エポキシポリオールとしては、アミン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0080】
ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート;これらのジイソシアネートの二量体、三量体;ポリフェニルメタンジイソシアネート;などが挙げられる。ジイソシアネートは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0081】
芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0082】
芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートの三量体としては、例えば、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられる。
【0083】
本発明の効果を一層発現できる点で、ジイソシアネートとしては、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)が挙げられる。
【0084】
基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、粘着付与剤、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ポリエチレンイミン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、リン酸エステル、滑剤、界面活性剤、充填剤や顔料(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラックなど)などが挙げられる。
【0085】
基材層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。基材層が紫外線吸収剤を含むことにより、本発明の積層フィルムの耐候性が向上する。基材層が紫外線吸収剤を含んでいない場合、野外での使用において太陽光によって基材が劣化しやすくなり、当初の基材強度を維持することが難しくなるおそれがある。そして、基材が劣化してしまうと、使用済みの本発明の積層フィルムを被着体から剥がす際に、基材層が頻繁に切断してしまい、作業効率が著しく悪くなるおそれがある。
【0086】
基材層の厚みは、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。基材層の厚みは、好ましくは1μm〜1000μmであり、より好ましくは10μm〜800μmであり、さらに好ましくは20μm〜500μmである。基材層の厚みを上記範囲内に収めることにより、本発明の積層フィルムは、防汚層と基材層との密着性に優れ、曲面や鋭角面など、平面以外の部位にも容易に作業性良く貼着でき、貼着後の表面にしわや浮きなどの外観不良が生じ難い。
【0087】
基材層には、防汚層との密着性をさらに向上させるために、プライマーをあらかじめ塗工しておいても良い。
【0088】
粘着剤層としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤層を採用し得る。このような粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂系粘着剤、アミノ樹脂系粘着剤、ビニル樹脂(酢酸ビニル系重合体など)系粘着剤、硬化型アクリル樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層の材料は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0089】
粘着剤層の厚みは、本発明の積層フィルムの用途や使用環境などによって、任意の適切な厚みを採用し得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm以上である。粘着剤層の厚みが上記範囲内に収まることにより、被着体の形状に十分に追従でき、接着面積を十分に確保でき、十分な粘着力が発現できる。粘着剤層の厚みが10μmより薄いと、被着体の形状に十分に追従できなくなり、接着面積が減少してしまい、十分な粘着力が発現できないおそれがある。粘着剤層の厚みの上限は、取扱性の観点から、好ましくは300μm以下である。
【0090】
本発明の積層フィルムは、任意の適切な方法によって製造し得る。このような方法としては、例えば、別途準備した基材層と粘着剤層を貼付した後に樹脂組成物を基材層上に塗布して防汚層を形成する方法、基材層の一方の面に粘着剤層形成材料を塗布して粘着剤層を形成し、基材層のもう一方の面に樹脂組成物を塗布して防汚層を形成する方法、基材層形成材料と粘着剤層形成材料を共押出しして基材層/粘着剤層の積層体を形成させた後に樹脂組成物を基材層上に塗布して防汚層を形成する方法、別途準備した基材層と粘着剤層を貼付した後に別途準備した防汚層を貼付する方法、基材層の一方の面に粘着剤層形成材料を塗布して粘着剤層を形成し、基材層のもう一方の面に、別途準備した防汚層を貼付する方法、基材層形成材料と粘着剤層形成材料を共押出しして基材層/粘着剤層の積層体を形成させた後に、別途準備した防汚層を貼付する方法、樹脂組成物と基材層形成材料と粘着剤層形成材料を共押出しして防汚層/基材層/粘着剤層の積層体を形成させる方法、などが挙げられる。
【0091】
本発明の積層フィルムは、水生生物付着防止粘着テープまたはシートして好適に利用できる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0093】
<硬化性の評価>
○:防汚層の表面を指で擦っても形が維持されている。
△:防汚層の表面を擦ると、部分的に削れる。
×:防汚層の表面を擦ると、効果不十分で樹脂組成物の粘性が残っており容易に形が崩れる。
【0094】
<表面自由エネルギー>
表面自由エネルギーは、対象物に対する蒸留水とジイオドメタンの接触角を測定し、そこから計算により算出した。
【0095】
<防汚(防藻)試験>
<防汚試験>
積層フィルムを大きさ10cm×15cmに切り出し、塩化ビニル製プレート(10cm×15cm)に貼り付けてパネルを作製した。このパネルを、瀬戸内海の姫路付近の播磨灘のヨットハーバーにある桟橋にて、パネルの最上面が海水面に重なるように設置し、全てのサンプル貼り付け面が日中に日が当たるように配置した。1月上旬より投入して2か月間この状態を維持し、その後パネルを引き上げ、目視による観察を行った。評価は、下記の基準に従って行った。
緑藻や珪藻等の藻類、植物性の汚れを観察した。
◎:厚みが0.5mm以上の汚れが防汚膜全体の面積の20%未満である。
○:厚みが0.5mm以上の汚れが防汚膜全体の面積の20%以上50%未満である。
△:厚みが0.5mm以上の汚れが防汚膜全体の面積の50%以上70%未満である。
△△:厚みが0.5mm以上の汚れが防汚膜全体の面積の70%以上90%未満である。
×:厚みが0.5mm以上の汚れが防汚膜の90%以上を覆っている。
【0096】
〔実施例1〕
(樹脂組成物)
シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製、KE−1950−50AとKE−1950−50Bとを予め混合・撹拌したもの):95重量部と、フッ素系エラストマー(信越化学工業(株)製、SIFEL3590−N):5重量部とを混合、撹拌し、樹脂混合物(1)を得た。別途、使用したフッ素系エラストマー(信越化学工業(株)製、SIFEL3590−N)のみで硬化した膜の表面自由エネルギーを測定すると9.2mN/mであった。
