【実施例】
【0062】
<実施例1>
基板101として、厚さが3.0mmのソーダライムガラス板(210mm×297mm)を用意し、前述の方法により、表面にラインアンドスペースの凸凹部を有するメインパターン領域1011を設けたインプリント成形モールド11を得た。微細形状測定機で測定した凸部と凹部の高さの差は3μmで、ラインアンドスペース幅は最小10μm/10μmであった。
【0063】
2つのアライメントマーク12の中心位置を結ぶ線分は、このインプリント成形モールド上にメインパターン領域1011内のパターンラインに平行になるように設けた。
【0064】
前述したように、基板101のアライメントマーク12を付与する領域全面にクロム膜120を形成した後で、レジスト膜102を形成し、パターン露光、現像後、残されたレジスト膜をマスクとして、後で凹部となる箇所のクロム膜を除去した。そのうえでクロムに対してガラスのエッチング選択性の高い反応性エッチングガスにより、ガラス部をエッチングし、残されたレジスト膜102を除去することにより、メインパターン領域1011にはクロム膜120がなく、アライメントパターン領域1012の凸部にクロム膜120が設けられた凸凹構造のインプリント成形モールド11を形成した。形成されたアライメントマーク12は幅50μm、長さ300μmの長方形を中心を合わせて片方を該中心を軸として90°回転させた状態で2つ垂直に重ねた十文字形状であった。アライメントマーク12の中心の位置は、2つのアライメントマーク12が
図3で右上隅と左上隅となるように置いたときに、角から23.5mm、23.5mm離れた位置であった。又、2つのアライメントパターン領域を足した総面積は、インプリント成形モールドの主面の面積の0.00019%であった。
【0065】
ガラス板上に、基材として使用する、インプリント成形モールド11よりも大きいポリエチレンナフタレート(PEN)シート(帝人株式会社製 商品名 Q65HA)を固定し、フィルム上のモールドの四隅に相当する位置に厚み1.0mmのシクネスゲージ(隙間ゲージ)を設置する。
【0066】
熱硬化性のジメチルシロキサン樹脂溶液(信越化学工業社製 商品名 X−32−3279A/B)をPENフィルム上に滴下し、上からアライメントマーク12が設けられたインプリント成形モールド11を凹凸を形成した面を下に向けて気泡が入らないようにして押し付ける。モールド全体に適度な荷重をかけて、該樹脂が流動し、該樹脂の厚みが全体に均一になるようにする。面内の厚み均一性は、デジタルシクネスゲージを使って測定箇所の最大膜厚と最小膜厚との差で評価し、10箇所の測定におけるその差が0.1mm以下になるまで全体を均一にした。その後、150℃で1時間加熱硬化させたうえで、シクネスゲージ(隙間ゲージ)を外し、PENシートをインプリント成形モールドと同じ大きさになるようにカッティングし、インプリント成形モールド11上に硬化樹脂層13を介してPENシートが基材として積層されたモールド積層体10を得た。
【0067】
PENシート剥離後のモールド積層体10の厚みを測定したところ、4.0mmであり、インプリント成形モールド11の厚みが3.0mmであるから、これより硬化樹脂層13の厚みは1mmで、最大膜厚と最小膜厚の差は0.1mmと優れたものであった。
【0068】
以上、モールド積層体10の積層工程について説明したが、次に搬送ステージ22の面内角度制御工程について説明する。
【0069】
(印刷用版胴の製造装置)
図2は、本発明に係る印刷用版胴21の製造装置の概略平面図である。
【0070】
本発明の製造装置は、
図2に示すように、設置台20、印刷用版胴21、印刷用版胴駆動部211、搬送ステージ22、ステージ搬送用の一対のガイド27、搬送ステージ22上に固定されるモールド積層体10、2台の第一のアライメントカメラ23及び2台の第二のアライメントカメラ24、カメラ用のガイドレール28及び281、カメラ支持柱29及び291並びにコンピューター25等を有する。以下、これらについて詳細に説明する。
【0071】
設置台20の上面には、長手方向に沿って設置台20に支持された一対のガイド27が延在されており、これら一対のガイド27には、たとえば石定盤のような平坦で硬い搬送ステージ22が摺動自在に設けられている。搬送ステージ22は、長手方向がガイド27の延在方向に向くように配置され、ガイド27により設置台20上を往復運動できるよう支持されており、図示しない駆動装置により駆動されてガイド27に沿って往復運動する(
図2の矢印X方向でガイド27と平行)。又、搬送ステージ22の中心部には面内回転軸38が設けられており、駆動装置(図示しない)により駆動され、搬送ステージ22自身が面内回転する。
【0072】
搬送ステージ22には、該駆動装置とともに、搬送ステージ22をガイド27に沿って±1μmの精度で移動可能な制御装置、面内角度制御装置及び各々の検知装置(該制御装置及び検知装置は図示しない)が設けられている。さらに後述する印刷用版胴21の回転速度に同期搬送させる機能も設けられており、コンピューター25のコントローラー(図示しない)により動作制御される。
【0073】
