特許第6503198号(P6503198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503198
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】比較回路およびセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20190408BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20190408BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20190408BHJP
   H03K 17/90 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   H03K5/08 E
   G01R33/07
   H03F3/34 220
   H03K17/90
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-43912(P2015-43912)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-163332(P2016-163332A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有山 稔
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−212339(JP,A)
【文献】 特開2011−137716(JP,A)
【文献】 特開2008−236737(JP,A)
【文献】 特開2004−194066(JP,A)
【文献】 特開2010−281801(JP,A)
【文献】 特開2008−032431(JP,A)
【文献】 特開平02−145013(JP,A)
【文献】 特開平11−205144(JP,A)
【文献】 特開2011−124726(JP,A)
【文献】 特表2002−533973(JP,A)
【文献】 米国特許第6037887(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/00−3/70
H03K 5/00−5/26
H03K 17/00−17/98
H3M 1/00−1/88
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一容量と、前記第一容量と等しい容量値の第二容量と、第三容量と、前記第三容量と等しい容量値の第四容量と、
第一入力電圧が前記第一容量を介して入力され、第一の参照電圧が前記第三容量を介して入力される第一入力端子と、第二入力電圧が前記第二容量を介して入力され、第二の参照電圧が前記第四容量を介して入力される第二入力端子と、出力端子とを備えた比較器と、
基準電圧が入力される基準電圧端子と、
一端が前記第一入力端子に接続され、サンプルフェーズでオンして前記第一入力端子の電圧を前記出力端子の電圧にする第一スイッチと、
一端が前記第二入力端子に接続され、前記サンプルフェーズでオンして前記第二入力端子の電圧を前記基準電圧にする第二スイッチと、
を備えたことを特徴とする比較回路。
【請求項2】
センサ素子に印加される物理量の強度に応じて論理出力を行うセンサ装置であって、
請求項1記載の比較回路と、
センサ素子と、
前記センサ素子の第一の端子対および第二の端子対が接続され、電源が供給される端子対と物理量の強度に応じた信号電圧を出力する端子対とを切り替え制御し、前記センサ素子の端子対から入力された第一の信号電圧と第二の信号電圧を出力するスイッチ回路と、
前記第一の参照電圧前記第二の参照電圧を出力する検出電圧設定回路と、
を有し、
前記第一の信号電圧基づく電圧が前記第一入力電圧として入力され、前記第二の信号電圧基づく電圧が前記第二入力電圧として入力され
前記スイッチ回路は、前記センサ素子の前記第一端子対に電源を供給し、前記第二端子対から前記信号電圧を出力する第一検出状態と、 前記センサ素子の前記第二端子対に電源を供給し、前記第一端子対から前記信号電圧を出力する第二検出状態と、を切り替える機能を有し、
前記比較回路は、1回の前記第一検出状態と1回の前記第二検出状態によって、前記論理出力を行うことを特徴とするセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧の大小を高精度に比較する比較回路、および比較回路を備えたセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路一般において、複数の電圧を比較し、その大小を判定する回路として比較回路が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
従来の比較回路の一例の回路図を図7に示す。従来の比較回路は、比較器(コンパレータ)を用い、2つの入力電圧の差分の電圧が所定の電圧よりも大きいかまたは小さいかを判定している。この比較において、比較器が持つオフセット電圧(入力オフセット電圧)やノイズが誤差の要因となり、精度が低下するという問題がある。上記の入力オフセット電圧は、一例としては比較器の入力回路を構成する素子の特性ばらつきにより発生する。また上記のノイズは、回路を構成する単体トランジスタが持つフリッカ雑音や、単体トランジスタや抵抗素子が持つ熱雑音により発生する。
【0003】
前述の比較器が持つオフセット電圧の影響を低減するため、図7に示した比較回路は以下の構成となっている。比較器15と、比較器15の反転入力端子N13と出力端子との間に接続されるスイッチS13と、比較器15の反転入力端子N13と入力端子N11との間に接続される容量13と、比較器15の非反転入力端子N14と比較電圧入力端子Nref10との間に接続されるスイッチS14と、比較器15の非反転入力端子N14と接続点N141との間に接続されるスイッチS11と、入力端子N12と接続点N141との間に接続される容量14と、接続点N141と比較電圧入力端子N10との間に接続されるスイッチS12とを有する。ここで、比較電圧入力端子N10の電圧をV0、比較電圧入力端子Nref10の電圧をVref、入力端子N11の電圧をV1、入力端子N12の電圧をV2、比較器15の反転入力端子N13の電圧をVN、比較器15の非反転入力端子N14の電圧をV4、比較器15の出力端子の電圧をVoとする。また、比較器15の入力オフセット電圧をVoaとする。
【0004】
図7の比較回路は、図8に示すようにスイッチS11〜S14が制御されて動作する。動作の一周期は、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2からなる。サンプルフェーズφ1では、スイッチS11がオフ、スイッチS12〜S14がオンする。比較フェーズφ2では、スイッチS11がオン、スイッチS12〜S14がオフする。また、各接続点や端子の電圧の末尾に付するφ1またはφ2は、それぞれサンプルフェーズφ1または比較フェーズφ2における電圧を表すものとする。
【0005】