樹脂混合物(1):100重量部に、紫外線吸収剤(Tinuvin571、BASF製):2重量部、触媒(CATPL−50T、信越化学工業(株)製):0.25重量部、シリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、KF96−100Cs、信越化学工業(株)製):80重量部を混合、撹拌し、樹脂組成物(1)を得た。
【0097】
(基材層付防汚層)
得られた樹脂組成物(1)を、厚み100μmのTPU基材(製品名:ハイグレスDUS451、シーダム株式会社製)の表面に塗工し、140℃で2分間乾燥することにより、基材層(1)上に、防汚材から構成される防汚層(1)を得た。防汚層(1)の厚みは100μmであった。
【0098】
(粘着剤層)
冷却管、窒素導入管、温度計、および攪拌機を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA、東亜合成(株)製):90重量部、アクリル酸(AA):10重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、BASF製):0.1重量部を投入して分散させ、攪拌しながら窒素気流下にて上部よりUV照射することにより、一部のモノマーをポリマーに転化させて塗工可能な粘度に調整し、(メタ)アクリル系モノマー混合物を得た。この(メタ)アクリル系モノマー混合物に、架橋剤として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):0.08重量部を添加し、これをセパレーター(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、厚み50μm)の表面にアプリケーターにて塗布し、カバーセパレーター(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、厚み38μm)をハンドローラーにて貼り合わせ、さらに紫外線ランプ(BLタイプ)により紫外線を照射(紫外線照度:3.4mW/cm
2、積算照射量:2000mJ/cm
2)することにより、厚みが50μmの粘着剤層(1)を得た。
【0099】
(積層フィルム)
得られた粘着剤層(1)を、基材層(1)と防汚層(1)の積層体の基材層(1)側にハンドローラーにて貼り合わせ、積層フィルム(1)を得た。
積層フィルム(1)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0100】
〔実施例2〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(2)を得た。
積層フィルム(2)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0101】
〔実施例3〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(3)を得た。
積層フィルム(3)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0102】
〔実施例4〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(4)を得た。
積層フィルム(4)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0103】
〔実施例5〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(5)を得た。
積層フィルム(5)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0104】
〔実施例6〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(6)を得た。
積層フィルム(6)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0105】
〔実施例7〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(7)を得た。
積層フィルム(7)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0106】
〔実施例8〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(8)を得た。
積層フィルム(8)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0107】
〔実施例9〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(9)を得た。
積層フィルム(9)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0108】
〔実施例10〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(10)を得た。
積層フィルム(10)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0109】
〔実施例11〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(11)を得た。
積層フィルム(11)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0110】
〔実施例12〕
シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(12)を得た。
積層フィルム(12)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表1に示した。
【0111】
〔比較例1〕
フッ素系エラストマー、シリコーンオイルの使用量を表2のように変更し、シリコーン樹脂を使用しなかった以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(C1)を得た。
積層フィルム(C1)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表2に示した。
【0112】
〔比較例2〕
シリコーン樹脂、シリコーンオイルの使用量を表2のように変更し、フッ素系エラストマーを使用しなかった以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(C2)を得た。
積層フィルム(C2)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表2に示した。
【0113】
〔比較例3〕
塩ビ板(商品名「ヒシプレート」、三菱樹脂社製)を評価した。
評価結果を表2に示した。
【0114】
〔比較例4〕
シリコーン樹脂、シリコーンオイルを使用せず、フッ素系エラストマーの使用量を表2にように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(C4)を得た。
積層フィルム(C4)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表2に示した。
【0115】
〔比較例5〕
フッ素系エラストマー、シリコーンオイルを使用せず、シリコーン樹脂の使用量を表2にように変更した以外は、実施例1と同様に行い、積層フィルム(C5)を得た。
積層フィルム(C5)の構成は、防汚層(厚み=100μm)/基材層(厚み=100μm)/粘着層(厚み=50μm)であった。
評価結果を表2に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】