又、搬送ステージ22には、搬送対象であるモールド積層体10を固定するための吸着機構(図示しない)が設けられている。具体的には搬送ステージ22の中心部に吸着用のスリット(図示しない)があり、ステージ22は真空ポンプ(図示しない)と接続されている。該スリットが埋まるようにモールド積層体10を配置し、真空ポンプを稼働することで該スリットを通じて、モールド積層体10が真空吸着され、搬送ステージ22に固定される。
【0074】
モールド積層体10は、2台の第一のアライメントカメラ23の視野内にモールド積層体10が入るような形態で搬送ステージ22の上面に真空吸着され、固定される。具体的固定方法については後述する。
【0075】
設置台20の中央部には、印刷用版胴21が設けられ、その機械軸方向(MD;版胴21の長軸方向(TD)に垂直で版胴中心を通る線31の方向)が搬送ステージ22の移動方向(矢印X方向)と平行になるように配置されていて、印刷用版胴21のMD線31の延長線上に搬送ステージ22の面内回転軸38が重なるように配置される。印刷用版胴21は駆動軸212により駆動装置211と連結され、駆動装置211は設置台20に固定されている。又、印刷用版胴21は搬送ステージ22の移動方向に鉛直な方向(
図2の紙面に垂直又は
図4(A)の矢印Z方向)に昇降運動することもできる。駆動装置211には印刷用版胴21を版胴21の外周長さとして±1μmの精度で回転可能な機能、及び昇降方向で±1μmの精度で昇降可能な機能が備わるとともに、版胴21の回転角度及び昇降位置の検知装置も設けられており、後述されるコンピューター25のコントローラー(図示しない)により動作制御される。
【0076】
第一のアライメントカメラ23及び第二のアライメントカメラ24並びに搬送ステージ22及び印刷用版胴21の駆動制御装置は、コンピューター25内のコントローラー(図示しない)と接続されている。コンピューター25は、所謂パーソナルコンピューターで構成されており、CPUを制御主体として、メモリ、入力部、出力部を備え、各アライメントカメラ23及び24に対応する画像入力部及び画像メモリを備え、アライメントカメラ23及び24で撮影された撮像図を画像処理する機能も備わる。
【0077】
2台の第一のアライメントカメラ(CCD撮像素子またはCMOS撮像素子を使用したカメラ)23は、モールド積層体10内のアライメントマーク12に向かうように配置される。各々のカメラ23は、印刷用版胴21の長軸方向(TD)に沿うように設けられたガイドレール28に移動可能に案内される。ガイドレール28の両端は2本の支持柱29で支持されており、ガイドレール28と一体となって搬送ステージ22を跨ぐような形態で設置台20に固定される。
【0078】
各々の第一のアライメントカメラ23には、カメラの視野内に十字状のカメラマーク33が設けられており、カメラ23をガイドレール28に沿って移動させると、カメラマーク33もガイドレール28に沿って、すなわち印刷用版胴21のTD方向に平行移動する。カメラ23は、カメラの視野内にアライメントマーク12が入るまで平行移動させたのちに固定される。カメラ23のストロボ光源を発光させ、モールド積層体10に照射したストロボ光の反射光を、カメラ本体23に入力させることにより、モールド積層体10中のアライメントマーク12と共にカメラマークも撮影され、得られた撮像図情報は後述するコンピューター25へ送られる。
【0079】
又、第一のアライメントカメラ1台につき、1つのアライメントマーク12が撮影される。
図2には、モールド積層体10が搬送ステージ22に固定された状態が示されているが、たとえば1つのアライメントマーク12がモールド積層体10の左上方の隅近傍に配置されている場合には、2台の第一のアライメントカメラの内、左側のカメラにより撮影され、右上方の隅近傍に配置された2つ目のアライメントマークは右側のカメラで撮影される。
【0080】
2台の第一のアライメントカメラ23により別々に撮影された2枚の撮像図は画像処理され、2つのアライメントマーク12と2つのカメラマーク33の合計4つのマークが同時に撮影された1枚の合成撮像図として得られる。この撮像図における4つのマークの相対位置関係は実際の相対位置関係と同じに維持されている。このような合成撮像図は、例えば以下の操作によって得られる。
【0081】
まず、第一のアライメントカメラ23により、1つのアライメントマーク12と1つのカメラマーク33を撮影し、得られた撮像図を画像処理して、アライメントマーク12とカメラマーク33との距離及び印刷用版胴のTDに対する角度を算出する。前者のアライメントマーク12とカメラマーク33との距離は、カメラ視野内にスケールバーを設け、被撮影物と共に撮影された撮像図を画像処理により撮像図中のアライメントマーク12の中心点とカメラマーク33の中心点との距離を実長に変換することによって得られる。
【0082】
又、後者の印刷用版胴21のTDとの相対角度については、これも画像処理操作の一つとして、撮像図中のカメラマーク33を起点とする印刷用版胴21のTDに平行な線を撮像図中で引いたうえで、アライメントマーク12の中心点とカメラマーク33の中心点とを結ぶ線分も引き、両線のなす角度を求めることによってなされる。
【0083】
もう一台の第一のアライメントカメラ23により、上記と同様に、もう1つのアライメントマーク12ともう1つのカメラマーク33との距離及び印刷用版胴のTDに対する角度を算出する。
【0084】