サンプルフェーズφ1では、スイッチS11がオフ、スイッチS12がオンし、容量14にΔVC4φ1=V0−V2φ1が充電される。スイッチS14がオンしているのでV4φ1=Vrefとなる。比較器15は、スイッチS3がオンしているので、ボルテージフォロワ回路として動作し、入力オフセット電圧Voaを有するためVoφ1=V4φ1+Voaとなる。また、スイッチS13がオンしているのでVNφ1=Voφ1であり、すなわちVNφ1=Vref+Voaとなり、容量13にΔVC3φ1=VNφ1−V1φ1=Vref+Voa−V1φ1が充電される。サンプルフェーズφ1での容量13と容量14に蓄積される電荷をまとめると次のようになる。
【0006】
ΔVC3φ1=Vref+Voa−V1φ1・・・(A1)
ΔVC4φ1=V0−V2φ1・・・(A2)
比較フェーズφ2では、スイッチS12〜S14がオフし、スイッチS11がオンする。容量3には式(A1)で示すΔVC3φ1が保持されているので、電圧VNは次のようになる。
【0007】
VNφ2=V1φ2+ΔVC3φ1・・・(A3)
一方、容量14には式(A2)で示すΔVC4φ1が保持されているので、電圧V4は次のようになる。
【0008】
V4φ2=V2φ2+ΔVC4φ1・・・(A4)
最終的に、式(A3)で表される電圧VNと式(A4)で表される電圧V4が比較器15において比較され、出力端子からハイレベルまたはローレベルが出力される。
比較器15の入力オフセット電圧Voaを考慮すると、比較器15で比較される電圧は次のようになる。
【0009】
(V4φ2+Voa)−VNφ2={(V2φ2−V1φ2)−(V2φ1−V1φ1)}−(Vref−V0)・・・(A5)
式(A5)には、比較器5の入力オフセット電圧Voaが含まれていない。これは、比較器15の入力オフセット電圧が相殺されていることを示している。従って、比較フェーズφ2で比較器15において、入力電圧成分{(V2φ2−V1φ2)−(V2φ1−V1φ1)}と基準電圧成分(Vref−V0)が比較される。以上により、誤差要因となる比較器のオフセット電圧成分の影響が取り除かれ、誤差の少ない高精度な出力の比較回路を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−236737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、自動車等に搭載される回路においては、近年、より高温での動作が求められ、また更なる高精度化が求められる傾向にある。前述したような従来の比較回路では、比較フェーズにおいて、高温時に顕著になるスイッチのオフリーク電流により容量に電荷が注入され、比較の結果に誤差を生じるという課題があった。具体的には、図7の比較回路においては、比較フェーズφ2にて、容量13にはスイッチS13のみのリーク電流が流れ込むのに対して、容量14にはスイッチS12およびS14のリーク電流が流れ込むため、比較器の入力における電圧の変動量が反転入力端子N13側と非反転入力端子N14側で異なり、比較結果に誤差を生じていた。一般的に、スイッチを構成するトランジスタのリーク電流は高温になるに従い増加するため、誤差は高温になるほど顕著になる。
【0012】
また、従来の比較回路では、スイッチを構成するトランジスタ素子がオンからオフに遷移する際に発生するノイズ成分(例えば、チャネルチャージインジェクションやクロックフィードスルー)の影響についても、各容量へのスイッチの接続が非対称であるために、スイッチのノイズ成分による比較器の入力における電圧の変動量が反転入力端子N3側と非反転入力端子N14側で異なっており、誤差発生の要因であるという課題があった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、簡便な回路構成で比較器の入力オフセット電圧の影響を取り除くと共に、スイッチのオフリーク電流やノイズ成分による誤差の影響を抑制し、高精度な比較判定結果を得ることが可能な比較回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来のこのような問題点を解決するために、本発明の比較回路は以下のような構成とした。
第一入力電圧が第一容量を介して入力され第三入力電圧が第三容量を介して入力される第一入力端子と、第二入力電圧が第二容量を介して入力され第四入力電圧が第四容量を介して入力される第二入力端子と、出力端子とを備えた比較器と、一端が第一入力端子に接続され、サンプルフェーズでオンして第一入力端子の電圧を出力端子の電圧にする第一スイッチと、一端が第二入力端子に接続され、サンプルフェーズでオンして第二入力端子の電圧を基準電圧にする第二スイッチを備えた比較回路。
【発明の効果】
【0015】
本発明の比較回路によれば、スイッチと容量と比較器を有効的に活用することにより、比較器において発生するオフセット成分やスイッチのオフリーク電流成分やスイッチのノイズ成分によって生じる誤差を簡便な回路構成で取り除き、広範な温度領域にわたって高精度な比較を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の比較回路の回路図である。
図2】本発明の実施形態の各スイッチの動作を示す図である。
図3】本発明の実施形態の他の例の回路図である。
図4】本発明の実施形態を磁気センサ装置に応用した例の回路図である。
図5】磁気センサ装置に用いる差動増幅器の一例を示す回路図である。
図6】磁気センサ装置に用いる検出電圧設定回路の一例を示す回路図である。
図7】従来の比較回路の回路図である。
図8】従来の比較回路の各スイッチの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の比較回路は、半導体回路における高精度な比較回路として幅広く利用されうる。以下、本発明の比較回路について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の比較回路の実施形態を示す回路図である。本発明の比較回路は、比較器1と、容量C1、C2、C3、C4と、スイッチS1、S2を備える。
【0018】
比較器1は、反転入力端子NNと、非反転入力端子NPと出力端子OUTを有する。容量C1の一方の端子は比較器1の反転入力端子NNに接続され、他方の端子は入力端子N1に接続される。容量C2の一方の端子は比較器1の非反転入力端子NPに接続され、他方の端子は入力端子N2に接続される。容量C3の一方の端子は比較器1の反転入力端子NNに接続され、他方の端子は入力端子N3に接続される。容量C4の一方の端子は比較器1の非反転入力端子NPに接続され、他方の端子は入力端子N4に接続される。スイッチS1の一方の端子は比較器1の反転入力端子NNに接続され、他方の端子は比較器1の出力端子OUTに接続される。スイッチS2の一方の端子は比較器1の非反転入力端子NPに接続され、他方の端子は基準電圧入力端子Nrefに接続される。スイッチS1、S2は、スイッチ制御信号(回路図には図示しない)により、オンまたはオフが制御される。
以下の説明では、各端子N1〜N4、NN、NP、NrefおよびOUTの電圧をそれぞれV1〜V4、VN、VP、VrefおよびVoとする。
【0019】
次に、本発明の比較回路の動作を説明する。
まず、比較器1の動作を説明する。比較器1は、一対の入力電圧の差を増幅した値を出力する機能を有する。この増幅機能を式で表すと、
Vo=A1×(VP−VN)・・・(1)
となる。ここにA1は比較器1の増幅率である。
【0020】
図1の比較回路では、比較器1の反転入力端子NNと出力端子OUTはスイッチS1の両端に接続されている。スイッチS1がオンしている状態では、VoとVNは概等しい電圧になるから、Voは式(1)から次のように表される。
Vo=A1/(1+A1)×VP・・・(2)
説明の便宜上、増幅率A1は十分に大きいとすると、次式を得る。
Vo=VP・・・(3)
すなわちスイッチS1がオンしている状態では、ボルテージフォロワ動作をする。
【0021】
一方、スイッチS1がオフしている状態では比較器1にフィードバックループが形成されないことから、比較器1は比較器(コンパレータ)そのものとして動作する。式(1)から、比較器1は、スイッチS1がオフしている状態では、VPとVNの差分の電圧を増幅率A1で増幅して、出力端子OUTからハイレベル信号(一般に正の電源電圧レベル)またはローレベル信号(一般に負の電源電圧レベル、またはGNDレベル)を出力する比較動作を行う。
【0022】
ここで、比較器1の入力オフセット電圧を非反転入力端子NNにおいてVoaとすると、入力オフセット電圧を考慮した比較器1の動作を表す式は、スイッチS1がオンしているときとオフしているときで、それぞれ式(3)、式(1)から次のようになる。
【0023】
スイッチS1がオンしているとき
Vo=VP+Voa・・・(4)
スイッチS1がオフしているとき
Vo=A1×(VP+Voa−VN)・・・(5)
以上が比較器1の動作説明である。
【0024】
図2は、各スイッチの動作を示す図である。
比較動作の一周期は、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2の2つのフェーズからなる。スイッチS1、S2はスイッチ制御信号により制御される。スイッチS1は、サンプルフェーズφ1でオンし、比較フェーズφ2でオフする。また、スイッチS2も同様に、サンプルフェーズφ1でオンし、比較フェーズφ2でオフする。
【0025】
図1の比較回路の各フェーズでの動作の概略を説明する。
サンプルフェーズφ1は、入力端子N1の電圧V1、入力端子N2の電圧V2、入力端子N3の電圧V3、入力端子N4の電圧V4、基準電圧入力端子Nrefの電圧Vref、比較器1のオフセット電圧Voaを容量C1、C2、C3およびC4に記憶するフェーズである。
【0026】
比較フェーズφ2は、サンプルフェーズφ1における比較器1のオフセット成分を相殺しつつ、入力端子N1と入力端子N2の間の電圧差と、入力端子N3と入力端子N4の間の電圧差との比較を行うフェーズである。
【0027】
以下に、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2について、詳細に説明する。
サンプルフェーズφ1では、スイッチS1、S2はオンする。従って、比較器1の各入力端子には、次の電圧が供給される。比較器1の反転入力端子NNには出力端子OUTの電圧Voが与えられ、非反転入力端子NPには基準電圧Vrefが与えられる。
【0028】
VPφ1=Vrefφ1・・・(6)
また、スイッチS1がオンしているとき、比較器1は式(4)で示したように動作するから、反転入力端子NNの電圧VNは次のように表される。
【0029】
VNφ1=Vrefφ1+Voaφ1・・・(7)
各電圧の末尾のφ1は、サンプルフェーズφ1における電圧である事を示す。これ以降では、他の電圧、また比較フェーズφ2についても同様に表記する。
【0030】
容量C1、C2、C3およびC4には、各容量の2つの端子の電圧差と容量値に応じた電荷が蓄積される。この電荷量をそれぞれQ1、Q2、Q3およびQ4とすると、それぞれ次のように表される。
Q1φ1=C1×(VNφ1−V1φ1)・・・(8)
Q2φ1=C2×(VPφ1−V2φ1)・・・(9)
Q3φ1=C3×(VNφ1−V3φ1)・・・(10)
Q4φ1=C4×(VPφ1−V4φ1)・・・(11)
ここで、容量C1〜C4の容量値をそれぞれC1〜C4とした。
【0031】
一方、比較フェーズφ2では、スイッチS1、S2はオフする。比較フェーズφ2で容量C1〜C4に蓄積される電荷量はそれぞれ次のように表される。
Q1φ2=C1×(VNφ2−V1φ2)・・・(12)
Q2φ2=C2×(VPφ2−V2φ2)・・・(13)
Q3φ2=C3×(VNφ2−V3φ2)・・・(14)
Q4φ2=C4×(VPφ2−V4φ2)・・・(15)
スイッチS1がオフしているため、容量1と容量3に蓄積される電荷量の総和は、電荷保存則によりサンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で変化しない。これを式で表すと次式のようになる。
【0032】
Q1φ1+Q3φ1=Q1φ2+Q3φ2・・・(16)
式(16)に式(8)、(10)、(12)、(14)を代入し、VNφ2について解くと、次式を得る。
VNφ2=VNφ1+C1/(C1+C3)×(V1φ2−V1φ1)+C3/(C1+C3)×(V3φ2−V3φ1)・・・(17)
式(17)に式(7)を代入すると、次式を得る。
VNφ2=Vrefφ1+Voaφ1+C1/(C1+C3)×(V1φ2−V1φ1)+C3/(C1+C3)×(V3φ2−V3φ1)・・・(18)
また、スイッチS1と同様にスイッチS2はオフしているため、容量2と容量4に蓄積される電荷量の総和は、電荷保存則によりサンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で変化せず、次式で表される。
【0033】
Q2φ1+Q4φ1=Q2φ2+Q4φ2・・・(19)
式(19)に式(9)、(11)、(13)、(15)を代入し、VPφ2について解くと、次式を得る。
VPφ2=VPφ1+C2/(C2+C4)×(V2φ2−V2φ1)+C4/(C2+C4)×(V4φ2−V4φ1)・・・(20)
式(20)に式(6)を代入すると、次式を得る。
VPφ2=Vrefφ1+C2/(C2+C4)×(V2φ2−V2φ1)+C4/(C2+C4)×(V4φ2−V4φ1)・・・(21)
また、スイッチS1がオフしているとき、比較器1は式(5)で示したように動作するから、比較器1の出力端子OUTの電圧Voは次のように表される。
【0034】
Voφ2=A1×(VPφ2+Voaφ2−VNφ2)・・・(22)
上式(22)に式(18)で表されるVNφ2、式(21)で表されるVPφ2を代入すると次式を得る。
【0035】
Voφ2=A1×{−C1/(C1+C3)×(V1φ2−V1φ1)+C2/(C2+C4)×(V2φ2−V2φ1)−C3/(C1+C3)×(V3φ2−V3φ1)+C4/(C2+C4)×(V4φ2−V4φ1)+(Voaφ2−Voaφ1)}・・・(23)
以降では説明の便宜上、容量値C1とC2は容量値Cに等しく、容量値C3と容量値C4は容量値Cのn倍に等しいとすると、式(23)は次のように表される。