2台の第一のカメラ23間の距離は各々のカメラがガイドレール28上で固定されており計測可能で、これより2台のカメラの中のカメラマーク33の中心点間の距離を求めることができる。そして、このカメラマーク間の距離と、上記の操作で算出されたそれぞれのアライメントマーク12の中心点とアライメントカメラ33の中心点との距離及び印刷用版胴のTDに対する角度から、実際と同じ位置関係にある2つのアライメントマーク12と2つのカメラマーク33とが撮影された1枚の撮像図として得ることができる。
【0085】
撮像図の画像処理の方法は公知の方法により処理される。例えば、上記で得られた撮像図はコンピューター25のコントローラー内に送られ、前処理として、
図2で示されるようなX方向とY方向のそれぞれの方向に微小画素として分解された上で、2値化、フィルター処理及びグレー処理などが行われ、さらに計測処理として、パターンマッチングにより画像データから寸法などが計測されて、その処理結果はコントローラーを介して制御装置に信号として送られる。
【0086】
以上のような操作により得られた典型的な撮像図が
図3に示されている。この撮像図から、2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35と、2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34との方向角37(Θ)をコンピューター25内で演算した上で、コンピューター25内のメモリーに記憶される。より詳細については、後述される搬送ステージ22の角度制御工程のところで説明する。
【0087】
2台の第二のアライメントカメラ(CCD撮像素子またはCMOS撮像素子を使用したカメラ)24は、印刷用版胴21上に設けられた2つのアライメントマーク71(
図7)に向かうように配置される(
図2)。この2つのアライメントマークは、印刷用版胴21の特定位置26における印刷用版胴のTDと平行な線上に設けられる。
【0088】
当該マーク71は、インプリント成形モールド11上に形成されたマークの場合と違って、上に樹脂や基材等の視認性を損なうものがないため、第二のアライメントカメラ24によってマーク71は容易に認識できるので、マークとして視認できるものであれば特に限定されない。例えば、色付きフィルムをアライメントマーク12のような十文字状又は円形状にしたものをマーク71として使っても良い。
【0089】
各々の第二のアライメントカメラ24の視野内には十字状のカメラマーク72が設けられており、印刷用版胴21のTDに沿うようにガイドレール281が設けられており、各々のカメラ24はこのガイドレール281に移動可能に案内される(
図2)。第二のアライメントカメラ24は視野内にアライメントマーク71が入るまで、ガイドレール281に沿って平行移動されたのちに固定される。ガイドレール281の両端は2本の支持柱291で支持されており、ガイドレール281と一体となって搬送ステージ22を跨ぐような形態で設置台20に固定される(
図2)。第二のアライメントカメラ24にも上記の第一のアライメントカメラ23の場合と同様に、得られた撮像図情報は後述するコンピューター25へ送られる。
【0090】
第二のアライメントカメラ24の場合についても、カメラ1台につき、1つのアライメントマーク71が撮影される。
図2に印刷用版胴21及びアライメントカメラ24の平面図が示されているが、たとえば1つ目のアライメントマーク71が印刷用版胴21の右隅近傍に配置されている場合には、2台のアライメントカメラの内、右側のカメラにより撮影され、左隅近傍に配置された2つ目のマークは左側のカメラで撮影される。
【0091】
又、第二のアライメントカメラ24により別々に撮影された2枚の撮像図は画像処理され、2つのアライメントマーク71と2つのカメラマーク72の合計4つのマークが同時に撮影された1枚の合成撮像図として得られる。この撮像図における4つのマークの相対位置関係は実際の相対位置関係と同じに維持されている。このような合成撮像図を得る操作については、第一のアライメントカメラ23によって得られる合成撮像図の場合と同様である。
【0092】
コンピューター25に内蔵される図示しないコントローラーにより、得られた画像処理後の情報を下に、印刷用版胴21の昇降位置、回転角度及び回転数は制御され、搬送ステージ22は所定の面内角度だけ回転するように制御され、さらに所定量及び所定速度で印刷用版胴21側へ移動するように制御される。
【0093】
以上、本発明のインプリント成形モールドを用いた、印刷用版胴21の製造装置の概要及びその機能について説明した。次に搬送ステージ22の面内角度制御工程について説明する。
【0094】
(面内角度制御工程)
本工程においては、最初にモールド積層体10を搬送ステージ22上に、この積層体10内の2つのアライメントマーク12のそれぞれが2台の第一のアライメントカメラ23の視野に入るように固定される。ここでは、モールド積層体10を固定する前に、まずモールド積層体の中の1つ目のアライメントマーク12が1台目のカメラ23の視野内に入るように、モールド積層体10を搬送ステージ22上に仮置きしてから、2つ目のマーク12が2台目のカメラ23の視野内に入るように、カメラ23をガイドレール28上で移動させつつモールド積層体10の配置位置も調整しながら、視野に入るのを確認する。