【0036】
Voφ2=A1×[1/(1+n)×{(V2φ2−V2φ1)−(V1φ2−V1φ1)}−n/(1+n)×{(V3φ2−V3φ1)−(V4φ2−V4φ1)}+(Voaφ2−Voaφ1)}]・・・(24)
式(24)を分かりやすくするために、入力端子N1および入力端子N2から供給される電圧成分をΔVinとおき、入力端子N3および入力端子N4から供給される電圧成分をΔVrefとおくと、式(24)は次のように表せる。
【0037】
Voφ2=A1×{(ΔVin−n×ΔVref)/(1+n)+(Voaφ2−Voaφ1)}・・・(25)
ここに、
ΔVin=(V2φ2−V1φ2)−(V2φ1−V1φ1)・・・(26)
ΔVref=−{(V4φ2−V3φ2)−(V4φ1−V3φ1)}・・・(27)
である。
【0038】
ここで、比較器1の入力オフセット電圧Voaは、厳密には経時変化や温度変化(温度ドリフト)を示すために一定の値ではないが、サンプルフェーズφ1および比較フェーズφ2の時間が、入力オフセット電圧の経時変化や温度変化に対して十分に短い時間であれば、入力オフセット電圧の値は、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で概ね等しい値であるとみなす事ができる。従って式(25)において、Voaφ2−Voaφ1はほぼゼロの値となり、比較フェーズφ2の比較器1における比較動作時に比較器1のオフセット成分は取り除かれることになる。よって式(25)は次のように表せる。
【0039】
Voφ2=A1×{(ΔVin−n×ΔVref)/(1+n)}・・・(28)
従って、入力端子N1および入力端子N2から供給される電圧成分ΔVinと、入力端子N3および入力端子N4から供給される電圧成分ΔVrefを比較した結果が、十分に大きな増幅率A1で増幅され、最終的に比較器1の出力端子OUTからハイレベル信号またはローレベル信号として出力されることになる。すなわち、誤差成分であるオフセット電圧の影響を取り除き、高精度な比較結果を得ることができる。
【0040】
ここで、ΔVinを決める入力端子N1および入力端子N2の電圧を、例えば、V2φ2=V1φ1=V2’、V1φ2=V2φ1=V1’となるように入力した場合には、式(26)からΔVin=2×(V2’−V1’)となり、V2’とV1’の差を2倍した電圧が入力電圧成分として比較器1に入力されることになる。
【0041】
また一方で、ΔVrefを決める入力端子N3および入力端子N4の電圧を、例えば、V4φ2=V3φ1=V4’、V3φ2=V4φ1=V3’となるように入力した場合には、式(27)からΔVref=2×(V3’−V4’)となり、V3’とV4’の差を2倍した電圧が入力電圧成分として比較器1に入力されることになる。
【0042】
間便のため、n=1となるように容量C1〜C2の容量値を選定したとすると、この例の場合には式(28)は、
Voφ2=A1×{(V2’−V1’)−(V3’−V4’)}・・・(29)
となり、入力電圧(V2’−V1’)と入力電圧(V3’−V4’)の比較結果が出力端子から得られることになる。
【0043】
ここで、式(23)に注目すると、この式にはVrefの項は含まれていない。これは、式(18)で表されるVNφ2と、式(21)で表されるVPφ2の両方にVrefφ1の項が含まれており、これらを式(21)で表されるVoφ2に代入した際にVrefの項が相殺されたためである。このことは、本発明の比較回路では、基準電圧入力端子Nrefに与えられる電圧Vrefがいかなる値でも、比較結果はVrefの電圧によらないことを示している。実際の回路においては、比較器1に入力可能な電圧の範囲には、同相入力電圧範囲という制約があり、この電圧範囲を逸脱した場合には、高精度な比較を正常に行えない可能性がある。入力端子N1、入力端子N2、入力端子N3および入力端子N4の電圧が、比較器1の同相入力電圧範囲外の電圧であったとしても、本発明の比較回路では、基準電圧入力端子Nrefの電圧を比較器1の同相入力電圧範囲内になるように選択することで、高精度な比較が可能であるという利点を有する。別の表現をすると、比較器1に要求される同相入力電圧範囲を著しく緩和できるという利点を有している。
【0044】
次に、スイッチS1、S2の接続を本発明の構成にすることによる効果を説明する。オフ状態のスイッチの理想的な特性としては、抵抗値が限りなく大きい、すなわち端子間に電流が流れないことが挙げられるが、実際の回路においては、スイッチの端子間にはリーク電流が流れる。このためにリーク電流を低減させるスイッチ回路の構成が多々挙げられているが、リーク電流はゼロにはならず有限の値をとる。容量とスイッチを使用した比較回路においては、オフ時のスイッチのリーク電流が容量に流れ込むことで容量に蓄積された電荷量が変化し、比較結果に誤差が発生する要因となりうる。また一般に、リーク電流は高温であるほど増加する傾向にあるため、高温になるほど比較回路の誤差は増大する傾向にある。
【0045】
本発明の回路構成においては、容量C1の一方の端子と容量C3の一方の端子と比較器1の反転入力端子NNの接続点、容量C2の一方の端子と容量C4の一方の端子と比較器1の非反転入力端子NPの接続点、にそれぞれ対称となるようにスイッチS1,S2を接続している。このため、比較フェーズφ2でスイッチS1とS2がオフしている際に、スイッチS1とS2がリーク電流を生じたとしても、スイッチS1とS2に概同等の特性を有するスイッチを採用することで、スイッチのリーク電流は各接続点にほぼ等しく流れ込み、反転入力端子NNの電圧VNと非反転入力端子NPの電圧VPはそれぞれ変化するものの、その変化量はほぼ同等となるように動作する。従って、電圧の差分であるVP−VNの値は変化せず、結果として比較結果の誤差が最小源になり、高精度な比較判定結果を得ることが可能となるという構成上の利点を有している。
【0046】
また、スイッチの非理想成分としては、上述のリーク電流の他に、スイッチを構成するトランジスタ素子がオンからオフに遷移する際に発生するノイズ成分、例えば、チャネルチャージインジェクションやクロックフィードスルーが挙げられる。本発明の回路構成においては、容量C1の一方の端子と容量C3の一方の端子と比較器1の反転入力端子NNの接続点、容量C2の一方の端子と容量C4の一方の端子と比較器1の非反転入力端子NPの接続点にそれぞれ対称となるようにスイッチS1,S2を接続しているため、スイッチのノイズ成分によって発生する電荷は各接続点にほぼ等しく注入され、反転入力端子NNの電圧VNと非反転入力端子NPの電圧VPはそれぞれ変化するものの、その変化量はほぼ同等となるように動作する。これはリーク電流の場合と同様である。従って、スイッチがオン状態からオフ状態に遷移する際に発生するノイズ成分による誤差の影響を抑制し、高精度な比較判定結果を得ることが可能となるという構成上の利点を有している。
【0047】
本説明においては、具体的なスイッチ制御のタイミングチャートを示したが、本説明内で記載した動作を行う構成であれば、必ずしもこのタイミングに制限されるものではない。例えば、図2では、サンプルフェーズφ1から比較フェーズφ2への遷移時、または逆の遷移時にスイッチのオンまたはオフが切り替わるタイミングが同時になるように記載しているが、スイッチS1がオフした後にスイッチS2をオフするようにタイミングをずらして制御しても良い。比較器1の過渡応答特性が良い場合や、比較器1の反転入力端子NNと非反転入力端子NPの間の寄生容量が無視できない大きさであるなどの場合では、スイッチS2をオフした際に生じるスイッチングノイズが非反転入力端子NPから反転入力端子NNに伝播し、容量C1に充電する電圧に無視できない誤差を発生させる場合がある。このような場合には、スイッチS1がオフするタイミングに対してスイッチS2がオフするタイミングを遅らせると、より好適である。
【0048】
また本説明においては、容量C1〜C4の容量値C1〜C4の値の関係について、具体的な比を挙げたが、必ずしも説明で示した比でなくても良い。
また本説明においては、入力端子N1と入力端子N2に印加される入力電圧の一例、および、入力端子N3と入力端子N4に印加する電圧の一例を挙げたが、必ずしも、この例に制限されるものではない。例えば、従来技術に示されるように、センサ素子に印加される物理量の強度に応じて論理出力を行う信号検出回路に本実施形態の比較回路を適用する場合、入力電圧成分の例は次のようになる。
【0049】
V1φ1=Vcmφ1+Vsigφ1+Voffφ1
V2φ1=Vcmφ1−Vsigφ1−Voffφ1
V1φ2=Vcmφ2−Vsigφ2+Voffφ2
V2φ2=Vcmφ2+Vsigφ2−Voffφ2
ここで、Vcmはセンサ素子の信号電圧の同相電圧成分、Vsigはセンサ素子の信号電圧成分、Voffはセンサ素子のオフセット電圧成分(誤差要因)である。以上の各入力電圧を式(26)に代入すると、
ΔVin=2×(Vsigφ2+Vsigφ1)−2×(Voffφ2−Voffφ1)・・・(30)
となる。センサ素子のオフセット電圧成分はサンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で概ね等しい値を示すので相殺される。従って、センサ素子の信号電圧成分のみが入力電圧成分ΔVinとして比較器1に入力されることになる。このような入力電圧成分の場合においても、本発明の趣旨である、比較器の入力オフセット電圧の影響を取り除くと共に、スイッチのオフリーク電流やノイズ成分による誤差の影響を抑制し、高精度な比較判定結果を得るという点から逸脱するものではない。
【0050】
図3は、本発明の実施形態の他の例の回路図である。図1に示した回路図との違いは、容量C5と容量C6を追加した点である。追加した要素は次のように構成され接続される。
容量C5の一方の端子は比較器1の反転入力端子NNに接続され、他方の端子は入力端子N5に接続される。容量C6の一方の端子は比較器1の非反転入力端子NPに接続され、他方の端子は入力端子N6に接続される。この他の接続および構成については、図1に示した本発明の実施形態と同じである。
【0051】
次に、本回路の比較回路の動作を説明する。
スイッチS1、S2は図1の回路の場合と同様に制御され、図2に示すように動作する。
サンプルフェーズφ1では、スイッチS1、S2はオンしており、容量C1〜C4に式(8)〜(11)と同様の電荷量が蓄積されるのに加えて、容量C5、C6にはそれぞれ次式で表される電荷量Q5、Q6が蓄積される。
Q5φ1=C5×(VNφ1−V5φ1)・・・(31)
Q6φ1=C6×(VPφ1−V6φ1)・・・(32)
一方、比較フェーズφ2では、スイッチS1、S2はオフしており、容量C1〜C4に式(12)〜(15)と同様の電荷量が蓄積されるのに加えて、容量C5、C6にはそれぞれ次式で表される電荷量Q5、Q6が蓄積される。
Q5φ2=C5×(VNφ2−V5φ2)・・・(33)
Q6φ2=C6×(VPφ2−V6φ2)・・・(34)
スイッチS1がオフしているため、容量1と容量3と容量5に蓄積される電荷の総和は、図1の場合と同様に、電荷保存則によりサンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で変化しない。これを式で表すと次式のようになる。
【0052】
Q1φ1+Q3φ1+Q5φ1=Q1φ2+Q3φ2+Q5φ2・・・(35)
式(35)に式(8)、(10)、(12)、(14)、(31)、(33)を代入し、VNφ2について解くと、次式を得る。
VNφ2=VNφ1+C1/(C1+C3+C5)×(V1φ2−V1φ1)+C3/(C1+C3+C5)×(V3φ2−V3φ1)+C5/(C1+C3+C5)×(V5φ2−V5φ1)・・・(36)
式(36)に式(7)を代入すると、次式を得る。
VNφ2=Vrefφ1+Voaφ1+C1/(C1+C3+C5)×(V1φ2−V1φ1)+C3/(C1+C3+C5)×(V3φ2−V3φ1)+C5/(C1+C3+C5)×(V5φ2−V5φ1)・・・(37)
また、スイッチS1と同様にスイッチS2はオフしているため、容量2と容量4と容量6に蓄積される電荷量の総和は、図1の場合と同様に、電荷保存則によりサンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で変化せず、次式で表される。
【0053】
Q2φ1+Q4φ1+Q6φ1=Q2φ2+Q4φ2+Q6φ2・・・(38)
式(38)に式(9)、(11)、(13)、(15)、(32)、(34)を代入し、VPφ2について解くと、次式を得る。
VPφ2=VPφ1+C2/(C2+C4+C6)×(V2φ2−V2φ1)+C4/(C2+C4+C6)×(V4φ2−V4φ1)+C6/(C2+C4+C6)×(V6φ2−V6φ1)・・・(38)
式(38)に式(6)を代入すると、次式を得る。
VPφ2=Vrefφ1+C2/(C2+C4+C6)×(V2φ2−V2φ1)+C4/(C2+C4+C6)×(V4φ2−V4φ1)+C6/(C2+C4+C6)×(V6φ2−V6φ1)・・・(39)
スイッチS1がオフしているとき、図1の場合と同様に、比較器1の出力端子OUTの電圧Voは式(22)のように表される。式(22)に式(37)で表されるVNφ2、式(39)で表されるVPφ2を代入すると次式を得る。
【0054】
Voφ2=A1×{−C1/(C1+C3+C5)×(V1φ2−V1φ1)+C2/(C2+C4+C6)×(V2φ2−V2φ1)−C3/(C1+C3+C5)×(V3φ2−V3φ1)+C4/(C2+C4+C6)×(V4φ2−V4φ1)−C5/(C1+C3+C5)×(V5φ2−V5φ1)+C6/(C2+C4+C6)×(V6φ2−V6φ1)+(Voaφ2−Voaφ1)}・・・(40)
以降では説明の便宜上、容量値C1とC2は容量値Cに等しく、容量値C3と容量値C4は容量値Cのn倍、容量値C5と容量値Cは容量値Cのm倍に等しいとすると、式(40)は次のように表される。
【0055】
Voφ2=A1×[+1/(1+n+m)×{(V2φ2−V2φ1)−(V1φ2−V1φ1)}+n/(1+n+m)×{(V4φ2−V4φ1)−(V3φ2−V3φ1)}+m/(1+n+m)×{(V6φ2−V6φ1)−(V5φ2−V5φ1)}+(Voaφ2−Voaφ1)}]・・・(41)