【0095】
そして、カメラ23を固定すると共にモールド積層体10を、搬送ステージ22に設けられた吸着機構を用いて調整後の配置位置に吸着固定する。モールド積層体10の配置位置の調整は搬送ステージ22をガイド27に沿って前後搬送させることによって調整される。
図2には同じく、モールド積層体10が搬送ステージ22上に固定された状態にあるその概略平面図を示した。
【0096】
モールド積層体10を搬送ステージ22上に固定する方法としては、本実施形態の方法に限定されず、たとえば一例として、モールド積層体10のおよその固定位置を決めてから、搬送ステージ22上に両面粘着シートを貼りつけて、その上にモールド積層体10を固定するといったような方法でもよい。
【0097】
接着処理する場合や粘着シートを貼りつける場合には、接着層または粘着シートの厚みはできるだけ薄くなるようにして固定するのが好ましい。好ましい厚みとしては、100μm以下である。
【0098】
このようにモールド積層体10を固定した上で、モールド積層体10中に設けられたアライメントマーク12を、アライメントマーク12に向かって設置された第一のアライメントカメラ23によって検知し、2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35(
図3にて示した)の方向が、印刷用版胴21のTD(軸方向)線32の方向と平行になるように搬送ステージ22の面内角度を制御する。
【0099】
2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分を版胴21のTDに平行にすることによって、モールド積層体10内のインプリント成形モールド11に形成されたパターンライン36と版胴21のTDとを平行にすることができ、後述するモールド積層体10の貼合・離間工程において、版胴21上に版胴21のTDと平行なパターンラインが転写される。
【0100】
図3(A)に、典型例として、第一のアライメントカメラ23により撮影された2つのアライメントマーク12の撮像図を2つのカメラマーク33と共に示す。尚、図中のアライメントマーク12の形状は、十文字のカメラマーク33と区別しやすいように、円形状(○)で示した。以下の撮像図についてもすべて同じように示した。又、この図の上部には、本工程が容易に理解されるために、印刷用版胴21の機械軸方向(MD)線31及び長軸方向線(TD線)32とを併記し、これらの線分(31及び32)の方向と、2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35との角度関係が明瞭になるようにした。又、全体の態様が理解されやすいように、モールド積層体10及び搬送ステージ22も併記した。
【0101】
図3(A)では、2台の第一のカメラ23の視野内に2つのアライメントマーク12が入るように、モールド積層体10の搬送ステージ上への固定位置を調整したものの、目的とする2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35の方向が、2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34の方向、すなわち印刷用版胴21のTD線32の方向に対してずれていることが示されている。このずれ角を方向角37(Θ)とする。
【0102】
図3(B)に、搬送ステージ22を回転軸38中心に時計回りに、2本の線分34と35が回転により、そのずれが補正されるように回転させた場合の撮像図を示した。このように搬送ステージ22を所定の角度(この場合は方向角37(Θ))面内回転させることによって、モールド積層体10中の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35を、2つのカメラマークの中心点を結ぶ線分34に対して、すなわち印刷用版胴21のTD線32に対して平行に制御することができる。平行の程度は目的とするインプリント対象によって異なるが、方向角37が0.1°以下となるように回転させることが好ましく、0.01°以下がより好ましく、0.005°以下がさらに好ましい。
【0103】
図中には2つのアライメントマーク12に平行なパターン線36も示してあるが、以上の角度制御により、すなわち目標であるモールド積層体10中に設けられたパターンのパターン方向と印刷用版胴21のTD方向とを平行にすることができる。
【0104】
(昇降位置の位置決め工程)
【0105】
次に印刷用版胴21の昇降位置の位置決め工程について説明する。
この工程では、まず印刷用版胴21の昇降位置を、モールド積層体10が印刷用版胴21側に水平移動(ガイド27が延在する方向に沿って)して、両者が貼合されるように制御する。
【0106】
この印刷版胴21の昇降位置の制御方法についての理解をより容易にするために、この次の工程である、モールド積層体10の貼合・離間工程の概要について説明しておく。
【0107】
図4(A)には、この次の貼合・離間工程で実施される、モールド積層体10と印刷用版胴21との貼合状態が示されている。この図では、印刷用版胴21の上に設けられた特定位置26と、モールド積層体10中に設けられた2つのアライメントマーク12(一つは図示されず)とが、印刷用版胴21の最下点41で重なり合わされて貼合される状態が示されている。