式(41)を分かりやすくするために、図1の説明の場合と同様に、入力端子N1および入力端子N2から供給される電圧成分をΔVinとおき、入力端子N3および入力端子N4から供給される電圧成分をΔVrefとおき、さらに入力端子N5および入力端子N6から供給される電圧成分をΔVin2とおくと、式(41)は次のように表せる。
【0056】
Voφ2=A1×{(ΔVin−n×ΔVref+m×ΔVin2)/(1+n+m)+(Voaφ2−Voaφ1)}・・・(42)
ここに、ΔVinは式(26)、ΔVrefは式(27)と同様であり、
ΔVin=(V2φ2−V1φ2)−(V2φ1−V1φ1)・・・(26)
ΔVref=−{(V4φ2−V3φ2)−(V4φ1−V3φ1)}・・・(27)
ΔVin2=(V2φ2−V1φ2)−(V2φ1−V1φ1)・・・(43)
である。
【0057】
ここで、比較器1の入力オフセット電圧Voaは、図1の説明の場合と同様に、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で概ね等しい値であるとみなす事ができるため、式(43)は次のように表せる。
【0058】
Voφ2=A1×{(ΔVin−n×ΔVref+m×ΔVin2)/(1+n+m)}・・・(44)
従って、入力端子N1および入力端子N2から供給される電圧成分ΔVinと入力端子N5および入力端子N6から供給される電圧成分ΔVin2のm倍の和と、入力端子N3および入力端子N4から供給される電圧成分ΔVrefのn倍とを比較した結果が、十分に大きな増幅率A1で増幅され、最終的に比較器1の出力端子OUTからハイレベル信号またはローレベル信号として出力されることになる。すなわち、誤差成分であるオフセット電圧の影響を取り除き、高精度な比較結果を得ることができる。
【0059】
また、式(41)には図1の場合の式(23)と同様にVrefの項は含まれていない。従って、本構成においても比較器1に要求される同相入力電圧範囲を著しく緩和できるという利点を有しているといえる。また、スイッチS1、S2の接続についても、図1の場合と同様に、比較器1反転入力端子NNと非反転入力端子NPにそれぞれ対称となるようにスイッチS1,S2を接続しているため、スイッチの非理想成分であるリーク電流やオンからオフに遷移する際に発生するノイズ成分の影響による誤差が最小源になり、高精度な比較判定結果を得ることが可能となるという構成上の利点を有している。
【0060】
図1の説明においては、従来技術に示されるような、センサ素子に印加される物理量の強度に応じて論理出力を行う信号検出回路に本実施形態の比較回路を適用する場合を挙げた。図3に示す本回路構成においても同様に、ΔVinにセンサ素子の信号を入力し、ΔVin2に他のセンサ素子信号を入力すると、センサ素子と他のセンサ素子の信号電圧の同相電圧成分やオフセット電圧成分(誤差要因)を取り除いた、センサ素子と他のセンサ素子の信号電圧成分の和と、ΔVrefとを高精度に比較することができる。
【0061】
また、式(43)式の代わりに
ΔVin2=−[(V2φ2−V1φ2)−(V2φ1−V1φ1)]・・・(45)
とすると、式(44)は次のように表される。
【0062】
Voφ2=A1×[{ΔVin−(n×ΔVref+m×ΔVin2)}]/(1+n+m)}・・・(46)
上記の説明と、式(46)から、ΔVinにセンサ素子の信号を入力し、ΔVrefとΔVin2に基準電圧成分を入力した場合には、センサ素子信号電圧成分と、基準電圧成分ΔVrefとΔVinの和とを高精度に比較することができることがわかる。
【0063】
図4は、本発明の実施形態を磁気センサ装置に応用した例の回路図である。図4の磁気センサ装置は図1の比較回路と、磁電変換素子であるホール素子2と、スイッチ回路3と、差動増幅器4と、検出電圧設定回路5と、基準電圧回路ref0を追加した点である。検出電圧設定回路5は基準電圧回路ref1および基準電圧回路ref2で構成される。
【0064】
追加した要素は次のように構成され接続される。ホール素子2は、第一端子対A―Cと第二端子対B―Dとを備える。スイッチ回路3は、ホール素子1の各端子A、B、CおよびDと接続される4つの入力端子と、第一出力端子及び第二出力端子を有する。差動増幅器4は、スイッチ回路3の第一出力端子及び第二出力端子が各々接続される第一入力端子N1S及び第二入力端子N2Sと、容量C1の他方の端子である入力端子N1に接続される第一出力端子N1及び容量C2の他方の端子である入力端子N2に接続される第二出力端子N2とを有する。容量C3の他方の端子に接続された入力端子N3は、基準電圧回路ref1の正極に接続され、容量C4の他方の端子に接続された入力端子N4は、基準電圧回路ref2の正極に接続され、スイッチS2の他方の端子に接続された基準電圧入力端子Nrefは、基準電圧回路ref0の正極に接続される。この他の接続および構成については、図1に示した本発明の実施形態と同じである。
【0065】
次に、本応用例の磁気センサ装置の動作を説明する。
スイッチ回路3は、ホール素子2の第一端子対A―Cに電源電圧を入力し第二端子対B―Dから信号電圧を出力する第一検出状態T1と、第二端子対B―Dに電源電圧を入力し第一端子対A―Cから信号電圧を出力する第二検出状態T2とを切り替える機能を有する。
【0066】
ホール素子2は磁界強度(または磁束密度)に応じた信号電圧を出力すると共に、誤差成分であるオフセット電圧を出力する。以下の説明では、ホール素子2はサンプルフェーズφ1のときに第一検出状態T1であり、比較フェーズφ2のときに第二検出状態T2とする。また、ホール素子2の素子信号電圧Vh、オフセット電圧Vohは、第一検出状態T1と第二検出状態T2とで素子信号電圧Vhが逆相であり、オフセット電圧Vohが同相であるとすると、フェーズφ1、フェーズφ2のそれぞれのフェーズにおける端子N1SおよびN2Sの電圧はV1SおよびV2Sは、以下の式で表される。
【0067】
V1Sφ1=Vcm1+Vh1/2+Voh1/2・・・(47)
V2Sφ1=Vcm1−Vh1/2−Voh1/2・・・(48)
V1Sφ2=Vcm2−Vh2/2+Voh2/2・・・(49)
V2Sφ2=Vcm2+Vh2/2−Voh2/2・・・(50)
ここで、ホール素子2の素子同相電圧Vcm、素子信号電圧Vh、オフセット電圧Vohの末尾に付した“1”または“2”は、それぞれホール素子2およびスイッチ回路3の検出状態がそれぞれ第一検出状態T1または第二検出状態T2での値であることを示す。式(47)から式(50)により、各フェーズで差動増幅器4に入力される電圧は次のようになる。
V2Sφ1−V1Sφ1=−Vh1−Voh1・・・(51)
V2Sφ2−V1Sφ2=+Vh2−Voh2・・・(52)
差動増幅器4は、2つの入力電圧の差を増幅し、2つの出力電圧の差として出力する機能を有する。差動増幅器4は、2つの入力電圧の差を増幅し、2つの出力電圧の差として出力する機能を有する。この増幅機能を式で表すと
V2−V1=G×(V2S−V1S)・・・(53)
となる。ここに、Gは差動増幅器の増幅率であり、V1およびV2は端子N1、N2の電圧である。さらに、差動増幅器4の入力端子N1S、N2Sにおける入力オフセット電圧をVoa1およびVoa2を考慮すると、式(53)は次のように表される。
【0068】
V2−V1=G×(V2S−V1S)+G×(Voa2−Voa1)・・・(54)
従って差動増幅器4の出力には、入力電圧の差分V2S−V1Sだけでなく、入力オフセット電圧の差分Voa2−Voa1も増幅率G倍されて出力される。式(54)から、各フェーズにおける差動増幅器4の差動出力V2−V1は次のようになる。
【0069】
V2φ1−V1φ1=G×(V2Sφ1−V1Sφ1)+G×(Voa2φ1−Voa1φ1)・・・(55)
V2φ2−V1φ2=G×(V2Sφ2−V1Sφ2)+G×(Voa2φ2−Voa1φ2)・・・(56)
式(55)および式(56)に、それぞれ式(51)および式(52)を代入すると次式を得る。
【0070】
V2φ1−V1φ1=G×(−Vh1−Voh1)+G×(Voa2φ1−Voa1φ1)・・・(57)
V2φ2−V1φ2=G×(+Vh2−Voh2)+G×(Voa2φ2−Voa1φ2)・・・(58)
容量C1〜C4、比較器1、スイッチS1、S2からなる構成は図1に示した構成と同じであり、図1と同じ動作をする。容量C1の他方の端子に接続された入力端子N1と容量C2の他方の端子に接続された入力端子N2には、差動増幅器4の出力が接続され、スイッチ回路3を介してホール素子2からの磁界強度に応じた信号電圧と誤差成分であるオフセット電圧が入力される。また、容量C3の他方の端子に接続された入力端子N3は基準電圧回路ref1の正極に接続され、基準電圧回路ref1からの基準電圧Vref1が供給される。容量C4の他方の端子に接続された入力端子N4は基準電圧回路ref2の正極に接続され、基準電圧回路ref2からの基準電圧Vref2が供給される。スイッチS2の他方の端子に接続された基準電圧入力端子Nrefは基準電圧回路ref0の正極に接続され、基準電圧回路ref0からの基準電圧Vref0が供給される。
【0071】
容量C1〜C4、比較器1、スイッチS1、S2からなる構成は図1に示した構成と同じ動作をするので、比較フェーズφ2における比較器1の出力は、式(25)と同様になる。ここで、説明の便宜上、容量値C1とC2は容量値Cに等しく、容量値C3と容量値C4は容量値Cのn倍に等しいとする。
Voφ2=A1×{(ΔVin−n×ΔVref)/(1+n)+(Voaφ2−Voaφ1)}・・・(25)
式(26)に式(56)と式(58)を代入し、式(27)を書き換えると次のようになる。
ΔVin=G×{(Vh2+Vh1)−(Voh2−Voh1)}+G×{(Voa2φ2−Voa2φ1)−(Voa1φ2−Voa1φ1)}・・・(59)
ΔVref=−{(Vref2φ2−Vref1φ2)−(Vref2φ1−Vref1φ1)}・・・(60)
ここで、差動増幅器4および比較器1の入力オフセット電圧Voa1、Voa2、Voaは、厳密には経時変化や温度変化(温度ドリフト)を示すため、一定の値ではないが、サンプルフェーズφ1および比較フェーズφ2の時間が入力オフセット電圧の経時変化や温度変化に対して十分に短い時間であれば、入力オフセット電圧の値は、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2で概等しい値であるとみなす事ができる。従って、式(25)および式(59)において、Voaφ2−Voaφ1、Voa2φ2−Voa2φ1、Voa1φ2−Voa1φ1は、ほぼゼロの値となり、比較フェーズφ2の比較器1における比較動作時に、差動増幅器4および比較器1のオフセット成分は取り除かれる。
【0072】
また、ホール素子2の素子オフセット電圧Vohは、一般的に、第一検出状態T1と第二検出状態T2とで概等しい値となる特性を有するから、Voh2−Voh1は、ほぼゼロの値となり、比較フェーズφ2の比較器1における比較動作時に、素子オフセット成分は取り除かれる。式(25)、式(59)から、これらの取り除かれる成分を削除すると、次の式を得る。
Voφ2=A1×{(ΔVin−n×ΔVref)/(1+n)}・・・(61)
ΔVin=G×(Vh2+Vh1)・・・(62)
従って、ホール素子2の第一検出状態T1と第二検出状態T2における素子信号電圧Vhの和を差動増幅器4の増幅率Gで増幅した電圧成分ΔVinと、検出電圧設定回路5から供給される電圧成分ΔVrefを容量C1〜C4の容量値の比で増幅した電圧と、を比較した結果が、最終的に比較器1の出力端子OUTからハイレベル信号またはローレベル信号として出力されることになる。
【0073】
以上をまとめると、前述の式(61)、(62)、(60)で示されるように、本発明の比較回路を応用した磁気センサ装置では、ホール素子2、差動増幅器4、比較器1において発生する全てのオフセット成分を取り除き、ホール素子の信号成分と基準電圧とを比較することができ、高精度の磁界強度の検出が実現される。また、理想的なホール素子においては、第一検出状態T1と第二検出状態T2の素子同相電圧Vcm1およびVcm2は等しいが、実際のホール素子においては必ずしも等しい値ではなく、このことも高精度な磁界強度の検出に誤差を生じさせる要因となっている。本発明の比較回路を応用した磁気センサ装置においては、式(61)、(62)、(60)で示されるように、比較結果を示す式にこれらの項は含まれておらず、ホール素子の同相電圧の非理想成分を除去した高精度の磁界強度の検出が実現される。また、本発明の比較回路を応用した磁気センサ装置は、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2の2つのフェーズで磁界強度の検出が可能であり、複雑な信号処理のステップを必要とせず、高速かつ高精度の磁界強度の検出が実現される。また、ホール素子の信号成分と比較される基準電圧成分ΔVrefは、式(60)に示したように、基準電圧回路ref1と基準電圧回路ref2のサンプルフェーズφ1における値と、比較フェーズφ2におけるそれぞれの値によって、任意に設定する事が可能である。すなわち、任意に基準電圧を設定することで、検出する磁界強度を任意に設定することができる。また、一般的にホール素子の感度は温度依存を有するので、ホール素子2が出力する磁界強度に応じた信号電圧も温度依存を有する。これを補正するために、例えば、基準電圧回路ref1と基準電圧回路ref2に温度依存をもたせることで、検出する磁界強度の温度依存を抑制することができる。以上により、本発明の比較回路を磁気センサ装置に応用することにより、高精度な磁界強度の検出が実現されることを示した。
【0074】
本説明においては、センサ素子の例として磁気センサを挙げ、特にホール素子を用いた例について説明したが、応用可能なセンサ素子としてはこの限りではなく、例えば加速度や圧力などに応じて電圧を出力するセンサ素子や、物理量に応じて抵抗値が変化するセンサ素子についても広く応用可能である。
【0075】
ここで、図4の磁気センサ装置を構成する要素である差動増幅器4の回路構成の一例について示す。
図5は、磁気センサ装置に用いる差動増幅器の一例を示す回路図である。
【0076】