図8(A)、(B)に示されるが、特定位置26に設けられた2つのアライメントマーク71(図示されない)は、印刷用版胴21の最下点で版胴21の長軸方向(TD)に沿った線上、すなわちニップライン上にて、重ね合わされて貼合されることになる。又、
図4(B)には、さらに工程が進み、インプリント成形モールド10が離間される状態も示されている。
【0108】
このように、モールド積層体10の貼合・離間工程の概要から分かるように、印刷用版胴21とモールド積層体10との貼合をなすためには、印刷用版胴21の昇降位置をモールド積層体10が搬送ステージ22により印刷用版胴21側へ水平搬送されて、印刷用版胴21のニップライン上にて貼合されるような位置に制御する必要がある。
【0109】
このことは、印刷用版胴21の最下点41の昇降位置を、搬送ステージ22の高さ42(
図5)に、モールド積層体10の厚み43を加えてなる昇降位置に制御することによってなされる。
【0110】
搬送ステージ22の高さ42は、
図5に示されているように、搬送ステージ22の左端部を印刷用版胴21の真下近傍まで移動させ、印刷用版胴21を降下させながら搬送ステージと接触させた場合のステージ22の高さを表す。この値は、設置台20の上にガード27を介して載置された搬送ステージ22の高さを、例えば高精度高さ測定器等を使って実測することによって求められる。高さはこのときの印刷用版胴21の昇降位置を搬送ステージ22の高さ42として、一旦コンピューターのメモリに記憶させておき、これにモールド積層体10の厚みを加えた値を再度メモリにインプットする。
【0111】
実際に印刷用版胴21がモールド積層体10と貼合される場合、印刷用版胴21はモールド積層体10の深さ方向に圧接されるようにして貼合される。圧接される程度は、モールド積層体10中の硬化樹脂層13の厚みに対して、0.1%〜20%に調整するのが好ましい。圧接の程度は、硬化樹脂層13の厚みや材質によっても変わるが、より好ましくは0.5%〜10%である。
【0112】
前述のモールド積層体10の積層工程における実施例で得られた硬化樹脂層の厚みは1.0mmであったから、圧接の程度は1〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0113】
このようなモールド積層体10の圧接分を上記のメモリに記憶された昇降位置に反映させて、最終の印刷用版胴21の昇降位置を決める。
【0114】
尚、前記したように、モールド積層体10を搬送ステージ22に固定するために接着剤を用いる場合もあるが、昇降位置には影響されない程度に薄い場合は、考慮しなくてもよい。
【0115】
(特定位置の位置決め工程)
次に、印刷用版胴21上に設けられた特定位置26と、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35とを重ね合わせて貼合するための、印刷用版胴21及び搬送ステージ22の位置決め工程について説明する。
【0116】
図4(A)は同じく、搬送ステージ22上に固定されたモールド積層体10の貼合・離間工程を示す概略側面図である。この図は、上記のごとく、印刷用版胴21の上に設けられた特定位置26(TD方向の線分)と、モールド積層体10中の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分とを重ね合わされて貼合されている態様である。この態様にするためには、上記のような印刷用版胴21の昇降位置の調節に加えて、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12と印刷用版胴21上の特定位置26とが、印刷用版胴21のニップライン上で貼合されるように制御する必要がある。
【0117】
最初に搬送ステージ22の貼合前の初期位置を決め、その位置から貼合するまでの搬送ステージ22の必要移動量を求める。次に同様にして、印刷用版胴21の特定位置26の初期角度を決め、その角度から貼合されるまでの必要回転角度を求める。求められた搬送ステージ22の必要移動量と印刷用版胴21の必要回転角度をコンピューター25のメモリに記憶させた後で、コントローラーにより、貼合離間時に、印刷用版胴21を回転させつつ、搬送ステージ22を印刷用版胴21の回転速度に同期移動させながら所定量移動させて、モールド積層体10の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分と印刷用版胴の特定位置26とを貼合させる。
【0118】
搬送ステージ22の貼合前の初期位置は、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35を2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34に重ねあわせることによって決めることができる。これについては、前記
図3(B)の搬送ステージ22の面内角度制御工程の場合を用いて説明する。