図5の差動増幅器4は、差動増幅器41、42と抵抗R11、R12、R13を備えている。差動増幅器4は、第一入力端子N1Sが差動増幅器41の非反転入力端子に接続され、第二入力端子N2Sが差動増幅器42の非反転入力端子に接続され、第一出力端子N1が差動増幅器41の出力端子に接続され、第二出力端子N2が差動増幅器42の出力端子に接続される。抵抗R11、R12、R13は、第一出力端子N1と第二出力端子N2の間に直列に接続され、R11とR12の接続点N1’は差動増幅器41の反転入力端子に接続され、R12とR13の接続点N2’は差動増幅器42の反転入力端子に接続される。
【0077】
差動増幅器4は以上のように接続されており、次のように動作する。
差動増幅器41は非反転増幅器として動作し、反転入力端子に接続した接続点N1’が非反転入力端子に接続したN1Sに概等しくなるように動作する。また、差動増幅器42は非反転増幅器として動作し、反転入力端子に接続した接続点N2’が非反転入力端子に接続したN2Sに概等しくなるように動作する。また、抵抗R11、R12、R13に流れる電流は等しいので、次の式を得る。
【0078】
(V1−V1S)/R11=(V1S−V2S)/R12・・・(63)
(V2S−V2)/R13=(V1S−V2S)/R12・・・(64)
ここで、第一入力端子N1S、第二入力端子N2S、第一出力端子N1、第二出力端子N2の電圧をそれぞれ、V1S、V2S、V1、V2とした。式(63)と式(64)から、V1およびV2を計算すると次のようになる。
【0079】
V1=−(R11/R12+1/2)×(V2S−V1S)+(V2S+V1S)/2・・・(65)
V2=+(R13/R12+1/2)×(V2S−V1S)+(V2S+V1S)/2・・・(66)
式(65)と式(66)の右辺の抵抗を含む括弧の項をそれぞれ増幅率G1、G2とし
G1=R11/R12+1/2・・・(67)
G2=R13/R12+1/2・・・(68)
とおくと、式(65)と式(66)は次のようになる。
【0080】
V1=−G1×(V2S−V1S)+(V2S+V1S)/2・・・(69)
V2=+G2×(V2S−V1S)+(V2S+V1S)/2・・・(70)
式(69)と式(70)からV2−V1を計算すると次のようになる。
【0081】
V2−V1=(G1+G2)×(V2S−V1S)・・・(71)
ここで、増幅率Gを
G=G1+G2・・・(72)
とおくと、式(71)は
V2−V1=G×(V2S−V1S)・・・(73)
となり、式(53)と同じ結果を得る。すなわち、図5に示した回路例は、2つの入力電圧の差を増幅し、2つの出力電圧の差として出力する機能を有している。また、図5に示した回路例は、このような計装アンプ構成とすることにより、入力における同相ノイズの影響を抑制することが可能となる。なお、式(72)および(67)、(68)から
G=(R11+R12+R13)/R12・・・(74)
となるから、増幅率Gは抵抗R11、R12、R13によって任意に設定可能である。
次に、図4の磁気センサ装置を構成する要素である検出電圧設定回路5の回路構成の一例について示す。
【0082】
図6は、磁気センサ装置に用いる検出電圧設定回路5の一例を示す回路図である。
図6の検出電圧設定回路5は、抵抗R51、R52、R53と、スイッチS51、S51x、S52、S52xを有し、以下のように接続されて構成される。抵抗R53、R52、R51は、正の電源電圧端子(以下電源電圧端子)VDDと負の電源電圧端子(以下、グランド端子)VSSとの間に直列に接続される。R51とR52の接続点をNn、R52とR53の接続点をNnxとする。スイッチS51、S51x、S52、S52xは2つの端子を有し、スイッチ制御信号(図示しない)により、オンまたはオフに制御される。スイッチS51の一方の端子は接続点Nnに接続され、他方の端子は基準電圧回路ref1の正極Nref1に接続される。スイッチS51xの一方の端子は接続点Nnxに接続され、他方の端子は基準電圧回路ref1の正極Nref1に接続される。スイッチS52の一方の端子は接続点Nnに接続され、他方の端子は基準電圧回路ref2の正極Nref2に接続される。スイッチS52xの一方の端子は接続点Nnxに接続され、他方の端子は基準電圧回路ref2の正極Nref2に接続される。以下の説明では、電源電圧端子VDDおよびグランド端子VSSの電圧をそれぞれVDD、VSS、接続点Nn、Nnxの電圧をそれぞれVn、Vnx、基準電圧回路ref1の正極Nref1、基準電圧回路ref2の正極Nref2の電圧を、それぞれ基準電圧Vref1、Vref2として説明する。
【0083】
検出電圧設定回路5は以上のように接続されており、次のように動作する。
接続点VnとVnxの電圧は、VDDおよびVSSを抵抗R53、R52、R51で分圧した電圧であるから、
Vn=R51/(R51+R52+R53)×(VDD−VSS)・・・(75)
Vnx=(R51+R52)/(R51+R52+R53)×(VDD−VSS)・・・(76)
となる。電圧VnおよびVnxは、抵抗R51、R52、R53により任意に設定可能である。
【0084】
スイッチS51とS51xは、どちらか一方がオンし、もう一方がオフするように制御される。従って、Vref1にはVnまたはVnxのどちらかの電圧が出力される。また、スイッチS52とS52xについても同様に、どちらか一方がオンし、もう一方がオフするように制御される。従って、Vref2にはVnまたはVnxのどちらかの電圧が出力される。一例として、スイッチS51は、サンプルフェーズφ1でオンし、比較フェーズφ2でオフし、スイッチS51xは、サンプルフェーズφ1でオフし、比較フェーズφ2でオンし、スイッチS52は、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2でオンし、スイッチS52xは、サンプルフェーズφ1と比較フェーズφ2でオフする場合で説明する。
【0085】
以上のように各スイッチが制御されるので、各フェーズにおける基準電圧Vref1、Vref2は、次のようになる。
Vref1φ1=Vn
Vref1φ2=Vnx
Vref2φ1=Vn
Vref2φ2=Vn
基準電圧回路ref1の正極Nref1および基準電圧回路ref2の正極Nref2は、図4に示す磁気センサ装置にて、それぞれ入力端子N3および入力端子N4に接続されているので、上式および式(60)から
ΔVref=(Vnx−Vn)・・・(77)
となる。従って、比較器1でホール素子2からの信号成分と比較されるΔVrefは任意に設定可能な電圧Vn、Vnxの差分で与えられる。従って、任意に基準電圧を設定することが可能であり、すなわち、検出する磁界強度を任意に設定することができる。また、ホール素子2からの信号電圧は、一般的にS極とN極で正負の符合が異なるため、ΔVrefの符号の正負により、容易にS極とN極の判別を行うことが実現できる。また、磁界強度が弱い状態から強い状態に遷移する際の検出時と、磁界強度が強い状態から弱い状態に遷移する際の解除時とで、ΔVrefの値を変えることにより、容易に検出と解除のヒステリシスを設定することが実現できる。
【符号の説明】
【0086】
1 比較器
2 ホール素子
3 スイッチ回路
4 差動増幅器
5 検出電圧設定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8