図3(B)で示されたように、2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34と、モールド積層体10中に設けられた2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35とが、お互いが平行になるように、すでに搬送ステージ22の面内角度は制御されているが、2本の線分同士が重なり合っていない、すなわち搬送ステージ22のX方向(
図2及び
図3(B)の上下方向)の位置がずれている(位置ずれ39(α))ことが示唆される。
【0119】
面内角度制御工程の場合と同様、この2本の線分(34と35)の位置ずれ39(α)をコンピューター内で位置ずれ量として演算することができる。そして位置ずれ量を補正するように搬送ステージ22を搬送させる(この場合には
図3(B)の矢印方向に搬送される)。上記2本の線分が重なり合って、搬送ステージが初期位置に配置された場合の状態を
図6に示した。重なり合った時の搬送ステージ22の位置を初期位置としてコンピューターのメモリ内にインプットしておく。
【0120】
この搬送ステージ22の初期位置から搬送ステージ22を印刷用版胴側21へ水平搬送させ、モールド積層体10のアライメントマーク12が印刷用版胴21の特定位置26と、印刷用版胴21の最下点、すなわちニップライン上で重なり合うまでの搬送ステージの移動量が、搬送ステージ22の必要移動量となる。ここで、この初期位置から印刷用版胴21のニップラインまでの必要移動量は、コンピューター内で演算される。
【0121】
この移動量は、
図4(A)に示されるように、ステージ22を版胴21とモールド積層体10とが重なり合う位置まで初期位置から搬送させた場合の移動量であり、搬送後のステージ22の位置を、初期位置を決めたのと同様にして、ガード27上の位置として検知し、このガード27上の位置から、先で求めたステージ22の初期位置との差から求めることができる。この移動量はコンピューター内に記憶される。尚、搬送後のステージ22のガード27上の位置は、印刷用版胴の最下点41直下(
図4(A)のZ方向と逆方向)のガード27上の位置でとして求めることができる。
【0122】
一方、
図7(A)にて示されるように、前述の角度制御工程の場合と同様に、印刷用版胴21上の特定位置26に、中心点を結ぶ線分が印刷用版胴のTD線32と平行になるように2つのアライメントマーク71を設ける。
【0123】
当該マーク71は、前述したインプリント成形モールド上に形成されたマークの場合と違って、上に樹脂や基材等の視認性を損なうものがないため、第二のアライメントカメラ24によって容易に認識できるので、マークとして視認できるものであれば特に限定されない。例えば、色付きフィルムでアライメントマーク12のような十文字状又は円形状にしたものをマーク71として使っても良い。
【0124】
アライメントマーク71の印刷用版胴21上の初期角度は以下のようにして求められる。
図7に示されたように、第二のアライメントカメラ24は、搬送ステージ22の面内角度制御工程の場合と同様、2つのアライメントマーク71の中心点を結ぶ線分73とカメラマーク72の中心点を結ぶ線分74の2本の線分との位置ずれ75(β)を、コンピューター内で印刷用版胴21の回転角度として演算する。
【0125】
そして、印刷用版胴21をこのずれ角度を補正するように回転させて、
図7(B)に示されるように、2本の線分(73と74)とを重ねあわせる。この場合のアライメントマーク71の位置を初期角度81(ω)として得た(
図8(A))。ここで、初期角度81(ω)とは、印刷用版胴21の最下点41から初期角度の位置におけるアライメントマーク71の角度とした(
図8(A)には印刷用版胴21の初期位置を表す概略側面図を載せた)。
【0126】
すなわち、この初期角度81(ω)が貼合するのに必要な回転角度となる。尚、
図8(A)では、貼合されるまでの角度がωの場合を示したが、印刷用版胴21の初期位置がこの場合よりも高い位置にあり、貼合までに一回転以上要する場合には、ωにその回転数分の角度(360°×回転数)が加えられたものが初期角度となる。
【0127】
(貼合・離間工程)
以上、印刷用版胴21及び搬送ステージ22の位置決めについて説明したが、前述されたように、印刷用版胴21及び搬送ステージ22はコンピューター25のコントローラーにより、印刷用版胴21の回転角度及び回転数に同期させて搬送ステージ22を所定の速度で所定量水平移動することができる。
【0128】
したがって、前述の工程にて算出された、搬送ステージ22がモールド積層体10のアライメントマーク12と印刷用版胴21の特定位置26とが重なり合うまでに移動される移動量の情報及び印刷用版胴21のニップライン上でモールド積層体10のアライメントマーク12と重なり合うまでの回転角度81の情報とをコンピューター25のメモリにインプットした上で、コントローラーにより、印刷用版胴21を回転させながら、搬送ステージ22の移動速度を印刷用版胴21の回転速度に同期させつつ所定量移動させることによって、モールド積層体10のアライメントマーク12と印刷用版胴の特定位置26とを貼合させることができる(
図4(A))。
【0129】
モールド積層体10を印刷用版胴21に貼合する方法としては、特に限定されるものではないが、印刷用版胴21の円筒面を予めシランカップリング剤(信越化学工業社製)による接着処理しておいたり、予め薄い粘着シートを貼りつけておいて、その上にモールド積層体10を貼合するといったような方法でもよい。
【0130】
尚、粘着テープの場合には、それ自体の厚みが厚すぎたり、厚み斑があったりする場合には使用に適さない。
【0131】
以上のような方法によってモールド積層体10を印刷用版胴21に貼合する場合の接着力は、貼合・離間工程において、モールド積層体10から硬化樹脂層13とインプリント成形モールド11とが離間される、所謂剥離力よりも大きくなくてはならない。
【0132】
引き続き、印刷用版胴21を回転させながら搬送ステージ22を水平搬送することにより、パターン転写された硬化樹脂層13は印刷用版胴21上に貼合されると同時に、インプリント成形モールド11が搬送ステージ22上に固定されたままの状態で、モールド積層体10から離間される(
図4(B))。すなわち、硬化樹脂層13は、インプリント成形モールド11から剥離するのと同時に版胴21の円筒面に貼合される。このため、インプリント成形モールドから薄い硬化樹脂層を剥離させ、該硬化樹脂層を印刷用版胴に貼合する方法と比較して硬化樹脂層における変形や歪の発生が少ないという特徴を有する。
【0133】
印刷用版胴21及び搬送ステージ22の動作速度については、上述したモールド積層体10と成形モールド11との剥離力、硬化樹脂層13の性状などにより適宜調整される。
【0134】
以上説明したように、本発明の視認性に優れたインプリント成形モールド11を用いた印刷用版胴の製造装置によれば、手作業を大幅に減らし、短時間で簡便にかつ高精度で、印刷用版胴の所望する位置に、微細転写パターンを貼合することができる。
【0135】
市販の画像認識ソフトウェアでアライメントマークを認識しようとした場合、含金属膜120なしのインプリント成形モールドを用いた印刷用版胴の製造装置ではコントラストが十分に取れずにカメラにて検出不可となることがあるが、本発明のインプリント成形モールドを用いた印刷用版胴の製造装置ではコントラストが高くカメラによる検出が容易となる。
【0136】
本発明では、以上のようなインプリント成形モールド、モールド積層体、版胴の製造方法及び製造装置を用いることにより、印刷用版胴21上に形成された転写パターンの貼合前後のパターン歪を測定することが可能である。ここでパターン歪とは、インプリント成形モールド11のメインパターン領域1011またはアライメントパターン領域1012内の2点間の搬送ステージ22搬送方向の長さ1に、印刷用版胴の円筒面に貼合することによりパターンが伸長する分の補正を加えた長さ2と、印刷用版胴21に貼合された硬化樹脂層13内の転写後の該2点間の搬送ステージ22搬送方向の長さ3との差を意味する。
【0137】
以下に、その測定方法について説明する。
【0138】
<実施例2>
<貼合・離間前のパターン歪測定例>
図9(A)に示されているように、4つのアライメントマーク領域が右上隅と左上隅と右下隅と左下隅となるように配置し、左上隅と右上隅の2つのアライメントマーク12の中心位置を結ぶ線分35、及び右下隅と左下隅の2つのアライメントマーク12の中心位置を結ぶ線分935は、このインプリント成形モールド上で、メインパターン領域1011のパターンラインに平行になるように設けた以外は実施例1と同じ、インプリント成形モールドを作製した。ここで、線分35と線分935間の長さ(距離)を凸凹パターン領域間の長さとよぶ。
【0139】
形成された各アライメントマークは、幅50μm、長さ300μmの長方形を2つ垂直に重ねた十文字形状であった。4つのアライメントマークの中心の位置は、角から23.5mm、23.5mm離れた位置であった。また、アライメントパターン領域1012の総面積は、インプリント形成用モールドの主面の面積の0.00038%であった。
【0140】
アライメントマークを設ける方法は、前記のモールド積層体10の積層工程の実施例1に従って、モールド積層体10を得た。
【0141】
ここで得られたモールド積層体10を上記の角度制御工程に行ったのと同様にして、
図9(A)に示されるように、第一のアライメントカメラ23の視野の中に、モールド積層体10内のインプリント成形モールド11に設けられた2つのアライメントマーク12が観察できるように、モールド積層体10を搬送ステージ22上に固定する。
【0142】
図9(A)では、隣の凸凹パターン領域内に設けられた2つのアライメントマーク912も撮影されているが、前述した4点を一枚の撮像図とした場合と同様の方法にて、6点(2つのアライメントマーク12及び2つのマーク912並び2つのカメラマーク33)が一枚の撮像図として得られるように画像処理した。
【0143】
次に前述の面内角度制御工程及び位置決め工程の場合と同様にして、搬送ステージ22の面内方向の角度制御及び位置決め制御を行った。同じく、
図9(A)には、パターン中に設けられたアライメントマーク12の線分35とカメラマーク線分34との方向調整が実施され、アライメントマーク12の線分35と印刷用版胴21のTD線32の方向とが平行であることが示されている(すなわちカメラマーク線分34とも平行)。
【0144】
引き続いて、2本の線分の重ね合わせによる位置決めを実施した場合も、同じく
図9(A)に示される。アライメントマーク線分35とカメラマーク線分34とが重なり合っているときの、搬送ステージ22のその位置を初期位置とした。それから、第一のアライメントカメラ23の視野内で、今度はカメラマーク線分34と隣の凸凹パターン領域に設けられたアライメントマーク912の線分935とが重なり合うまで、搬送ステージ22を上方搬送(
図2及び
図9(A))させて、搬送ステージ22の初期位置からの水平移動量を求める。
図9(B)には、カメラマーク線分34と隣の凸凹パターン領域に設けられたマーク912の線分935とが重なり合っている状態の撮像図が示されている。このようにして求められた搬送ステージ22の水平距移動量が、すなわちインプリント成形モールドの凸凹パターン領域間の長さとなる。
【0145】
以上のような工程を経て測定されたインプリント成形モールドの凸凹パターン領域間の長さ1は250.00mmであった。
【0146】
<貼合・離間後の歪測定>
次に、貼合・離間後のパターン歪を測定する。
【0147】
上記の2つの凸凹パターン領域を有するモールド積層体10を用い、本発明の貼合・離間工程に従って、硬化樹脂層13からなる転写パターン層が貼合された印刷用版胴40を得た。
【0148】
印刷用版胴21の位置決め工程の場合と同様に、印刷用版胴21に向かって設置された第二のアライメントカメラ24を用いて、アライメントカメラ24の視野内に、1つ目の凸凹パターン領域内に設けられた2つのアライメントマーク1012が入るように、印刷用版胴21を相当分回転させた。
【0149】
ここで、2つのアライメントマーク1012とは、上記の貼合離間前のモールド積層体10内のインプリント成形モールド11に設けられた2つのアライメントマーク12が、メインパターンと共に、印刷用版胴21上の硬化樹脂層13に転写されたもので、アライメントマーク12が凸状の十文字なのに対して、アライメントマーク1012は転写されて凹形状の十文字になる。貼合後はマーク上に樹脂や基材などが無いため、貼合前のように視認性のよい含金属膜120なしでも、第二のアライメントカメラ24によるマークの視認が可能となる。アライメントマーク10912の形状もマーク1012と同様で凹状の十文字であった。
【0150】
図10(A)にその場合の第二のアライメントカメラ24による撮像図を示す。図中、アライメントマーク1012、これらのマーク1012の中心点を結ぶ線分103、隣の凸凹パターン領域内のアライメントマーク10912、これらのマーク10912の中心点を結ぶ線分104、2つのカメラマーク72及びカメラマーク線分74が示されている。
【0151】
同じく、印刷用版胴21の位置決め工程の場合と同様に、第二のアライメントカメラ24に設けられ印刷用版胴21のTD線32に平行なカメラマーク線分74に、印刷用版胴21上のアライメントマーク線分103が重なるように、版胴21の角度を制御する。
図10(A)には版胴21の角度制御後の撮像図が示されている。この場合の版胴21の角度を初期角度とする。尚、この初期角度とは、版胴21の最下点41からアライメンマーク線分103までの角度とした。
【0152】
同様に、第二のアライメントカメラ24の視野内に隣のパターン内に設けられた2つのアライメントマーク10912が入るように版胴21を回転させて、2つのアライメントマークの中心点を結ぶ線分104とカメラマーク線分74とが重なるように版胴21を回転させる。回転後の角度を2番目の角度とする。2番目の角度も印刷用版胴21の最下点からアライメントマーク線分104までの角度である。
図10(B)に2本の線分が重なり合った場合の撮像図を示した。このようにして求められた初期角度と2番目の角度との差を印刷用版胴21の外周長さに換算して、これを印刷用版胴21上に転写されている各々の凸凹パターン領域間の長さとして求めた。
【0153】
以上のような測定方法によって求められた印刷用版胴21上に転写された凸凹パターン領域間の長さ3(105)は250.89mmであった。
【0154】
貼合前のインプリント成形モールドの凸凹パターン領域間の長さ1は250.00mmであったが、印刷用版胴21に貼合することで硬化樹脂層13の厚みと印刷用版胴21の曲率に応じて、樹脂層が湾曲し、パターンがわずかに伸長する。硬化樹脂層13の厚みと版胴21の半径から算出される補正を加えた凸凹パターン領域間の長さ2は250.94mmとなるから、印刷用版胴21上の凸凹パターン領域間の長さ3(250.89mm)との差であるパターン歪はわずかに0.05mm(50μm)と極めて優れたものであった。
【0155】
尚、上記の凸凹間パターン間の長さ2は、以下の計算式により補正計算した。
印刷用版胴21の半径をr、硬化樹脂層13の厚み(印刷用版胴に硬化樹脂層13を貼合するのに粘着シートなどを用いた場合にはその厚みとの総和)をt、さらに印刷用版胴21の断面図において、印刷用版胴21上に貼合された硬化樹脂層13の両端部と印刷用版胴21の中心とのなす角度をΘとして、凸凹パターン間の長さ(L’)を下記式により補正する。 L’=2×π×(r+t)×Θ/360
実施例2では、r = 175mm、t = 2.505mm、及びθ = 81°であったので、L’ = 250.94mmとなる。
【0156】
以上のように、本実施形態によれば、位置合わせに要する手作業を大幅に減らし、短時間で簡便にかつ高精度で、印刷用版胴の所望する位置に歪の小さい微細パターンを形成することができる。